説明

マイクロ流体デバイス用の小型光学検出システム

【課題】マイクロ流体デバイス用の光学検出システムと、小型光学検出システムに適合するドライフォーカス式マイクロ流体デバイスを提供する。
【解決手段】LEDと、LEDにより発せられる光を平行にするための手段と、平行光を対物レンズを通してマイクロ流体デバイス上に向かわせるための手段と、マイクロ流体デバイスから発せられる蛍光信号を検出するための手段とを含むマイクロ流体デバイス用の光学検出システムにおいて、ドライフォーカス式マイクロ流体デバイスは複数のチャンネルと、湾曲壁を有する複数の閉鎖した光学位置合せマークとを含み、チャンネルの少なくとも一つは、マークの少なくとも二つの間に配置される。マークは、外部の白色LED光により位置合わせ及び焦点合わせの目的のために照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は米国仮特許出願第60/670,736号、2005年4月12日出願、標題「マイクロ流体デバイスのための光学検出(Optical Detection for Microfluidic Devices)」の優先権を主張すると共に該米国仮特許出願をあらゆる目的のためここで援用する。
【0002】
技術分野
一般に本発明は検出光学の分野に関する。特に、本発明は蛍光信号を検出するための小型光学システムと、小型光学検出システムに適合するドライフォーカス式マイクロ流体デバイスとに関するものである。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体デバイス用の既存の光学検出システムは大きく、高価で、柔軟性に欠ける。既存のマイクロ流体デバイスの機器類において、光学検出システムは最も費用のかかるサブシステムである。現在の光学検出システムの大きさ、コスト高、及び硬直性は、検出用の複数の電荷結合素子(CCD)カメラと共に蛍光励起用の複数の高品質レーザーを用いるシステムに主に起因している。
【0004】
既存の光学検出システムの位置合わせ及び焦点合わせはまた問題も引き起こしている。一般に、マイクロ流体デバイスにおけるチャンネルを流れる蛍光色素によって光学素子の位置合わせ及び焦点合わせが行われる。この色素は位置合わせ及び焦点合わせ工程を実行する前にマイクロ流体デバイスの検出領域に到達できなければならない。これは特定のマイクロ流体デバイスでは数分を要し得る。加えて、一般に蛍光色素は焦点合わせの後にチャンネルから流し出されるが、これは時間もかかり時として困難な工程である。最後に、この色素は高価で不安定なこともあり、この工程のコストと複雑さを増大させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上記欠点及びその他の欠点を克服できる位置合わせ及び焦点合わせ手段を備えた光学検出システム並びに方法を提供するのが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明の態様の一つは、マイクロ流体デバイス用の光学検出システムである。本システムは発光ダイオード(LED)と;LEDにより発せられた光を平行にするための手段と;非球面の溶融石英製対物レンズと;平行光を対物レンズを通してマイクロ流体デバイス上に向かわせるための手段と;マイクロ流体デバイスから発せられる蛍光信号を検出するための手段とを備える。システムは第2の外部光源を含むこともでき、これはLED又はレーザーでよい。対物レンズからマイクロ流体デバイスまでの作動距離の大きさは、LED又はレーザーからの光が対角経路に沿って取り込まれてマイクロ流体デバイスを照射できるような大きさとし得る。
【0007】
本発明の別の態様はドライフォーカス式マイクロ流体デバイスである。このデバイスは第1の基板と;第1の基板内に形成された複数のチャンネルであって、そのうちの少なくとも1つはマイクロ流体チャンネルである前記複数のチャンネルと;前記チャンネルから間隔を置いて第1の基板内に形成された湾曲壁を有する複数の光学位置合せマークと;覆われたチャンネルと閉鎖された光学位置合せマークとを形成するように第1の基板に接着される第2の基板とを備える。該チャンネルの少なくとも1つは光学位置合せマークのうちの少なくとも2つの間に配置される。
【0008】
ここで「マイクロ流体」なる用語は、0.1μm〜500μmのオーダーの断面寸法を有するチャンバー及び流路を定義するのに用いられる。マイクロ流体フローチャンネル及び流体操作領域の好ましい深さは、0.1μm〜100μm、一般に2.0μm〜50μmのオーダーである。チャンネルの好ましい幅は、2.0μm〜500μm、さらに好ましくは3.0μm〜100μmのオーダーである。多くの用途では、5.0μm〜50μmの幅のチャンネルが有用である。本デバイス中のチャンバーはしばしば更に大きな寸法、例えば数ミリメートルを有する。
【0009】
本発明の上記特徴及びその他の特徴は、添付図面(縮尺どおりではない)と共に現在のところ好ましい態様についての以下の詳細な説明を読めば更に明らかになる。詳細な説明と図面は本発明を限定するものではなく単なる説明であり、本発明の範囲は特許請求の範囲及びその等価物により定められる。
図面の簡単な説明
【0010】
図1は本発明による光学検出システムの一態様の略図である。
【0011】
図2は図1のシステムの励起光路を示す。
【0012】
図3は図1のシステムの検出光路を示す。
【0013】
図4は本発明による光学検出システムの別の態様の略図である。
【0014】
図5は本発明によるドライフォーカス式マイクロ流体デバイスの一態様の略図である。
【0015】
図6は図5のデバイスの検出領域の拡大略図である。
【0016】
図7は本発明による位置合せマーク1個の断面図である。
【0017】
図8A及び8Bは図6に示された2列の位置合せマークにより生成された光信号を示す。
【0018】
図9は本発明によるドライフォーカス式マイクロ流体デバイスの別の態様の略図である。
【0019】
図10は図9のドライフォーカス式マイクロ流体デバイスから得られた光学データのスクリーンキャプチャーである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の態様の1つは光学検出システムである。図1において本発明によるシステムの一態様を100で示す。限定するものではないが、この例では、システム100はLED光源110と;スリット120と;3つのスリットレンズ素子132、134及び136を有するスリットレンズ130と;励起帯域通過フィルター140と;ビームスプリッター150と;対物レンズ160と;除去フィルター170と;回折格子180と;CCDレンズ素子192及び194を有するCCDレンズ190と;CCDアレー195とを備える。レーザーでもLEDでもよい第2の光源を115で示す。マイクロ流体デバイスを165で示す。
【0021】
スリット120は後方からLED110により照射される。後で説明するように、このLEDはレーザー光源の代わりに、又はレーザー光源に加えて使用してもよい。LEDの大きさ、形状、波長及び出力レベルは変えることができる。現在のところ、UV、青色、シアン、及び緑色を含めて代表的には400〜750nmの放射波長を有する様々な色のLEDが利用できる。複数のLEDをシステムに搭載し、例えば電動機構付きの回転タレット内に配置し、検出される蛍光体ごとに選択してもよい。
【0022】
LED110からの光はスリット120を通過する。この態様のスペクトル分解能は分光計の場合と同様に感度に反比例する。したがって、より広いスリットを配置すると、感度は高くなるが色分解が劣化する。多くのアッセイでは、2又は3つの色帯域のみが必要とされるのでスリットをより広くして高い感度を得ることができる。
【0023】
LED110からの光はスリット120を通過後にスリットレンズ130により集められて平行にされる。スリットレンズ130は、光が対物レンズ160を通ってデバイス165に進む際に対物レンズ160に導入される軸色(axial color)を補償する。励起のためにマイクロ流体デバイス上に当てられたスリットの像が不鮮明になって空間分解能が損なわれることを防ぐために、色補正レンズが必要である。1より多い波長レンジについて、この例では350〜400nm及び430〜480nmについて色を補正できる。スリットからレンズまでの距離は、例えばユーザーが利用可能なソフトウエア制御を介して各レンジについて個別に設定される。
【0024】
スリットレンズ130はスリットレンズ素子132、134及び136を有する。この例では、各レンズ素子はカスタムデザインされ、UV透過性分散ガラスから作られる。スリットレンズ130はUV LEDから放出されるUV波長に合わせて設計される。スリットレンズ130はスリット120の鮮明な像をマイクロ流体デバイス165上に形成するように対物レンズ160と連携する。スリットレンズ素子132はHoyaガラス型式TAC6から作られ、そのエッジ直径は14mmであり、中心厚さは10.9mmである。スリットレンズ素子134はHoyaガラス型式NBFD12から作られ、直径は23mmで中心厚さは3.14mmである。スリットレンズ素子136は溶融石英から作られ、後で説明する対物レンズ160と同じものである。
【0025】
平らな二色性ビームスプリッター150(例えば、二色性ミラー)がLED110により発せられその時には平行にされている励起光を下方に向けて対物レンズ160を通ってマイクロ流体デバイス165上に送る前に、励起帯域通過フィルター140が所望の範囲の外側の周波数を減衰させる。完全な励起光路を図2に示す。
【0026】
対物レンズ160はカスタムデザインの高性能溶融石英製対物レンズであり、開口数(NA)が0.5であり、集められた光の全体の円錐角が60°である。図1から分かるように、対物レンズは励起光を送るだけでなく、蛍光を集め平行化することも行なわなければならない。光の収集効率はほぼNAの二乗で大きくなる。対物レンズ160の高い収集効率によって使用パワーをさらに小さくできるので、LED110などの安価な光源が使用できる。
【0027】
対物レンズ160は落射蛍光モードで使用されるのでアッセイ感度を制限する望ましくないバックグランド蛍光を低減するために、対物レンズ160は溶融石英からなる単一素子である。このレンズは分散が有限の単一材料から作られるので、その焦点距離は波長の影響をわずかしか受けない。このレンズのエッジ直径は27mmであり、厚みは15.02mmである。レンズのエッジは45°で傾斜し、0.5mmの最大フェイス幅になっている。レンズの背面は球面収差を補正するために非球面となている。システムの開口絞りがレンズの裏側に配置されており、そこからCCDアレーまで背景がぼけるということはない。
【0028】
対物レンズ160は、近軸焦点に像を有する近軸レンズでモデル化することにより単一波長(550nm)にて最適化した。物体平面は、溶融石英から作られた平行板、すなわちマイクロ流体デバイスの上部から700μm下に存在するとしてモデル化した。よって、対物レンズは無限遠で像を形成するよう最適化した。オブジェクトフィールドのすべての点は等しく重み付けした。
【0029】
この例では、対物レンズ160からマイクロ流体デバイス165までの作動距離は16mmである。対物レンズの直径(27mm)とこの作動距離から、外部のレーザービームを例えば45°の角度で取り込んで照射するための隙間を得ることができる。本発明の態様と共に様々なレーザーを使用できる。例えば、青色LEDを赤色レーザーと組み合わせてもよい。1つのLEDと同一直線上に取り込んだ1つ以上のレーザービームとを同時に使用することもできる。後で詳しく述べるように、位置合わせ及び焦点合わせの目的のために第2のLEDからの光を対角経路に沿って外部から取り入れることもできる。光源115はレーザー又はLED光源を表す。
【0030】
対物レンズ160からマイクロ流体デバイス165までの作動距離はまた、広い(3.4mm)視野を提供するので、200μm間隔で最大16個のチャンネル又は150μm間隔で最大20個のチャンネルにおいて蛍光の測定が可能になる。
【0031】
検出光路の全体を図3に示す。システム100は400nm〜750nmの範囲の放射波長に適応する。図から分かるように、マイクロ流体デバイス165から放出された蛍光信号は二色性ミラー150を通過し、反射は最小限に抑えられる。除去フィルター170は励起光が検出路に沿って伝送されるのを防止する。
【0032】
検出路の除去フィルター170に次に回折格子180があり、この回折格子180は、蛍光をその成分色に分散させて独立に検出できるようにするために用いられる反射防止コーティングされたBK7ブレーズド回折格子である。回折格子のブレーズ角は、可視光の透過が1次に最適化されるように選択する。好ましくは、0次と2次はCCDアレー196に当てられない。
【0033】
対物レンズ160はシングレットなので、主に軸色の形式の色収差を導入する。これらの収差はCCDレンズ192及び194で補正される。この軸色はまた、CCDレンズ192及び194のみならずCCDアレー196も傾斜させることによって部分的に補正される。この回転角は15°未満(オフノーマル)に制限される。回折格子180によって色がCCDアレー196全体に広がっているので、CCDアレー196を傾斜させることで軸色が補正される。
【0034】
CCDレンズ190はCCDレンズ素子192及び194を有する。レンズ素子192はエッジ直径が16.5mmで厚みが7.63mmの視野レンズである。CCDレンズ素子194は分散特性で選択された種々のガラスからなるトリプレットである。励起光はこれらのCCDレンズを通過しないので、CCDレンズを低蛍光ガラスで作る必要はない。CCDレンズ194の全体のエッジ直径は40mmであり、厚みはレンズの3部分について14.0mm、2.5mm及び2.5mmである。
【0035】
CCDアレー195は検出器として機能する。この例でのアレーの構成は658×496ピクセルで、ピクセルサイズが7.4μmである。ピクセルのグループ化はソフトウエアインターフェースを介してプログラム可能である。実際の実験で検出器を使用する前に、ユーザーは所望の検出帯域を選択することができる。一般に、検出帯域はマイクロ流体デバイス165上のチャンネルの位置に対応する。上述したように、この態様では、200μm間隔で最大16個のチャンネル又は150μm間隔で最大20個のチャンネルから蛍光を誘発させ読み取るように設計した。検出器により使用される検出帯域は、下記説明する技術を用いてチャンネルに整列させることができる。実験の過程において、検出器出力は2次元アレーとなり、チャンネルがアレーの一方の軸を形成し、検出された色がもう一方の軸を形成する。例えば、マイクロ流体デバイス中の12個のチャンネルから発せられる緑色及び赤色の蛍光を検出するよう設計されたシステムは12×2アレーを出力する。
【0036】
当業者には多様な方法で本発明による光学検出システムを変更できることが分かるであろう。例えば、直径、開口数、焦点距離及び材料を含めて本システムで用いられるレンズの設計パラメータは、対物レンズが好ましくは溶融石英であることを除いて、変えることができる。光源もまた、使用されるCCDとレーザー光源との様々な組み合わせに応じて変えることができる。CCDアレーの構成も同様に変えることができる。
【0037】
その他の変更も同様に行なってよい。例えば、図4は多スペクトルではない更に安価な代替の態様を示す。限定するものではないが、この例では上述したカスタムデザインの高開口数対物レンズと共に市販のコンポーネントを使用している。システム400はLED光源410と、励起帯域通過フィルター413により分離された集光レンズ412及び414と、スリット420と、単一スリットレンズ430と、ビームスプリッター450と、カスタムデザインの高開口数対物レンズ460と、折り畳みミラー470と、放射帯域通過フィルター494によりCCDアレー496から分離されたCCDレンズ492とを備える。対物レンズ460とマイクロ流体デバイス(図4において465で図示)との作動距離は前の例と同様であり、LEDのみならずレーザーとも本システムを使用可能にする。励起光路と検出光路の両方が図4に示される。
【0038】
LED光源410は青色LED(例えば、Cree XLamp 7090 LED)である。集光レンズ412は単層MgFコーティングされたB270ガラスを用いて作られた有効焦点距離が12mmで15mm径のレンズである(例えばNewport Corp.から入手可能)。レンズ412の有効焦点距離は12mmである。集光レンズ414は1/4波MgFコーティングされたBK7ガラスを用いて作られた25mm径のレンズである(例えばEdmund Opticsから入手可能)。レンズ414の有効焦点距離は30mmである。励起帯域通過フィルター413は中心波長が470nm、直径が25mm、厚みが5mmとなるようにNBK7ガラスから作られる(例えばSemrockから入手可能)。
【0039】
スリット420は500μmのクロムコーティングされたソーダ石灰ガラススリットであり、その直径は25.4mmで厚みが1.5mmである(例えばLenox Laserから入手可能)。スリットレンズ430は1/4波MgFコーティングされたSF5ガラスを用いて作られた有効焦点距離が27mmで18mm径のレンズである(例えばEdmund Opticsから入手可能)。
【0040】
ビームスプリッター450は拡張帯域の二色性ビームスプリッターである(例えばSemrockから入手可能)。対物レンズ460は、符号160で示される上記説明しカスタムデザインの高開口数対物レンズである。折り畳みミラー470は標準的な市販の折り畳みミラーである。
【0041】
CCDレンズ492は、例えば、Rolera-XR CCDカメラ、すなわちCCDアレー496と共に使用されるNikon 50mm f1.4レンズである。放射帯域通過フィルター494は中心波長が531nm、直径が25mm、厚みが5mmとなるようにNBK7ガラスから作られる(例えばSemrockから入手可能)。
【0042】
実際、本発明による光学検出システムは既存のシステムに対して多くの利点をもたらす。例えば、このレンズのレイアウトにより、励起光を落射蛍光システムのように軸方向に送るか、又は外部から斜角にて送ることが可能になる。カスタムデザインの溶融石英製対物レンズの高開口数により、LEDの形式の低価格の低出力光源を使用することが可能になる。例えば、青色LEDの価格は約25ドルであり、青色レーザーの価格は約10,000ドルである。このレンズシステムではまた、複数のCCDではなく単一のCCDを使用でき、さらに費用を削減できる。一般的な光学検出システムよりも低価格であることに加えて、この所望のシステムは更に小型である。本発明によるシステムは費用が安くサイズも小さいので、種々の色の複数のLEDを図1に示されるようなシステムに組み込むことができるので、励起色の組み込みにおける柔軟性が得られる。検出波長はユーザーが利用可能なソフトウエア制御により設定できる。
【0043】
この態様による光学検出システムの別の利点は、位置合わせ及び焦点合わせのために、第2のLEDからの光を外部から斜角にてマイクロ流体デバイスに送り込むことができることである。流れる蛍光色素を使用することに伴う問題を解決するために、上記説明してきた光学検出システムをドライフォーカス式マイクロ流体デバイスと組み合わせて分析装置を構成することもできる。
【0044】
本発明によるドライフォーカス式マイクロ流体デバイスの態様の1つを図5において500で示す。当業者は、対象とするデバイスの使用法に依存してチャンバー及び流路の数及び配置が変わり得ることを理解するであろう。ドライフォーカス式デバイスの少なくとも1つのチャンネルはマイクロ流体チャンネルである。
【0045】
図5の検出領域515を拡大して図6に示す。検出領域515は12個のチャンネルと2列に配置した総計22個の光学位置合せマークとを含み、光学位置合せマークの2つの列は互いに平行であると共にチャンネルの外側に対しても平行に配置され、1列当たり11個のマークが示されているが、図6に示されたチャンネルの数は、個々の素子がよく見えるように4個に減らしてある。図6に示されるように、チャンネル610間の間隔611(すなわちチャンネルのピッチ)は12個以下のチャンネルの場合には200μmであり、13〜16個チャンネルでは150μmである。マーク620間の間隔621は100μmである。マーク620と隣接チャンネル610との距離(622で示す)は、チャンネルの数及びピッチに関係なく200μm以上である。公称照射長さ630は500μmである。公称検出中心は640で示される。
【0046】
一般に、チャンネルは、当該技術において公知の標準的なフォトリソグラフィー法を用いて基板にエッチングされる。位置合せマークもまた、基板にエッチングされ、チャンネルと同じ深さとし得る。この態様では、マーク620は10x10μmの正方形のマスクを用いて形成されるので、マスクよりもやや大きな位置合せマークが得られる。位置合せマーク620を作る際には等方性エッチ液が用いられるので、平坦な底と湾曲壁とを有するマークが得られる。例えば、図7には単一の位置合せマーク620の断面図が示されている。一般に、エッチングされた基板には、第2の基板又はカバー625が接着されて、覆われたチャンネル610と閉鎖された光学位置合せマーク620とを形成する。
【0047】
白色LEDを用いて位置合せマーク620を照射する。LEDからの光615を対角経路に沿って外部から取り入れる。上述したように、上記説明してきたような光学検出システムは、このような対角経路が得られるようにデバイスより上に間隔をあけて対物レンズを備えて構成される。図7に示されるように、照射及び検出のために、マイクロ流体デバイスは、位置合せマークの底を光学素子系に最も近接させて配置される。白色LEDからの光615は、光を光学検出システムの対物レンズに向ける角度にて湾曲壁で反射する。デバイス表面は実質的には平らなので、斜角にて送り込まれた光はこれらの表面から反射して対物レンズに入ることはない。位置合せマークと同時にエッチングされ、よって同じカーブを有するチャンネルは、液体で満たされるので実質的には目に見えないので、光は湾曲壁から反射されるよりもむしろ、チャンネル壁を透過することができる。一般にマイクロ流体デバイスには使用前に緩衝液又は他の液体が注入されることが当業者には知られている。
【0048】
図8Aは、上記説明し図6にも示した2列の位置合せマークによって生成される光信号を示す。この図から分かるように、各マーク列は明確なピーク810を生成する。1列には任意の数の位置合せマークを含ませことができるが、マイクロ流体デバイス上又はマイクロ流体デバイス内の塵又は他の小欠陥の斑点によって生成されるピークから容易に区別できるピークを生成するためには、複数の位置合せマークを使用するのが好ましいことは当業者には理解できよう。図8Bは、位置合せマーク810と共に、デバイス上又は内の欠陥により生成されるピーク815も示す。この図から分かるように、位置合せマーク810の列により生成されるピークは、欠陥により生成されるピーク815よりもかなり大きい。
【0049】
図8A及び8Bに示されるような区別可能な位置合わせピークにより、オートフォーカス・アルゴリズムが2つの最大ピークを簡単に探すことができる。オートフォーカス・アルゴリズムは位置合せマークの各列から隣接チャンネルまでの距離及びチャンネルのピッチについてだけでなく2列の位置合せマークの間の距離についてのデータも提供するので、光学検出システムは位置合せマークに対して焦点合わせ及び位置合わせがされ、次いでマイクロ流体チャンネルに対して位置合わせに適した距離に配置され得る。よって、オートフォーカスアルゴリズムは、小さいピークを除くと共に予想されるピークの間隔を検証することによって欠陥に対して頑強にすることができる。
【0050】
当業者は本発明によるドライフォーカス式マイクロ流体デバイスは多様な方法で変更し得ることを理解するであろう。例えば、本発明の態様は多チャンネルマイクロ流体デバイスだけでなく単一チャンネルマイクロ流体デバイスでも使用できる。位置合わせ及び焦点合わせの制御は、オートフォーカス・アルゴリズムによる自動的制御でなく、手動でも行なえる。位置合せマークはエッチングで形成する必要はなく、基板に対するスタンピング、エンボス加工、モールディング及びレーザーアブレーションなどのような他の方法によって形成することもできる。マークの数は変えることができる。同様にマークの形状も変えることができるが、形状とサイズは上記態様に対して最適化した。マークの深さは重要ではなく、変えてもよい。チャンネルに平行な方向に沿っての正確な位置もまた重要ではない。チャンネルの完全性が損なわれる程にマークがチャンネルに近接して配置されないならば、チャンネルに対するマークの配置もまた変えることができる。複数の異なる波長の光を用いて光学位置合せマークを照射することができる。加えて、固体蛍光物質を光学位置合せマーク内に配置し、マークが生成する光信号を強めることもできる。
【0051】
様々な異なるパターンを光学位置合せマークに使用できる。例えば、図9に示す代替態様では、4つのチャンネル920各々の間、及び各外側チャンネルの外側に位置合せマーク910を配置したパターンを有する。図9において4つのチャンネル各々が上半分にて3つのチャンネルに枝分かれしている。図10に示されたスクリーンキャプチャーは、上記説明したようなCCDアレーから得られるライン・モード・データを含む。位置合せマーク910からの光の反射により生成される5つのピークが光学検出システムからのCCDライン・モードデータ上で中心に配置される場合には、ドライフォーカス式マイクロ流体デバイス上のチャンネル920からの蛍光信号を感知する上で白色帯域が正しく位置決めされている。
【0052】
本発明の別の態様は光学検出システムを位置合わせ及び焦点合わせする方法である。複数のチャンネルと複数の光学位置合せマークとを有するマイクロ流体デバイスが提供される。チャンネルの少なくとも1つはマイクロ流体チャンネルである。好ましくは光学位置合せマークは、等方性エッチ液と10x10μmの正方形マスクとを用いて基板にマークをエッチングすることにより形成した。光学位置合せマークの上部よりも底部の方が光学検出システムの光学素子系により近くなるように、本デバイスを光学検出システムの光学素子系に対して配置する。外部の白色LEDからの光を斜角にて取り込んで光学位置合せマークを照射する。光学検出システムのデータ収集はライン・モードに設定される。システムは光学位置合せマークから反射する光を用いて位置合わせを行なう。システムは光学位置合せマークから反射する光を用いて焦点合わせを行なう。光学検出システムを位置決めしてチャンネルからの蛍光信号を感知するために、光学位置合せマークの位置について得られたデータが、チャンネルに対する光学位置合せマークの間隔についてのデータ(光学検出システム内に存在)と組み合わされる。
【0053】
本発明の態様は公知の方法及び装置に対して幾つかの利点をもたらす。利点の1つは、本発明では光学位置合わせ及び焦点合わせを行なうために色素をチャンネルに流す必要がないことである。色素を流さないので、高価で不安定な色素を使用しなくてよく、色素の通過を待つ必要がなく、位置合わせ及び焦点合わせの後で色素を洗い流す必要もない。
【0054】
ここで開示した本発明の態様は現時点では好ましいと考えられるが、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行なうことができる。本発明の範囲を特許請求の範囲に示すが、等価物の意味及び範囲に入るすべての変更及び修正もその中に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による光学検出システムの一態様の略図である。
【図2】図1のシステムの励起光路を示す。
【図3】図1のシステムの検出光路を示す。
【図4】本発明による光学検出システムの別の態様の略図である。
【図5】本発明によるドライフォーカス式マイクロ流体デバイスの一態様の略図である。
【図6】図5のデバイスの検出領域の拡大略図である。
【図7】本発明による位置合せマーク1個の断面図である。
【図8】図8A及び8Bは図6に示された位置合せマークの2つのアレーにより生成される光信号を示す。
【図9】本発明によるドライフォーカス式マイクロ流体デバイスの別の態様の略図である。
【図10】図9のドライフォーカス式マイクロ流体デバイスから得られる光学データのスクリーンキャプチャーである。
【符号の説明】
【0056】
100 光学検出システム
110 LED光源
120 スリット
130 スリットレンズ
140 励起帯域通過フィルター
150 ビームスプリッター
160 対物レンズ
165 マイクロ流体デバイス
170 除去フィルター
180 回折格子
190 CCDレンズ
195 CCDアレー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードと;
発光ダイオードにより発せられる光を平行にするための平行化手段と;
非球面の溶融石英製対物レンズと;
平行光を対物レンズを通してマイクロ流体デバイス上に向かわせるための方向付け手段と;
マイクロ流体デバイスから発せられる蛍光信号を検出するための検出手段と
を備えるマイクロ流体デバイス用の光学検出システム。
【請求項2】
前記対物レンズの開口数が0.5である請求項6に記載のシステム。
【請求項3】
前記平行化手段がスリットとスリットレンズとを有する請求項6に記載のシステム。
【請求項4】
前記方向付け手段が二色性ビームスプリッターを有する請求項6に記載のシステム。
【請求項5】
前記検出手段がCCDを有する請求項6に記載のシステム。
【請求項6】
CCDレンズを更に備える請求項10に記載のシステム。
【請求項7】
前記CCDレンズがトリプレットレンズ素子を有する請求項12に記載のシステム。
【請求項8】
集光レンズ、励起帯域通過フィルター、除去フィルター、回折格子、ビームスプリッター、折り畳みミラー、及び放射帯域通過フィルターのうち1つ以上を更に備える請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記LEDから発せられる光が軸方向に前記マイクロ流体デバイスまで送られる請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
外部光源を更に備える請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記対物レンズから前記マイクロ流体デバイスまでの作動距離の大きさが、前記外部光源から斜角にて送り込まれた光によって前記マイクロ流体デバイスが照射されるような大きさである、請求項15に記載のシステム。
【請求項12】
前記対物レンズから前記マイクロ流体デバイスまでの作動距離が16mmである請求項16に記載のシステム。
【請求項13】
前記外部光源が発光ダイオード及びレーザーのうちの一方である請求項15に記載のシステム。
【請求項14】
前記マイクロ流体デバイスが請求項1に記載のドライフォーカス式マイクロ流体デバイスであり、前記位置合せマークが前記外部光源により照射される、請求項15に記載のシステム。
【請求項15】
前記外部光源が白色LEDである請求項19に記載のシステム。
【請求項16】
コンピュータ使用可能な媒体を更に備える請求項19に記載のシステム。
【請求項17】
前記コンピュータ使用可能な媒体がオートフォーカス・アルゴリズムを有するプログラムを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項18】
前記コンピュータ使用可能な媒体が検出波長を設定するためのコンピュータプログラムコードを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項19】
前記コンピュータ使用可能な媒体がスリットからレンズまでの距離を設定するためのコンピュータプログラムコードを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項20】
光学検出システムの位置合わせ及び焦点合わせを行なうための方法であって、
複数の光学位置合せマークと基板中にエッチングされた複数のチャンネルとを有するマイクロ流体デバイスを提供し、前記チャンネルの少なくとも1つはマイクロ流体チャンネルであり;
前記光学位置合せマークの上部よりも底部が前記光学検出システムの光学素子系に近くなるように、前記光学検出システムの光学素子系に対して前記デバイスを配置し;
外部の白色LEDからの光を斜角にて取り込んで前記光学位置合せマークを照射し;
前記光学検出システムのデータ収集をライン・モードに設定し;
前記光学位置合せマークから反射された光を用いて前記光学検出システムの位置合わせを行い;
前記光学位置合せマークから反射された光を用いて前記光学検出システムの焦点合わせを行い;
前記光学位置合せマークについてのラインデータを、前記チャンネルに対する前記光学位置合せマークの間隔についての光学検出システム内常駐のデータと組み合わせて前記チャンネルからの蛍光信号を感知するように前記光学検出システムを配置することからなる方法。
【請求項21】
前記光学位置合せマークが等方性エッチ液と10x10μmの正方形のマスクとを用いて前記基板中にエッチングされる、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−141286(P2011−141286A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35075(P2011−35075)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【分割の表示】特願2008−506797(P2008−506797)の分割
【原出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(506076709)カリパー・ライフ・サイエンシズ・インク. (11)
【Fターム(参考)】