説明

マイクロRNA模倣剤または阻害剤としての非対称性RNA二重鎖の組成物

本発明は、鎖長が非対称である二本鎖RNA分子を提供する。本発明のRNA分子である、非対称性RNA二重鎖は、末端に1つまたは2つの突出を有する。一態様において、これらの新規のRNA二重鎖分子は、miRNAの有効な模倣剤として役立つ。別の態様において、これらは、miRNAの有効な阻害剤として機能するように設計される。したがって、本発明のRNA分子を用いてmiRNA経路の活性を調節することができ、これは、研究、薬剤発見および開発、ならびにヒト疾患の治療に多大な意義を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2007年8月27日に出願された米国仮特許出願第60/968,257号、2008年2月19日に出願された米国仮特許出願第61/029,753号、および2008年3月24日に出願された米国仮特許出願第61/038,954号の利益を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
マイクロRNA(miRNA)は、翻訳レベルにおいて遺伝子発現を調節することがまず発見され、細胞のRNA干渉(RNAi)機構の一部である、内因性の小RNA分子のクラスである。まずCaenorhabditis elegansにおいて発見されたmiRNAは、植物およびヒトを含む動物の両方において見出されている。多くのmiRNAの配列が異なる生物間で相同であることにより、miRNAは、比較的古く重要な調節経路を代表することが示唆される(非特許文献1)。DNAから転写されるが、タンパク質には翻訳されない遺伝子によりコードされるmiRNA(非タンパク質コードRNA)は、哺乳動物遺伝子の最大30%を調節している(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。近年の研究では、miRNAが、翻訳を遮断するかまたは転写物を分解することによりタンパク質の生成を抑制し、これにより遺伝子の発現を調節することが分かっている。単一のmiRNAは、250〜500種の異なるmRNAを標的とすることが可能であり、このクラスのRNAが、広範な細胞機能の極めて重要なメディエーターであることを裏付けている。miRNAによって調節される遺伝子の多くは疾患原因遺伝子であり、したがって、miRNAの機能性を調節する任意の機構は、大きな治療的潜在力を有する。
【0003】
動物において、miRNAは、まず、一次miRNA(pri−miRNA)と呼ばれるRNA転写物としてゲノムから発現される。これらはRNAポリメラーゼIIにより転写され、ヘアピン構造を形成する可能性が高い。核内において、dsRNA特異的リボヌクレアーゼであるDroshaにより、pri−miRNAは、pre−miRNAとして知られる、約70〜100ヌクレオチド長のより短いステムループ構造へとプロセシングされ、次いで、これが、おそらくエクスポーチン5(Exp5)により細胞質内へと輸送される(非特許文献5)。細胞質内において、RNaseIIIリボヌクレアーゼファミリーのメンバーであるDicerにより、pre−miRNAは、両末端に3’突出を有する二本鎖のガイド/パッセンジャー(miRNA/miRNA)二重鎖に切断される。miRNA二重鎖の二本鎖は、それらの配列の不完全な相補性によりミスマッチを有することが多く、それらが分離されるとき、多くの場合に約19〜23ヌクレオチド長である成熟miRNAには、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)または類似のタンパク質複合体が結合する。RISCはまた、小さいかまたは短い干渉RNA(siRNA)を介する標的特異的なmRNA分解を実施するタンパク質複合体でもある。
【0004】
現時点では、miRNA二重鎖または一本鎖の成熟miRNAがどのような形でRISCと相互作用するのか完全に明らかというわけではないが、RISCの触媒成分であるargonauteによりガイド鎖として選択されると、成熟miRNAは該複合体内に組込まれ、完全にではないことが多いが著明に相補的な配列を有するメッセンジャーRNA(mRNA)分子に結合する。パッセンジャー鎖であるmiRNAは、分解される可能性が高い。次いで、miRNA−RISC複合体により結合されたmRNAの翻訳が抑制される結果、対応する遺伝子の発現が低下する。場合によって、結合されたmRNAは切断されるか、または脱アデニル化されて分解される。
【0005】
本明細書で引用される参考文献は、優先権が主張される本発明に対する先行技術として容認されるわけではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Grosshansら、J Cell Biol、第156巻、17〜21頁(2002年)
【非特許文献2】Czech、NEJM、第354巻、1194〜1195頁(2006年)
【非特許文献3】Mack、Nature Biotech.、第25巻、631〜638頁(2007年)
【非特許文献4】Eulalioら、Cell、第132巻、9〜14頁(2008年)
【非特許文献5】Yiら、Genes Dev.、第17巻、3011〜3016頁(2003年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、本明細書において「非対称性干渉RNA」(aiRNA)と称する新たなクラスの二重鎖RNAが、哺乳動物細胞におけるmiRNA活性を有効に調節しうるという発見をめぐる発明である。この新たなクラスのRNAの特徴は、2本のRNA鎖間における非対称的な長さである。本発明は、鎖長が非対称である二本鎖RNAを構築することで、細胞内におけるmiRNAを模倣または阻害し、miRNA経路の活性を両方向、すなわち上方および下方へと調節しうるという証拠を提供する。
【0008】
一態様において、本発明は、マイクロRNA(miRNA)の模倣剤であって、以下:第1の長さの第1鎖と第2のより短い長さの第2鎖とを含む二本鎖RNA分子であって、前記第1鎖が前記miRNAの少なくとも一部と実質的に同じ配列を有し、前記第1鎖および第2鎖が少なくとも1つの二本鎖領域を形成するように互いに実質的に相補的であり、1〜10ヌクレオチドの末端突出をさらに含む二本鎖RNA分子、を含むマイクロRNA(miRNA)の模倣剤を提供し、前記模倣剤は少なくとも1つの遺伝子の発現の調節において前記miRNAを模倣するように適合されている。
【0009】
好ましい態様において、本発明は、成熟マイクロRNA(miRNA)の模倣剤を提供し、該模倣剤は、15〜28ヌクレオチドの第1鎖と12〜26ヌクレオチドのより短い第2鎖とを含む二本鎖RNA分子であって、前記第1鎖が前記成熟miRNAの少なくとも一部と実質的に同じ配列を有し、前記第1鎖および第2鎖が少なくとも1つの二本鎖領域を形成するように互いに実質的に相補的であり、前記第1鎖が1〜8ヌクレオチドの3’突出と1〜8ヌクレオチドの5’突出とをさらに含む二本鎖RNA分子を含み、前記模倣剤は、少なくとも1つの遺伝子の発現の調節において前記成熟miRNAを模倣するように適合される。
【0010】
一特徴において、本発明の模倣剤により模倣されるmiRNAは、ガイド鎖または成熟miRNAである。一実施形態において、該miRNAは、成熟miRNAおよびこれと実質的に相補的なパッセンジャー鎖を含む内因性miRNA二重鎖であり、前記模倣剤の前記第2鎖が前記パッセンジャー鎖の少なくとも一部と実質的に同じ配列を有する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、第1の長さの第1鎖と第2のより短い長さの第2鎖とを含む二本鎖RNA分子であって、前記第1鎖が標的miRNAの少なくとも一部と実質的に相補的な配列を有し、前記第1鎖および第2鎖が少なくとも1つの二本鎖領域を形成するように互いに実質的に相補的であり、1〜10ヌクレオチドの末端突出をさらに含む二本鎖RNA分子を含むマイクロRNA(miRNA)の阻害剤を提供し、前記阻害剤が前記標的miRNAを阻害するように適合される。
【0012】
また、好ましい態様において、本発明は、15〜28ヌクレオチドの第1鎖と12〜26ヌクレオチドのより短い第2鎖とを含む二本鎖RNA分子であって、前記第1鎖が前記成熟miRNAの少なくとも一部と実質的に相補的な配列を有し、前記第1鎖および第2鎖が少なくとも1つの二本鎖領域を形成するように互いに実質的に相補的であり、前記第1鎖が1〜8ヌクレオチドの3’突出と1〜8ヌクレオチドの5’末端突出とをさらに含む二本鎖RNA分子を含む成熟マイクロRNA(miRNA)の阻害剤を提供し、前記阻害剤は前記標的miRNAを阻害するように適合される。
【0013】
一特徴において、本発明の阻害剤により標的とされるmiRNAは、ガイド鎖または成熟鎖である。一部の実施形態において、本発明の阻害剤は、少なくとも約30%、50%、70%、80%、または90%だけ成熟miRNA量を低下させることが可能である。
【0014】
一特徴において、本発明の模倣剤および阻害剤は、前記第1鎖と第2鎖との間において、配列がミスマッチするかまたはマッチしない少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含む。一実施形態において、該ミスマッチするかまたはマッチしない少なくとも1つのヌクレオチドは、ループを形成する。代替的な実施形態において、模倣剤および阻害剤における該第1鎖および第2鎖は、前記二本鎖領域において互いに完全に相補的である。
【0015】
本発明の模倣剤および阻害剤の末端突出は、一部の実施形態において1〜8ヌクレオチドであり、他の一部の実施形態において1〜3ヌクレオチドである。該末端突出は3’突出でありえ、好ましい実施形態において、より長い鎖である該第1鎖上にある。別の実施形態において、該末端突出は5’突出であり、好ましい実施形態において、該第1鎖上にある。一部の実施形態において、該模倣剤および阻害剤は、前記第1鎖上において、3’突出および5’突出の両方を有し、前記3’突出および5’突出の両方が、1〜3ヌクレオチドであることが好ましい。別の実施形態において、本発明の模倣剤および阻害剤は、一方の末端上に1つの末端突出を、他の末端上に平滑末端を有する。
【0016】
模倣剤の各種の実施形態において:前記第1鎖(より長い鎖)は13〜100ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖は5〜30ヌクレオチドの長さを有し;前記第1鎖は15〜30ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖は12〜29ヌクレオチドの長さを有し;前記第1鎖は15〜28ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖は12〜26ヌクレオチドの長さを有し;前記第1鎖は19〜25ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖は12〜24ヌクレオチドの長さを有し;前記第1鎖は19〜23ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖は14〜20ヌクレオチドの長さを有する。
【0017】
阻害剤の各種の実施形態において:前記第1鎖(より長い鎖)は10〜100ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖は5〜30ヌクレオチドの長さを有し;前記第1鎖は15〜60ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖は5〜28ヌクレオチドの長さを有し;前記第1鎖は15〜28ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖は12〜26ヌクレオチドの長さを有し;前記第1鎖は19〜25ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖は12〜20ヌクレオチドの長さを有する。
【0018】
一特徴において、本発明の模倣剤および阻害剤では、前記第1鎖が、前記第2鎖よりも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10ヌクレオチドからなる群から選択される長さだけ長い。
【0019】
一特徴において、本発明の模倣剤および阻害剤では、前記末端突出が分解に対して安定化される。
【0020】
一特徴において、模倣剤および阻害剤は、前記第1鎖および第2鎖の少なくとも1つにおいて少なくとも1つのニックをさらに有する。別の特徴において、模倣剤または阻害剤の二本鎖領域は、1つまたは複数の対合されないヌクレオチドのギャップをさらに含む。
【0021】
一特徴において、模倣剤および阻害剤は、修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を含む。別の特徴において、それらは、少なくとも1つのデオキシヌクレオチドを含み、それは、3’突出、5’突出、および二本鎖領域からなる群から選択される1つまたは複数の領域内に存在しうる。
【0022】
一特徴において、本発明の模倣剤では、前記第1鎖が、前記miRNAの少なくとも前記一部と少なくとも60パーセント、または一部の実施形態において少なくとも70パーセント同じ配列を有する。一実施形態において、模倣剤の前記第1鎖は、前記miRNAと同じシード領域を有する。
【0023】
一特徴において、本発明の阻害剤では、前記第1鎖が、その標的miRNAの少なくとも前記一部と少なくとも60パーセント、または一部の実施形態において少なくとも70パーセント相補的な配列を有する。
【0024】
一実施形態において、本発明の模倣剤および阻害剤内の二本鎖領域のGC含量は、約20〜60%であるか、または好ましくは、約30〜50%である。
【0025】
模倣剤および阻害剤の一実施形態において、前記第1鎖は、A、U、およびdTからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチドを有する配列モチーフを含む。さらなる一実施形態において、5’突出は、配列モチーフ「AA」、「UU」、または「dTd」を有する。一特徴において、本発明の模倣剤および阻害剤は、ペプチド、抗体、ポリマー、脂質、オリゴヌクレオチド、コレステロール、およびアプタマーからなる群から選択される実体とさらにコンジュゲートしている。
【0026】
本発明の模倣剤および阻害剤の一特徴において、該二本鎖RNA分子は、合成であるかまたは単離される。一実施形態において、本発明の二本鎖RNA分子は、模倣剤または阻害剤のいずれであれ、組換えベクターまたはその後代から転写される。
【0027】
一特徴において、本発明の模倣剤は、前記少なくとも1つの遺伝子の発現を、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%調節するように適合される。一実施形態において、本発明の模倣剤は、Let7ファミリーのmiRNAを模倣する。
【0028】
一実施形態において、本発明の模倣剤は、以下の二重鎖配列:
【0029】
【化1】

の1つを含む。
【0030】
別の実施形態において、本発明の阻害剤は、以下の二重鎖配列:
【0031】
【化2】

の1つを含む。
【0032】
一態様において、本発明は、本発明の模倣剤および阻害剤の二本鎖RNA分子の少なくとも第1鎖をコードするDNA配列であって、発現制御配列、例えば、プロモーターに作動可能に連結したDNA配列を含む発現ベクターを提供する。
【0033】
一実施形態において、発現ベクターは、本発明の模倣剤および阻害剤の二本鎖RNA分子の少なくとも第2鎖をコードする第2のDNA配列であって、第2のプロモーターに作動可能に連結した第2のDNA配列をさらに含む。
【0034】
一態様において、本発明は、上記発現ベクターを含む細胞を提供する。別の態様において、本発明は、本発明の二本鎖RNA分子を含む細胞を提供する。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、マイクロRNA(miRNA)の模倣剤を作製する方法であって、miRNA配列を選択するステップと、前記miRNA内の連続するヌクレオチドの少なくとも一部と実質的に同じ領域を有する第1のRNA鎖を合成するステップと、第2のより短いRNA鎖を合成するステップと、前記RNA分子が、少なくとも1つの遺伝子の発現の調節において前記miRNAを模倣することが可能となるように、少なくとも1つの末端突出を有する二本鎖RNA分子を形成するのに適する条件下で、合成された鎖を混合するステップとを含む方法を提供する。
【0036】
別の態様において、本発明は、標的マイクロRNA(miRNA)の阻害剤を作製する方法であって、標的miRNA配列を選択するステップと、前記標的mRNA内の少なくとも一部の連続するヌクレオチドと実質的に相補的な領域を有する第1のRNA鎖を合成するステップと、第2のより短いRNA鎖を合成するステップと、前記RNA分子が、前記標的miRNAを阻害することが可能となるように、少なくとも1つの末端突出を有する二本鎖RNA分子を形成するのに適する条件下で、合成された鎖を組み合わせるステップとを含む方法を提供する。
【0037】
一特徴において、本発明による模倣剤または阻害剤を作製する方法は、以下のステップ:前記少なくとも1つの末端突出を分解に対して化学修飾するステップと、前記二本鎖RNA分子内に少なくとも1つのデオキシヌクレオチドを導入するステップと、前記二本鎖RNA分子内に少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を導入するステップと、前記二本鎖領域内に、少なくとも1つのミスマッチ、ニック、またはギャップを導入するステップと、前記第1鎖および第2鎖の少なくとも1つを、ペプチド、抗体、ポリマー、脂質、オリゴヌクレオチド、コレステロール、およびアプタマーからなる群から選択される実体とコンジュゲートさせるステップと、該鎖の1つにおける少なくとも1つの塩基を修飾するステップの1つまたは複数をさらに含む。一実施形態において、模倣剤または阻害剤を作製する方法は、合成するステップの間、合成するステップの後から組み合わせるステップの前まで、または組み合わせるステップの後において、二重鎖RNA分子内に少なくとも1種の修飾ヌクレオチド類似体を導入するステップをさらに含む。
【0038】
一特徴において、模倣剤または阻害剤を作製する方法では、少なくとも1つのRNA鎖が酵素的または生物学的に合成される。一部の実施形態において、該第1鎖および該第2鎖は、別々にまたは同時に合成される。
【0039】
別の態様において、本発明は、細胞または生物におけるmiRNA経路を調節する方法であって、前記miRNAの前記模倣を行うことができる条件下で、前記細胞または生物を本発明の模倣剤と接触させるステップと、前記模倣剤を用いて少なくとも1つの遺伝子の発現を調節し、これにより、内因性miRNA経路を調節するステップとを含む方法を提供する。一実施形態において、該模倣剤の該二本鎖RNA分子内における第1鎖は、そのRISCとの相互作用において、前記内因性miRNAを模倣する。
【0040】
別の態様において、本発明は、細胞内におけるmiRNA経路を調節する方法であって、前記標的miRNAの前記阻害を行うことができる条件下で、前記細胞または生物を本発明の阻害剤と接触させるステップと、前記阻害剤を利用可能な標的miRNAの量を低下させ、これにより、内因性miRNA経路を調節するステップとを含む方法を提供する。
【0041】
一特徴において、本発明の調節法は、模倣剤または阻害剤のいずれを用いるのであれ、遺伝子発現の調節を行うことができる培養物中または生物内の標的細胞へと前記二重鎖RNA分子を導入するステップをさらに含む。
【0042】
一実施形態において、導入するステップは、トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、感染、注射、経口投与、吸入、局所(topic)投与、および局所(regional)投与からなる群から選択される。さらに、導入するステップは、医薬担体、正電荷担体、リポソーム、タンパク質担体、ポリマー、ナノ粒子、ナノエマルジョン、脂質、およびリポイドからなる群から選択される、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を用いうる。
【0043】
別の態様において、本発明は、細胞または生物における遺伝子の機能または有用性を決定する目的と、細胞または生物における少なくとも1つの遺伝子の発現を調節する目的とを含む各種の目的のための本発明の調節法の使用を提供する。一実施形態において、該遺伝子は、疾患、病理学的状態、または望ましくない状態と関連する。別の実施形態において、該遺伝子は、ヒトまたは動物の疾患と関連する。該遺伝子は、病原性微生物の遺伝子、ウイルス遺伝子、腫瘍関連遺伝子などでありうる。一実施形態において、該遺伝子は、自己免疫疾患、炎症性疾患、変性疾患、感染性疾患、増殖性疾患、代謝性疾患、免疫媒介性障害、アレルギー性疾患、皮膚疾患、悪性疾患、消化管障害、呼吸器障害、心血管障害、腎障害、リウマチ障害、神経障害、内分泌障害、および老化からなる群から選択される疾患と関連する。一特徴において、本発明の方法は、in vitroまたはin vivoにおける薬物標的を研究するのに用いられる。さらなる特徴において、本発明の方法は、疾患または望ましくない状態を治療または予防するのに用いられる。
【0044】
別の態様において、本発明は、活性作用物質としての、本発明の少なくとも1種の模倣剤または阻害剤と、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。担体は、医薬担体、正電荷担体、リポソーム、タンパク質担体、ポリマー、ナノ粒子、ナノエマルジョン、脂質、およびリポイドからなる群から選択することができる。
【0045】
別の態様において、本発明は、有効量の本発明の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む治療法を提供する。各種の実施形態において、該医薬組成物は、静脈内(iv)経路、皮下(sc)経路、局所経路、経口経路、吸入経路、筋肉内経路、腹腔内(ip)経路、および局所経路からなる群から選択される経路を介して投与される。各種の実施形態において、医薬組成物の有効量は、1日当たり約1ng〜1g、1日当たり100ng〜1g、または1日当たり1μg〜500mgである。一実施形態において、該方法は、癌を治療するのに用いられる。
【0046】
さらなる態様において、本発明は、本発明の模倣剤または本発明の阻害剤を含む、研究用試薬を提供する。本発明はまた、前記研究用試薬を含むキットも提供する。
【0047】
さらに別の態様において、本発明は、疾患または状態について患者を診断する方法であって、該患者の細胞を本発明の模倣剤または阻害剤と接触させるステップと、前記疾患または状態を示す少なくとも1つの変化を探索するステップとを含む方法を提供する。
【0048】
本発明の他の特徴および利点は、異なる例を含む、本明細書で提供されるさらなる説明から明らかである。提供される例は、本発明を実施するのに有用な異なる成分および方法を例示する。該例は、優先権が主張される本発明を制限するものではない。本開示に基づき、当業者は、本発明を実施するのに有用な他の成分および方法を同定し、用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1Aは、3’突出と5’突出の両方を有する二重鎖RNA分子の構造を示す図である。図1Bは、鎖の一方中にニックを有する図1Aの二重鎖RNA分子を示す図である。図1Cは、鎖の一方中にギャップを有する図1Aの二重鎖RNA分子を示す図である。
【図2−1】図2Aは、平滑末端、および5’突出を有する二重鎖RNA分子の構造を示す図である。図2Bは、平滑末端、および3’突出を有する二重鎖RNA分子の構造を示す図である。図2Cは、両末端上に3’突出を有する二重鎖RNA分子の構造を示す図である。図2Dは、両末端上に5’突出を有する二重鎖RNA分子の構造を示す図である。
【図2−2】図2Eは、3’突出と5’突出の両方を有する二重鎖RNA分子の代替構造を示す図である。図2Fは、両末端上に3’突出を有する二重鎖RNA分子の代替構造を示す図である。
【図3】aiRNA(非対称性干渉RNA)によるβ−カテニンの遺伝子サイレンシングの誘導を示す図である。図3Aはオリゴの確認を示す図である。アニーリング後、オリゴを20%ポリアクリルアミドゲルによって確認した。レーン1、21nt/21nt;レーン2、12nt(a)/21nt;レーン3、12nt(b)/21nt;レーン4、13nt/13nt;レーン5、13nt/21nt;レーン6、14nt/14nt;レーン7、14nt(a)/21nt;レーン8、14nt(b)/21nt;レーン9、15nt/15nt;レーン10、15nt/21nt。
【0050】
図3Bは、遺伝子サイレンシングにおけるオリゴの影響を示す図である。HeLa細胞を200,000細胞/ウエルで6ウエル培養プレートに平板培養した。24時間後、それらをスクランブルsiRNA(レーン1)、21−bpsiRNA標的化E2F1(レーン2、特異性の対照として)またはβ−カテニンを標的とする21−bpsiRNA(レーン3、陽性対照として)、または異なる長さの混合物:12nt(a)/21nt(レーン4);12nt(b)/21nt(レーン5);13nt/21nt(レーン6);14nt(a)/21nt(レーン7);14nt(b)/21nt(レーン8);15nt/21nt(レーン9)の同じ濃度のaiRNAでトランスフェクトした。細胞はトランスフェクション後48時間で採取した。β−カテニンの発現はウエスタンブロットによって決定した。E2F1およびアクチンは対照として使用した。
【図4】遺伝子サイレンシングの媒介における、塩基置換有りまたは無しのaiRNAオリゴの構造−活性関係を示す図である。Hela細胞は示したaiRNAでトランスフェクトした。細胞を採取し、トランスフェクション後48時間で溶解物を生成した。ウエスタンブロットを実施してβ−カテニンおよびアクチンのレベルを検出した。siはβ−カテニンsiRNAオリゴヌクレオチドを表す。それぞれのレーン上の数値ラベルは表3中のaiRNAオリゴに対応する。
【図5】遺伝子サイレンシングの媒介における、塩基置換有りまたは無しのaiRNAオリゴの構造−活性関係を示す図である。Hela細胞は示したaiRNAでトランスフェクトした。細胞を採取し、トランスフェクション後48時間で溶解物を生成した。ウエスタンブロットを実施してβ−カテニンおよびアクチンのレベルを検出した。siはβ−カテニンsiRNAオリゴヌクレオチドを表す。それぞれのレーン上の数値ラベルは表3中のaiRNAオリゴに対応する。
【図6−1】aiRNAによって誘発される遺伝子サイレンシングのメカニズムの分析を示す図である。
【0051】
図6aは、示した日数でaiRNAまたはsiRNAでトランスフェクトした細胞における、β−カテニンmRNAレベルのノーザンブロット分析を示す図である。
【0052】
図6bは、mRNAの切断および予想PCR産物を示す、β−カテニンの5’−RACE−PCRの概略を示す図である。
【0053】
図6cは、aiRNAによって媒介されたβ−カテニン切断産物を、4または8時間aiRNAでトランスフェクトした細胞から5’−RACE−PCRによって増幅したことを示す図である。
【図6−2】aiRNAによって誘発される遺伝子サイレンシングのメカニズムの分析を示す図である。
【0054】
図6dは、5’−RACE−PCR断片を配列決定することによって確認したβ−カテニンmRNA切断部位の概略を示す図である。
【0055】
図6eは、aiRNAとsiRNAの差次的RISCローディング効率を示す図である。pCMV−Ago2を用いたトランスフェクション後48時間でHela細胞にaiRNAまたはsiRNA二重鎖をトランスフェクトした。Ago2はaiRNAまたはsiRNAのトランスフェクション後に示した時間時点で免疫沈降させ、ノーザンブロット分析を実施してAgo2/RISC結合小RNAのレベルを決定した。(以下に示す)Ago2のレベルはIP後にウエスタンブロットによって決定した。
【0056】
図6fは、aiRNAおよびsiRNAの遺伝子サイレンシング活性に対するAgo2またはDicerのノックダウンの影響を示す図である。細胞はスクランブルaiRNA(Con)またはaiRNA標的化Stat3(ai)を用いたトランスフェクションの24時間前に、スクランブルsiRNA(siCon)、またはsiRNA標的化Ago2(siAgo2)、またはDicer(siDicer)でトランスフェクトした。細胞を採取し、aiStat3トランスフェクション後48時間でウエスタンブロット分析を実施した。
【図7】siRNAと比較したRISCへのaiRNAの取り込みの利点を示す図である。
【0057】
図7Aは、aiRNAはsiRNAより良い効率でRISCに進入することを示す図である。Ago2発現プラスミドでトランスフェクトした細胞を、示した時間aiRNAまたはsiRNAでトランスフェクトした。細胞溶解後、Ago2を免疫沈降させ、RNAを免疫沈降物から抽出し、15%アクリルアミドゲル上で分離した。移動後、膜をプローブとハイブリダイズさせてaiRNAまたはsiRNAの21merアンチセンス鎖を検出した。IgG対照レーンは、Ago2免疫沈降物と比較したシグナルの欠如を示す。
【0058】
図7Bは、aiRNAのセンス鎖はRISC中に存在しないことを示す図である。(A)からの膜を剥離し、再度プローブ処理してトランスフェクトしたオリゴのセンス鎖を検出した。(A)および(B)中の絵図は、膜上のセンス鎖(上側の鎖)、アンチセンス鎖(下側の鎖)、または二重鎖の位置を示す。
【図8】aiRNAによるRISCローディングのメカニズムの図である。
【0059】
図8Aは、aiRNAまたはsiRNAおよびAgo2の異なる鎖間の相互作用の免疫沈降分析を示す図である。過剰発現Ago2を含有するHelaS−10溶解物を、32P末端標識センス鎖またはアンチセンス鎖を含有する示したaiRNAまたはsiRNA二重鎖とインキュベートした。(*)は標識の位置を示す。Ago2免疫沈降後、RNAを単離し、15%アクリルアミドゲル上で分離し、フィルムに感光させた。Ago2結合RNAはペレット画分中に示され、一方非Ago2結合RNAは上清(Sup)中に残る。
【0060】
図8Bは、aiRNA活性におけるセンス鎖切断の役割を示す図である。細胞はaiRNAで、または位置8(予想されるAgo2切断部位)が2’−O−メチルであるセンス鎖を有するaiRNAで、または対照として位置9が2’−O−メチルであるセンス鎖を有するaiRNAでトランスフェクトした。RNAをトランスフェクション後4時間で回収し、qRT−PCRを実施して残りのβ−カテニンmRNAの相対的レベルを決定した。
【図9】aiRNAとsiRNAの競合分析を示す図である。
【0061】
図9Aは、32P末端標識アンチセンス鎖を含有するsiRNA二重鎖およびaiRNA二重鎖を示す図である。(*)は標識の位置を示す。
【0062】
図9Bは、非放射能のaiRNAはAgo2に関して標識siRNAと競合しないことを示す図である。過剰発現Ago2を含有するHelaS−10溶解物は、Ago2の免疫沈降前に32P末端標識siRNAおよび非放射能のaiRNA二重鎖または非放射能のsiRNA二重鎖とインキュベートした。次いでRNAを単離し、15%アクリルアミドゲル上で分析した。
【0063】
図9Cは、非放射能のsiRNAはAgo2に関して標識aiRNAと競合しないことを示す図である。B中で使用したのと同じS−10溶解物を、Ago2の免疫沈降前に32P末端標識aiRNAおよび非放射能のaiRNA二重鎖または非放射能のsiRNA二重鎖とインキュベートした。次いでRNAを単離し、15%アクリルアミドゲル上で分析した。
【図10】RISCローディングおよび成熟RISCの生成において観察した差を示す、aiRNAおよびsiRNAのモデルを示す図である。
【図11−1】アンチセンス突出を有する14〜15bpの非対称性RNA二重鎖(aiRNA)が、強力、有効、迅速、および持続的遺伝子サイレンシングを誘導したことを示す図である。
【0064】
図11Aは、β−カテニンを標的とするsiRNAおよびβ−カテニンを標的とするaiRNAの配列および設計を示すダイアグラムを示す図である。
【0065】
図11Bは、様々な長さのaiRNAによる遺伝子サイレンシングの誘導を示す図である。β−カテニンタンパク質レベルを、示したaiRNAで48時間トランスフェクトした細胞においてウエスタンブロットによって分析した。
【図11−2】アンチセンス突出を有する14〜15bpの非対称性RNA二重鎖(aiRNA)が、強力、有効、迅速、および持続的遺伝子サイレンシングを誘導したことを示す図である。
【0066】
図11Cは、aiRNAがβ−カテニンタンパク質欠乏の誘導においてsiRNAより強力かつ有効であることを示す図である。Hela細胞は示した濃度でβ−カテニンを標的とするaiRNAまたはβ−カテニンを標的とするsiRNAを用いてトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間で、細胞溶解物を作製し、ウエスタンブロット分析を行った。
【0067】
図11Dは、aiRNAがβ−カテニンRNAレベルの低減においてsiRNAより有効、迅速、および持続的であることを示す図である。細胞はノーザンブロット分析前に示した日数10nMの15bpのaiRNAまたは21−merのsiRNAでトランスフェクトした。
【図12−1】aiRNAが迅速かつ強力なサイレンシングを媒介することを示す図である。
【0068】
図12Aは、β−カテニンを標的化するために使用したaiRNAおよびsiRNAの配列および構造を示す図である。
【0069】
図12Bは、対照aiRNAまたはβ−カテニンを標的とするaiRNAでトランスフェクトした細胞由来のβ−カテニンmRNAレベルのRT−PCRを示す図である。RNAはトランスフェクション後の示した時間で回収した。
【図12−2】aiRNAが迅速かつ強力なサイレンシングを媒介することを示す図である。
【0070】
図12Cは、示した時間数の、対照、aiRNA、またはsiRNAでトランスフェクトした細胞におけるβ−カテニンmRNAレベルの定量的リアルタイムRT−PCRを示す図である。
【0071】
図12Dは、示した時間の、対照、aiRNA、またはsiRNAでトランスフェクトした細胞におけるβ−カテニンタンパク質レベルのウエスタンブロット分析を示す図である。
【図13−1】複数の標的に対する遺伝子サイレンシングの効力および持続性におけるsiRNAとaiRNAの比較を示す図である。Hela細胞は(a)β−カテニン、10nM、(b)Stat3、(c)EF2、または(d)NQO1、20nMを標的化するスクランブルsiRNA(c)、aiRNA(ai)、またはsiRNA(si)でトランスフェクトした。RNAおよびタンパク質を示した時間時点で精製し、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)によってmRNAレベルに関して分析し、タンパク質レベルはウエスタンブロットによって分析した。qRT−PCRデータはsiConトランスフェクト細胞に正規化する。
【図13−2】複数の標的に対する遺伝子サイレンシングの効力および持続性におけるsiRNAとaiRNAの比較を示す図である。Hela細胞は(a)β−カテニン、10nM、(b)Stat3、(c)EF2、または(d)NQO1、20nMを標的化するスクランブルsiRNA(c)、aiRNA(ai)、またはsiRNA(si)でトランスフェクトした。RNAおよびタンパク質を示した時間時点で精製し、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)によってmRNAレベルに関して分析し、タンパク質レベルはウエスタンブロットによって分析した。qRT−PCRデータはsiConトランスフェクト細胞に正規化する。
【図14−1】aiRNA媒介遺伝子サイレンシングは、複数の細胞系中の様々な遺伝子に対して有効であることを示す図である。
【0072】
図14aは、aiRNA二重鎖は、異なる哺乳動物細胞系中のβ−カテニンの標的化においてsiRNAより有効であることを示す図である。
【0073】
図14bは、48時間20nMの示したaiRNAまたはsiRNAでトランスフェクトした細胞由来のNbs1、サバイビン、Parp1、p21のウエスタンブロット分析を示す図である。
【図14−2】aiRNA媒介遺伝子サイレンシングは、複数の細胞系中の様々な遺伝子に対して有効であることを示す図である。
【0074】
図14cは、48時間20nMの示したaiRNAまたはsiRNAでトランスフェクトした細胞由来のRsk1、PCNA、p70S6K、mTOR、およびPTENのウエスタンブロット分析を示す図である。
【0075】
図14dは、aiRNAによるk−Rasの対立遺伝子特異的遺伝子サイレンシングを示す図である。ウエスタンブロット分析によって、野生型k−Rasを標的化するaiRNAを、k−Ras野生型(DLD1)とk−Ras突然変異体(SW480)細胞系の両方においてk−Rasのサイレンシングに関して試験した。
【図15−1】センス鎖、免疫刺激によるオフターゲット遺伝子サイレンシングの欠如、およびaiRNAの血清中安定性を示す図である。
【0076】
図15aは、モック処理したPBMCまたは16時間β−カテニンのsiRNA二重鎖またはβ−カテニンのaiRNA二重鎖でインキュベートしたPBMCにおける、インターフェロン誘導性遺伝子の発現のRT−PCR分析を示す図である。
【0077】
図15bは、モックトランスフェクトしたHela細胞または24時間EF2のaiRNAまたはEF2のsiRNAでトランスフェクトしたHela細胞または24時間サバイビンのaiRNAまたはサバイビンのsiRNAでトランスフェクトしたHela細胞における、インターフェロン誘導性遺伝子の発現のRT−PCR分析を示す図である。
【0078】
図15cは、既知のインターフェロン応答関連遺伝子の発現の変化に関するマイクロアレイ分析を示す図である。aiRNAでトランスフェクトしたHela細胞およびsiRNAでトランスフェクトしたHela細胞から単離した全てのRNAを、マイクロアレイによって分析した。
【図15−2】センス鎖、免疫刺激によるオフターゲット遺伝子サイレンシングの欠如、およびaiRNAの血清中安定性を示す図である。
【0079】
図15dは、センス鎖媒介のオフターゲット遺伝子サイレンシングがaiRNAに関して検出されないことを示す図である。細胞はaiRNAまたはsiRNAとStat3(センスRNA)を発現するプラスミドまたはアンチセンスStat3(アンチセンスRNA)を発現するプラスミドのいずれかとコトランスフェクトした。細胞を採取し、トランスフェクション後24時間でRNAを回収し、Stat3センスRNAまたはStat3アンチセンスRNAの相対的レベルは、定量的リアルタイムPCRまたはRT−PCRによって決定した(挿入図)。
【0080】
図15eは、ヒト血清中でのaiRNAおよびsiRNA二重鎖の安定性を示す図である。aiRNAおよびsiRNA二重鎖は、ゲル電気泳動前に示した量の時間37℃で10%ヒト血清中においてインキュベートした。残存する二重鎖(対照の%)を示している。
【図15−3】センス鎖、免疫刺激によるオフターゲット遺伝子サイレンシングの欠如、およびaiRNAの血清中安定性を示す図である。
【0081】
図15fは、aiRNA二重鎖によって媒介される遺伝子特異的サイレンシングに関して提案されるモデルを示す図である。
【図16】SW480ヒト結腸異種移植マウスモデルにおけるβ−カテニンに対するaiRNAの強力な抗腫瘍活性を示す図である。樹立皮下SW480ヒト結腸癌を有する免疫抑制マウスに、毎日0.6nmolのPEI複合β−カテニンsiRNA、PEI複合β−カテニンaiRNAまたは陰性対照としてPEI複合無関連siRNAを静脈内(iv)に与えた。腫瘍の大きさを治療中定期的に評価した。それぞれの時点は6個の腫瘍の平均値±SEMを表す。
【図17】HT29ヒト結腸異種移植マウスモデルにおけるβ−カテニンに対するaiRNAの強力な抗腫瘍活性を示す図である。樹立皮下HT29ヒト結腸癌を有する免疫抑制マウスに、1日おきに0.6nmolのPEI複合β−カテニンsiRNA、PEI複合β−カテニンaiRNAまたは陰性対照としてPEI複合無関連siRNAを静脈内(iv)に与えた。腫瘍の大きさを治療中定期的に評価した。それぞれの時点は5個の腫瘍の平均値±SEMを表す。
【図18】Let−7a模倣剤aiRNAは、同等以上の効率でLet−7aとして機能することができることを示す図である。
【0082】
図18Aは、Let−7aおよびLet−7a模倣剤aiRNAの配列を示す図である。
【0083】
図18Bは、Let−7a模倣剤aiRNAは、Let−7a標的k−RasのmRNAレベルを下方制御することができることを示す図である。
【図19】図19Aは、示したaiRNA模倣剤および阻害剤の配列および構造を示す図である。図19Bは、示した成熟miRNAの配列を示す図である。
【図20】図20Aは、k−RasのmRNAレベルに対するLet−7c模倣剤aiRNAおよびaiRNA Let−7c阻害剤の影響を示す図である。図20Bは、k−Rasのタンパク質レベルに対するLet−7c模倣剤aiRNAおよびaiRNA Let−7c阻害剤の影響を示す図である。
【図21−1】設計したaiRNAがmiRNAを阻害することができることを示す図である。
【0084】
図21Aは、抗Let7c aiRNAがLet−7cの発現を強く阻害することを示す図である。
【0085】
図21Bは、抗miR21 aiRNAがmiR21の発現を強く阻害することを示す図である。
【図21−2】設計したaiRNAがmiRNAを阻害することができることを示す図である。
【0086】
図21Cは、抗miR155 aiRNAがmiR155の発現を強く阻害することを示す図である。
【図22】図22Aは、MCF7細胞が高レベルのmiR−21を発現することを示す図である。図22Bは、FaDu細胞が高レベルのmiR−155を発現することを示す図である。
【図23】抗Let7c aiRNAが市販のmiRNA阻害剤より有効であることを示す図である。
【図24】抗miR21 aiRNAが市販のmiRNA阻害剤より有効であることを示す図である。
【図25】抗miR155 aiRNAが市販のmiRNA阻害剤より有効であることを示す図である。
【図26】抗Let7c aiRNAと市販のmiRNA阻害剤の効力を比較する図である。
【図27】抗miR21 aiRNAと市販のmiRNA阻害剤の効力を比較する図である。
【図28】抗miR155 aiRNAと市販のmiRNA阻害剤の効力を比較する図である。
【図29】aiRNAによるmiRNAの阻害に関する1つの考えられるメカニズムを理論付ける図である。
【図30】知られているヒトmiRNAを列挙する図である。
【図31】知られているヒトmiRNAを列挙する図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、脈絡により明らかに別段に指示されていない限り、複数の参照を含む。例えば、用語「a cell」は、その混合物を含めた複数の細胞を含む。
【0088】
本明細書で使用する場合、「二本鎖RNA」、「二重鎖RNA」、または「RNA二重鎖」は、2本の鎖のRNA、および少なくとも1つの二本鎖領域を有するRNAを指し、二本鎖領域内、または2つの隣接する二本鎖領域の間に、少なくとも1つのギャップ、ニック、バルジ、ループ、および/またはバブルを有するRNA分子を含む。1本の鎖が、2つの二本鎖領域の間にギャップまたは非対応ヌクレオチドの一本鎖領域を有する場合、その鎖は、複数の断片を有するとみなされる。二本鎖RNAは、ここで使用する場合、いずれかの末端または両末端に末端突出を有することができる。いくつかの実施形態において、二重鎖RNAの2本の鎖は、ある特定の化学リンカーを介して連結することができる。
【0089】
本明細書で使用する場合、「アンチセンス鎖」は、標的メッセンジャーRNAに対して実質的な配列相補性を有するRNA鎖を指す。アンチセンス鎖は、siRNA分子の一部、miRNA/miRNA二重鎖の一部、または一本鎖の成熟miRNAでありうる。
【0090】
用語「単離された」または「精製された」は、本明細書で使用する場合、その天然の状態に通常付随する成分を実質的または本質的に含まない物質を指す。純度および均一性は、一般に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技法を使用して求められる。
【0091】
本明細書で使用する場合、「調節すること」およびその文法的な等価用語は、増大させること、または減少させること(例えば、サイレンシング)、言い換えれば、上方制御すること、または下方制御することを指す。
【0092】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、それだけに限らないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含めた任意の動物(例えば、哺乳動物)を指し、これは、特定の治療のレシピエントとなる。一般に、用語「対象」および「患者」は、ヒト対象に関して、本明細書で互換的に使用される。
【0093】
「治療すること」、「治療」、「治療すること」、「軽減すること」および「軽減するため」などの用語は、本明細書で使用する場合、(1)診断された病的状態または障害の症状を治癒、減速し、和らげ、および/または診断された病的状態または障害の進行を停止する治療手段、ならびに(2)標的にされる病的状態または障害の発症を予防し、または遅らせる予防(prophylactic)または予防(preventative)手段の両方を指す。したがって、治療を必要とするものには、既に障害を有しているもの、障害を有しやすいもの、および障害が予防されるべきものが含まれる。患者が、以下のうちの1つまたは複数を示す場合、対象は、本発明の方法によって順調に「治療」される:癌細胞の数の低減、または完全な欠如;腫瘍サイズの低減;軟部組織および骨への癌の伝播を含めた、周辺臓器への癌細胞浸潤の阻害または欠如;腫瘍転移の阻害または欠如;腫瘍増殖の阻害または欠如;特定の癌に関連する1つまたは複数の症状の軽減;罹患率および死亡率の低減;ならびに生活の質の改善。
【0094】
本明細書で使用する場合、用語「阻害すること」、「阻害すること」、およびこれらの文法的な等価用語は、生物活性の脈絡において使用されるとき、生物活性の下方制御を指し、これは、タンパク質の産生、または分子のリン酸化などの標的にされる機能を低減、または排除することができる。特定の実施形態において、阻害は、標的にされる活性の約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の低減を指す。障害または疾患の脈絡において使用されるとき、この用語は、症状の発症の予防、症状の軽減、または疾患、病状もしくは障害の排除における成功を指す。
【0095】
本明細書で使用する場合、用語「実質的に相補性」は、2つの核酸の間であって、2つの二本鎖領域の間の末端突出またはギャップ領域などのいずれの一本鎖領域でもない、塩基対形成した二本鎖領域における相補性を指す。相補性は、完全である必要はなく、例えば、2つの核酸の間で任意の数の塩基対ミスマッチが存在し得る。しかし、ミスマッチの数が多すぎて、最低のストリンジェントのハイブリダイゼーション条件下でさえ、まったくハイブリダイゼーションが起こり得ない場合、この配列は、実質的に相補性の配列ではない。2つの配列が、本明細書で「実質的に相補性」と呼ばれるとき、これらの配列は、選択された反応条件下でハイブリダイズするために、互いに十分に相補的であることを意味する。特異性を実現するのに十分な、核酸の相補性とハイブリダイゼーションのストリンジェンシーの関係は、当技術分野で周知である。2本の実質的に相補性の鎖は、例えば、完全に相補的でありえ、またはハイブリダイゼーション条件が、例えば、対形成配列と非対形成配列の間の識別を可能にするのに十分である限り、1つから多くのミスマッチを含むことができる。したがって、実質的に相補性の配列は、二本鎖領域において、100、95、90、80、75、70、60、50パーセントもしくはそれ未満、またはその間の任意の数値の塩基対の相補性を有する配列を指すことができる。
【0096】
本明細書で使用する場合、antagomirはmiRNA阻害剤であり、内因性miRNAのサイレンシングにおいて使用することができる。
【0097】
本明細書で使用する場合、模倣剤または模倣体は、miRNAアゴニストであり、機能等価物として内因性のmiRNAを置換するために使用することができ、それによってそのような内因性のmiRNAによって影響される経路を上方制御する。
【0098】
転写後の遺伝子サイレンシングの自然形態として、およびそれぞれが広範囲の標的を伴って、miRNAは、疾患の治療および予防において大きな機会を提供する。想像することができるように、特定のmiRNAの制御標的に応じて、細胞におけるそのmiRNAのレベルを上方制御または下方制御することが望ましい場合がある。例えば、そのmRNA標的が1つまたは複数の腫瘍抑制遺伝子に対応する場合、miRNA、例えば、miR−21を下方制御することが望まれる場合がある。他方では、その標的が、発癌遺伝子のmRNAを含む場合、miRNA、例えば、発癌遺伝子のRASファミリーのmRNAを標的にするlet−7 miRNAを上方制御することが望まれる場合がある。複数のmiRNAが、単一の遺伝子標的または関連遺伝子標的のネットワークを調節する状態では、ある特定のmiRNAを上方制御すると同時に、他のmiRNAを下方制御することが望ましい場合がある。
【0099】
現在、RNAを制御するために考案された有効な手段には、一本鎖RNA(例えば、アンチセンス)、および2本の鎖が全く同じ長さである二本鎖RNA(例えば、対称な2ntの3’突出を含む21ヌクレオチドのdsRNAからなるsiRNA)が含まれる。これらの中で、siRNAは、miRNAとは別の外因性の機構を介して(一般にウイルス性または人工の導入を介して)、真核生物においてRNAiを誘発するが、結局、これは、より特異的な遺伝子サイレンシングを行うために、miRNAが利用するのと同じRISCを利用する。一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞中で安定ではなく、様々な化学修飾がこれらに対して試みられているが、これらは、miRNA阻害剤として大部分は効果的でないままである(Vermeulen A.ら RNA 13巻:726〜730頁(2007年))。つまり、miRNAが、10年を超えて発見されている間に、模倣剤であっても阻害剤であっても、miRNAの有効なモジュレーターを考案することにおいて、わずかな進展しかしていない(Mack G. Nat Biotech 25巻(6号):631〜638頁(2007年))。
【0100】
本発明は、siRNAのような結果をもたらし(「Composition of asymmetric interfering RNA and uses thereof」の表題で、本願と同日に出願され、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、共同所有されたPCTおよび米国出願に詳細に記載されている)、またmiRNA経路の活性を調節するために使用することができる、非対称性干渉RNA(aiRNA)と呼ばれる、新規の構造足場を提供する。
【0101】
aiRNAの新規の構造的設計は、遺伝子調節を行うことにおいて機能的に強力であるだけでなく、現況技術のRNAi調節因子(主にアンチセンス、siRNA)に対していくつかの利点も提供する。これらの利点の中で、aiRNAは、現在のsiRNAコンストラクトよりはるかに短い長さのRNA二重鎖構造を有することができ、これは、合成費用を低減し、宿主細胞からの非特異的インターフェロン様免疫応答の長さ依存性誘発を阻止、または低減するはずである。aiRNA中のより短い長さのパッセンジャー鎖はまた、RISCにおけるパッセンジャー鎖の意図されない取り込みも排除または低減し、その結果としてmiRNA媒介遺伝子サイレンシングにおいて観察されるオフターゲット効果を低減するはずである。aiRNAは、バイオテクノロジー産業および医薬産業、ならびにmiRNAに基づく診断および治療における生物学研究、R&Dを含めて、現在のmi−RNAに基づく技術が適用されているか、適用されることが企図されているすべての範囲において使用することができる。
【0102】
1.0.aiRNA構造足場
本発明は、miRNA媒介遺伝子サイレンシングを調節することができる非対称性二本鎖RNA分子に関する。一実施形態において、本発明のRNA分子は、第1鎖および第2鎖を含み、第2鎖は、第1鎖と実質的に相補的であり、第1鎖と第2鎖は、少なくとも1つの二本鎖領域を形成し、第1鎖は、第2鎖より長い(長さ非対称)。本発明のRNA分子は、少なくとも1つの二本鎖領域、ならびに5’突出、3’突出、および平滑末端からなる群から独立に選択される2つの末端を有する(例えば、図1A、2A〜2Dを参照されたい)。別の実施形態において、第1鎖は、第2鎖より短い。この2本は、少なくとも1つの二本鎖領域を形成し、5’突出、3’突出、および平滑末端からなる群から独立に選択される2つの末端を有することができる(例えば、図2E〜2Fを参照されたい)。
【0103】
1個のヌクレオチドの変更、付加、および欠失が、分子の機能性に決定的に影響し得る(Elbashirら、The EMBO Journal 20巻:6877〜6888頁(2001年))、小RNA制御因子を作製する分野では、aiRNA足場は、それぞれの鎖、およびそのそれぞれの3’突出において対称である、21ntの二本鎖RNAの古典的なsiRNA構造と異なる構造的なプラットホームを提供する。さらに、本発明のaiRNAは、以下の例に含められたデータによって示されるように、RNAiに基づく研究、および薬剤開発において現在遭遇する障害を克服することができる、新しいクラスの小分子制御因子を設計することにおいて、切望される新しい手法を提供する。例えば、siRNAを構造的に模倣するaiRNAからのデータは、aiRNAは、遺伝子サイレンシングを誘発することにおいて、siRNAよりも有効であり、強力であり、迅速に開始し、耐久性があり、特異的であることを示す。aiRNAは、模倣体または阻害剤としてmiRNA経路を制御するために設計することができるというさらなる証拠が以下に提供される。
【0104】
任意の末端突出および2つの二本鎖領域の間のギャップを含めた、本発明のRNA分子の任意の一本鎖領域は、化学修飾または二次構造を介して劣化に対して安定化させることができる。RNA鎖は、非対応のヌクレオチド、または不完全に対応したヌクレオチドを有することができる。それぞれの鎖は、1つまたは複数のニック(核酸の骨格中の切れ目、例えば、図1Bを参照されたい)、ギャップ(1つまたは複数の欠損したヌクレオチドを有する断片化された鎖、例えば、図1Cを参照されたい)、および修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を有することができる。RNA分子中の任意およびすべてのヌクレオチドを化学的に修飾することができるだけでなく、それぞれの鎖は、その機能性を増強するために、1つまたは複数の部分、例えば、1つまたは複数のペプチド、抗体、抗体断片、アプタマー、ポリマー、脂質、オリゴヌクレオチドなどの部分と結合することができる。いくつかの実施形態において、この部分は、送達を増強するために付加される。他のいくつかの実施形態において、この部分は、1つまたは複数の薬理学的特性、例えば、薬剤吸収を増強するために付加される。
【0105】
一実施形態において、第1鎖は、第2鎖より少なくとも1nt長い。さらなる実施形態において、第1鎖は、第2鎖より少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20nt長い。別の実施形態において、第1鎖は、第2鎖より20〜100nt長い。さらなる実施形態において、第1鎖は、第2鎖より2〜12nt長い。なおさらなる実施形態において、第1鎖は、第2鎖より3〜10nt長い。
【0106】
一実施形態において、第1鎖、または長い鎖は、5〜100nt、または好ましくは10〜30ntもしくは12〜30nt、またはより好ましくは15〜28ntの長さを有する。一実施形態において、第1鎖は、長さが21ヌクレオチドである。一実施形態において、第2鎖、または短い鎖は、3〜30nt、または好ましくは3〜29ntもしくは10〜26nt、またはより好ましくは12〜26ntの長さを有する。一実施形態において、第2鎖は、15ヌクレオチドの長さを有する。
【0107】
一実施形態において、二本鎖領域は、3〜98bpの長さを有する。さらなる実施形態において、二本鎖領域は、5〜28bpの長さを有する。なおさらなる実施形態において、二本鎖領域は、10〜19bpの長さを有する。二本鎖領域の長さは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30bpとすることができる。
【0108】
一実施形態において、RNA分子の二本鎖領域は、いずれのミスマッチまたはバルジも含まず、2本の鎖は、二本鎖領域内で互いに完全に相補的である。別の実施形態において、RNA分子の二本鎖領域は、ミスマッチおよび/またはバルジを含む。
【0109】
一実施形態において、末端突出は1〜10ヌクレオチドである。さらなる実施形態において、末端突出は1〜8ヌクレオチドである。別の実施形態において、末端突出は3ntである。
【0110】
1.1.5’突出および3’突出の両方を有する二重鎖RNA分子
図1Aを参照すると、本発明の一実施形態において、二本鎖RNA分子は、第1鎖上に5’突出および3’突出の両方を有する。RNA分子は、第1鎖および第2鎖を含み、第1鎖と第2鎖は、実質的に相補性の配列を有する少なくとも1つの二本鎖領域を形成し、第1鎖は、第2鎖より長い。第1鎖上で、二本鎖領域に隣接して、5’末端および3’末端の両方上に非対応の突出が存在する。
【0111】
一実施形態において、第1鎖は、第2鎖より少なくとも2nt長い。さらなる実施形態において、第1鎖は第2鎖より少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20nt長い。別の実施形態において、第1鎖は、第2鎖より20〜100nt長い。さらなる実施形態において、第1鎖は、第2鎖より2〜12nt長い。なおさらなる実施形態において、第1鎖は、第2鎖より3〜10nt長い。
【0112】
一実施形態において、第1鎖は、5〜100ntの長さを有する。さらなる実施形態において、第1鎖は、5〜100ntの長さを有し、第2鎖は、3〜30ヌクレオチドの長さを有する。なおさらなる実施形態において、第1鎖は、5〜100ntの長さを有し、第2鎖は、3〜18ヌクレオチドの長さを有する。
【0113】
一実施形態において、第1鎖は、10〜30ヌクレオチドの長さを有する。さらなる実施形態において、第1鎖は、10〜30ヌクレオチドの長さを有し、第2鎖は、3〜28ヌクレオチドの長さを有する。なおさらなる実施形態において、第1鎖は、10〜30ヌクレオチドの長さを有し、第2鎖は、3〜19ヌクレオチドの長さを有する。
【0114】
一実施形態において、第1鎖は、12〜26ヌクレオチドの長さを有する。さらなる実施形態において、第1鎖は、12〜26ヌクレオチドの長さを有し、第2鎖は、10〜24ヌクレオチドの長さを有する。なおさらなる実施形態において、第1鎖は、12〜26ヌクレオチドの長さを有し、第2鎖は、10〜19ヌクレオチドの長さを有する。
【0115】
一実施形態において、第1鎖は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ntの長さを有する。別の実施形態において、第2鎖は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28ntの長さを有する。
【0116】
一実施形態において、第1鎖は、21ntの長さを有し、第2鎖は、15ntの長さを有する。この特定の実施形態は、本明細書の以下で「15/21」構造と時折呼ばれる。いくつかの「15/21」構造では、より長い鎖は、3’末端と5’末端の両方において3ntの突出を有する。
【0117】
一実施形態において、3’突出は、1〜10ntの長さを有する。さらなる実施形態において、3’突出は、1〜8ntの長さを有する。なおさらなる実施形態において、3’突出は、2〜6ntの長さを有する。一実施形態において、3’突出は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ntの長さを有する。
【0118】
一実施形態において、5’突出は、1〜10ntの長さを有する。さらなる実施形態において、5’突出は、1〜6ntの長さを有する。なおさらなる実施形態において、5’突出は、2〜4ntの長さを有する。一実施形態において、5’突出は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ntの長さを有する。
【0119】
一実施形態において、3’突出の長さは、5’突出の長さに等しい。別の実施形態において、3’突出は、5’突出より長い。代替の実施形態において、3’突出は、5’突出より短い。
【0120】
一実施形態において、二重鎖RNA分子は、約15ntの実質的に相補性の配列の二本鎖領域、3ntの3’突出、および3ntの5’突出を含む。第1鎖は21ntであり、第2鎖は15ntである。一特徴では、様々な実施形態の二本鎖領域は、完全に相補性の配列からなる。代替の特徴では、二本鎖領域は、少なくとも1つのニック(図1B)、ギャップ(図1C)、および/またはミスマッチ(バルジもしくはループ)を含む。
【0121】
一実施形態において、二本鎖領域は、3〜98bpの長さを有する。さらなる実施形態において、二本鎖領域は、5〜28bpの長さを有する。なおさらなる実施形態において、二本鎖領域は、10〜19bpの長さを有する。二本鎖領域の長さは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30bpとすることができる。2つ以上の二本鎖領域が存在することができる。
【0122】
一実施形態において、第1鎖はガイド鎖であり、これは、切断によるかまたは翻訳抑制による遺伝子サイレンシングのために、メッセンジャーRNA(mRNA)などの実質的に相補性の遺伝子転写物を標的にすることができる。
【0123】
上記に論じた同じ原理および特徴は、第2鎖が第1鎖より長い実施形態にもあてはまる(図2E)。
【0124】
1.2.平滑末端、および5’突出または3’突出を有する二重鎖RNA分子
一実施形態において、二重鎖RNA分子は、二本鎖領域、平滑末端、および5’突出または3’突出を含む(例えば、図2Aおよび2Bを参照されたい)。このRNA分子は、第1鎖および第2鎖を含み、第1鎖と第2鎖は、二本鎖領域を形成し、第1鎖は、第2鎖より長い。
【0125】
一実施形態において、二本鎖領域は、3〜98bpの長さを有する。さらなる実施形態において、二本鎖領域は、5〜28bpの長さを有する。なおさらなる実施形態において、二本鎖領域は、10〜18bpの長さを有する。二本鎖領域の長さは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30bpとすることができる。この二本鎖領域は、他の実施形態に関して記載したものと同様の特徴を有することができ、必ずしもここで繰り返されない。例えば、二本鎖領域は、完全に相補性の配列からなり、または少なくとも1つのニック、ギャップ、および/またはミスマッチ(バルジまたはループ)を含むことができる。
【0126】
一実施形態において、第1鎖は、第2鎖より少なくとも1nt長い。さらなる実施形態において、第1鎖は、第2鎖より少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20nt長い。別の実施形態において、第1鎖は、第2鎖より20〜100nt長い。さらなる実施形態において、第1鎖は、第2鎖より2〜12nt長い。なおさらなる実施形態において、第1鎖は、第2鎖より4〜10nt長い。
【0127】
一実施形態において、第1鎖は、5〜100ntの長さを有する。さらなる実施形態において、第1鎖は、5〜100ntの長さを有し、第2鎖は、3〜30ヌクレオチドの長さを有する。なおさらなる実施形態において、第1鎖は、10〜30ntの長さを有し、第2鎖は、3〜19ヌクレオチドの長さを有する。別の実施形態において、第1鎖は、12〜26ヌクレオチドの長さを有し、第2鎖は、10〜19ヌクレオチドの長さを有する。
【0128】
一実施形態において、二重鎖RNA分子は、二本鎖領域、平滑末端、および3’突出を含む(例えば、図2Bを参照されたい)。
【0129】
一実施形態において、3’突出は、1〜10ntの長さを有する。さらなる実施形態において、3’突出は、1〜8ntの長さを有する。なおさらなる実施形態において、3’突出は、2〜6ntの長さを有する。一実施形態において、3’突出は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ntの長さを有する。
【0130】
代替の実施形態において、二重鎖RNA分子は、二本鎖領域、平滑末端、および5’突出を含む(例えば、図2Aを参照されたい)。
【0131】
一実施形態において、5’突出は、1〜10ntの長さを有する。さらなる実施形態において、5’突出は、1〜6ntの長さを有する。なおさらなる実施形態において、5’突出は、2〜4ntの長さを有する。一実施形態において、5’突出は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ntの長さを有する。
【0132】
1.3.2つの5’突出、または2つの3’突出を有する二重鎖RNA分子
一実施形態において、二重鎖RNA分子は、二本鎖領域、および2つの3’突出、または2つの5’突出を含む(例えば、図2Cおよび2Dを参照されたい)。RNA分子は、第1鎖および第2鎖を含み、第1鎖と第2鎖は、二本鎖領域を形成し、第1鎖は、第2鎖より長い。
【0133】
一実施形態において、二本鎖領域は、3〜98bpの長さを含む。さらなる実施形態において、二本鎖領域は、5〜28bpの長さを有する。なおさらなる実施形態において、二本鎖領域は、10〜18bpの長さを有する。二本鎖領域の長さは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30bpとすることができる。
【0134】
一実施形態において、第1鎖は、第2鎖より少なくとも1nt長い。さらなる実施形態において、第1鎖は、第2鎖より、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20nt長い。別の実施形態において、第1鎖は、第2鎖より20〜100nt長い。さらなる実施形態において、第1鎖は、第2鎖より2〜12nt長い。なおさらなる実施形態において、第1鎖は、第2鎖より4〜10nt長い。
【0135】
一実施形態において、第1鎖は、5〜100ntの長さを有する。さらなる実施形態において、第1鎖は、5〜100ntの長さを有し、第2鎖は、3〜30ヌクレオチドの長さを有する。なおさらなる実施形態において、第1鎖は、10〜30ntの長さを有し、第2鎖は、3〜18ヌクレオチドの長さを有する。別の実施形態において、第1鎖は、12〜26ヌクレオチドの長さを有し、第2鎖は、10〜16ヌクレオチドの長さを有する。
【0136】
代替の実施形態において、二重鎖RNA分子は、二本鎖領域、および2つの3’突出を含む(例えば、図2Cを参照されたい)。この二本鎖領域は、他の実施形態に関して記載したのと同様の特徴を有する。
【0137】
一実施形態において、3’突出は、1〜10ntの長さを有する。さらなる実施形態において、3’突出は、1〜6ntの長さを有する。なおさらなる実施形態において、3’突出は、2〜4ntの長さを有する。一実施形態において、3’突出は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ntの長さを有する。
【0138】
一実施形態において、二重鎖RNA分子は、二本鎖領域、および2つの5’突出を含む(例えば、図2Dを参照されたい)。
【0139】
一実施形態において、5’突出は、1〜10ntの長さを有する。さらなる実施形態において、5’突出は、1〜6ntの長さを有する。なおさらなる実施形態において、5’突出は、2〜4ntの長さを有する。一実施形態において、3’突出は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ntの長さを有する。
【0140】
上記に論じた同じ原理および特徴が、第2鎖が第1鎖より長い実施形態にも当てはまる(図2F)。
【0141】
2.0.aiRNAの設計
理解を容易にするために、本発明の原理は、例を使用して以下に時折説明および例示され、ここで、(a)siRNA用途において、アンチセンス鎖は、aiRNA分子のより長い鎖であり、(b)miRNA模倣剤用途において、成熟miRNAと同様の配列を有するアンチセンス鎖は、aiRNA分子のより長い鎖であり、(c)miRNA阻害剤用途において、成熟miRNAと実質的に相補性の配列を有するセンス鎖は、aiRNA分子のより長い鎖である。しかし、反対の状態も真となり得、本発明の一部であることが企図され、すなわち、アンチセンス鎖は、siRNA用途およびmiRNA模倣剤用途の両方において、aiRNA分子のより短い鎖でありえ、センス鎖は、miRNA阻害剤用途において、より短い鎖でありえ、他の例において記載された同じ特徴および原理が、これらの状態に当てはまり、必ずしも繰り返されない。
【0142】
siRNAおよびmiRNAは、研究手段として広く使用され、薬剤候補として開発される。(例えば、Dykxhoorn、Novina & Sharp. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 4巻:457〜467頁(2003年);Kim & Rossi、Nature Rev. Genet. 8巻:173〜184頁(2007年);de Fougerollesら Nature Rev. Drug Discov. 6巻:443〜453頁(2007年);Czech、NEJM 354巻:1194〜1195頁(2006年);およびMack、Nature Biotech. 25巻:631〜638頁(2007年)を参照されたい)。本発明の二重鎖RNA分子、すなわち、aiRNAは、当分野で既知のsiRNAおよびmiRNAから導出することができる。
【0143】
本発明は、siRNAまたはmiRNAを変換してaiRNAにする方法を提供する。この変換は、最初の分子と比較して改善された、少なくとも1つの特性を有する、新しい二重鎖RNA分子をもたらす。この特性は、サイズ、効力(efficacy)、効能(potency)、開始速度、耐久性、合成費用、オフターゲット効果、インターフェロン応答、または送達とすることができる。
【0144】
一実施形態において、最初の分子は、siRNAまたはmiRNA/miRNA(ガイド/パッセンジャー)二重鎖などの二重鎖RNA分子である。二重鎖RNA分子は、少なくとも1つの二本鎖領域を形成する、アンチセンス鎖(例えば、ガイド鎖)およびセンス鎖(例えば、パッセンジャー鎖)を含む。この方法は、アンチセンス鎖がセンス鎖より長いように一方または両方の鎖の長さを変更するステップを含む。一実施形態において、センスパッセンジャー鎖が短縮される。別の実施形態において、アンチセンスガイド鎖が伸長される。なおさらなる実施形態において、センス鎖が短縮され、アンチセンス鎖が伸長される。無傷またはサイズが変更されたアンチセンスおよびセンスRNA鎖は、合成し、aiRNA分子が形成される条件下で組み合わせることができる。
【0145】
さらなる実施形態において、この方法は、二重鎖RNA分子が、1〜6ヌクレオチドの3’突出、および1〜6ヌクレオチドの5’突出のうちの少なくとも1つを有して形成されるように、アンチセンス鎖および/またはセンス鎖の長さを変更するステップを含む。
【0146】
一実施形態において、最初の分子は、成熟ガイドmiRNA、またはパッセンジャーmiRNAなどの一本鎖RNA分子である。この方法は、一本鎖鋳型またはその一部と実質的に相補的である、より短いRNA鎖を合成するステップと、非対称鎖長のaiRNA分子が形成されるハイブリダイズ条件下で、合成された鎖を、最初の一本鎖RNA分子またはその短縮型と組み合わせるステップとを含む。一実施形態において、鋳型RNAは、成熟ガイドmiRNAであり、得られるaiRNAはその模倣剤である。別の実施形態において、鋳型RNAは、miRNA/miRNA二重鎖中のパッセンジャー鎖(miRNA)であり、得られるaiRNAは、ガイドmiRNAの阻害剤である。
【0147】
あるいは、本発明の二重鎖RNA分子は、新規に設計することができる。本発明の二重鎖RNA分子は、遺伝子ウォークの方法などの、siRNAおよびmiRNAのための設計方法を利用して設計することができる。
【0148】
本発明のRNA分子は、バイオインフォマティクス手法を用いて設計し、次いでin vitroおよびin vivoで試験することによって、標的遺伝子に対するその調節効力、および任意のオフターゲット効果の存在を判定することができる。これらの研究に基づいて、次いでRNA分子の配列を選択し、修飾することによって、標的遺伝子に対する調節効力を改善し、オフターゲット効果を最小限にすることができる。(例えば、Patzel、Drug Discovery Today 12巻:139〜148頁(2007年)を参照されたい)。
【0149】
2.1.二重鎖RNA分子中の非対応領域またはミスマッチ領域
aiRNA二重鎖の2つの一本鎖は、例えば、1つまたは複数のミスマッチを含む、少なくとも1つの非対応の領域、または不完全に対応した領域を有することができる。一実施形態において、非対応の、または不完全に対応した領域は、平滑末端を有する末端領域、3’−凹部または5’突出を有する末端領域、および5’凹部または3’突出を有する末端領域を含めた、RNA分子の少なくとも1つの末端領域である。本明細書で使用する場合、末端領域は、1つの末端および隣接する範囲を含む、RNA分子の領域である。
【0150】
一実施形態において、非対応の領域、または不完全に対応した領域は、aiRNA分子の二本鎖領域内にある。さらなる実施形態において、非対称性RNA二重鎖は、非対応のバルジまたはループ構造を有する。
【0151】
2.2.二重鎖RNA分子内の配列モチーフ
本発明のaiRNA分子の設計において、総GC含量は変化し得る。一実施形態において、二本鎖領域のGC含量は、20〜70%である。さらなる実施形態において、G−C対形成は、A−U対形成より強いので、鎖の分離をより容易にするために、二本鎖領域のGC含量は、50%未満、または好ましくは30〜50%である。
【0152】
末端の突出でのヌクレオチド配列、いくつかの実施形態において、例えば、5’末端は、任意の鋳型配列(例えば、標的mRNA配列)から独立に設計することができ、すなわち、標的mRNA(siRNAまたはmiRNA模倣剤の場合)、または標的miRNA(miRNA阻害剤の場合)と実質的に相補的である必要はない。一実施形態において、より長い鎖またはアンチセンス鎖の、例えば5’または3’での突出は、少なくとも1つのA、U、またはdTを有する。一実施形態において、突出は、少なくとも1つの「AA」、「UU」または「dTdT」モチーフを有し、これは、いくつかの他のモチーフと比較して、効力の増大を示した。一実施形態において、より長い鎖またはアンチセンス鎖の5’突出は、「AA」モチーフを有する。別の実施形態において、より長い鎖またはアンチセンス鎖の3’突出は、「UU」モチーフを有する。
【0153】
2.3.ヌクレオチド置換
本発明のRNA分子内のヌクレオチドの1つまたは複数は、デオキシヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体と置換することができる。置換は、RNA分子内のどこにおいても、例えば、一方もしくは両方の突出領域、および/または二本鎖領域で起こり得る。場合によっては、置換により、RNA分子の物理的特性、例えば、鎖親和性、溶解度、およびRNase劣化に対する抵抗力、または別の方法で増強された安定性が増強される。
【0154】
一実施形態において、修飾ヌクレオチドまたは類似体は、糖修飾リボヌクレオチド、骨格修飾リボヌクレオチド、および/または塩基修飾リボヌクレオチドである。骨格修飾リボヌクレオチドは、別のリボヌクレオチドとのホスホジエステル結合内の修飾を有することができる。一実施形態において、RNA分子内のホスホジエステル結合は、修飾されることによって、少なくとも1個の窒素ヘテロ原子および/または硫黄ヘテロ原子を含む。一実施形態において、修飾ヌクレオチドまたは類似体は、非天然塩基または修飾塩基である。一実施形態において、修飾ヌクレオチドまたは類似体は、イノシン、またはトリチル化塩基である。
【0155】
さらなる実施形態において、ヌクレオチド類似体は、糖修飾リボヌクレオチドであり、この中で2’−OH基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH、NHR、NR、およびCNからなる群から選択される基によって置換され、各Rは、C1〜C6アルキル、アルケニルおよびアルキニルからなる群から独立に選択され、ハロは、F、Cl、Br、およびIからなる群から選択される。
【0156】
一実施形態において、ヌクレオチド類似体は、ホスホチオエート基を含む骨格修飾リボヌクレオチドである。
【0157】
2.4.miRNA模倣剤としてのaiRNA
対象における、機能性、内因性のmiRNAの欠如または不十分なレベルを補償するために、二本鎖aiRNAの新規なコンストラクトを提供することができる。第1の手法では、成熟miRNAに関与する内因性の二本鎖領域が、aiRNA模倣剤の設計のための鋳型として選択される。そのような鋳型は、pri−miRNA、pre−miRNA、およびpre−miRNAのリボヌクレアーゼDicer消化から生じるガイド/パッセンジャー(miRNA/miRNA)二重鎖を含めた一本鎖成熟miRNAに対する任意の適当な内因性の前駆体とすることができる。図18Aを参照すると、これらの潜在的な鋳型は、aiRNA設計物中にコピーすることができる二本鎖領域内のヌクレオチドミスマッチからのバルジなどの二次構造を保護する。そのような二次構造は、成熟miRNAの遺伝子サイレンシング機能、例えば、鎖分離の促進において役割を果たすことができるので、この手法は、aiRNAについてのこの可能性を有利に保護する。
【0158】
図18Aに示される特定の実施形態において、下に示されたステムループ構造は、ヒトLet7a遺伝子のpre−miRNA(pre−Let−7a)を表し、ここで、最終的に成熟miRNAになる22ヌクレオチドに下線が引かれている。hsa−Let7a miRNAのaiRNA模倣剤(「Let−7a aiRNAオリゴ」)の設計において、二本鎖領域内のその下線を引かれた部分は、aiRNAの21ntのより長い鎖のための基盤として使用される。全体が一本鎖のステムループヘアピン分子である、pre−Let−7aの二本鎖領域内の実質的に、しかし不完全に相補性の配列からの15ntのストレッチは、aiRNA設計物を完成するために、より短い鎖として使用される。図に示されるように、少なくとも、最初のpre−miRNA中の「GU/UG」ミスマッチから生じるバブル構造は、aiRNA設計物において保存される。この特定の例では、aiRNAのより長い鎖は、3’および5’の両末端上に3ntの突出を有する。
【0159】
セクション2.0において上述したように、ガイド/パッセンジャーmiRNA二重鎖は、鎖長を変更することによって変換してaiRNAにすることができる。
【0160】
第2の手法では、成熟miRNA配列の一部が、aiRNAのより長い鎖中にコピーされ、成熟miRNAの天然前駆体に存在していた場合のあるいずれの二次構造に関係することなく、実質的に相補性の、好ましくは完全に相補性のより短い鎖が生成される。図4Aはとりわけ、hsa−Let−7c miRNAの模倣剤(「aiLet−7c模倣体」)を示す。成熟したヒトLet7c miRNA(miRBase(http://microrna.sanger.ac.uk)アクセション番号MIMAT0000064)についての配列は、:
hsa−Let−7c:5’−UGAGGUAGUAGGUUGUAUGGUU
である。最初の19ヌクレオチド(図19A中で下線を引かれている)は、aiLet−7c模倣体のより長い鎖中に、5’末端の「AA」モチーフの後にコピーされる。次いで、15ヌクレオチドからなる完全に相補性の配列が、より短い鎖として提供され、より長い鎖の3’末端および5’末端の両末端上に3ntの突出を残す。「AA」モチーフがより長い鎖の5’末端に付加されるが、これは、試みたモチーフの中で、このモチーフが、aiRNAの機能性を増強することにおいていくつかの利点を提供すると思われるためである。以下の例で示されるように、両手法は機能する。一実施形態において、aiRNA模倣剤は、「15/21」構造をとる。しかし、他のaiRNA構造も、もちろんここで使用することができる。
【0161】
本発明は、植物(例えば、Arabidopsis)、虫(例えば、C.elegans)、昆虫(例えば、Drosophila)、ならびにマウスおよびヒトのような哺乳動物種を含めた動物を含む、任意の種の任意の所与のmiRNAの模倣剤を作製するのに使用することができる。現在知られており、本発明のRNA分子を生成するのに使用することができるヒトmiRNAのリストは、図30および31に提供されている。
【0162】
2.5.miRNA阻害剤としてのaiRNA
二本鎖aiRNAは、例えば、細胞中の活性なmiRNAのレベルを低減することによって、内因性のmiRNAを阻害するために提供することもできる。現在のantagomirは、一本鎖のアンチセンスオリゴヌクレオチドに基づき、これは、真核細胞中で不安定であることで有名である。対照的に、本aiRNA構造足場は二本鎖であり、したがって細胞中ではるかに安定である。その新規非対称性設計物は、以下の実施例7で示されるように、哺乳動物細胞内部の標的miRNAの強力な阻害を行うことにおいて明らかに機能する。
【0163】
一実施形態において、aiRNAの第1鎖、好ましくはより長い鎖は、標的miRNAの少なくとも一部と実質的に相補性の配列からなる。次いで他方のaiRNA鎖、好ましくはより短い鎖が、配列中の第1鎖を実質的に補完する、例えば、完全に補完するために作製される。一実施形態において、より短い鎖は、二本鎖領域におけるより長い鎖と不完全に、すなわちただ部分的に相補的である。
【0164】
一実施形態において、aiRNAコンストラクトのより長い鎖は、標的miRNAの少なくとも一部と完全に相補的であるように設計される。例えば、図19Aは、とりわけ、それぞれhsa−Let−7c、miR−21、およびmiR−155の3つの阻害剤コンストラクトを示す。それぞれの阻害剤についての対応する標的miRNA配列は、図19Bに示されている。それぞれの阻害剤は、5’末端の「AA」モチーフの後に、成熟した標的miRNAの最初の19ヌクレオチドと完全に相補性の配列を含む。示された実施例において、aiRNAコンストラクトは、「15/21」構造をとり、より長い21ntの鎖は、3’および5’の両末端に突出を有する。他のaiRNA構造も、もちろんここで使用することができる。
【0165】
理論によって束縛されないが、本発明のaiRNAによるmiRNAの阻害についての1つの可能な機構は、図29によって例示されており、以下の通りである:細胞内部で、内因性のmiRNA/miRNA二重鎖および導入されたaiRNA二重鎖の両方の鎖は、常に動的平衡にあり、その条件下で、一部の二重鎖は、常に一緒になって塩基対形成している一方で、他の二重鎖は、常に分離している。形成した二重鎖とほどけた二重鎖の間、または言い換えれば、結合速度と解離速度の間の、任意の所与の時間での比は、二重鎖を形成している2本の鎖の間の親和性に大部分は依存する。現時点で明らかでないが、aiRNAのより長い鎖は、場合により、その設計された相補性、または鎖分離を促進する構造の欠如によって、標的miRNA鎖と塩基対形成すると、内因性のパッセンジャーmiRNA(miRNA)鎖より、標的miRNAに対してより強い親和性(すなわち、より低い解離速度)を示す。これは、解離に有利である内因性のmiRNA/miRNA二重鎖内にミスマッチ領域または非対応領域が存在するとき、特に真となり得る。結果として、時間の経過とともに、aiRNAのより長い鎖は、成熟ガイドmiRNAと、より長く続く二重鎖を形成することにおいて、内因性のパッセンジャーmiRNAと競合することができるようになり、したがって、意図された遺伝子サイレンシングを行うのに利用可能な、任意の所与の時間での非結合ガイドmiRNAの量を低減する。長さ非対称のaiRNAコンストラクトは、対称なコンストラクトと比較して、より長い鎖とより短い鎖の間の解離に有利であり、より多くのより長い鎖を標的miRNA鎖獲得のために競合するのに利用可能にしている。
【0166】
好ましい実施形態において、aiRNAのより長い鎖は、標的とされたガイドmiRNAの少なくとも一部と完全な塩基対相補性を有するが、相補性が、ガイドmiRNAと二重鎖を形成することに関して、内因性のパッセンジャーmiRNAと競合するのに、より長い鎖にとって十分高い限り、これは真である必要はない。
【0167】
本発明は、植物(例えば、Arabidopsis)、虫(例えば、C.elegans)、昆虫(例えば、Drosophila)、ならびにマウスおよびヒトのような哺乳動物種を含めた動物を含む、任意の種の任意の所与のmiRNAの阻害剤を作製するのに使用することができる。現在知られており、本発明のRNA分子を生成するのに使用することができるヒトmiRNAのリストは、図30および31に提供されている。
【0168】
3.有用性
3.1.研究および薬剤発見ツール
マイクロRNAは、細胞における遺伝子制御機能の役割を果たす。いくつかは、癌、ウイルス感染症などを含めた様々なタイプのヒト疾患に関連することが見出された。したがって、miRNA模倣剤および阻害剤は、miRNAによって調節される遺伝子標的、ならびに様々なmiRNA経路およびこれらの相互作用の機構および成分を研究するのに使用することができる。
【0169】
本発明の方法およびコンストラクトは、miRNA経路および関連遺伝子機能をin vitroおよびin vivoで研究するために使用することができる。本発明のRNA分子は、薬剤標的/経路の同定および検証における研究ツールとして、培養された動物細胞を形質移入するためにも使用することができる。例えば、宿主細胞中に本発明のRNA分子を形質移入するか、さもなければ送達した後、これらの細胞は、対象とするいくつかの経路が影響されたことを示す、表現型または形態の変化についてモニターすることができる。そのような表現型の変化は、核の数、核形態、細胞死、細胞増殖、DNA断片化、細胞表面マーカー、および有糸分裂指数などを伴うことができる。別の例では、宿主細胞中の分子/基質と、細胞中に形質移入されたmiRNAモジュレーター(模倣剤または阻害剤)との相互作用は、単離または同定することによって、潜在的な治療標的を発見することができる。その標的は上流にあって、miRNA活性を調節することができ、または標的は下流にあることができ、その活性は、miRNAによって調節される。さらに、本発明のRNA分子は、in vivoで、例えば、患部組織の異種移植片を有する動物モデルまたは細胞集団において、薬物標的発見および検証を行うために使用することができる。
【0170】
ネットワークまたはいくつかのmiRNAは、同じ遺伝子産物または経路を標的にすることができる(Sethupathy Pら RNA 12巻:192〜197頁(2006年))という証拠を伴って、様々なmiRNAの模倣剤、様々なmiRNAの阻害剤、ならびに様々なmiRNAの模倣剤および阻害剤の混合物を含めた本発明の複数のRNA分子は、同じ遺伝子産物の同時制御を含めた様々なmiRNA経路間の相互関係を研究するために使用することができる。
【0171】
追加のin vivo用途に関して、本発明は、機能的なmiRNA模倣剤および阻害剤を提供するので、これらが宿主体中にそれぞれ導入された後、システム生物学の手法を、様々な細胞型および様々な組織上で模倣または阻害されている、ある特定のmiRNAの効果を研究することに採用することができる。
【0172】
さらに、miRNAによって媒介された転写後の遺伝子サイレンシングを調節するその能力を伴って、本発明のRNA分子は、遺伝子機能を研究および検証するために、遺伝子操作されたノックアウトモデルとは対照的に、動物モデルにおいて遺伝子「ノックダウン」を作り出すために使用することができる。
【0173】
本発明のRNA分子は、二本鎖の二重鎖で、または二本鎖形態で使用される一本鎖として分離されて、研究試薬として供給することができる。したがって、本発明は、上述したものを含めた任意の適当な形態で本発明のRNA分子を含むキットも提供する。
【0174】
3.2.治療用途
本発明のRNA分子は、Dykxhoorn、Novina & Sharp. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 4巻:457〜467頁(2003年);Kim & Rossi、Nature Rev. Genet. 8巻:173〜184頁(2007年);de Fougerollesら Nature Rev. Drug Discov. 6巻:443〜453頁(2007年);Czech、NEJM 354巻:1194〜1195頁(2006年);ならびにMack、Nature Biotech. 25巻:631〜638頁(2007年);TongおよびNemunaitis、Cancer Gene Therapy 15巻:341〜355頁(2008年)に要約されている疾患を含めた様々な疾患の治療およびまたは予防のために使用することができる。
【0175】
一実施形態において、本発明の模倣剤は、所望のmiRNA機能を正常なレベルに再構成し、それによって疾患を治療し、または症状を軽減するために使用される。別の実施形態において、本発明の阻害剤は、望まれないmiRNA活性を低減または排除し、それによってmiRNAの過剰発現または異所性発現によって生じる疾患を治療するために使用される。複数の模倣剤、複数の阻害剤、ならびに模倣剤および阻害剤の混合物の組合せの使用も使用することができる。
【0176】
一実施形態において、本発明は、1つまたは複数の癌関連遺伝子を標的にすることによって、癌療法として、または癌を予防するために使用される。この方法は、本発明のmiRNA模倣剤および/または阻害剤を使用して、腫瘍抑制遺伝子を上方制御することによって、および/または本発明のmiRNA阻害剤および/または模倣剤を使用して、細胞増殖または他の癌表現型に関与する遺伝子をサイレンシングすることによって行われる。
【0177】
一実施形態において、本発明による治療的模倣剤は、発癌遺伝子を標的にするmiRNAを模倣する。そのような腫瘍抑制miRNAの例として、let−7ファミリー、miR−15a、miR−16−1、miR−34a、miR−143、miR−145などを挙げることができる。これらのmiRNAによって標的にされる様々な発癌遺伝子の例には、k−Rasおよびbcl−2が含まれる。例えば、k−Rasは、miRNA Let−7によって制御されることが示されている。これらの発癌遺伝子は、大多数の臨床症例において活性であり、関連している。例えば、k−Rasは、大多数のヒト結腸癌、膵癌、および非小細胞肺癌において異常に活性である。さらに、k−Ras突然変異は、化学療法および現在の標的療法に対する抵抗力を付与する。
【0178】
一実施形態において、本発明による治療的阻害剤は、腫瘍抑制遺伝子を標的にするmiRNAを阻害する。そのようなmiRNAの例として、miR−17/92クラスター、miR−21、miR−106、miR−155、miR−221、miR−222などを挙げることができる。これらのmiRNAによって標的にされる腫瘍抑制遺伝子の例には、ERK5およびp27(kip1)が含まれる(TongおよびNemunaitis、Cancer Gene Therapy 15巻:341〜355頁(2008年))。
【0179】
これらのRNA分子は、模倣または阻害されているmiRNAによって標的にされる非癌遺伝子を調節するためにも使用することができる。本発明のRNA分子は、眼疾患(例えば、加齢黄斑変性症(AMD)および糖尿病性網膜症(DR));感染症(例えば、HIV/AIDS、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、RCV、サイトメガロウイルス(CMV)、デング熱、西ナイル熱);呼吸器疾患(例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、喘息、嚢胞性線維症);神経疾患(例えば、ハンチンドン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病、疼痛);心血管疾患;代謝障害(例えば、糖尿病);遺伝子障害;ならびに炎症状態(例えば、炎症性腸疾患(IBD)、関節炎、リウマチ様疾患、自己免疫障害)、皮膚病、精神障害(例えば、双極性障害)を治療または予防するためにも使用することができる。
【0180】
4.製造および使用
4.1.aiRNA分子の作製
本発明のRNA分子は、化学反応および合成を介するもの、生物学的プロセス、および/または酵素で生じるプロセスを介するものを含めて、任意の適当な手段によって作製することができる。
【0181】
所与の配列のRNA分子の化学合成は、当技術分野で周知である。RNA分子を作製するための生物学的プロセスも周知である。例えば、ウイルス性、真核生物、または細菌性のDNA発現ベクターは、適切なプロモーターと構築することによって、宿主細胞(例えば、細菌)中に形質移入されると、対応するDNA配列を設計されたRNA配列へ転写することができる。一実施形態において、転写物は、リボヌクレアーゼで生じる部位特異的切断などの酵素作用が必要とされるような、最終のRNA二重鎖に対する前駆体とすることができる。例えば、本発明のaiRNA分子の両方の鎖は、本発明の二本鎖RNA分子を形成するために2本の別々の鎖に切断されることを必要とする一本鎖へと転写され得る。
【0182】
本発明の一態様は、本発明の二本鎖RNA分子の一部またはすべて(例えば、非対称の鎖の1つ)をコードするDNA配列を含む発現ベクターを対象とし、DNA配列は、発現制御配列、例えば、プロモーターに作動可能に連結している。一実施形態において、ベクターは一本鎖である。さらなる実施形態において、本発明のRNA分子の異なる鎖をそれぞれコードする2つの異なるベクターが提供されることによって、細胞に同時形質移入し、この細胞内で2本の発現された鎖が二重鎖を形成する。別の実施形態において、ベクターは二本鎖であり、それぞれの鎖は、発現制御配列に作動可能に連結したRNA分子の異なる鎖のためのDNA配列を含む。さらに、本発明は、そのような発現ベクターを含む細胞を提供する。細胞は、哺乳動物細胞、トリ細胞、または細菌細胞とすることができる。
【0183】
aiRNA分子の2本の鎖は、任意の上記プロセスで、別々に、または同時に製造することができる。例えば、生物学的プロセスにおいて、2つのベクターを構築することによって、aiRNAのより短い鎖およびより長い鎖を別々に発現することができ、または2本の鎖を有する単一のベクターを構築することによって、aiRNA分子の2本の鎖を同時に発現することができる。
【0184】
4.2.RNA分子の修飾
裸のRNA分子は、相対的に不安定であり、in vivoで相対的に迅速に劣化し得る。siRNA、miRNAの模倣剤、miRNAの阻害剤を含めた、本発明のRNA分子に化学修飾を導入することによって、これらの生物活性を低減することなく、これらの半減期を改善し、遺伝子標的化の非特異的効果のリスクをさらに低減することができる。
【0185】
RNA分子の修飾は、アンチセンスRNA、リボザイム、アプタマー、およびRNAiを含めた様々なRNA分子の安定性を改善するために調査されている。(例えば、Chiu & Rana、RNA 9巻:1034〜1048頁(2003年);Czaudernaら、Nucleic Acids Research 31巻:2705〜2716頁(2003年);Zhang HYら、Curr Top Med Chem. 6巻:893〜900頁(2006年);Kim & Rossi、Nature Rev. Genet. 8巻:173〜184頁(2007年);de Fougerollesら Nature Rev. Drug Discov. 6巻:443〜453頁(2007年);およびSchmit、Nature Biotech. 25巻:273〜275頁(2007)年;およびMack、Nature Biotech. 25巻:631〜638頁(2007年)を参照されたい)。
【0186】
当業者に既知の任意の安定化修飾を使用することによって、本発明のRNA分子の安定性を改善することができる。本発明のRNA分子内で、化学修飾は、リン酸骨格(例えば、ホスホロチオエート連結)、リボース(例えば、ロックされた核酸、2’−デオキシ−2’−フルオロウリジン、2’−O−メチル(mthyl))、および/または塩基(例えば、2’−フルオロピリミジン)に導入することができる。そのような化学修飾のいくつかの例を以下に要約する。
【0187】
血清中でエンドヌクレアーゼ活性に対する抵抗力を増大させる、2’−O−メチルプリンおよび2’−フルオロピリミジンなどの、リボースの2’位での化学修飾を採用することによって、本発明のRNA分子を安定化することができる。修飾を導入するための位置は、RNA分子のサイレンシング効力を著しく低減することを回避するために、慎重に選択されるべきである。例えば、ガイド鎖の5’末端上の修飾は、サイレンシング活性を低減し得る。一方、2’−O−メチル修飾を、二本鎖領域での2本のRNA鎖の間に交互に配置することによって、遺伝子サイレンシング効力を保存しながら安定性を改善することができる。2’−O−メチル修飾は、インターフェロンの誘発を排除または低減することもできる。
【0188】
別の安定化修飾は、ホスホロチオエート(P=S)連結である。例えば、3’突出での、RNA分子中へのホスホロチオエート(P=S)連結の導入は、エキソヌクレアーゼに対する保護を提供することができる。
【0189】
RNA分子中へのデオキシリボヌクレオチドの導入も、製造費用を低減し、安定性を増大させることができる。
【0190】
一実施形態において、3’突出、5’突出、またはその両方が、劣化に対して安定化される。一実施形態において、RNA分子は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたはその類似体を含む。さらなる実施形態において、修飾リボヌクレオチドは、その糖、骨格、塩基、またはこの3つの任意の組合せにおいて修飾される。
【0191】
一実施形態において、ヌクレオチド類似体は、糖修飾リボヌクレオチドである。さらなる実施形態において、ヌクレオチド類似体の2’−OH基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、またはCNから選択される基によって置換され、各Rは独立に、C1〜C6アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロは、F、Cl、BrまたはIである。
【0192】
代替の実施形態において、ヌクレオチド類似体は、ホスホチオエート基を含む骨格修飾リボヌクレオチドである。
【0193】
一実施形態において、二重鎖RNA分子は、少なくとも1つのデオキシヌクレオチドを含む。さらなる実施形態において、第1鎖は、1〜6つのデオキシヌクレオチドを含む。なおさらなる実施形態において、第1鎖は、1〜3つのデオキシヌクレオチドを含む。別の実施形態において、3’突出は、1〜3つのデオキシヌクレオチドを含む。さらなる実施形態において、5’突出は、1〜3つのデオキシヌクレオチドを含む。代替の実施形態において、第2鎖は1〜5つのデオキシヌクレオチドを含む。
【0194】
一実施形態において、二重鎖RNA分子は、少なくとも1つのデオキシヌクレオチドを含む3’突出または5’突出を含む。別の実施形態において、RNAの3’突出および/または5’突出は、デオキシヌクレオチドからなる。
【0195】
一実施形態において、二重鎖RNA分子は、実体とコンジュゲートしている。さらなる実施形態において、実体は、ペプチド、抗体、ポリマー、脂質、オリゴヌクレオチド、およびアプタマーからなる群から選択される。
【0196】
別の実施形態において、第1鎖と第2鎖は、化学リンカーによって結合されている。
【0197】
4.3.RNA分子のin vivo送達
RNAiの治療用途にとっての1つの主な障害は、標的細胞へのsiRNAの送達である(Zamore PD、Aronin N. Nature Medicine 9巻:266〜8頁(2003年))。様々な手法が、RNA分子、特にsiRNA分子の送達のために開発された(例えば、Dykxhoorn、Novina & Sharp. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 4巻:457〜467頁(2003年);Kim & Rossi、Nature Rev. Genet. 8巻:173〜184頁(2007年);およびde Fougerollesら Nature Rev. Drug Discov. 6巻:443〜453頁(2007年)を参照されたい)。当業者に既知の任意の送達手法を、本発明のRNA分子の送達のために使用することができる。
【0198】
送達における主な問題点として、血清中の不安定性、非特異的な分布、組織障壁、および非特異的なインターフェロン応答が挙げられる(Lu & Woodle、Methods in Mol Biology 437巻:93〜107頁(2008年))。そのsiRNAおよびmiRNA対応物と比較して、aiRNA分子はいくつかの利点を有し、これは、より広い範囲の方法を送達目的のために利用可能にするはずである。第1に、aiRNAは、そのsiRNAおよびmiRNA対応物より小さいように設計することができ、したがって、任意のインターフェロン応答を低減または排除することができる。第2に、aiRNAは、より強力であり、より速く開始し、より有効であり、より長く持続し、したがって、治療目的を実現するのに、より少ない量/投与量のaiRNAを必要とする。第3に、aiRNAは二本鎖であり、一本鎖のアンチセンスオリゴおよびmiRNAより安定であり、これらは、化学的にさらに修飾されることによって、安定性を増強することができる。したがって、本発明のRNA分子は、様々な全身的または局所的な送達経路を介して対象中に送達することができる。いくつかの実施形態において、本発明の分子は、静脈内(I.V.)および腹腔内(ip)を含む全身送達経路を介して送達される。他の実施形態において、本発明の分子は、局所的な送達経路、例えば、鼻腔内、硝子体内、気管内、脳内、筋肉内、関節内、および腫瘍内を介して送達される。
【0199】
送達技術の例として、裸のRNA分子の直接注射、コレステロールなどの天然リガンドへのRNA分子の結合、またはアプタマー、リポソーム調合送達、および抗体−プロタミン融合タンパク質への非共有結合が挙げられる。他の担体の選択肢には、正に帯電した担体(例えば、陽イオン性の脂質およびポリマー)ならびに様々なタンパク質担体が含まれる。一実施形態において、本発明の分子の送達は、陽イオン性リポソーム複合体またはポリマー複合体系に基づくリガンド標的送達系を使用する(Woodleら J Control Release 74巻:309〜311頁;Songら Nat Biotechnol. 23巻(6号):709〜717頁(2005年);Morrisseyら Nat Biotechnol. 23巻(8号):1002〜1007頁(2005年))。
【0200】
一実施形態において、本発明の分子は、in vivo送達のために、コラーゲン担体、例えば、アテロコラーゲンと製剤化される。アテロコラーゲンは、siRNAをRNaseによって消化されることから保護し、徐放を可能にすることが報告されている(Minakuchiら Nucleic Acids Res. 32巻:e109頁(2004年);Takeiら Cancer Res. 64巻:3365〜3370頁(2004年))。別の実施形態において、本発明の分子は、ナノ粒子と製剤化され、またはナノエマルジョン、例えば、RGDペプチドリガンド標的ナノ粒子を形成する。異なるsiRNAオリゴを、同じRGDリガンド標的ナノ粒子中で混合することによって、いくつかの遺伝子を同時に標的にすることができることが示された(Woodleら Materials Today 8巻(補遺1):34〜41頁(2005年))。
【0201】
ウイルスベクターも、本発明のRNA分子の送達のために使用することができる。一実施形態において、レンチウイルスベクターが、安定な発現のためにゲノムに組み込むRNA分子導入遺伝子を送達するために使用される。別の実施形態において、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)が、ゲノムに組み込まれないで、エピソーム発現を有するRNA分子導入遺伝子を送達するために使用される。
【0202】
さらに、本発明のRNA分子の送達のために、細菌を使用することができる。(Xiang、Fruehauf、& Li、Nature Biotechnology 24巻:697〜702頁(2006年)を参照されたい)。
【0203】
4.4.医薬組成物および製剤
本発明の医薬組成物および製剤は、RNA成分を除いて、siRNA、miRNA、およびアンチセンスRNAに対して開発された医薬組成物および製剤と同じであるか、同様であってもよい(例えば、Kim & Rossi、Nature Rev. Genet. 8巻:173〜184頁(2007年);およびde Fougerollesら Nature Rev. Drug Discov. 6巻:443〜453頁(2007年)を参照されたい)。医薬組成物および製剤中のsiRNA、miRNA、およびアンチセンスRNAは、本情報の二重鎖RNA分子によって置換することができる。医薬組成物および製剤は、さらに改変することによって、本情報の二重鎖RNA分子に適応させることもできる。
【0204】
開示された二重鎖RNA分子の「薬学的に許容される塩」または「塩」は、イオン結合を含む開示された二重鎖RNA分子の生成物であり、一般に、開示された二重鎖RNA分子を、対象に投与するのに適した酸または塩基と反応させることによって生成される。薬学的に許容される塩として、それだけに限らないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、および酒石酸塩を含めた酸付加塩;Na、K、Liなどのアルカリ金属陽イオン、MgまたはCaなどのアルカリ土類金属塩、または有機アミン塩を挙げることができる。
【0205】
「医薬組成物」は、対象への投与に適した形態での、開示された二重鎖RNA分子を含む製剤である。一実施形態において、医薬組成物は、バルクまたは単位剤形である。単位剤形は、例えば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器上の単一ポンプ、またはバイアルを含めた様々な形態のいずれかである。単位用量の組成物中の活性成分(例えば、開示された二重鎖RNA分子またはその塩の製剤)の量は、有効量であり、関与する特定の治療によって変化する。当業者は、患者の年齢および状態に応じて、投与量に対して日常の変更を行うことが時折必要であることを理解するであろう。投与量は、投与経路にも依存する。様々な経路は、経口、肺性、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内などを含めて企図されている。本発明の二重鎖RNA分子の局所または経皮投与のための剤形として、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション剤、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤が挙げられる。一実施形態において、活性な二重鎖RNA分子は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体、および必要とされる任意の保存剤、緩衝液、または噴霧剤と混合される。
【0206】
本発明は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤または担体と組み合わせた、本発明の二重鎖RNA分子を含む医薬製剤も提供する。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」は、薬剤投与に適合性である、任意の、およびすべての溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれることが意図されている。適当な担体は、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy、20版」、Lippincott Williams&Wilkins、Philadelphia、PA.に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれている。そのような担体または希釈剤の例として、それだけに限らないが、水、食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、および5%のヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソームおよび固定油などの非水性のビヒクルも使用することができる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒質および作用剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒質または作用剤が、活性な二重鎖RNA分子と不適合である場合を除いて、組成物中でのこれらの使用は企図されている。追加の活性な二重鎖RNA分子も、組成物中に組み込むことができる。
【0207】
一実施形態において、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤は、静脈内送達のための脂質を含む。脂質は、リン脂質、合成ホファチジルコリン、天然ホファチジルコリン、スフィンゴミエリン、セラミド、ホファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、コレステロール、コレステロール硫酸、ならびにハプテンおよびPEG結合脂質とすることができる。脂質は、ナノエマルジョン、ミセル、エマルジョン、懸濁液、ナノ懸濁液、ニオソーム、またはリポソームの形態であってもよい。一実施形態において、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤は、ミセルエマルジョン、懸濁液、またはナノ粒子懸濁液の形態であり、これは、静脈内送達のために、静脈内で許容されるタンパク質、例えば、ヒトアルブミンまたはその誘導体をさらに含む。
【0208】
一実施形態において、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤は、経口送達のためのワックス状物質を含む。ワックス状物質は、モノ−、ジ−、またはトリグリセリド、PEGのモノ−、ジ脂肪酸エステル、PEG結合ビタミンE(ビタミンE TPG)、ゲルシレおよび/またはゲルシレ44/14とすることができる。一実施形態において、薬学的に許容される賦形剤、例えば、ゲルシレ44/14は、Tween80またはTween20であってもよい界面活性剤と混合される。これらの実施形態の医薬組成物は、経口投与のためにさらに製剤化することができる。製剤のための方法は、PCT国際出願PCT/US02/24262(WO03/011224)、米国特許出願公開第2003/0091639号、および米国特許出願公開第2004/0071775号に開示されており、そのそれぞれは、本明細書に参照により組み込まれている。
【0209】
本発明の二重鎖RNA分子は、治療有効量(例えば、腫瘍増殖の阻害、腫瘍細胞の死滅、細胞増殖性障害の治療または予防などによる所望の治療効果を実現するのに十分な有効なレベル)の本発明の二重鎖RNA分子(活性成分として)を、従来の手順によって標準的な医薬担体または希釈剤と組み合わせることによって(すなわち、本発明の医薬組成物を製造することによって)調製された適当な剤形で投与される。これらの手順は、所望の製剤を得るために、適切な場合、成分の混合、顆粒化、および圧縮または溶解を伴う場合がある。別の実施形態において、治療有効量の本発明の二重鎖RNA分子は、標準的な医薬担体または希釈剤を含まない適当な剤形で投与される。
【0210】
薬学的に許容される担体として、固体担体、例えば、ラクトース、テラアルバ、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などが挙げられる。例示的な液体担体として、シロップ、ラッカセイ油、オリーブ油、水などが挙げられる。同様に、担体または希釈剤として、当技術分野で既知の時間遅延物質、例えば、単独の、またはワックスを含むモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリレートなどを挙げることができる。他の充填剤、賦形剤、香味剤、および当技術分野で既知のものなどの他の添加剤も、本発明による医薬組成物中に含めることができる。
【0211】
本発明の活性な二重鎖RNA分子を含む医薬組成物は、一般に既知の様式で、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸作製、湿式混合、乳化、カプセル封入、エントラッピング、または凍結乾燥プロセスによって製造することができる。医薬組成物は、活性な二重鎖RNA分子の薬学的に使用することができる製剤への加工を促進する賦形剤および/または助剤を含む、1つまたは複数の生理的に許容される担体を使用して、従来の様式で製剤化することができる。もちろん、適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0212】
本発明の二重鎖RNA分子または医薬組成物は、化学療法剤治療に対して現在使用されている、多くの周知の方法で対象に投与することができる。例えば、癌の治療のために、本発明の二重鎖RNA分子は、腫瘍中に直接注射し、血流もしくは体腔中に注射し、または経口服用し、またはパッチを用いて皮膚を介して適用することができる。乾癬状態の治療については、全身投与(例えば、経口投与)、または皮膚の患部への局所投与は、好適な投与経路である。選択される用量は、有効な治療となるのに十分であるが、容認できない副作用を生じるほど高くあるべきでない。患者の病状(例えば、癌、乾癬など)および健康は、治療の間、および治療後の妥当な期間密接にモニターされるべきである。
【0213】
本発明の二重鎖RNA分子または医薬組成物は、任意の適当な投薬範囲、投薬頻度、および血漿濃度で対象に投与することができる。一実施形態において、対象は、1日当たり1ng〜1g、1日当たり100ng〜1g、または1日当たり1μg〜500mgなどの有効投与量で、本発明の医薬組成物を用いて治療されている。
【実施例】
【0214】
本発明の様々な特徴をさらに例示するために、いくつかの実施例を以下に示す。これらの実施例は、本発明を実施するのに有用な方法も例示する。これらの実施例は、特許請求に係る本発明を制限するものではない。
【0215】
方法および材料
細胞培養および試薬
Hela、SW480、DLD1、HT29、およびH1299細胞をATCCから入手し、10%のウシ胎児血清(FBS)、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンおよび2mMのL−グルタミン(Invitrogen)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。新鮮な末梢血単核細胞(PBMC)はAllCells LLCから得て、10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地(Invitrogen)中に維持した。この試験中に記載する小RNAはDharmacon、Qiagen、またはIntegrated DNA技術(表2)によって合成され、製造者の説明書に従いアニーリングした(図3a)。ヒトAgo2を標的とするsiRNA、およびDicer(Ambion)は100nMで使用した。RNAのトランスフェクションは示した濃度でDharmaFECT1(Dharmacon)を使用して実施した。ヒトArgonaute2(Ago2)発現ベクター(OriGene)は、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用してトランスフェクトした。血清中安定性は、示した時間量のaiRNA二重鎖またはsiRNA二重鎖を10%ヒト血清(Sigma)とともにインキュベーション、次に非変性TBE−アクリルアミドゲル電気泳動および臭化エチジウム染色によって決定した。
【0216】
ノーザンブロット分析。
【0217】
β−カテニンのレベルを決定するために、様々な時間時点でsiRNAまたはaiRNAトランスフェクトHela細胞からTRIZOL(Invitrogen)を用いて全RNAを抽出した。20μgの全細胞RNAを変性アガロースゲルのそれぞれのレーンに載せた。電気泳動後、RNAはHybond−XLナイロン膜(Amersham Biosciences)に移し、UV架橋させ、30分間80℃で焼いた。β−カテニンおよびアクチンmRNAを検出するプローブを、β−カテニンcDNA断片(1〜568nt)およびアクチンcDNA断片(1〜500nt)から、Prime−It IIランダムプライマー標識キット(Stratagene)を使用して調製した。小RNAのRISCローディングを分析するために、pCMV−Ago2を用いたトランスフェクション後48時間でsiRNAまたはaiRNAをHela細胞にトランスフェクトした。細胞は示した時間時点で溶かし、Ago2抗体を用いて免疫沈降させた。免疫沈降物を洗浄し、RNAはTRIZOL抽出によって複合体から単離し、15%TBE−尿素PAGEゲル(Bio−Rad)に載せた。電気泳動後、RNAはHybond−XLナイロン膜に移した。mirVana miRNAプローブキット(Ambion)を使用して5’32P標識RNAプローブを作製した。アンチセンスプローブ(5’−GUAGCUGAUAUUGAUGGACUU−3’)。センスプローブ(5’−UCCAUCAAUAUCAGC−3’)
in vitroでのAgo2−RISCローディング。
【0218】
aiRNAまたはsiRNAセンスおよびアンチセンス鎖を、T4キナーゼ(Promega)を使用して32P末端標識した。末端標識RNAはフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールによって精製し、EtOHで沈殿させ、水中に再懸濁した。次いで標識RNAを、記載したようにsiRNAまたはaiRNAアンチセンス鎖とアニーリングさせた。in vitro溶解物用に、Hela細胞をヒトAgo2発現ベクターで24時間トランスフェクトし、S10溶解物をほぼ記載したように生成した(Dignamら、1983年)。5’センス鎖またはアンチセンス鎖標識二重鎖aiRNAまたはsiRNAを、次いでAgo2−S10溶解物に加えた。37℃で5分間のインキュベーション後、Ago2を記載したように免疫沈降させ、Ago2結合(ペレット)と非Ago2結合(上清)画分を20%TBE−アクリルアミドゲル上で分離し、ゲルをフィルムに感光させてセンス鎖−Ago2結合を検出した。aiRNAとsiRNAの競合実験用に、100倍までの非放射能のaiRNAおよびsiRNAを使用して、32P標識aiRNAまたはsiRNAと競合させRISCをローディングした。簡単に言うと、S10溶解物を記載したようにAgo2発現ベクターでトランスフェクトしたHela細胞から生成した。次いで標識aiRNAまたはsiRNAをS10溶解物に加え、次いで直後に非標識aiRNAまたはsiRNAを加えた。反応物は5分間37℃でインキュベートし、上に記載したように処理した。
【0219】
qRT−PCR
siRNA、示したaiRNA、示したaiRNA抗miRNA、または市販のmiRNA阻害剤(Ambion)でトランスフェクトした細胞を、トランスフェクション後に示した時間時点で採取した。RNAはTRIZOLで単離した。mRNA用に、qRT−PCRを、StepOneリアルタイムPCRでのTaqManワンステップRT−PCR試薬および示したmRNA用のプライマープローブセット(Applied Biosystems)を使用して実施した。データは対照トランスフェクト細胞に対して表し、それぞれの試料はアクチンmRNAレベルに正規化する。miRNA用に、miRNAの逆転写はTaqManマイクロRNA逆転写キット(Applied Biosystems)を使用して実施し、cDNAはStepOneリアルタイムPCR機器(Applied Biosciences)でのTaqManマイクロRNAアッセイ(Applied Biosystems)を使用するリアルタイムPCRを施し、それぞれの試料はU6snRNAに正規化する。図14d中の実験用に、HindIII−Xho1部位でのpcDNA3.1またはpcDNA3.1のいずれかへのStat3c DNA(Origene)のクローニングによってStat3構築物を作製した。次いでStat3順方向または逆方向発現ベクターを、24時間aiStat3またはsiStat3を用いてHela細胞にコトランスフェクトした。次いで細胞を採取し、TRIZOLによってRNAを単離し、TaqManワンステップRT−PCR試薬およびStat3またはアクチン用のプライマープローブセット(Applied Biosystems)を使用してqRT−PCRを実施した。RT−PCRは、Superscript ワンステップ RT−PCRキット(Invitrogen)およびStat3順方向(5’−GGATCTAGAATCAGCTACAGCAGC−3’)およびStat3逆方向(5’−TCCTCTAGAGGGCAATCTCCATTG−3’)プライマーおよびアクチン順方向(5’−CCATGGATGATGATATCGCC−3’)およびアクチン逆方向(5’−TAGAAGCATTTGCGGTGGAC−3’)プライマーを使用して同じRNA試料で実施した。
【0220】
RT−PCR。
【0221】
全RNAはTRIZOLを使用して調製し、cDNAはランダムプライマーおよびThermoscript RT−PCR System(Invitrogen)を使用して合成した。PCRはPfxポリメラーゼを使用して20サイクルで実施した。プライマー:アクチン−1、5’CCATGGATGATGATATCGCC−3’;アクチン−2、5’−TAGAAGCATTTGCGGTGGAC−3’;β−カテニン−1、5’−GACAATGGCTACTCAAGCTG−3’;β−カテニン−2、5’−CAGGTCAGTATCAAACCAGG−3’。
【0222】
ウエスタンブロット
細胞を氷冷リン酸塩緩衝化食塩水で二回洗浄し、溶解バッファー(50mMのHEPES、pH7.5、0.5%のNonidet P−40、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのEGTA、1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、1mMのジチオスレイトール、1mMのNaF、2mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド、および10μg/mlのそれぞれのペプスタチン、リューペプチン、およびアプロチニン)中で溶解した。20μgの可溶性タンパク質をSDS−PAGEによって分離し、PVDF膜に移した。β−カテニン、Nbs1、サバイビン、p21、Rsk1、k−Ras、Stat3、PCNA、NQO1、アクチン(Santa Cruz)、EF2、p70S6K、mTOR、PTEN(Cell Signaling Technology)、Ago2(Wako)、Dicer(Novus)、およびParp1(EMD Biosciences)に対する一次抗体をこの試験中で使用した。抗原−抗体複合体は増強化学発光(GE Biosciences)によって目に見える状態にした。
【0223】
miRNAのRT−PCRおよびウエスタンブロット分析
Hela細胞を100nMの示したaiRNAまたはマイクロRNA阻害剤でトランスフェクトした。トランスフェクション後24時間で、TRIZOL(Invitrogen)を使用してRNA用に、または氷上で30分間のインキュベーションにより全細胞抽出バッファー(50mMのHEPES、2mMの塩化マグネシウム、250mMの塩化ナトリウム、0.1mMのEDTA、1mMのEGTA、0.1%のNonidet P−40、1mMのジチオスレイトール、1×哺乳動物プロテアーゼ阻害剤カクテル[Sigma]、1×ホスファターゼ阻害剤カクテルIおよびII[Sigma])を使用してタンパク質用に細胞を採取した。可溶性タンパク質は微小遠心機中の13,000×gでの遠心分離によって分離し、上清は−70℃で保存した。タンパク質はドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析によって分離し、エレクトロブロッティングによってポリビニリデンジフルオリド膜に移した。k−Rasおよびアクチンを検出するために使用した一次抗体(Santa Cruz Biotechnology)を膜とともにインキュベートし、次にHRP結合二次抗体(GE Biosciences)でインキュベートし、化学発光によって目に見える状態にした(GE Biosciences)。RT−PCRは、Superscript ワンステップ RT−PCRキット(Invitrogen)およびk−Ras順方向(5’−AGTACAGTGCAATGAGGGACCAGT)、k−Ras逆方向(5’−AGCATCCTCCACTCTCTGTCTTGT)、アクチン順方向(5’−CCATGGATGATGATATCGCC)およびアクチン逆方向(5’−TAGAAGCATTTGCGGTGGAC)プライマーを使用してRNA試料で実施した。
【0224】
5’−RACE分析
非サイレンシングaiRNAまたはaiRNAで処理したHela細胞由来の全RNA(5μg)を、任意の事前処理なしでGeneRacer(商標)RNAアダプター(Invitrogen、5’−CGACUGGAGCACGAGGACACUGACAUGGACUGAAGGAGUAGAAA−3’)と連結させた。連結RNAはランダムプライマーを使用してcDNAに逆転写した。切断産物を検出するために、RNAアダプターと相補的なプライマー(GeneRacer(商標)5’ネステッドプライマー:5’−GGACACTGACATGGACTGAAGGAGTA−3’)およびβ−カテニン特異的プライマー(GSP:5’−CGCATGATAGCGTGTCTGGAAGCTT−3’)を使用してPCRを実施した。増幅断片は1.4%アガロースゲルで分けて、1−kbのPlus DNAラダー(Invitrogen)を使用して分子量を決めた。特異的切断部位をDNA配列決定によってさらに確認した。
【0225】
インターフェロン応答の検出。
【0226】
図15a中の実験用に、PBMCを100nMのβ−カテニンsiRNAまたはaiRNAと直接インキュベートした。全てのRNAはTRIZOLを使用して16時間で精製し、インターフェロン応答遺伝子の発現のレベルは、製造者(System Biosciences)によって記載されたようにRT−PCRによって決定した。図15b中の実験用に、Hela細胞をモックトランスフェクトしたかまたは24時間100nMの示したaiRNAまたはsiRNAでトランスフェクトした。全てのRNAはTRIZOLを使用して精製し、インターフェロン応答遺伝子の発現のレベルはRT−PCRによって決定した。マイクロアレイ分析用に、Hela細胞を100nMのaiRNAまたはsiRNAでトランスフェクトした。全てのRNAはTRIZOLを使用して24時間で精製し、RNAは製造者のプロトコル(ExpressionAnalysis、Inc.)に従いヒトゲノムU133 Plus 2.0遺伝子チップ(Affymetrix)とのハイブリダイゼーションに使用した。DharmaFECT1処理細胞由来のRNAを対照として使用した。転写産物の発現値を計算するために、マイクロアレイSuite5.0をクオンタイル正規化で使用し、存在すると言われる(P)十分なハイブリダイゼーションシグナルを有する転写産物をこの試験中で使用した。
【0227】
aiRNA配列およびsiRNA配列
aiRNA二重鎖およびsiRNA二重鎖の配列および構造を表2中に挙げる。点突然変異の位置をk−Ras aiRNAにおいて枠で囲む。
【0228】
【表2】

寿命評価
それぞれの動物の健康状態の毎日の検査も実施した。体重を3日毎に調べた。食餌および水は動物飼育施設の手順に従い毎日供給した。20%を超える死亡率およびまたは20%を超える正味体重の減少をもたらした治療は毒性であると考えた。結果は平均腫瘍体積(mm)±SEとして表す。0.05未満のP値は統計上関連があると考える。
【0229】
動物飼育
オスまたはメスの無胸腺ヌードマウス4〜5週齢(Charles River Laboratories、Wilmington、MA.)を、試験開始前に少なくとも1週間動物飼育施設に順応させた。使用した全ての実験手順はAmerican Physiology SocietyおよびGuide for the Care and Use of Laboratory Animalsによって概説されたガイドラインと一致し、これらはInstitutional Animal Care and Use Committee of Boston Biomedical Inc.によっても承認された。動物は制御温度(68°F〜72°F)、光(12時間明−暗サイクル)、および湿度(45〜55%)を有する室内で、木材チップを敷き詰めたケージにおいて4群で飼育した。実験中、動物は水および食餌に自由にアクセスさせた。
【0230】
(実施例1.)
非対称性干渉RNA(aiRNA)は、哺乳動物細胞において遺伝子特異的サイレンシングを引き起こす。
【0231】
siRNAの構造的足場は、RISC中に組込みRNAiを媒介するのに必要な形状であると考えられる(Elbashirら、2001a;Elbashirら、2001b;Elbashirら、2001c;Rana、2007年;Zamoreら、2000年)。しかしながら、RISCの組込みおよび遺伝子サイレンシングに関するRNA二重鎖足場の要件についてはほとんど知られていない。有効なRNAiメディエーターおよびRISC基質に関する構造的足場の要件を調べるために、本発明者らは最初に、siRNAより短いRNA二重鎖が遺伝子サイレンシングを媒介することができたかどうか決定した。二本鎖(ds)RNAの長さは、タンパク質キナーゼR(PKR)媒介非特異的インターフェロン応答の活性化、合成コストの増大、および送達問題における、その傾向の重要な決定因子である(Elbashirら、2001b;Sledzら、2003年)。本発明者らは、異なる哺乳動物の遺伝子を標的化する2ヌクレオチド3’突出または平滑末端を有する12〜21bpの範囲に一連の短いdsRNAを設計した。長さが19bp未満に低減した後に遺伝子サイレンシングは検出せず(データ示さず)、これはDrosophila Melanogasterの細胞溶解物における以前の報告(Elbashirら、2001b)、および19〜21bpがRNAiを媒介する最も短いsiRNA二重鎖であるという概念と一致する(Elbashirら、2001a;Elbashirら、2001b;Elbashirら、2001c;Rana、2007年;Zamoreら、2000年)。
【0232】
次に本発明者らは、突出の非対称性構造を有する非siRNA足場のRNA二重鎖が、遺伝子サイレンシングを媒介することができるかどうか試験した。siRNA二重鎖は対称センス鎖およびアンチセンス鎖を含有する。3’突出を含有する二重鎖siRNA構造はRISC複合体中への取り込みに必要とされるが、センス鎖のArgonaute(Ago)媒介切断後、アンチセンス鎖は標的mRNAの切断を誘導する(Hammondら、2001年;Matrangaら、2005年;Tabaraら、1999年)。本発明者らは、アンチセンス鎖の3’末端および5’末端に突出を有する様々な長さの非対称性RNA二重鎖を作製しようと努めた。
【0233】
表3中に示す配列を有するオリゴを、アニーリング後20%ポリアクリルアミドゲルによって確認した。図3A中に示すように、それぞれのレーンには以下のように載せた:レーン1、21nt/21nt;レーン2、12nt(a)/21nt;レーン3、12nt(b)/21nt;レーン4、13nt/13nt;レーン5、13nt/21nt;レーン6、14nt/14nt;レーン7、14nt(a)/21nt;レーン8、14nt(b)/21nt;レーン9、15nt/15nt;レーン10、15nt/21nt。
【0234】
【表3】

HeLa細胞を200,000細胞/ウエルで6ウエル培養プレートに平板培養した。図3B中に示すように、24時間後、それらをスクランブルsiRNA(レーン1)、E2F1標的化21−bp siRNA(レーン2、特異性の対照として)またはβ−カテニン標的化21−bp siRNA(レーン3、陽性対照として)、または異なる長さの混合物:12nt(a)/21nt(レーン4);12nt(b)/21nt(レーン5);13nt/21nt(レーン6);14nt(a)/21nt(レーン7);14nt(b)/21nt(レーン8);15nt/21nt(レーン9)の同じ濃度のaiRNAでトランスフェクトした。細胞はトランスフェクション後48時間で採取した。β−カテニンの発現はウエスタンブロットによって決定した。E2F1およびアクチンは対照として使用した。これらの結果は、非対称性干渉RNA(aiRNA)は哺乳動物細胞において遺伝子特異的サイレンシングを引き起こすことを実証する。
【0235】
aiRNAの機能において重要なaiRNAの構造特徴を決定するために、本発明者らは、コア15/21二重アンチセンス突出構造の修飾に基づいて、複数のaiRNAオリゴヌクレオチドを作製した(表4)。表4中に要約したaiRNAは、センスおよびアンチセンス鎖の長さ、センスおよびアンチセンス突出の程度、およびRNA−DNAハイブリッドオリゴヌクレオチドだけには限られないが、これらを含めた修飾を含有していた。
【0236】
親15/21aiRNA構造に対する修飾は、センス鎖、アンチセンス鎖、または両方の改変によって行った(表4)。修飾aiRNA二重鎖を、50nMで48時間Hela細胞にトランスフェクトした。β−カテニンおよびアクチンに関するウエスタンブロットを使用して、親15/21aiRNAと従来のsiRNA構造と比較した遺伝子サイレンシングの程度を調べた。二重センス鎖突出を含有するaiRNA修飾体も試験した。これらのオリゴヌクレオチドは、異なる長さのアンチセンス鎖と対形成する21塩基のセンス鎖を含有する。さらに、本発明者らは、DNA塩基で修飾したaiRNAオリゴヌクレオチドの活性も調べた。DNA置換はアンチセンス鎖とセンス鎖の両方で行った(表3)。試験したRNA−DNAハイブリッドオリゴヌクレオチドは、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれか中に1つまたは複数のDNA置換を含有しており、または示した長さのDNAセンス鎖と対形成する21塩基のアンチセンスRNAを含有していた。これらの様々なaiRNAの遺伝子サイレンシングの結果は図4および5中に示した。
【0237】
まとめると、これらのデータはaiRNA機能に対する構造的手掛かりを与える。
【0238】
センス鎖に関して、本発明者らのデータは、15塩基の長さは十分働き、一方14塩基と19塩基の間の長さは依然機能的であることを示す。アンチセンス突出の法則に見合うという条件で、センス鎖はアンチセンス鎖の任意の部分に適合し得る。センス鎖の5’末端または3’末端のいずれかにおけるDNAと1つのRNA塩基の交換は許容され、活性の増大をさらにもたらす可能性がある。
【0239】
アンチセンス鎖の長さに関しては、21塩基の長さは十分働き、19〜22塩基は活性を保持し、および長さが19塩基未満に低減するまたは22塩基を超えて増大するとき、活性は低下する。アンチセンス鎖の3’末端は1〜5塩基の突出を必要とし、2〜3塩基の突出が好ましく、平滑末端は活性の低下を示す。標的RNA配列と対形成する塩基が好ましく、3塩基までのDNA塩基の交換が同時の5’DNA塩基の交換なしで許容される。アンチセンス鎖の5’末端は0〜4塩基の突出を好み、活性状態を保つために突出を必要としない。アンチセンス鎖の5’末端は標的RNA配列に適合しない2塩基を許容することができ、3塩基までのDNA塩基の交換を同時の3’DNA塩基の交換なしで許容することができる。
【0240】
ミスマッチまたは化学的に修飾した塩基に関して、本発明者らは、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれか中のミスマッチと1つまたは複数の化学的に修飾した塩基の両方が、aiRNA構造によって許容されることを発見している。
【0241】
【表4−1】

【0242】
【表4−2】

【0243】
【表4−3】

表4中、A、U、G、Cはヌクレオチドを表し、一方a、t、g、cはデオキシヌクレオチドを表す。
【0244】
(実施例2.)
aiRNAによって誘発される遺伝子サイレンシングのメカニズム。
【0245】
aiRNAによって誘導される遺伝子ノックダウンのメカニズムを調べるために、本発明者らは最初に、aiRNAによる遺伝子サイレンシングが翻訳レベルまたはmRNAレベルで起こるかどうか決定した。10nMの15bp aiRNAでトランスフェクトした細胞におけるβ−カテニンのノーザンブロット分析は、aiRNAはmRNAレベルを24時間以内に95%を超えて低下させ、かつその低下は4日を超えて続いたことを示し(図6a)、aiRNAがmRNAレベルで遺伝子サイレンシングを媒介することを示唆した。aiRNAによって誘導されるβ−カテニンmRNAの低減は、siRNAによる誘導より実質的により迅速、有効および持続的であった(図6a)。本発明者らはさらに、15bp aiRNAがβ−カテニンmRNAの部位特異的切断を触媒したかどうか決定した。15bp aiRNAでトランスフェクトした細胞から単離した全てのRNAを、cDNA末端(5’−RACE)の迅速な増幅およびβ−カテニンmRNA切断断片の存在に関するPCRによって調べた(図6b)。本発明者らは、aiRNAトランスフェクション後4および8時間でβ−カテニン切断断片を検出した(図6c)。配列分析は、aiRNAアンチセンス鎖の5’末端に対してaiRNA標的配列内、塩基10と塩基11の間で切断が起こっていたことを示した(図6d)。スクランブルaiRNAを用いたトランスフェクション後、このような切断断片は観察しなかった(図6c)。これらの結果は、aiRNAは標的mRNAの配列特異的切断によって、強力かつ有効な遺伝子サイレンシングを誘導したことを実証する。
【0246】
次に本発明者らは、非対称性aiRNAの新規の足場をRISC中に取り込ませることが可能であるかどうか決定した。複合体の触媒単位としてのArgonauteタンパク質(Ago)とのRISC酵素複合体によってRNAiが触媒される(Liuら、2004年;Matrangaら、2005年)。aiRNAがAgo/RISC複合体中に取り込まれるかどうか決定するために、本発明者らは、細胞をaiRNAでトランスフェクトした後、mycタグ化Ago1(Siolasら、2005年)を発現する細胞由来のmycタグ化ヒトAgo1を免疫沈降させた。RISC複合体と結合した小RNAは、Ago免疫沈降物のノーザンブロッティングによって検出した。ノーザンブロット分析は、aiRNAは高い効率でRISC複合体に進入することを明らかにした(図6e)。これらのデータは、非対称性aiRNAの新規の足場を効率良くRISC中に取り込ませることが可能であることを示唆する。
【0247】
aiRNAはsiRNAより効率良く遺伝子サイレンシングを誘導したので、本発明者らは、aiRNAがsiRNAより効率良くRISC複合体を生成することができるかどうか試験した。図6e中に示すように、aiRNA−Ago2/RISC複合体がsiRNA−Ago2/RISC複合体より速くより効率良く形成され、対応するsiRNAより多くのaiRNAがRISC複合体中に含有されていた(図6eおよび図7A)。注目すべきことに、siRNAはsiRNAによる二次構造の形成と一致する典型的なパターン(21)を示した(図6eおよび図7)。対照的に、aiRNAは1つのバンドを示し、短い長さのaiRNAはsiRNAで起こる二次構造形成を低減または除去する可能性があることが示唆された。
【0248】
さらに、aiRNAの非対称性構造はアンチセンス鎖を有する活性RISCの形成を容易にし、センス鎖で形成される無効なRISCを低減する可能性がある(Ref.16)。本発明者らのデータは、図7B中に示すようにこれは真実であり、センス鎖はRISC複合体において検出することができないことを証明した。図8Aも、aiRNAのアンチセンス鎖はAgo2と強く結合するが、センス鎖はしないことを実証する。対照的に、siRNAのアンチセンス鎖とセンス鎖の両方がAgo2と結合する。これらのデータは、aiRNAが細胞中でのRISCの形成においてsiRNAより高い効率を有することを示唆し、これがaiRNAの優れた遺伝子サイレンシング効率の根底にある可能性がある。
【0249】
さらに、siRNAのセンス鎖は、機能的であるために切断されることが必要であることが示されている。したがって本発明者らは、同じ要件がaiRNAに当てはまるかどうか試験した。それを実施するために、aiRNAセンス鎖の位置8または9におけるヌクレオチドを2’−O−メチルで修飾してそれを切断不能にした。本発明者らの結果は、切断不能なセンス鎖を有するaiRNAは依然機能的であることを示し(図8B)、それらのメカニズムの点でaiRNAはsiRNAと全く異なることを実証する。
【0250】
さらに本発明者らは、aiRNAおよびsiRNAに関する何らかの異なるローディングポケットが存在するかどうか調べた。本発明者らは非放射能のaiRNAまたはsiRNAを使用して、RISC複合体に関して放射標識siRNAまたはaiRNAと競合させた(図9)。驚くことに、これらの結果は、非放射能のaiRNAはRISC複合体に関してsiRNAと競合しないこと(図9B)、および非放射能のsiRNAはRISC複合体に関してaiRNAと競合しないこと(図9C)も示す。これらのデータは、aiRNAおよびsiRNAをRISC複合体の異なるポケットに充填することが可能であることを示す。
【0251】
まとめると、前述のデータは、aiRNAはRISC中に組み込まれる第1の非siRNA足場を示し、RISCと相互作用する新規な構造足場を与えることを示唆する。aiRNAおよびsiRNAのRISCローディングの差は、図10中に示す本発明者らのモデル中で例示する。簡単に言うと、非対称性の性質のために、アンチセンス鎖のみが選択されてRISC複合体中に存在し、鎖選択において100%の効率をもたらす。対照的に、siRNAは構造上対称性である。siRNAのアンチセンス鎖とセンス鎖の両方が、選択されてRISC複合体中に存在する可能性を有し、したがってsiRNAは無効な鎖選択を有し、同時にセンス鎖RISC複合体のために非特異的遺伝子サイレンシングを引き起こす可能性がある。
【0252】
(実施例3.)
aiRNAは、siRNAより迅速、強力、有効、および持続的な遺伝子サイレンシングを媒介する。
【0253】
遺伝子サイレンシングの性質においてsiRNAとaiRNAを比較するために、本発明者らは最初に、遺伝子サイレンシングに最適なaiRNA構造を決定した。
【0254】
siRNA二重鎖は、対称性のセンス鎖およびアンチセンス鎖を含有する。3’突出を含有する二重鎖siRNA構造は、センス鎖のArgonaute(Ago)媒介切断後に、RISC複合体中への組込みに必要とされる一方で、アンチセンス鎖は標的mRNAの切断を誘導する(Hammondら、2001年;Matrangaら、2005年;Tabaraら、1999年)。本発明者らは、アンチセンス鎖の3’末端および5’末端に突出を有する様々な長さの非対称性RNA二重鎖を作製しようと努めた。本発明者らは、3’および5’アンチセンス突出を有する12〜15bpの一組のこのような非対称性RNA二重鎖を設計して、β−カテニン(図11A)、癌細胞および幹細胞に関係する内因性遺伝子(Clevers、2006年)を標的化した。標準構造の最適siRNAを設計して、RNAiを誘発するためにβ−カテニンを標的化した(Xiangら、2006年)。β−カテニンに対する全てのaiRNAは、siRNAによって標的化した同じ配列内に設計した(図11A)。これらの結果は、最適な遺伝子サイレンシングは15bpのaiRNAで得たことを示した(図11B)。したがって、本発明者らは15bpのaiRNAを使用して、後の実験中で21−merのsiRNA二重鎖と比較した。
【0255】
本発明者らが驚いたことに、本発明者らは、aiRNAは、非標的対照遺伝子アクチンを維持しながら、β−カテニンタンパク質の強力かつ非常に有効な低減を誘導したことを発見した(図11C)。
【0256】
次に本発明者らは、β−カテニンを標的化するaiRNAおよびsiRNAによる遺伝子サイレンシングの発生を調べた。使用したaiRNAおよびsiRNAの配列は図11A中に示す。図12中に示すように、aiRNAにはより迅速な発生(図12CおよびD)、およびより良い効力(図12BおよびD)もある。
【0257】
本発明者らは、様々な標的および複数のヒト細胞系に対する、aiRNAおよびsiRNAの遺伝子サイレンシングの影響も比較した。複数のaiRNAを設計して、低い効率でsiRNAによって標的化した同じ配列で、Stat3(図13b)、NQO1(図12d)、延長因子2(EF2)(図13c)、Nbs1(図14b)、サバイビン(図14b)、Parp1(図14b)、p21(図14b)、Rsk1(図14c)、PCNA(図14c)、p70S6K(図14c)、mTOR(図14c)、およびPTEN(図14c)、およびβ−カテニン(図13a)を含めた異なる機能範囲の遺伝子を標的化した(Rogoffら、2004年)。図13および14中に示すように、aiRNAはStat3、β−カテニン、Rsk1、p70S6K、Nbs1、mTOR、およびEF2を抑制する際にsiRNAより有効であり、NQO1、PCNA、サバイビン、PTEN、Parp1、およびp21をサイレンシングする際にsiRNAと同程度有効である。標的配列はsiRNAの最適化に基づいて選択したので、aiRNAの効力および効能を、aiRNA用に最適化した部位を標的化することによってさらに増大することが可能であると考えられる。さらに、本発明者らのデータは、Hela(図13a)、H1299(図14a、左図)およびDld1(図14a、右図)を含めた複数の細胞系において、aiRNAはb−カテニンに対してsiRNAより有効であることも示す。
【0258】
まとめると、これらのデータは、aiRNAは、哺乳動物細胞中で遺伝子サイレンシングを媒介する際にsiRNAより有効、強力、発生が迅速、および持続的であることを実証する。
【0259】
(実施例4.)
aiRNAによって媒介される遺伝子サイレンシングの特異性
次に本発明者らは、aiRNAによって媒介される遺伝子サイレンシングの特異性を調べた。本発明者らは最初に、野生型k−Ras対立遺伝子を標的化するaiRNAを分析した。DLD1細胞は野生型k−Rasを含有し、一方SW480細胞は1つの塩基対置換を有する突然変異体k−Rasを含有する(図14d)。野生型k−Rasを標的化するaiRNAでのDLD1細胞のトランスフェクションは有効なサイレンシングを示したが、SW480細胞において突然変異体k−Rasのサイレンシングは観察しなかった。これらのデータは、aiRNAが対立遺伝子特異的遺伝子サイレンシングを媒介することを実証する。
【0260】
インターフェロン様応答の活性化は、遺伝子サイレンシングの主な非特異的メカニズムである。遺伝子サイレンシングにsiRNAを使用する主な理由は、30bpより短いdsRNAが、哺乳動物細胞中でインターフェロン様応答を活性化する低い能力を有することである(Bernsteinら、2001年;MartinezおよびTuschl、2004年;Sledzら、2003年)。本発明者らは、aiRNAが哺乳動物細胞中でインターフェロン様応答を活性化する何らかの兆候を示したかどうか試験した。β−カテニンに対するaiRNAでトランスフェクトしたPBMC細胞およびEF2またはサバイビンに対するaiRNAでトランスフェクトしたHela細胞から回収したRNAを、インターフェロン誘導性遺伝子に関するRT−PCRによって分析した。本発明者らは、aiRNAトランスフェクションは、試験した任意のインターフェロン誘導性遺伝子のRT−PCRにより如何なる増大も示さず、一方標的化mRNAのレベルは対照トランスフェクト細胞に比べ低減したことを発見した(図15aおよびb)。マイクロアレイ分析も実施して、aiRNAおよびmiRNAによって誘導された既知のインターフェロン応答関連遺伝子の発現の変化を比較した。図15c中に示すように、siRNAと比較してaiRNAに関するはるかに少ない変化を観察した。
【0261】
さらに、前述のように、センス鎖−RISC複合体は非特異的遺伝子サイレンシングを引き起こし得る。センス鎖−RISC複合体によって媒介される非特異的遺伝子サイレンシングにおいてaiRNAとsiRNAを比較するために、細胞はaiRNAまたはsiRNAおよびStat3(センスRNA)を発現するプラスミドまたはアンチセンスStat3(アンチセンスRNA)を発現するプラスミドのいずれかとコトランスフェクトした。細胞を採取し、トランスフェクション後24時間でRNAを回収し、Stat3センスまたはアンチセンスRNAの相対的レベルは、定量的リアルタイムPCRまたはRT−PCRによって決定した(挿入図)。結果は、aiRNAはアンチセンスStat3 mRNAに対して影響がなく、一方siRNAは影響があることを示す(図15d)。この結果は、aiRNAは、センス鎖−RISC複合体によって媒介される望ましくない非特異的遺伝子サイレンシングを完全に無効することを実証する。
【0262】
要約すると、本発明者らは、aiRNAが新規なクラスの遺伝子サイレンシングインデューサーであること、RISC基質およびRNAiメディエーターの非siRNA型および最小構造足場を示した(図15f)。本発明者らのデータは、aiRNAがRISC、細胞のRNAi機構中で働くことを示唆する。RISC中への組込み後、aiRNAはaiRNAアンチセンス鎖の5’末端に対して塩基10と塩基11の間のmRNAの配列特異的切断を媒介する。非対称構造のaiRNAは、siRNAより効率良くRISCと相互作用することができる。高いRISC結合効率と一致して、aiRNAは、本発明者らの実験中で試験した遺伝子に対する遺伝子特異的サイレンシングを媒介する際にsiRNAより強力、有効、発生が迅速、および持続的である。以前の実験は有効なRISC形成を容易にする際のDicerの役割を示しているが、本発明者らのデータは、aiRNAはDicer媒介プロセシングとは無関係に高い効率で活性RISC複合体を生成することができることを示唆する。
【0263】
この新規なRNA二重鎖足場の重要な特徴は、3’および5’末端のアンチセンス突出である。12〜15bpのaiRNAは、RNAiを誘導することが知られている最も短いRNA二重鎖である。長いdsRNAはC.elegansおよびDrosophila Melanogasterにおいて強力な遺伝子サイレンシングを誘発したが、哺乳動物細胞における遺伝子特異的サイレンシングは、siRNA二重鎖を使用するまで可能ではなかった。Dicer消化によって画定するsiRNA足場は、19〜21bpの鎖の長さ部分および3’突出中の対称性によって特徴付けられ(Bernsteinら、2001年)、これはRNAiを媒介するためのRISC中への組込みに必要な構造であると考えられている。したがって、RNAiインデューサーの最適化努力は、siRNAより常に大きいsiRNA前駆体に焦点を当てている(Soutschekら、2004年;ZhangおよびFarwell、2007年)。本発明者らのデータは、siRNAはRNAiを媒介するためのRISC中への組込みに必要な足場ではないことを示唆する。異なる長さのaiRNAは一連の遺伝子サイレンシング効力およびRISC組込み効率を示し、RISCの組込みおよび活性化のメカニズムを理解するまたとない機会を与える。RISCの組込みおよびRNAiの誘導におけるaiRNAの構造−活性関係をさらに理解するために研究が必要とされ、これは標的配列の選択、長さ、構造、化学組成、および様々なRNAi用途の変更に関してaiRNAを最適化するための合理的根拠を確立するのを手助けするはずである。
【0264】
(実施例5.)
aiRNAはin vivoにおいてsiRNAより有効である
aiRNAがin vivoにおいて有効であるかどうか調べるため、およびそれをsiRNAと比較するため、本発明者らは、ヒト結腸癌異種移植モデルにおけるaiRNAおよびsiRNAの影響を試験した。
【0265】
ヒト結腸癌は、米国では癌による死亡原因の第2位である。Wntβ−カテニンシグナル伝達経路は厳重に制御されており、発生、組織の恒常性、および再生において重要な機能を有する。Wnt/β−カテニンシグナル伝達の規制解除は様々なヒトの癌において頻繁に見られる。80パーセントの結腸直腸癌のみが、腫瘍抑制遺伝子大腸腺腫性ポリポーシスの不活性化、またはプロト発癌遺伝子β−カテニンの突然変異のいずれかによって、この経路の活性化を明らかにする。
【0266】
Wnt/β−カテニンシグナル伝達の活性化は、異なる組織の癌の発症と進行の両方に重要であることが分かっている。したがって、Wnt/β−カテニンシグナル伝達の標的化阻害は、様々な起源の癌の治療用の合理的で有望な新しい手法である。
【0267】
in vitroにおいて、本発明者らは、リボザイム標的化によって、ヒト結腸癌SW480細胞におけるβ−カテニン発現の低減および関連する細胞死の誘導を実証しており、β−カテニン発現はin vitroでは腫瘍増殖に対して律速的であることを示す。
【0268】
SW480ヒト結腸癌細胞をメスの無胸腺ヌードマウスに皮下接種し(8×10個の細胞/マウス)、放置して触診可能な腫瘍を形成した。この試験では、腫瘍が約120mmに達したときに投薬を開始した。動物は、毎日0.6nmolのPEI複合化β−カテニンsiRNA、PEI複合化β−カテニンaiRNAまたは陰性対照としてPEI複合化無関連siRNAで静脈内(iv)治療した。動物にはsiRNA、aiRNAまたは対照を合計10用量投与した。腫瘍は治療全体で測定した。図16中に示すように、0.6nmol mg/kgでの単剤治療としてsiRNAおよびaiRNAを用いた静脈内治療は、腫瘍増殖を有意に阻害した。siRNAのT/C%値は、0.0286のp値で48.8%であると計算した。しかしながら、β−カテニン特異的aiRNAを用いた治療は、腫瘍増殖のはるかに一層大幅な低減をもたらした。T/C%値は、0.0024のp値で9.9%であると計算した。siRNA、aiRNAまたは対照の静脈内投与が原因の体重の有意な変化はなかった。これらのデータは、β−カテニンの標的化によるPEI複合体形成を介したaiRNAのin vivo全身施用は、結腸癌を有する患者の治療用途の、非常に有効、特異的および安全な作用物質を開発するための手段を与えることを示唆する。
【0269】
さらに、本発明者らは、HT29ヒト結腸癌異種移植モデルにおけるaiRNAおよびsiRNAの影響も試験した。HT29ヒト結腸癌細胞をメスの無胸腺ヌードマウスに皮下接種し(6×10個の細胞/マウス)、放置して触診可能な腫瘍を形成した。この試験では、腫瘍が約200mmに達したときに投薬を開始した。動物は、1日おきに0.6nmolのPEI複合化β−カテニンsiRNA、PEI複合化β−カテニンaiRNAまたは陰性対照としてPEI複合化無関連siRNAで静脈内(iv)治療した。動物にはsiRNA、aiRNAまたは対照を合計8用量投与した。腫瘍は治療全体で測定した。図17中に示すように、0.6nmolmg/kgでの単剤治療としてsiRNAおよびaiRNAを用いた静脈内治療は、腫瘍増殖を有意に阻害した。siRNAのT/C%値は、0.21のp値で78%であると計算した。ここでも、β−カテニン特異的aiRNAを用いた治療は、腫瘍増殖のはるかに一層大幅な低減をもたらした。T/C%値は、0.016のp値で41%であると計算した。siRNA、aiRNAまたは対照の静脈内投与が原因の体重の有意な変化はなかった。これらのデータは、β−カテニンの標的化によるPEI複合体形成を介したaiRNAのin vivo全身施用は、結腸癌を有する患者の治療用途の、非常に有効、特異的および安全な作用物質を開発するための手段を与えることを支持する。
【0270】
まとめると、aiRNAは広範囲のRNAi用途を有意に改善することができる。siRNAベースの治療は、限られた効力、送達の難点、インターフェロン様応答および製造コストを含めた課題に対応している(de Fougerollesら、2007年;Iornsら、2007年;Rana、2007年)。改善された効力、効能、持続性、および小さなサイズのaiRNAはこれらの課題を手助けまたは克服することができる。aiRNAはより小さく、その送達により少ない物質を必要とし得るからである。したがってaiRNAは、遺伝子機能試験およびRNAiベースの治療における広範囲のRNAi用途に関する相当な可能性を有する、哺乳動物細胞においてsiRNAより良い効力、効能、作用発現、および持続性の、RISCに進入し遺伝子サイレンシングを媒介する新しい小さなRNA二重鎖となる。
【0271】
(実施例6.)
aiRNAは模倣剤miRNAとして機能する
マイクロRNA(miRNA)は、siRNAとある程度の類似性を有する遺伝子発現の他のレギュレーターである。しかしながら、miRNAは主に、siRNA媒介標的切断と異なる(1つまたは複数の)メカニズムによって遺伝子発現を制御する。miRNAによるサイレンシングは、翻訳阻害および/または標的RNAの分解をもたらす標的RNAの3’ 非翻訳領域(UTR)とmiRNAの相互作用によって起こる。siRNAの1つの標的特異性と異なり、1つのmiRNAは複数の標的の発現を制御することができる。
【0272】
miRNA(amiRNA)として機能するその能力に関して、aiRNA構造を試験した。具体的には、この実施例中では、いずれもより長い鎖上に存在する3nt 3’突出および3nt 5’突出と隣接する15ntの二本鎖領域を形成する21ntのより長い鎖および15ntのより短い鎖を有する、aiRNA(Let−7a aiRNA)を構築した。Let−7a miRNAの模倣剤としてaiRNAを構築した。図18A中に示すように、全aiRNA構築物(囲み領域)は、Let−7aのpre−miRNA(pre−Let−7a)のステムループ構造の一部分に直接由来し、二次構造、内因性pre−miRNA構造中の2bpのミスマッチから生じた突出部分を維持する。囲み領域は、aiRNAのより長い鎖がLet−7aの成熟ガイドmiRNAの大部分を含有するように選択し、その配列はpre−Let−7a構造中に下線を引く。
【0273】
Let−7a aiRNAと同じLet−7a miRNA配列(下線)の部分を含む、陽性対照Let7a miRNAオリゴ、対称的鎖長(23nt)の二本鎖RNA分子の配列構造も、図18A中に示す。HelaおよびDld1細胞は、24時間100nMでmiRNA二重鎖またはaiRNA二重鎖でトランスフェクトし、そのときRNAを単離し、RT−PCRを実施してk−Ras mRNA、Let−7a miRNAの既知のサイレンシング標的のレベルを検出した。図18B中に示すように、(aiLet7として示す)aiRNA二重鎖と(miLet7として示す)miRNA二重鎖の両方が、両方の細胞系においてk−Ras mRNAの低下をもたらした。これらのデータは、aiRNAがmiRNA経路において模倣剤として機能して、遺伝子発現を変えることができることを示唆する。
【0274】
次に本発明者らは、miRNA模倣剤aiRNAが、既知のmiRNA標的のタンパク質レベルを変えることができるかどうか決定した。k−Ras遺伝子は、Let7 miRNAファミリーのメンバーによって制御され得る。したがって本発明者らは、miRNA模倣剤aiRNAを用いたトランスフェクション後に、k−RasmRNAおよび/またはタンパク質が調節されたかどうか決定した。k−RasのmRNAのレベルはRT−PCRによって決定し、かつk−Rasのタンパク質のレベルはウエスタンブロット分析によって決定した(図19)。k−RasのmRNAのレベルはLet7模倣剤aiRNAによって下方制御され(図20A)、かつタンパク質のレベルもLet7模倣剤aiRNAによって下方制御された(図20B)。
【0275】
(実施例7.)
aiRNAはmiRNA阻害剤として機能する
aiRNA構造を使用してmiRNAの阻害剤を作製することができることができるかどうか調べるため、本発明者らは、hsa−Let−7c、hsa−miR−21、およびhsa−miR−155に対するaiRNAを設計した。それらの配列は図19A中に示す。完全長の成熟hsa−Let−7c、hsa−miR−21、およびhsa−miR−155は図19B中に示す。RT−PCRおよびウエスタンブロット分析を実施して、k−Ras、Let−7cの標的の1つの発現に対するaiRNA−Let7c阻害剤の影響を分析した。図20A中に示すように、k−RasのmRNAのレベルはaiRNA−Let7c模倣剤によって下方制御され、aiRNA−Let7c阻害剤によって上方制御された。図20B中に示すように、同様の結果をタンパク質のレベルで観察した。
【0276】
aiRNA−Let7c阻害剤で処理したHela細胞中のLet−7c(図21A)、aiRNA−miR21阻害剤で処理したMCF−7細胞中のmiR−21(図21B)、またはaiRNA−miR−155阻害剤で処理したFaDu細胞中のmiR−155(図21C)の相対的レベルも、qRT−PCRによって決定した。図21中に示すように、これらのaiRNAはその特異的標的−内因性の対応するmiRNAを強く阻害することができる。ここで留意すべきは、MCF7細胞が比較的高レベルのmiR−21を含有すること(図22A)、およびFaDu細胞が比較的高レベルのmiR−155を含有すること(図22B)である。したがってこれらの細胞系を使用して、aiRNA miRNA阻害剤のトランスフェクションが、それぞれMCF7およびFaDu細胞中のmiR−21またはmiR−155のレベルを低減することができたかどうか試験した。
【0277】
次に本発明者らは、aiRNA miRNA阻害剤と市販のmiRNA阻害剤(Ambion)の効力を比較した。100nMのaiRNA miRNA阻害剤またはAmbion阻害剤のいずれかのトランスフェクションは、トランスフェクション後24時間でLet−7c(図23)、72時間でmiR−21(図24)、および72時間でmiR−155(図25)のレベルの低下をもたらした。全ての場合において、aiRNA miRNAは同等または増強した効力を示した。
【0278】
次に本発明者らは、aiRNA miRNA阻害剤とAmbionからの市販の阻害剤の効能を比較した。細胞は、24時間1、10、および100nMにおいて、Let−7c(図26)、miR−21(図27)、またはmiR−155(図28)を標的化するaiRNAまたはmiRNA阻害剤でトランスフェクトした。次いで定量的RT−PCR(qRT−PCR)分析を実施して、非標的対照aiRNAトランスフェクト細胞に対する、残存するmiRNAのレベルを決定した。aiRNA miRNAは、10および100nMの用量において市販の阻害剤と類似した効能を示した。1nMの用量において、aiRNAは、miR−21の場合は増強した効能、miR−155の場合は類似した効能、またはLet−7cの場合は低減した効能を示した。
【0279】
まとめるとこれらのデータは、aiRNA構造は、antagomirと比較して遺伝子サイレンシングの効力および/または期間の亢進を示し得る内因性miRNAの阻害剤として、かつmiRNA機能の模倣剤としても機能することができ、内因性miRNAの標的遺伝子発現の抑制を引き起こすことができることを実証する。
【0280】
本明細書に挙げる全ての参照文献は、それぞれ個々の刊行物または特許または特許出願が、あらゆる目的でそれらの全容が参照によって組み込まれることが具体的かつ個別の示される場合と同程度に、それらの全容をあらゆる目的で参照によって本明細書に組み込む。参照によって組み込まれる刊行物および特許または特許出願が、本明細書中に含まれる本開示と相反する程度で、本明細書は任意のこのような相反する構成要素に優先するおよび/またはそれに勝るものとする。
【0281】
本明細書および特許請求の範囲中で使用する、成分の量、反応条件、分析結果などを表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」によって修飾されると理解されたい。したがって、反対のことを示さない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲中に示す数値パラメーターは、本発明によって得ようと努める望ましい性質に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲の均等物の原則の適用を制限するための試みとしてではなく、それぞれの数値パラメーターは、有効桁数および通常の丸め法を考慮して解釈すべきである。
【0282】
本発明の変更および変形は、当業者には明らかであるように、その精神および範囲から逸脱せずに作製することができる。本明細書に記載する具体的な実施形態は単なる例によって与え、決して限定的であることを意味するものではない。本明細書および実施例は単なる例示的なものとして考えられ、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロRNA(miRNA)の模倣剤であって、
第1の長さの第1鎖と第2のより短い長さの第2鎖とを含む二本鎖RNA分子であって、前記第1鎖が前記miRNAの少なくとも一部と実質的に同じ配列を有し、前記第1鎖および第2鎖が少なくとも1つの二本鎖領域を形成するように互いに実質的に相補的であり、1〜10ヌクレオチドの末端突出をさらに含む二本鎖RNA分子を含み、
少なくとも1つの遺伝子の発現の調節において前記miRNAを模倣するように適合される模倣剤。
【請求項2】
前記miRNAがガイド鎖である、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項3】
前記miRNAが成熟miRNAである、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項4】
前記miRNAが成熟miRNAおよび実質的に相補的なパッセンジャー鎖を含む内因性miRNA二重鎖であり、前記模倣剤の前記第2鎖が前記パッセンジャー鎖の少なくとも一部と実質的に同じ配列を有する、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項5】
前記第1鎖と前記第2鎖との間において、配列がミスマッチするかまたはマッチしない少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項6】
前記ミスマッチするかまたはマッチしない少なくとも1つのヌクレオチドによりループが形成される、請求項5に記載の模倣剤。
【請求項7】
前記第1鎖および前記第2鎖が、前記二本鎖領域において互いに完全に相補的である、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項8】
前記末端突出が1〜8ヌクレオチドである、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項9】
前記末端突出が1〜3ヌクレオチドである、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項10】
前記末端突出が3’突出である、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項11】
前記3’突出が前記第1鎖上にある、請求項10に記載の模倣剤。
【請求項12】
前記末端突出が5’突出である、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項13】
前記5’突出が前記第1鎖上にある、請求項12に記載の模倣剤。
【請求項14】
前記第1鎖上において、3’突出および5’突出の両方をさらに含む、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項15】
前記3’突出および5’突出の両方が1〜3ヌクレオチドである、請求項14に記載の模倣剤。
【請求項16】
一方の末端上に1つの末端突出を、他方の末端上に平滑末端をさらに含む、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項17】
前記第1鎖が13〜100ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖が5〜30ヌクレオチドの長さを有する、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項18】
前記第1鎖が15〜30ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖が12〜29ヌクレオチドの長さを有する、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項19】
前記第1鎖が15〜28ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖が12〜26ヌクレオチドの長さを有する、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項20】
前記第1鎖が19〜25ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖が12〜24ヌクレオチドの長さを有する、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項21】
前記第1鎖が19〜23ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖が14〜20ヌクレオチドの長さを有する、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項22】
前記第1鎖が、前記第2鎖よりも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10ヌクレオチドからなる群から選択される長さだけ長い、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項23】
前記末端突出が分解に対して安定化される、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項24】
前記第1鎖および前記第2鎖の少なくとも1つにおいてニックをさらに含む、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項25】
前記二本鎖領域が、1つまたは複数の対合されないヌクレオチドのギャップを含む、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項26】
修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体をさらに含む、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項27】
前記修飾ヌクレオチドまたは類似体が、糖修飾リボヌクレオチド、骨格修飾リボヌクレオチド、および/または塩基修飾リボヌクレオチドである、請求項26に記載の模倣剤。
【請求項28】
前記骨格修飾リボヌクレオチドが、別のリボヌクレオチドとのホスホジエステル結合において修飾を有する、請求項27に記載の模倣剤。
【請求項29】
前記ホスホジエステル結合が、少なくとも1つの窒素のヘテロ原子または硫黄のヘテロ原子を含むように修飾される、請求項27に記載の模倣剤。
【請求項30】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたは類似体が、非天然塩基または修飾塩基である、請求項27に記載の模倣剤。
【請求項31】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたは類似体が、イノシンまたはトリチル化塩基である、請求項27に記載の模倣剤。
【請求項32】
前記ヌクレオチド類似体が、2’−OH基がH、OR、R、ハロ、SH、SR、NH、NHR、NR、およびCNからなる群から選択される基により置換され、各RがC1〜C6のアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から独立に選択され、ハロがF、Cl、Br、およびIからなる群から選択される糖修飾リボヌクレオチドである、請求項26に記載の模倣剤。
【請求項33】
前記ヌクレオチド類似体が、ホスホチオエート基を含有する骨格修飾リボヌクレオチドである、請求項26に記載の模倣剤。
【請求項34】
デオキシヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項35】
前記デオキシヌクレオチドが、3’突出、5’突出、および二本鎖領域からなる群から選択される1つまたは複数の領域内にある、請求項34に記載の模倣剤。
【請求項36】
前記第1鎖が、前記miRNAの少なくとも前記一部と少なくとも60パーセント同じ配列を有する、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項37】
前記第1鎖が、前記miRNAと同じシード領域を有する、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項38】
前記二本鎖領域のGC含量が約20〜60%である、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項39】
前記第1鎖が、A、U、およびdTからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチドを有する5’突出を含む、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項40】
ペプチド、抗体、ポリマー、脂質、オリゴヌクレオチド、コレステロール、およびアプタマーからなる群から選択される実体とさらにコンジュゲートしている、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項41】
前記二本鎖RNA分子が、合成であるかまたは単離される、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項42】
前記二本鎖RNA分子が、組換えベクターまたはその後代から転写される、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項43】
前記少なくとも1つの遺伝子の発現を、少なくとも20%調節するように適合される、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項44】
前記miRNAがLet7ファミリーである、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項45】
以下の二重鎖配列:
【化3】

の1つを含む、請求項1に記載の模倣剤。
【請求項46】
成熟マイクロRNA(miRNA)の模倣剤であって、
15〜28ヌクレオチドの第1鎖と12〜26ヌクレオチドのより短い第2鎖とを含む二本鎖RNA分子であって、前記第1鎖が前記成熟miRNAの少なくとも一部と実質的に同じ配列を有し、前記第1鎖および前記第2鎖が少なくとも1つの二本鎖領域を形成するように互いに実質的に相補的であり、前記第1鎖が1〜8ヌクレオチドの3’突出と1〜8ヌクレオチドの5’突出とをさらに含む二本鎖RNA分子を含み、
少なくとも1つの遺伝子の発現の調節において前記成熟miRNAを模倣するように適合される模倣剤。
【請求項47】
前記第2鎖が、前記成熟miRNAと内因性二重鎖を形成するパッセンジャーRNA鎖の少なくとも一部と実質的に同じ配列を有する、請求項46に記載の模倣剤。
【請求項48】
前記第1鎖と前記第2鎖との間において、配列がミスマッチするかまたはマッチしない少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含む、請求項46に記載の模倣剤。
【請求項49】
前記ミスマッチするかまたはマッチしない少なくとも1つのヌクレオチドによりループが形成される、請求項48に記載の模倣剤。
【請求項50】
デオキシヌクレオチドをさらに含む、請求項46に記載の模倣剤。
【請求項51】
前記3’突出および前記5’突出の少なくとも1つが分解に対して安定化される、請求項46に記載の模倣剤。
【請求項52】
前記第1鎖および前記第2鎖の少なくとも1つにおいてニックをさらに含む、請求項46に記載の模倣剤。
【請求項53】
前記二本鎖領域が、1つまたは複数の対合されないヌクレオチドのギャップを含む、請求項46に記載の模倣剤。
【請求項54】
修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体をさらに含む、請求項46に記載の模倣剤。
【請求項55】
マイクロRNA(miRNA)の阻害剤であって、
第1の長さの第1鎖と第2のより短い長さの第2鎖とを含む二本鎖RNA分子であって、前記第1鎖が標的miRNAの少なくとも一部と実質的に相補的な配列を有し、前記第1鎖および前記第2鎖が少なくとも1つの二本鎖領域を形成するように互いに実質的に相補的であり、1〜10ヌクレオチドの末端突出をさらに含む二本鎖RNA分子を含み、
前記標的miRNAを阻害するように適合される阻害剤。
【請求項56】
前記標的miRNAがガイド鎖である、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項57】
前記標的miRNAが成熟miRNAである、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項58】
前記第1鎖と前記第2鎖との間において、配列がミスマッチするかまたはマッチしない少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含む、請求項55に記載の模倣剤。
【請求項59】
前記ミスマッチするかまたはマッチしない少なくとも1つのヌクレオチドによりループが形成される、請求項58に記載の模倣剤。
【請求項60】
前記第1鎖および前記第2鎖が、前記二本鎖領域において互いに完全に相補的である、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項61】
前記末端突出が1〜8ヌクレオチドである、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項62】
前記末端突出が1〜3ヌクレオチドである、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項63】
前記末端突出が3’突出である、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項64】
前記3’突出が前記第1鎖上にある、請求項63に記載の阻害剤。
【請求項65】
前記末端突出が5’突出である、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項66】
前記5’突出が前記第1鎖上にある、請求項65に記載の阻害剤。
【請求項67】
前記第1鎖上において、3’突出および5’突出の両方をさらに含む、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項68】
前記3’突出および前記5’突出の両方が1〜3ヌクレオチドである、請求項67に記載の阻害剤。
【請求項69】
一方の末端上に1つの末端突出を、他方の末端上に平滑末端をさらに含む、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項70】
前記第1鎖が10〜100ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖が5〜30ヌクレオチドの長さを有する、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項71】
前記第1鎖が15〜60ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖が5〜28ヌクレオチドの長さを有する、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項72】
前記第1鎖が15〜28ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖が12〜26ヌクレオチドの長さを有する、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項73】
前記第1鎖が19〜25ヌクレオチドの長さを有し、前記第2鎖が12〜20ヌクレオチドの長さを有する、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項74】
前記第1鎖が、前記第2鎖よりも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10ヌクレオチドからなる群から選択される長さだけ長い、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項75】
前記末端突出が分解に対して安定化される、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項76】
前記第1鎖および前記第2鎖の少なくとも1つにおいてニックをさらに含む、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項77】
前記二本鎖領域が、1つまたは複数の対合されないヌクレオチドのギャップを含む、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項78】
修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体をさらに含む、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項79】
前記修飾ヌクレオチドまたは類似体が、糖修飾リボヌクレオチド、骨格修飾リボヌクレオチド、および/または塩基修飾リボヌクレオチドである、請求項78に記載の阻害剤。
【請求項80】
前記骨格修飾リボヌクレオチドが、別のリボヌクレオチドとのホスホジエステル結合において修飾を有する、請求項79に記載の阻害剤。
【請求項81】
前記ホスホジエステル結合が、少なくとも1つの窒素のヘテロ原子または硫黄のヘテロ原子を含むように修飾される、請求項79に記載の阻害剤。
【請求項82】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたは類似体が、非天然塩基または修飾塩基である、請求項79に記載の阻害剤。
【請求項83】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたは類似体が、イノシンまたはトリチル化塩基である、請求項79に記載の阻害剤。
【請求項84】
前記ヌクレオチド類似体が、2’−OH基がH、OR、R、ハロ、SH、SR、NH、NHR、NR、およびCNからなる群から選択される基により置換され、各RがC1〜C6のアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から独立に選択され、ハロがF、Cl、Br、およびIからなる群から選択される糖修飾リボヌクレオチドである、請求項78に記載の阻害剤。
【請求項85】
前記ヌクレオチド類似体が、ホスホチオエート基を含有する骨格修飾リボヌクレオチドである、請求項78に記載の阻害剤。
【請求項86】
デオキシヌクレオチドをさらに含む、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項87】
前記デオキシヌクレオチドが、3’突出、5’突出、および二本鎖領域からなる群から選択される1つまたは複数の領域内にある、請求項86に記載の阻害剤。
【請求項88】
前記第1鎖が、前記標的miRNAの少なくとも前記一部と少なくとも60パーセント相補的な配列を有する、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項89】
前記二本鎖領域のGC含量が約20〜60%である、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項90】
前記第1鎖が、A、U、およびdTからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチドを有する5’突出を含む、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項91】
ペプチド、抗体、ポリマー、脂質、オリゴヌクレオチド、およびアプタマーからなる群から選択される実体とさらにコンジュゲートしている、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項92】
前記二本鎖RNA分子が、合成であるかまたは単離される、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項93】
前記二本鎖RNA分子が、組換えベクターまたはその後代から転写される、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項94】
前記標的miRNAが、Let7、miR−21、およびmiR−155からなる群から選択される、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項95】
以下の二重鎖配列:
【化4】

の1つを含む、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項96】
成熟マイクロRNA(miRNA)の阻害剤であって、
15〜28ヌクレオチドの第1鎖と12〜26ヌクレオチドのより短い第2鎖とを含む二本鎖RNA分子であって、前記第1鎖が前記成熟miRNAの少なくとも一部と実質的に相補的な配列を有し、前記第1鎖および前記第2鎖が少なくとも1つの二本鎖領域を形成するように互いに実質的に相補的であり、前記第1鎖が1〜8ヌクレオチドの3’突出と1〜8ヌクレオチドの5’突出とをさらに含む二本鎖RNA分子を含み、
前記標的miRNAを阻害するように適合される阻害剤。
【請求項97】
成熟miRNAの量を少なくとも30%低下させることが可能である、請求項96に記載の阻害剤。
【請求項98】
前記標的miRNAが、Let7、miR−21、およびmiR−155からなる群から選択される、請求項55に記載の阻害剤。
【請求項99】
請求項1、46、55、または96に記載の二本鎖RNA分子の少なくとも第1鎖をコードするDNA配列であって、プロモーターに作動可能に連結したDNA配列を含む発現ベクター。
【請求項100】
請求項1、46、55、または96に記載の二本鎖RNA分子の少なくとも第2鎖をコードする第2のDNA配列であって、第2のプロモーターに作動可能に連結した第2のDNA配列をさらに含む、請求項99に記載の発現ベクター。
【請求項101】
ウイルス、真核生物、および細菌の発現ベクターからなる群から選択される、請求項99に記載の発現ベクター。
【請求項102】
請求項99に記載の発現ベクターを含む細胞。
【請求項103】
請求項1、46、55、または96に記載の二本鎖RNA分子を含む細胞。
【請求項104】
マイクロRNA(miRNA)の模倣剤を作製する方法であって、
miRNA配列を選択するステップと、
前記miRNA内の連続するヌクレオチドの少なくとも一部と実質的に同じ領域を有する第1のRNA鎖を合成するステップと、
第2のより短いRNA鎖を合成するステップと、
前記RNA分子が、少なくとも1つの遺伝子の発現の調節において前記miRNAを模倣することが可能となるように、少なくとも1つの末端突出を有する二本鎖RNA分子を形成するのに適する条件下で、前記合成された鎖を組み合わせるステップと
を含む方法。
【請求項105】
前記少なくとも1つの末端突出を分解に対して化学修飾するステップをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記二本鎖RNA分子内に少なくとも1つのデオキシヌクレオチドを導入するステップをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記二本鎖RNA分子内に少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を導入するステップをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項108】
合成するステップの間、合成するステップの後から組み合わせるステップの前、または組み合わせるステップの後において、前記二重鎖RNA分子内に少なくとも1種の修飾ヌクレオチドまたは類似体を導入するステップをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
前記二本鎖領域内に、少なくとも1つのミスマッチ、ニック、またはギャップを導入するステップをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項110】
前記第1鎖および前記第2鎖の少なくとも1つを、ペプチド、抗体、ポリマー、脂質、オリゴヌクレオチド、コレステロール、およびアプタマーからなる群から選択される実体とコンジュゲートさせるステップをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項111】
少なくとも1つの前記RNA鎖が酵素的または生物学的に合成される、請求項104に記載の方法。
【請求項112】
前記第1鎖および前記第2鎖が、別々にまたは同時に合成される、請求項104に記載の方法。
【請求項113】
前記鎖の1つにおける少なくとも1つの塩基を修飾するステップをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項114】
標的マイクロRNA(miRNA)の阻害剤を作製する方法であって、
標的miRNA配列を選択するステップと、
前記標的mRNA内の連続するヌクレオチドの少なくとも一部と実質的に相補的な領域を有する第1のRNA鎖を合成するステップと、
第2のより短いRNA鎖を合成するステップと、
前記RNA分子が、前記標的miRNAを阻害することが可能となるように、少なくとも1つの末端突出を有する二本鎖RNA分子を形成するのに適する条件下で、前記合成された鎖を混合するステップと
を含む方法。
【請求項115】
前記少なくとも1つの末端突出を分解に対して化学修飾するステップをさらに含む、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記二本鎖RNA分子内に少なくとも1つのデオキシヌクレオチドを導入するステップをさらに含む、請求項114に記載の方法。
【請求項117】
前記二本鎖RNA分子内に少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を導入するステップをさらに含む、請求項114に記載の方法。
【請求項118】
前記二本鎖領域内に、少なくとも1つのミスマッチ、ニック、またはギャップを導入するステップをさらに含む、請求項114に記載の方法。
【請求項119】
前記第1鎖および前記第2鎖の少なくとも1つを、ペプチド、抗体、ポリマー、脂質、オリゴヌクレオチド、コレステロール、およびアプタマーからなる群から選択される実体とコンジュゲートさせるステップをさらに含む、請求項114に記載の方法。
【請求項120】
少なくとも1つの前記RNA鎖が酵素的または生物学的に合成される、請求項114に記載の方法。
【請求項121】
前記第1鎖および前記第2鎖が、別々にまたは同時に合成される、請求項114に記載の方法。
【請求項122】
前記鎖の1つにおける少なくとも1つの塩基を修飾するステップをさらに含む、請求項114に記載の方法。
【請求項123】
細胞または生物におけるmiRNA経路を調節する方法であって、
前記細胞または前記生物を、前記miRNAの前記模倣を行うことができる条件下で、請求項1または46に記載の模倣剤と接触させるステップと、
前記模倣剤を用いて少なくとも1つの遺伝子の発現を調節し、これにより、内因性miRNA経路を調節するステップと
を含む方法。
【請求項124】
前記模倣剤における前記二本鎖RNA分子内の前記第1鎖が、そのもののRISCとの相互作用において、前記内因性miRNAを模倣する、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
細胞内におけるmiRNA経路を調節する方法であって、
前記細胞または生物を、前記標的miRNAの前記阻害を行うことができる条件下で、請求項55または96に記載の阻害剤と接触させるステップと、
前記阻害剤とともに使われる標的miRNAの量を低下させ、これにより、内因性miRNA経路を調節するステップと
を含む方法。
【請求項126】
前記接触させるステップが、遺伝子発現の調節を行うことができる培養物中または生物内の標的細胞へと前記模倣剤または前記阻害剤をそれぞれ導入するステップを含む、請求項123または125に記載の方法。
【請求項127】
前記導入するステップが、トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、感染、注射、経口投与、吸入、局所(topic)投与、および局所投与からなる群から選択される、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記導入するステップが、医薬担体、正電荷担体、リポソーム、タンパク質担体、ポリマー、ナノ粒子、ナノエマルジョン、脂質、およびリポイドからなる群から選択される、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤の使用を含む、請求項126に記載の方法。
【請求項129】
細胞または生物における遺伝子の機能または有用性を決定するための、請求項123または125に記載の方法の使用。
【請求項130】
細胞または生物における少なくとも1つの遺伝子の発現を調節するための、請求項123または125に記載の方法の使用。
【請求項131】
前記遺伝子が、疾患、病理学的状態、または望ましくない状態と関連する、請求項130に記載の使用。
【請求項132】
前記遺伝子が、ヒトまたは動物の疾患と関連する、請求項130に記載の使用。
【請求項133】
前記遺伝子が病原性微生物の遺伝子である、請求項132に記載の使用。
【請求項134】
前記遺伝子がウイルス遺伝子である、請求項132に記載の使用。
【請求項135】
前記遺伝子が腫瘍関連遺伝子である、請求項132に記載の使用。
【請求項136】
前記遺伝子が、自己免疫疾患、炎症性疾患、変性疾患、感染性疾患、増殖性疾患、代謝性疾患、免疫媒介性障害、アレルギー性疾患、皮膚疾患、悪性疾患、消化管障害、呼吸器障害、心血管障害、腎障害、リウマチ障害、神経障害、内分泌障害、および老化からなる群から選択される疾患と関連する、請求項132に記載の使用。
【請求項137】
in vitroまたはin vivoにおける薬剤標的を研究するための、請求項123または125に記載の方法の使用。
【請求項138】
疾患または望ましくない状態を治療または予防するための、請求項123または125に記載の方法の使用。
【請求項139】
活性作用物質としての、請求項1、46、55、または96に記載の少なくとも1種の模倣剤または阻害剤と、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項140】
前記担体が、医薬担体、正電荷担体、リポソーム、タンパク質担体、ポリマー、ナノ粒子、ナノエマルジョン、脂質、およびリポイドからなる群から選択される、請求項139に記載の医薬組成物。
【請求項141】
有効量の請求項139に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む治療法。
【請求項142】
前記医薬組成物が、静脈内(iv)経路、皮下(sc)経路、局所経路、経口経路、吸入経路、筋肉内経路、腹腔内(ip)経路、および領域経路からなる群から選択される経路を介して投与される、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
癌を治療するのに用いられる、請求項141に記載の方法。
【請求項144】
請求項1、46に記載の模倣剤または請求項55、もしくは96に記載の阻害剤を含む、研究用試薬。
【請求項145】
請求項144に記載の研究用試薬を含むキット。
【請求項146】
疾患または状態について患者を診断する方法であって、
前記患者の細胞を請求項1、46に記載の模倣剤または請求項55、もしくは96に記載の阻害剤と接触させるステップと、
前記疾患または前記状態を示す少なくとも1つの変化を探索するステップと
を含む方法。

【図1】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11−1】
image rotate

【図11−2】
image rotate

【図12−1】
image rotate

【図13−1】
image rotate

【図13−2】
image rotate

【図14−1】
image rotate

【図14−2】
image rotate

【図15−1】
image rotate

【図15−3】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図12−2】
image rotate

【図15−2】
image rotate

【図21−1】
image rotate

【図21−2】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate


【公表番号】特表2010−537640(P2010−537640A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523121(P2010−523121)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/074531
【国際公開番号】WO2009/029690
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(510055334)ボストン バイオメディカル, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】