説明

マクロライド系化合物の合成方法

本発明は、抗菌活性を有することが知られ、哺乳動物における細菌感染症の治療に有用なマクロライド系化合物の合成方法に関する。より具体的には、本発明は、新規な触媒の立体配置、化学構造および/または方法を用いる、マクロライド系抗生物質、ガミスロマイシンの合成方法に関する。本発明の一実施形態は、化学中間体を単離せずに複数の化学反応を進行させることを含むことができる。従って、複数の反応を1つの反応器中で行うことができ、サイクル時間のかなりの削減が可能になる。本発明はまた、医薬組成物の構造体を単離する間の分解を抑制するための新規方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による組み込み
本願は、米国仮特許出願第61/108,046号(出願日:2008年10月24日)に基づく利益を主張する。その開示は、参照によりその全体が本願に組み込まれる。本明細書に引用または参照した文献(“本明細書引用文献”)および本明細書引用文献に引用または参照したすべての文献は、本明細書記載のすべての製品のための、または参照により本願に組み込まれるすべての文献における製造業者の使用説明書、解説書、製品仕様書および製品シートと共に、これによって参照により本願に組み込まれ、本発明の実施に用いることができる。
【0002】
技術分野
本発明は、哺乳動物における細菌感染症の治療に有用な抗菌活性を有する一群の化学化合物の合成方法に関する。より具体的には、本発明は、マクロライド系化合物、例えばガミスロマイシン(gamithromycin)の合成方法に関する。
【0003】
よりさらに具体的には、本発明は、新規な触媒の立体配置、化学構造および/または方法を用いる、ガミスロマイシンの製造方法に関する。
【0004】
本発明はまた、医薬組成物のための構造体を単離する間の分解を抑制するための新規方法を提供する。
【背景技術】
【0005】
マクロライドは、その一部が抗菌活性を有し、哺乳動物の細菌感染症の治療に有用な一群の化学化合物である。マクロライド系抗生物質は、1以上のデオキシ糖分子が結合した多員ラクトン環を有するものを含む。これらの抗生物質は、一般に静菌性であるが、一部の菌では殺菌性であることも示されている。マクロライド系抗生物質はグラム陽性球菌および桿菌に対して有効であるが、その一部は、グラム陰性菌の一部に対しても活性を有している。マクロライド系抗生物質は、細菌タンパク質の合成を抑制することによってその静菌活性を発揮する("Goodman & Gillman's the Pharmacological Basis of Therapeutics," 9th ed., J.G. Hadman & L.E. Limbird, eds., ch. 47, pp. 1135-1140, McGraw-Hill, New York (1996))。
【0006】
クラスとしては、マクロライドはほぼ無色であり、通例結晶性である。この化合物は、中性付近の溶液中では一般に安定であるが、酸溶液または塩基溶液中では、より不安定な場合がある。本発明の方法に用いられるマクロライド系化合物の前駆体(例えば、(9E)-9-デオキシ-9-ヒドロキシイミノエリスロマイシンA(以下、“構造1”);9-(Z)-エリスロマイシンオキシム(以下、“構造2”);および9-デオキソ-12-デオキシ-9,12-エポキシ-8a,9-ジデヒドロ-8a-アザ-8a ホモエリスロマイシンA(以下、“構造3”)については、米国特許第5,202,434号および第5,985,844号において記載がある。さらにまた、Yang et al., Tetrahedron Letters, 1994, 35(19), 3025-3028 およびDjokic et al., J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1986, 1881-1890 は、中間体としてこれらの化合物を使用するマクロライド系化合物の合成を記載している。しかしながら、ガミスロマイシンなどのマクロライド系化合物の合成および単離には、一般的には、複数の抽出および相分離を必要とする。
【0007】
従って、マクロライドの合成および単離を簡単にするばかりでなく、マクロライドおよびその中間体の安定性を増加させる必要性もまたなお存在する。
【0008】
本願においては、いかなる文献の引用または同定も、かかる文献が本発明の先行技術であると認めるものではない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、マクロライド系化合物の新規合成方法に関する。本発明の実施形態は、化学中間体を単離せずに複数の化学反応を進行させることを含むことができる。例えば、ある化学化合物を還元し、続いて、その化学中間体を単離せずにアルキル化することができる。このように、1つの反応器中で複数の反応を行わせることができ、それによって、この工程のサイクル時間のかなりの削減を可能にすることができる。別の実施形態において、反応の前に、中間体の1以上を単離することができる。
【0010】
一実施形態において、(9E)-9-デオキシ-9-ヒドロキシイミノエリスロマイシンA(以下、“構造1”)を異性化させて9-(Z)-エリスロマイシンオキシム(以下、“構造2”)を製造することができる。いくつかの実施形態において、転位反応を用いて、9-(Z)-エリスロマイシンオキシムを9-デオキソ-12-デオキシ-9,12-エポキシ-8a,9-ジデヒドロ-8a-アザ-8a ホモエリスロマイシンA(以下、“構造3”)に変換することができる。還元およびアルキル化を用いて、9-デオキソ-12-デオキシ-9,12-エポキシ-8a,9-ジデヒドロ-8a-アザ-8a ホモエリスロマイシンAをガミスロマイシンに変換することができる。他の実施形態において、蒸留および洗浄によって生じた副生成物の総量を還元することができる。
【0011】
さらにまた、本発明の実施形態は、中間体の分解を抑制するように調節された条件下での中間体の単離を含むことができる。
【0012】
これらおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明に記載されているかまたはそれにより明らかであり、かつそれに含まれる。
【0013】
本開示、特に請求項および/またはパラグラフにおいて、“含む(comprises)”、“含んだ(comprised)”、“含んでいる(comprising)”などの用語は、米国特許法に基づく意味を有することができ、例えば、それらは“含む(includes)”、“含んだ(included)”、“含んでいる(including)”などを意味することができ、“から本質的になっている(consisting essentially of)”および“から本質的になる(consists essentially of)”などの用語は、米国特許法に基づく意味を有し、例えば、それらは明記されていない要素を許容するが、先行技術に示されているかまたは本発明の基本的もしくは新規特性を損なう要素を排除することに注意されたい。
【0014】
以下の詳細な説明は、例示であって、示された特定の実施形態のみに本発明を限定するものではないが、以下の添付図面と関連させることによって最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ガミスロマイシンの合成方法に関連する化学構造を示す図である。
【図2】ガミスロマイシンの合成方法における、構造3の分解生成物の化学構造を示す図である。
【図3】単離された構造3の試料中のHPLC微量成分を示す図である。
【図4】酸性条件下での水素化を用いて得られた単離された構造7の試料中のHPLC微量成分を示す図である。
【図5】低酸性条件下での水素化を用いて得られた単離された構造7の試料のHPLC微量成分を示す図である。
【図6】構造8(ガミスロマイシン)の試料のHPLC微量成分を示す図である。
【図7】単離されたガミスロマイシンの試料のHPLC微量成分を示す図である。
【図8】従来の合成方法のHPLC微量成分と本明細書記載の方法のHPLC微量成分とのオーバーレイを示す図である。
【0016】
詳細な説明
明確にするために、本明細書記載の大環状ラクトンおよび大環状ラクタムの番号付けには、米国特許第5,202,434号で用いられている環番号付け(参照によりその全体が本願に組み込まれる)を用いる。記載の14員環化合物に関して、以下に示すエリスロマイシンAラクトン環の環番号付けを本文書を通じて用いる。同様に、本明細書記載の15員環化合物に関しては、以下に示す15員ラクタムの番号付けを用いる。
【化1】

【0017】
定義
本明細書で用いられる用語は、特記しない限り、当該技術分野で通常使用される意味を有する。式(I)または(II)の可変基の定義において言及される有機部分は、用語ハロゲンと同様に、個々の基員の個別のリストのための総称である。接頭語Cn-Cmは、いずれの場合にも、該基における可能な炭素原子数を示す。
【0018】
本明細書において、用語“アルキル”は、1〜20原子を有するものを含む、飽和直鎖、分枝鎖、環式、第一級、第二級または第三級炭化水素のことを言う。いくつかの実施形態において、アルキル基は、C1-C12、C1-C10、C1-C8、C1-C6またはC1-C4アルキル基を含む。C1-C10アルキルの例は、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニルおよびデシルならびにそれらの異性体を含む。C1-C4-アルキルは、例えばメチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピルまたは1,1-ジメチルエチルを意味する。
【0019】
用語“アルケニル”は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖および分枝鎖炭素鎖の両方を言う。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、C2-C20アルケニル基を含むことができる。他の実施形態において、アルケニルは、C2-C12、C2-C10、C2-C8、C2-C6またはC2-C4アルケニル基を含む。アルケニルの一実施形態において、二重結合数は1〜3であり、アルケニルの他の実施形態において、二重結合数は1または2である。分子中でのアルケニル部位の位置に応じて、炭素-炭素二重結合および炭素数の他の範囲もまた考えられる。“C2-C10-アルケニル”基は、鎖中に2以上の二重結合を含むことができる。例は、限定するものではないが、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチル-エテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル;1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニルおよび1-エチル-2-メチル-2-プロペニルを含む。
【0020】
“アルキニル”は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する、直鎖および分枝鎖炭素鎖の両方のことを言う。アルキニルの一実施形態において、三重結合数は1〜3であり、アルキニルの他の実施形態において、三重結合数は1または2である。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、C2-C20アルキニル基を含む。他の実施形態において、アルキニル基は、C2-C12、C2-C10、C2-C8、C2-C6またはC2-C4アルキニル基を含むことができる。分子中でのアルケニル部位の位置に応じて、炭素-炭素三重結合および炭素数の他の範囲もまた考えられる。例えば、用語”C2-C10-アルキニル”は、本明細書において、2〜10炭素原子を有し、少なくとも1つの三重結合を含む直鎖または分枝鎖の不飽和炭化水素基、例えばエチニル、プロプ-1-イン-1-イル、プロプ-2-イン-1-イル、n-ブト-1-イン-1-イル、n-ブト-1-イン-3-イル、n-ブト-1-イン-4-イル、n-ブト-2-イン-1-イル、n-ペント-1-イン-1-イル、n-ペント-1-イン-3-イル、n-ペント-1-イン-4-イル、n-ペント-1-イン-5-イル、n-ペント-2-イン-1-イル、n-ペント-2-イン-4-イル、n-ペント-2-イン-5-イル、3-メチルブト-1-イン-3-イル、3-メチルブト-1-イン-4-イル、n-ヘキシ-1-イン-1-イル、n-ヘキシ-1-イン-3-イル、n-ヘキシ-1-イン-4-イル、n-ヘキシ-1-イン-5-イル、n-ヘキシ-1-イン-6-イル、n-ヘキシ-2-イン-1-イル、n-ヘキシ-2-イン-4-イル、n-ヘキシ-2-イン-5-イル、n-ヘキシ-2-イン-6-イル、n-ヘキシ-3-イン-1-イル、n-ヘキシ-3-イン-2-イル、3-メチルペント-1-イン-1-イル、3-メチルペント-1-イン-3-イル、3-メチルペント-1-イン-4-イル、3-メチルペント-1-イン-5-イル、4-メチルペント-1-イン-1-イル、4-メチルペント-2-イン-4-イルまたは4-メチルペント-2-イン-5-イルなどのことを言う。
【0021】
“アリール”は、単環式環または多縮合環を有する、6〜14炭素原子の一価の芳香族炭素環式基のことを言う。いくつかの実施形態において、アリール基はC6-C10アリール基を含む。アリール基は、限定するものではないが、フェニル、ビフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フェニルシクロプロピルおよびインダニルを含む。アリール基は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロシクロアルキル、ハロシクロアルケニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、シクロアルコキシ、シクロアルケニルオキシ、ハロシクロアルコキシ、ハロシクロアルケニルオキシ、アルキルチオ、ハロアルキルチオ、シクロアルキルチオ、ハロシクロアルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキニルスルフィニル、アルキニル-スルフィニル、ハロアルキルスルフィニル、ハロアルケニルスルフィニル、ハロアルキニルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルケニルスルフィニル、アルキニルスルホニル、ハロアルキル-スルホニル、ハロアルケニルスルホニル、ハロアルキニルスルホニル、アルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、ジ(アルキル)アミノ、ジ(アルケニル)-アミノ、ジ(アルキニル)アミノまたはトリアルキルシリルから選択される1以上の部分によって置換されていないこともできるし置換されていることもできる。
【0022】
用語“アラルキル”は、ジラジカルアルキレン架橋である(-CH2-)nによって親化合物に結合されているアリール基のことを言い、ここでnは1〜12であり、“アリール”は上記で定義したものである。
【0023】
“ヘテロアリール”は、環中に1以上の酸素、窒素および硫黄ヘテロ原子を有し、好ましくは1〜4ヘテロ原子あるいは1〜3ヘテロ原子を有する、1〜15炭素原子の、好ましくは1〜10炭素原子の一価の芳香族基のことを言う。窒素および硫黄ヘテロ原子は、場合により酸化されていることができる。このようなヘテロアリール基は、結合個所がヘテロアリール環原子を介するという条件で単環式環(例えば、ピリジルもしくはフリル)または多縮合環を有することができる。好ましいヘテロアリールは、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、ピロリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フラニル、チオフェニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル ベンゾフラニルおよびベンゾチオフェニルを含む。ヘテロアリール環は、上記でアリールについて述べた1以上の部分によって置換されていないこともできるし、置換されていることもできる。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明は、図1に示した化合物の薬学的に許容される塩または獣医学的に許容される塩を含むことができる。このような塩は、一般に、不活性溶媒中、マクロライド系化合物と1〜3当量の適切な酸とを混合することによって酸付加塩として製造できる。塩は、溶媒蒸発によって回収されるか、自発的に沈殿する場合に濾過によって回収されるか、あるいは補助溶剤もしくは非極性補助溶剤を用いて沈殿させ、次いで濾過によって回収される。塩は、限定するものではないが、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カルシウム、エデト酸カルシウム、エデント酸塩、カルシン酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデント酸塩、エジシル酸塩、エストラート、エシル酸塩、エチルコハク酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、ヘプトグルコン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチルスルホン酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリチオドド、吉草酸塩および/またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0025】
一実施形態において、図1に示すように、構造1を異性化させて構造2を生じさせることができる。いくつかの実施形態において、1以上の試薬の存在下で異性化を行うことができる。適切な試薬は、限定するものではないが、溶媒および塩基を含む。変換のための適切な溶媒は、当該技術分野で公知の、一般的なプロトン性または非プロトン性溶媒であることができる。以下に示す下記試薬のリストは例示であって、当該技術分野で既知または未知の他の塩基および溶媒を除外すべきではない事は、当業者には明らかであろう。
【0026】
適切な塩基は、限定するものではないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどを限定せずに含む水酸化物;リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムn-ブトキシド、リチウムsec-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムn-プロポキシド、ナトリウムイソ-プロポキシド、ナトリウムn-ブトキシド、ナトリウムsec-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、ナトリウムトリメチルシラノアート、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド、カリウムトリメチルシラノアート、カリウムsec-ブトキシド、セシウムtert-ブトキシド、カルシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、チタニウム(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムメトキシドなどを限定せずに含むアルコキシド;炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウムなどを限定せずに含む炭酸塩;リチウムアミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムアミド カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどを限定せずに含むアミド、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-ウンデク-7-エン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)-ナフタレン)などを限定せずに含むアミン、ならびに水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどを限定せずに含む水素化物を含む。
【0027】
適切な溶媒は、水混和性溶媒および水不混和性溶媒を含む。いくつかの実施形態において、適切な溶媒は、限定するものではないが、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1-エチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、ジオキサン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、などおよび/またはそれらの組み合わせを含む。
【0028】
一実施形態において、構造1は、溶媒の存在下で塩基と反応して構造2を生じる。一実施形態において、塩基は水酸化リチウムであることができ、溶媒はエタノールであることができる。特定の実施形態において、該塩基の水和物、例えば水酸化リチウム一水和物が用いられる。
【化2】

【0029】
いくつかの実施形態において、異性化法の最適化は、構造1のヒドロキシイミノ基(オキシム)を実質的に脱プロトン化するのに十分な塩基および溶媒の組み合わせを含むことができる。一実施形態において、異性化工程を完了するのに必要な間、オキシムアニオンを安定化させるために反応条件を調節することができる。
【0030】
他の実施形態において、構造1に塩基を添加することによって、平衡状態を作ることができる。一実施形態は、オキシムアニオンをプロトン化して、中性のオキシム生成物混合物を得ることを含むことができ、この混合物から、結晶化、クロマトグラフィーとそれに続く結晶化、または結晶化とそれに続くクロマトグラフィーによって構造2を単離することができる。平衡混合物中の構造1および構造2の相対量は、いくつかの要素によって調節することができる。これらの要素は、限定するものではないが、塩基試薬の強度および量、対イオンのサイズおよび分極率、反応溶媒、ならびに/または反応温度を含むことができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、異性化反応は、約1重量%〜約25重量%の濃度の構造1/溶媒量で行うことができる。他の実施形態において、構造1の濃度は、約5重量%〜約25重量%、約5重量%〜約15重量%または約7重量%〜約12重量%の構造1/溶媒量であることができる。好ましい実施形態において、構造1の重量/溶媒量は約10%であることができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、用いる塩基量は、出発構造1の量に基づいて、約1〜約10モル当量であることができる。他の実施形態において、該塩基量は、約1〜約3モル当量であることができる。好ましい一実施形態において、本工程は、約2モル当量の値を有する塩基量を用いることを含むことができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、反応温度をモニターすることができる。一実施形態において、約-10℃〜約80℃、または約0℃〜約80℃の範囲内に温度を維持するように反応条件を調節することができる。一実施形態において、約10℃〜約70℃の範囲内に温度を維持することができる。他の実施形態において、反応温度は、約15℃〜約60℃の範囲内に維持することができる。他の実施形態は、約20℃〜約50℃の範囲内に反応温度を維持することを含むことができる。さらに他の実施形態において、反応温度は、約20〜約30℃の範囲内に維持することができる。いくつかの実施形態は、約22℃〜約25℃の範囲内に温度を維持することを含むことができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、反応時間を変えることができる。例えば、約0.5時間〜約20日間、反応を行わせることができる。他の実施形態は、約1時間〜約15日間、反応を行わせることを含むことができる。他の実施形態において、反応時間は、約3時間〜約5日間の範囲内であることができる。あるいは、一実施形態において、反応時間は約6時間〜約24時間の範囲内であることができる。さらにまた、一実施形態は、約10時間〜約24時間の反応時間を含むことができる。他の実施形態において、反応時間は、約20時間〜約24時間の範囲内であることができる。
【0035】
これらの反応における平衡は、限定するものではないが、塩基の強度および量、対イオンのサイズおよび分極、反応溶媒ならびに/または反応温度を含むいくつかの要素によって影響されうる。当該技術分野で既知または未知の任意の溶媒または塩基を使用できる。
【0036】
本発明の一実施形態は、任意の適切な手段によって構造2を単離することを含むことができる。例えば、一実施形態において、構造2は、結晶化を用いて単離することができる。他の実施形態において、構造2の単離は、クロマトグラフィーとそれに続く結晶化または結晶化とそれに続くクロマトグラフィーの使用を含むことができる。構造2または任意の他の本発明の化合物は、溶媒中の本化合物の溶解性を適切に減少させる任意の方法によって溶液から結晶化させることができることは、当業者には明らかであろう。結晶化方法は、限定するものではないが、溶液の温度の低下、本化合物が溶解性ではない貧溶媒の添加、不溶性塩の形成などを含むことができる。
【0037】
本工程は、構造1または構造2のオキシムから構造3および構造5の混合物を生じさせる転位反応を用いる。
【化3】

ケトキシムのベックマン転位(例えば、“Comprehensive Organic Chemistry,” I.O. Sutherland (Ed.), Pergamon Press, New York, 1979, Vol. 2, pgs. 398-400 and 967-968; and Gawley, Organic Reactions, 1988, 35, 1-420 を参照のこと)によってカルボキサミドを生じさせることができ、環系においては環拡大ラクタムを生じさせることができる。一実施形態において、ベックマン転位などの酸触媒転位反応は、構造2からの混合物を生じさせるために使用できる。例えば、本発明の特定の実施形態において、構造2のベックマン転位によって得られる混合物は、限定するものではないが、9-デオキソ-12-デオキシ-9,12-エポキシ-8a,9-ジデヒドロ-8a-アザ-8a ホモエリスロマイシンA(以下、“構造3”)および/または9-デオキソ-6-デオキシ-6,9-エポキシ-8a,9-ジデヒドロ-8a-アザ-8a ホモエリスロマイシンA(以下、“構造4”)を含むことができる。
【0038】
理論に拘束されることを望まないが、一実施形態において、ベックマン転位の機構は、最初にオキシムのヒドロキシル基が脱離基に変換され、次いでそれが脱離し、それに伴って脱離基に対してアンチ位に位置するオキシム炭素置換基が移動することを含むことができる。水溶液中では、このようにして生じた中間体のニトリリウムカチオンは、通例水と反応してアミド生成物を生じる。ニトリリウム中間体は、他の適切な求核剤で捕獲することができ、それによってイミダートおよびアミジンなどのイミノ生成物が誘導される。
【0039】
ベックマン転位は、限定するものではないが、酸性、塩基性および中性条件を含む種々の条件で行うことができる。一実施形態は、反応条件および/または試薬を調節して種々の割合の生成物を得ることを含むことができる。使用できる通常の酸性試薬は、限定するものではないが、濃硫酸を含む硫酸、ポリリン酸、チオニルクロリド、五塩化リン、二酸化硫黄、ギ酸および/またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、適切な溶媒中で、オキシムをシリカゲルと共に加熱することによってベックマン転位を生じさせることができる。適切な溶媒は、限定するものではないが、トルエンまたはキシレンなどの芳香族溶媒を含む。ベックマン転位の代替実施形態は、ヘキサメチルホスホルアミドを含む適切な溶媒中、弱塩基性条件下でオキシムを加熱することを含むことができる。
【0040】
一実施形態において、ベックマン転位は、適切なスルホニル化剤でのオキシム基の最初のO-スルホニル化を含むことができる。スルホニル化剤は当該分野で公知であり、限定するものではないが、ハロゲン化アルキルスルホニル、ハロゲン化アリールスルホニルまたはアリールスルホン酸無水物を含む。このようにして生成された中間体のオキシムスルホナートは、単離することもできるし、in situで転位生成物に変換することもできる。スルホニル化および転位反応は、有機または無機塩基の存在下で行うことができる。
【0041】
いくつかの実施形態は、限定するものではないが、メタンスルホニルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、4-アセトアミドベンゼンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリド、ベンゼンスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物および/または当該技術分野で既知または未知の他のスルホニル化試薬を含む、構造2の転位反応を行うためのスルホニル化試薬を含むことができる。反応は、限定するものではないが、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸カリウムを含む無機塩基の存在下で行うことができる。あるいはまた、いくつかの実施形態において、限定するものではないが、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンおよび/または当該技術分野で既知または未知の任意の有機塩基を含む有機塩基の存在下で反応を行うことができる。適切な溶媒は、限定するものではないが、水性混合物、例えば水性アセトンまたは水性ジオキサン、有機溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトニトリル、ピリジンなどを含むことができる。加えて、有機溶媒の混合物、特にピリジンを含むものを使用することができる。一実施形態において、反応は、約-20℃〜約50℃の反応温度で、約1〜約3モル当量のスルホニル化剤および約1モル当量以上の塩基を用いて行うことができる。一実施形態において、ピリジンは、溶媒としても塩基としても使用することができる。
【0042】
一実施形態において、構造2のベックマン転位によって得られる生成物の配分は、用いられる特定の反応条件に左右されうる。例えば、転位反応が水性アセトンでp-トルエンスルホニルクロリドおよび炭酸水素ナトリウムを用いて行われる場合、主要な生成物はラクタムおよび構造4を含むことができる。一実施形態において、無水条件下での構造2のベックマン転位は、9,12-および6,9-架橋イミノエーテル、すなわち構造3および構造4を含む生成物混合物をもたらす。例えば、p-トルエンスルホニルクロリド/ピリジンなどの無水条件下で反応が行われる場合、主要な生成物は構造3および構造4を含むことができる。生成物比は、補助溶剤の添加、温度、および/または最初のオキシム濃度によって影響を受けうる。例えば、溶媒としてのピリジンの割合を高めること、反応温度を上げることおよび/または最初のオキシム濃度を下げることは、構造4よりも、構造3の生成に有利に働くことができる。
【0043】
一実施形態において、構造2のベックマン転位は、約0℃〜約5℃の温度で、構造2のピリジン溶液に約2.5モル当量のp-トルエンスルホニルクロリドのジエチルエーテル溶液を添加することを含むことができる。一実施形態は、構造3および構造4の混合物を生成させる反応条件下での、オキシムのO-スルホニル化およびその後の転位反応を含むことができる。
【0044】
本発明の実施形態は、構造2のベックマン転位後の生成物の生成を含むことができる。例えば、数あるクロマトグラフ法の中で、限定するものではないが、カラムシリカゲルクロマトグラフィーまたは逆相高圧液体クロマトグラフィーを含むクロマトグラフ法を使用することができる。構造3および構造4は、クロマトグラフ法によって分離することができる。他の実施形態において、構造3は結晶化によって精製することができる。他の実施形態において、結晶化およびクロマトグラフィーの組み合わせによって生成物を精製することができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、構造3および構造4の混合物は、精製せずにまたは部分的に精製して、さらに反応させることができる。一実施形態において、各構造を単離することなしに、さらなる反応を行うことができる。例えば、異性体の混合物を精製せずに還元することができる。
【0046】
一実施形態において、構造3は、低温精製法を用いて混合物から単離することができる。例えば、一実施形態において、約-20℃〜約15℃の温度で、ジクロロメタン中で構造3の単離を行うことができる。より一般的には、約-20℃〜約10℃、約-10℃〜約5℃、約-5℃〜約5℃、または好ましくは約0℃〜約5℃の温度で単離を行うことができる。他の実施形態において、約25℃未満、約20℃未満または約15℃未満で精製を行うことができる。いくつかの実施形態において、低温精製法の使用は、限定するものではないが、図2に示される構造5および/または構造6を含む分解生成物への構造3の分解を抑制することができる。一実施形態において、構造3の分解は、ジクロロメタン相からp-トルエンスルホン酸(以下、“PTSA”)を除去することによって抑制することができる。いくつかの実施形態は、35℃未満の温度で、減圧下で、合わせた有機相から溶媒を除去することを含むことができる。一実施形態は、メチル第三級ブチルエーテル(以下、“MTBE”)を用いて、1〜2回濃縮することによって残渣を得、ジクロロメタンなどの成分を除去することを含むことができる。
【0047】
一実施形態において、C-12位のヒドロキシル基による中間体ニトリリウム種の分子内捕獲によって構造3を生成させることができる。イミノ二重結合における異性体である、主要型および少数型の混合物として構造3を単離することができる。一実施形態において、異性体の最初の混合物は、溶液中で、または粗生成物としての保存により、異性体のおおよそ1:1混合物に室温で平衡化させることができる。一実施形態において、最初に生成される主要な異性体は、ニトロメタン溶液などの適切な溶媒中での溶液からの結晶化によって混合物から単離することができる。
【0048】
一実施形態において、どちらの異性体(すなわち、構造3および構造4)も、9-デオキソ-8a-アザ-8a-ホモエリスロマイシンA(以下、“構造7”)に容易に還元することができる。
【0049】
一実施形態は、反応混合物の洗浄を含むことができる。一実施形態において、洗浄は、適切な有機溶媒を用いて行うことができる。洗浄に使用できる適切な有機溶媒は当該分野で公知であり、限定するものではないが、炭化水素溶媒、例えばヘプタン、ヘキサン、ペンタンを含む。他の有機溶媒は、エーテル、例えばMTBEなど、アルキルエステル、例えば酢酸エチルなど、芳香族溶媒、例えばトルエンなどを含む。ヘプタン洗浄により、反応混合物中のピリジンを除去することができる。一実施形態において、得られたオイルを、第2溶媒混合物、例えばジクロロメタンおよび水を用いて希釈することができる。別の実施形態において、得られたオイルを1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンまたはN,N′-ジメチルエチレン尿素(以下、“DMEU”)で洗浄することができる。いくつかの実施形態において、混合物のpHを、約7〜約12の範囲の値に調節することができる。さらに、いくつかの実施形態は、約9〜約10の範囲の値にpHを調節することを含むことができる。pH調節は、限定するものではないが、金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化リチウムまたは水酸化カリウム水溶液を含む当該技術分野で公知の任意のpH修飾剤を用いて行うことができる。他の適切なpH調整剤は、炭酸塩、重炭酸塩およびアミンを含む。一実施形態は、相分離を含むことができる。さらにまた、いくつかの実施形態は、ジクロロメタンまたは他の適切な水不混和性溶媒を用いる水相の逆洗浄を含むことができる。
【0050】
一実施形態において、残渣中のピリジンは、MTBEからの結晶化中に除去することができる。一実施形態は、室温で生成物を結晶化させ、次いでそれを約-20℃〜約15℃またはより一般的には約-20℃〜約10℃の範囲内に冷却することを含むことができる。他の実施形態において、混合物は、約-10℃〜約10℃、約-5℃〜約10℃または約0℃〜約5℃に冷却される。いくつかの実施形態において、収率を高めるために、ある期間この温度で得られた物質を攪拌することができる。例えば、収率を高めるために、1時間以上物質を攪拌することができる。
【0051】
一実施形態において、構造3は、得られた黄色ケーキを濾過し、低温のMBTEで洗浄して単離することができる。限定するものではないが構造4および分解生成物(例えば、構造5および構造6-図2参照)を含む他の化学構造は、転位反応後に母液中に溶解したままであることができる。一実施形態において、構造3は固形で保存することができる。固形での貯蔵により分解を抑制することができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、構造7は、適切な還元剤を用いる構造3の還元によって合成することができる。構造3および4を含むイミノエーテルを対応するアミンに還元する種々の試薬は当該技術分野で公知である(例えば、“The Chemistry of Amidines and Imidates,” S. Patai (Ed.), John Wiley and Sons, 1975, pgs. 460-461 および“Comprehensive Organic Chemistry,” I.O. Sutherland (Ed.), Pergamon Press, New York, 1979, Vol. 2, pg. 495を参照のこと)。この点に関し、環式イミノエーテルの還元は、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムおよび誘導体を含む金属水素化物試薬を用いて行われることを米国特許第5,985,844号は記載している。しかしながら、水素化ホウ素試薬を含む金属水素化物試薬を用いる構造3および4のイミノエーテルの還元は、生成物の単離を複雑にし、収率および純度の低下をもたらすホウ素塩を生じることが見いだされた。
【0053】
従って、本発明の一実施形態において、生成物のより優れた品質と収率を与える条件下での水素化を用いる構造3の還元によって構造7が生成される。特定の実施形態において、本発明の改善された水素化反応は、構造8のマクロ環への構造3のワンポット変換を可能にする。一実施形態において、転位反応後に得られた混合物から構造7を生成できる。例えば、構造2のベックマン転位により得られた混合物を適切な水素圧を用いて水素化して構造7を生成させることができる。いくつかの実施形態は、水素化の間、触媒の使用を含むことができる。触媒は、限定するものではないが、貴金属およびその酸化型(例えば、酸化白金)、パラジウム触媒(例えば、パラジウム/カーボン、水酸化パラジウム/カーボン)白金触媒(例えば、白金/カーボン)、ロジウム触媒(例えば、ロジウム/カーボン)、イリジウム触媒、ルテニウム触媒および/または当該技術分野で既知または未知の任意の触媒を含むことができる。いくつかの実施形態において、触媒は均一系であることもできるし、不均一系であることもできる。
【0054】
一実施形態において、構造7の生成を高めるために条件を調節することができる。例えば、一実施形態は、室温、水素圧50バールで操作することを含むことができる。
【0055】
一実施形態において、構造7を生成させるために用いられる水素化反応は、限定するものではないが、酢酸、ホルムアミド、アセトアミド、2-ピロリドンを含む溶媒;限定するものではないが、DMEU、ジメチルアセトアミド(以下、“DMA”)、ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(以下、“DMSO”)、ジメチルホルムアミド(以下、“DMF”)、N-メチルピロリドン(“NMP”)、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エステル(例えば酢酸エチル)、ニトリル(例えばアセトニトリル)およびヘキサメチルホスホロトリアミドを含む極性非プロトン性溶媒ならびに/または当該技術分野で既知または未知の他の溶媒を含む溶媒を用いることができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、水素化反応は、約-20℃〜約40℃の範囲内の温度で行うことができる。他の実施形態において、約-20℃〜約30℃またはより一般的には約-20℃〜約20℃の温度で水素化反応を行うことができる。好ましくは、反応は、約-10℃〜約20℃、約-5℃〜約20℃、約-5℃〜約15℃または約5℃〜約20℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、反応温度の調節によって分解生成物の生成を抑制することができる。
【0057】
一実施形態において、構造2から直接に構造7を合成することができる。触媒の存在下で極性非プロトン性溶媒を混合物に添加することができる。例えば、50重量%の白金/カーボンを有する触媒の存在下で構造7にDMAを添加することができる。いくつかの実施形態において、反応の前に、混合物から構造2を単離することができる。一実施形態は、構造2を含む混合物を反応させて構造7を生成させることを含むことができる。一実施形態において、混合物における条件を調節することができる。例えば、温度を約15℃、水素圧を約50バールに維持しながら混合物を攪拌することができる。
【0058】
図1に示すように、プロパナールおよび適切な還元剤の存在下での構造7の還元的アミノ化によって、ガミスロマイシン(以下、“構造8(ガミスロマイシン)”)を生成させることができる。一実施形態において、加圧水素の存在下で還元的アミノ化反応が行われる。他の実施形態において、限定するものではないが、ホウ素ベース水素化物還元剤、例えばシアノホウ水素化ナトリウムなどを含む水素化物還元剤の存在下で還元的アミノ化反応を行うことができる。本発明の他の実施形態において、構造8aの化合物(式中、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールまたはアラルキルである)。一実施形態において、適切なアルキル化剤を用いることによって、RがC1-C10アルキルである化合物を得ることができる。
【化4】

【0059】
本発明のさらに他の実施形態において、RはC1-C4アルキルである。
【0060】
本発明の一実施形態において、触媒を用いて反応を行うことができる。例えば、パラジウム触媒または白金触媒を用いることができる。一実施形態において、プロパナールを過剰に用いる場合、数時間以内に反応を完結させることができる。このように、試薬と溶媒の両方でプロパナールを用いることによって、反応時間を削減することができる。
【0061】
一実施形態において、反応中、pHを約5.0〜約5.5の範囲内に調節することができる。一実施形態は、反応混合物のpHを約4.5〜約5.5の範囲内に調節することを含むことができる。好ましくは、pHは、水素化前に約5.0〜約5.5に調節される。一実施形態において、酢酸を用いてpHの調節を行うことができる。
【0062】
一実施形態は、反応混合物の温度を約20℃〜約60℃、約30℃〜約50℃または約40℃〜約50℃の範囲内に維持することを含むことができる。好ましくは、温度は約40℃〜約45℃である。
【0063】
一実施形態において、構造7中間体を単離せずに構造3から構造8(ガミスロマイシン)を合成することができる。いくつかの実施形態において、還元的アミノ化は、構造7の合成に用いる触媒と同様な触媒を用いることができるので、これらの段階は一緒にすることができる。従って、一実施形態は、構造7中間体を単離せずに構造8(ガミスロマイシン)を生成させることを含むことができる。一実施形態において、構造7および構造8(ガミスロマイシン)中間体を、単離せずに1つの反応器中で合成することができる。一実施形態において、これによってサイクル時間を削減させることができる。
【0064】
ここで、限定するものではない以下の実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0065】
図1に概略を示すようにガミスロマイシンを製造した。最初は、中間体である構造3を単離せずに構造7を製造することが目標であった。これにより、前に用いられた工程と同じ数の単離された中間体が維持されることになる。しかしながら、種々の条件において、イミデート-4中間体(構造3)の化学的不安定性により分解が生じた。分解生成物には構造5および構造6が含まれた。種々の条件には低いpHおよびいくつかの溶媒溶液が含まれた。その後の段階を実施する前に、安定な固体としてイミデート-4を単離することを試みた。
【実施例1】
【0066】
構造3の生成
構造2の化合物(30g)をピリジン(219.4ml)と混合し、2℃〜6℃に冷却した。4-トルエンスルホニルクロリド(以下、“p-TsCl”)(16.5g)のメチルt-ブチルエーテル(64.4ml)溶液を加え、得られた溶液を2℃〜6℃で約4時間攪拌し、次いで-15℃〜-10℃に冷却した。
【0067】
ヘプタン(282ml)を-10℃未満に予冷し、この溶液に攪拌しながら加えた。攪拌後、これらの相を少なくとも40分間分離させた。上相(ヘプタン相)を除去し、0℃〜5℃の温度に維持しながら水相にジクロロメタン(403ml)および水(503ml)を加えた。水酸化ナトリウム溶液でpHを9〜10に調節し、0℃〜5℃で少なくとも40分間混合物を攪拌した。水相を除去し、ジクロロメタン(60ml)で2回逆洗浄した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥した濾液を、減圧下、35℃未満の温度で濃縮して残渣を得た。メチルt-ブチルエーテル(MTBE)および無水エタノールを加え、この混合物を再度濃縮して残渣を得た。得られた固体をMTBEに懸濁し、4時間攪拌した後0℃〜5℃に冷却した。この懸濁液を少なくとも1時間攪拌し、次いで濾過し、前もって0℃〜5℃に冷却したMTBE(30mlで2回)で洗浄した。この湿った固体を乾燥して構造3の黄白色固体(19.26g)を得た。
【実施例2】
【0068】
構造7の生成
構造3の化合物(8g)のDMA(80ml)溶液に5%Pt/C触媒(4.0g)を加え、15℃〜25℃、水素圧50バールで攪拌した。反応を完結させるために、酢酸(0.5ml)の添加を必要とした。懸濁液に水(80ml)を加え、この懸濁液をセルロースベッドで濾過した。濾過ケーキを水(80ml)で洗浄し、得られた濾液にジクロロメタン(160ml)を加え、2相混合物を少なくとも1時間攪拌した。有機相を除去し、ジクロロメタン(160ml)を水相に加え、次いで水酸化ナトリウム溶液で9〜11にpHを調節した。この2相混合物を攪拌し、構造7を含む有機相を分離し、水(160ml)で洗浄した。得られた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥した溶液を、減圧下、50℃未満の温度で濃縮して残渣にし、構造7のオイル(13.84g)を得た。
【実施例3】
【0069】
構造8(ガミスロマイシン)の生成
構造7の油状残渣(13.84g)に、プロパナール(80ml)、3%Pd/C触媒(8.0g)および酢酸(7.5ml)を加えた。約20バールの水素圧を用い、40℃〜45℃の温度で、懸濁液を少なくとも4時間攪拌した。懸濁液に水(80ml)を加え、この懸濁液をセルロースベッドを用いて濾過した。濾過ケーキを水(80ml)で洗浄し、得られた濾液にMTBE(160ml)を加え、2相混合物を少なくとも30分間攪拌した。有機相を除去し、水相にMTBE(160ml)を加え、次いで水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを9〜11に調節した。2相混合物を攪拌し、構造8(ガミスロマイシン)を含む分離された有機相を水(160ml)で洗浄した。得られた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥した溶液を濃縮して残渣を得た。アセトニトリルを加え、混合物を濃縮しなおして、構造8(ガミスロマイシン)の粗製残渣(6.9g)を得た。
【実施例4】
【0070】
構造7の単離なしでの構造8(ガミスロマイシン)の生成
構造3の化合物(1g)のDMA(10ml)溶液に5%Pt/C触媒(0.5g)を加え、15℃〜25℃、水素圧50バールで攪拌した。反応を完結させるために、酢酸(0.125ml)の添加を必要とした。懸濁液にプロパナール(5ml)および酢酸(2.5ml)を加え、40℃〜45℃の温度、水素圧約20バールで少なくとも4時間攪拌した。懸濁液に水(10ml)を加え、この懸濁液をセルロースベッドで濾過した。濾過ケーキを水(10ml)で洗浄し、得られた濾液にMTBE(20ml)を加え、2相混合物を少なくとも30分間攪拌した。有機相を除去し、水相にMTBE(20ml)を加え、次いで水酸化ナトリウム溶液でpHを9〜11に調節した。2相混合物を攪拌し、構造8(ガミスロマイシン)を含む分離された有機相を水(20ml)で洗浄した。得られた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥された溶液を濃縮して残渣を得た。アセトニトリルを加え、混合物を濃縮しなおして、構造8(ガミスロマイシン)の粗製残渣(0.84g)を得た。
【0071】
現行の製造方法に従い、改良した後処理を用いて構造3を合成した。ピリジンを部分的に除去するように設計された、反応混合物のヘプタン洗浄までの工程を行い、得られたオイルをジクロロメタンおよび水で希釈した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液でpHを9〜10に調節した。次いでこれらの相を分離し、水相をジクロロメタンで逆洗浄した。
【0072】
ジクロロメタン中での構造3の単離を、0℃〜5℃の温度で行った。p-トルエンスルホニルクロリド試薬由来のp-トルエンスルホン酸(以下、“PTSA”)は、相分離後、水相に溶解したままであった。
【0073】
合わせた有機相からの溶媒を、減圧下、35℃未満の温度で除去し、1〜2回濃縮して残渣を得ることによってMTBEでジクロロメタンを追い出した。
【0074】
MTBEからの結晶化中に、残渣中に残っていたピリジンが除去された。最初、室温で生成物を結晶化させ、次いで、0〜5℃に冷却し、この温度で1時間攪拌して収量を増加させた。
【0075】
濾過および得られた黄色ケーキの低温MBTE洗浄後に構造3が単離された。分解生成物である構造5および構造6ならびにベックマン転位で生成された構造4の大部分は母液中に溶解したままであった。
【0076】
構造2からの収率は、HPLCを用いての面積比でおよそ75〜85%の単離された構造3の純度で約65〜70重量%であった。構造3の主な混入物質は、構造5および構造6であり、それぞれHPLCによる面積比で5%〜10%のレベルであった。
【0077】
図3は、単離された構造3のあるバッチのHPLC微量成分を示す。図3のピーク結果を表1に示す。
【表1】

【0078】
構造3は、溶液中では不安定であったが、得られた固形物は経時的に分解せず、その純度は少なくとも1ヶ月間維持された。
【0079】
水素化による構造7の合成は、酸化白金触媒を用いて行った。室温で約1日間、約1000〜約3000psiの水素下で反応混合物を攪拌した。これらの条件は、実験の開始点だった。得られた単離された構造3を、他の実験からの生成物を比較するための標準として用いた。炭素に担持された他の試薬/触媒もまた試験した。表2に、これらの結果の一部の概要を示す。
【表2】

【0080】
行った試験の中では、用いた条件で、5%Pt/C触媒が望ましい結果をもたらした。5%Pt/C触媒を用いた試験から得られた構造7のHPLC微量成分を図4に示す。HPLC微量成分のピーク下面積の値を以下の表3に示す。
【表3】

【0081】
酸化白金の使用によっても、望ましい結果が得られた。
【0082】
水素化の実施に用いた標準条件は、酢酸20倍量、室温、水素50バールであった。大部分の実験室実験には終夜攪拌を用いた。触媒のこの検査から、本反応には、白金が理想的な貴金属であると考えられた。
【0083】
この最初の研究におけるすべての試験において、構造7と共にかなりの量の構造6が得られた。構造3を20倍量の酢酸溶液で室温で攪拌するとき、数時間後には構造3は完全に分解して構造5および構造6を生じることが、安定性データによって示された。水素化において、これらの条件が用いられていたため、酸性条件での構造3の分解が構造7の生成と競合していたと結論された。
【0084】
従って、酢酸の代わりにDMEU中で反応を行ってみた。結果は驚くべきものであった。反応は、少量の構造6が生成したのみで、不純物が少なく、反応速度は、溶媒として酢酸を用いて行った反応と同様であった。
【0085】
次いで、DMFおよびDMAなどの、DMEUと同様な特性を有する他の溶媒を試験した。約5℃の温度でDMEU、DMFまたはDMA溶液中、3〜4時間では、構造3は変化せず、室温で1日攪拌した後に少量の分解のみが認められたことが試験で示された。
【0086】
これらの溶媒および条件を用いて行った水素化の結果の概略を表4に示す。
【表4】

【0087】
5℃〜20℃の温度で水素化を行った。一部の反応では、反応の終わり頃に酢酸(0.25〜0.5倍量)を加えた。白金触媒の量を減らし、全溶媒量を20倍量から10倍量に減らしても、反応性能に顕著に影響を与えることはなかった。
【0088】
DMAを溶媒として選択した。後処理は以下のように行った。
【0089】
反応混合物をセルロースフィルターに通過させた。反応器を水で洗浄した。洗浄した水を用いてセルロースプラグを洗浄した。ジクロロメタンを濾液に加え、必要に応じて、相分離の前に、混合物のpHを酢酸で4.5〜5.5に調節した。ジクロロメタンを水相に加え、水酸化ナトリウム水溶液でpHを9〜11に調節した。生成物を含む得られた有機相を、少量残っているDMAを除去するために水で洗浄し、次いで濃縮して白色フォームを得た。
【0090】
図5は、10倍量のDMAおよび白金触媒を用いた他の実験室実験から得た構造7のHPLC微量成分を示す。HPLC微量成分に関するピーク下面積の値を以下の表5に示す。
【表5】

【0091】
Z-オキシムから直接に構造7を合成することを試みた。MTBEの添加により構造3を単離する代わりに10倍量のDMAを加え、50重量%の5%Pt/C触媒を加えた以外は、前述と同じ後処理手順を用いた。50バールの水素圧下、得られた混合物を約15℃の温度で攪拌した。予想されるように反応は進行したが、HPLCによる面積比約40%の構造7と、HPLCによる面積比約42%の構造4との混合物を有するオイルが得られた。
【0092】
構造4は結晶化によって除去されず、構造3は単離されなかったので、これは単離された構造7まで存続した。水素化条件においては不活性と考えられたが、水素化における構造4の存在は、得られた不純物プロフィールに影響を及ぼした可能性があった。構造3が単離されなかったために除去されていない残留ピリジンもまた、得られた構造7の品質に影響を与えた。
【0093】
プロパナールの存在下で構造7の還元的アミノ化を行って、構造8(ガミスロマイシン)を製造した。この反応は、水素およびパラジウム触媒を用いる触媒反応条件下で行った。この変換において、いくつかのパラジウム触媒および少数の白金触媒をスクリーニングした。エタノール中、約10当量のプロパナールを用いたとき、反応は遅く、不完全であった。プロパナールを大過剰で用いたとき、数時間以内に反応を完結させることが可能であった。プロパナールは、試薬および溶媒の両方の機能を果たした。
【0094】
pHを5.0〜5.5にするために、酢酸緩衝液の使用を試みた。しかしながら、水素化の前に、酢酸を用いて反応混合物のpHを5.0〜5.5に設定するだけで十分であることがその後明らかとなった。
【0095】
表6に、結果の一部と、構造8(ガミスロマイシン)の合成条件の概略を示す。
【表6】

【0096】
室温での水素化の反応速度は遅いことを初めの試験は示した。その結果、ほとんどの反応に40〜45℃の範囲の温度を用いた。反応混合物のpHは、水素化中、約4.0〜約4.5の範囲に低下した。
【0097】
抽出溶媒としてMTBEを用いる以外は、前述のように後処理した後、構造8(ガミスロマイシン)を得た。収率は、構造7の品質および実験室実験のスケールによってかなり影響を受けた。単離された構造3(8g)から、86重量%の収率で構造8(ガミスロマイシン)を得た。典型的な単離された構造8(ガミスロマイシン)のHPLC微量成分を図6に示す。HPLC微量成分に関する、ピーク下面積の値を以下の表7に示す
【表7】

【0098】
還元的アミノ化は白金触媒を用いて行われたので、構造7を単離せずに構造3から構造8(ガミスロマイシン)を合成するために、同じ白金触媒の使用を試験することが可能であった。
【0099】
ある実験室実験において、前述のように、溶媒として10倍量のDMAおよび50重量%の5%Pt/Cを用いて、単離された構造3から構造7を合成した。構造7を生成させる反応後に、構造7を単離せずに、5倍量のプロパナールを加え、酢酸でpHを約5.4に調節し、前述の条件で、前述同様に水素化を行った。
【0100】
構造7は構造8(ガミスロマイシン)に変換され、残留DMAは何ら有害な影響を示さなかった。予想されたように、水素化反応は共に進行し、単離された中間体から出発して、各反応に対する転化率は同様であった。
【0101】
前述のように後処理した後、構造3から84重量%の収率で構造8(ガミスロマイシン)が得られた。構造7が単離された場合の実験室実験と収率は同等であったが、純度は低かった(HPLCを用いて測定して面積比78%)。
【0102】
構造8(ガミスロマイシン)のいくつかの実験室バッチを結晶化させて、収率が約70〜80重量%であり、HPLCを用いて測定するとき、通常、面積比98%を超える純度を有する単離されたガミスロマイシン(構造8)を生成させた。図7に、構造8(ガミスロマイシン)のこれらのバッチの1つのHPLC微量成分を示す。HPLC微量成分に関するピーク下面積の値を以下の表8に示す。
【表8】

【0103】
図8において、このHPLC微量成分と従来の製造方法からの構造8(ガミスロマイシン)微量成分とをオーバーレイさせた。2つのHPLCプロフィールの比較からは、新規な不純物の生成は認められなかった。よって、この新規工程は、現行の製造方法と同様な不純物プロフィールを有する構造8(ガミスロマイシン)を得るために用いることができる。
【0104】
かくして、本発明の種々の実施形態を詳細に説明してきたが、本発明の精神または範囲から逸脱することなくそれらの多くの見かけの変形が可能であるため、上記パラグラフによって定義された本発明は、上記説明で示された特定の詳細に限定されないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロライド系化合物の合成方法であって、
(i)構造2の化合物を構造3の化合物に変換し;
【化1】

(ii)極性非プロトン性溶媒および還元剤の存在下で構造3の化合物を還元して構造7の化合物を製造し;
【化2】

(iii)還元剤の存在下で構造7の化合物と構造R-C(O)Hのアルデヒドとを反応させて構造8aの化合物を製造すること;
【化3】

(式中、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールまたはアラルキルである);
を含む前記方法。
【請求項2】
段階i)において、構造2の化合物をスルホニル化剤で処理して構造2の化合物を構造3の化合物に変換する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
スルホニル化剤がp-トルエンスルホニルクロリドである、段階2記載の方法。
【請求項4】
約10℃未満の温度で構造3の化合物が単離される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
約-20℃〜約10℃の温度で構造3の化合物が単離される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
段階(ii)において、白金、ロジウムまたはパラジウム触媒の存在下で、水素で構造3の化合物が還元される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
段階(iii)における還元剤が水素であり、反応が白金、ロジウムまたはパラジウム触媒の存在下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
段階ii)における極性非プロトン性溶媒が、N,N′-ジメチルエチレン尿素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホロトリアミドまたはそれらの混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
極性非プロトン性溶媒がジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
段階(ii)における構造3の化合物が、段階(iii)の前に単離される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
段階(ii)および(iii)が、構造7の化合物を単離せずに行われる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
段階(iii)において、RC(O)Hがプロパナールであり、構造8aの化合物が構造8:
【化4】

のガミスロマイシンである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
段階(iii)において、RC(O)Hがプロパナールであり、8aの化合物が構造8:
【化5】

のガミスロマイシンである、請求項8記載の方法。
【請求項14】
段階(iii)において、RC(O)Hがプロパナールであり、構造8aの化合物が構造8
【化6】

のガミスロマイシンである、請求項11記載の方法。
【請求項15】
ガミスロマイシンの合成方法であって、
(i)構造2の化合物を構造3の化合物に変換し;
【化7】

(ii)極性非プロトン性溶媒および還元剤の存在下で構造3の化合物を還元して構造7の化合物を製造し;
【化8】

(iii)還元剤の存在下で構造7の化合物とプロパナールとを反応させて構造8のガミスロマイシンを製造すること;
を含む前記方法において、段階(ii)からの構造7の化合物が、段階(iii)の前に単離されない前記方法。
【化9】

【請求項16】
段階(ii)において、極性非プロトン性溶媒が、N,N′-ジメチルエチレン尿素、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドンジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミドまたはそれらの混合物である、請求項15記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−506862(P2012−506862A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533359(P2011−533359)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/061797
【国際公開番号】WO2010/048486
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(304040692)メリアル リミテッド (73)
【Fターム(参考)】