マスカラ化粧用具
【課題】 まつ毛に十分なボリューム感を付与し得るマスカラ塗布具を提供すること。
【解決手段】 マスカラ化粧用具33は、マスカラ薬剤を収容した容器31と、該マスカラ薬剤中に塗布部が浸漬されているマスカラ塗布具10とを備える。マスカラ薬剤は、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性のものある。マスカラ塗布具10の前記塗布部は塗布部軸とクシ歯とから構成される。クシ歯20は、ショア硬さ(A)が45〜85であるエラストマーで構成されており、且つ環状片と突出片が一体で形成されている。
【解決手段】 マスカラ化粧用具33は、マスカラ薬剤を収容した容器31と、該マスカラ薬剤中に塗布部が浸漬されているマスカラ塗布具10とを備える。マスカラ薬剤は、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性のものある。マスカラ塗布具10の前記塗布部は塗布部軸とクシ歯とから構成される。クシ歯20は、ショア硬さ(A)が45〜85であるエラストマーで構成されており、且つ環状片と突出片が一体で形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスカラ化粧用具に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラ薬剤は従来、まつ毛に対してカール効果を訴求する物が多かったが、近年はそれに加えボリューム感も要望されるようになってきている。ボリューム感を出すために、従来はまつ毛一本一本にマスカラ薬剤を塗布し、個々のまつ毛を太らせる工夫をしていた。
【0003】
まつ毛一本一本にマスカラ薬剤を塗布するためには、それに最適なマスカラ薬剤の処方を検討する必要があり、また、そのように処方されたマスカラ薬剤の機能を十分に引き出し得るマスカラ塗布具の検討が必要である。従来のマスカラ塗布具としては例えば、塗布棒の先端側から軸方向に沿って一定間隔をなす多数位置のそれぞれにクシ歯を設けたものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
前記のマスカラ塗布具においては、クシ歯は、塗布棒の外周を構成する塗布部軸の外周に設けられている。また、塗布部軸の周方向に沿って一定間隔をなす複数位置のそれぞれに突出片が設けられ、各突出片が塗布部軸の径方向の外方に突出している。マスカラ塗布具のクシ歯をマスカラ容器に浸漬し、このクシ歯に付着したマスカラ薬剤の過剰分を該容器のしごき弁でしごき落とし、適量のマスカラ薬剤をクシ歯間に保持させる。
【0005】
【特許文献1】特表2002−538868
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のマスカラ塗布具は、マスカラ薬剤を収容する容器に挿入されたクシ歯に薬剤を付着させ、このクシ歯を容器から引き抜く際、クシ歯をしごくしごき弁で薬剤付着量を調整している。まつ毛にボリューム感を付与するためには、クシ歯への薬剤付着量を多くする必要がある。しかし薬剤付着量が多すぎると、薬剤がダマになる、まつ毛の根元から塗布できないなどの不都合がある。また付着量が多いことに起因して薬剤の乾燥速度が遅くなる。乾燥速度を早くするために、クシ歯への薬剤付着量を少なくすると、まつ毛への薬剤付着量が少なくなるので、十分なボリューム感を付与できない。更に、カール効果やロング感も付与できない。
【0007】
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るマスカラ塗布具を有する化粧用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、マスカラ薬剤を収容した容器と、該マスカラ薬剤中に塗布部が浸漬されているマスカラ塗布具とを備えたマスカラ化粧用具であって、
前記マスカラ薬剤は、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性のものあり、
前記マスカラ塗布具の前記塗布部は塗布部軸とクシ歯とから構成され、
前記クシ歯は、ショア硬さ(A)が45〜85であるエラストマーで構成されており、且つ環状片と突出片が一体で形成されているマスカラ化粧用具を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマスカラ化粧用具によれば、まつげを複数本(個人差も含んで3〜10本)きれいにまとめることができ、その状態でまつげの根元より十分なボリューム感を付与することができる。特に、マスカラ薬剤によってまつ毛を複数本まとめてかつ保持量を多くしても、ダマが発生しにくく、また該薬剤のボタ付きが起こりにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明におけるマスカラ塗布部は、高粘度のマスカラ薬剤を塗布することに特に適合したものである。そのようなマスカラ塗布部を有するマスカラ塗布具の一実施形態が図1ないし図3に示されている。
【0011】
図1に示すように、マスカラ塗布具10は、塗布棒11の先端部に塗布ヘッド12を有している。塗布ヘッド12には、クシ歯20が、塗布棒11の軸方向に沿って略一定間隔をおいて複数設けられている。マスカラ塗布具10は、例えば、塗布棒11の先端芯棒11Aの周囲に、インサート成形によって、塗布ヘッド12を射出成形して製作される。
【0012】
塗布ヘッド12においては、図2及び図3に示すように、塗布棒11の先端芯棒11Aの全長にわたり、該先端芯棒11Aの外周に、塗布部軸21が被着されている。塗布部軸21の外周にはクシ歯20が設けられている。各クシ歯20は、環状片22と突出片23を有する。環状片22は、塗布部軸21の軸方向に沿って略一定間隔をおき、該塗布部軸21の外周に複数設けられている。塗布部軸21の軸方向において隣り合う環状片22の間隔は、後述する環状溝13の溝幅と一致する。突出片23は、環状片22の周方向に沿って略一定間隔をなす複数位置に設けられている。また突出片23は、環状片22の径方向の外方に突出している。本実施形態では、クシ歯20が、8個の突出片23を備える星形状の形状になっている。
【0013】
なお、塗布部軸21を、塗布棒11の先端芯棒11Aに確実に固定するために、先端芯棒11Aの表面に、凹凸やその周方向に延びる溝を1本又は複数本形成することが好ましい。これによって、インサート成形時に、塗布部軸21の構成材料が前記の溝内に充填され、塗布部軸21と先端芯棒11Aとが係合する。また、先端芯棒11Aの表面に凸部を形成した場合は、その凸部がインサート成形時に金型に保持されるため、塗布ヘッドの成形時に射出圧力による影響で発生する先端芯棒11Aと塗布部軸21との芯ぶれを防止する効果もある。
【0014】
図3に示すように、塗布部軸21の軸方向において隣り合うクシ歯20間には、塗布部軸21のまわりに環状溝13が形成される。具体的には、環状溝13は、相隣り合う一方のクシ歯20の環状片22及び突出片23と、他方のクシ歯20の環状片22及び突出片23とによって形成される。環状溝13の底部の幅は好適には0.2〜0.8mmである。後述するように、環状溝13にはマスカラ薬剤が保持される。
【0015】
クシ歯20の形状は、環状溝13に保持されるマスカラ薬剤の量や、まつ毛のコーミング効果に影響を及ぼす。この観点から、塗布部軸21に沿ってクシ歯20を正面視した状態で測定された、クシ歯20の環状片22及び突出片23の全表面積Z0に対する、当該クシ歯20の環状片22の全表面積Z1の比率Z1/Z0は20〜50%、特に20〜40%であることが好ましい。なお、Z0は4.5〜26mm2(例えば9.9mm2)であることが好ましく、Z1は1.5〜6mm2(例えば2.7mm2)であることが好ましい。
【0016】
本実施形態のマスカラ塗布具10では、塗布部軸21の外周に、環状片22及び突出片23が一体に形成されたクシ歯20が設けられて、塗布ヘッド12が形成されている。クシ歯20の厚みは、0.15〜0.6mmとすることが好ましい。クシ歯20の厚みとは、環状片22と突出部23の長さを合わせた中心部の厚みをいう。
【0017】
塗布ヘッド12は、塗布部軸21の軸方向に沿う先端側を除く一定の長さ範囲で、隣り合う突出片23の外径を略同一にしている。これと共に、先端側の一部の長さ範囲で、突出片23の外径を最先端側に向けて縮径するテーパ状としている。これによって、マスカラ薬剤が収容された容器へのマスカラ塗布具10の挿入性を良好にしている。また、目じりや目頭側のまつ毛に薬剤を塗布しやすい形状としている。
【0018】
また、突出片23の外径寸法を連続的もしくは部分的に変えることにより、塗布部ヘッド12の外輪郭形状を、例えばひょうたん型や凹凸型にすることができる。この場合、突出片23の外径寸法が小さい部分は、外形寸法が大きい部分よりも、しごき弁にしごかれた後のマスカラ薬剤の保持量を多くできボリューム効果を上げることができる。また、外形寸法が大きい部分は、マスカラ薬剤が保持される量が少ないため、まつ毛を梳きやすくなる。
【0019】
塗布ヘッド12におけるクシ歯20の硬さ(軟らかさ)は、まつ毛のコーミング効果に影響を及ぼす。特に、マスカラ薬剤が高粘度である場合には、その影響が顕著になる。クシ歯20が軟らかすぎると、高粘度のマスカラ薬剤の粘弾性にクシ歯20が抗しきれず、過度に変形してしまい、コーミング効果が低下する。逆に、クシ歯20が硬すぎても十分なコーミング効果が得られない。これらの観点から、本実施形態においては、クシ歯20の環状片22及び突出片23のショア硬さ(A)を45〜85、特に50〜80とすることが好ましく、それによってマスカラ薬剤の貯留機能とコーミング効果を併せ持つことができる。なお以下の説明では、ショア硬さ(A)を便宜的にショア硬さと略称する。
【0020】
本実施形態において、クシ歯20のショア硬さは、JIS K7215に従い、タイプAデュロメータを用いてクシ歯素材をシートに形成して測定した。
【0021】
クシ歯20のショア硬さは、該クシ歯20を構成する材料を適切に選定することで、前記範囲内に調整することができる。当該材料としてはエラストマー材料を用いることが、マスカラ薬剤の貯留機能と高いコーミング効果を得られる点から好ましい。エラストマー材料としては、分子中にゴム弾性を発現する柔軟性部分(ソフトセグメント、非晶質部分)と、塑性変形を防止するための分子拘束部分(ハードセグメント、結晶質部分)を有する熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0022】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマーやポリウレタンエラストマーが好適なものとして例示される。ポリエステルエラストマーは、ハードセグメントにエステル結合を有し、ソフトセグメントにポリエステル、ポリエーテル等を有する。ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントにウレタン結合を有し、ソフトセグメントにポリエーテル、ポリエステル、カプロラクトン、ポリカーボネート等を有する。
【0023】
ポリエステルエラストマーにおけるハードセグメントは、芳香族カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル結合を有することが好ましい。例えば芳香族カルボン酸としてテレフタル酸を用い、脂肪族アルコールとしてブチレングリコールを用いて形成されたエステル結合を有するハードセグメントを挙げることができる。一方ソフトセグメントは、数平均分子量500〜2000の脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを有することが好ましい。
【0024】
ポリウレタンエラストマーにおけるハードセグメントのイソシアネートは、芳香族ジイソシアネート由来のものであることが好ましい。芳香族ジイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネートや、ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。ハードセグメントの鎖延長剤はエチレングリコール、1.4ブタンジオール、1.6ヘキサンジオール等の分子量が60から120のグリコールが挙げられる。一方、ソフトセグメントのポリオール成分は、分子量が500〜4000特に700〜3000の脂肪族ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールが用いられる。特に、ポリエステルポリオール由来のものであることが好ましい。
【0025】
本実施形態のマスカラ塗布具10を用いたまつ毛へのマスカラ薬剤の塗布は、図4(A)ないし(F)に示す手順で行われる。
(1)マスカラ塗布具10の塗布ヘッド12のクシ歯20を、マスカラ薬剤が収容された容器(図示せず)に浸漬し、各クシ歯20に付着したマスカラ薬剤の過剰付着分を該容器のしごき弁(図示せず)によってしごき落とす。マスカラ塗布具10は、軸方向で隣り合うクシ歯20の間に形成された環状溝13、特にそれらクシ歯20の環状片22、及び突出片23の基端部の間にマスカラ薬剤を貯留する。
【0026】
(2)次に図4(A)に示すように、マスカラ塗布具10の隣り合うクシ歯20,20の環状溝13にまつ毛を適確に誘導し、隣り合う突出片23,23の間にまつ毛を通過させる。それによって、環状溝13に貯留されているマスカラ薬剤にまつ毛を付着させる。
【0027】
(3)クシ歯20のまぶたに対する距離L(図4(A))を小さくし、まつ毛の根元からマスカラを塗布する(図4(B))。
【0028】
(4)クシ歯20を上まつ毛に対して上方に移動させ(図4(C))、クシ歯20の環状片22、及び突出片23の基端部の間に貯留されているマスカラ薬剤をまつ毛に塗布する(図4(D)及び(E))。これによって、まつ毛の根元から先端にまでマスカラ薬剤を塗布できる(図4(F))。
【0029】
本実施形態のマスカラ塗布具10は、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性を示すマスカラ薬剤の塗布に特に適合したものである。該薬剤と該塗布具10との組み合わせによって、まつ毛へのマスカラ薬剤の付着量を容易に高めることができ、まつ毛に十分なボリューム感を付与することができる。特に、マスカラ薬剤によってまつ毛が複数本まとまっても、ダマが発生しにくく、また、該薬剤のボタ付きが起こりにくい。その結果、まつ毛が複数本きれいにまとまった状態でボリューム感を出すことができる。従来のマスカラ薬剤やマスカラ塗布具の設計方針は、まつ毛一本一本に薬剤を多量に塗布してボリューム感を高めることに主眼がおかれてきた。まつ毛が複数本まとまるようにマスカラ薬剤を塗布したのでは、ダマが発生し易く、また、該薬剤のボタ付きが起こりやすかったので、まつげを複数本まとまるように塗布する方法は好ましくないものとされてきた。これに対して、本発明者らは意外にも、本実施形態のマスカラ塗布具10を、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性を示すマスカラ薬剤と組み合わせることで、まつ毛が複数本まとまった状態であってもきれいにボリューム感が出ることを知見した。まつ毛を複数本まとめることでボリューム感を出せるとは、当該技術分野において考えられていなかった。
【0030】
本実施形態のマスカラ塗布具10は、図5に示すように、マスカラ薬剤30を収容した容器31内に挿入されており、該塗布具10の塗布部12がマスカラ薬剤30中に浸漬されている状態で用いられる。マスカラ塗布具10の塗布棒11の後端部は、容器31のキャップを兼ねるキャップ部材32に固着されている。これらの各部材からマスカラ化粧用具33が構成されている。容器31の内部には、しごき部材34が取り付けられている。しごき部材34は、マスカラ薬剤30が付着した塗布部12を容器31から取り出すときに、余分なマスカラ薬剤30をしごき取るために用いられる。しごき部材34は、例えばゴム等の弾性材料からなる板状部材であって、マスカラ塗布具10の通過が可能な大きさの開口が形成されたものである。
【0031】
マスカラ塗布具10と組み合わせて用いられる好適なマスカラ薬剤30は高粘度のものである。具体的には25℃における粘度が好ましくは100,000〜1,000,000mPa・s、更に好ましくは150,000〜700,000mPa・sの高粘度のものが用いられる。マスカラ薬剤の粘度および粘弾性は、下記の方法で測定される。
粘度測定条件;使用機器:B型粘度計((株)東京計器製:BR8、ロータータイプ:T-D(ヘリカル)、回転数:5rpm(基本) 、測定時間:60秒、測定温度:25℃)
粘弾性の測定方法;使用機器:Physica Messtechnik GmbH社製 コーンプレート(ギャップ0.05mm)、測定温度:25℃、ひずみ一定(1%)、角速度:1〜628rad/sec(100Hz)
【0032】
マスカラ薬剤は、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性を示すことが重要である。マスカラ薬剤が非ニュートン流体性を示すためには、薬剤の処方を適宜調整すればよい。特にマスカラ薬剤を、油中水型乳化組成物(W/Oエマルジョン)形態とし、増粘剤を添加することで、非ニュートン流体性となすことができる。
【0033】
以上説明したマスカラ塗布具とマスカラ薬剤を組み合わせたマスカラ化粧用具によって以下の作用効果が奏される。
(a)マスカラ塗布具10のクシ歯20を、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性を示すマスカラ薬剤を収容した容器33に浸漬し、このクシ歯20に付着したマスカラの過剰分を容器33のしごき弁34によりしごき落としたとき、軸方向で相隣り合うクシ歯20の間、主にそれらクシ歯20の環状片22、及び突出片23の基端部(根元側)の間に適量のマスカラ薬剤30を貯留できる。従来、マスカラ薬剤が高粘度の場合には、しごき弁によってしごき落とされる薬剤量が少なくなり、クシ歯間に多量の薬剤が貯留されるので、薬剤のボタ付きが起こりやすく、またダマも発生しやすかった。更に、コーミング効果が得られない等の問題もあった。しごき効果を上げるために、しごき弁の硬度を上げたり、しごき弁の径を小さくしたりして対応しようとすると、薬剤の保持量を安定的にすることが困難であるばかりでなく、容器から塗布具を引き抜くときに、大きな力が必要となり操作性が悪くなった。
【0034】
マスカラ塗布具10のクシ歯20は、環状片22と突出片23の一体からなる。クシ歯20を、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性を示すマスカラ薬剤30を含有する容器33に浸漬し、このクシ歯20に付着した薬剤30の過剰分を容器33のしごき弁34によってしごき落としたとき、突出片23は、折りたたまれたようにしごき弁34を通過するので、薬剤30が高粘度でも十分にしごかれる。これとは対照的に、環状片22はしごき弁通過時に折りたたまれない。従って、隣り合う環状片22間に適度な量のマスカラ薬剤30が貯留される。その結果、マスカラ薬剤30をクシ歯20の環状片22、及び突出片23の基端部(根元側)の側に安定的に貯留でき、マスカラ薬剤30のまつ毛への塗布性を向上させ得る。まつ毛の根元に塗布し易くなる。
【0035】
(b)クシ歯20の突出片23の自由端部はマスカラ薬剤30を実質的に貯留しない。従って、軸方向で相隣り合うクシ歯20の突出片23における自由端部の間の環状溝13の周方向任意位置に、まつ毛複数本を容易に誘導させ得る。また、まつ毛に対して面状で摺動することで、梳き作用が一層効果的になる。
【0036】
(c)マスカラ塗布具10は、環状片22と環状片22の間をマスカラ薬剤30の主貯留部とするものである。クシ歯20の環状片22および突出片23の側面は、コーミングする際の動作方向が同じなので、マスカラ薬剤30とまつ毛との接触が容易になる。その結果、マスカラ薬剤30を、まつ毛の根元まで塗布し易くできる。
【0037】
(d)クシ歯20の突出片23が、塗布部軸21の軸を含む正面視で自由端に向かって先細(先薄)をなすから、クシ歯20を容器33のしごき弁34でしごくとき、突出片23の自由端を十分にたわみ変形させることができる。その結果、クシ歯20の先端部に余分なマスカラ薬剤30を付着させないようにできる。突出片23に余分なマスカラ薬剤30を付着させなくすることによって、まつ毛をクシ歯30間に誘導しやすくなる。従って、速やかにマスカラ薬剤30をまつ毛に付着させることができるとともに、コーミング機能が効果的に発揮される。
【0038】
(e)クシ歯20の素材のショア硬さを45〜85、クシ歯20の厚みを0.15〜0.6mmとすることにより、まつ毛に対してやさしい梳きの感触を与えることができる。また、クシ歯20を容器33のしごき弁34でしごくとき、容器33からの引き抜き強度を抑えることができるので操作性が良い。また、引き抜き強度を40g〜120gにすることで、操作性が一層良くなる。
【0039】
(f)クシ歯20における塗布部軸21の正面視で、クシ歯20の全表面積Z0に対し、当該クシ歯20の全環状片22の表面積Z1がなす比率Z1/Z0を20〜50%とすることにより、マスカラ薬剤の貯留機能とコーミング機能を併せ持つことができる。このようなマスカラ塗布具10は、高粘度のマスカラ薬剤の塗布に時に適したものとなる。
【0040】
以上説明したように、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性を示すマスカラ薬剤を収容した容器と、該マスカラ薬剤中に塗布部が浸漬されているマスカラ塗布具とを備えたマスカラ化粧用具であって、前記マスカラ塗布具の前記塗布部は塗布部軸とクシ歯とから構成され、前記クシ歯は、ショア硬さAが45〜85であるエラストマーで構成されており、且つ環状片と突出片が一体で形成されているマスカラ化粧用具を用いることにより、まつげを複数本きれいにまとめることができ、その状態でまつげの根元よりボリュームを付与することができる。特に、マスカラ薬剤によってまつ毛を複数本まとめてかつ保持量を多くしても、ダマが発生しにくく、また該薬剤のボタ付きが起こりにくい。また、まつ毛に対してやさしい梳きの感触を与えることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0042】
〔実施例1〕
以下の表1に示す配合A成分を均一に撹拌混合して、油中水型乳化組成物のマスカラ薬剤を調製した。マスカラ薬剤の25℃における液物性は粘度が290000mPa・sであり、図6に示す非ニュートン流体性(角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する)を示した。
【0043】
【表1】
【0044】
マスカラ薬剤の調製とは別に、図1ないし図3に示す環状片と突出片が一体で形成されているマスカラ塗布具を製作した。ポリブチレンテレフタレートを用いて塗布棒を射出成形した。得られた塗布棒に対して、ポリエステルエラストマーを用いてインサート成形を行い、塗布ヘッドを形成した。ポリエステルエラストマーはショア硬さが70のものであった。ポリエステルエラストマーにおけるハードセグメントは、テレフタル酸とブチレングリコールとのエステル結合を有していた。ソフトセグメントは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含む脂肪族ポリエーテルを有していた。
【0045】
塗布棒先端芯棒11Aの外径a(図3参照)は1.75mm、塗布部軸21の外径bは2.3mm、環状片22の外径cは2.95mm、突出片23の外径dは6.0mmであった。塗布部軸21の外径に接する環状片22の軸方向厚みeは0.4mm、突出片23の自由端の軸方向厚みfは0.3mm、クシ歯20(環状片22及び突出片23)のピッチpは0.8mmであった。
【0046】
マスカラ化粧用具は以下の構成からなる。マスカラ薬剤を図5に示す容器内に充填し、更に該容器内にマスカラ塗布具の塗布部を浸漬した。マスカラ塗布具は、その塗布棒の後端部を、容器の蓋を兼ねるキャップ部材に固着した。容器には、開口を有するしごき弁が取り付けられており、該開口の直径は4.6mmであった。
【0047】
〔実施例2〕
マスカラ塗布具の塗布部のエラストマーとして、ショア硬さが80であるポリウレタンエラストマーを使用する以外は実施例1と同様とした。ポリウレタンエラストマーにおけるハードセグメントは、ジフェニルメタンジイソシアネート由来のものであった。ソフトセグメントは、ε−カプロラクトン型ポリエステルポリオール由来のものであった。
【0048】
〔実施例3〕
マスカラ塗布具の塗布部のエラストマーとして、ショア硬さが60であるポリエステルエラストマーを使用する以外は実施例1と同様とした。
【0049】
〔比較例1〕
マスカラ塗布具の塗布部をナイロン毛からなるスクリューブラシから構成した以外は実施例1と同様とした。
【0050】
〔比較例2〕
マスカラ塗布具の塗布部のエラストマーとして、ショア硬さが110であるポリエステルエラストマーを使用する以外は実施例1と同様とした。
【0051】
〔比較例3〕
マスカラ塗布具の塗布部のショア硬さを40とするポリエステルエラストマーを使用する以外は実施例1と同様とした。
【0052】
〔比較例4〕
表1に示す配合Bのマスカラ薬剤を用いた以外は比較例1と同様とした。マスカラ薬剤の25℃における液物性は粘度が270000mPa・sであり、図6に示す非ニュートン流体性(角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する)を示した。
【0053】
〔比較例5〕
表1に示す配合Bのマスカラ薬剤を用いた以外は比較例2と同様とした。
【0054】
〔比較例6〕
表1に示す配合Bのマスカラ薬剤を用いた以外は実施例2と同様とした。
【0055】
〔比較例7〕
表1に示す配合Bのマスカラ薬剤を用いた以外は実施例1と同様とした。
【0056】
〔比較例8〕
表1に示す配合Bのマスカラ薬剤を用いた以外は実施例3と同様とした。
【0057】
〔比較例9〕
表1に示す配合Bを用いたマスカラ薬剤以外は比較例3と同様とした。
【0058】
〔評価〕
前記実施例1〜3及び比較例1〜9について、「ボリューム感」、「まつ毛のまとまり感」、「ダマの発生」「カール力」を評価項目として、20人の女性パネラーにて実使用評価を実施し、塗布後のまつ毛の状態を以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0059】
〔まつ毛のボリューム感〕
使用後のまつ毛のボリューム感について、聞き取り調査を行い下記4段階で評価した。
◎:塗布後のまつ毛の状態について、「ボリューム感がある」と実感した人が20人中15以上いた場合
○:塗布後のまつ毛の状態について、「ボリューム感がある」と実感した人が20人中10人以上14人以下の場合
△:塗布後のまつ毛の状態について、「ボリューム感がある」と実感した人が20人中5人以上9人以下の場合
×:塗布後のまつ毛の状態について、「ボリューム感がある」と実感した人が20人中4人以下の場合
【0060】
〔まつ毛のまとまり感〕
まつ毛のまとまり感については、使用後のまつ毛の状態が、複数本きれいにまとまっているかどうかについて、聞き取り調査を行い下記4段階で評価した。
◎:塗布後のまつ毛の状態について、「複数本のまつ毛がきれいにまとまっている」と実感した人が20人中15人以上いた場合
○:塗布後のまつ毛の状態について、「複数本のまつ毛がきれいにまとまっている」と実感した人が20人中10人以上14人以下の場合
△:塗布後のまつ毛の状態について、「複数本のまつ毛がきれいにまとまっている」と実感した人が20人中5人以上9人以下の場合
×:塗布後のまつ毛の状態について、「複数本のまつ毛がきれいにまとまっている」と実感した人が20人中4人以下の場合
【0061】
〔ダマの発生〕
使用後のまつ毛の状態で、ダマが発生しているかどうかについて、聞き取り調査を行い下記4段階で評価した。
◎:塗布後のまつ毛の状態で、「ダマの発生が気になる」と実感した人が20人中4人以下の場合
○:塗布後のまつ毛の状態で、「ダマの発生が気になる」と実感した人が20人中5人以上8人以下の場合
△:塗布後のまつ毛の状態で、「ダマの発生が気になる」と実感した人が20人中9人以上12人以下いた場合
×:塗布後のまつ毛の状態について、「ダマの発生が気になる」と実感した人が20人中13人以上いた場合
【0062】
〔カール力〕
使用後のまつ毛のカール力について、聞き取り調査を行い下記4段階で評価した。
◎:塗布後のまつ毛の状態について、「カール力がある」と実感した人が20人中15人以上いた場合
○:塗布後のまつ毛の状態について、「カール力がある」と実感した人が20人中10人以上14人以下の場合
△:塗布後のまつ毛の状態について、「カール力がある」と実感した人が20人中5人以上9人以下の場合
×:塗布後のまつ毛の状態について、「カール力がある」と実感した人が4人以下の場合
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜3では、まつげを複数本きれいにまとめることができ、まつ毛に十分なボリューム感が付与されることが判る。また、ダマの発生も少ない。これに対して比較例では、「ボリューム感」、「まつ毛のまとまり感」、「ダマの発生」「カール力」のいずれかが劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のマスカラ塗布具の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図(正面視)である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1に示すマスカラ塗布具の使用状態を示す模式図である。
【図5】図1に示すマスカラ塗布具を備えたマスカラ化粧用具を示す模式図である。
【図6】実施例及び比較例で用いたマスカラ薬剤の粘弾性測定における角速度とtanδとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
10 マスカラ塗布具
11 塗布棒
11A 塗布棒先端芯棒
12 塗布ヘッド(塗布部)
20 クシ歯
21 塗布部軸
22 環状片
23 突出片
30 マスカラ薬剤
31 容器
32 キャップ部材
33 マスカラ化粧用具
34 しごき部材
【技術分野】
【0001】
本発明はマスカラ化粧用具に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラ薬剤は従来、まつ毛に対してカール効果を訴求する物が多かったが、近年はそれに加えボリューム感も要望されるようになってきている。ボリューム感を出すために、従来はまつ毛一本一本にマスカラ薬剤を塗布し、個々のまつ毛を太らせる工夫をしていた。
【0003】
まつ毛一本一本にマスカラ薬剤を塗布するためには、それに最適なマスカラ薬剤の処方を検討する必要があり、また、そのように処方されたマスカラ薬剤の機能を十分に引き出し得るマスカラ塗布具の検討が必要である。従来のマスカラ塗布具としては例えば、塗布棒の先端側から軸方向に沿って一定間隔をなす多数位置のそれぞれにクシ歯を設けたものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
前記のマスカラ塗布具においては、クシ歯は、塗布棒の外周を構成する塗布部軸の外周に設けられている。また、塗布部軸の周方向に沿って一定間隔をなす複数位置のそれぞれに突出片が設けられ、各突出片が塗布部軸の径方向の外方に突出している。マスカラ塗布具のクシ歯をマスカラ容器に浸漬し、このクシ歯に付着したマスカラ薬剤の過剰分を該容器のしごき弁でしごき落とし、適量のマスカラ薬剤をクシ歯間に保持させる。
【0005】
【特許文献1】特表2002−538868
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のマスカラ塗布具は、マスカラ薬剤を収容する容器に挿入されたクシ歯に薬剤を付着させ、このクシ歯を容器から引き抜く際、クシ歯をしごくしごき弁で薬剤付着量を調整している。まつ毛にボリューム感を付与するためには、クシ歯への薬剤付着量を多くする必要がある。しかし薬剤付着量が多すぎると、薬剤がダマになる、まつ毛の根元から塗布できないなどの不都合がある。また付着量が多いことに起因して薬剤の乾燥速度が遅くなる。乾燥速度を早くするために、クシ歯への薬剤付着量を少なくすると、まつ毛への薬剤付着量が少なくなるので、十分なボリューム感を付与できない。更に、カール効果やロング感も付与できない。
【0007】
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るマスカラ塗布具を有する化粧用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、マスカラ薬剤を収容した容器と、該マスカラ薬剤中に塗布部が浸漬されているマスカラ塗布具とを備えたマスカラ化粧用具であって、
前記マスカラ薬剤は、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性のものあり、
前記マスカラ塗布具の前記塗布部は塗布部軸とクシ歯とから構成され、
前記クシ歯は、ショア硬さ(A)が45〜85であるエラストマーで構成されており、且つ環状片と突出片が一体で形成されているマスカラ化粧用具を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマスカラ化粧用具によれば、まつげを複数本(個人差も含んで3〜10本)きれいにまとめることができ、その状態でまつげの根元より十分なボリューム感を付与することができる。特に、マスカラ薬剤によってまつ毛を複数本まとめてかつ保持量を多くしても、ダマが発生しにくく、また該薬剤のボタ付きが起こりにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明におけるマスカラ塗布部は、高粘度のマスカラ薬剤を塗布することに特に適合したものである。そのようなマスカラ塗布部を有するマスカラ塗布具の一実施形態が図1ないし図3に示されている。
【0011】
図1に示すように、マスカラ塗布具10は、塗布棒11の先端部に塗布ヘッド12を有している。塗布ヘッド12には、クシ歯20が、塗布棒11の軸方向に沿って略一定間隔をおいて複数設けられている。マスカラ塗布具10は、例えば、塗布棒11の先端芯棒11Aの周囲に、インサート成形によって、塗布ヘッド12を射出成形して製作される。
【0012】
塗布ヘッド12においては、図2及び図3に示すように、塗布棒11の先端芯棒11Aの全長にわたり、該先端芯棒11Aの外周に、塗布部軸21が被着されている。塗布部軸21の外周にはクシ歯20が設けられている。各クシ歯20は、環状片22と突出片23を有する。環状片22は、塗布部軸21の軸方向に沿って略一定間隔をおき、該塗布部軸21の外周に複数設けられている。塗布部軸21の軸方向において隣り合う環状片22の間隔は、後述する環状溝13の溝幅と一致する。突出片23は、環状片22の周方向に沿って略一定間隔をなす複数位置に設けられている。また突出片23は、環状片22の径方向の外方に突出している。本実施形態では、クシ歯20が、8個の突出片23を備える星形状の形状になっている。
【0013】
なお、塗布部軸21を、塗布棒11の先端芯棒11Aに確実に固定するために、先端芯棒11Aの表面に、凹凸やその周方向に延びる溝を1本又は複数本形成することが好ましい。これによって、インサート成形時に、塗布部軸21の構成材料が前記の溝内に充填され、塗布部軸21と先端芯棒11Aとが係合する。また、先端芯棒11Aの表面に凸部を形成した場合は、その凸部がインサート成形時に金型に保持されるため、塗布ヘッドの成形時に射出圧力による影響で発生する先端芯棒11Aと塗布部軸21との芯ぶれを防止する効果もある。
【0014】
図3に示すように、塗布部軸21の軸方向において隣り合うクシ歯20間には、塗布部軸21のまわりに環状溝13が形成される。具体的には、環状溝13は、相隣り合う一方のクシ歯20の環状片22及び突出片23と、他方のクシ歯20の環状片22及び突出片23とによって形成される。環状溝13の底部の幅は好適には0.2〜0.8mmである。後述するように、環状溝13にはマスカラ薬剤が保持される。
【0015】
クシ歯20の形状は、環状溝13に保持されるマスカラ薬剤の量や、まつ毛のコーミング効果に影響を及ぼす。この観点から、塗布部軸21に沿ってクシ歯20を正面視した状態で測定された、クシ歯20の環状片22及び突出片23の全表面積Z0に対する、当該クシ歯20の環状片22の全表面積Z1の比率Z1/Z0は20〜50%、特に20〜40%であることが好ましい。なお、Z0は4.5〜26mm2(例えば9.9mm2)であることが好ましく、Z1は1.5〜6mm2(例えば2.7mm2)であることが好ましい。
【0016】
本実施形態のマスカラ塗布具10では、塗布部軸21の外周に、環状片22及び突出片23が一体に形成されたクシ歯20が設けられて、塗布ヘッド12が形成されている。クシ歯20の厚みは、0.15〜0.6mmとすることが好ましい。クシ歯20の厚みとは、環状片22と突出部23の長さを合わせた中心部の厚みをいう。
【0017】
塗布ヘッド12は、塗布部軸21の軸方向に沿う先端側を除く一定の長さ範囲で、隣り合う突出片23の外径を略同一にしている。これと共に、先端側の一部の長さ範囲で、突出片23の外径を最先端側に向けて縮径するテーパ状としている。これによって、マスカラ薬剤が収容された容器へのマスカラ塗布具10の挿入性を良好にしている。また、目じりや目頭側のまつ毛に薬剤を塗布しやすい形状としている。
【0018】
また、突出片23の外径寸法を連続的もしくは部分的に変えることにより、塗布部ヘッド12の外輪郭形状を、例えばひょうたん型や凹凸型にすることができる。この場合、突出片23の外径寸法が小さい部分は、外形寸法が大きい部分よりも、しごき弁にしごかれた後のマスカラ薬剤の保持量を多くできボリューム効果を上げることができる。また、外形寸法が大きい部分は、マスカラ薬剤が保持される量が少ないため、まつ毛を梳きやすくなる。
【0019】
塗布ヘッド12におけるクシ歯20の硬さ(軟らかさ)は、まつ毛のコーミング効果に影響を及ぼす。特に、マスカラ薬剤が高粘度である場合には、その影響が顕著になる。クシ歯20が軟らかすぎると、高粘度のマスカラ薬剤の粘弾性にクシ歯20が抗しきれず、過度に変形してしまい、コーミング効果が低下する。逆に、クシ歯20が硬すぎても十分なコーミング効果が得られない。これらの観点から、本実施形態においては、クシ歯20の環状片22及び突出片23のショア硬さ(A)を45〜85、特に50〜80とすることが好ましく、それによってマスカラ薬剤の貯留機能とコーミング効果を併せ持つことができる。なお以下の説明では、ショア硬さ(A)を便宜的にショア硬さと略称する。
【0020】
本実施形態において、クシ歯20のショア硬さは、JIS K7215に従い、タイプAデュロメータを用いてクシ歯素材をシートに形成して測定した。
【0021】
クシ歯20のショア硬さは、該クシ歯20を構成する材料を適切に選定することで、前記範囲内に調整することができる。当該材料としてはエラストマー材料を用いることが、マスカラ薬剤の貯留機能と高いコーミング効果を得られる点から好ましい。エラストマー材料としては、分子中にゴム弾性を発現する柔軟性部分(ソフトセグメント、非晶質部分)と、塑性変形を防止するための分子拘束部分(ハードセグメント、結晶質部分)を有する熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0022】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマーやポリウレタンエラストマーが好適なものとして例示される。ポリエステルエラストマーは、ハードセグメントにエステル結合を有し、ソフトセグメントにポリエステル、ポリエーテル等を有する。ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントにウレタン結合を有し、ソフトセグメントにポリエーテル、ポリエステル、カプロラクトン、ポリカーボネート等を有する。
【0023】
ポリエステルエラストマーにおけるハードセグメントは、芳香族カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル結合を有することが好ましい。例えば芳香族カルボン酸としてテレフタル酸を用い、脂肪族アルコールとしてブチレングリコールを用いて形成されたエステル結合を有するハードセグメントを挙げることができる。一方ソフトセグメントは、数平均分子量500〜2000の脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを有することが好ましい。
【0024】
ポリウレタンエラストマーにおけるハードセグメントのイソシアネートは、芳香族ジイソシアネート由来のものであることが好ましい。芳香族ジイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネートや、ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。ハードセグメントの鎖延長剤はエチレングリコール、1.4ブタンジオール、1.6ヘキサンジオール等の分子量が60から120のグリコールが挙げられる。一方、ソフトセグメントのポリオール成分は、分子量が500〜4000特に700〜3000の脂肪族ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールが用いられる。特に、ポリエステルポリオール由来のものであることが好ましい。
【0025】
本実施形態のマスカラ塗布具10を用いたまつ毛へのマスカラ薬剤の塗布は、図4(A)ないし(F)に示す手順で行われる。
(1)マスカラ塗布具10の塗布ヘッド12のクシ歯20を、マスカラ薬剤が収容された容器(図示せず)に浸漬し、各クシ歯20に付着したマスカラ薬剤の過剰付着分を該容器のしごき弁(図示せず)によってしごき落とす。マスカラ塗布具10は、軸方向で隣り合うクシ歯20の間に形成された環状溝13、特にそれらクシ歯20の環状片22、及び突出片23の基端部の間にマスカラ薬剤を貯留する。
【0026】
(2)次に図4(A)に示すように、マスカラ塗布具10の隣り合うクシ歯20,20の環状溝13にまつ毛を適確に誘導し、隣り合う突出片23,23の間にまつ毛を通過させる。それによって、環状溝13に貯留されているマスカラ薬剤にまつ毛を付着させる。
【0027】
(3)クシ歯20のまぶたに対する距離L(図4(A))を小さくし、まつ毛の根元からマスカラを塗布する(図4(B))。
【0028】
(4)クシ歯20を上まつ毛に対して上方に移動させ(図4(C))、クシ歯20の環状片22、及び突出片23の基端部の間に貯留されているマスカラ薬剤をまつ毛に塗布する(図4(D)及び(E))。これによって、まつ毛の根元から先端にまでマスカラ薬剤を塗布できる(図4(F))。
【0029】
本実施形態のマスカラ塗布具10は、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性を示すマスカラ薬剤の塗布に特に適合したものである。該薬剤と該塗布具10との組み合わせによって、まつ毛へのマスカラ薬剤の付着量を容易に高めることができ、まつ毛に十分なボリューム感を付与することができる。特に、マスカラ薬剤によってまつ毛が複数本まとまっても、ダマが発生しにくく、また、該薬剤のボタ付きが起こりにくい。その結果、まつ毛が複数本きれいにまとまった状態でボリューム感を出すことができる。従来のマスカラ薬剤やマスカラ塗布具の設計方針は、まつ毛一本一本に薬剤を多量に塗布してボリューム感を高めることに主眼がおかれてきた。まつ毛が複数本まとまるようにマスカラ薬剤を塗布したのでは、ダマが発生し易く、また、該薬剤のボタ付きが起こりやすかったので、まつげを複数本まとまるように塗布する方法は好ましくないものとされてきた。これに対して、本発明者らは意外にも、本実施形態のマスカラ塗布具10を、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性を示すマスカラ薬剤と組み合わせることで、まつ毛が複数本まとまった状態であってもきれいにボリューム感が出ることを知見した。まつ毛を複数本まとめることでボリューム感を出せるとは、当該技術分野において考えられていなかった。
【0030】
本実施形態のマスカラ塗布具10は、図5に示すように、マスカラ薬剤30を収容した容器31内に挿入されており、該塗布具10の塗布部12がマスカラ薬剤30中に浸漬されている状態で用いられる。マスカラ塗布具10の塗布棒11の後端部は、容器31のキャップを兼ねるキャップ部材32に固着されている。これらの各部材からマスカラ化粧用具33が構成されている。容器31の内部には、しごき部材34が取り付けられている。しごき部材34は、マスカラ薬剤30が付着した塗布部12を容器31から取り出すときに、余分なマスカラ薬剤30をしごき取るために用いられる。しごき部材34は、例えばゴム等の弾性材料からなる板状部材であって、マスカラ塗布具10の通過が可能な大きさの開口が形成されたものである。
【0031】
マスカラ塗布具10と組み合わせて用いられる好適なマスカラ薬剤30は高粘度のものである。具体的には25℃における粘度が好ましくは100,000〜1,000,000mPa・s、更に好ましくは150,000〜700,000mPa・sの高粘度のものが用いられる。マスカラ薬剤の粘度および粘弾性は、下記の方法で測定される。
粘度測定条件;使用機器:B型粘度計((株)東京計器製:BR8、ロータータイプ:T-D(ヘリカル)、回転数:5rpm(基本) 、測定時間:60秒、測定温度:25℃)
粘弾性の測定方法;使用機器:Physica Messtechnik GmbH社製 コーンプレート(ギャップ0.05mm)、測定温度:25℃、ひずみ一定(1%)、角速度:1〜628rad/sec(100Hz)
【0032】
マスカラ薬剤は、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性を示すことが重要である。マスカラ薬剤が非ニュートン流体性を示すためには、薬剤の処方を適宜調整すればよい。特にマスカラ薬剤を、油中水型乳化組成物(W/Oエマルジョン)形態とし、増粘剤を添加することで、非ニュートン流体性となすことができる。
【0033】
以上説明したマスカラ塗布具とマスカラ薬剤を組み合わせたマスカラ化粧用具によって以下の作用効果が奏される。
(a)マスカラ塗布具10のクシ歯20を、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性を示すマスカラ薬剤を収容した容器33に浸漬し、このクシ歯20に付着したマスカラの過剰分を容器33のしごき弁34によりしごき落としたとき、軸方向で相隣り合うクシ歯20の間、主にそれらクシ歯20の環状片22、及び突出片23の基端部(根元側)の間に適量のマスカラ薬剤30を貯留できる。従来、マスカラ薬剤が高粘度の場合には、しごき弁によってしごき落とされる薬剤量が少なくなり、クシ歯間に多量の薬剤が貯留されるので、薬剤のボタ付きが起こりやすく、またダマも発生しやすかった。更に、コーミング効果が得られない等の問題もあった。しごき効果を上げるために、しごき弁の硬度を上げたり、しごき弁の径を小さくしたりして対応しようとすると、薬剤の保持量を安定的にすることが困難であるばかりでなく、容器から塗布具を引き抜くときに、大きな力が必要となり操作性が悪くなった。
【0034】
マスカラ塗布具10のクシ歯20は、環状片22と突出片23の一体からなる。クシ歯20を、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性を示すマスカラ薬剤30を含有する容器33に浸漬し、このクシ歯20に付着した薬剤30の過剰分を容器33のしごき弁34によってしごき落としたとき、突出片23は、折りたたまれたようにしごき弁34を通過するので、薬剤30が高粘度でも十分にしごかれる。これとは対照的に、環状片22はしごき弁通過時に折りたたまれない。従って、隣り合う環状片22間に適度な量のマスカラ薬剤30が貯留される。その結果、マスカラ薬剤30をクシ歯20の環状片22、及び突出片23の基端部(根元側)の側に安定的に貯留でき、マスカラ薬剤30のまつ毛への塗布性を向上させ得る。まつ毛の根元に塗布し易くなる。
【0035】
(b)クシ歯20の突出片23の自由端部はマスカラ薬剤30を実質的に貯留しない。従って、軸方向で相隣り合うクシ歯20の突出片23における自由端部の間の環状溝13の周方向任意位置に、まつ毛複数本を容易に誘導させ得る。また、まつ毛に対して面状で摺動することで、梳き作用が一層効果的になる。
【0036】
(c)マスカラ塗布具10は、環状片22と環状片22の間をマスカラ薬剤30の主貯留部とするものである。クシ歯20の環状片22および突出片23の側面は、コーミングする際の動作方向が同じなので、マスカラ薬剤30とまつ毛との接触が容易になる。その結果、マスカラ薬剤30を、まつ毛の根元まで塗布し易くできる。
【0037】
(d)クシ歯20の突出片23が、塗布部軸21の軸を含む正面視で自由端に向かって先細(先薄)をなすから、クシ歯20を容器33のしごき弁34でしごくとき、突出片23の自由端を十分にたわみ変形させることができる。その結果、クシ歯20の先端部に余分なマスカラ薬剤30を付着させないようにできる。突出片23に余分なマスカラ薬剤30を付着させなくすることによって、まつ毛をクシ歯30間に誘導しやすくなる。従って、速やかにマスカラ薬剤30をまつ毛に付着させることができるとともに、コーミング機能が効果的に発揮される。
【0038】
(e)クシ歯20の素材のショア硬さを45〜85、クシ歯20の厚みを0.15〜0.6mmとすることにより、まつ毛に対してやさしい梳きの感触を与えることができる。また、クシ歯20を容器33のしごき弁34でしごくとき、容器33からの引き抜き強度を抑えることができるので操作性が良い。また、引き抜き強度を40g〜120gにすることで、操作性が一層良くなる。
【0039】
(f)クシ歯20における塗布部軸21の正面視で、クシ歯20の全表面積Z0に対し、当該クシ歯20の全環状片22の表面積Z1がなす比率Z1/Z0を20〜50%とすることにより、マスカラ薬剤の貯留機能とコーミング機能を併せ持つことができる。このようなマスカラ塗布具10は、高粘度のマスカラ薬剤の塗布に時に適したものとなる。
【0040】
以上説明したように、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性を示すマスカラ薬剤を収容した容器と、該マスカラ薬剤中に塗布部が浸漬されているマスカラ塗布具とを備えたマスカラ化粧用具であって、前記マスカラ塗布具の前記塗布部は塗布部軸とクシ歯とから構成され、前記クシ歯は、ショア硬さAが45〜85であるエラストマーで構成されており、且つ環状片と突出片が一体で形成されているマスカラ化粧用具を用いることにより、まつげを複数本きれいにまとめることができ、その状態でまつげの根元よりボリュームを付与することができる。特に、マスカラ薬剤によってまつ毛を複数本まとめてかつ保持量を多くしても、ダマが発生しにくく、また該薬剤のボタ付きが起こりにくい。また、まつ毛に対してやさしい梳きの感触を与えることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0042】
〔実施例1〕
以下の表1に示す配合A成分を均一に撹拌混合して、油中水型乳化組成物のマスカラ薬剤を調製した。マスカラ薬剤の25℃における液物性は粘度が290000mPa・sであり、図6に示す非ニュートン流体性(角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する)を示した。
【0043】
【表1】
【0044】
マスカラ薬剤の調製とは別に、図1ないし図3に示す環状片と突出片が一体で形成されているマスカラ塗布具を製作した。ポリブチレンテレフタレートを用いて塗布棒を射出成形した。得られた塗布棒に対して、ポリエステルエラストマーを用いてインサート成形を行い、塗布ヘッドを形成した。ポリエステルエラストマーはショア硬さが70のものであった。ポリエステルエラストマーにおけるハードセグメントは、テレフタル酸とブチレングリコールとのエステル結合を有していた。ソフトセグメントは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含む脂肪族ポリエーテルを有していた。
【0045】
塗布棒先端芯棒11Aの外径a(図3参照)は1.75mm、塗布部軸21の外径bは2.3mm、環状片22の外径cは2.95mm、突出片23の外径dは6.0mmであった。塗布部軸21の外径に接する環状片22の軸方向厚みeは0.4mm、突出片23の自由端の軸方向厚みfは0.3mm、クシ歯20(環状片22及び突出片23)のピッチpは0.8mmであった。
【0046】
マスカラ化粧用具は以下の構成からなる。マスカラ薬剤を図5に示す容器内に充填し、更に該容器内にマスカラ塗布具の塗布部を浸漬した。マスカラ塗布具は、その塗布棒の後端部を、容器の蓋を兼ねるキャップ部材に固着した。容器には、開口を有するしごき弁が取り付けられており、該開口の直径は4.6mmであった。
【0047】
〔実施例2〕
マスカラ塗布具の塗布部のエラストマーとして、ショア硬さが80であるポリウレタンエラストマーを使用する以外は実施例1と同様とした。ポリウレタンエラストマーにおけるハードセグメントは、ジフェニルメタンジイソシアネート由来のものであった。ソフトセグメントは、ε−カプロラクトン型ポリエステルポリオール由来のものであった。
【0048】
〔実施例3〕
マスカラ塗布具の塗布部のエラストマーとして、ショア硬さが60であるポリエステルエラストマーを使用する以外は実施例1と同様とした。
【0049】
〔比較例1〕
マスカラ塗布具の塗布部をナイロン毛からなるスクリューブラシから構成した以外は実施例1と同様とした。
【0050】
〔比較例2〕
マスカラ塗布具の塗布部のエラストマーとして、ショア硬さが110であるポリエステルエラストマーを使用する以外は実施例1と同様とした。
【0051】
〔比較例3〕
マスカラ塗布具の塗布部のショア硬さを40とするポリエステルエラストマーを使用する以外は実施例1と同様とした。
【0052】
〔比較例4〕
表1に示す配合Bのマスカラ薬剤を用いた以外は比較例1と同様とした。マスカラ薬剤の25℃における液物性は粘度が270000mPa・sであり、図6に示す非ニュートン流体性(角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する)を示した。
【0053】
〔比較例5〕
表1に示す配合Bのマスカラ薬剤を用いた以外は比較例2と同様とした。
【0054】
〔比較例6〕
表1に示す配合Bのマスカラ薬剤を用いた以外は実施例2と同様とした。
【0055】
〔比較例7〕
表1に示す配合Bのマスカラ薬剤を用いた以外は実施例1と同様とした。
【0056】
〔比較例8〕
表1に示す配合Bのマスカラ薬剤を用いた以外は実施例3と同様とした。
【0057】
〔比較例9〕
表1に示す配合Bを用いたマスカラ薬剤以外は比較例3と同様とした。
【0058】
〔評価〕
前記実施例1〜3及び比較例1〜9について、「ボリューム感」、「まつ毛のまとまり感」、「ダマの発生」「カール力」を評価項目として、20人の女性パネラーにて実使用評価を実施し、塗布後のまつ毛の状態を以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0059】
〔まつ毛のボリューム感〕
使用後のまつ毛のボリューム感について、聞き取り調査を行い下記4段階で評価した。
◎:塗布後のまつ毛の状態について、「ボリューム感がある」と実感した人が20人中15以上いた場合
○:塗布後のまつ毛の状態について、「ボリューム感がある」と実感した人が20人中10人以上14人以下の場合
△:塗布後のまつ毛の状態について、「ボリューム感がある」と実感した人が20人中5人以上9人以下の場合
×:塗布後のまつ毛の状態について、「ボリューム感がある」と実感した人が20人中4人以下の場合
【0060】
〔まつ毛のまとまり感〕
まつ毛のまとまり感については、使用後のまつ毛の状態が、複数本きれいにまとまっているかどうかについて、聞き取り調査を行い下記4段階で評価した。
◎:塗布後のまつ毛の状態について、「複数本のまつ毛がきれいにまとまっている」と実感した人が20人中15人以上いた場合
○:塗布後のまつ毛の状態について、「複数本のまつ毛がきれいにまとまっている」と実感した人が20人中10人以上14人以下の場合
△:塗布後のまつ毛の状態について、「複数本のまつ毛がきれいにまとまっている」と実感した人が20人中5人以上9人以下の場合
×:塗布後のまつ毛の状態について、「複数本のまつ毛がきれいにまとまっている」と実感した人が20人中4人以下の場合
【0061】
〔ダマの発生〕
使用後のまつ毛の状態で、ダマが発生しているかどうかについて、聞き取り調査を行い下記4段階で評価した。
◎:塗布後のまつ毛の状態で、「ダマの発生が気になる」と実感した人が20人中4人以下の場合
○:塗布後のまつ毛の状態で、「ダマの発生が気になる」と実感した人が20人中5人以上8人以下の場合
△:塗布後のまつ毛の状態で、「ダマの発生が気になる」と実感した人が20人中9人以上12人以下いた場合
×:塗布後のまつ毛の状態について、「ダマの発生が気になる」と実感した人が20人中13人以上いた場合
【0062】
〔カール力〕
使用後のまつ毛のカール力について、聞き取り調査を行い下記4段階で評価した。
◎:塗布後のまつ毛の状態について、「カール力がある」と実感した人が20人中15人以上いた場合
○:塗布後のまつ毛の状態について、「カール力がある」と実感した人が20人中10人以上14人以下の場合
△:塗布後のまつ毛の状態について、「カール力がある」と実感した人が20人中5人以上9人以下の場合
×:塗布後のまつ毛の状態について、「カール力がある」と実感した人が4人以下の場合
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜3では、まつげを複数本きれいにまとめることができ、まつ毛に十分なボリューム感が付与されることが判る。また、ダマの発生も少ない。これに対して比較例では、「ボリューム感」、「まつ毛のまとまり感」、「ダマの発生」「カール力」のいずれかが劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のマスカラ塗布具の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図(正面視)である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1に示すマスカラ塗布具の使用状態を示す模式図である。
【図5】図1に示すマスカラ塗布具を備えたマスカラ化粧用具を示す模式図である。
【図6】実施例及び比較例で用いたマスカラ薬剤の粘弾性測定における角速度とtanδとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
10 マスカラ塗布具
11 塗布棒
11A 塗布棒先端芯棒
12 塗布ヘッド(塗布部)
20 クシ歯
21 塗布部軸
22 環状片
23 突出片
30 マスカラ薬剤
31 容器
32 キャップ部材
33 マスカラ化粧用具
34 しごき部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスカラ薬剤を収容した容器と、該マスカラ薬剤中に塗布部が浸漬されているマスカラ塗布具とを備えたマスカラ化粧用具であって、
前記マスカラ薬剤は、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性のものあり、
前記マスカラ塗布具の前記塗布部は塗布部軸とクシ歯とから構成され、
前記クシ歯は、ショア硬さ(A)が45〜85であるエラストマーで構成されており、且つ環状片と突出片が一体で形成されているマスカラ化粧用具。
【請求項2】
前記エラストマーがポリエステルエラストマー又はポリウレタンエラストマーである請求項1記載のマスカラ化粧用具。
【請求項1】
マスカラ薬剤を収容した容器と、該マスカラ薬剤中に塗布部が浸漬されているマスカラ塗布具とを備えたマスカラ化粧用具であって、
前記マスカラ薬剤は、角速度が1〜10rad/secにtanδのピーク値を有する非ニュートン流体性のものあり、
前記マスカラ塗布具の前記塗布部は塗布部軸とクシ歯とから構成され、
前記クシ歯は、ショア硬さ(A)が45〜85であるエラストマーで構成されており、且つ環状片と突出片が一体で形成されているマスカラ化粧用具。
【請求項2】
前記エラストマーがポリエステルエラストマー又はポリウレタンエラストマーである請求項1記載のマスカラ化粧用具。
【図2】
【図6】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2006−305190(P2006−305190A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133406(P2005−133406)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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