説明

マスキングされたイソシアネート基を有するオルガノ珪素化合物

本発明は、一般式(I)
(RO)3−n(RSi−CH−N(H)−C(O)−X (I)
[式中、Xは基−NR、−S−R、−O−R、−C(H)(COおよび−O−N=CRであり、かつ、R、R、R、R、R、Rおよびnは、請求項1に記載の意味を有する]のオルガノ珪素化合物に関する。さらに本発明は、これらの化合物を製造するための方法、一般式(I)のオルガノ珪素化合物からのブロッキング剤HXを脱離するための方法ならびにその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロッキング剤によってマスキングされたイソシアネート基を有するオルガノ珪素化合物、その製造方法、ブロッキング剤を脱離するための方法ならびにそのオルガノ珪素化合物の使用に関する。
【0002】
オルガノ官能性シラン、すなわちシリル基以外にオルガノ官能基を有する化合物は、結合剤、架橋剤として、あるいは、表面を改質化するために種々の使用において、大工業的意義を獲得している。これに関連して、好ましい条件では、イソシアネート基は、そのプロトン化合物、たとえばアルコール、アミン、オキシム等に対する高い反応性に基づいて、多くの方法で反応させることができる。しかしながら、しばしば、たとえばイソシアネートを水性環境下であるか、あるいは、イソシアネート架橋性一成分ラッカー系で使用する際には、イソシアネートの望ましくない早期の反応を回避するために、イソシアネートのマスキングされた形が必要とされる。この目的のために、大工業的には、そのイソシアネート官能基が、一つの群によりブロックされているイソシアネートを使用し、この場合、この群は、熱的に脱離される(D. A. Wicks Z. W. Wicks Prog. Org. Coat. 1999, 36, 148-172)。ブロッキング剤によってマスキングされたこれらのイソシアネートは、しばしば、簡単な方法で製造可能であり、かつさらに、遊離の有機イソシアネートと比較して、顕著に減少した毒性を示す。いくつかのマスキングされたイソシアネート基を有するオルガノ珪素化合物は、たとえばDE 34 24 534 Al, EP 0 212 058 Bl, JP 08-291186またはJP 10-067787から公知である。すべてのこれらの化合物に共通することであるが、マスキングされたイソシアネート基とシリル基との間にプロピレン基が存在し、これによって、これら化合物の加水分解反応および縮合反応が比較的減少する。これは、これらの化合物の反応にしばしば高い温度が必要とされることとなり、ブロッキング剤の望ましくない時点での脱離を招き、これによって、これらの化合物は多くの使用において不適切なものとなるか、あるいは、大きな欠点となる。
【0003】
したがって本発明の課題は、高い加水分解反応性および縮合反応性を有するマスキングされたイソシアネート基を有するオルガノ珪素化合物ならびにその製造方法を提供することである。
【0004】
本発明の対象は、一般式(1)
【化1】

[式中、RはC〜C15−炭化水素基またはアセチル基であり、
は、水素原子または場合によっては−CN、−NCO、−NR、−COOH、−COOR、−ハロゲン、−アクリル、−エポキシ、−SH、−OHまたは−CONRで置換されたSi−C結合されたC〜C20−炭化水素基であり、その際、それぞれ1個または複数個の、互いに隣接しないメチレン単位は、基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−または−OCOO−、−S−または−NR−によって置換されていてもよく、かつその際、1個または複数個の、互いに隣接しないメチン単位は、基−N=、−N=N−、または−P=で置換されていてもよく、
nは値0、1、2であり、
Xは基−NR、−S−R、−O−R、−C(H)(COおよび−O−N=CRから成る群から選択される基であり、
、RおよびRは、Rの意味を有するか、あるいは、少なくとも3個の環原子を有する、2〜30個の炭素原子を有する、環式の、場合によっては分枝の炭化水素基であり、この場合、これらは、場合によっては1個または複数個の基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−S−、=N−、−NR−、−CONR−によって官能化されていてもよく、かつ、
は、C〜C20−アルキル−、C〜C20−シクロアルキル−、C〜C20−ヘテロアリール−またはC〜C20−アリール基であり、この場合、これらは、−OH、NR−、CO、−OCORまたは−SHによって、あるいは、他の酸素、窒素、硫黄またはリンを含有する基ならびに炭化水素基によって官能化されていてもよいか、あるいは、フェニル基であり、この場合、これらは、−OH、NR−、CO、−OCORまたは−SHによって、あるいは、他の酸素、窒素、硫黄またはリンを含有する基ならびに炭化水素基によって官能化されている]のオルガノ珪素化合物である。
【0005】
一般式(1)のオルガノ珪素化合物の熱的負荷は、それぞれのブロッキング剤HXを脱離し、かつ遊離イソシアネート基を生じる。
【0006】
ブロッキング剤HXを脱離するための機序、脱離温度ならびにその測定方法は、たとえばD.A. Wicks, Z-W. Wicksr Prog. Org. Coatings, 1999, 36, 148-172 または H. Bach, C. Gurtler, S. Nowak, Farbe & Lack 12/2003, 109, 32-42 から当業者に公知である。
【0007】
脱離温度は、場合によっては触媒、たとえばビスマス化合物または錫化合物さらにはアミンに依存する。
【0008】
一般式(I)のブロックされたイソシアネート基含有オルガノ珪素化合物からのブロッキング剤HXの脱離は、好ましくは30〜250℃の温度、さらに好ましくは50〜180℃の温度および特に好ましくは80〜150℃の温度で実施することができる。
【0009】
熱的負荷によって脱離可能なブロッキング剤HXは、好ましくは、分子量M<500、および特に好ましくはM<200を有する。
【0010】
さらに本発明の対象は、一般式(I)のオルガノ珪素化合物から、30〜250℃の温度範囲で、ブロッキング剤HXを脱離するための方法である。
【0011】
Rの好ましい意味は、C〜C−炭化水素、特に好ましくはC〜C−アルキル基、特にメチル−またはエチルエステルまたはアセチルエステル基である。
【0012】
の好ましい意味は、C〜C−炭化水素、さらに好ましくはC〜C−アルキル基、特にメチル−またはエチルエステル基である。
【0013】
基R、R、RおよびRは、ハロゲン原子、特にフッ素および塩素で置換されていてもよい。
【0014】
好ましくは、C〜C20−ヘテロアリール基Rは、このようなC〜C20−アリール基であり、その際、環炭素原子は、N、P、O、S、AsまたはSbによって置換されている。特に好ましくは、この基はピリジル、2−ピリジルおよび4−ピリジルである。
【0015】
一般式(I)のブロックトイソシアネート基含有オルガノ珪素化合物の製造は、任意の方法にしたがって実施することができる。
【0016】
さらに本発明は、一般式(I)のオルガノ珪素化合物を製造するための方法に関し、その際、一般式(II)
【化2】

のイソシアネート基含有オルガノ珪素化合物を、化合物HXと反応させ、その際、R、R、Xおよびnは、前記意味を有する。
【0017】
製造は、好ましくは、塩基性触媒または金属含有触媒の存在下で実施する。塩基性触媒として、アルカリ金属−およびアルカリ土類金属水酸化物、特にナトリウム−およびカリウム水酸化物が好ましい。
【0018】
さらに本発明は、一般式(I)のオルガノ珪素化合物を製造するための方法に関し、その際、一般式(III)
【化3】

のクロロアルキル基含有オルガノ珪素化合物を、
化合物HXおよび一般式(IV)
【化4】

の塩と一緒に反応させ、その際、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、かつ、mは1または2を意味し、かつ、
R、R、Xおよびnは前記意味を有する。
【0019】
反応の際に、一般式(III)、(IV)およびHXの化合物に加えて、この反応に必要とされる物質が存在していてもよい。
【0020】
ブロッキング剤HXの例は、この場合、熱的負荷により一般式(I)のオルガノ珪素化合物から脱離することができるものであって、ポリヒドロキシル化合物、たとえば4−ニトロフェノール、2−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、2−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、N,N−ジエチルヒドロキシアミンまたはN−(2−ヒドロキシエチル)スクシンイミド;ケトンオキシム、たとえば2−ブタノンオキシム、メチル−n−アミルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、シクトヘキサノンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチル−tert.−ブチルケトンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、2,2,6,6−テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、またはさらに、テトラメチルシクロブタンジオンモノオキシム;チオール、たとえばチオフェノールまたは2−メルカプトピリジン;
CH−アジド化合物、たとえばマロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、シアン酢酸エチルエステル、シアン酢酸メチルエステル、またはアセチルアセトン;アミン、たとえばメチルフェニルアミン、ジフェニルアミン、ナフチルフェニルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロへキルアミン、エチルイソプロピルアミン、ベンジル−tert.−ブチルアミン、tert.−ブチルメチルアミン、tert.−ブチルイソプロピルアミンまたは2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;またはさらにヘテロ環式化合物、たとえばイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、3,5−ジメチルピラゾールおよび5−メチル−2,3−ジヒドロピラゾール−3−オンである。
【0021】
他のブロッキング剤HXは、本発明によってブロックされたイソシアネート基を有するオルガノ珪素化合物を、熱的負荷によって脱離することができるものであって、たとえばε−カプロラクタム、γ−ラクタム、δ−ラクタム、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N−プロピルアセトアミドまたはN−イソプロピルアセトアミドである。
【0022】
好ましくは、ブロッキング剤HXは、一般式(I)のブロックトイソシアネート基含有珪素化合物から熱的負荷によって脱離することができるものであって、たとえば、4−ニトロフェノール、2−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、2−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、N,N−ジエチルヒドロキシアミンまたはN−(2−ヒドロキシエチル)スクシンイミド、2−ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチル−tert.−ブチルケトンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、2,2,6,6−テトラメチルシクロへキノンオキシム、テトラメチルシクロブタンジオンモノオキシム、チオフェノールまたは2−メルカプトピリジン、マロン酸ジメルエステル、マロン酸ジエチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、シアン酢酸エチルエステル、アセチルアセトン、メチルフェニルアミン、ジフェニルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジル−tert.−ブチルアミン、tert.−ブチルメチルアミン、tert.−ブチルイソプロピルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、イミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、3,5−ジメチルピラゾール、5−メチル−2,3−ジヒドロキシピラゾール−3−オン、ε−カプロラクタムまたはN−メチルアセトアミドである。
【0023】
特に好ましくはブロッキング剤HX、この場合、これらは、一般式(1)のブロックトイソシアネート基含有珪素化合物から、熱的負荷によって脱離することができるものであって、2−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、2−ヒドロキシピリジン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、2−ブタノンオキシム、マロン酸ジメチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、ジイソプロピルアミン、ベンジル−tert.−ブチルアミン、tert.−ブチルメチルアミン、tert.−ブチルイソプロピルアミン、2−イソプロピルイミダゾール、3,5−ジメチルピラゾールおよびε−カプロラクタムである。
【0024】
さらに本発明の対象は、一般式(I)のオルガノ珪素化合物の、被覆剤中での使用である。
【0025】
前記式の全ての記号は、その意味をそれぞれ互いに無関係に有する。全ての式中でケイ素原子は四価である。
【0026】
本発明の範囲内で、その都度別記しない限りにおいて、全ての量および百分率の表記は質量に対するものであり、全ての温度は20℃であり、かつ全ての圧力は1.013バール(絶対圧)である。全ての粘性は25℃で測定される。
【0027】
実施例
例1
ヘキサヒドロ−2−[(メトキシジメチルシリル)メチル]−2−オキソ−1H−アゼピン−1−カルボキサミドの製造
25mlの水不含ジオキサン中の1.45gの(イソシアナトメチル)メトキシジメチルシランおよび1.13gのε−カプロラクタムの溶液を、撹拌下で4時間に亘って還流で加熱した。引き続いて、溶剤を減圧下で除去した。ヘキサヒドロ−N−[(メトキシジメチルシリル)メチル]−2−オキソ−1H−アゼピン−1−カルボキサミドが、定量的収率で、かつ>90%の純度で得られた(H−NMRによる分析)。
【0028】
【表1】

【0029】
例2a:N−[(メトキシジメチルシリル)メチル]−2−オキソ−ピロリジンカルボキサミドの製造
例1を、ε−カプロラクタムの代わりに、0.85gの2−ピロリジノンを使用する変更を加えておこなった。N−[(メトキシジメチルシリル)メチル]−2−オキソ−ピロリジンカルボキサミドが、定量的収率で、かつ純度>90%で得られた(H−NMRによる分析)。
【0030】
【表2】

【0031】
例2b:N−[(メトキシジメチルシリル)メチル]−2−オキソ−1−ピロリジンカルボキサミドの製造
150mlの水不含DMF中の69.3gの(クロロメチル)メトキシジメチルシラン、40.6gのシアン酸カリウムおよび42.6gの2−ピロリジノンの混合物を、5時間に亘って、130℃で撹拌しながら加熱した。引き続いて、この溶剤を減圧下で除去した。N−[(メトキシジメチルシリル)メチル]−2−オキソ−1−ピロリジンカルボキサミドが、定量的収率で、かつ純度>90%で得られた(H−NMRによる分析。例2a参照)。
【0032】
例3a:2−ブタノンオキシムと(イソシアネートメチル)ジメトキシ(メチル)シランとの反応に関する、触媒なしの比較例
撹拌された、かつ60℃に加熱された、135gの2−ブタノンオキシムの混合物に、60分に亘って、250gの(イソシアネートメチル)ジメトキシ(メチル)シランを添加した。完全な添加の後に、この混合物をさらに10時間に亘って、定められた温度で撹拌した。N−{[ジメトキシ(メチル)−シリル]メチル}カルバモイルメチルエチルケトンオキシムはもはや検出されなかった(29Si−およびH−NMRでの分析)。
【0033】
例3b:N−[(トリメトキシシリル)メチル]カルバモイルメチルエチルケトンオキシムの金属触媒下での製造
撹拌され、かつ80℃に加熱された、86.1gの2−ブタノンオキシムおよび120mgの"Borchi-Katalysator"(VP0244 Firma Borchers GmbH, Langenfeld)の混合物に、60分に亘って、150gの(イソシアナトメチル)トリメトキシシランを添加した。完全な添加の後に、この混合物をさらに60分に亘って、定められた温度で撹拌し、かつ蒸留によって過剰量の2−ブタノンオキシムを除去した。N−[(トリメトキシシリル)メチル]カルバモイルメチルエチルケトンオキシムが、定量的収率で、かつ>95%の純度で得られた(29Si−およびH−NMRでの分析)。
【0034】
【表3】

例3c:N−{[ジメトキシ(メチル)シリル]メチル}カルバモイルメチルエチルケトンオキシムの、塩基性触媒の存在下での製造
撹拌され、かつ60℃に加熱された、135gの2−ブタノンオキシムおよび12.0mgの水酸化カリウムの混合物に、60分に亘って、250gの(イソシアナトメチル)ジメトキシ(メチル)シランを添加した。完全な添加後に、混合物をさらに60分に亘って定められた温度で撹拌した。N−{[ジメトキシ(メチル)シリル]メチル}カルバモイルメチルエチルケトンオキシムが、定量的収率で得られ、かつ純度は>95%であった(29Si−およびH−NMRでの分析)。
【0035】
【表4】

例3d:N−{[ジメトキシ(メチル)シリル]メチル}カルバモイルジメチルケトンオキシムの塩基性触媒の存在下での製造
例3cを、2−ブタノンオキシムの代わりに、400mlのトルエン中の113gのアセトキシム溶液を使用する変更を加えておこなった。減圧下で、溶剤の蒸留による除去をおこなうことによって、N−{[ジメトキシ(メチル)シリル]メチル}カルバモイルジメチルケトンオキシムが、定量的収率で、かつ>95%の純度で得られた(29Si−およびH−NMRでの分析)。
【0036】
【表5】

例4a:N−[(メトキシジメチルシリル)メチル]−N’,N’−ジイソプロピル尿素の(イソシアナトメチル)メトキシジメチルシランからの製造
撹拌され、かつ80℃に加熱された、10.1gのN,N−ジイソプロピルアミンおよび20.0mgの"Borchi-Katalysator"の混合物に、60分に亘って、14.5gの(イソシナトメチル)メトキシジメチルシランを添加した。完全に添加した後に、混合物をさらに60分に亘って、提供された温度で撹拌した。N−[(メトキシジメチルシリル)メチル]−N’,N’−ジイソプロピル尿素が、分別蒸留後に(Sdp.93〜98℃/lmbar)、64%の収率および>95%の純度(29Si−およびH−NMRでの分析)で得られた。
【0037】
【表6】

【0038】
例4b:N−[(メトキシジメチルシリル)メチル]−N’,N’−ジイソプロピル尿素の(クロロメチル)メトキシジメチルシランからの製造
75mlの水不含DMF中の34.7gの(クロロメチル)メトキシジメチルシラン、20.3gのシアン酸カリウムおよび25.3gのN,N−ジイソプロピルアミンの混合物を、5時間に亘って130℃で加熱した。引き続いて、溶剤を減圧下で除去した。N−[(メトキシジメチルシリル)メチル]−N’,N’−ジイソプロピル尿素が、分別蒸留後に、11%の収率で、かつ>95%の純度で得られた(H−NMRによる分析、例4a参照)。
【0039】
例4c:N−{[ジメチル(メトキシ)シリル]メチル}−N’,N’−ジフェニル尿素の製造
例4aを、N,N−ジイソプロピルアミンの代わりに、50mlのトルエン中の16.9gのN,N−ジフェニルアミンの溶液を使用する変更を加えておこなった。減圧下で、溶剤を蒸留により除去し、かつメチル−tert.−ブチルエーテルからの残分を結晶化して、N−{[ジメチル(メトキシ)シリル]メチル}−N’,N’−ジフェニル尿素が、定量的収率で、かつ>95%の純度で得られた(29Si−およびH−NMRによる分析)。
【0040】
【表7】

【0041】
例5:N−[(メトキシジメチルシリル)メチルカルバモイル]モルホリンの製造
例4aを、N,N−ジイソプロピルアミンの代わりに、8.71gのモルホリンを使用する変更を加えておこなった。N−[(メトキシジメチルシリル)メチルカルバモイル]モルホリンが、分別蒸留後(Sdp.133-137℃/0.7mbar)に、66%濃度の収率で、かつ純度>95%で得られた(29Si−およびH−NMRでの分析)。
【0042】
【表8】

【0043】
例6:2−{[ジメトキシ(メチル)シリル]メチルカルバモイル}マロン酸ジメチルエステルの製造
撹拌され、かつ30℃に加熱した、6.74gのマロン酸ジメチルエステルおよび90.0mgのナトリウムメタノレート(メタノール中30%濃度溶液)の混合物に、8.06gの(イソシアナトメチル)ジメトキシ(メチル)シランを滴加し、かつ透明な溶液を90分に亘って撹拌した。2−{[ジメトキシ(メチル)シリル]メチルカルバモイル}マロン酸ジメチルエステルが、イソ−ヘキサンからの結晶化によって、56%の収率で、かつ、>95%の純度で得られた(H−NMRによる分析)。
【0044】
【表9】

【0045】
例7:3,5−ジメチル−1−{[ジメトキシ(メチル)シリル]メチルカルバモイル}ピラゾールの製造
撹拌され、かつ50℃に加熱された、80mlの酢酸エチルエステル中10.0gの3,5−ジメチルピラゾールの溶液に、16.8gの(イソシアナトメチル)ジメトキシ(メチル)シランを滴加し、かつ透明な溶液を、60分に亘って撹拌した。減圧下で溶剤の蒸留による除去後に、3,5−ジメチル−1−{[ジメトキシ(メチル)シリル]メチルカルバモイル}ピラゾールが、定量的収率で、かつ純度>95%で得られた(29Si−およびH−NMRによる分析)。
【0046】
【表10】

【0047】
例8:2−イソプロピル−1−{[ジメトキシ(メチル)シリル]メチルカルバモイル}イミダゾールの製造
撹拌され、かつ50℃に加熱された、50mlの酢酸エチルエステル中の3.00gの2−イソプロピルイミダゾールの溶液に、4.39gの(イソシアナトメチル)ジメトキシ(メチル)シランを滴加し、かつこの混合物を、60分に亘って撹拌した。2−イソプロピル−1−{[ジメトキシ(メチル)シリル]メチルカルバモイル}イミダゾールが、濾過後に、無色の固体として、定量的収率で、かつ>95%の純度で得られた(29Si−およびH−NMRでの分析)。
【0048】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、RはC〜C15−炭化水素基またはアセチル基であり、
は、水素原子または場合によっては−CN、−NCO、−NR、−COOH、−COOR、−ハロゲン、−アクリル、−エポキシ、−SH、−OHまたは−CONRで置換されたSi−C結合されたC〜C20−炭化水素基であり、その際、それぞれ1個または複数個の、互いに隣接しないメチレン単位は、基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−または−OCOO−、−S−または−NR−によって置換されていてもよく、かつ1個または複数個の、互いに隣接しないメチン単位は、基−N=、−N=N−、または−P=で置換されていてもよく、
nは値0、1、2であり、
Xは基−NR、−S−R、−O−R、−C(H)(COであり、かつ、−O−N=CRであり、
、RおよびRは、Rの意味を有するか、あるいは、少なくとも3個の環原子を有する、2〜30個の炭素原子を有する、環式の、場合によっては分枝の炭化水素基であり、この場合、これらは、場合によっては1個または複数個の基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−S−、=N−、−NR−、−CONR−によって官能化されていてもよく、かつ、
は、C〜C20−アルキル−、C〜C20−シクロアルキル−、C〜C20−ヘテロアリール−またはC〜C20−アリール基であり、この場合、これらは、−OH、NR−、CO、−OCORまたは−SHによって、あるいは、他の酸素、窒素、硫黄またはリンを含有する基ならびに炭化水素基によって官能化されていてもよいか、あるいは、フェニル基であり、この場合、これらは、−OH、NR−、CO、−OCORまたは−SHによって、あるいは、他の酸素、窒素、硫黄またはリンを含有する基ならびに炭化水素基によって官能化されている]を意味する、オルガノ珪素化合物。
【請求項2】
Rが、C〜C−炭化水素基またはアセチル基を意味する、請求項1に記載のオルガノ珪素化合物。
【請求項3】
が、C〜C−アルキル基を意味する、請求項1または2に記載のオルガノ珪素化合物。
【請求項4】
一般式(II)
【化2】

のイソシアネート基を有するオルガノ珪素化合物と、化合物HXとを一緒に反応させ、その際、R、R、Xおよびnは、請求項1に記載の意味を有する、請求項1に記載の一般式(I)のオルガノ珪素化合物の製造方法。
【請求項5】
一般式(III)
【化3】

のクロロアルキル基を有するオルガノ珪素化合物と、化合物HXおよび一般式(IV)
【化4】

の塩を反応させ、その際、
Mは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、かつ、
mは、値1または2を意味し、かつ、
R、R、xおよびnは、請求項1に記載の意味を有する、請求項1に記載の一般式(I)のオルガノ珪素化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の一般式(I)のオルガノ珪素化合物から、30〜250℃の温度範囲で加熱することによって、ブロッキング剤を脱離するための方法において、Xが請求項1に記載の意味を有する、ブロッキング剤を脱離するための方法。
【請求項7】
ブロッキング剤HXが、4−ニトロフェノール、2−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、2−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,2,2−トリクロロエタノール、2−ヒドロキシメチルピリジン、1−ヒドロキシメチル−1,2,4−トリアゾール、N,N−ジエチルヒドロキシアミンまたはN−(2−ヒドロキシエチル)スクシンイミド、2−ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチル−tert.−ブチルケトンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、2,2,6,6−テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、テトラメチルシクロブタンジオンモノオキシム、チオフェノールまたは2−メルカプトピリジン、マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、シアン酢酸エチルエステル、アセチルアセトン、メチルフェニルアミン、ジフェニルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルtert.−ブチルアミン、tert.−ブチルメチルアミン、tert.−ブチル−イソプロピルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、イミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、3,5−ジメチルピラゾール、5−メチル−2,3−ジヒドロピラゾール−3−オン、ε−カプロラクタムおよびN−メチルアセトアミドから選択される、請求項4から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
被覆剤中での、請求項1に記載の式(I)のオルガノ珪素化合物の使用。

【公表番号】特表2008−508199(P2008−508199A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522940(P2007−522940)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007079
【国際公開番号】WO2006/012957
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】