説明

マスクアライメント装置

【課題】マスクの材質を問わずに正確なアライメントが可能となるマスクアライメント装置を提供する。
【解決手段】薄膜パターンをパターニングすべき基板とパターン形成用のマスクとを位置合わせするマスクアライメント装置であって、位置決めステージ10と、位置決めステージ10の上部に取り付けられたマスク吸着体20と、マスク吸着体20の上方に配設された上下動可能な基板保持手段30と、マスク上のアライメントマークと基板上のアライメントマークとを撮像して両者の位置合わせ状況を観察できるカメラ40とを具備し、マスク吸着体20は、多孔質体からなるテーブル21とそのテーブル21を下面から真空吸引する機構とからなる。テーブル上に載置されたマスクを真空吸着してその反りを矯正した状態で基板との位置合わせができ、非磁性体のメタルマスク、ガラスやフィルムといったマスクの材質を問わずに正確なアライメントが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板などの基板上に薄膜パターンをパターニングする薄膜形成の技術分野に属し、詳しくは、真空蒸着の成膜工程やフォトリソグラフィー法の露光工程で用いられるマスクアライメント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディスプレイ基板等に用いられるガラス、セラミックス等の基板上に電極等の薄膜パターンをパターニングするに際しては、真空蒸着法やフォトリソグラフィー法の手段が採られている。そして、真空蒸着法の成膜工程やフォトリソグラフィー法の露光工程では、メタルマスクを用いる場合がある。このメタルマスクは、張力を与えた状態で枠に溶接などでセットすることにより、反りを除去して使用する場合が多いが、パターニング精度の粗いものや、比較的サイズの小さいものでは、コスト面の優位性から、枠にセットせずそのまま用いる場合もある。
【0003】
また、メタルマスクを用いたパターニングでは、基板に対してメタルマスクを正確にアライメントする必要がある。アライメントは、メタルマスクと基板にそれぞれ記されたアライメントマークのずれをカメラによって撮影し、手動または自動で合わせることで行うが、その際、枠にセットしていないメタルマスクを用いると、メタルマスクの反りによりメタルマスクに記された複数のアライメントワーク同士の間隔が本来より狭くカメラに認識されて、その結果、基板に設けられた複数のアライメントマーク同士の間隔と一致しなくなって、正確なアライメントができなくなる場合がある。そこで、メタルマスクの反りを解決する技術として、磁気を利用したマスク着脱装置がある。
【0004】
【特許文献1】特開平11−158605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の磁気を利用したマスク着脱装置は、メタルマスク設置部に内蔵した電磁石で磁力を発生させることでメタルマスクを全面で吸着し、反りを矯正するようになっている。しかしながら、この装置を用いる場合、磁性体のマスクをマスク吸着体の表面に磁気吸着するため、非磁性体のメタルマスクやその他の材質からなるマスクは吸着できないという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、マスクの材質を問わずに正確なアライメントが可能となるマスクアライメント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明であるマスクアライメント装置は、薄膜パターンをパターニングすべき基板とパターン形成用のマスクとを位置合わせするマスクアライメント装置であって、位置決めステージと、位置決めステージの上部に取り付けられたマスク吸着体と、マスク吸着体の上方に配設された上下動可能な基板保持手段と、マスク上のアライメントマークと基板上のアライメントマークとを撮像して両者の位置合わせ状況を観察できるカメラとを具備し、マスク吸着体は、多孔質体からなるテーブルとそのテーブルを介して真空吸引する機構とからなることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明であるマスクアライメント装置は、請求項1に記載のマスクアライメント装置において、位置決めスキージは、基板に対して上下方向に移動可能で、かつ水平面内での2次元方向に移動可能で、さらに基板表面に垂直な軸線回りに回転できるように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマスクアライメント装置は、マスク吸着体のテーブルに多孔質体を用いたことにより、テーブル上に載置されたマスクを真空吸着してその反りを矯正した状態で基板との位置合わせができることから、非磁性体のメタルマスク、ガラスやフィルムといったマスクの材質を問わずに正確なアライメントが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明に係るマスクアライメント装置の一例を示す概略構成図である。このマスクアライメント装置は、真空成膜装置におけるマスク着脱ゾーンに設けられるものであり、薄膜パターンをパターンすべき基板とパターン形成用のマスクとがこのマスクアライメント装置で位置合わせされ、アライメントされた基板とマスクは隣接する成膜ゾーンに移動し、そこで薄膜がパターニングされる。
【0012】
マスクアライメント装置は、図1に示すように、位置決めステージ10と、位置決めステージ10の上部に取り付けられたマスク吸着体20と、マスク吸着体20の上方に配設された上下動可能な吸着パッド等からなる基板保持手段30と、マスク上のアライメントマークと基板上のアライメントマークとを撮像して両者の位置合わせ状況を観察できる一対のカメラ40とを具備している。
【0013】
マスク吸着体20は、多孔質体からなるテーブル21がトレー22の上に隙間αを置いて一体的に取り付けられ、その隙間αの横に形成された取付孔22aに吸引ポンプ(図示せず)が接続されている。これにより、吸引ポンプを駆動させると、多孔質体からなるテーブル21を下面から真空吸引するようになっている。
【0014】
マスク吸着体20のテーブル21に使用される多孔質体としては、大小数ミクロンの孔が空いた構造からなり、吸着面全体にワークが接触していなくても吸着力の低下が少ないものが使用される。
【0015】
このような多孔質体の素材としては金属材料や非金属材料からなる種々のタイプが使用可能である。このうち非金属多孔質材料からなる多孔質体として、セラミック、ガラス、樹脂、カーボン等の多孔質体が挙げられ、また金属多孔質材料からなる多孔質体として、ステンレス、チタン、銅、ニッケル、アルミニウム等の多孔質体が挙げられる。
【0016】
マスク吸着体20は、XY軸ステージ11とθ軸ステージ12とZ軸ステージ13を組み合わせて構成された位置決めステージ10に搭載されている。マスク吸着体20は、Z軸ステージ13の支持台13aに取り付けられており、上下方向すなわちZ軸方向(基板表面に垂直な方向)に移動可能で、かつ水平面内での2次元方向すなわちXY軸方向(基板表面に平行な平面内での2次元方向)に移動可能であり、さらに基板表面に垂直な軸線回りに回転できるようになっている。
【0017】
次に、図2〜図10を参照して、このマスクアライメント装置の動作を説明する。
【0018】
まず、図2に示すように、マスク吸着体20を搭載した支持台13aをそのZ軸ステージ13により下限まで下降させた状態で、基板Bをマスク吸着体20の上に設置する。次いで、図3に示すように、Z軸ステージ13によりマスク吸着体20を上昇させ、基板保持手段30の吸着パッド31に基材Bを押し付けて保持させた後、図4に示すように、Z軸ステージ13を下限まで下げる。
【0019】
続いて、図5に示すように、マスク吸着体20にマスクMを載置し、マスク吸着体20の真空吸引をONにすることにより、多孔質体によるマスクMの吸着を行ってマスク吸着体20にマスクMをセットする。これにより、マスクMは多孔質体からなるテーブル21上に密着し、反りがある場合にはその反りが矯正された状態となる。
【0020】
このようにマスク吸着体20にマスクMをセットした後、図6に示すように、基板BのアライメントマークBaにカメラを合わせてから、位置決めステージ10を操作し、マスクMのアライメントマークMaを基板BのアライメントマークBaに合わせることにより、基板BとマスクMのアライメントを行う。
【0021】
基板BとマスクMをアライメントした後、図7に示すように、位置決めステージ10のZ軸ステージ13を動作させてマスク吸着体20を上昇させることでマスクMを基板Bに押し当て、重なったマスクMと基板Bの両者を治具50を用いて固定する。次いで、図8に示すように、吸着パッド31を外して基板Bの保持を解除し、カメラ40の焦点が両者のアライメントマークBa,Maに合う位置まで位置決めステージ10を下降させ、アライメントマークBa,Maがずれていないことを確認してから、図9に示すように、位置決めステージ10を下限まで下降させ、しかる後、マスク吸着体20の真空吸引をOFFにすることで、多孔質体によるマスクMの吸引を解除する。そして、図10に示すように、基板BとマスクMを一対としてマスク吸着体20から取り外し、マスク着脱ゾーンから隣接する成膜ゾーンに移送する。
【0022】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明のマスクアライメント装置は、上記したような実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るマスクアライメント装置の概略構成図である。
【図2】図1に示すマスクアライメント装置の動作説明図である。
【図3】図2に続く動作説明図である。
【図4】図3に続く動作説明ステージである。
【図5】図4に続く動作説明図である。
【図6】図5に続く動作説明ステージである。
【図7】図6に続く動作説明図である。
【図8】図7に続く動作説明ステージである。
【図9】図8に続く動作説明図である。
【図10】図9に続く動作説明ステージである。
【符号の説明】
【0024】
B 基板
Ba アライメントマーク
M マスク
Ma アライメントマーク
α 隙間
10 位置決めステージ
11 XY軸ステージ
12 θ軸ステージ
13 Z軸ステージ
13a 支持台
20 マスク吸着体
21 テーブル
22 トレー
22a 取付孔
30 基板保持手段
31 吸着パッド
40 カメラ
50 治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜パターンをパターニングすべき基板とパターン形成用のマスクとを位置合わせするマスクアライメント装置であって、位置決めステージと、位置決めステージの上部に取り付けられたマスク吸着体と、マスク吸着体の上方に配設された上下動可能な基板保持手段と、マスク上のアライメントマークと基板上のアライメントマークとを撮像して両者の位置合わせ状況を観察できるカメラとを具備し、マスク吸着体は、多孔質体からなるテーブルとそのテーブルを介して真空吸引する機構とからなることを特徴とするマスクアライメント装置。
【請求項2】
位置決めステージは、基板に対して上下方向に移動可能で、かつ水平面内での2次元方向に移動可能で、さらに基板表面に垂直な軸線回りに回転できるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスクアライメント装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate