説明

マスクレイアウト分割方法、マスクレイアウト分割装置、及びマスクレイアウト分割プログラム

【課題】歩留まりの低下を防止することができる、マスクレイアウト分割方法及びマスクレイアウト分割装置を提供する。
【解決手段】複数の種類の各々のセルのセルレイアウトデータを取得するステップと、前記セルレイアウトを複数のマスクレイアウトに分割する際に発生するパターン分断部分の複数の候補を、複数の分断候補として設定し、前記複数の種類の各々のセルに対応する分断候補付きセルレイアウトデータを生成するステップと、前記分断候補付きセルレイアウトデータに基づいて、複数のセルを含むフルチップのレイアウトを示すフルチップレイアウトデータを生成し、そのデータに示される前記複数の分断候補の中から採用する分断候補群を選択するステップと、前記選択した分断候補群でパターンが分断されるように前記フルチップレイアウトデータが示すレイアウトを分割するステップと、分割結果を示す分割レイアウトデータを生成するステップとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクレイアウト分割方法、マスクレイアウト分割装置、及びマスクレイアウト分割プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程では、リソグラフィ工程により、被加工膜(例えばシリコン膜)が加工される。リソグラフィ工程において、多重パターニング法が採用される場合がある。多重パターニング法では、1つのレイアウトが複数のマスクレイアウトに分割され、複数のマスクを用いて多重に露光が行なわれる。多重パターニング法を用いることにより、加工寸法を微細化することが可能である。
【0003】
多重パターニング法を用いる場合には、どのようにレイアウトを分割するかが重要である。関連技術として、特許文献1(特開2009−139938号公報)には、フルチップ設計のパターン分解を行なう為の方法が開示されている。特許文献1には、フルチップ設計を複数の個々のパッチに割る点、各パッチを個々に分解して着色、分割する点、及び、パッチの処理を並列で実行する点が開示されている。
【0004】
他の関連技術として、特許文献2(特開2009−294308号公報)には、パターン検証方法が開示されている。このパターン検証方法では、第1のパターンに対する第2のパターンの重ね合わせ誤差を、第1のパターン及び第2のパターンの少なくとも一方に反映する点、重ね合わせ誤差を反映した後の第1のパターンと第2のパターンの相対距離を算出する点、及び相対距離が基準を満たすか否かを判断する点が開示されている。
【0005】
また、更に他の関連技術として、特許文献3(米国特許公開公報 US2010/0115489A1)には、ダブルパターニングプロセスのリソグラフィ工程の検証方法が開示されている。
【0006】
また、更に他の関連技術として、特許文献4(特開2010−175733号公報)には、パターンレイアウト作成方法が開示されている。このパターンレイアウト作成方法は、パターンレイアウト図に基づいて生成されるそれぞれのパターンをノードとし、第1の距離で互いに隣接するパターンのノード同士を互いにエッジで接続したグラフを生成するグラフ生成工程と、それぞれのパターンを2種類に分類する分類工程と、パターンをエッジで接続されたノード群毎にグループ分けし、第2の距離で隣接する、それぞれ異なるグループに属する同一の種類に分類されたパターンの対のうちの一方のパターンと同一のグループに属するパターンの種類を反転することによって分類結果を修正する分類修正工程とを含む。分類修正工程により修正された分類結果に基づいて、パターンレイアウト図が分割される。
【0007】
また、更に他の関連技術として、特許文献5(米国特許公開公報 US2010/0199253A1)には、ダブルパターニング用マスクの設計方法が開示されている。
【0008】
一方、半導体装置のマスクレイアウトを設計する際には、セルライブラリが用いられる。セルライブラリには、単位機能を実現するためのセル毎に、セルレイアウトを示すデータが記憶されている。マスクレイアウトの設計時には、自動配置配線ツールなどにより、セルライブラリが参照され、所望する機能が得られるように、フルチップにおける複数のセルの配置が決定される。これにより、フルチップにおけるマスクレイアウト(フルチップレイアウト)が決められる。関連して、特許文献6(特開2011−1244223号公報)には、セルライブラリが開示されている。このセルライブラリは、半導体集積回路のレイアウト設計に用いられる、単位機能を実現するセル毎の設計データのライブラリであるセルライブラリである。このセルライブラリにおいて、設計データは、セルが備える端部と、端部を介して隣接する欠陥を生じせしめ易いか否、及び隣接するセルから欠陥を生じせしめられ易いか否か、を示す属性値とを対応付けした属性情報をそれぞれ含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−139938号公報
【特許文献2】特開2009−294308号公報
【特許文献3】米国特許公開公報 US2010/0115489A1
【特許文献4】特開2010−175733号公報
【特許文献5】米国特許公開公報 US2010/0199253A1
【特許文献6】特開2011−1244223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、一のレイアウトを複数のマスクレイアウトに分割する際には、レイアウトに含まれるパターンが分断される場合がある。以下に、この点について説明する。図1は、分割されるレイアウトの一例を示す図である。図1に示されるレイアウトには、複数のパターンが含まれている。複数のパターンは、距離S1又は距離S2の間隔で、配置されている。距離S1は、製造限界よりも小さく、距離S2は、製造限界よりも大きいものとする。以下の説明では、処理対象レイアウトとして、中央部分に配置された7つのパターンのレイアウトに着目する。この7つのパターンは、パターン幅がW1である4本のパターンと、パターン幅がW2である3本のパターンとを含んでいる。これらの7つのパターンは、距離S1の間隔で配置されている。また、W1はW2よりも大きいものとする。
【0011】
図2は、パターンの分断処理の一例を示す概念図である。図2(a)には、処理対象レイアウトが示されている。処理対象レイアウトにおいては、上述のように、複数のパターンが、製造限界よりも小さい距離S1の間隔で配置されている。そのため、この処理対象レイアウトに含まれる7つのパターンを一つのマスクに割り当てた場合には、リソグラフィ工程において、図2(b)に示されるように、隣接するパターン同士が解像されない。そこで、図2(c)に示されるように、隣接するパターン同士が互いに異なるマスク(マスクA及びマスクB)に割り当てられるように、処理対象レイアウトが分割される。図2(d)には、一方のマスクAに割り当てられたマスクレイアウトが示されており、図2(e)には、他方のマスクBに割り当てられたマスクレイアウトが示されている。ここで、図2(d)に示されるように、マスクAに割り当てられたレイアウトにおいては、隣接するパターン同士が十分に離れており、リソグラフィ工程において問題は発生しない。一方、図2(e)に示されるように、マスクBに割り当てられたレイアウトにおいては、依然として、隣接するパターンの間隔が製造限界よりも小さい部分が存在している。そこで、図2(f)に示されるように、パターン幅がW2である3つのパターンのそれぞれに、分断部分Cが設定され、各パターンが分断部分Cにおいて分断される。その結果、同一のマスクに割り当てられたレイアウトにおいて、製造限界よりも小さい間隔でパターンが隣接する部分をなくすことができる。
【0012】
図3は、コンピュータによりパターン分断処理を実行する場合の動作方法を示すフローチャートである。まず、コンピュータは、配置配線によって複数のセルを配置し、フルチップレイアウトを示すフルチップレイアウトデータを生成する(ステップS100)。次いで、フルチップレイアウトにおいて、隣接するパターン同士がグループ化される(ステップS101)。次いで、各グループにおいて、各パターンが複数のマスクのいずれかに割り当てられる(ステップS102)。全てのグループについてステップS102の処理が施された後、同一のマスクに割り当てられたパターン同士の間隔がエラーとなる距離(製造限界よりも小さい距離)である部分が存在するか否かが判断される。そのような部分が存在する場合には、その部分がエラー部分として検出される(ステップS103)。次いで、エラー部分の検出結果に基づいて、同一のマスクに割り当てられたパターン同士が隣接しないように、パターンが分断され(ステップS104)、分割レイアウトデータが出力される(ステップS105)。尚、ステップS103及S104において、エラー部分同士が近接して存在していた場合には、パターン分割をあきらめ、配置配線(ステップS100)がやり直される。
【0013】
以上説明したように、パターンを分断することにより、リソグラフィ工程において解像されない部分が生じることを防止することができる。しかしながら、図3に示した方法では、エラー部分同士が近接して存在していた場合に、配置配線をやり直す必要がある。そのため、設計工数が増加してしまうという問題点があった。
【0014】
また、パターンが分断された部分では、複数のマスクの重ね合わせ誤差により、加工劣化が生じる。幅が小さいパターンが分断された場合には、加工劣化が大きくなり、歩留まりが低下してしまう場合がある。更に、回路動作上重要なパターン(クリティカルパスなど)には、高い加工精度が求められる。そのような重要なパターンが分断された場合も、歩留まりが低下してしまう、という問題点があった。
【0015】
尚、既述の特許文献1乃至5には、ダブルパターニングに関する技術が開示されているが、パターンが分断される部分がどのように決定されるかについての記載はない。また、特許文献6には、セルに属性情報を付与する点が開示されているが、ダブルパターニングに関する記載はなく、パターンが分断される部分がどのように決定されるかについての記載もない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るマスクレイアウト分割方法は、複数の種類の各々のセルのセルレイアウトを示すセルレイアウトデータを取得するステップと、前記セルレイアウトを複数のマスクレイアウトに分割する際に発生するパターン分断部分の複数の候補を、複数の分断候補として設定し、前記複数の種類の各々のセルに対応する分断候補付きセルレイアウトデータを生成するステップと、前記分断候補付きセルレイアウトデータに基づいて、複数のセルを含むフルチップのレイアウトとフルチップにおける前記複数の分断候補の位置とを示すフルチップレイアウトデータを生成し、前記フルチップレイアウトデータに示される前記複数の分断候補の中から採用する分断候補群を選択するステップと、前記選択した分断候補群でパターンが分断されるように、前記フルチップレイアウトデータが示すレイアウトを分割するステップと、分割結果を示す分割レイアウトデータを生成するステップとを具備する。
【0017】
本発明に係るマスクレイアウト分割装置は、複数の種類の各々のセルのセルレイアウトを示すセルレイアウトデータを取得し、前記セルレイアウトを複数のマスクレイアウトに分割する際に発生するパターン分断部分の複数の候補を、複数の分断候補として設定し、前記複数の種類の各々のセルに対応する分断候補付きセルレイアウトデータを生成する、分断候補生成部と、前記分断候補付きセルレイアウトデータに基づいて、複数のセルを含むフルチップのレイアウト及びフルチップにおける前記複数の分断候補の位置を示すフルチップレイアウトデータを生成し、前記フルチップレイアウトデータに示される前記複数の分断候補の中から採用する分断候補群を選択し、前記選択した分断候補群でパターンが分断されるように、前記フルチップレイアウトデータが示すレイアウトを分割し、分割結果を示す分割レイアウトデータを生成する、パターン分割部とを具備する。
【0018】
本発明に係るセルライブラリのデータ構造は、複数のセルの各々のセルレイアウトを示すセルレイアウトデータと、前記セルレイアウトを複数のマスクレイアウトに分割する際に発生するパターン分断部分の複数の候補を、複数の分断候補として示す、分断候補データとを具備する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、適切な部分でパターンを分断することができる、マスクレイアウト分割方法、マスクレイアウト分割装置、及びセルライブラリのデータ構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】分割されるレイアウトの一例を示す図である。
【図2】パターンの分断処理の一例を示す概念図である。
【図3】パターン分断処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の概要を示す図である。
【図5】実施形態に係るマスクレイアウト分割装置を示すブロック図である。
【図6】各種類のセルに対する処理を示すフローチャートである。
【図7】セルレイアウトの一例を示す図である。
【図8A】分割候補パターンを示す図である。
【図8B】分割候補パターンを示す図である。
【図9】ランク値が設定された分断候補付きセルレイアウトデータの一例を示す図である。
【図10】セルライブラリのデータ構造の一例を示す概念図である。
【図11】GDSIIフォーマットによるセルの記述例を示す図である。
【図12】フルチップにおける処理を示すフローチャートである。
【図13】フルチップレイアウトの一部を示す図である。
【図14A】複数の分割候補パターンを示す図である。
【図14B】複数の分割候補パターンを示す図である。
【図15A】フルチップパターンの分割方法の一例を示す図である。
【図15B】フルチップパターンの分割方法の一例を示す図である。
【図15C】フルチップパターンの分割方法の一例を示す図である。
【図16A】第2の実施形態における複数の分割候補パターンを示す図である。
【図16B】第2の実施形態における複数の分割候補パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
図4は、本発明の概要を示す図である。図4に示されるように、本実施形態では、複数の種類のセルの各々のセルレイアウトに対し、複数のパターン分断部分の候補(以下、分断候補)と、各分断候補のランク値とが設定される(セルの分断ランク生成)。これにより、各種類のセルを示す分断候補付きセルレイアウトデータが得られる。尚、ランク値とは、各分断候補でパターンが分断された場合の危険度を示すパラメータであり、プロセスシミュレーションにより求められる。その後、複数の種類のセルに関する分断候補付きセルレイアウトデータがセルライブラリとして用いられ、配置配線により、所望する機能が得られるように複数のセルが配置され、フルチップレイアウトを示すフルチップレイアウトデータが得られる。このとき、フルチップレイアウトデータには、複数の分断候補及びそれらのランク値を示す情報が取り込まれる。次いで、フルチップレイアウトデータ及び設計インテント情報に基づいて、フルチップレイアウトデータにおける各分断候補のランク値が変更される。尚、設計インテント情報とは、フルチップレイアウトデータの生成時に発生する情報であり、回路の動作上重要な部分の位置を示す情報である。そして、変更後のランク値に基づいて、危険度が小さくなるように、複数の分断候補の中から採用する分断候補群が選択され、フルチップレイアウトが複数のマスクレイアウトに分割される。
【0023】
上述のような処理によれば、セルライブラリの設計段階において、各セルに複数の分断候補が設定される。複数の分断候補が設定されているので、フルチップレイアウトを分割する際の自由度を高めることができ、配置配線のやり直しを防ぐことができる。また、各分断候補にランク値が設定されているので、危険度が小さくなるように、フルチップレイアウトを分割することが可能である。更に、設計インテント情報に基づいてランク値が変更されるので、回路の動作上重要なパターンが分断され難くすることができる。
【0024】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態に係るマスクレイアウト分割装置1を説明する。図5は、本実施形態に係るマスクレイアウト分割装置1を示すブロック図である。マスクレイアウト分割装置1は、入力部2、隣接パターン生成部3、分断候補生成部4、プロセスシミュレーション部5、ランク生成部6、パターン分割部8、設計インテント入力部9、及び出力部10を備えている。これらは、例えば、CPUがROM(Read Only Memory)に格納されたマスクレイアウト分割プログラムを実行することにより、実現される。
【0025】
本実施形態に係るマスクレイアウト分割装置1は、複数の種類のセルの各々に対する処理(セルライブラリを構築する処理)と、フルチップ処理とを行なう。まず、各種類のセルに対する処理を説明する。図6は、各種類のセルに対する処理を示すフローチャートである。
【0026】
ステップS1:セルレイアウト入力
まず、入力部2が、複数の種類のセルの各々のセルレイアウトを示すセルレイアウトデータを取得する。図7(a)は、セルレイアウトの一例を示す図である。図7(a)に示されるセルレイアウトには、図1に示した例と同様に、7つのパターンが含まれている。この7個のパターンには、パターン幅がW1である4つのパターン(以下、パターンW1と称す)と、パターン幅がW2である3つのパターン(以下、パターンW2と称す)が含まれている。幅W1は、幅W2よりも大きい。これらのパターンは、製造限界よりも小さい距離S1の間隔で、配置されている。以下の説明では、図7(a)に示されるセルレイアウトに対する処理を例に挙げて説明を行う。
【0027】
ステップS2:分断候補の作成
続いて、セルレイアウトに、複数の分断候補が設定される。具体的には、隣接パターン生成部3が、セルレイアウトデータに基づいて、セルレイアウトにおけるパターン間の距離を求め、求めた距離が製造限界よりも小さい部分を認識する。そして、認識結果に基づいて、分断候補生成部4が、パターンが分断される可能性がある複数の部分を、複数の分断候補として設定し、分断候補付きセルレイアウトデータを生成する。図7(b)には、分断候補付きセルレイアウトデータの一例が示されている。図7(b)に示される例では、7つのパターンが、製造限界よりも小さい距離S1の間隔で配置されている。そのため、7つのパターンのそれぞれに、分断候補11が設定されている。
【0028】
ステップS3:分割候補パターンの作成
続いて、分断候補生成部4は、設定された複数の分断候補11に基づいて、複数の分割候補パターンを決定する。図8A及び図8Bは、複数の分割候補パターンを示す図である。図8Aに示される分割候補パターンでは、3個のパターンW2に設定された3つの分断候補11が採用されている。一方、図8Bに示される分割候補パターンでは、4個のパターンW1に設定された4つの分断候補11が採用されている。
【0029】
ステップS4:プロセスシミュレーション
続いて、プロセスシミュレーション部5が、複数の分割候補パターンのそれぞれについて、リソグラフィ工程のシミュレーションを行い、出来上がり形状を算出する。
【0030】
ステップS5:分断箇所にランクを付与
次いで、ランク生成部6が、プロセスシミュレーション部5におけるシミュレーション結果、目標とするパターン形状、及びマスクの重ね合わせ誤差等に基づいて、各分断候補11が採用された場合の加工精度を求める。ランク生成部6は、求めた加工精度に基づいて、各分断候補に危険度の大きさを示すランク値を設定する。すなわち、加工精度が低い場合ほど、ランク値として大きな値が設定される。図9は、ランク値が設定された分断候補付きセルレイアウトデータの一例を示す図である。幅が小さいパターンが分断された場合には、幅が大きいパターンが分断された場合よりも、加工精度が低くなる。そのため、図9に示される例においては、幅が大きいパターンW1に設定された各分断候補11のランク値(=1)よりも、幅が小さいパターンW2に設定された各分断候補11のランク値(=2)の方が、大きくなっている。
【0031】
ステップS6:全てのセルが終わったか?
ついで、ランク生成部6は、複数のセルの全てについてステップS2乃至S5の処理が行われたか否かを判別する。未処理のセルが存在する場合には、未処理のセルが処理対象のセルとして選択され、ステップS2以降の処理が繰り返される。
【0032】
ステップS7:分断候補付きセルレイアウト出力
複数のセルの全てに対してステップS2乃至6の処理が終了した場合、ランク生成部6は、ランク値が設定された分断候補付きセルレイアウトデータ(図9参照)を出力する。これにより、複数のセルの各々について分断候補付きセルレイアウトデータを示す、セルライブラリ7が構築される。
【0033】
図10は、セルライブラリ7のデータ構造の一例を示す概念図である。図10に示される例では、セルAの内部に、セルB及びセルCが含まれている。セルB及びセルCのそれぞれには、セルレイアウトを示す図形情報と、分断候補を示す分断情報とが含まれている。図形情報には、層番号、及びポリゴン座標情報が含まれている。また、分断情報にも、層番号及びポリゴン座標情報が含まれている。分断候補のランク値は、分断情報の層番号に反映されている。すなわち、セルBには、ランク値が「1」の分断候補が含まれており、セルCには、ランク値が「2」の分断候補が含まれている。図11は、GDSIIフォーマットによるセルBの記述例である。図11に示される例では、「STRUCTURE」により、セルBとして定義されていう。また、「LAYER」により、分断候補の層番号が規定されている。更に「DATATYPE」により、ランク値が規定されている。更に、「COORDINATES」により、分断候補の位置(分断マーク図形)が規定されている。
【0034】
続いて、フルチップ処理について説明する。図12は、フルチップにおける処理を示すフローチャートである。
【0035】
ステップS8:フルチップレイアウト生成
パターン分割部8は、セルライブラリ7を参照し、配置配線により、所望する機能が得られるように複数のセルを配置し、フルチップレイアウトを示すフルチップレイアウトデータを生成する。この際、フルチップレイアウトデータには、分断候補及びランク値が取り込まれる。また、フルチップレイアウトデータの生成時には、設計インテント情報が生成される。設計インテント情報は、既述のように、回路の動作上重要な部分を示す情報である。本実施形態では、設計インテント情報として、クリティカルパスを示す情報が生成されるものとする。
【0036】
ステップS9:設計インテント情報の入力
続いて、設計インテント入力部9が、設計インテント情報を取得する。
【0037】
ステップS10:設計インテント情報に基づくランク加算
次いで、パターン分割部8が、フルチップレイアウトデータと設計インテント情報とに基づいて、フルチップレイアウトデータにおける各分断候補のランク値を変更する。図13は、フルチップレイアウトデータが示すフルチップレイアウトの一部を示す概念図であり、図9に示したセルが配置された部分を示す図である。図13には、クリティカルパス13の位置も示されている。図13に示されるように、フルチップレイアウトにおいては、4つのパターンW1のうちの一つが、クリティカルパス13と重なっている。そこで、パターン分割部8は、クリティカルパスと重なっている分断候補11のランク値を増加させる。図13に示される例では、クリティカルパス13と重なっている分断候補11のランク値が、「1」から「5」に変更されている。
【0038】
ステップS11:分断マークから候補パターンの生成
続いて、パターン分割部8は、フルチップレイアウトデータに示される複数の分断候補11に基づいて、配置されたセル毎に、複数の分割候補パターンを生成する。図14A及び図14Bは、複数の分割候補パターンを示す図である。図14Aに示される分割候補パターンでは、4つのパターンW1の分断候補11が採用されている。一方、図14Bに示される分割候補パターンでは、3つのパターンW2の分断候補11が採用されている。
【0039】
ステップS12:総ランクが低い候補パターンを選択
次いで、パターン分割部8は、複数の分割候補パターンのなかから、ランク値の合計が最も小さい分割候補パターンを選択する。図14Aに示される分割候補パターンでは、ランク値の合計は、8(=1+1+1+5)である。一方、図14Bに示される分割候補パターンでは、ランク値の合計は、6(=2+2+2)である。従って、パターン分割部8は、図14Bに示される分割候補パターンを選択する。これにより、フルチップレイアウトデータに示される複数の分断候補の中から採用する分断候補群が選択される。
【0040】
ステップS13:分割パターンを生成
次いで、パターン分割部8は、選択した分割候補パターンで分割されるように、フルチップレイアウトを複数のマスクレイアウトに分割する。
【0041】
ステップS14:隣接パターンに同種の色がないか?
次いで、パターン分割部8は、隣接するパターン同士が同じ色(マスク)に割り当てられている箇所があるか否かを判別する。隣接するパターン同士が同じマスクに割り当てられている箇所がある場合、ステップS12以降の動作が繰り返される。
【0042】
ステップS15:全てのセルが終わったか?
隣接するパターン同士が同じマスクに割り当てられている箇所がない場合、パターン分割部8は、配置された全てのセルについて処理が終わったか否かを確認する。終わってないセルが存在する場合、ステップS11以降の動作が繰り返される。
【0043】
ステップS16:分割レイアウト出力
全てのセルが終わった場合、出力部10が、フルチップレイアウトの分割結果を分割レイアウトデータとして出力する。
【0044】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
【0045】
本実施形態によれば、セルライブラリ7において、各セルに複数の分断候補が設定されており、フルチップレイアウトデータに、複数の分断候補が取り込まれる。このため、フルチップレイアウトを分割する際の自由度を高めることができ、配置配線のやり直しを防止することができ、設計工数を抑えることが可能である。
【0046】
また、本実施形態によれば、各分断候補に危険度を示すランク値が設定されている。従って、ランク値に基づいて、危険度が小さくなるようにフルチップレイアウトを分割することができ、歩留まりを高めることが可能である。例えば、図14A及び図14Bに示した例の場合、既述のように、図14Bに示される分割候補パターンが採用される。これにより、クリティカルパス13を形成するパターンが分断されることが防止できる。回路の動作上重要な部分において、マスクずれによる製造劣化による影響を低減することができ、歩留まり向上及び性能劣化防止が実現される。また、仮に、図13において、どのパターンもクリティカルパス13と重ならない場合には、図14Aに示される分割候補パターンにおけるランク値の合計は4(=1+1+1+1)になり、図14Aに示される分割候補パターンが選択される。これにより、幅が小さいパターンが分断されることが防止できる。すなわち、幅が小さいパターンほど分断され難くすることが可能である。
【0047】
図15A乃至図15Cは、フルチップパターンの分割方法の一例を示す図である。図15Aは、セルライブラリ7に登録された各セルのレイアウトの一例を示している。このセルには、中央に配置された中央パターン、及び両側部に配置された一対の側部パターンが含まれている。このセルにおいて、中央パターン、及び一対の側部パターンのそれぞれに、分断候補11が設定されている。図15B及び図15Cは、フルチップレイアウトの分割結果の一例を示す図であり、図15Aに示されるセルに対応する部分の図である。図15B及び図15Cには、クリティカルパス13が重ねられて描かれている。通常であれば、クリティカルパス13が考慮されず、分断箇所が1箇所で済むようにするため、図15Bに示される分割結果が採用される。一方、本実施形態では、クリティカルパス13が考慮されるため、クリティカルパス13と重なる分断候補11が採用されず、図15Cに示される分割結果が採用される。すなわち、本実施形態によれば、クリティカルパス13においてパターンが分断されることが回避される。
【0048】
尚、ステップS12において、パターン分割部8は、クリティカルパス13に重なるパターン同士が同一のマスクに割り当てられるように、分割候補パターンを選択することが好ましい。クリティカルパス13に重なるパターン同士が同一のマスクにより形成されるので、マスクの出来上がり精度を管理しやすくすることが可能になる。
【0049】
また、本実施形態で生成される分割レイアウトデータに基づいて、マスクが製造される。マスクは、製造後に、欠陥検査が行なわれる。この際、本実施形態で得られるランク値に応じて、欠陥検査における精度を決めるとよい。より高い精度が求められている箇所を高精度に検査することにより、歩留まりを向上させることができる。
【0050】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、設計インテント情報として、クリティカルパス13を示す情報が用いられる場合について説明した。これに対して、本実施形態では、設計インテント情報として、トランジスタの拡散層の位置を示す情報が用いられる。その他の点については、第1の実施形態と同様である。
【0051】
図16A及び図16Bは、複数の分割候補パターンを示す図であり、第1の実施形態における図14A及び図14Bに対応する図である。図16A及び図16Bに示されるように、このレイアウトにおいては、幅がW1である4つのパターンのうちの2つが、拡散層12と重なっている。そのため、図16Aに示されるように、拡散層12と重なる2つのパターンに設定された分断候補のランク値が、「1」から「3」に変更されている。その結果、図16Aに示される分割候補パターンにおけるランク値の合計は、「8(=1+3+3+1)」となり、図16Bに示される分割候補パターンにおけるランク値の合計である「6(=2+2+2)」よりも、大きくなっている。従って、図16Bに示される分割候補パターンが採用され、拡散層に重なるパターンが分断されることが防止される。
【0052】
トランジスタが形成される部分においてパターンが分断されると、トランジスタ動作に大きな影響が出ることがある。本実施形態によれば、トランジスタの拡散層12と重なる部分が分断され難くなるので、トランジスタ形成部分における加工精度の劣化を防ぐことが出来、歩留まり低下を防止できる。
【0053】
以上、本発明について、第1及び第2の実施形態を用いて説明した。尚、これらの実施形態は互いに独立するものではなく、矛盾のない範囲内で組み合わせて用いることも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 マスクレイアウト分割装置
2 入力部
3 隣接パターン生成部
4 分断候補生成部
5 プロセスシミュレーション部
6 ランク生成部
7 セルライブラリ
8 パターン分割部
9 設計インテント入力部
10 出力部
11 分断候補
12 拡散層と重なる領域
13 クリティカルパス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の種類の各々のセルのセルレイアウトを示すセルレイアウトデータを取得するステップと、
前記セルレイアウトを複数のマスクレイアウトに分割する際に発生するパターン分断部分の複数の候補を、複数の分断候補として設定し、前記複数の種類の各々のセルに対応する分断候補付きセルレイアウトデータを生成するステップと、
前記分断候補付きセルレイアウトデータに基づいて、複数のセルを含むフルチップのレイアウトを示すフルチップレイアウトデータを生成し、前記フルチップレイアウトデータに示される前記複数の分断候補の中から採用する分断候補群を選択するステップと、
前記選択した分断候補群でパターンが分断されるように、前記フルチップレイアウトデータが示すレイアウトを分割するステップと、
分割結果を示す分割レイアウトデータを生成するステップと、
を具備する
マスクレイアウト分割方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたマスクレイアウト分割方法であって、
更に、
前記分断候補付きセルレイアウトデータを取得し、前記複数の分断候補の各々に危険度の大きさを示すランク値を設定するステップ、
を具備し、
前記分断候補群を選択するステップは、前記ランク値に基づいて、前記採用する分断候補群を選択するステップを含んでいる
マスクレイアウト分割方法。
【請求項3】
請求項2に記載されたマスクレイアウト分割方法であって、
前記分断候補群を選択するステップは、
予め準備され、重要部分の位置を示す設計インテント情報に基づいて、前記フルチップレイアウトデータにおける前記各分断候補の前記ランク値を変更するステップと、
前記変更後のランク値に基づいて、前記採用する分断候補群を選択するステップとを含んでいる
マスクレイアウト分割方法。
【請求項4】
請求項3に記載されたマスクレイアウト分割方法であって、
前記設計インテント情報は、クリティカルパスの位置を示す情報を含んでおり、
前記ランク値を変更するステップは、前記各分断候補が前記クリティカルパスと重なる場合に、前記ランク値を増加させるステップを含んでいる
マスクレイアウト分割方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載されたマスクレイアウト分割方法であって、
前記設計インテント情報は、トランジスタにおける拡散層の位置を示す情報を含んでおり、
前記ランク値を変更するステップは、前記各分断候補が前記拡散層と重なる場合に、前記ランク値を増加させるステップを含んでいる
マスクレイアウト分割方法。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載されたマスクレイアウト分割方法であって、
前記分割するステップは、前記重要部分と重なるパターンが同一のマスクに割り当てられるように、前記フルチップレイアウトデータが示すレイアウトを分割するステップを含んでいる
マスクレイアウト分割方法。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれかに記載されたマスクレイアウト分割方法であって、
更に、
前記各分断候補が採用された場合に実際に形成されるパターン形状をシミュレーションにより計算するステップ、
を具備し、
前記ランク値を設定するステップは、前記計算されたパターン形状に基づいて、前記各分断候補が採用された場合における製造誤差を算出し、前記製造誤差に基づいて、前記ランク値を決定するステップを含んでいる
マスクレイアウト分割方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載されたマスクレイアウト分割方法をコンピュータにより実現するための、マスクレイアウト分割プログラム。
【請求項9】
複数の種類の各々のセルのセルレイアウトを示すセルレイアウトデータを取得し、前記セルレイアウトを複数のマスクレイアウトに分割する際に発生するパターン分断部分の複数の候補を、複数の分断候補として設定し、前記複数の種類の各々のセルに対応する分断候補付きセルレイアウトデータを生成する、分断候補生成部と、
前記分断候補付きセルレイアウトデータに基づいて、複数のセルを含むフルチップのレイアウト及びフルチップにおける前記複数の分断候補の位置を示すフルチップレイアウトデータを生成し、前記フルチップレイアウトデータに示される前記複数の分断候補の中から採用する分断候補群を選択し、前記選択した分断候補群でパターンが分断されるように、前記フルチップレイアウトデータが示すレイアウトを分割し、分割結果を示す分割レイアウトデータを生成する、パターン分割部と、
を具備する
マスクレイアウト分割装置。
【請求項10】
請求項9に記載されたマスクレイアウト分割装置であって、
更に、
前記分断候補付きセルレイアウトデータを取得し、前記複数の分断候補の各々に危険度の大きさを示すランク値を設定する、ランク生成部、
を具備し、
前記パターン分割部は、前記ランク値に基づいて、前記採用する分断候補群を選択する
マスクレイアウト分割装置。
【請求項11】
請求項10に記載されたマスクレイアウト分割装置であって、
前記パターン分割部は、予め準備され、重要部分の位置を示す設計インテント情報に基づいて、前記フルチップレイアウトデータにおける前記各分断候補の前記ランク値を変更し、前記変更後のランク値に基づいて、前記採用する分断候補群を選択する
マスクレイアウト分割装置。
【請求項12】
請求項11に記載されたマスクレイアウト分割装置であって、
前記設計インテント情報は、クリティカルパスの位置を示す情報を含んでおり、
前記パターン分割部は、前記各分断候補が前記クリティカルパスと重なる場合に、前記ランク値を増加させる
マスクレイアウト分割装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載されたマスクレイアウト分割装置であって、
前記設計インテント情報は、トランジスタにおける拡散層の位置を示す情報を含んでおり、
前記パターン分割部は、前記各分断候補が前記拡散層と重なる場合に、前記ランク値を増加させる
マスクレイアウト分割装置。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれかに記載されたマスクレイアウト分割装置であって、
前記パターン分割部は、前記重要部分と重なるパターンが同一のマスクに割り当てられるように、前記フルチップレイアウトデータが示すレイアウトを分割する
マスクレイアウト分割装置。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれかに記載されたマスクレイアウト分割装置であって、
更に、
前記各分断候補が採用された場合に実際に形成されるパターン形状をシミュレーションにより計算する、プロセスシミュレーション部、
を具備し、
前記ランク生成部は、前記計算されたパターン形状に基づいて、前記各分断候補が採用された場合における製造誤差を算出し、前記製造誤差に基づいて、前記ランク値を決定する
マスクレイアウト分割装置。
【請求項16】
複数のセルの各々のセルレイアウトを示すセルレイアウトデータと、
前記セルレイアウトを複数のマスクレイアウトに分割する際に発生するパターン分断部分の複数の候補を、複数の分断候補として示す、分断候補データと、
を具備する
セルライブラリのデータ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【公開番号】特開2013−73139(P2013−73139A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213770(P2011−213770)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】