説明

マスク用フィルタ、マスク用フィルタ包装体及びフィルタ付きマスクの使用方法

【課題】所定の消臭効果、保湿効果を容易に確保できると共に、活性炭の脱落を防止でき、しかも構造が簡単で容易且つ安価に製造できるようにする。
【解決手段】 マスク用フィルタ4は、通気性を有するシート基材15に接着剤を介して活性炭16を担持させた活性炭シート12と、通気性を有するシート基材18に保湿液19を含浸させた含浸シート13とを備えている。活性炭シート12は保形性を有し、この活性炭シート12を二つ折り状にして、その間に含浸シート13を挟んで包んでいる。活性炭16は竹炭の粒子が、含浸シート13のシート基材15はセルロース系不織布が用いられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭性、保湿性を有するマスク用フィルタ、マスク用フィルタ包装体及びフィルタ付きマスクの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の有害物質や汚染物質の増加、新型インフルエンザ等の病原菌の発生、杉花粉の大量発生等に伴い、それらの吸入を防止するためにマスクが重用されており、従来から多種多様のマスクが提案されている。
【0003】
例えば従来のマスクには、マスク本体に非吸湿性の不織布を重ねてポケットを構成し、そのポケットに、吸湿性の不織布に多価アルコール、含窒素型ノニオン界面活性剤等の液体を含浸させた含浸シートと、不織布等の袋体に入れた活性炭とを挿入したもの(特許文献1)、網状生地に粘性を有する薬剤を塗布して、その薬剤の粘着力により網状生地に活性炭粒子を付着させてマスク用フィルタを構成し、このマスク用フィルタをマスク本体のポケットに挿入するようにしたもの(特許文献2)、繊維を炭化させた活性繊維である炭フェルトを目が細かく密度が高いガーゼと不織布で二重に包んで活性炭フィルタパックを構成し、この活性炭フィルタパックをマスク本体のポケットに挿入するようにしたもの(特許文献3)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4013956号公報
【特許文献2】特開2006−320491号公報
【特許文献2】特開2007−6977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の特許文献1のマスクは、多価アルコールによる保湿効果、含窒素型ノニオン界面活性剤による抗菌効果等を確保する一方、外部の汚染物質の臭気、着用者の口臭等に対する活性炭の消臭効果を確保したものである。しかし、このマスクは、活性炭を不織布等の袋体に入れて、その袋を含浸シートとは別にマスク本体のポケットに挿入している。そのため含浸シートと活性炭を入れた袋体とを前後方向に重ねてポケットに挿入すれば、マスク本体の厚さが厚くなり過ぎて着用時の違和感が大になる問題があり、また左右、上下等に並べてポケットに挿入すれば、吸気抵抗の少ない箇所を経て吸気することになって所期の目的を達成できないという問題がある。また活性炭が袋内で偏る等の問題もある。
【0006】
特許文献2のマスクは、薬剤の薬効成分による抗菌効果、活性炭による消臭効果を狙ったものであるが、薬剤の粘着力により網状生地に活性炭粒子を付着させた構造であるため、活性炭粒子を十分な付着力で確実に付着させることが困難であり、接触時の摩擦等により、薬剤の表面に付着する活性炭粒子が脱落するという問題がある。
【0007】
特許文献3に記載のマスクは、活性炭が繊維を炭化させた活性繊維である炭フェルトであって、この炭フェルトを目が細かく密度が高いガーゼと不織布で二重に包んで活性炭フィルタパックを構成しているため、炭フェルトのガーゼ、不織布による包み構造が複雑であり、製造が煩雑で製造コストが高騰するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に鑑み、所定の消臭性、保湿性を容易に確保できると共に、活性炭の脱落を防止でき、しかも構造が簡単で容易且つ安価に製造することができるマスク用フィルタを提供すること、マスク用フィルタを密封包装して必要に応じて簡便に使用できるマスク用フィルタ包装体を提供すること、消臭性、保湿性を有するフィルタをマスクとセットにしておき、マスクの着用に際してフィルタを簡便にマスクに装着できるフィルタ付きマスクの使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマスク用フィルタは、通気性を有するシート基材15に活性炭16を担持させた活性炭シート12と、通気性を有するシート基材18に保湿液19を含浸させた含浸シート13とを重ねたものである。
【0010】
前記含浸シート13を前記活性炭シート12により包んでもよい。前記活性炭シート12は保形性を有し、該活性炭シート12により、該活性炭シート12に重ねられた前記含浸シート13を保形することが望ましい。前記活性炭16は竹炭の粒子でもよい。前記活性炭シート12の前記シート基材15は少なくとも片面側に前記活性炭16の粒子を担持し、該シート基材15の前記活性炭16の粒子側に前記含浸シート13を重ねることが望ましい。
【0011】
前記含浸シート13の前記シート基材15がセルロース系不織布であることが望ましい。前記活性炭シート12及び/又は前記含浸シート13の前記シート基材15,18は通気孔17,20を有する不織布であることが望ましい。前記保湿液19は香料及び/又は機能水を含むことが望ましい。
【0012】
また本発明に係るマスク用フィルタ包装体は、通気性を有するシート基材18を活性炭シート12に重ねて保湿液19を含浸し密封包装したものである。
【0013】
本発明に係るフィルタ付きマスクの使用方法は、通気性を有するシート基材15に活性炭16を担持させた活性炭シート12と、通気性を有するシート基材18に保湿液19を含浸させ且つ密封包装された含浸シート13とをマスクMにセットしておき、前記マスクMの着用に際して、開封された前記含浸シート13を活性炭シート12に重ねたフィルタ4を前記マスクMに装着するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るマスク用フィルタによれば、通気性を有するシート基材15に接着剤を介して活性炭16を担持させた活性炭シート12と、通気性を有するシート基材18に保湿液19を含浸させた含浸シート13とを重ねているので、所定の消臭性、保湿性を容易に確保できると共に、活性炭16の脱落を防止でき、しかも構造が簡単で容易且つ安価に製造することができるという利点がある。
【0015】
また本発明に係るマスク用フィルタ包装体によれば、消臭性、保湿性を有するマスク用フィルタを必要に応じて簡便に使用できるという利点がある。
【0016】
更に本発明に係るフィルタ付きマスクの使用方法によれば、マスクの着用に際し消臭性、保湿性を有するフィルタを簡便にマスクに装着して使用できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すマスクの斜視図である。
【図2】同マスクの断面図である。
【図3】同マスク用フィルタの断面図である。
【図4】同マスク用フィルタの要部の拡大断面図である。
【図5】同マスク用フィルタの展開図である。
【図6】同密封状態の含浸シートの断面図である。
【図7】同包装状態のマスクの斜視図である。
【図8】同マスク用フィルタの分解図である。
【図9】本発明の第2の実施形態を示すマスク用フィルタの説明図である。
【図10】本発明の第3の実施形態を示すマスク用フィルタの説明図である。
【図11】本発明の第4の実施形態を示すシート基材の説明図である。
【図12】本発明の第5の実施形態を示すマスクの背面図である。
【図13】同断面図である。
【図14】本発明の第6の実施形態を示すマスクの背面図である。
【図15】同マスク用フィルタの説明図である。
【図16】本発明の第7の実施形態を示す側面断面図である。
【図17】同マスクの背面図である。
【図18】本発明の第8の実施形態を示すマスク用フィルタの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて詳述する。図1〜図8は本発明の第1の実施形態を例示する。このマスクMは図1、図2に示すように通気性を有するマスク本体1と、このマスク本体1の左右両側に設けられた耳掛け部2と、マスク本体1の内側に設けられたポケット3とを有し、そのポケット3にマスク用フィルタ4が出し入れ自在に収容されている。
【0019】
マスク本体1は着用者の顔面の鼻孔、口、顎及び左右両側の頬を覆う大きさを有する横長矩形状であって、通気性、非吸湿性及び熱可塑性を有する合成樹脂繊維の不織布を1枚又は複数枚重ねて構成されている。マスク本体1の左右の側縁5に伸縮性を有する耳掛け部2が熱融着されている。なお、耳掛け部2はマスク本体1と一体に設けてもよいし、側縁5にゴム等を通して設けてもよい。
【0020】
マスク本体1に使用する不織布としては、例えばオレフィン樹脂繊維、ポリエチレン樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、ポリプロピレン樹脂繊維等の単繊維を素材とする不織布や、複合芯鞘繊維を素材とする不織布、あるいは積層複合不織布等を使用することが可能である。複合芯鞘繊維としては、ポリエステル−ポリエチレン芯鞘繊維、ポリプロピレン−ポリエチレン芯鞘繊維等を適用できる。積層複合不織布としては、綿とポリエチレンの積層不織布、レーヨンとポリエチレンの積層不織布、綿とポリプロピレンの積層不織布等を使用できる。
【0021】
なお、マスク本体1は少なくとも鼻孔及び口を含むその周辺部分を覆う形状、寸法であれば十分である。マスク本体1にはその中間部分に上下に複数本のギャザー6が形成されているが、マスク本体1はギャザー6のない平面状のものでもよいし、立体状のものでもよい。更にマスク本体1は熱可塑性を有する合成樹脂繊維の不織布を熱融着して構成する他、縫着して構成してもよい。また天然繊維を使用してもよいし、合成樹脂繊維と天然繊維とを重ねて使用してもよい。
【0022】
ポケット3はマスク本体1と同様に通気性、非吸湿性及び熱可塑性を有する合成樹脂繊維の不織布、取り分け毛羽立ちが少なく、顔の肌に触れても不快感のない素材が使用されている。このポケット3はマスク用フィルタ4を上側から出し入れできるように上向きに開口しており、マスク本体1よりも薄手の不織布を前後二つ折りにし、その前シート部7と後シート部8との左右の両側縁9を熱融着して構成され、その前シート部7の上端縁10の略全長がマスク本体1の裏側の上端縁11に沿って左右方向に熱融着されている。なお、前シート部7の上端縁10は左右方向の複数箇所をスポット的に熱融着してもよいし、マスク本体1に縫着してもよい。
【0023】
マスク用フィルタ4は図3に示すように活性炭シート12と含浸シート13とを備え、例えば活性炭シート12を折り曲げ部14で二つ折りにして、その間に含浸シート13を挟み込む等により、活性炭シート12と含浸シート13とを厚さ方向に重ね合わせて構成されている。なお、マスク用フィルタ4はポケット3内に挿入したときに着用者の呼気の多くが通過するだけの十分な面積を有し、ポケット3内にその上側の開口から出し入れ自在に挿入されている。
【0024】
活性炭シート12は外部臭気、着用者の口臭等を消臭するためのもので、通気性及び非吸湿性を有する合成樹脂繊維の不織布等のシート基材15に接着剤を介して活性炭16の粒子を略均等に担持させており、二つ折りにしたときに含浸シート13の略全体を両側から包み得る程度の大きさを有する。シート基材15には、図4、図5に示すように、その略全面に略均一に小孔状の通気孔17が形成された不織布が使用されている。活性炭16には通気孔17よりも小さい粒体又は粉体にしたもの、例えば竹炭の粒子が使用されている。
【0025】
活性炭16をシート基材15に担持させる際には、例えば非水溶性接着剤(耐性接着剤)と活性炭16の粒子とを所定割合で配合し混練した後、その混練物を塗工ガン、塗工ロール等の適宜塗工手段により、通気孔17を塞がないようにシート基材15に対して片面側から塗工する。このため活性炭シート12はシート基材15の通気孔17内を含む片面側に活性炭16の粒子が担持されたものとなり、片面側がその活性炭16の粒子により、滑り難いヤスリ状になっている。また活性炭シート12は非水溶性接着剤の硬化皮膜によりシート基材15が補強された状態となり、所定の保形性を有する。
【0026】
なお、活性炭シート12は所定の保形性を有するため、含浸シート13を挟み込む前の時点でも、活性炭16側を内側にして二つ折り状に折り畳んでおくことが望ましい。またシート基材15は疎水性及び/又は熱可塑性を有する不織布等でもよい。シート基材15の両面に混練物を塗工する等して、シート基材15の両面に活性炭16の粒子を担持させてもよい。
【0027】
活性炭16の担持に使用する接着剤は、保湿液19が水系統の場合には非水溶性接着剤となるが、保湿液19が水系統以外の薬液等の場合にはその保湿液19によって溶けない性質を有する非液溶性接着剤(耐保湿液性接着剤)となる。また含浸シート13の保湿液19の含浸量が僅かであれば、デンプン糊等の水溶性の接着剤を使用することも可能である。
【0028】
含浸シート13は図4に示すように通気性を有する不織布等のシート基材18に、着用者の喉、鼻孔等の乾燥を防止するための保湿用の多価アルコール等の保湿液19を含浸させたものである。シート基材18には吸湿性を有する不織布、例えば保湿液19を含浸しても異臭が発生しないようにセルロース系の不織布等が使用されている。またシート基材18には、図4、図5に示すように、その全体にわたって略均一に通気孔20が形成されている。なお、このシート基材18には合成樹脂繊維の不織布を使用してもよい。
【0029】
保湿液19としては、保湿液19は例えば保湿性と抗菌性とを有する抗菌剤、保湿性と芳香性とを有する香料の一方又は両方を用いてもよいし、保湿性と抗菌性とを有する抗菌剤に香料を加えたもの、又は保湿性と芳香性とを有する香料に抗菌剤を加えたものを用いてもよい。更に多価アルコール等の保湿剤に必要に応じて抗菌剤及び/又は香料を加えたものを用いてもよい。更に保湿液19は香料及び/又は機能水を含むものでもよい。機能水には例えば電解イオン水、ミネラルイオン水等のマイナスイオン水やアルカリイオン水がある。
【0030】
活性炭シート12に挟み込む前の含浸シート13は、図6に示すように密封袋21内に封入されており、使用する際に密封袋21を開封して含浸シート13を取り出す。なお、製造時には密封袋21にシート基材18を入れた後、その密封袋21に所定量の保湿液19を注入して封口すればよい。シート基材18に保形性の悪いセルロース系の不織布を使用する場合には、シート基材18を二つ折り状にする等、適宜折り畳んで密封袋21に封入することが望ましい。
【0031】
活性炭シート12、密封袋21に封入された含浸シート13は、図7に示すようにマスクMにセットして、それらを一緒に包装袋22に封入し包装してもよいし、マスクM、活性炭シート12、密封袋21に封入された含浸シート13は、個別に包装してもよい。またマスクM、活性炭シート12、密封袋21に封入された含浸シート13は、複数枚毎にまとめて包装してもよい。その他の包装形態を採用してもよい。
【0032】
マスクMの着用に際しては、先ず密封袋21を開封して含浸シート13を取り出して拡げる。そして、二つ折り状の活性炭シート12を拡げて、図5に示すように活性炭シート12の一方側の半分に含浸シート13を重ね合わせた後、図8に示すように再度活性炭シート12を二つ折り状に折り畳んで行く。これによって活性炭シート12により含浸シート13を両側から包んだ状態の1個のマスク用フィルタ4が得られるので、このマスク用フィルタ4を図1、図2に示すようにマスク本体1の裏側のポケット3に挿入した後、その状態でマスクMを着用する。
【0033】
このようにすれば、活性炭シート12と密封包装された含浸シート13とをマスクMにセットして包装しておき、マスクMの着用に際して含浸シート13を取り出して活性炭シート12に重ねたマスク用フィルタ4を構成し、そのマスク用フィルタ4をマスクMに装着して使用すればよいので、消臭性、保湿性、抗菌性を有するマスク用フィルタ4を必要に応じて簡便に使用できる。また活性炭シート12と含浸シート13とがマスクMにセットされているので、携行にも便利であり利便性が向上する利点がある。
【0034】
更にマスク本体1の裏側のポケット3にマスク用フィルタ4を挿入して使用すれば、活性炭シート12の活性炭16により外気の臭気、着用者の口臭等を消臭できると共に、含浸シート13の保湿液19により着用者の喉、鼻孔等を乾燥から守ることができ、またウイルスの侵入を極力防止することができる。
【0035】
活性炭シート12は活性炭16の粒子をシート基材15に非水溶性接着剤により担持させて構成しているため、活性炭16の粒子をシート基材15の略全面に略均一に担持させることが可能であるだけでなく、活性炭16の粒子をシート基材15に確実に固定することができる。このため活性炭16の偏り、接触時の活性炭16の脱落等もなく、活性炭16による消臭効果を長期にわたって安定的に確保することができる。
【0036】
しかも、活性炭16の粒子はシート基材15の片面側の表面だけでなく通気孔17の内周にもあるため、活性炭16の絶対的な担持量が増える上に、着用者の吸気、呼気が通気孔17に触れ易くなり、活性炭16による消臭効果を一段と向上させることができる。
【0037】
また含浸シート13のシート基材18にセルロース系の不織布を使用することにより、保湿液19を含浸させたときの異臭の発生を防止できる利点がある。
【0038】
ただセルロース系の不織布性のシート基材18を使用すれば、その厚さによっては種々の問題が生じる。即ち、シート基材18に使用する不織布を薄くすれば、そのシート基材18に保湿液19を含浸させたときに形状を保持できなくなり、また厚い不織布を使用すれば、通気性が低下して呼吸し難くなる。
【0039】
しかし、保形性を有する二つ折り状の活性炭シート12で含浸シート13を挟むことにより、含浸シート13を含むマスク用フィルタ4をシート状に保形することができる。このため、シート基材18に通気性のよい薄い不織布を使用して着用者の呼吸を楽にしながらも、ポケット3に対するマスク用フィルタ4の出し入れを容易にできる等その後の取り扱いを容易に行うことができる。
【0040】
また活性炭シート12はシート基材15に担持された活性炭16の粒子により滑り難くなっており、その滑り難い活性炭16側で含浸シート13を挟んでいるため、活性炭シート12により含浸シート13を両側から挟み込んでいることと相俟って、活性炭シート12内での含浸シート13の動きを防止することができる。このため着用時の顔面の動きによってマスク用フィルタ4が屈伸するようなことがあっても、含浸シート13が活性炭シート12から外れる等の惧れもない。
【0041】
しかも、活性炭シート12は含浸シート13側に活性炭16の粒子が担持されており、反対側は活性炭16の粒子がなく含浸シート13側(活性炭16の塗工側)に比較して滑りがよいので、ポケット3に対するマスク用フィルタ4の出し入れを容易にすることができる。
【0042】
含浸シート13のシート基材18には吸湿性に優れたセルロース系の不織布を使用しているが、その含浸シート13を両側から挟む活性炭シート12のシート基材15に非吸湿性を有する不織布を使用し、また活性炭16をシート基材15に担持させる接着剤に非水溶性接着剤を使用しているので、着用時におけるマスク本体1の湿り等も極力防止することができる。
【0043】
活性炭シート12、含浸シート13のシート基材15,18には、通気孔17,20を有する不織布を使用しているため、着用時の呼吸も更に楽にできる。保湿液19に抗菌剤を使用し又は添加すれば、その抗菌作用により、マスク用フィルタ4での雑菌の繁殖を防止でき、雑菌による異臭の発生を未然に防止することができる。
【0044】
保湿液19に香料を使用し又は添加すれば、着用者の喉、鼻孔等の保湿性が向上する他に、着用者に心地よい芳香を発生させることができ、着用者の爽快感を一層向上させることができる。また抗菌剤、香料等が活性炭シート12の活性炭16に吸着されて移行するので、所定の抗菌性、芳香性を長期間にわたって保つことができる。
【0045】
更に保湿液19に電解イオン水等のマイナスイオン水を含ませておけば、吸気を通じて着用者の新陳代謝を高め爽快感、リフレッシュ感の向上を図ることができる。保湿液19にアルカリイオン水を含ませておけば、同様に吸気を通じて着用者の新陳代謝を高めることもできる。
【0046】
なお、マイナスイオンによる着用者の爽快感の向上を図る場合、保湿液19に電解イオン水等のマイナスイオン水を添加して含浸させるのが最も容易であるが、活性炭16の粒子に、マイナスイオンを発生するトルマリン粒子を配合して活性炭シート12側に担持させてもよい。このようにすれば活性炭シート12によって一種の活性炭イオンフィルタを構成でき、トルマリン粒子から発生するマイナスイオンにより、着用者の爽快感、リフレッシュ感を安定的に高めることができる。
【0047】
図9は本発明の第2の実施形態を例示する。この実施形態では、二枚の活性炭シート12を用いて含浸シート13を厚さ方向の両側から挟み込むようにしている。その場合、図9(a)に示すように含浸シート13よりも大きい二枚の活性炭シート12により含浸シート13を挟んでもよいし、図9(b)に示すように含浸シート13よりも若干小さい二枚の活性炭シート12により含浸シート13を挟んでもよい。
【0048】
また図9(c)に示すように含浸シート13よりも若干大きい活性炭シート12と、含浸シート13よりも若干小さい活性炭シート12とにより含浸シート13を挟んでもよい。勿論、二枚の活性炭シート12は含浸シート13と略同じ大きさでもよい。また含浸シート13は活性炭シート12の活性炭16側に重ね合わせる等、他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0049】
図10は本発明の第3の実施形態を例示する。マスク用フィルタ4は、図10(a)に示すように含浸シート13に含浸された保湿液19が有する貼付力により、含浸シート13を活性炭シート12の活性炭16側の片面に貼付してもよいし、図10(b)に示すように更に活性炭シート12の端部を含浸シート13の反対側に折り返して、その折り返し部12a側で含浸シート13の端部を前後両側から挟むようにしてもよい。
【0050】
含浸シート13は活性炭シート12の滑り難い活性炭16側に重ねており、本来、活性炭シート12と含浸シート13は滑り難い関係にある。このため図10(a)に示すように含浸シート13をその保湿液19の貼付力で活性炭シート12に密着させる程度でも、マスク用フィルタ4をポケット3内に挿入することは可能である。また図10(b)に示すように折り返し部12a側で含浸シート13の端部を両側から挟んでおけば、含浸シート13の先端側が捲れる等の問題もなく容易にポケット3内に挿入することができる。従って、含浸シート13は必ずしも活性炭シート12により両側から挟み込まなくてもよい。なお、他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0051】
図11は本発明の第4の実施形態を例示する。活性炭シート12、含浸シート13に使用するシート基材15,18は、図11(a)に示すように無数の細かい通気孔17,20が縦横に多数形成された編み目状のものでもよいし、図11(b)に示すように比較的大きい丸孔、その他の通気孔17,20が縦横に多数形成されたものでもよい。また含浸シート13用のシート基材18は保湿液19を含浸させるため、不織布等の繊維製のものがよいが、活性炭シート12用のシート基材15は非吸湿性を有するものであればよく、薄い可撓性を有するネット等の成型物でもよい。なお、他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0052】
図12、図13は本発明の第5の実施形態を例示する。この実施形態のマスクMは、マスク本体1の裏側に、マスク用フィルタ4を収容するポケット3を備え、そのポケット3は上下方向に長い後シート部8と、この後シート部8の始端から前側に折り返された短い前シート部7とを有し、その後シート部8の上端縁23がマスク本体1の上端縁11に沿って熱融着等により固着されている。なお、前シート部7と後シート部8との左右の両側縁9は上下方向に熱融着等により固着されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0053】
マスク本体1の内側のポケット3は、このように構成してもマスク用フィルタ4を収容することが可能である。また前シート部7は短くなっているが、後シート部8でポケット3内のマスク用フィルタ4を裏側から覆うため、着用時にポケット3内のマスク用フィルタ4が肌に直接触れる等の問題はない。
【0054】
図14、図15は本発明の第6の実施形態を例示する。このマスクMは立体型であり、マスク本体1は図14に示すように左右のシート部24a,24bを円弧状の接合縁25で接合するか予め立体形状に成型する等して、両シート部24a,24bを左右方向に拡げたときに、マスク本体1の中央部分が前方へと湾曲して立体形状になるように構成されている。このマスク本体1の内側にもポケット3があり、そのポケット3にマスク用フィルタ4を出し入れ自在に挿入するようになっている。
【0055】
ポケット3はマスク本体1と、このマスク本体1の内側に固着されたシート部26とにより構成され、そのシート部26の左右の両側縁28及び下端縁29がマスク本体1に熱融着、縫着等により固着されている。シート部26は左右の両側縁28及び下端縁29の略全長を固着してもよいし、ポケット3内のマスク用フィルタ4が脱落しない範囲で間欠的に固着してもよい。
【0056】
マスク用フィルタ4は図14に示すように他の実施形態と同様に長方形状でもよいし、図15(a)に示すようにポケット3に対応する形状にしてもよい。この図15(a)のマスク用フィルタ4は活性炭シート12が上側に折り曲げ部14で二つ折り状に折り畳まれており、下側がポケット3の下端縁29に沿う形状になっている。
【0057】
このように立体型のマスクMの場合にも、そのマスク本体1の裏側にポケット3を設けることにより、他の各実施形態と同様にそのポケット3にマスク用フィルタ4を収容して着用することができる。
【0058】
立体型のマスクMに使用するマスク用フィルタ4は、図15(b)又は(c)に示すように、その略中央部分に左右方向又は上下方向にスリット27を形成してもよい。このようにスリット27を形成しておけば、マスク本体1を拡げて立体化する際に、マスク用フィルタ4がスリット27の両側で上下又は左右に拡がるため、マスク用フィルタ4がマスク本体1の立体化の妨げとなるようなこともない。なお、活性炭シート12にはスリット27を形成するが、含浸シート13はスリット27の近傍で二枚に分けてもよい。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0059】
図16、図17は本発明の第7の実施形態を例示する。このマスクMは第6の実施形態と同様に立体型であり、マスク本体1の裏側にはその接合縁25に近接して左右に二個のポケット3が設けられ、その各ポケット3にマスク用フィルタ4を収容するようになっている。
【0060】
各ポケット3はマスク本体1の左右方向の外側に開口しており、その開口からマスク本体1の中央側にマスク用フィルタ4を挿入するようになっている。各ポケット3のシート部26は、マスク本体1の中央側の側縁30がシート部26と共に接合縁25で固着され、上下の両側縁31がマスク本体1に融着等で固着されている。なお、他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0061】
このようにマスク本体1の裏側の左右にポケット3を設けて、その各ポケット3にマスク用フィルタ4を挿入するように構成すれば、マスク本体1を拡げて立体化させて行く場合にも、そのマスク用フィルタ4がその立体化を阻害するようなことはない。従って、マスク本体1を容易に立体化させることができる。
【0062】
またポケット3に左右方向の外側からマスク用フィルタ4を挿入するため、マスク本体1を立体化する前に挿入することが可能であり、その挿入も容易に行うことができる。更に左右のマスク用フィルタ4は接合縁25に近接しているため、所定の消臭効果、保湿効果等を奏することができる。なお、マスク用フィルタ4は各ポケット3に上側から挿入するようにしてもよい。
【0063】
図18は本発明の第8の実施形態を例示する。この実施形態では、活性炭16の粒子が非水溶性接着剤を介して担持された活性炭シート12と、この活性炭シート12の活性炭16の粒子側に重ねられた含浸シート13用のシート基材18とを密封袋21に入れて保湿液19を注入して封入されている。なお、二枚の活性炭シート12間にシート基材15を挟み込んでもよい。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0064】
この場合には、密封袋21を開封する際には、含浸シート13用のシート基材18に保湿液19が含浸するので、密封袋21を開封して重なった状態の活性炭シート12と含浸シート13とを取り出せば、そのままでマスク用フィルタ4として使用することができる。
【0065】
また活性炭シート12を保湿液19と一緒に密封袋21に封入しているため、保湿液19が活性炭16に含浸されることになるが、保湿性と消臭性とを有する保湿液19を使用すれば、活性炭16に保湿液19が含浸することによって長期間にわたって保湿性、消臭性を維持することができる。
【0066】
なお、この実施形態の活性炭シート12は、活性炭16の粒子を非水溶性接着剤を介してシート基材15に担持させているが、経時により活性炭16が保湿液19で膨潤して離脱しないように、シート基材15に熱融着性繊維シートを使用して、その熱融着により活性炭16をシート基材15に担持させてもよい。熱融着性繊維シートとしては、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレン芯鞘繊維、ポリプロピレン−ポリエチレン芯鞘繊維等がある。
【0067】
以上、本発明の各実施形態について詳述したが、本発明は各実施形態に限定されるものではない。例えば、各実施形態では活性炭シート12用のシート基材15には不織布以外のものを使用してもよい。活性炭16は竹炭以外のものを使用してもよいし、活性炭16に同じ物理吸着性を有するゼオライト等の粉末を適宜配合したものを使用してもよい。また活性炭16は粒子状のものであればよい。含浸シート13用のシート基材18は吸湿、親水性を有するものが望ましい。
【0068】
保湿液19に使用する保湿剤としては、ヒアルロン酸ナトリウム、緑茶エキス、ビワ葉エキス、アロエベラエキス、ヘチマ水、ハマメリスエキス、カミツレエキス、ヨクイニイエキス、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トレハロース等がある。
【0069】
保湿液19は保湿性を有するものであれば、消臭性を有する植物性消臭剤であるお茶エキスを加える等、保湿液19に他の性質を有するものを加えてもよい。保湿液19は抗菌性を有するもの、例えばイソプロピルメチルフェノール等が望ましい。また抗菌作用を有する電解アルカリイオン水を利用してもよい。
【0070】
活性炭シート12と含浸シート13とを重ね合わせる場合に、活性炭シート12により含浸シート13を両側から挟んで包むのが望ましいが、両者が重なり合う関係にあれば、含浸シート13を包み込まない構造でもよい。活性炭シート12用、含浸シート13用のシート基材15,18は通気性を有するものであればよく、不織布そのものを使用してもよい。また両シート基材15,18の内、シート基材15又はシート基材18に通気孔17,20を備えたものを用いてもよい。含浸シート13用のシート基材18はセルロース系以外の不織布でもよい。
【0071】
また活性炭16の粒子が担持された活性炭シート12と、この活性炭シート12の活性炭16の粒子側に重ねられた含浸シート13用のシート基材18とを密封袋21に入れて保湿液19を注入し封入する場合には、含浸シート13用のシート基材18を非水溶性接着剤等を介して活性炭シート12に固着する等、活性炭シート12に含浸シート13用のシート基材18を一体に結合してもよい。その場合に使用する非水溶性接着剤等は活性炭16の接着用でもよいし、活性炭16の接着用とは別のものでもよい。
【0072】
更に活性炭シート12用のシート基材15としてセルロース系不織布を用い、このシート基材15の片面に非水溶性接着剤を介して活性炭16の粒子を担持させる一方、その非水溶性接着剤の硬化皮膜によりシート基材15を補強して所定の保形性を有する活性炭シート12とし、その後、この活性炭シート12を密封袋21に入れて保湿液19を注入し封入すれば、シート基材15としてのセルロース系不織布が保湿液19を含浸するので、シート基材15用のセルロース系不織布により含浸シート13のシート基材18を構成することができる。
【0073】
従って、両シート基材15,18を一つのセルロース系不織布により構成しながら、そのセルロース系不織布に所定の保形性を持たせることも可能である。なお、両シート基材15,18を構成する素材はセルロース系不織布が一般的であるが、活性炭16の担持上も保湿液19の含浸上も問題のない不織布等の通気性を有する材料であれば他の何を使用してもよい。
【0074】
ポケット3はマスク本体1の裏側に設けてもよいし、マスク本体1を前後二重構造とし、その間をポケット3として利用してもよい。またマスク本体1の裏側にポケット3を設けるに当たっては、通気性を損なわないように別途通気孔17を設けてもよいし、網状のシート材を使用してもよい。マイナスイオン水、アルカリイオン水以外の機能水を使用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
M マスク
1 マスク本体
3 ポケット
4 マスク用フィルタ
12 活性炭シート
13 含浸シート
15,18 シート基材
16 活性炭
17,20 通気孔
19 保湿液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有するシート基材(15)に活性炭(16)を担持させた活性炭シート(12)と、通気性を有するシート基材(18)に保湿液(19)を含浸させた含浸シート(13)とを重ねたことを特徴とするマスク用フィルタ。
【請求項2】
前記含浸シート(13)を前記活性炭シート(12)により包んだことを特徴とする請求項1に記載のマスク用フィルタ。
【請求項3】
前記活性炭シート(12)は保形性を有し、該活性炭シート(12)により、該活性炭シート(12)に重ねられた前記含浸シート(13)を保形することを特徴とする請求項1又は2に記載のマスク用フィルタ。
【請求項4】
前記活性炭(16)は竹炭の粒子であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のマスク用フィルタ。
【請求項5】
前記活性炭シート(12)の前記シート基材(15)は少なくとも片面側に前記活性炭(16)の粒子を担持し、該シート基材(15)の前記活性炭(16)の粒子側に前記含浸シート(13)を重ねたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のマスク用フィルタ。
【請求項6】
前記含浸シート(13)の前記シート基材(15)がセルロース系不織布であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のマスク用フィルタ。
【請求項7】
前記活性炭シート(12)及び/又は前記含浸シート(13)の前記シート基材(15,18)は通気孔(17,20)を有する不織布であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のマスク用フィルタ。
【請求項8】
前記保湿液(19)は香料及び/又は機能水を含むことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のマスク用フィルタ。
【請求項9】
通気性を有するシート基材(18)を活性炭シート(12)に重ねて保湿液(19)を含浸し密封包装したことを特徴とするマスク用フィルタ包装体。
【請求項10】
通気性を有するシート基材(15)に活性炭(16)を担持させた活性炭シート(12)と、通気性を有するシート基材(18)に保湿液(19)を含浸させ且つ密封包装された含浸シート(13)とをマスク(M)にセットしておき、前記マスク(M)の着用に際して、開封された前記含浸シート(13)を活性炭シート(12)に重ねたフィルタ(4)を前記マスク(M)に装着することを特徴とするフィルタ付きマスクの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−125596(P2011−125596A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288846(P2009−288846)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(504373864)明広商事株式会社 (43)
【Fターム(参考)】