説明

マスク

【課題】 着用者の顔に装着されるマスクにおいて、マスク通気性及びマスク捕集性を高いレベルで両立するのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係るマスク1は、着用者の少なくとも口及び鼻を覆うマスク本体部10と、マスク本体部10の両側から延出して、着用者の耳に引っ掛けられる一対の耳掛け部20を備え、マスク本体部10は、ポリプロピレン繊維からなる不織布シートがエレクトレット化された第1の繊維シート及び第2の繊維シートを含み、第1の繊維シートは、平均繊維径が0.5〜3μm、目付が1.5〜5g/mの不織布シートとして構成され、第2の繊維シートは、平均繊維径及び目付がいずれも第1の繊維シートを上回る不織布シートとして構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の顔に装着されるマスクの構築技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1には、着用者の口及び鼻を覆うマスク、とりわけ立体マスクが開示されている。この立体マスクでは、着用者の息苦しさを解消しつつ風邪などのウイルス対策としての所望のバリア性能を得るために、マスク通気性及びマスク捕集性に着目し、エレクトレット化されたエレクトレット繊維シートを用いていることによってこれらマスク通気性及びマスク捕集性を向上させようとしているが、エレクトレット繊維シートを用いたこの種の立体マスクの設計に際しては、相反するマスク通気性及びマスク捕集性を互いに高いレベルで両立させるために更なる改良の余地がある。
【特許文献1】特開2007−37737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、着用者の顔に装着されるマスクにおいて、マスク通気性及びマスク捕集性を高いレベルで両立するのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を達成するため、各請求項に記載の発明が構成される。
【0005】
本発明に係るマスクは、着用者の顔に装着されるマスクであって、マスク本体部、一対の耳掛け部、及び被着部材を少なくとも備える。マスクは、一回使用ないし数回使用を目安とした使い捨てタイプのものであってもよいし、或いは洗濯などを行ったうえで繰り返し使用することが可能なタイプのものであってもよい。
【0006】
マスク本体部は、着用者の少なくとも口及び鼻を覆う部位とされ、一対の耳掛け部は、マスク本体部の両側から延出して、着用者の耳に引っ掛けられる部位とされる。この場合、耳掛け部は、耳に過度な負荷を与えないような伸縮性を有する素材を用いて構成されるのが好ましく、またマスク本体部は、肌触りが良く着用感の良い感触のものであり、且つ顔に被着されたときの形状が保持され易い、耳掛け部よりも低伸縮性の素材を用いて構成されるのが好ましい。なお、このマスク本体部は、平面形状のものであってもよいし、或いは立体形状のものであってもよい。立体形状の場合には、少なくともマスク着用時にマスク本体部が立体状とされればよく、マスク着用時のみならずマスク着用前においても同様に立体状とされてもよいし、或いはマスク着用時に立体状とされるマスク本体部が、マスク着用前においては所定の態様で折り畳まれて平面状とされてもよい。このマスク本体部を形成するシート片は、典型的には機械的、化学的、熱的などの処理によって繊維を固着したり絡み合わせたりして作られるシート状の構成物であり、典型的には熱溶融性繊維(熱可塑性繊維)を一部に含み融着(溶着)が可能な不織布によって構成される。
【0007】
このマスク本体部は、特にポリオレフィン系繊維からなる不織布シートがエレクトレット化された第1の繊維シート及び第2の繊維シートを含むとともに、マスク着用時に第2の繊維シートの着用者側に第1の繊維シートが配設されるような積層状とされる。本構成に関しては、マスク本体部の全部または一部が、第1の繊維シート及び第2の繊維シートによる二層構造とされる態様や、第1の繊維シート及び第2の繊維シートに加えて更なる繊維シートが積層状に配設された三層以上の多層構造とされる態様などが広く包含される。ここでいう「ポリオレフィン系繊維からなる不織布シート」とは、ポリオレフィン系繊維のみからなる不織布シートのみならず、ポリオレフィン系繊維に更に別の繊維が混合された不織布シートをも広く包含する主旨である。ポリオレフィン系繊維として、典型的にはポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリ1−ブテン繊維等が挙げられる。また、ここでいう「エレクトレット化」とは、既知のエレクトレット処理を用いることにより、ポリオレフィン系繊維表面に所定量の正電荷或いは負電荷を与えて分極させた誘電状態として規定される。すなわち、ポリオレフィン系繊維を含む不織布シートに対し所望のエレクトレット化が可能となる。
【0008】
特にこのマスク本体部では、第1の繊維シートは、平均繊維径が0.5〜3μm、目付が1.5〜5g/mの不織布シートとして構成され、第2の繊維シートは、その平均繊維径及び目付がいずれも第1の繊維シートを上回る不織布シートとして構成される。とりわけエレクトレット化される第1の繊維シートの平均繊維径及び目付を抑えることでマスク捕集性を高めることができる一方、エレクトレット化される第2の繊維シートの平均繊維径及び目付を相対的に上げることでマスク通気性が確保される。従ってこのような構成によれば、マスク通気性及びマスク捕集性を高いレベルで両立することが可能とされる。
【0009】
また、上記構成のマスク本体部において、第2の繊維シートは、平均繊維径が15〜30μm、目付が18〜50g/mの不織布シートとして構成されるのが好ましい。このような構成によれば、更にエレクトレット化される第2の繊維シートの平均繊維径及び目付を適正に選択することによって、マスク通気性及びマスク捕集性に関し更なる性能向上を図ることが可能とされる。
【0010】
また、上記構成のマスク本体部は、第1の繊維シートを挟んで第2の繊維シートと反対側に積層状に配設される第3の繊維シートを備え、またこの第3の繊維シートは、平均繊維径が10〜50μm、目付が20〜40g/mとされた不織布シートして構成されるのが好ましい。着用者の顔面(肌)に直に触れるこのような構成の第3の繊維シートは、肌触りの良い不織布シートとして好適とされる。なお、この第3の繊維シートは、第1及び第2の繊維シートと同様に、ポリオレフィン系繊維からなる不織布シートがエレクトレット化された繊維シートとして構成されてもよいし、或いはエレクトレット化されていない繊維シートとして構成されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、着用者の顔に装着されるマスクにおいて、特にマスク本体部の全部または一部を構成する積層状の第1の繊維シート及び第2の繊維シートの構成に関し、これら第1の繊維シート及び第2の繊維シートの両方をエレクトレット化されたポリオレフィン系繊維からなる不織布シートによって構成するとともに、各繊維シートの平均繊維径及び目付を適正に選択することによって、マスク通気性及びマスク捕集性を高いレベルで両立させることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明における「マスク」の一実施の形態であるマスク1の構成及び作用につき、図1〜4を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
本実施の形態のマスク1の全体構成に関しては、図1が参照される。図1に示すマスク1は、1回ないし数回の使用を想定した使い捨てマスクとして構成され、風邪などのウイルス対策としてのバリア機能を有するマスクとして好適に用いられる。その他、必要に応じては、花粉対策等のマスクとして採用することもできる。このマスク1は、マスク本体部10及び耳掛け部20に大別される。
【0014】
(マスク本体部10の構成)
マスク本体部10は、マスク1の各部位のうち着用者の口及び鼻を覆う部位として構成される。このマスク本体部10の全部または一部が、本発明における「マスク本体部」に相当する。このマスク本体部10は、着用者の右顔面を覆う右側シート片10aと左顔面を覆う左側シート片10bが熱溶着によって互いに連接状に接合されて、着用者側の着用面が凹み形状とされた立体形状(立体構造)になっている。また、これら右側シート片10a及び左側シート片10bの接合部分には、上下方向に長手状に延在する接合縁10cが形成されており、マスク本体部10がこの接合縁10cを境界として左右に二分される。
【0015】
このマスク本体部10は、マスク着用の際に、右側シート片10aと左側シート片10bが互いに離間した拡開状態に設定されて立体状に設定される一方、マスク収納時ないしマスク未使用時においては、右側シート片10aと左側シート片10bが互いに当接した折り畳み状態(平面状)に設定される。なお、このマスク本体部10は、少なくともマスク着用時に立体状とされればよく、マスク着用時のみならずマスク着用前においても同様に立体状とされてもよい。また、このマスク本体部10は、肌触りが良く着用感の良い感触のものであり、且つ顔に被着されたときに立体構造が保持され易くなるように耳掛け部3よりも低伸縮性とされるのが好ましい。
【0016】
上記マスク本体部10、すなわち右側シート片10a及び左側シート片10bの断面構造に関しては、図2が参照される。図2に示すように、マスク本体部10は、第1の繊維シート13、マスク着用時にマスク外表面11を形成する第2の繊維シート14、マスク着用時に着用者に向かうマスク内表面(着用面)12を形成する第3の繊維シート15、が互いに積層状に配設されて接合された3層構造とされる。なお、これら第1の繊維シート13、第2の繊維シート14及び第3の繊維シート15は、一体状に形成された不織布シートとされ、継ぎ目等のない一片の不織布シートによって構成されたものであってもよいし、或いは複数の不織布シートを重ね合わせて積層し或いは突き合わせて接合した構成のものであってもよい。
【0017】
第1の繊維シート13は、ポリプロピレン繊維を含む不織布シートがエレクトレット化(エレクトレット処理)されたシート体として構成される。このエレクトレット化によって、ポリプロピレン繊維表面に所定量の正電荷或いは負電荷を与えて分極させた誘電状態が形成されることとなる。すなわち、ポリプロピレン繊維を含む不織布シートに対し所望のエレクトレット化が可能となる。この第1の繊維シート13として、典型的にはメルトブロー法(「メルトブローン法」ともいう)により製造されたメルトブロー不織布シート(「メルトブローン不織布シート」ともいう)を用いることができ、更にはその平均繊維径が0.5〜3μm、目付が1.5〜5g/mのものを用いるのが好ましい。この場合の第1の繊維シート13は、ポリプロピレン繊維を少なくとも含む不織布シートがエレクトレット化されたものであって、当該不織布シートはポリプロピレン繊維のみによって構成されてもよいし、或いはポリプロピレン繊維に加えて更なる繊維、例えばポリエチレン繊維が付加されたものとして構成されてもよい。ここでいう第1の繊維シート13が、本発明における「第1の繊維シート」に相当する。
【0018】
第2の繊維シート14は、第1の繊維シート13と同様に、ポリプロピレン繊維を含む不織布シートがエレクトレット化されたシート体として構成される。この第2の繊維シート14のエレクトレット化処理は、第1の繊維シート13と併せて、或いは第1の繊維シート13と独立して適宜行なうことが可能である。この第2の繊維シート14として、典型的にはスパンレース法により製造されたスパンレース不織布シート、エアスルー法により製造されたエアスルー不織布シート、スパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布シート、或いはニードルパンチ法により製造されたニードルパンチ不織布シートを用いることができ、更にはその平均繊維径が15〜30μm、目付が18〜50g/mのものを用いるのが好ましい。この場合の第2の繊維シート14は、ポリプロピレン繊維を少なくとも含む不織布シートがエレクトレット化されたものであって、当該不織布シートはポリプロピレン繊維のみによって構成されてもよいし、或いはポリプロピレン繊維に加えて更なる繊維、例えばポリエチレン繊維が付加されたものとして構成されてもよい。ここでいう第2の繊維シート14が、本発明における「第2の繊維シート」に相当する。
【0019】
第3の繊維シート15は、前記の第1の繊維シート13及び第2の繊維シート14とは異なり、エレクトレット処理がなされていないシート体として構成される。この第3の繊維シート15として、典型的にはポリエチレンテレフタレート繊維及びポリエチレン繊維を含み、加圧ロールによるポイントボンド加工がなされた低密度のポイントボンド不織布シート(例えば、平均繊維径が10〜50μm、目付が20〜40g/mの、厚みないし嵩が0.20mm以上、通気度が150cc/cm/secの不織布シート)を用いるのが好ましい。着用者の顔面(肌)に直に触れるこのような構成の第3の繊維シート15は、肌触りの良い不織布シートとして好適に用いられる。ここでいう第3の繊維シート15が、本発明における「第3の繊維シート」に相当する。なお、必要に応じては、この第3の繊維シート15をエレクトレット化されたポリプロピレン製の不織布シートによって構成することもできる。
【0020】
(耳掛け部20の構成)
耳掛け部20は、マスク本体部10の左右両側、すなわち右側シート片10a及び左側シート片10bの各々の端部から延出する構成とされる。この耳掛け部20が、本発明における「耳掛け部」に相当する。各耳掛け部20は、マスク本体部10とは別体構造とされ、マスク本体部10に部分的に重ね合わせて接合された構成とされる。各耳掛け部20は、マスク本体部10の一部としてマスク本体部10と一体構造とされてもよい。また、各耳掛け部20は、開口21を備えるリング状とされる。マスク1の着用時には、着用者の顔、特には鼻及び口をマスク本体部10によって覆った状態で、耳掛け部20の開口21が着用者の耳に引っ掛けられる。この耳掛け部21は、熱可塑性合成繊維の不織布であって、且つ耳に過度な負荷を与えないような伸縮性を有する素材を用いて形成されるのが好ましい。具体的には、非弾性的に伸長可能な伸長性繊維からなる伸長層(例えば、プロピレン連続繊維が互いに溶着された不織布)と、弾性伸縮可能な弾性伸縮性繊維からなる弾性層(例えば、熱可塑性合成繊維のエラストラマーやウレタン等からなる弾性糸を使用した不織布)が互いに重ね合わせられ積層された構成を好適に用いることができる。
【0021】
本発明者らは、本実施の形態のマスク本体部10のマスク通気性及びマスク捕集性を確認するための定量的な性能評価を実施した。この評価に際しては、以下の実施例1〜10及び比較例1〜3及びの各評価片につき、通気性評価に関する通気度[cc/cm/sec]と、捕集性評価に関する捕集効率[%]を測定した。通気度の測定に関しては、既知のフラジール型試験機を用い、予め規定された所定条件下において各評価片を通過する空気量[cc/cm/sec]を測定した。また、捕集効率の測定に関しては、ASTM F2101に規定される試験方法に基づいてバクテリア飛沫ろ過効率(BFE)[%]を測定した。
【0022】
(実施例1の評価片)
実施例1の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:1.5μm、目付:2g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンレース不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:40g/m)を用いた。また、第3の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0023】
(実施例2の評価片)
実施例2の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:1.5μm、目付:2g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。また、第3の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0024】
(実施例3の評価片)
実施例3の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:1.5μm、目付:2g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のエアスルー不織布シート(平均繊維径:15.4μm、目付:30g/m)を用いた。また、第3の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0025】
(実施例4の評価片)
実施例4の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:3μm、目付:2g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンレース不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:40g/m)を用いた。また、第3の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0026】
(実施例5の評価片)
実施例5の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:1μm、目付:2g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンレース不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:40g/m)を用いた。また、第3の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0027】
(実施例6の評価片)
実施例6の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:1μm、目付:3g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンレース不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:40g/m)を用いた。また、第3の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0028】
(実施例7の評価片)
実施例7の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:1μm、目付:5g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンレース不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:40g/m)を用いた。また、第3の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0029】
(実施例8の評価片)
実施例8の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:1.5μm、目付:2g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンレース不織布シート(平均繊維径:21.5μm、目付:40g/m)を用いた。また、第3の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0030】
(実施例9の評価片)
実施例9の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:1.5μm、目付:2g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンレース不織布シート(平均繊維径:24.8μm、目付:40g/m)を用いた。また、第3の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0031】
(実施例10の評価片)
実施例10の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:1.5μm、目付:2g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンレース不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:40g/m)を用いた。また、第3の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0032】
(比較例1の評価片)
比較例1の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:2.5μm、目付:20g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:26μm、目付:30g/m)を用いた。また、第3の繊維シート15に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0033】
(比較例2の評価片)
比較例2の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:8μm、目付:2g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンレース不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:40g/m)を用いた。また、第3の繊維シート15に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0034】
(比較例3の評価片)
比較例3の評価片に関しては、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:1.5μm、目付:2g/m)を用いた。また、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンレース不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:20g/m)を用いた。また、第3の繊維シート15に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されていない、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製のポイントボンド不織布シート(平均繊維径:17.6μm、目付:30g/m)を用いた。
【0035】
(マスク通気性及びマスク捕集性の評価)
上記実施例1〜10及び比較例1〜3の各評価片のマスク通気性及びマスク捕集性に関しては図3及び図4が参照される。図3には、本実施の形態の実施例1〜10及び比較例1〜3の各評価片の通気度及び捕集効率の各測定値が記載されており、また図4には、本実施の形態の実施例1〜10及び比較例1〜3の各評価片の通気度と捕集効率との相関グラフが示されている。なお、図4では、実施例1〜10を○プロットで示し、比較例1〜3を●プロットで示している。
【0036】
図3及び図4に示すように、マスク通気性に関与する通気度の基準値を70[cc/cm/sec]以上とし、マスク捕集性に関与する捕集効率の基準値を90[%]以上とした場合、比較例1〜3はいずれもこれらの基準値によって規定される基準範囲を外れたのに対し、実施例1〜10はいずれもこの基準範囲内にあることが確認された。なお、通気度の基準値である70[cc/cm/sec]以上の領域は、マスク本体部10と着用者の顔面との間の隙間が完全に無くなったとしても、着用者が息苦しさを全く感じることのない領域とされる。また、捕集効率の基準値である90[%]以上の領域は、風邪などのウイルス対策としてのバリア性能を確実に得ることが可能な領域とされる。
【0037】
比較例1では、通気度が基準値を大幅に下回ることから、第1の繊維シート13の一方をエレクトレット化するのみでは、平均繊維径及び目付を調整しても、通気度及び捕集効率の両方に関し基準値を満たすのには限界があると評価した。また、比較例1と比較例2及び3とを見比べた場合、第1の繊維シート13及び第2の繊維シート14の両方をエレクトレット化することで通気度を大幅に上昇させることが可能であると評価される一方、比較例2及び3では比較例1に比べて捕集効率が低い。そこで、本発明者らは、第1の繊維シート13及び第2の繊維シート14の両方をエレクトレット化することを前提としたうえで、更に第1の繊維シート13及び第2の繊維シート14のそれぞれの平均繊維径及び目付に着目し、これら平均繊維径及び目付を実施例1〜10のマスク通気性及びマスク捕集性の評価結果に基づいて適正に設定することによって、通気度及び捕集効率の両方に関し基準値を満たすことが可能であると評価した。
【0038】
第1の繊維シート13に関しては、その平均繊維径及び目付を、第2の繊維シート14の平均繊維径及び目付よりも相対的に小さく設定する(第2の繊維シート14に関しては、その平均繊維径及び目付を、第1の繊維シート13の平均繊維径及び目付よりも相対的に大きく設定する)のが有効とされる。また、これら第1の繊維シート13及び第2の繊維シート14における平均繊維径及び目付の具体的な設定に際しては、以下に示すような更なる定量的な性能評価を実施した。この性能評価では、第1の繊維シート13及び第2の繊維シート14の各々の最適な平均繊維径及び目付を設定するべく、各繊維シートに相当する不織布シートの平均繊維径及び目付を種々変更したときの通気度及び捕集効率を、前述の測定方法にしたがってそれぞれ測定した。
【0039】
第1の繊維シート13の最適な平均繊維径及び目付に関しては、図5及び図6が参照される。ここで図5は、第1の繊維シート13に相当する不織布シートの平均繊維径[μm]と捕集効率[%]及び通気度[cc/cm/sec]との関係を示すグラフであり、図6は、第1の繊維シート13の目付[g/m]と捕集効率[%]及び通気度[cc/cm/sec]との関係を示すグラフである。この場合、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:0.5〜4μm、目付:1〜6g/m2)を用いる一方、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンレース不織布シート(平均繊維径:20μm、目付:40g/m)を用いた。
【0040】
図5及び図6に示す結果に基づいた場合、第1の繊維シート13に関しては、その平均繊維径を第2の繊維シート14よりも小さい0.5〜3μmとし、またその目付を第2の繊維シート14よりも小さい1.5〜5g/mとすることによって、通気度が70[cc/cm/sec]となるレベルまでマスク通気性を高め、且つ捕集効率の基準値が90[%]となるレベルまでマスク捕集性を高めることが可能であることが確認された。また、第1の繊維シート13に関する平均繊維径及び目付のこのような最適範囲は、第2の繊維シート14の平均繊維径を20μmの前後で変更し、また目付を40g/m前後で変更した場合においても同様の傾向となることが確認された。
【0041】
同様に、第2の繊維シート14の最適な平均繊維径及び目付に関しては、図7及び図8が参照される。ここで図7は、第2の繊維シート14に相当する不織布シートの平均繊維径[μm]と捕集効率[%]及び通気度[cc/cm/sec]との関係を示すグラフであり、図8は、第2の繊維シート14の目付[g/m]と捕集効率[%]及び通気度[cc/cm/sec]との関係を示すグラフである。この場合、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のスパンレース不織布シート(平均繊維径:10〜40μm、目付:20〜60g/m)を用いる一方、第1の繊維シート13に相当する不織布シートとして、エレクトレット化されたポリプロピレン製のメルトブロー不織布シート(平均繊維径:1.5μm、目付:2g/m)を用いた。
【0042】
図7及び図8に示す結果に基づいた場合、第2の繊維シート14に関しては、その平均繊維径を第1の繊維シート13よりも大きい15〜30μmとし、またその目付を第1の繊維シート13よりも大きい18〜50g/mとすることによって、通気度が70[cc/cm/sec]となるレベルまでマスク通気性を高め、且つ捕集効率の基準値が90[%]となるレベルまでマスク捕集性を高めることが可能であることが確認された。また、第2の繊維シート14に関する平均繊維径及び目付のこのような最適範囲は、第1の繊維シート13の平均繊維径を1.5μmの前後で変更し、また目付を2g/m前後で変更した場合においても同様の傾向となることが確認された。
【0043】
以上のように、本実施の形態のマスク1は、エレクトレット化された不織布シートの平均繊維径及び目付を、マスク本体部10の厚み方向に関し大幅に変化させることによって新規なマスク性能を付与するものであり、特には平均繊維径が0.5〜3μm、目付が1.5〜5g/mのエレクトレット化された不織布シートを第1の繊維シート13として用い、且つ平均繊維径が15〜30μm、目付が18〜50g/mのエレクトレット化された不織布シートを第2の繊維シート14として用いることによって、マスク通気性及びマスク捕集性を高いレベルで両立させたマスク構造を実現するこが可能とされる。また、必要に応じては、平均繊維径が0.5〜3μmで、目付が1.5〜5g/mのエレクトレット化された不織布シートを第1の繊維シート13としたうえで、その平均繊維径及び目付がいずれも前記の数値範囲(平均繊維径:0.5〜3μm、目付:1.5〜5g/m)を上回るエレクトレット化された不織布シートを第2の繊維シート14として採用することが可能である。この場合にはエレクトレット化される第1の繊維シート13の平均繊維径及び目付を抑えることでマスク捕集性を高めることができる一方、エレクトレット化される第2の繊維シート14の平均繊維径及び目付を相対的に上げることで、マスク通気性が確保されることとなる。
【0044】
また、本実施の形態では、第1の繊維シート13及び第2の繊維シート14の不織布シートを、ポリオレフィン系繊維のうちポリプロピレン繊維を用いて構成したため、エレクトレット化処理をとりわけ容易に行なうことが可能であるとともに、コスト面に優れた安価なマスクが提供される。なお必要に応じては、ポリプロピレン繊維以外のポリオレフィン系繊維、例えばポリエチレン繊維やポリ1−ブテン繊維等を用いて第1の繊維シート13及び第2の繊維シート14の不織布シートを構成してもよい。
【0045】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0046】
上記実施の形態では、第1の繊維シート13、第2の繊維シート14及び第3の繊維シート15が互いに積層状に配設された三層構造のマスク本体部10を備えるマスクについて記載したが、本発明では、マスク本体部が第1の繊維シート13に相当する不織布シートと、第2の繊維シート14に相当する不織布シートを少なくとも含む構成であればよく、マスク本体部として二層以上の構造を適宜採用することが可能である。なお、第1の繊維シート13に相当する不織布シートと、第2の繊維シート14に相当する不織布シートに別の繊維シートが付加される場合には、当該別の繊維シートの数や配設位置は必要に応じて適宜変更可能である。また、本発明では、第1の繊維シート13に相当する不織布シートと、第2の繊維シート14に相当する不織布シートとが積層状に配設される部位によって、マスク本体部の全部或いは一部を構成することが可能である。
【0047】
また、本発明では、第1の繊維シート13に相当する不織布シートと、第2の繊維シート14に相当する不織布シートは、所望のエレクトレット化処理を可能とするべくポリオレフィン系繊維を含む不織布シートであればよく、例えばポリオレフィン系繊維のみからなる不織布シートのみならず、ポリオレフィン系繊維に更に別の繊維が混合された不織布シートを適宜採用することが可能である。
【0048】
また、上記実施の形態においては、右側シート片10a及び左側シート片10bの熱溶着接合によってマスク本体部10が形成される場合について記載したが、本発明では熱溶着をはじめとする各種の接合方法によって少なくとも1つの複数のシート片の全部または一部を接合して、マスク本体部を形成することができる。
【0049】
また、上記実施の形態では、一回使用ないし数回使用を目安とした使い捨てタイプのマスクについて記載したが、マスク本体部や耳掛け部の素材を適宜選択することによって、洗濯などを行ったうえで繰り返し使用することが可能なタイプのマスクに対し本発明を適用することもできる。また、上記実施の形態では、マスク本体部が立体形状である場合について記載したが、マスク本体部平面形状とされるマスクに対し本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態のマスク1の斜視図である。
【図2】図1中のマスク本体部10の断面構造を示す図である。
【図3】本実施の形態の実施例1〜10及び比較例1〜3の各評価片の通気度及び捕集効率の各測定値を示す図である。
【図4】本実施の形態の実施例1〜10及び比較例1〜3の各評価片の通気度と捕集効率との相関グラフである。
【図5】第1の繊維シート13に相当する不織布シートの平均繊維径[μm]と捕集効率[%]及び通気度[cc/cm/sec]との関係を示すグラフである。
【図6】第1の繊維シート13に相当する不織布シートの目付[g/m]と捕集効率[%]及び通気度[cc/cm/sec]との関係を示すグラフである。
【図7】第2の繊維シート14に相当する不織布シートの平均繊維径[μm]と捕集効率[%]及び通気度[cc/cm/sec]との関係を示すグラフである。
【図8】第2の繊維シート14に相当する不織布シートの目付[g/m]と捕集効率[%]及び通気度[cc/cm/sec]との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1…マスク
10…マスク本体部
10a…右側シート片
10b…左側シート片
10c…接合縁
11…マスク外表面
12…マスク内表面
13…第1の繊維シート
14…第2の繊維シート
15…第3の繊維シート
20…耳掛け部
21…開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の少なくとも口及び鼻を覆うマスク本体部と、
前記マスク本体部の両側から延出して着用者の耳に引っ掛けられる一対の耳掛け部と、
を備えるマスクであって、
前記マスク本体部は、ポリオレフィン系繊維からなる不織布シートがエレクトレット化された第1の繊維シート及び第2の繊維シートを含むとともに、マスク着用時に前記第2の繊維シートの着用者側に前記第1の繊維シートが配設されるような積層状とされ、
前記第1の繊維シートは、平均繊維径が0.5〜3μm、目付が1.5〜5g/mの不織布シートとして構成され、前記第2の繊維シートは、平均繊維径及び目付がいずれも前記第1の繊維シートを上回る不織布シートとして構成されることを特徴とするマスク。
【請求項2】
請求項1に記載のマスクであって、
前記第2の繊維シートは、平均繊維径が15〜30μm、目付が18〜50g/mの不織布シートとして構成されることを特徴とするマスク。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマスクであって、
前記マスク本体部は、前記第1の繊維シートを挟んで前記第2の繊維シートと反対側に積層状に配設される第3の繊維シートを備え、前記第3の繊維シートは、平均繊維径が10〜50μm、目付が20〜40g/mとされた不織布シートして構成されることを特徴とするマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−273726(P2009−273726A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128869(P2008−128869)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】