説明

マスク

【課題】通気フィルタとしてのマスク本体と顔面との間に隙間が生じてしまうことを確実に防止することと、良好な装用感が得られることの両方の特徴を兼備したマスクを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明では、通気フィルタとしてのマスク本体2の周辺部に、形状維持性と可撓性を有する形状維持材によって形成された無端形状の形状維持体3が配置されると共に、形状維持体の顔面当接側には肌密着性を有するジェル層4が形成されており、更にマスク本体には、装用者の鼻に対応して、形状維持材によってマスク本体の外側方向に凸の湾曲形状に形成された湾曲維持体6が設けられており、湾曲維持体の形状維持作用は形状維持体の形状維持作用よりも大きく形成されているマスクが提案されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装用時に鼻と口を覆うことにより、塵埃やウィルス、花粉等の空気中の微細な異物の侵入を防いだり、患者等の口腔や鼻腔からの飛沫の拡散を防いだりするためのマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な衛生用マスクでは、装用時に、通気フィルタとしてのマスク本体と顔面との間に隙間が生じてしまうため、この隙間を通しての異物の侵入又は流出は防ぐことができない。このため、このような不具合を解決するための提案が従来からなされている。
【0003】
例えば特許文献1に記載のものでは、通気フィルタとしてのマスク本体の周辺部に、高粘弾性の粘着剤として、アクリル酸化合物やゼラチン等の水溶性高分子等の高含水性のジェルを設置して、これにより顔面への密着を図っている。
【0004】
しかしながらこのようなマスクにおいては、次のような問題点がある。
まず、高含水性のジェルの形状維持機能が低いため、顔面の運動や外力によるマスク本体の変形によって、マスク本体の一部が顔面から離れてしまい、そこに隙間が生じてしまうという問題点がある。
【0005】
また高含水性のジェルは、含有している水分が蒸発して乾燥しやすく、乾燥によって粘着性が低下して顔面から離れ易くなってしまうという問題点がある。このことから特許文献1のマスクは、水蒸気を通しにくいフィルムで形成された袋内に密封された状態で市販されるのが好ましいとされている。
【0006】
一方、他の従来技術として、特許文献2に記載のものでは、マスク本体の周辺部に独立気泡型または表面緻密層を有する連続気泡型の発泡部材と、この発泡部材の顔面に対する側の前面に設けられた接着性部材とから成る装着部を設置している。
【0007】
このマスクでは、装用時に、装着部の発泡部材が、その柔軟性により顔面の凹凸に合わせて変形することにより、マスク本体の周辺部に隙間を無くし、そして接着性部材が顔面に接着するというものである。接着性部材としては、ポリアクリル酸系接着性物質を発泡部材に塗布して形成した接着剤層、接着テープ又は発泡部材に接着性物質を含浸させたもの等が挙げられている。
【0008】
しかしながらこのようなマスクにおいては、次のような問題点がある。
即ち、このマスクにおいて、装着部を構成する発泡部材は、上述したように、その柔軟性により顔面の凹凸に合わせて変形させて、マスク本体の周辺部に隙間を無くすものであるから、形状維持機能は低く、それだけでは顔面の運動や外力によるマスク本体の変形によって、マスク本体の一部が顔面から離れてしまい、そこに隙間が生じてしまうことも起こり得るため、接着性部材が必須であり、必要な接着力も比較的大きい。このように比較的大きな接着力の接着剤が顔面に当接することは、肌に大きな違和感を感じさせて装用感が悪く、また女性が装用した場合には化粧崩れの原因ともなりかねない。
【0009】
またマスク本体を顔面の凹凸に合わせて変形させるにしても、鼻は両頬から大きく隆起しているので、その凹凸に合わせて変形するのは比較的困難であり、鼻と両頬で形成される凹部にどうしても隙間が生じ易い。そのため、例えば特許文献3に記載されているマスクでは、マスク本体の上端縁に、内側下方に折り曲げられる非通気性の弾性折曲片部を設けて、鼻と両頬との間に形成される隙間を塞ぐようにしている。
【0010】
しかしながら、弾性折曲片部では、上記隙間から眼鏡の方向への直接的な気流を防いで、眼鏡の曇り止めを図ることはできるが、隙間を完全に塞ぐことはできず、その隙間を通しての空気の流通を防ぐことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−128378号公報
【特許文献2】特開2005−13492公報
【特許文献3】特開2009−66382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように従来技術のマスクでは、通気フィルタとしてのマスク本体と顔面との間に隙間が生じてしまうことを確実に防止することと、良好な装用感が得られることの両方の特徴を兼備したものはなく、いずれかの側に問題点が生じてしまう。
【0013】
そこで本発明では、このような両方の特徴を兼備するマスクを提供することを第1の目的としている。
【0014】
また本発明では、上述したような従来の技術を始めとして、従来のマスクでは全く想定されていない、薬剤を利用しての細菌、ウィルス除去能力を高めることができるマスクを提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、上述した課題を解決するために、通気フィルタとしてのマスク本体の周辺部に、形状維持性と可撓性を有する形状維持材によって形成された無端形状の形状維持体が配置されると共に、形状維持体の顔面当接側には肌密着性を有するジェル層が形成されており、更にマスク本体には、装用者の鼻に対応して、形状維持材によってマスク本体の外側方向に凸の湾曲形状に形成された湾曲維持体が設けられており、湾曲維持体の形状維持作用は形状維持体の形状維持作用よりも大きく形成されているマスクを提案する。
【0016】
また本発明では、上記の構成において、湾曲維持体が帯状の形状維持材によって形成されているマスクを提案する。
【0017】
また本発明では、上記の構成において、湾曲維持体が棒状の形状維持材によって形成されているマスクを提案する。
【0018】
また本発明では、上記の構成において、湾曲維持体が、マスク本体の外面側に設けられているマスクを提案する。
【0019】
また本発明では、上記の構成において、湾曲維持体が、形状維持体とマスク本体間に設けられているマスクを提案する。
【0020】
また本発明では、上記の構成において、湾曲維持体が、形状維持体とジェル層間に設けられているマスクを提案する。
【0021】
また本発明では、上記の構成において、湾曲維持体が、ジェル層内に設けられているマスクを提案する。
【0022】
また本発明では、上記の構成において、形状維持体の鼻対応個所を他の個所よりも厚く形成することにより形状維持性を他の個所よりも大きくすると共に、その形状を湾曲形状として湾曲維持体として湾曲維持体として作用させるマスクを提案する。
【0023】
また本発明では、上記の構成において、形状維持体が、帯状形状維持材により形成されているマスクを提案する。
【0024】
また本発明では、上記の構成において、形状維持体が、帯状形状維持材と可撓材の積層構造として形成されているマスクを提案する。そして本発明では、この積層構造が、マスク本体側とジェル層側に配置した帯状形状維持材と、それらに挟まれた可撓材の三層構造であるマスクを提案する。
【0025】
また本発明では、上記の構成において、形状維持体を筒状体として形成し、その内部空間に水を充填可能とすると共に、上記ジェル層側に通水孔が形成されているマスクを提案する。
【0026】
また本発明では、上記の構成において、筒状体内に多孔質の保水材が充填されているマスクを提案する。
【0027】
また本発明では、上記の構成において、多孔質の保水材は、スポンジ、ゼオライトまたは活性炭から選択されたものであるマスクを提案する。
【0028】
また本発明では、上記の構成において、筒状体には、マスク本体側に通水孔が形成されているマスクを提案する。
【0029】
また本発明では、上記の構成において、形状維持材が、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂であるマスクを提案する。
【0030】
また本発明では、上記の構成において、可撓材が形状維持材よりも形状維持性が低く、可撓性が高い合成樹脂であるマスクを提案する。
【0031】
また本発明では、上記の構成において、形状維持材が、形状記憶合金、形状記憶樹脂、又は超弾性合金等の形状記憶素材であるマスクを提案する。
【0032】
また本発明では、上記の構成において、肌密着性を有するジェルが親水性ジェルであるマスクを提案する。
【0033】
また本発明では、上記の構成において、マスク本体が形状維持体に対して着脱可能に構成されているマスクを提案する。
【発明の効果】
【0034】
本発明のマスクでは、装用する人の鼻と口の周りに対応した無端形状の形状維持体がマスク本体の周辺部に配置されており、装用時には、この無端環状の形状維持体は、その形状維持性と可撓性により装用者の鼻と口の周りの形状にある程度対応した形状に維持され、この状態において、形状維持体の顔面当接側に形成された肌密着性を有するジェル層が顔面の肌に密着する。
【0035】
同時に、マスク本体には、装用者の鼻に対応して、形状維持材によってマスク本体の外側方向に凸の湾曲形状に形成された湾曲維持体が設けられており、湾曲維持体の形状維持作用は形状維持体の形状維持作用よりも大きく構成されていることから、形状維持体は装用者の鼻対応個所において湾曲維持体の湾曲形状により、鼻の凸形状に沿って曲げられる。即ち、形状維持体は、湾曲維持体の湾曲形状により、鼻の根元側まで凸形状に曲げられ、次いで自体の形状維持性と可撓性により、鼻と頬とによる凹形状に沿って曲げられる。
【0036】
こうして形状維持体は、装用者の鼻と口の周りの曲面形状に良好に対応し、この状態において形状維持体の顔面当接側に形成された肌密着性を有するジェル層が顔面の肌に密着し、隙間を生じない。
【0037】
こうして無端形状の形状維持体の内外への空気流通はジェル層によって確実に阻止されるため、鼻と口に対する空気流通はマスク本体を通してのみとなり、塵埃やウィルス、花粉等の空気中の微細な異物がマスク本体と顔面との隙間から侵入したり、飛沫が外部に拡散することを確実に防止することができる。
【0038】
顔面への密着は親水性ジェル等のジェル層を介して行われるので、接着剤のように違和感を生じることなく、装用感が良好であり、女性が装用して化粧崩れを起こすこともない。
【0039】
ここで湾曲維持体は、帯状又は棒状の形状維持材により形成することができ、また形状維持体は、帯状に形成した形状維持材自体により形成することもできるし、帯状形状維持材と可撓材の積層構造として形成することもできる。その場合、積層構造が、マスク本体側とジェル層側に配置した帯状形状維持材と、それらに挟まれた可撓材の三層構造である場合には、マスク本体とジェル層のいずれも夫々の形状維持体により、良好に形状維持が行われると共に、これらの両側の形状維持材によって可撓材を挟持していることによって、変形性も良く、従って形状維持体を、装用者の顔の形状に良く合わせた無端形状に変形して維持することができる。
【0040】
また形状維持体の鼻対応個所を湾曲形状に形成すると共に形状維持性を他の個所よりも大きくして湾曲維持体として作用させることもできる。
【0041】
湾曲維持体又は形状維持体の上述した機能を発揮するために、形状維持材としては、適度の形状維持性と可撓性を有するプラスチックを用いることができる他、形状記憶合金、形状記憶樹脂、又は超弾性合金等の形状記憶素材を用いることができる。
【0042】
次に本発明では、形状維持体を筒状体として構成して水を充填可能とし、この筒状体内に水を充填しておけば、充填されている水は毛細管現象により、通水孔を経てジェル層に供給されるので、ジェル層が乾燥して密着力が低下することを防止することができる。
【0043】
また筒状体には、マスク本体側にも通水孔を形成すれば、この通水孔からマスク本体に供給される水分は、使用者の鼻や口の周囲の空間の保湿力を高めるため、薬液と共に、ウィルスや細菌の繁殖を抑える効果がある。
【0044】
また筒状体には、水と共に殺菌剤、除菌剤、制菌剤等の薬剤を入れれば、薬剤は、水と共にジェル層やマスク本体に供給され、雑菌の繁殖を防止することができる。そして筒状体には、水や殺菌剤等を蓋付きの開口を介して補充可能とすることにより、繰り返しの使用が可能となる。
【0045】
また本発明のマスクでは、マスク本体を形状維持体に対して着脱可能に構成すれば、マスク本体を交換することにより、繰り返しの使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明のマスクの第1の実施の形態を装用状態において示す模式的正面図である。
【図2】図2は、図1の模式的縦断面図である。
【図3】図3は、図2のA−A線模式的断面図である。
【図4】図4は、本発明のマスクの第2の実施の形態を装用状態において示すもので、図3と同様な個所の模式的断面図である。
【図5】図5は、本発明のマスクの第3の実施の形態を装用状態において示すもので、図3と同様な個所の模式的断面図である。
【図6】図6は、本発明のマスクの第4の実施の形態を装用状態において示すもので、図3と同様な個所の模式的断面図である。
【図7】図7は、本発明のマスクの第5の実施の形態を装用状態において示すもので、図3と同様な個所の模式的断面図である。
【図8】図8は、本発明のマスクの第1〜第5の実施の形態において、図1のB−B線に対応する個所の模式的拡大断面図である。
【図9】図9は、本発明のマスクの第6の実施の形態において、図1のB−B線に対応する個所の模式的拡大断面図である。
【図10】図10は、本発明のマスクの第7の実施の形態において、図1のB−B線に対応する個所の模式的拡大断面図である。
【図11】図11は、本発明のマスクの第8の実施の形態において、図1のB−B線に対応する個所の模式的拡大断面図である。
【図12】図12は、形状維持体の無端形状の例を示す模式的斜視図である。
【図13】図13は、形状維持体の無端形状の他の例を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
次に本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
まず図1〜図3に示す第1の実施の形態において、符号1は本発明のマスクを概して示すもので、本発明のマスクは、通気フィルタとしてのマスク本体2の周辺部に、形状維持性と可撓性を有する形状維持材によって形成された無端形状の形状維持体3が配置されると共に、形状維持体3の顔面当接側には肌密着性を有するジェル層4が形成されており、更にマスク本体2には、装用者5の鼻に対応して、形状維持材によってマスク本体の外側方向に凸の湾曲形状に形成された湾曲維持体6が設けられており、この湾曲維持体6の形状維持作用は、形状維持体3の形状維持作用よりも大きく形成されている。
【0048】
ここで、通気フィルタとしてのマスク本体2としては、フィルター性能の高い不織布等の素材を用いることができる。また形状維持体3と湾曲維持体6を構成する形状維持材5としては、上述したとおり、適度の形状維持性と可撓性を有するプラスチックを用いることができる他、形状記憶合金、形状記憶樹脂、又は超弾性合金等の形状記憶素材を用いることができる。また肌密着性を有するジェルとしては親水性ジェルを用いることができる。
【0049】
図1〜図3に示す第1の実施の形態においては、湾曲維持体6は、形状維持材をマスク本体2の外側方向に凸に湾曲させた帯状片として形成されており、マスク本体2の外面側に設けられている。この湾曲維持体6は図示を省略しているが、棒状の部材として形成することもできる。湾曲維持体6の湾曲形状は、鼻の横断面形状に対応させた形状とするが、装用者毎に、それらの鼻の断面形状の大小に対応して良好に装着できるように、例えば大、中、小というような複数種類の湾曲形状を有する湾曲維持体6を設けたマスクとして提供することができる。また湾曲維持体6の湾曲形状は、両端部間の距離を、そこに対応する鼻の幅よりも僅かに短く形成して、マスクの装着時に湾曲維持体6の突端側を押圧して弾性的に鼻を挟持するようにすることもできる。
【0050】
以上の構成において、この実施の形態のマスク1では、装用者5はマスク本体2を鼻と口の周辺に宛がい、支持紐体7を耳に掛けて装用する。
【0051】
本発明のマスクでは、装用者5の鼻と口の周りに対応した無端形状の形状維持体3がマスク本体2の周辺部に配置されており、装用時には、この無端環状の形状維持体3は、その形状維持性と可撓性により装用者5の鼻と口の周りの形状にある程度対応した形状に維持され、この状態において、形状維持体3の顔面当接側に形成された肌密着性を有するジェル層4が顔面の肌に密着する。
【0052】
同時に、マスク本体2には、装用者5の鼻に対応して、マスク本体2の外面側に湾曲維持体6が設けられており、湾曲維持体6の形状維持作用は形状維持体3の形状維持作用よりも大きく構成されていることから、形状維持体3は装用者5の鼻対応個所において湾曲維持体6の湾曲形状により、鼻の凸形状に沿って曲げられる。即ち、形状維持体3は、湾曲維持体6の湾曲形状により、図3に示されるように、鼻の根元側まで凸形状に曲げられ、次いで自体の形状維持性と可撓性により、鼻と頬とによる凹形状に沿って曲げられる。
【0053】
こうして形状維持体3は、装用者5の鼻と口の周りの曲面形状に良好に対応し、この状態において形状維持体3の顔面当接側に形成された肌密着性を有するジェル層4が顔面の肌に密着し、隙間を生じない。
【0054】
こうして無端形状の形状維持体3の内外への空気流通はジェル層4によって確実に阻止されるため、鼻と口に対する空気流通はマスク本体2を通してのみとなり、塵埃やウィルス、花粉等の空気中の微細な異物がマスク本体2と顔面との隙間から侵入したり、飛沫が外部に拡散することを確実に防止することができる。
【0055】
顔面への密着は親水性ジェル等のジェル層4を介して行われるので、接着剤のように違和感を生じることなく、装用感が良好であり、女性が装用して化粧崩れを起こすこともない。
【0056】
尚、以上に説明した実施の形態では、マスク1は、マスク本体2に支持紐体7を設けているが、この他、専ら、ジェル層4の肌密着性によって顔面に支持する構成としても良い。
【0057】
ここで上述した実施の形態のマスク1では、装用者5の鼻の個所において凹凸に応じて形状維持体3を湾曲させるための湾曲維持体6は、マスク本体2の外面側に設けているが、以下に示すように他の個所に設けることもできる。
【0058】
まず図4に示す本発明のマスク1の第2の実施の形態では、湾曲維持体6は、形状維持体3とマスク本体2間に設けられている。また図5に示す本発明のマスク1の第3の実施の形態では、湾曲維持体6は、形状維持体3とジェル層4間に設けられている。また図6に示す本発明のマスク1の第4の実施の形態では、湾曲維持体6はジェル層4内に設けられている。更に図7に示す本発明のマスク1の第5の実施の形態では、形状維持体の鼻対応個所を他の個所よりも厚く形成することにより形状維持性を他の個所よりも大きくすると共に、その形状を湾曲形状として湾曲維持体6として作用させている。
【0059】
これらの実施の形態のいずれの構成においても、湾曲維持体6は図示されているように帯状片として形成する他、棒状体として形成することもできる。
【0060】
次に、図5は、本発明のマスク1の上述した第1〜第5の実施の形態において、図1のB−B線に対応する個所の模式的拡大断面図である。この図に示される形状維持体3は、上述したような形状維持材自体により帯状に形成したものであるが、その他、以下に示すように形成することができる。
【0061】
まず、図9は本発明の第6の実施の形態のマスクの要部を拡大して示すもので、この実施の形態では、形状維持体3を、帯状形状維持材8と可撓材9の積層構造として形成している。即ち、この積層構造は、マスク本体2側とジェル層4側の夫々に対応して配置した帯状形状維持材8,8により可撓材9を挟んだ構造であり、このような積層構造では、マスク本体2とジェル層4のいずれもが夫々の帯状形状維持材8,8により、良好に形状維持が行われると共に、これらの両側の帯状形状維持材8,8によって可撓材9を挟持していることによって、変形性も良く、従って形状維持体3を、装用者5の顔の形状に良く合わせた無端形状に変形して維持することができる。
この場合、可撓材9としては形状維持材よりも形状維持性が低く、可撓性が高い合成樹脂を用いることができる。
【0062】
次に、図10は本発明の第7の実施の形態のマスクの要部を拡大して示すもので、この実施の形態では、この実施の形態は、上述した各実施の形態における形状維持体3を筒状体として構成して、その内部空間8に水9を充填可能とした構成である。従って、上述の実施の形態と同様な構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0063】
即ち、この実施の形態のマスク1は、通気フィルタとしてのマスク本体2の周辺部に、形状維持機能を有する形状維持体3としての筒状形状維持材10が無端形状に配置されており、この筒状形状維持材10の顔面当接側には肌密着性を有するジェル層4が形成され、そして筒状形状維持材10は、その内部空間11に水を充填可能に構成されており、そしてジェル層4側に通水孔12が形成されている。またこの実施の形態では、形状維持体3のマスク本体2側にも通水孔13が形成されている。
【0064】
水を充填可能とするために、筒状形状維持材10には適所に液体注入口14が設けられており、図10に2点鎖線で示しているように注射器15等の道具を用いて、純粋な水又は薬液を溶解した水を注入可能に構成している。図示は省略しているが、液体注入口14には適宜の開閉蓋を設けたり、或いはバイアル瓶のゴム栓のように、注射針を穿刺した後も液体の漏出を防止することができるゴム栓を設けることができる。
【0065】
以上の構成において、この実施の形態のマスク1では、形状維持機能を有する形状維持体3としての筒状形状維持材10が、装用者5の鼻と口の周りに対応した無端形状の周壁として配置されるので、この無端環状の筒状形状維持材10の形状維持機能により、装用者5の鼻と口の周りの形状に、ある程度対応した状態において、筒状形状維持材14の顔面当接側に形成された肌密着性を有するジェル層4が装用者5の顔面の肌に密着して隙間をつくらず、上述した実施の形態と同様な数々の利点を有する。
【0066】
この実施の形態では、筒状形状維持材10の内部空間11に水を充填しておくと、充填されている水は毛細管現象により、通水孔12を経てジェル層4に供給されるので、ジェル層4が乾燥して密着力が低下することを防止することができる。
【0067】
また筒状形状維持材10の内部空間8には水と共に殺菌剤、除菌剤、制菌剤等の薬剤を入れておけば、薬剤は水と共にジェル層4に供給され、雑菌の繁殖を防止することができる。
【0068】
この実施の形態においては、筒状形状維持材10にマスク本体2側にも通水孔13が形成されているので、筒状形状維持材10の内部空間11に水と共に上述したような薬剤を入れておけば、薬剤は水と共にマスク本体2にも供給されるので、マスク本体2はウィルスや細菌等の高い除去能力を得ることができる。
【0069】
また筒状形状維持材10内からジェル層4又はマスク本体2に供給される水分は、鼻や口の周囲の空間の保湿力を高めるため、薬液と共に、ウィルスや細菌の繁殖を抑える効果がある。
【0070】
次に図11は本発明のマスクの第8の実施の形態の要部の拡大断面説明図であり、この第8の実施の形態は、第7の実施の形態における筒状形状維持材10内に多孔質の保水材16が充填されているものである。この多孔質の保水材16としては、例えばスポンジ、ゼオライトまたは活性炭等を使用することができる。また保水材16の形状も、図11に示されるようなビーズ状とする他、塊状、繊維状等適宜である。
【0071】
この第8の実施の形態では、水又は薬剤を含む水は多孔質の保水材16に保水されるため、無端形状の筒状形状維持材10の全体に渡って均一に保水することができ、マスク本体2やジェル層4の湿度が低下した場合には、それらに効率的に水が供給される。
【0072】
以上に説明した本発明の各実施の形態のマスクにおいて、形状維持体3(帯状形状維持材8,筒状形状維持材10)の無端形状は、例えば図12示すように装用者5の鼻と口の周囲の比較的狭い範囲を囲む形状とする他、図13に示すように鼻と口の周囲の広い範囲を囲む形状とする等、適宜に構成することができる。
【0073】
また、以上に説明した本発明のマスクにおいては、例えばマスク本体2に、無端環状の形状維持体3に対応して剥離紙を有する接着テープ部(図示省略)を設けて、形状維持体3に対して着脱可能とすれば、所定期間使用したマスク本体2を、接着テープ部を剥がすことにより形状維持体3から外して、新しいマスク本体2を接着テープ部により貼り付けて固定することができる。この場合、本発明のマスクは、マスク本体2を取り換えると共に、水や、薬剤を含んだ水を補充することによって繰り返しの使用が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 マスク
2 マスク本体
3 形状維持体
4 ジェル層
5 装用者
6 湾曲維持体
7 支持紐体
8 帯状形状維持材
9 可撓材
10 筒状形状維持材
11 内部空間
12,13 通水孔
14 液体注入口
15 注射器
16 保水材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気フィルタとしてのマスク本体の周辺部に、形状維持性と可撓性を有する形状維持材によって形成された無端形状の形状維持体が配置されると共に、形状維持体の顔面当接側には肌密着性を有するジェル層が形成されており、更にマスク本体には、装用者の鼻に対応して、形状維持材によってマスク本体の外側方向に凸の湾曲形状に形成された湾曲維持体が設けられており、湾曲維持体の形状維持作用は形状維持体の形状維持作用よりも大きく形成されていることを特徴とするマスク。
【請求項2】
湾曲維持体が帯状の形状維持材によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
湾曲維持体が棒状の形状維持材によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項4】
湾曲維持体が、マスク本体の外面側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項5】
湾曲維持体が、形状維持体とマスク本体間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項6】
湾曲維持体が、形状維持体とジェル層間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項7】
湾曲維持体が、ジェル層内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項8】
形状維持体の鼻対応個所を他の個所よりも厚く形成することにより形状維持性を他の個所よりも大きくすると共に、その形状を湾曲形状として湾曲維持体として湾曲維持体として作用させることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項9】
形状維持体が、帯状形状維持材により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項10】
形状維持体が、帯状形状維持材と可撓材の積層構造として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項11】
積層構造が、マスク本体側とジェル層側に配置した帯状形状維持材と、それらに挟まれた可撓材の三層構造であることを特徴とする請求項10に記載のマスク。
【請求項12】
形状維持体は、筒状体として形成し、その内部空間に水を充填可能とすると共に、上記ジェル層側に通水孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項13】
筒状体内に多孔質の保水材が充填されていることを特徴とする請求項12に記載のマスク。
【請求項14】
多孔質の保水材は、スポンジ、ゼオライトまたは活性炭から選択されたものであることを特徴とする請求項13に記載のマスク。
【請求項15】
筒状体には、マスク本体側に通水孔が形成されていることを特徴とする請求項12に記載のマスク。
【請求項16】
形状維持材が、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂である請求項1に記載のマスク。
【請求項17】
可撓材が形状維持材よりも形状維持性が低く、可撓性が高い合成樹脂である請求項10又は11に記載のマスク。
【請求項18】
形状維持材が、形状記憶合金、形状記憶樹脂、又は超弾性合金等の形状記憶素材であることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項19】
肌密着性を有するジェルが親水性ジェルであることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項20】
マスク本体が形状維持体に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−45661(P2011−45661A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198875(P2009−198875)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(301071022)
【出願人】(599002191)日建レンタコム株式会社 (7)
【Fターム(参考)】