マッサージ機、マッサージ力の設定方法及び学習制御システム
【課題】被施療者に与えるマッサージ力を決める学習制御を行う場合に、入力(マッサージ力)に対する出力(脳波信号)の関係が変化することがあっても、学習精度を高める。
【解決手段】被施療者に対してマッサージ動作を行うマッサージユニット5と、被施療者の脳波信号を取得する脳波取得装置9と、取得される脳波信号が目標値に近づくようにマッサージ力を決める学習制御を行う制御装置18とを備えている。制御装置18は、被施療者に与えたマッサージ力と当該被施療者から取得された脳波信号との関係に基づいて学習ゲインを設定する設定処理部21と、マッサージユニット5が行うマッサージ動作のマッサージ力を、設定された学習ゲインを用いて決める学習処理部22とを有している。
【解決手段】被施療者に対してマッサージ動作を行うマッサージユニット5と、被施療者の脳波信号を取得する脳波取得装置9と、取得される脳波信号が目標値に近づくようにマッサージ力を決める学習制御を行う制御装置18とを備えている。制御装置18は、被施療者に与えたマッサージ力と当該被施療者から取得された脳波信号との関係に基づいて学習ゲインを設定する設定処理部21と、マッサージユニット5が行うマッサージ動作のマッサージ力を、設定された学習ゲインを用いて決める学習処理部22とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被施療者に対してマッサージを行うマッサージ機、マッサージ機が被施療者に与えるマッサージ力を設定するマッサージ力の設定方法、及び、学習制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、背凭れ部内に昇降可能なマッサージユニットが設けられている椅子型のマッサージ機が知られている。マッサージユニットは、施療子及びこの施療子を駆動する駆動装置を有しており、駆動装置が施療子を駆動することによって、揉み、叩き、指圧等のマッサージが被施療者に対して行われる。
このようなマッサージ機において、被施療者の快・不快の生体反応が考慮されることにより、前記施療子が被施療者に与えるマッサージ力(例えば指圧力)の強弱を変更する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のマッサージ機では、被施療者に対して施療子が所定の大きさのマッサージ力でマッサージ動作を行うと共に、生体情報取得手段は、この被施療者の脳波信号を取得する。そして、このマッサージ機が備えている制御装置は、取得された脳波信号に基づいて、次回のマッサージ動作のためのマッサージ力を決めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−215671号公報(図8参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のマッサージ機では、図11に示しているように、被施療者(制御対象)に対して施療子が所定の大きさのマッサージ力(uk)でマッサージ動作を行うと、その生体反応として被施療者から脳波信号(yk)が取得される。制御装置は、取得された脳波信号(yk)と脳波信号の目標値(yd)との差(ek)、及び、前記マッサージ力(uk)の値を用いて、次回のマッサージ動作のためのマッサージ力(uk+1)を求めている。
このように、マッサージ動作が行われ脳波信号が取得されると、マッサージ力の学習制御が実行され、目標値に近づくようにマッサージ力が設定されることから、マッサージ機は、快適となるマッサージを行うことが可能となる。
【0006】
ここで一般的に、コンピュータを用いた学習制御は、入力に対する出力の関係が不明ではあるが変化しないような制御対象に対して適用されている。このような制御対象に対して学習制御を行うことで、出力を収束させる制御が可能となる。
【0007】
しかし、マッサージ機の場合、制御対象が被施療者となることから、入力(マッサージ力)に対する出力(脳波信号)の関係は、時間が異なれば変化することがある。すなわち、同じ被施療者に対して、同じ入力(マッサージ力)を与えても、時間が異なれば、取得される出力(脳波信号)は多少異なることがある。なお、時間が異なる場合には、マッサージを行う日が異なる場合もあれば、例えば、前半と後半とに同じマッサージ動作を行うように設定されている一つのマッサージコースを実行している間で、当該マッサージコースの前半と後半とで時間が異なる場合もある。
このような、入力に対する出力の関係が変化する制御対象(例えば、被施療者)に対して、学習制御を適用した場合、好ましい学習結果が得られなかったり、好ましい学習結果を得ることができても、そのために要する学習回数が増えてしまったりすることが考えられる。
【0008】
そこで、本発明は、被施療者に与えるマッサージ力を決める学習制御を行う場合に、入力(マッサージ力)に対する出力(生体情報)の関係が変化することがあっても、学習精度を高めることが可能となるマッサージ機、マッサージ力の設定方法、及び、学習制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマッサージ機は、被施療者に対してマッサージ動作を行うマッサージ手段と、前記被施療者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、取得される生体情報が目標値に近づくように前記マッサージ手段が行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記マッサージ手段が被施療者に与えたマッサージ力と当該マッサージ力を受けた当該被施療者から取得された前記生体情報との関係に基づいて前記学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定する設定処理部と、前記マッサージ手段が行うマッサージ動作のマッサージ力を、設定された前記学習ゲインを用いて決める学習処理部とを有していることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、被施療者に与えるマッサージ力(入力)と、その結果、当該被施療者から取得される生体情報(出力)との関係が変化する場合であっても、マッサージ手段が被施療者に与えたマッサージ力と、当該マッサージ力を受けた被施療者から取得された生体情報との関係に基づいて、学習制御を行う際に用いられる学習ゲインが設定される。すなわち、制御対象の変化に適応して学習ゲインが設定される。そして、この学習ゲインが用いられて、マッサージ手段が行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御が行われるため、学習精度を高めることが可能となり、好ましいマッサージ力を決めることが可能となる。
【0011】
また、前記設定処理部は、所定の大きさのマッサージ力を受けて所定の生体情報を出力する被施療者の生体反応と等価となる入出力演算モデルを、マッサージ力と生体情報との前記関係として、推定し、当該入出力演算モデルに基づいて前記学習ゲインを設定するのが好ましい。
この場合、被施療者の生体反応と等価となる入出力演算モデルを推定し、この入出力演算モデルに基づいて学習ゲインを設定することから、被施療者の生体反応の変化、つまり、制御対象の変化に適応させた学習ゲインが得られ、この学習ゲインを学習制御に用いることで学習精度を高めることが可能となる。
【0012】
また、前記設定処理部は、マッサージ動作中に被施療者に与えたマッサージ力及び当該被施療者から出力された生体情報に基づいて、マッサージ動作中の時間の関数を含む前記入出力演算モデルを求め、当該入出力演算モデルに基づいてマッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインを設定するのが好ましい。
この場合、被施療者に与えるマッサージ力と、その結果、当該被施療者から取得される生体情報との関係が、マッサージ動作中に変化する場合であっても、当該マッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインが設定され、当該学習ゲインが用いられて学習制御が行われることで、学習精度を高めることが可能となる。
【0013】
また、前記設定処理部は、一次遅れ系で表現された前記入出力演算モデルを推定するのが好ましい。
この場合、前記設定処理部は、被施療者の生体反応を、一次遅れ系で表現された入出力演算モデルとして処理することになる。このため、例えば二次遅れ系のような複雑な処理ではなく、比較的簡単な一次遅れ系で表現された入出力演算モデルを設定処理部が扱うことで、処理時間の短縮化が図れる。
また、設定処理部において、一次遅れ系で表現される入出力演算モデルが用いられる場合、被施療者の生体反応(被施療者における入出力の関係)は、当該一次遅れ系で表現された入出力演算モデルと厳密には一致しないが、前記のとおり、マッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインが設定される場合、この不一致を低減することが可能となる。
【0014】
また、前記制御装置は、前記生体情報取得部が取得した生体情報の値と前記目標値との誤差の収束を早期に実現させる条件式を記憶している記憶部を備え、前記設定処理部は、前記条件式に基づいて前記学習ゲインを設定する請求項1から4のいずれか一項に記載のマッサージ機。
この場合、前記条件式に基づいて設定された学習ゲインを用いて学習制御を行うことで、被施療者から出力される生体情報を目標値に早期に収束させるようなマッサージ力を決めることが可能となる。
【0015】
また、本発明は、被施療者から取得される生体情報が目標値に近づくように、前記被施療者に対して行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御を実行する、コンピュータによるマッサージ力の設定方法であって、被施療者に与えたマッサージ力と当該マッサージ力を受けた当該被施療者から取得された前記生体情報との関係に基づいて前記学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定し、前記マッサージ動作のマッサージ力を、設定された前記学習ゲインを用いて決めることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、被施療者に与えるマッサージ力と、その結果、当該被施療者から取得される生体情報との関係が変化する場合であっても、被施療者に与えたマッサージ力と、当該マッサージ力を受けた被施療者から取得された生体情報との関係に基づいて、学習制御を行う際に用いられる学習ゲインが設定される。すなわち、制御対象の変化に適応して学習ゲインが設定される。そして、この学習ゲインが用いられて、マッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御が行われるため、学習精度を高めることが可能となり、好ましいマッサージ力を決めることが可能となる。
【0017】
また、本発明は、制御対象に対して入力を与えることで当該制御対象から取得される出力が、目標値に近づくように入力を決める学習制御を行う学習制御システムであって、前記制御対象に与えた入力と当該制御対象から取得された出力との関係に基づいて前記学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定する設定処理部と、後に制御対象に対して与える入力を、設定された前記学習ゲインを用いて決める学習処理部とを有していることを特徴とする。
本発明によれば、制御対象に与える入力と、その結果、当該制御対象から取得される出力との関係が変化する場合であっても、制御対象に与えた入力と当該制御対象から取得された出力との関係に基づいて、学習制御を行う際に用いられる学習ゲインが設定される。すなわち、制御対象の変化に適応して学習ゲインが設定される。そして、この学習ゲインが用いられて、後に制御対象に対して与える入力を決める学習制御が行われるため、学習精度を高めることが可能となり、好ましい入力を決めることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、制御対象の変化に適応して学習ゲインが設定され、この学習ゲインが用いられてマッサージ力を決める学習制御が行われるため、学習精度を高めることが可能となる。この結果、入力(マッサージ力)に対する出力(生体情報)の関係が変化することがあっても、好ましいマッサージ力を決めることが可能となり、また、好ましい学習結果を得るために要する学習回数を従来よりも減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のマッサージ機の実施の一形態を示している概略構成図である。
【図2】マッサージユニットの正面斜視図である。
【図3】マッサージ機の概略構成を示しているブロック図である。
【図4】学習制御のブロック図である。
【図5】学習制御のシミュレーション結果を説明する説明図である。
【図6】設定された学習ゲインの値を示したグラフである
【図7】従来の学習制御のシミュレーション結果を説明する説明図である。
【図8】制御対象のゲインが時間的に変化している様子を示している説明図である。
【図9】学習制御のシミュレーション結果を説明する説明図である。
【図10】従来の学習制御のシミュレーション結果を説明する説明図である。
【図11】従来の学習制御のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔1. マッサージ機の全体構成〕
図1は、本発明のマッサージ機の実施の一形態を示している概略構成図である。このマッサージ機は椅子型であり、床面に置くフレーム4と、フレーム4上に設けられ被施療者が着座する座部1と、フレーム4の後側に設けられた背凭れ部2と、フレーム4の前側に設けられた脚載せ部3とを備えている。
【0021】
背凭れ部2内には、マッサージ手段として、施療子6を備えたマッサージユニット5が設けられており、このマッサージユニット5は背凭れ部2の内部を上下移動することができる。マッサージユニット5は、施療子6を動作させることで被施療者に対してマッサージ動作を行うことができる構成であり、当該施療子6から被施療部に所定の大きさを有するマッサージ力を与えることができる。
【0022】
図2は、マッサージユニット5の正面斜視図である。マッサージユニット5の本体フレーム8に可動ユニット7が前後移動可能に取り付けられている。可動ユニット7は、ローラからなる施療子6と、この施療子6に揉み、叩き、指圧などのマッサージ動作をさせるために当該施療子6を駆動する駆動装置15とを有している。駆動装置15は、施療子6に揉みや叩きの動作をさせる揉み叩き駆動部15bの他に、施療子6を含む可動ユニット7を前後方向に移動させる押し出し駆動部15aを有している。本実施形態の押し出し駆動部15aは、モータの回転によって可動ユニット7を前後に移動させるラックピニオン式であるが、他の形式であってもよい。
【0023】
押し出し駆動部15aが可動ユニット7を前後移動させることで、施療子6が前後移動して被施療者に対して指圧動作を行うことができる。施療子6を前側寄り(被施療部に近づく側)に大きく移動させることで、当該施療子6によって大きなマッサージ力を有したマッサージ動作を被施療部に与えることができ、強いマッサージが生じる。また、施療子6を後側寄り(被施療部から離れる側)に移動させることで、当該施療子6によって小さなマッサージ力を有したマッサージ動作を与えることができ、弱いマッサージが生じる。さらに、揉み叩き駆動部15bによって揉みや叩きのマッサージを行う場合であっても、押し出し駆動部15aによって、施療子6の前後方向の位置を調整することができる。
【0024】
また、図1において、本発明のマッサージ機は、座部1に着座した被施療者の生体情報として脳波信号を取得する脳波取得装置(生体情報取得手段)9を備えており、また、脳波取得装置9が取得した脳波信号を受けて処理する制御装置18を備えている。なお、図1では、脳波取得装置9と制御装置18とを、マッサージ機本体外に示しているが、これらは、マッサージ機本体内に設けられている。
制御装置18は、後にも説明するが、脳波取得装置9によって取得される脳波信号が、設定されている目標値に近づくように、マッサージユニット5が行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御を行う機能を有している。
【0025】
脳波取得装置9は、被施療者の脳波を測定する測定器9aと、測定器9aが測定した脳波信号を処理する脳波処理部9bとを有している。測定器9aは、被施療者の脳から生じる電気活動を測定するための電極(陽極と陰極)を有しており、この電極は、例えば、比較的装着が容易である額(陽極)−耳(陰極)の二カ所を一組として取り付けられる。また、電極は、背凭れ部2のヘッドレスト部にリード線を介して設けられている。これにより、ヘッドレスト部に頭部を凭れかけた被施療者の脳波を測定することができる。
【0026】
脳波処理部9bは、図示しないが、アンプ、AD変換器及びコンピュータ部を有していて、測定器9aによって測定された脳波信号を処理する。例えば、脳波信号の内の、安静時(快適時)に発生すると言われているα波の信号と、不快時に発生すると言われているβ波の信号とのうちの少なくとも一つに関する信号が、脳波処理部9bから出力される。
脳波処理部9bは、測定部9aが測定した脳波信号についてFFT処理を用い、周波数毎のパワースペクトルを求め、それぞれの周波数帯(周波数帯の中央部)のパワースペクトルの総和によって、α波(8Hz以上13Hz以下の周波数帯)のレベル、β波(14Hz以上30Hz以下の周波数帯)のレベル、α波のレベルとβ波のレベルとの比(β/α)を求めることができる。
そして、脳波処理部9bによって求められた脳波信号の値は、制御装置18に入力され、制御装置18によって処理される。なお、脳波処理部9bの機能は、制御装置18が有していてもよい。また、制御装置18の処理で用いられる脳波信号は、α波のレベルとβ波のレベルとのうちの一方又は双方(例えばβ/α)とすることができる。
【0027】
〔2. 制御装置〕
図3はマッサージ機の概略構成を示しているブロック図である。
制御装置18は、CPU及び記憶部を有しているプログラマブルなコンピュータ(マイコン)からなり、所定の各機能を実行するプログラムが記憶部に格納されている。
制御装置18は、RAMやROMからなる記憶部19の他に、前記プログラムが実行する機能部として、マッサージ制御部20、設定処理部21及び学習処理部22を備えている。各機能部については以下に説明する。
【0028】
〔2.1 マッサージ制御部〕
マッサージ制御部20は、マッサージユニット5(図2)の動作制御を行うことができ、例えば、押し出し駆動部15aに対して動作制御信号を出力することで当該押し出し駆動部15aを当該信号に応じて動作させ、施療子6(マッサージユニット5)の移動量及び施療子6(マッサージユニット5)の前後位置を制御することができる。
マッサージ制御部20から動作制御信号を受けた押し出し駆動部15aは、当該信号に基づいて動作し、施療子6によって、被施療部に対して所定の大きさを有するマッサージ力(接触力)を生じさせることができる。
【0029】
後に説明するが、施療子6によって被施療者に与えられるべきマッサージ力が決められると、マッサージ制御部20は、そのマッサージ力が被施療者に与えられるようにマッサージユニット5を制御する。つまり、マッサージ制御部20は、決められたマッサージ力に相当する押出量(施療子6の前後位置)を決定して、押し出し駆動部15aによって施療子6を当該押出量について前後方向に移動させる。なお、施療子6によって被施療者に与えられるべきマッサージ力は、後に説明する学習処理部22によって決められる。
【0030】
このようにして、マッサージ制御部20によって、施療子6の押出量が調整されることにより、当該施療子6によるマッサージ力を変化させることができる。
マッサージ力と押出量との関係は、例えば、記憶部19にデータベースとして記憶されている。マッサージ力が決まると、マッサージ制御部20は、このデータベースを参照することで対応する押出量を求め、この押出量に応じた動作制御信号を生成し、押し出し駆動部15aへと出力する。
【0031】
また、マッサージユニット5(施療子6)が適切なマッサージ動作をしたことによって被施療者から取得される脳波の目標値が、前記記憶部19に記憶されている。つまり、被施療者が快適であると感じている状態で発せられる脳波信号(制御装置18による処理で用いられる脳波信号)が予め目標値として設定されており、記憶部19にこの目標値が記憶されている。
【0032】
以上より、マッサージ制御部20及び押し出し駆動部15aが施療子6を所定の押出量について前後方向に移動させ、被施療者の背中に対して指圧によるマッサージ動作を行うことができる。以下に説明する実施形態では、この指圧によるマッサージ動作を「所定マッサージ動作」とし、施療子6が被施療者を押す力(指圧力)をマッサージ力とする。そして、所定マッサージ動作は、所定時間(例えば20秒から30秒)継続して行われ、この所定マッサージ動作が一つのマッサージステップとなる。また、この所定時間の間(所定マッサージ動作の間)には、施療子6によって1回又は複数回、指圧が行われる。
そして、この所定マッサージ動作が行われている間に、脳波取得装置9によって被施療者の脳波信号が測定される。
【0033】
〔2.2 学習処理部〕
学習処理部22は、前記マッサージ制御部20がマッサージユニット5を制御するために用いられる前記マッサージ力を決める機能を有している。学習処理部22は、施療子6が所定の大きさを有するマッサージ力で前記所定マッサージ動作をしたことで脳波取得装置9が取得した脳波信号の値と、予め設定してある前記目標値との差、及び、前記所定マッサージ動作をした際の前記マッサージ力を用いて、施療子6が次回に行う所定マッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御を行う。なお、前記所定マッサージ動作に複数回の指圧が含まれる場合、指圧の回毎のマッサージ力が決められる。
【0034】
学習処理部22は、所定マッサージ動作の回数及び脳波信号の取得の回数を重ねることによって、被施療者にとって好ましいマッサージを与えるための制御を行う。すなわち、学習処理部22は、取得される脳波信号の値が目標値へと収束するように学習制御を行う。このための学習制御を示したものが、図4のブロック図である。この学習制御は、D型学習制御を用いた繰り返し学習制御である。なお、この学習制御において、1回の所定マッサージ動作と、当該所定マッサージ動作の間に実行される脳波信号の取得とをまとめて、1試行と呼ぶ。
【0035】
図4において、施療子6による、k試行目(k回目)において、所定マッサージ動作中の時間tにおけるマッサージ力が被施療者(制御対象)への入力「uk(t)」であり、この所定マッサージ動作によって被施療者から取得された脳波信号の値が「yk(t)」である。そして、この次に実行される(k+1)試行目の所定マッサージ動作のマッサージ力、つまり(k+1)回目の制御入力「uk+1(t)」を、式(1)に表すことができる。
【数1】
【0036】
この演算式(1)は、記憶部19(図3参照)に記憶されており、学習処理部22はこの演算式を用いた処理を実行することで、次に行う所定マッサージ動作のマッサージ力「uk+1(t)」を決定することができる。なお、式(1)は、連続時間系で示したものであるが、学習処理部22によって実際に実行される学習制御では、サンプリング時間間隔をΔtとして、離散的に行われる演算式が用いられる。
【0037】
前記のとおり、所定マッサージ動作は所定時間継続して行われ、この間、サンプリング時間間隔Δt毎に、マッサージ力「uk(t)」及び脳波信号の値「yk(t)」が、記憶部19に記憶される。そして、サンプリング時間間隔Δt毎の次回のマッサージ力「uk+1(t)」が求められる。
【0038】
学習処理部22が前記式(1)によって求めた次回のマッサージ力「uk+1(t)」は、マッサージ制御部20へと与えられると共に、さらにその次の所定マッサージ動作のマッサージ力「uk+2(t)」を求めるために、記憶部19に記憶される。
マッサージ力「uk+1(t)」を取得したマッサージ制御部20は、当該マッサージ力に応じた動作制御信号を生成し、当該信号を押し出し駆動部15aへ与える。この処理は1試行毎に繰り返し実行される。
この学習制御によれば、所定マッサージ動作を重ねて行う毎に、所定マッサージ動作のマッサージ力が変化する。
そして、学習処理部22によって実行される学習制御で用いられる学習ゲインγ(図4参照)は、設定処理部21によって設定される。
【0039】
〔2.3 設定処理部〕
設定処理部21は、施療子6が被施療者に与えたマッサージ力「u」と、当該マッサージ力「u」を受けた被施療者から脳波取得装置9によって取得された脳波信号の値「y」との関係に基づいて、学習制御を行う際に用いられる学習ゲインγ(図4参照)を設定する機能を有している。
【0040】
本実施形態では、設定処理部21は、所定の大きさのマッサージ力を受けて所定の脳波信号を出力する被施療者の生体反応と等価となるモデルを、マッサージ力「u」と脳波信号の値「y」との前記関係として、推定するモデリング処理を行う機能を有している。なお、推定する前記モデルは、施療子6が被施療者に対して所定マッサージ動作を行った際のマッサージ力「u」が入力となり、当該マッサージ力「u」を受けた被施療者から脳波取得装置9によって取得された脳波信号の値「y」が出力となる入出力演算モデルである。この入出力演算モデルを微分方程式で表現したものが式(2)となる。
【0041】
【数2】
この式(2)は、時間領域で表現したものであり、a及びbは、微分方程式で表現した入出力演算モデルのパラメータである。なお、以下の式において、上に付されているドットは、時間微分を示している。
【0042】
本実施形態では、制御対象が一次遅れ系として表現された入出力演算モデルが用いられている。このため、前記入出力演算モデル(式(2))を伝達関数により表現したものが式(3)であり、この場合の入出力演算モデルのパラメータは、時定数Tと定常ゲイン(ゲイン定数)Kとなる。
【0043】
【数3】
【0044】
設定処理部21は、入出力演算モデルのパラメータを、所定マッサージ動作中に得られた入力「u」及び出力「y」に基づいて推定する。そして、設定処理部21は、推定した入出力演算モデルのパラメータに基づいて学習ゲインγを設定する。設定処理部21によって実行される入出力演算モデルのパラメータの推定(推定に用いる数式)及び学習ゲインγの設定(設定に用いる数式)については、後に説明する。
この入出力演算モデル(パラメータ)の推定処理及び学習ゲインγの設定処理は、所定マッサージ動作が行われる毎(1試行毎)に実行される。
そして、1試行毎に、設定処理部21によって設定された学習ゲインγが用いられて、施療子6によって後に行なわれるマッサージ動作のマッサージ力「uk+1」が、前記学習処理部22によって決められる。
【0045】
〔2.3.1 入出力演算モデルのパラメータに基づく学習ゲインの決定処理〕
学習処理部22によって実行される学習制御のブロック図(図4)において、本実施形態では、制御対象を一次遅れ系としているため、前記式(2)で示した微分方程式の一般解は、式(4)となる。そこで、k試行目の制御入力「uk(t)」を与えた場合の出力「yk(t)」は、式(5)となり、(k+1)試行目の制御入力「uk+1(t)」は、前記式(1)である。なお、τは時間である。
【数4】
【数5】
【0046】
本実施形態の学習制御では、試行毎の初期条件は同一なるように設定されている。つまり、yk(0)=yd(0)(ただし、k=1,2・・・)。
このとき、目標値「yd(t)」と、被施療者から取得された脳波信号の値「yk(t)」との誤差「ek」の時間微分を支配する逐次式を求めるために、前記式(5)によって、以下の式(6)が導かれる。なお、τは時間である。
【数6】
【0047】
これにより、誤差「ek」の時間微分は、式(7)となる。
【数7】
【0048】
ここで、式(8)の関数ノルムを設定する。ただし、λは任意の正の定数である。
【数8】
【0049】
式(7)の両辺に「e-λt」を掛けて最大値を求めると、式(9)となる。
【数9】
【0050】
式(9)内の一部を「ρ」と定義すると(式(10)参照)、式(9)は、式(11)となる。この式(11)によれば、k試行目の誤差「ek」の微分値の関数ノルムと、その一つ前である(k−1)試行目の誤差「ek-1」の微分値の関数ノルムとの比が、「ρ」になると言える。したがって、この式(11)を逐次的に考えると、初期誤差「e0」の微分値による式(12)が得られる。
【数10】
【数11】
【数12】
【0051】
式(12)の「k」は試行回数を表している。この式(12)において、試行を繰り返す度に誤差「e」を(指数関数的に)収束させるための条件は、「ρ」が1未満であり、その条件式が式(13)である。
【数13】
【0052】
ここで、a>0であり、λ>0であることから、λの値を十分に大きく設定すれば(λ→無限大)、式(14)が得られる。この式(14)は、学習制御を収束させるために、学習ゲインγを選ぶことができる範囲を意味している。
【数14】
【0053】
式(3)の伝達関数のパラメータ(時定数Tと定常ゲインK)と、時間領域で示したパラメータa,bとの関係は、式(15)であるため、式(14)の第2式より、式(16)が得られる。この式(16)は、学習制御を収束させるための条件を意味しているから、式(16)は、学習制御を収束させるためのパラメータ(時定数T及び定常ゲインK)と学習ゲインγとの関係式である。つまり、この式(16)は、誤差「e」を収束させる条件式となる。
【数15】
【数16】
【0054】
学習制御の繰り返し回数を少なくして、目標値との誤差「e」を小さくするためには、前記式(13)のρを0に近づければよい。すなわち、学習ゲインγの値を式(16)の範囲内で最大にすればよい。このため、学習ゲインγの値は、式(17)によって決められる。
【数17】
【0055】
式(17)は、収束を早期に実現させる条件式となる。この条件式(17)は、記憶部19に記憶されており、設定処理部21はこの条件式を用いた処理を実行することで、学習ゲインγを求めることができ、設定処理部21は、この学習ゲインγを学習制御に用いる値に設定する。
【0056】
以上より、学習制御の繰り返し回数を少なくするための学習ゲインγは、前記パラメータである時定数Tと定常ゲインKとを求め、これらの値によって学習ゲインγを設定すればよい。
そして、このように学習ゲインγを設定するために、入出力演算モデルのパラメータ(時定数Tと定常ゲインK)が必要である。そこで、このパラメータ(時定数Tと定常ゲインK)を求める処理が必要となる。
【0057】
〔2.3.2 パラメータの推定処理〕
パラメータである時定数Tと定常ゲインKとを求める処理について説明する。
パラメータ(時定数Tと定常ゲインK)は、制御対象への入力「u」及び出力「y」に基づいて求めることが可能である。入力「u」は、記憶部19に記憶されている値であり、出力「y」は、脳波取得装置9によって取得された情報である。
【0058】
パラメータの推定には、様々な手段を採用することが可能であるが、本実施形態では、最小二乗法を用いた処理により実行する。つまり、時間領域で表した前記式(2)の入力「u」及び出力「y」のためのパラメータa,bは、式(18)によって表すことができる。なお、式(18)中の「N」は、所定マッサージ動作の1試行中における入出力のデータ数である。つまり、サンプリング時間間隔Δt毎に得られたデータの数である。
この演算式(18)は、記憶部19に記憶されており、設定処理部21はこの演算式を用いた処理を実行することで、パラメータa,bを求めることができる。
【数18】
【0059】
時間領域におけるパラメータa,bが求まると、前記式(15)によって、時定数Tと定常ゲインKとを求めることができる。この演算式(15)は、記憶部19に記憶されており、設定処理部21がこの演算式を用いた処理を実行することで、時定数Tと定常ゲインKとを求めることができる。そして、求められた時定数Tと定常ゲインKとにより、設定処理部21は、式(17)によって、学習ゲインγを求めることができる。
【0060】
なお、式(18)によれば、既に行った試行の入力「u」及び出力「y」を用いて、当該試行を行った際の被施療者の生体反応、つまり、当該試行を行った際の入出力演算モデルを推定することができる。そして、設定処理部21によって、推定した入出力演算モデルに合わせた学習ゲインγが設定され、学習処理部22によって、後に行う試行での出力(マッサージ力)が決められる。そして、この出力(マッサージ力)によって、次の所定マッサージ動作が実行される。
【0061】
以上の本実施形態によれば、所定マッサージ動作中における、施療子6が被施療者に対してマッサージ動作を行った際のマッサージ力(入力「u」)、及び、当該マッサージ力を受けた被施療者から脳波取得装置9によって取得された脳波信号の値(出力「y」)に基づいて、設定処理部21は、被施療者に対するマッサージ力と当該被施療者から得られた脳波信号の値との関係として、入出力演算モデルのパラメータ(時定数T及び定常ゲインK)を、前記式(15)及び式(18)によって、推定することができる。そして、設定処理部21は、推定された入出力演算モデルのパラメータ(時定数T及び定常ゲインK)に基づいて、式(17)により学習ゲインγを設定することができる。
【0062】
このため、被施療者に対するマッサージ力と当該被施療者から得られた脳波信号の値との関係、つまり、被施療者(制御対象)の生体反応が、時間が異なることによって変化する場合であっても、当該変化に追従するようにして学習ゲインγを調整することが可能である。
また、学習ゲインγを設定するための式(17)は、前記誤差「e」の収束を早期に実現させる条件式であり、この式(17)を用いて、学習ゲインγを決定していることから、当該学習ゲインγを用いて学習制御を実行することで、学習回数を最小化することが可能となる。
そして、1試行毎に、設定処理部21によって設定された学習ゲインγが用いられて、施療子6によって後に行なわれるマッサージ動作のマッサージ力が、前記学習処理部22によって決められる。
【0063】
〔3. 学習制御のシミュレーション結果について〕
以上のように構成した本実施形態の制御装置18によって実行される学習制御に関して、コンピュータによるシミュレーションを行った結果を説明する。このシミュレーションでは、試行数(学習制御の繰り返し数)は20(k=20)であり、1から10試行目までは、時定数Tが10(秒)であるが、11から20試行目までは時定数Tが2(秒)に変化されている。なお、定常ゲインKはすべて1のままである。つまり、複数回行う試行の途中で、制御対象のパラメータのうち時定数Tが変化した場合のシミュレーションである。また、シミュレーション時間(所定マッサージ動作の時間)は20(秒)であり、サンプリング時間間隔Δtを0.01(秒)としている。
【0064】
図5は、目標値(破線)の他に、試行回数(学習回数)が1,5,13,17及び19回それぞれの場合に取得された出力「y」を示した、本実施形態によるグラフである。図6は、本実施形態の制御装置18によって、試行毎に変更された学習ゲインγの値を示したグラフである(ただし、試行回数は15回まで)。図6に示しているように、試行毎に学習ゲインγは変化している。
なお、図7は、比較のために、従来の学習制御(図11参照)を行った場合のシミュレーション結果のグラフである。つまり、学習ゲインγは一定値(5)のままである。
【0065】
図7の従来例の結果では、学習回数10回を超えるまでは、目標値に収束するように学習が実行されているが、パラメータ(時定数2)が変更された11試行目以降では、収束させる学習制御ができなくなっている。
これに対し、図5の本実施形態の結果では、試行毎に入出力演算モデルのパラメータを推定し、このパラメータを用い、かつ、収束するための条件式及び収束を早期に実現させるための条件式に基づいて、学習ゲインγを設定しているので、従来例よりも応答性が良く、さらに、制御対象のパラメータが変更されてから後であっても、収束させる学習制御が可能となっている。
つまり、本実施形態の学習制御では、制御対象の挙動を監視し、制御対象の変化に合わせた学習ゲインを調整し決定している。このため、制御対象の変化に対して適応的な学習制御が実行されている。
【0066】
〔4. 時変制御対象に対する学習制御〕
前記実施形態の学習制御は、試行毎に制御対象の特性(パラメータ)が変化する場合における適応型繰り返し学習制御であり、試行中に制御対象の特性は変化していない。
そこで、前記制御装置18が実行する学習制御の第二の実施形態として、試行中にも時間によって制御対象の特性が変化する場合に対応させる学習制御を説明する。
【0067】
1試行中に制御対象の特性が時間的な変化を有する場合、前記実施形態の学習制御のみでは、所定のレベルに収束するまでの学習回数が最小とならないおそれがある。そこで、第二の実施形態では、設定処理部21は、時間的に変化する制御対象のパラメータを推定する機能を有している。この第二の実施形態の場合であっても、制御装置18の構成は前記実施形態と同じであるが、設定処理部21が実行するプログラム(記憶部19に記憶されているプログラム)が少し異なっている。
【0068】
すなわち、第二の実施形態においても、記憶部19には、前記式(15)、式(17)、及び式(18)が記憶されており、設定処理部21がこれら式を用いて演算処理を実行することで、パラメータa,bを求め、時定数T及び定常ゲインKを推定する。
そして、この第二の実施形態では、設定処理部21は、推定した前記時定数Tを用い、式(19)によって定常ゲイン(ゲイン定数)Kを、時間的に変化するパラメータとして求める。
【数19】
【0069】
式(19)における「u(t)」は、k試行目において、所定マッサージ動作での時間tにおけるマッサージ力であって、被施療者への入力であり、この所定マッサージ動作によって被施療者から取得された脳波信号の値が「y(t)」である。また、「y(t−1)」は、(k−1)試行目で(つまり、前回に)取得された脳波信号の値である。この演算式(19)は、記憶部19に記憶されており、設定処理部21がこの演算式を用いた処理を実行することで、時間的変化する定常ゲインK(t)を求めることができる。
【0070】
そして、設定処理部21は、推定された前記時定数T、及び、求められた定常ゲインK(t)を用いて、前記式(17)によって学習ゲインγ(t)を求める。つまり、学習ゲインも時間の関数となる。
このように、設定処理部21は、推定した入出力演算モデルの時定数T、マッサージ動作中に被施療者に与えたマッサージ力(入力)「u(t)」及び当該被施療者から出力された脳波信号「y(t)」に基づいて、入出力演算モデルの定常ゲインK(t)を、マッサージ動作中の時間の関数を含むパラメータとして求める。そして、パラメータ(時定数T、定常ゲインK(t))に基づいて、マッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインγ(t)を設定する。
【0071】
そして、1試行毎に、設定処理部21によって設定された学習ゲインγ(t)が用いられて、施療子6によって後に行なわれるマッサージ動作のマッサージ力が、前記学習処理部22によって決められる。
【0072】
なお、式(19)は、以下の式によって得られる。
前記式(2)を離散的な式で表現すると、式(20)となる。そして、この式(20)は、前記式(15)により式(21)となる。この式(21)をKについて解くと、式(19)が得られる。
【数20】
【数21】
【0073】
〔5. 学習制御のシミュレーション結果について〕
以上のように構成した第二の実施形態の制御装置18によって実行される学習制御に関して、コンピュータによるシミュレーションを行った結果を説明する。このシミュレーションでは、試行毎に行う学習制御の繰り返し試行数は15(k=15)である。また、シミュレーション時間(所定マッサージ動作の時間)は30(秒)である。
そして、試行毎に、図8に示しているように、制御対象の定常ゲインKが時間的に変化している。
【0074】
図9は、目標値(破線)の他に、学習回数が1,2,5,10及び15回それぞれの場合に取得される出力を示した本実施形態によるグラフである。また、図10は、比較のために、従来の学習制御(図11参照)を行った場合のシミュレーション結果のグラフである。
図10の従来例の場合、学習回数が進んでも、一向に目標値に収束していない。これに対して、図9の本実施形態の場合、定常ゲインKが時間的に変化しているにも関わらず、学習回数が進むにつれて、目標値に収束している。
【0075】
このように第二の実施形態の場合、入力となる所定マッサージ動作のマッサージ力と、その結果、出力として取得される脳波信号との関係が、マッサージ動作中に変化するような場合であっても、つまり、制御対象の特性(パラメータ)が途中で変化するような場合であっても、所定マッサージ動作中の時間の関数を含むパラメータ(定常ゲインK(t))が推定され、このパラメータによって、所定マッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインγ(t)が設定される。そして、この設定された学習ゲインγ(t)が用いられて学習制御が行われることで、学習精度を高めることが可能となる。つまり、所望の脳波信号を取得することができる好適なマッサージ力を求めることができる。
【0076】
特に、制御対象として一次遅れ系の入出力演算モデルが用いられているが、被施療者の生体反応は、当該一次遅れ系の入出力演算モデルと厳密には一致しない。しかし、マッサージ動作中の時間の関数を含むパラメータ(定常ゲインK(t))が用いられることで、目標値と出力との差を縮小すること可能となる。この結果、定常ゲインK(t)によって、マッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインγ(t)が設定されることにより、前記のような不一致を低減することが可能となる。
しかも、制御装置18は、一次遅れ系の入出力演算モデル(演算式)によって演算処理することができ、パラメータの数は、例えば二次遅れ系の場合に比べて少なくて済み、処理時間の短縮化が図れる。
【0077】
〔6. 各実施形態について〕
図1に示したマッサージ機の場合、制御対象が被施療者であることから、マッサージ機を使用する時間が異なることで被施療者の体調も変化し、この変化が影響して、被施療者に与えられるマッサージ動作のマッサージ力と、その結果、出力として取得される脳波信号の値との関係が変化する。
このように時間が異なることで制御対象が変化しても、前記各実施形態によれば、施療子6が被施療者に与えたマッサージ力と、当該マッサージ力を受けた被施療者から取得された脳波信号の値との関係に基づいて、学習制御を行う際に用いられる学習ゲインγが調整される。すなわち、制御対象の変化に適応的に学習ゲインγが設定される。
そして、この学習ゲインγが用いられて、施療子6が後に行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御が行われるため、好ましい学習結果を得ることが可能となり、また、好ましい学習結果を得るために要する学習回数を減らすことが可能となる。
【0078】
また、既に説明したように、前記各実施形態では、記憶部19に、脳波信号の目標値と、脳波取得部9が取得した脳波信号の値(実測値)との誤差の収束を早期に実現させる条件式(17)が記憶されており、設定処理部21は、この条件式(17)に基づいて学習ゲインγを設定することができる。したがって、この学習ゲインγを用いて学習処理部22が学習制御を行うことで、被施療者から出力される脳波信号の値を目標値に早期に収束させるような、マッサージ力を決めることが可能となる。
【0079】
また、マッサージ機には、所定の順でマッサージが自動的に実行されるマッサージプログラムが記憶されている。このマッサージプログラムは、複数のマッサージステップを有しており、これらマッサージステップは順に実行される。そして、一つのマッサージコースで、同じマッサージステップが複数回実行されることがある。
ここで、前記マッサージステップを前記所定マッサージ動作に置き換えて説明すると、一つのマッサージコースで、同じ所定マッサージ動作が複数回実行されることがある。この場合、一つのマッサージコース内において、所定マッサージ動作毎に、マッサージ力が前記制御手段18によって学習制御され、所定マッサージ動作毎に好適なマッサージ力を被施療者に与えることができる。
そして、この所定マッサージ動作に関して学習して得たマッサージ力及び学習ゲインγの値は、マッサージ機の記憶部19に、被施療者と対応付けて記憶されている。
【0080】
このため、同じ被施療者が、異なる日に、前記所定マッサージ動作と同じマッサージステップを含むマッサージコースを、マッサージ機によって受ける場合、記憶部19に記憶されている前記マッサージ力及び前記学習ゲインγが用いられる。このため、マッサージステップ(所定マッサージ動作)において、再び好適なマッサージ力が被施療者に与えられる。このように、マッサージ機によって被施療者がマッサージを受ける日が異なっていても、その都度、好ましいマッサージ力による所定マッサージ動作を受けることができ、また、使い続けることによって、好ましいマッサージ力が更新されていく。
【0081】
また、マッサージ機を用いる日が異なると、被施療者の健康状態も異なる場合があることから、被施療者の生体反応も変化する。しかし、本実施形態では、被施療者の生体反応が変化したとしても、つまり、制御対象が変化したとしても、設定処理部21は、その制御対象と等価な入出力演算モデル(パラメータ)を推定し、これに基づいて学習ゲインγを決めているので、学習処理部22は、変化した制御対象に適応した学習ゲインγを用いることができる。そして、この学習ゲインγが用いられて学習制御が実行されるので、被施療者の生体反応が日によって変化していても、学習制御部22は、その生体反応に応じた好ましいマッサージ力を決めることが可能となり、快適なマッサージを被施療者に与え続けることが可能となる。
【0082】
本発明のマッサージ機は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、図1において、脚載せ部3が省略されたマッサージ機であってもよい。また、マッサージユニット5も図示した以外の構成であってもよい。
今回開示した実施形態は、本発明の例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等な意味、及び、範囲内での全ての変更が含まれる。
【0083】
前記実施形態では、制御対象が被施療者(人)であり、入力がこの被施療者に与えるマッサージ力であり、出力がこの被施療者から取得される脳波信号であり、マッサージ機の制御装置18が、前記の学習制御を行う学習制御システムとして機能する場合として説明した。
しかし、前記の制御装置の機能を、他の技術分野の制御における学習制御システムとして適用することができる。
【0084】
例えば、サーボ系の電動機によって駆動する多関節ロボットや工作機械に、学習制御システムを適用することができる。この場合、制御対象が前記電動機であり、入力が電圧又は電流であり、出力が電動機の回転についての情報(以下、回転情報)である。回転についての情報としては、回転位置、回転速度又は回転トルクがある。
そして、電動機に対して電圧又は電流を入力として与えることで当該電動機から取得される回転情報が、目標値に近づくように電圧又は電流を決める学習制御が、学習制御システムによって実行される。この場合、前記実施形態(マッサージ機)に関して説明した、マッサージ力を電圧又は電流と読み替え、脳波信号を回転情報と読み替えればよい。
【0085】
前記のようなサーボ系の電動機によって駆動する機械装置の場合、電動機の回転速度及び回転トルクを電圧又は電流に基づいて制御することができる他、制御においてサーボ系を介していることで、電動機の回転位置の制御を行うことができる。これにより、多関節ロボットや工作機械において、位置決め制御を行うことが可能となる。つまり、例えば把持部等のような機能部を先端部に有する多関節ロボットの場合、学習制御システムが、サーボ系の電動機を制御することで、前記機能部の位置、速度、トルク(力)を制御することが可能となる。
【0086】
また、本発明の学習制御システムは、マッサージ機や、サーボ系の電動機を有する多関節ロボットや工作機械以外に適用することができ、学習制御システムは、制御対象に対して入力を与えることで当該制御対象から取得される出力が、目標値に近づくように入力を決める学習制御をコンピュータにより行うものである。そして、この学習制御システムは、制御対象に与えた入力と当該制御対象から取得された出力との関係に基づいて学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定する設定処理部と、後に制御対象に対して与える入力を、設定された前記学習ゲインを用いて決める学習処理部とを有していればよい。
【符号の説明】
【0087】
5:マッサージユニット(マッサージ手段)、 6:施療子、 18:制御装置、 19:記憶部、 20:マッサージ制御部、 21:設定処理部、 22:学習処理部、 γ:学習ゲイン
【技術分野】
【0001】
本発明は、被施療者に対してマッサージを行うマッサージ機、マッサージ機が被施療者に与えるマッサージ力を設定するマッサージ力の設定方法、及び、学習制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、背凭れ部内に昇降可能なマッサージユニットが設けられている椅子型のマッサージ機が知られている。マッサージユニットは、施療子及びこの施療子を駆動する駆動装置を有しており、駆動装置が施療子を駆動することによって、揉み、叩き、指圧等のマッサージが被施療者に対して行われる。
このようなマッサージ機において、被施療者の快・不快の生体反応が考慮されることにより、前記施療子が被施療者に与えるマッサージ力(例えば指圧力)の強弱を変更する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のマッサージ機では、被施療者に対して施療子が所定の大きさのマッサージ力でマッサージ動作を行うと共に、生体情報取得手段は、この被施療者の脳波信号を取得する。そして、このマッサージ機が備えている制御装置は、取得された脳波信号に基づいて、次回のマッサージ動作のためのマッサージ力を決めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−215671号公報(図8参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のマッサージ機では、図11に示しているように、被施療者(制御対象)に対して施療子が所定の大きさのマッサージ力(uk)でマッサージ動作を行うと、その生体反応として被施療者から脳波信号(yk)が取得される。制御装置は、取得された脳波信号(yk)と脳波信号の目標値(yd)との差(ek)、及び、前記マッサージ力(uk)の値を用いて、次回のマッサージ動作のためのマッサージ力(uk+1)を求めている。
このように、マッサージ動作が行われ脳波信号が取得されると、マッサージ力の学習制御が実行され、目標値に近づくようにマッサージ力が設定されることから、マッサージ機は、快適となるマッサージを行うことが可能となる。
【0006】
ここで一般的に、コンピュータを用いた学習制御は、入力に対する出力の関係が不明ではあるが変化しないような制御対象に対して適用されている。このような制御対象に対して学習制御を行うことで、出力を収束させる制御が可能となる。
【0007】
しかし、マッサージ機の場合、制御対象が被施療者となることから、入力(マッサージ力)に対する出力(脳波信号)の関係は、時間が異なれば変化することがある。すなわち、同じ被施療者に対して、同じ入力(マッサージ力)を与えても、時間が異なれば、取得される出力(脳波信号)は多少異なることがある。なお、時間が異なる場合には、マッサージを行う日が異なる場合もあれば、例えば、前半と後半とに同じマッサージ動作を行うように設定されている一つのマッサージコースを実行している間で、当該マッサージコースの前半と後半とで時間が異なる場合もある。
このような、入力に対する出力の関係が変化する制御対象(例えば、被施療者)に対して、学習制御を適用した場合、好ましい学習結果が得られなかったり、好ましい学習結果を得ることができても、そのために要する学習回数が増えてしまったりすることが考えられる。
【0008】
そこで、本発明は、被施療者に与えるマッサージ力を決める学習制御を行う場合に、入力(マッサージ力)に対する出力(生体情報)の関係が変化することがあっても、学習精度を高めることが可能となるマッサージ機、マッサージ力の設定方法、及び、学習制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマッサージ機は、被施療者に対してマッサージ動作を行うマッサージ手段と、前記被施療者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、取得される生体情報が目標値に近づくように前記マッサージ手段が行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記マッサージ手段が被施療者に与えたマッサージ力と当該マッサージ力を受けた当該被施療者から取得された前記生体情報との関係に基づいて前記学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定する設定処理部と、前記マッサージ手段が行うマッサージ動作のマッサージ力を、設定された前記学習ゲインを用いて決める学習処理部とを有していることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、被施療者に与えるマッサージ力(入力)と、その結果、当該被施療者から取得される生体情報(出力)との関係が変化する場合であっても、マッサージ手段が被施療者に与えたマッサージ力と、当該マッサージ力を受けた被施療者から取得された生体情報との関係に基づいて、学習制御を行う際に用いられる学習ゲインが設定される。すなわち、制御対象の変化に適応して学習ゲインが設定される。そして、この学習ゲインが用いられて、マッサージ手段が行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御が行われるため、学習精度を高めることが可能となり、好ましいマッサージ力を決めることが可能となる。
【0011】
また、前記設定処理部は、所定の大きさのマッサージ力を受けて所定の生体情報を出力する被施療者の生体反応と等価となる入出力演算モデルを、マッサージ力と生体情報との前記関係として、推定し、当該入出力演算モデルに基づいて前記学習ゲインを設定するのが好ましい。
この場合、被施療者の生体反応と等価となる入出力演算モデルを推定し、この入出力演算モデルに基づいて学習ゲインを設定することから、被施療者の生体反応の変化、つまり、制御対象の変化に適応させた学習ゲインが得られ、この学習ゲインを学習制御に用いることで学習精度を高めることが可能となる。
【0012】
また、前記設定処理部は、マッサージ動作中に被施療者に与えたマッサージ力及び当該被施療者から出力された生体情報に基づいて、マッサージ動作中の時間の関数を含む前記入出力演算モデルを求め、当該入出力演算モデルに基づいてマッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインを設定するのが好ましい。
この場合、被施療者に与えるマッサージ力と、その結果、当該被施療者から取得される生体情報との関係が、マッサージ動作中に変化する場合であっても、当該マッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインが設定され、当該学習ゲインが用いられて学習制御が行われることで、学習精度を高めることが可能となる。
【0013】
また、前記設定処理部は、一次遅れ系で表現された前記入出力演算モデルを推定するのが好ましい。
この場合、前記設定処理部は、被施療者の生体反応を、一次遅れ系で表現された入出力演算モデルとして処理することになる。このため、例えば二次遅れ系のような複雑な処理ではなく、比較的簡単な一次遅れ系で表現された入出力演算モデルを設定処理部が扱うことで、処理時間の短縮化が図れる。
また、設定処理部において、一次遅れ系で表現される入出力演算モデルが用いられる場合、被施療者の生体反応(被施療者における入出力の関係)は、当該一次遅れ系で表現された入出力演算モデルと厳密には一致しないが、前記のとおり、マッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインが設定される場合、この不一致を低減することが可能となる。
【0014】
また、前記制御装置は、前記生体情報取得部が取得した生体情報の値と前記目標値との誤差の収束を早期に実現させる条件式を記憶している記憶部を備え、前記設定処理部は、前記条件式に基づいて前記学習ゲインを設定する請求項1から4のいずれか一項に記載のマッサージ機。
この場合、前記条件式に基づいて設定された学習ゲインを用いて学習制御を行うことで、被施療者から出力される生体情報を目標値に早期に収束させるようなマッサージ力を決めることが可能となる。
【0015】
また、本発明は、被施療者から取得される生体情報が目標値に近づくように、前記被施療者に対して行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御を実行する、コンピュータによるマッサージ力の設定方法であって、被施療者に与えたマッサージ力と当該マッサージ力を受けた当該被施療者から取得された前記生体情報との関係に基づいて前記学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定し、前記マッサージ動作のマッサージ力を、設定された前記学習ゲインを用いて決めることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、被施療者に与えるマッサージ力と、その結果、当該被施療者から取得される生体情報との関係が変化する場合であっても、被施療者に与えたマッサージ力と、当該マッサージ力を受けた被施療者から取得された生体情報との関係に基づいて、学習制御を行う際に用いられる学習ゲインが設定される。すなわち、制御対象の変化に適応して学習ゲインが設定される。そして、この学習ゲインが用いられて、マッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御が行われるため、学習精度を高めることが可能となり、好ましいマッサージ力を決めることが可能となる。
【0017】
また、本発明は、制御対象に対して入力を与えることで当該制御対象から取得される出力が、目標値に近づくように入力を決める学習制御を行う学習制御システムであって、前記制御対象に与えた入力と当該制御対象から取得された出力との関係に基づいて前記学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定する設定処理部と、後に制御対象に対して与える入力を、設定された前記学習ゲインを用いて決める学習処理部とを有していることを特徴とする。
本発明によれば、制御対象に与える入力と、その結果、当該制御対象から取得される出力との関係が変化する場合であっても、制御対象に与えた入力と当該制御対象から取得された出力との関係に基づいて、学習制御を行う際に用いられる学習ゲインが設定される。すなわち、制御対象の変化に適応して学習ゲインが設定される。そして、この学習ゲインが用いられて、後に制御対象に対して与える入力を決める学習制御が行われるため、学習精度を高めることが可能となり、好ましい入力を決めることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、制御対象の変化に適応して学習ゲインが設定され、この学習ゲインが用いられてマッサージ力を決める学習制御が行われるため、学習精度を高めることが可能となる。この結果、入力(マッサージ力)に対する出力(生体情報)の関係が変化することがあっても、好ましいマッサージ力を決めることが可能となり、また、好ましい学習結果を得るために要する学習回数を従来よりも減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のマッサージ機の実施の一形態を示している概略構成図である。
【図2】マッサージユニットの正面斜視図である。
【図3】マッサージ機の概略構成を示しているブロック図である。
【図4】学習制御のブロック図である。
【図5】学習制御のシミュレーション結果を説明する説明図である。
【図6】設定された学習ゲインの値を示したグラフである
【図7】従来の学習制御のシミュレーション結果を説明する説明図である。
【図8】制御対象のゲインが時間的に変化している様子を示している説明図である。
【図9】学習制御のシミュレーション結果を説明する説明図である。
【図10】従来の学習制御のシミュレーション結果を説明する説明図である。
【図11】従来の学習制御のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔1. マッサージ機の全体構成〕
図1は、本発明のマッサージ機の実施の一形態を示している概略構成図である。このマッサージ機は椅子型であり、床面に置くフレーム4と、フレーム4上に設けられ被施療者が着座する座部1と、フレーム4の後側に設けられた背凭れ部2と、フレーム4の前側に設けられた脚載せ部3とを備えている。
【0021】
背凭れ部2内には、マッサージ手段として、施療子6を備えたマッサージユニット5が設けられており、このマッサージユニット5は背凭れ部2の内部を上下移動することができる。マッサージユニット5は、施療子6を動作させることで被施療者に対してマッサージ動作を行うことができる構成であり、当該施療子6から被施療部に所定の大きさを有するマッサージ力を与えることができる。
【0022】
図2は、マッサージユニット5の正面斜視図である。マッサージユニット5の本体フレーム8に可動ユニット7が前後移動可能に取り付けられている。可動ユニット7は、ローラからなる施療子6と、この施療子6に揉み、叩き、指圧などのマッサージ動作をさせるために当該施療子6を駆動する駆動装置15とを有している。駆動装置15は、施療子6に揉みや叩きの動作をさせる揉み叩き駆動部15bの他に、施療子6を含む可動ユニット7を前後方向に移動させる押し出し駆動部15aを有している。本実施形態の押し出し駆動部15aは、モータの回転によって可動ユニット7を前後に移動させるラックピニオン式であるが、他の形式であってもよい。
【0023】
押し出し駆動部15aが可動ユニット7を前後移動させることで、施療子6が前後移動して被施療者に対して指圧動作を行うことができる。施療子6を前側寄り(被施療部に近づく側)に大きく移動させることで、当該施療子6によって大きなマッサージ力を有したマッサージ動作を被施療部に与えることができ、強いマッサージが生じる。また、施療子6を後側寄り(被施療部から離れる側)に移動させることで、当該施療子6によって小さなマッサージ力を有したマッサージ動作を与えることができ、弱いマッサージが生じる。さらに、揉み叩き駆動部15bによって揉みや叩きのマッサージを行う場合であっても、押し出し駆動部15aによって、施療子6の前後方向の位置を調整することができる。
【0024】
また、図1において、本発明のマッサージ機は、座部1に着座した被施療者の生体情報として脳波信号を取得する脳波取得装置(生体情報取得手段)9を備えており、また、脳波取得装置9が取得した脳波信号を受けて処理する制御装置18を備えている。なお、図1では、脳波取得装置9と制御装置18とを、マッサージ機本体外に示しているが、これらは、マッサージ機本体内に設けられている。
制御装置18は、後にも説明するが、脳波取得装置9によって取得される脳波信号が、設定されている目標値に近づくように、マッサージユニット5が行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御を行う機能を有している。
【0025】
脳波取得装置9は、被施療者の脳波を測定する測定器9aと、測定器9aが測定した脳波信号を処理する脳波処理部9bとを有している。測定器9aは、被施療者の脳から生じる電気活動を測定するための電極(陽極と陰極)を有しており、この電極は、例えば、比較的装着が容易である額(陽極)−耳(陰極)の二カ所を一組として取り付けられる。また、電極は、背凭れ部2のヘッドレスト部にリード線を介して設けられている。これにより、ヘッドレスト部に頭部を凭れかけた被施療者の脳波を測定することができる。
【0026】
脳波処理部9bは、図示しないが、アンプ、AD変換器及びコンピュータ部を有していて、測定器9aによって測定された脳波信号を処理する。例えば、脳波信号の内の、安静時(快適時)に発生すると言われているα波の信号と、不快時に発生すると言われているβ波の信号とのうちの少なくとも一つに関する信号が、脳波処理部9bから出力される。
脳波処理部9bは、測定部9aが測定した脳波信号についてFFT処理を用い、周波数毎のパワースペクトルを求め、それぞれの周波数帯(周波数帯の中央部)のパワースペクトルの総和によって、α波(8Hz以上13Hz以下の周波数帯)のレベル、β波(14Hz以上30Hz以下の周波数帯)のレベル、α波のレベルとβ波のレベルとの比(β/α)を求めることができる。
そして、脳波処理部9bによって求められた脳波信号の値は、制御装置18に入力され、制御装置18によって処理される。なお、脳波処理部9bの機能は、制御装置18が有していてもよい。また、制御装置18の処理で用いられる脳波信号は、α波のレベルとβ波のレベルとのうちの一方又は双方(例えばβ/α)とすることができる。
【0027】
〔2. 制御装置〕
図3はマッサージ機の概略構成を示しているブロック図である。
制御装置18は、CPU及び記憶部を有しているプログラマブルなコンピュータ(マイコン)からなり、所定の各機能を実行するプログラムが記憶部に格納されている。
制御装置18は、RAMやROMからなる記憶部19の他に、前記プログラムが実行する機能部として、マッサージ制御部20、設定処理部21及び学習処理部22を備えている。各機能部については以下に説明する。
【0028】
〔2.1 マッサージ制御部〕
マッサージ制御部20は、マッサージユニット5(図2)の動作制御を行うことができ、例えば、押し出し駆動部15aに対して動作制御信号を出力することで当該押し出し駆動部15aを当該信号に応じて動作させ、施療子6(マッサージユニット5)の移動量及び施療子6(マッサージユニット5)の前後位置を制御することができる。
マッサージ制御部20から動作制御信号を受けた押し出し駆動部15aは、当該信号に基づいて動作し、施療子6によって、被施療部に対して所定の大きさを有するマッサージ力(接触力)を生じさせることができる。
【0029】
後に説明するが、施療子6によって被施療者に与えられるべきマッサージ力が決められると、マッサージ制御部20は、そのマッサージ力が被施療者に与えられるようにマッサージユニット5を制御する。つまり、マッサージ制御部20は、決められたマッサージ力に相当する押出量(施療子6の前後位置)を決定して、押し出し駆動部15aによって施療子6を当該押出量について前後方向に移動させる。なお、施療子6によって被施療者に与えられるべきマッサージ力は、後に説明する学習処理部22によって決められる。
【0030】
このようにして、マッサージ制御部20によって、施療子6の押出量が調整されることにより、当該施療子6によるマッサージ力を変化させることができる。
マッサージ力と押出量との関係は、例えば、記憶部19にデータベースとして記憶されている。マッサージ力が決まると、マッサージ制御部20は、このデータベースを参照することで対応する押出量を求め、この押出量に応じた動作制御信号を生成し、押し出し駆動部15aへと出力する。
【0031】
また、マッサージユニット5(施療子6)が適切なマッサージ動作をしたことによって被施療者から取得される脳波の目標値が、前記記憶部19に記憶されている。つまり、被施療者が快適であると感じている状態で発せられる脳波信号(制御装置18による処理で用いられる脳波信号)が予め目標値として設定されており、記憶部19にこの目標値が記憶されている。
【0032】
以上より、マッサージ制御部20及び押し出し駆動部15aが施療子6を所定の押出量について前後方向に移動させ、被施療者の背中に対して指圧によるマッサージ動作を行うことができる。以下に説明する実施形態では、この指圧によるマッサージ動作を「所定マッサージ動作」とし、施療子6が被施療者を押す力(指圧力)をマッサージ力とする。そして、所定マッサージ動作は、所定時間(例えば20秒から30秒)継続して行われ、この所定マッサージ動作が一つのマッサージステップとなる。また、この所定時間の間(所定マッサージ動作の間)には、施療子6によって1回又は複数回、指圧が行われる。
そして、この所定マッサージ動作が行われている間に、脳波取得装置9によって被施療者の脳波信号が測定される。
【0033】
〔2.2 学習処理部〕
学習処理部22は、前記マッサージ制御部20がマッサージユニット5を制御するために用いられる前記マッサージ力を決める機能を有している。学習処理部22は、施療子6が所定の大きさを有するマッサージ力で前記所定マッサージ動作をしたことで脳波取得装置9が取得した脳波信号の値と、予め設定してある前記目標値との差、及び、前記所定マッサージ動作をした際の前記マッサージ力を用いて、施療子6が次回に行う所定マッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御を行う。なお、前記所定マッサージ動作に複数回の指圧が含まれる場合、指圧の回毎のマッサージ力が決められる。
【0034】
学習処理部22は、所定マッサージ動作の回数及び脳波信号の取得の回数を重ねることによって、被施療者にとって好ましいマッサージを与えるための制御を行う。すなわち、学習処理部22は、取得される脳波信号の値が目標値へと収束するように学習制御を行う。このための学習制御を示したものが、図4のブロック図である。この学習制御は、D型学習制御を用いた繰り返し学習制御である。なお、この学習制御において、1回の所定マッサージ動作と、当該所定マッサージ動作の間に実行される脳波信号の取得とをまとめて、1試行と呼ぶ。
【0035】
図4において、施療子6による、k試行目(k回目)において、所定マッサージ動作中の時間tにおけるマッサージ力が被施療者(制御対象)への入力「uk(t)」であり、この所定マッサージ動作によって被施療者から取得された脳波信号の値が「yk(t)」である。そして、この次に実行される(k+1)試行目の所定マッサージ動作のマッサージ力、つまり(k+1)回目の制御入力「uk+1(t)」を、式(1)に表すことができる。
【数1】
【0036】
この演算式(1)は、記憶部19(図3参照)に記憶されており、学習処理部22はこの演算式を用いた処理を実行することで、次に行う所定マッサージ動作のマッサージ力「uk+1(t)」を決定することができる。なお、式(1)は、連続時間系で示したものであるが、学習処理部22によって実際に実行される学習制御では、サンプリング時間間隔をΔtとして、離散的に行われる演算式が用いられる。
【0037】
前記のとおり、所定マッサージ動作は所定時間継続して行われ、この間、サンプリング時間間隔Δt毎に、マッサージ力「uk(t)」及び脳波信号の値「yk(t)」が、記憶部19に記憶される。そして、サンプリング時間間隔Δt毎の次回のマッサージ力「uk+1(t)」が求められる。
【0038】
学習処理部22が前記式(1)によって求めた次回のマッサージ力「uk+1(t)」は、マッサージ制御部20へと与えられると共に、さらにその次の所定マッサージ動作のマッサージ力「uk+2(t)」を求めるために、記憶部19に記憶される。
マッサージ力「uk+1(t)」を取得したマッサージ制御部20は、当該マッサージ力に応じた動作制御信号を生成し、当該信号を押し出し駆動部15aへ与える。この処理は1試行毎に繰り返し実行される。
この学習制御によれば、所定マッサージ動作を重ねて行う毎に、所定マッサージ動作のマッサージ力が変化する。
そして、学習処理部22によって実行される学習制御で用いられる学習ゲインγ(図4参照)は、設定処理部21によって設定される。
【0039】
〔2.3 設定処理部〕
設定処理部21は、施療子6が被施療者に与えたマッサージ力「u」と、当該マッサージ力「u」を受けた被施療者から脳波取得装置9によって取得された脳波信号の値「y」との関係に基づいて、学習制御を行う際に用いられる学習ゲインγ(図4参照)を設定する機能を有している。
【0040】
本実施形態では、設定処理部21は、所定の大きさのマッサージ力を受けて所定の脳波信号を出力する被施療者の生体反応と等価となるモデルを、マッサージ力「u」と脳波信号の値「y」との前記関係として、推定するモデリング処理を行う機能を有している。なお、推定する前記モデルは、施療子6が被施療者に対して所定マッサージ動作を行った際のマッサージ力「u」が入力となり、当該マッサージ力「u」を受けた被施療者から脳波取得装置9によって取得された脳波信号の値「y」が出力となる入出力演算モデルである。この入出力演算モデルを微分方程式で表現したものが式(2)となる。
【0041】
【数2】
この式(2)は、時間領域で表現したものであり、a及びbは、微分方程式で表現した入出力演算モデルのパラメータである。なお、以下の式において、上に付されているドットは、時間微分を示している。
【0042】
本実施形態では、制御対象が一次遅れ系として表現された入出力演算モデルが用いられている。このため、前記入出力演算モデル(式(2))を伝達関数により表現したものが式(3)であり、この場合の入出力演算モデルのパラメータは、時定数Tと定常ゲイン(ゲイン定数)Kとなる。
【0043】
【数3】
【0044】
設定処理部21は、入出力演算モデルのパラメータを、所定マッサージ動作中に得られた入力「u」及び出力「y」に基づいて推定する。そして、設定処理部21は、推定した入出力演算モデルのパラメータに基づいて学習ゲインγを設定する。設定処理部21によって実行される入出力演算モデルのパラメータの推定(推定に用いる数式)及び学習ゲインγの設定(設定に用いる数式)については、後に説明する。
この入出力演算モデル(パラメータ)の推定処理及び学習ゲインγの設定処理は、所定マッサージ動作が行われる毎(1試行毎)に実行される。
そして、1試行毎に、設定処理部21によって設定された学習ゲインγが用いられて、施療子6によって後に行なわれるマッサージ動作のマッサージ力「uk+1」が、前記学習処理部22によって決められる。
【0045】
〔2.3.1 入出力演算モデルのパラメータに基づく学習ゲインの決定処理〕
学習処理部22によって実行される学習制御のブロック図(図4)において、本実施形態では、制御対象を一次遅れ系としているため、前記式(2)で示した微分方程式の一般解は、式(4)となる。そこで、k試行目の制御入力「uk(t)」を与えた場合の出力「yk(t)」は、式(5)となり、(k+1)試行目の制御入力「uk+1(t)」は、前記式(1)である。なお、τは時間である。
【数4】
【数5】
【0046】
本実施形態の学習制御では、試行毎の初期条件は同一なるように設定されている。つまり、yk(0)=yd(0)(ただし、k=1,2・・・)。
このとき、目標値「yd(t)」と、被施療者から取得された脳波信号の値「yk(t)」との誤差「ek」の時間微分を支配する逐次式を求めるために、前記式(5)によって、以下の式(6)が導かれる。なお、τは時間である。
【数6】
【0047】
これにより、誤差「ek」の時間微分は、式(7)となる。
【数7】
【0048】
ここで、式(8)の関数ノルムを設定する。ただし、λは任意の正の定数である。
【数8】
【0049】
式(7)の両辺に「e-λt」を掛けて最大値を求めると、式(9)となる。
【数9】
【0050】
式(9)内の一部を「ρ」と定義すると(式(10)参照)、式(9)は、式(11)となる。この式(11)によれば、k試行目の誤差「ek」の微分値の関数ノルムと、その一つ前である(k−1)試行目の誤差「ek-1」の微分値の関数ノルムとの比が、「ρ」になると言える。したがって、この式(11)を逐次的に考えると、初期誤差「e0」の微分値による式(12)が得られる。
【数10】
【数11】
【数12】
【0051】
式(12)の「k」は試行回数を表している。この式(12)において、試行を繰り返す度に誤差「e」を(指数関数的に)収束させるための条件は、「ρ」が1未満であり、その条件式が式(13)である。
【数13】
【0052】
ここで、a>0であり、λ>0であることから、λの値を十分に大きく設定すれば(λ→無限大)、式(14)が得られる。この式(14)は、学習制御を収束させるために、学習ゲインγを選ぶことができる範囲を意味している。
【数14】
【0053】
式(3)の伝達関数のパラメータ(時定数Tと定常ゲインK)と、時間領域で示したパラメータa,bとの関係は、式(15)であるため、式(14)の第2式より、式(16)が得られる。この式(16)は、学習制御を収束させるための条件を意味しているから、式(16)は、学習制御を収束させるためのパラメータ(時定数T及び定常ゲインK)と学習ゲインγとの関係式である。つまり、この式(16)は、誤差「e」を収束させる条件式となる。
【数15】
【数16】
【0054】
学習制御の繰り返し回数を少なくして、目標値との誤差「e」を小さくするためには、前記式(13)のρを0に近づければよい。すなわち、学習ゲインγの値を式(16)の範囲内で最大にすればよい。このため、学習ゲインγの値は、式(17)によって決められる。
【数17】
【0055】
式(17)は、収束を早期に実現させる条件式となる。この条件式(17)は、記憶部19に記憶されており、設定処理部21はこの条件式を用いた処理を実行することで、学習ゲインγを求めることができ、設定処理部21は、この学習ゲインγを学習制御に用いる値に設定する。
【0056】
以上より、学習制御の繰り返し回数を少なくするための学習ゲインγは、前記パラメータである時定数Tと定常ゲインKとを求め、これらの値によって学習ゲインγを設定すればよい。
そして、このように学習ゲインγを設定するために、入出力演算モデルのパラメータ(時定数Tと定常ゲインK)が必要である。そこで、このパラメータ(時定数Tと定常ゲインK)を求める処理が必要となる。
【0057】
〔2.3.2 パラメータの推定処理〕
パラメータである時定数Tと定常ゲインKとを求める処理について説明する。
パラメータ(時定数Tと定常ゲインK)は、制御対象への入力「u」及び出力「y」に基づいて求めることが可能である。入力「u」は、記憶部19に記憶されている値であり、出力「y」は、脳波取得装置9によって取得された情報である。
【0058】
パラメータの推定には、様々な手段を採用することが可能であるが、本実施形態では、最小二乗法を用いた処理により実行する。つまり、時間領域で表した前記式(2)の入力「u」及び出力「y」のためのパラメータa,bは、式(18)によって表すことができる。なお、式(18)中の「N」は、所定マッサージ動作の1試行中における入出力のデータ数である。つまり、サンプリング時間間隔Δt毎に得られたデータの数である。
この演算式(18)は、記憶部19に記憶されており、設定処理部21はこの演算式を用いた処理を実行することで、パラメータa,bを求めることができる。
【数18】
【0059】
時間領域におけるパラメータa,bが求まると、前記式(15)によって、時定数Tと定常ゲインKとを求めることができる。この演算式(15)は、記憶部19に記憶されており、設定処理部21がこの演算式を用いた処理を実行することで、時定数Tと定常ゲインKとを求めることができる。そして、求められた時定数Tと定常ゲインKとにより、設定処理部21は、式(17)によって、学習ゲインγを求めることができる。
【0060】
なお、式(18)によれば、既に行った試行の入力「u」及び出力「y」を用いて、当該試行を行った際の被施療者の生体反応、つまり、当該試行を行った際の入出力演算モデルを推定することができる。そして、設定処理部21によって、推定した入出力演算モデルに合わせた学習ゲインγが設定され、学習処理部22によって、後に行う試行での出力(マッサージ力)が決められる。そして、この出力(マッサージ力)によって、次の所定マッサージ動作が実行される。
【0061】
以上の本実施形態によれば、所定マッサージ動作中における、施療子6が被施療者に対してマッサージ動作を行った際のマッサージ力(入力「u」)、及び、当該マッサージ力を受けた被施療者から脳波取得装置9によって取得された脳波信号の値(出力「y」)に基づいて、設定処理部21は、被施療者に対するマッサージ力と当該被施療者から得られた脳波信号の値との関係として、入出力演算モデルのパラメータ(時定数T及び定常ゲインK)を、前記式(15)及び式(18)によって、推定することができる。そして、設定処理部21は、推定された入出力演算モデルのパラメータ(時定数T及び定常ゲインK)に基づいて、式(17)により学習ゲインγを設定することができる。
【0062】
このため、被施療者に対するマッサージ力と当該被施療者から得られた脳波信号の値との関係、つまり、被施療者(制御対象)の生体反応が、時間が異なることによって変化する場合であっても、当該変化に追従するようにして学習ゲインγを調整することが可能である。
また、学習ゲインγを設定するための式(17)は、前記誤差「e」の収束を早期に実現させる条件式であり、この式(17)を用いて、学習ゲインγを決定していることから、当該学習ゲインγを用いて学習制御を実行することで、学習回数を最小化することが可能となる。
そして、1試行毎に、設定処理部21によって設定された学習ゲインγが用いられて、施療子6によって後に行なわれるマッサージ動作のマッサージ力が、前記学習処理部22によって決められる。
【0063】
〔3. 学習制御のシミュレーション結果について〕
以上のように構成した本実施形態の制御装置18によって実行される学習制御に関して、コンピュータによるシミュレーションを行った結果を説明する。このシミュレーションでは、試行数(学習制御の繰り返し数)は20(k=20)であり、1から10試行目までは、時定数Tが10(秒)であるが、11から20試行目までは時定数Tが2(秒)に変化されている。なお、定常ゲインKはすべて1のままである。つまり、複数回行う試行の途中で、制御対象のパラメータのうち時定数Tが変化した場合のシミュレーションである。また、シミュレーション時間(所定マッサージ動作の時間)は20(秒)であり、サンプリング時間間隔Δtを0.01(秒)としている。
【0064】
図5は、目標値(破線)の他に、試行回数(学習回数)が1,5,13,17及び19回それぞれの場合に取得された出力「y」を示した、本実施形態によるグラフである。図6は、本実施形態の制御装置18によって、試行毎に変更された学習ゲインγの値を示したグラフである(ただし、試行回数は15回まで)。図6に示しているように、試行毎に学習ゲインγは変化している。
なお、図7は、比較のために、従来の学習制御(図11参照)を行った場合のシミュレーション結果のグラフである。つまり、学習ゲインγは一定値(5)のままである。
【0065】
図7の従来例の結果では、学習回数10回を超えるまでは、目標値に収束するように学習が実行されているが、パラメータ(時定数2)が変更された11試行目以降では、収束させる学習制御ができなくなっている。
これに対し、図5の本実施形態の結果では、試行毎に入出力演算モデルのパラメータを推定し、このパラメータを用い、かつ、収束するための条件式及び収束を早期に実現させるための条件式に基づいて、学習ゲインγを設定しているので、従来例よりも応答性が良く、さらに、制御対象のパラメータが変更されてから後であっても、収束させる学習制御が可能となっている。
つまり、本実施形態の学習制御では、制御対象の挙動を監視し、制御対象の変化に合わせた学習ゲインを調整し決定している。このため、制御対象の変化に対して適応的な学習制御が実行されている。
【0066】
〔4. 時変制御対象に対する学習制御〕
前記実施形態の学習制御は、試行毎に制御対象の特性(パラメータ)が変化する場合における適応型繰り返し学習制御であり、試行中に制御対象の特性は変化していない。
そこで、前記制御装置18が実行する学習制御の第二の実施形態として、試行中にも時間によって制御対象の特性が変化する場合に対応させる学習制御を説明する。
【0067】
1試行中に制御対象の特性が時間的な変化を有する場合、前記実施形態の学習制御のみでは、所定のレベルに収束するまでの学習回数が最小とならないおそれがある。そこで、第二の実施形態では、設定処理部21は、時間的に変化する制御対象のパラメータを推定する機能を有している。この第二の実施形態の場合であっても、制御装置18の構成は前記実施形態と同じであるが、設定処理部21が実行するプログラム(記憶部19に記憶されているプログラム)が少し異なっている。
【0068】
すなわち、第二の実施形態においても、記憶部19には、前記式(15)、式(17)、及び式(18)が記憶されており、設定処理部21がこれら式を用いて演算処理を実行することで、パラメータa,bを求め、時定数T及び定常ゲインKを推定する。
そして、この第二の実施形態では、設定処理部21は、推定した前記時定数Tを用い、式(19)によって定常ゲイン(ゲイン定数)Kを、時間的に変化するパラメータとして求める。
【数19】
【0069】
式(19)における「u(t)」は、k試行目において、所定マッサージ動作での時間tにおけるマッサージ力であって、被施療者への入力であり、この所定マッサージ動作によって被施療者から取得された脳波信号の値が「y(t)」である。また、「y(t−1)」は、(k−1)試行目で(つまり、前回に)取得された脳波信号の値である。この演算式(19)は、記憶部19に記憶されており、設定処理部21がこの演算式を用いた処理を実行することで、時間的変化する定常ゲインK(t)を求めることができる。
【0070】
そして、設定処理部21は、推定された前記時定数T、及び、求められた定常ゲインK(t)を用いて、前記式(17)によって学習ゲインγ(t)を求める。つまり、学習ゲインも時間の関数となる。
このように、設定処理部21は、推定した入出力演算モデルの時定数T、マッサージ動作中に被施療者に与えたマッサージ力(入力)「u(t)」及び当該被施療者から出力された脳波信号「y(t)」に基づいて、入出力演算モデルの定常ゲインK(t)を、マッサージ動作中の時間の関数を含むパラメータとして求める。そして、パラメータ(時定数T、定常ゲインK(t))に基づいて、マッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインγ(t)を設定する。
【0071】
そして、1試行毎に、設定処理部21によって設定された学習ゲインγ(t)が用いられて、施療子6によって後に行なわれるマッサージ動作のマッサージ力が、前記学習処理部22によって決められる。
【0072】
なお、式(19)は、以下の式によって得られる。
前記式(2)を離散的な式で表現すると、式(20)となる。そして、この式(20)は、前記式(15)により式(21)となる。この式(21)をKについて解くと、式(19)が得られる。
【数20】
【数21】
【0073】
〔5. 学習制御のシミュレーション結果について〕
以上のように構成した第二の実施形態の制御装置18によって実行される学習制御に関して、コンピュータによるシミュレーションを行った結果を説明する。このシミュレーションでは、試行毎に行う学習制御の繰り返し試行数は15(k=15)である。また、シミュレーション時間(所定マッサージ動作の時間)は30(秒)である。
そして、試行毎に、図8に示しているように、制御対象の定常ゲインKが時間的に変化している。
【0074】
図9は、目標値(破線)の他に、学習回数が1,2,5,10及び15回それぞれの場合に取得される出力を示した本実施形態によるグラフである。また、図10は、比較のために、従来の学習制御(図11参照)を行った場合のシミュレーション結果のグラフである。
図10の従来例の場合、学習回数が進んでも、一向に目標値に収束していない。これに対して、図9の本実施形態の場合、定常ゲインKが時間的に変化しているにも関わらず、学習回数が進むにつれて、目標値に収束している。
【0075】
このように第二の実施形態の場合、入力となる所定マッサージ動作のマッサージ力と、その結果、出力として取得される脳波信号との関係が、マッサージ動作中に変化するような場合であっても、つまり、制御対象の特性(パラメータ)が途中で変化するような場合であっても、所定マッサージ動作中の時間の関数を含むパラメータ(定常ゲインK(t))が推定され、このパラメータによって、所定マッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインγ(t)が設定される。そして、この設定された学習ゲインγ(t)が用いられて学習制御が行われることで、学習精度を高めることが可能となる。つまり、所望の脳波信号を取得することができる好適なマッサージ力を求めることができる。
【0076】
特に、制御対象として一次遅れ系の入出力演算モデルが用いられているが、被施療者の生体反応は、当該一次遅れ系の入出力演算モデルと厳密には一致しない。しかし、マッサージ動作中の時間の関数を含むパラメータ(定常ゲインK(t))が用いられることで、目標値と出力との差を縮小すること可能となる。この結果、定常ゲインK(t)によって、マッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインγ(t)が設定されることにより、前記のような不一致を低減することが可能となる。
しかも、制御装置18は、一次遅れ系の入出力演算モデル(演算式)によって演算処理することができ、パラメータの数は、例えば二次遅れ系の場合に比べて少なくて済み、処理時間の短縮化が図れる。
【0077】
〔6. 各実施形態について〕
図1に示したマッサージ機の場合、制御対象が被施療者であることから、マッサージ機を使用する時間が異なることで被施療者の体調も変化し、この変化が影響して、被施療者に与えられるマッサージ動作のマッサージ力と、その結果、出力として取得される脳波信号の値との関係が変化する。
このように時間が異なることで制御対象が変化しても、前記各実施形態によれば、施療子6が被施療者に与えたマッサージ力と、当該マッサージ力を受けた被施療者から取得された脳波信号の値との関係に基づいて、学習制御を行う際に用いられる学習ゲインγが調整される。すなわち、制御対象の変化に適応的に学習ゲインγが設定される。
そして、この学習ゲインγが用いられて、施療子6が後に行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御が行われるため、好ましい学習結果を得ることが可能となり、また、好ましい学習結果を得るために要する学習回数を減らすことが可能となる。
【0078】
また、既に説明したように、前記各実施形態では、記憶部19に、脳波信号の目標値と、脳波取得部9が取得した脳波信号の値(実測値)との誤差の収束を早期に実現させる条件式(17)が記憶されており、設定処理部21は、この条件式(17)に基づいて学習ゲインγを設定することができる。したがって、この学習ゲインγを用いて学習処理部22が学習制御を行うことで、被施療者から出力される脳波信号の値を目標値に早期に収束させるような、マッサージ力を決めることが可能となる。
【0079】
また、マッサージ機には、所定の順でマッサージが自動的に実行されるマッサージプログラムが記憶されている。このマッサージプログラムは、複数のマッサージステップを有しており、これらマッサージステップは順に実行される。そして、一つのマッサージコースで、同じマッサージステップが複数回実行されることがある。
ここで、前記マッサージステップを前記所定マッサージ動作に置き換えて説明すると、一つのマッサージコースで、同じ所定マッサージ動作が複数回実行されることがある。この場合、一つのマッサージコース内において、所定マッサージ動作毎に、マッサージ力が前記制御手段18によって学習制御され、所定マッサージ動作毎に好適なマッサージ力を被施療者に与えることができる。
そして、この所定マッサージ動作に関して学習して得たマッサージ力及び学習ゲインγの値は、マッサージ機の記憶部19に、被施療者と対応付けて記憶されている。
【0080】
このため、同じ被施療者が、異なる日に、前記所定マッサージ動作と同じマッサージステップを含むマッサージコースを、マッサージ機によって受ける場合、記憶部19に記憶されている前記マッサージ力及び前記学習ゲインγが用いられる。このため、マッサージステップ(所定マッサージ動作)において、再び好適なマッサージ力が被施療者に与えられる。このように、マッサージ機によって被施療者がマッサージを受ける日が異なっていても、その都度、好ましいマッサージ力による所定マッサージ動作を受けることができ、また、使い続けることによって、好ましいマッサージ力が更新されていく。
【0081】
また、マッサージ機を用いる日が異なると、被施療者の健康状態も異なる場合があることから、被施療者の生体反応も変化する。しかし、本実施形態では、被施療者の生体反応が変化したとしても、つまり、制御対象が変化したとしても、設定処理部21は、その制御対象と等価な入出力演算モデル(パラメータ)を推定し、これに基づいて学習ゲインγを決めているので、学習処理部22は、変化した制御対象に適応した学習ゲインγを用いることができる。そして、この学習ゲインγが用いられて学習制御が実行されるので、被施療者の生体反応が日によって変化していても、学習制御部22は、その生体反応に応じた好ましいマッサージ力を決めることが可能となり、快適なマッサージを被施療者に与え続けることが可能となる。
【0082】
本発明のマッサージ機は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、図1において、脚載せ部3が省略されたマッサージ機であってもよい。また、マッサージユニット5も図示した以外の構成であってもよい。
今回開示した実施形態は、本発明の例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等な意味、及び、範囲内での全ての変更が含まれる。
【0083】
前記実施形態では、制御対象が被施療者(人)であり、入力がこの被施療者に与えるマッサージ力であり、出力がこの被施療者から取得される脳波信号であり、マッサージ機の制御装置18が、前記の学習制御を行う学習制御システムとして機能する場合として説明した。
しかし、前記の制御装置の機能を、他の技術分野の制御における学習制御システムとして適用することができる。
【0084】
例えば、サーボ系の電動機によって駆動する多関節ロボットや工作機械に、学習制御システムを適用することができる。この場合、制御対象が前記電動機であり、入力が電圧又は電流であり、出力が電動機の回転についての情報(以下、回転情報)である。回転についての情報としては、回転位置、回転速度又は回転トルクがある。
そして、電動機に対して電圧又は電流を入力として与えることで当該電動機から取得される回転情報が、目標値に近づくように電圧又は電流を決める学習制御が、学習制御システムによって実行される。この場合、前記実施形態(マッサージ機)に関して説明した、マッサージ力を電圧又は電流と読み替え、脳波信号を回転情報と読み替えればよい。
【0085】
前記のようなサーボ系の電動機によって駆動する機械装置の場合、電動機の回転速度及び回転トルクを電圧又は電流に基づいて制御することができる他、制御においてサーボ系を介していることで、電動機の回転位置の制御を行うことができる。これにより、多関節ロボットや工作機械において、位置決め制御を行うことが可能となる。つまり、例えば把持部等のような機能部を先端部に有する多関節ロボットの場合、学習制御システムが、サーボ系の電動機を制御することで、前記機能部の位置、速度、トルク(力)を制御することが可能となる。
【0086】
また、本発明の学習制御システムは、マッサージ機や、サーボ系の電動機を有する多関節ロボットや工作機械以外に適用することができ、学習制御システムは、制御対象に対して入力を与えることで当該制御対象から取得される出力が、目標値に近づくように入力を決める学習制御をコンピュータにより行うものである。そして、この学習制御システムは、制御対象に与えた入力と当該制御対象から取得された出力との関係に基づいて学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定する設定処理部と、後に制御対象に対して与える入力を、設定された前記学習ゲインを用いて決める学習処理部とを有していればよい。
【符号の説明】
【0087】
5:マッサージユニット(マッサージ手段)、 6:施療子、 18:制御装置、 19:記憶部、 20:マッサージ制御部、 21:設定処理部、 22:学習処理部、 γ:学習ゲイン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者に対してマッサージ動作を行うマッサージ手段と、
前記被施療者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、
取得される生体情報が目標値に近づくように前記マッサージ手段が行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記マッサージ手段が被施療者に与えたマッサージ力と当該マッサージ力を受けた当該被施療者から取得された前記生体情報との関係に基づいて前記学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定する設定処理部と、
前記マッサージ手段が行うマッサージ動作のマッサージ力を、設定された前記学習ゲインを用いて決める学習処理部と、を有していることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記設定処理部は、所定の大きさのマッサージ力を受けて所定の生体情報を出力する被施療者の生体反応と等価となる入出力演算モデルを、マッサージ力と生体情報との前記関係として、推定し、当該入出力演算モデルに基づいて前記学習ゲインを設定する請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記設定処理部は、マッサージ動作中に被施療者に与えたマッサージ力及び当該被施療者から出力された生体情報に基づいて、マッサージ動作中の時間の関数を含む前記入出力演算モデルを求め、当該入出力演算モデルに基づいてマッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインを設定する請求項2に記載のマッサージ機。
【請求項4】
前記設定処理部は、一次遅れ系で表現された前記入出力演算モデルを推定する請求項2又は3に記載のマッサージ機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記生体情報取得部が取得した生体情報の値と前記目標値との誤差の収束を早期に実現させる条件式を記憶している記憶部を備え、
前記設定処理部は、前記条件式に基づいて前記学習ゲインを設定する請求項1から4のいずれか一項に記載のマッサージ機。
【請求項6】
被施療者から取得される生体情報が目標値に近づくように、前記被施療者に対して行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御を実行する、コンピュータによるマッサージ力の設定方法であって、
被施療者に与えたマッサージ力と当該マッサージ力を受けた当該被施療者から取得された前記生体情報との関係に基づいて前記学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定し、
前記マッサージ動作のマッサージ力を、設定された前記学習ゲインを用いて決めることを特徴とするマッサージ力の設定方法。
【請求項7】
制御対象に対して入力を与えることで当該制御対象から取得される出力が、目標値に近づくように入力を決める学習制御を行う学習制御システムであって、
前記制御対象に与えた入力と当該制御対象から取得された出力との関係に基づいて前記学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定する設定処理部と、
後に制御対象に対して与える入力を、設定された前記学習ゲインを用いて決める学習処理部と、を有していることを特徴とする学習制御システム。
【請求項1】
被施療者に対してマッサージ動作を行うマッサージ手段と、
前記被施療者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、
取得される生体情報が目標値に近づくように前記マッサージ手段が行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記マッサージ手段が被施療者に与えたマッサージ力と当該マッサージ力を受けた当該被施療者から取得された前記生体情報との関係に基づいて前記学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定する設定処理部と、
前記マッサージ手段が行うマッサージ動作のマッサージ力を、設定された前記学習ゲインを用いて決める学習処理部と、を有していることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記設定処理部は、所定の大きさのマッサージ力を受けて所定の生体情報を出力する被施療者の生体反応と等価となる入出力演算モデルを、マッサージ力と生体情報との前記関係として、推定し、当該入出力演算モデルに基づいて前記学習ゲインを設定する請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記設定処理部は、マッサージ動作中に被施療者に与えたマッサージ力及び当該被施療者から出力された生体情報に基づいて、マッサージ動作中の時間の関数を含む前記入出力演算モデルを求め、当該入出力演算モデルに基づいてマッサージ動作中の時間の関数を含む学習ゲインを設定する請求項2に記載のマッサージ機。
【請求項4】
前記設定処理部は、一次遅れ系で表現された前記入出力演算モデルを推定する請求項2又は3に記載のマッサージ機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記生体情報取得部が取得した生体情報の値と前記目標値との誤差の収束を早期に実現させる条件式を記憶している記憶部を備え、
前記設定処理部は、前記条件式に基づいて前記学習ゲインを設定する請求項1から4のいずれか一項に記載のマッサージ機。
【請求項6】
被施療者から取得される生体情報が目標値に近づくように、前記被施療者に対して行うマッサージ動作のマッサージ力を決める学習制御を実行する、コンピュータによるマッサージ力の設定方法であって、
被施療者に与えたマッサージ力と当該マッサージ力を受けた当該被施療者から取得された前記生体情報との関係に基づいて前記学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定し、
前記マッサージ動作のマッサージ力を、設定された前記学習ゲインを用いて決めることを特徴とするマッサージ力の設定方法。
【請求項7】
制御対象に対して入力を与えることで当該制御対象から取得される出力が、目標値に近づくように入力を決める学習制御を行う学習制御システムであって、
前記制御対象に与えた入力と当該制御対象から取得された出力との関係に基づいて前記学習制御を行う際に用いられる学習ゲインを設定する設定処理部と、
後に制御対象に対して与える入力を、設定された前記学習ゲインを用いて決める学習処理部と、を有していることを特徴とする学習制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−160930(P2011−160930A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25513(P2010−25513)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】
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