説明

マッサージ機

【課題】被施療者の背部の中で特に大事なツボが集中している背骨近傍の領域を長い時間単調ではない動作で刺激しながらマッサージを行うマッサージ機を提供する。
【解決手段】被施療者の背部と接触する背もたれ部2を備え、当該背もたれ部2には当該被施療者に向かって突出しながら互いに接近して回動動作をすると共に、昇降動作をする少なくとも1対の揉み玉53a、53bを備えるマッサージ機において、前記揉み玉53a、53bが、回転の左右方向の内側に位置している場合に、当該揉み玉53a、53bの昇降動作の速度を速くすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被施療者の背部をマッサージするマッサージ機に関し、特にマッサージの速度変化を利用して被施療者の背部の内側を効果的にマッサージするマッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の背部(首から腰に連なる部分)には大事なツボが多く存在する。これらのツボを刺激して凝りをほぐすことで、様々な痛みを解消したり内臓の働きを向上させることができると言われている。特に、背中の内側の背骨近傍(背骨から約指2本分程度の離れた位置に、気の流れが集中する「経絡」が存在すると言われている)には多くのツボが集中しており、それらのツボを刺激することで効果的なマッサージを行うことができる。発明者らは、背中の外側を刺激してマッサージを行った場合に比べて、背中の内側の背骨近傍のツボを刺激してマッサージを行った方がより体全体が軽くなり、顕著なマッサージ効果を得ることができることを知見した。
【0003】
従来、被施療者の背部を施療する方法としてローリングマッサージが広く知られている。この施療方法は、揉み玉を被施療者の背部に当接した状態で揉み玉を昇降させて、被施療者の背部の筋肉をストレッチするマッサージである。しかし、ローリングマッサージは昇降動作をするだけであるため、揉み動作を伴わず動きが単調になり被施療者にとって十分に満足できる施療ではないという課題を有している。
【0004】
上記課題を解決する技術として特許文献1に示す技術がある。特許文献1の技術は、背もたれに沿い昇降可能に設けたマッサージ・ユニットを有し、予めプログラムされた自動施療パターンに従って施療する椅子型マッサージ機において、揉み動作とローリング動作を組み合わせて行って、筋繊維に沿った方向に施療子を移動させると共に前方に突出させ、筋繊維を引き伸ばすことにより筋肉の収縮・弛緩を起こすストレッチ施療を行う技術である。
【特許文献1】特開2003−275264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は揉み動作とローリング動作を組み合わせることでマッサージのバリエーションを持たせ、効果的なマッサージを行うことができるが、筋繊維のストレッチのための動きを実現しており、背骨近傍に集中しているツボの刺激を考慮した動きは実現できていないという課題を有する。
【0006】
また、施療子が接近した場合は背骨近傍のツボを刺激できるかもしれないが、それは一瞬の施療となってしまい長い時間押圧することはできない。普通のローリングマッサージで背骨近傍を長い時間押圧することはできるが、やはり前記のように動きが単調になってしまうという課題を有する。
【0007】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたもので、被施療者の背部の中で特に大事なツボが集中している背骨近傍の領域を長い時間単調ではない揉み動作を含む動作で刺激しながらマッサージを行うマッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1 昇降動作が速い場合)
本発明に係るマッサージ機は、被施療者の背部と接触する背もたれ部を備え、当該背もたれ部には当該被施療者に向かって突出しながら互いに接近して回動動作をすると共に、昇降動作をする少なくとも1対の揉み玉を備えるマッサージ機において、前記揉み玉が、回動動作の左右方向の内側に位置している場合に、当該揉み玉の昇降動作の速度を速くすることを特徴とする。
【0009】
このように、本発明によれば、被施療者に向かって突出しながら互いに接近して回動動作をすると共に、昇降動作をする少なくとも1対の揉み玉を備えるマッサージ機において、揉み玉が、回動動作の左右方向の内側に位置している場合に、揉み玉の昇降動作の速度を速くするため、被施療者の背部の外側に比べて内側の領域を多く施療することができる。つまり、大事なツボが集中する背骨近傍を揉みの動作を行いながら、広範囲に渡って刺激してマッサージをすることができるため、被施療者は顕著なマッサージ効果を実感することができる。
【0010】
(2 揉み玉の回動動作が遅い場合)
本発明に係るマッサージ機は、前記揉み玉が、回動動作の左右方向の内側に位置している場合に、当該揉み玉の回動動作の速度を遅くすることを特徴とする。
このように、本発明によれば、揉み玉が、回動動作の左右方向の内側に位置している場合に、当該揉み玉の回動動作の速度を遅くするため、揉み玉が被施療者の背部の外側に比べて内側に長い時間留まり、被施療者の背骨近傍を揉みの動作を行いながら広範囲に渡って、長く刺激してマッサージすることができる。従って、被施療者はより顕著にマッサージ効果を実感することができる。
【0011】
(3 揉み玉の回動動作を遅くする度合いを変更)
本発明に係るマッサージ機は、揉み玉の回動動作の速度を遅くする度合いを変更可能とすることを特徴とする。
このように、本発明によれば、揉み玉の回動動作の速度を遅くする度合いを変更可能としたので、被施療者の背骨近傍で揉み動作を行う割合を変更出来、従って、被施療者は希望に応じた様々なマッサージ効果を実感することができる。
【0012】
(4 揉み玉の回動動作を遅くする度合いの変更方法)
本発明に係るマッサージ機は、前記度合いの変更を揉み玉が外側にある時の動作速度の最高速度を維持して、実行することを特徴とする。
このように、本発明によれば、揉み玉の回動動作の速度を遅くする度合いが変更可能なだけでなく、変更時に揉み玉が外側にある時の動作速度を落とすことなく最高速度を維持したので、速度の遅くする度合いの量を大きく出来、被施療者の背骨近傍における揉みの動作を十分に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(本発明の第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機について、図に基づき説明する。図1は本実施形態に係るマッサージ機の全体斜視図、図2は本実施形態に係るマッサージ機の側面断面図、図3は本実施形態に係るマッサージ機のメカユニットの正面図、図4は本実施形態に係るマッサージ機のメカユニットの右側面図である。
【0014】
(1.マッサージ機全体の構成)
前記各図において本実施形態に係るマッサージ機は全体構成として被施療者の背中を支持する背もたれ部1と、この背もたれ部1の下端近傍と接し被施療者が着座した際に、被施療者の臀部を支持する座部2と、被施療者の肘を支持する肘置き3と、座部2の先端近傍に枢設され被施療者の膝下の脚が載置される脚載部4と、背もたれ部1内に収納され昇降するメカユニット10と、このメカユニット10に被施療者方向に進退可能に配設され、揉み玉を駆動可能に備える揉み玉ユニット50a、50bとを備える。また、制御部5であるマイクロコンピュータの素子が配置された基板が座部1直下の空間部に配置されている。
【0015】
(2.背もたれ部)
前記背もたれ部1は、リクライニングでき、被施療者との接触面の両端側に図示しないクッション材を配設することもでき、着座して背もたれ部1にもたれると被施療者の背中が背もたれ部1の中心に位置するようになっている。背もたれ部1のリクライニング機能は、背もたれ部1が上部フレーム6aに回動可能に支持され、リクライニング用の電動アクチュエータ31を駆動させて実現している。リクライニング用のリニアエンコーダをリクライニング用の電動アクチュエータ31に配設し、どの程度回動したかを検出できるようにしている。
【0016】
(3.肘置き)
前記肘置き3は、座部2の両横側に位置し底部フレーム6bと接合し、背もたれ部1がリクライニングしても使用者の前腕を安定的に支持するようにカーブを有して形成されている。
【0017】
(4.脚載部)
前記脚載部4は、座部2の前側に位置し、右脚載部4aと左脚載部4bを備える。この右脚載部4aと左脚載部4bはそれぞれ使用者の脚当接面方向に傾動することが可能となっている。この右脚載部4aと左脚載部4bの傾動は、右脚載部4aと左脚載部4bが座部2の前端近傍に回動可能に支持され、フットレスト用の電動アクチュエータ8を駆動させて実現している。より詳細には、右リンク7aの一端を右脚載部4aのブラケットに連結し、右リンク7aの他端を上部フレーム6aの前端近傍に連結している。この右リンク7aはくの字形であり、中間部分が右フットレスト用の電動アクチュエータ8のロッドの先端と連結する。そうすることで、電動アクチュエータ8aが駆動してロッドが進出すると右リンク7aが押し上げられ、上部フレーム6aの連結部分を中心に左脚載部4bが上昇方向に回動する。逆に、電動アクチュエータ8が駆動してロッドが進出状態から後退すると右リンク7aが引き下げられ、上部フレーム6aの連結部分を中心に前記回動と逆方向に回動し左脚載部4bが下降する。この左脚載部4bのように、右側の右脚載部4aも同様に構成され、右脚載部4aと左脚載部4bを独立して回動することが可能となる。前記左脚載部4b用の電動アクチュエータ8の基端部分は上部フレーム6aの下方に垂設されたブラケット9aの下端部分に軸着されている。
【0018】
(5.メカユニット)
背もたれ部1内には背もたれ部1の上下方向に沿って形成されている1対のガイドレール11が配設されている。このガイドレール11にメカユニット10の左右に2つずつ設けられるガイドローラ13、14、15、16を挿嵌し、ガイドローラ14、16に隣接して設けられるピニオンギア17、18を介してメカユニット10の右側組付台19に配設された昇降モータ21からの運動が伝達され昇降モータ21の駆動に応じて昇降可能である。
【0019】
ガイドレール11はガイドローラ13、14、15、16を挿嵌可能に断面凹状に形成されている。昇降モータ21からの運動の伝達は、昇降モータ21の回転軸の先端に形成されたウォーム(図示しない)と、昇降軸22に装着したウォームホイール(図示しない)とが係合し、昇降モータ21が駆動することで回転軸(図示しない)が回転しウォームが回転し、係合するウォームホイールが回転することでピニオンギア17、18に回転力が伝達される。これらウォーム、ウォームホイール、回転軸は、ギアボックスにより被覆されている。
【0020】
昇降軸22はメカユニット10の下部に位置するように配設されており、右側組付台19の底部に配設されたギアボックス(正確にはギアボックスが被覆する軸受)と、左側組付台20の底部に配設された軸受により回動可能に支持されている。右側組付台19と左側組付台20の底部は断面凹状の連結杆25により連結されている。連結杆25を断面凹状としたのは各種モータへの電源ケーブル、エンコーダからの制御用ケーブルが、メカユニット10の昇降、揉み玉ユニット50a、50bの進退の邪魔にならないように前記凹部分にケーブルを敷設するためである。右側組付台19と左側組付台20の上部も中空杆26が架設されている。中空杆26の中央部分は奥手方向に曲折しており、揉み玉ユニット50a、50bが後退した場合でも揉み玉が中空杆26に接触しないようにするためである。中空杆26の両端にガイドローラ13、15が回動可能に取り付けられている。中空杆26自体は両端近傍部分をそれぞれ右側組付台19と左側組付台20に接合して固定されており回動しない。なお、連結杆25及び中空杆26は溶接により右側組付台19及び左側組付台20に接合している。
【0021】
揉み玉ユニット50a、50bは昇降軸22に装着され、昇降軸22を中心に回動可能になっている。右揉み玉ユニット50a及び左揉み玉ユニット50bはそれぞれ揉みモータ51a、51b、叩きモータ52a、52bからの運動を揉み玉53a、53bに伝達するための揉み機構、叩き機構を有しており、この揉み機構及び叩き機構が揉み玉ユニット50a、50bのハウジング54a、54bに内設されている。このハウジング54a、54bの上部に昇降軸22を中心として所定半径距離となる側面上辺を有するように曲折したラック55が所定間隔の複数箇所のネジ留めにより取り付けられている。このラック55と係合するピニオンギア56bが前記メカユニット10の上部に位置するように配設されている進退軸57bに装着されている。また、進退軸57bにはウォームホイール(図示しない)が装着されている。メカユニット10の左側組付台20に配設された進退モータ58の回転軸(図示しない)の先端に形成されたウォーム(図示しない)とウォームホイールが係合している。これらウォームホイール、回転軸、ウォームはギアボックスに内設されている。進退モータ58が回転することにより、回転軸及びウォームが回転し、係合するウォームホイールが回転する。このウォームホイールが回転することで、進退軸57が回転し、ピニオンギア56bも係合するラック55に沿って回転し、揉み玉ユニット50bが被施療者の背中方向に進退する。なお、進退軸57は右側組付台19の上部に配設された軸受と、左側組付台20の上部に配設されたギアボックスと(正確にはギアボックスが被覆する軸受)により回動可能に支持されている。
【0022】
右揉み玉ユニット50a及び左揉み玉ユニット50bがそれぞれ以上の構成を有するため、右揉み玉ユニット50a、左揉み玉ユニット50bそれぞれが単独で進退することができる。従って、右揉み玉ユニット50aの揉み玉53aのみを被施療者に当接するように突出することができる。
【0023】
なお、連結体59は昇降軸22と進退軸57a、57bを装着するものである。進退軸57a、57bは、連結体59でそれぞれ軸受けされており、一方の軸の回動に他方の軸は追随せずそれぞれ独立した回動を行う。つまり、右進退軸57aと左進退軸57bとは接合した構成となっていない。
【0024】
ハウジング54a、54bの上部には進退方向に延出して形成されるスケールが配設され、このスケールと組付台の裏側に配設されたセンサーと共にリニアエンコーダを構成し、このリニアエンコーダにより揉み玉ユニット50a、50bの進退位置を検出することができる。右揉み玉ユニット50a及び左揉み玉ユニット50bの進退位置をそれぞれに対応するリニアエンコーダにより検出することができる。
【0025】
叩きモータ52a、52bは揉み玉ユニット50a、50bのハウジング54a、54bの底部にネジ止めにより固定されている。ハウジング内部において叩きモータ52a、52bの回転軸(図示しない)の先端に原動プーリが形成され伝動ベルトを介して従動プーリに運動を伝達する。従動プーリは叩き軸の先端に装着されている。叩き軸には偏心させたロータを装着している。ロータにはロッドの先端が連結されており、ロータの回転によりロッドが上下する。ロッドの他端は揉み玉支持アーム77a、77bと揉み玉取り付け位置の反対位置で連結している。つまり、ロッドが上下することにより揉み玉支持アーム77a、77bも上下し、それに合わせて揉み玉53a、53bも上下することで施療の叩きを実現している。すなわち、クランク機構を構成し、モータからの回転力を所望方向の運動力に変えて揉み玉53a、53bを動かしている。右揉み玉ユニット50a及び左揉み玉ユニット50bも前記した構成となっており、それぞれ叩きの施療を実施することができる。
【0026】
揉み玉支持アーム77a、77bは中間部分で揉み軸に偏心したロータを介して装着している。揉み軸にはウォームホイール(図示しない)が装着され、揉みモータ51a、51bの回転軸(図示しない)の先端に形成されたウォーム(図示しない)と係合している。この係合を介して揉み軸が揉みモータ51a、51bの回転により回転することで、揉み軸のロータが偏心した回転を行い、揉み玉支持アーム77a、77bも円弧状に運動し、同様に、揉み玉53a、53bも円弧状に運動を行って施療の揉みを実現している。より正確には、揉み玉支持アーム77a、77bは揉み軸の中心軸に垂直になるようにロータに取り付けられているのではなく、左右の揉み玉支持アーム77a、77bを揉み玉53a、53bを取り付けている先端方向が拡開するように揉み軸の中心軸に対して斜めに傾斜して取り付けている。そうすることで、揉み玉53a、53bが揉み軸に垂直な平面を旋回するのではなく、前後方向に移動しながら左右の揉み玉53a、53bの離間距離を変える旋回となる施療の揉みを実現している。右揉み玉ユニット50a及び左揉み玉ユニット50bも前記した構成となっており、それぞれ揉みの施療を実施することができる。
【0027】
前記もみ軸、叩き軸、昇降軸22、進退軸57a、57bにはそれぞれの動作の駆動量(駆動角度)を検出するためのエンコーダが配設されている。それぞれのエンコーダは制御部5と接続されており、エンコーダが検出した駆動量に基づいて、制御部5が揉み、叩き、昇降、進退の動作を制御することができる。具体的には、例えば、もみ軸に配設されたエンコーダがもみの駆動量を検出することで、揉み玉53a、53bのもみ位置を特定することができる。そして、特定された揉み玉53a、53bの位置に応じて、制御部5が昇降モータ21の駆動速度を変更することが可能である。つまり、揉み玉53a、53bが内側にある場合に昇降モータの駆動速度を遅くして、外側にある場合に昇降モータの駆動速度を速くするといった動作を実現している。
【0028】
本実施例のマッサージ機のメカユニット10によるマッサージには、例えば、揉みモータ51a、51bを正回転させながら揉み玉53a、53bを上昇させていく揉み上げ、揉みモータ51a、51bを逆回転させながら揉み玉53a、53bを下降させていく揉み下げがある。また、揉み機構の代わりに叩き機構を利用することもできる。
【0029】
(6.揉み玉の動作)
図5は、本実施形態に係るマッサージ機によりマッサージを行った場合の揉み玉53a、53bの動きを被施療者Mの上面から見た場合の図である。
前記機構により揉み玉53a、53bは揉みの動作(図中の矢印A)の場合、揉み玉53a、53bが互いの離間距離dを縮めながら回動して被施療者Mに向かって突出する(ポジションI)。逆に、揉みを解放する動作(図中の矢印B)の場合は、揉み玉53a、53bが互いの離間距離dを伸ばしながら回動して被施療者Mから後退する(ポジションII)。この動きの連動により被施療者Mに対して揉みの施療を施すことができる。これは、前記でも示したように揉み玉53a、53bが駆動軸に対して偏心且つ傾斜して配設されていることで施療動作を実現している。
【0030】
図6は、本実施形態に係るマッサージ機によりマッサージを行った場合の揉み玉53a、53bの動きを被施療者Mの背面から見た場合の図である。
図5の場合と同様に、揉み玉53が揉みの動作(図中の矢印A)を行う場合、揉み玉53a、53bが互いの離間距離dを縮めながら被施療者Mに向かって突出する(ポジションI)。逆に、揉みの動作を解放する場合(図中の矢印B)においては、揉み玉53a、53bが互いの離間距離dを伸ばしながら被施療者Mから後退する(ポジションII)。また、この時、揉み玉53a、53bは矢印A、Bで示すように円を描くように回動して施療動作をする。 なお、ここでは回動としたが、これに限定せずに、例えば直線的な動作や波を打つような曲線的な動作でもよい。
【0031】
(7.揉み玉の昇降動作)
次に、揉み玉の昇降動作について説明する。図7は、本実施形態に係るマッサージ機のメカユニットの昇降動作を示す側面図である。
メカユニット10に設けられるガイドローラ13、14、15、16と、ガイドローラ14、16に隣接して設けられるピニオンギア17、18と、それらを介して配設された昇降モータ21により、メカユニット10はガイドローラ11に沿って昇降動作をすることができる。メカユニット10の昇降に伴って、メカユニット10に設けられた揉み玉も昇降動作をする。昇降モータ21の回転速度を制御することにより、メカユニット10の昇降速度を変化させることができる。従って、本実施形態のマッサージ機は、揉み玉自体の動きに加えてメカユニット10の昇降動作と、その速度変化による多様なマッサージを施すことができる。
【0032】
(8.揉み玉の昇降動作の速度変化)
図8は、本実施形態に係るマッサージ機の揉み玉の昇降動作における速度変化のタイムチャートを示したものである。
図中の○は下降時の速度を示しており、*は上昇時の速度を示している。これは、メカユニット10の自重により発生する速度差であるが、この速度差を考慮して昇降モータへの電流値を制御すれば、上昇時と下降時の速度をほぼ同じにすることが可能である。
【0033】
図8のタイムチャートにおいて、縦軸が揉み玉の昇降動作の速度を示し、横軸が揉み玉の位置を示している。ここでは、揉み玉の1周期分(揉みの動作を始めてから揉みの動作からの解放が完全に終了するまで)のみを示している。図中の位置0における揉み玉の位置は、図6で示したポジションII(揉み玉が互いに外側に位置)である。そして、ポジションIIから揉みの動作をスタートしてポジションI(揉み玉が互いに内側に位置)の揉みの動作を行うまでが半周期である。ポジションIから揉みの動作の解放を始めてポジションIIに戻って来るまでが1周期となる。
【0034】
図8からわかる通り、揉み玉が互いに内側の位置にある場合に上昇速度も下降速度も速くなっており、揉み玉が互いに外側の位置にある場合には上昇速度も下降速度も遅くなっている。つまり、揉み玉が内側にある場合は移動速度が速いため、揉み玉が広い領域を移動し、それにより広い領域を施療することができる。逆に、揉み玉が外側にある場合は移動速度が遅いため、揉み玉が狭い領域しか移動しない。このことから、ツボが集中している背骨近傍の領域を揉みの動作により広くマッサージすることができる。
【0035】
(9.揉み玉が移動する軌道)
図9は、本実施形態に係るマッサージ機の揉み玉が移動する軌道を示した模式図である。●はツボの位置を示している。図に示された通り、外側の領域に比べて内側の領域を多く施療することができることがわかる。しかも、ローリングマッサージではなく、揉み玉の動作には左右方向の動作と前後方向の動作も加わっているため、多様的で効果的なマッサージを行うことができる。また、多くのツボを刺激することができるため、被施療者Mが顕著なマッサージ効果を実感することができる。
【0036】
(本発明の第2の実施形態)
(1.揉み玉の回動動作の速度変化)
本発明の第2の実施形態に係るマッサージ機について図を用いて説明する。本実施形態に係るマッサージ機の構成は、第1の実施形態に係るマッサージ機と同様である。第1の実施形態と異なる点は、揉み玉の昇降速度の変化に加えて、揉み玉も回動速度の変化により被施療者の背骨近傍の内側領域に対し効果的にマッサージを行う点である。
【0037】
図10は、本実施形態に係るマッサージ機の揉み玉の回動動作における速度変化のタイムチャートである。
図10のタイムチャートにおいて、縦軸が揉み玉の回動動作の速度を示し、横軸が揉み玉の位置を示している。ここでは、揉み玉の1周期分(揉みの動作を始めてから揉みの動作からの解放が完全に終了するまで)のみを示している。図中の位置0における揉み玉の位置は、図6で示したポジションII(揉み玉が互いに外側に位置)である。そして、ポジションIIから揉みの動作をスタートしてポジションI(揉み玉が互いに内側に位置)の揉みの動作を行うまでが半周期である。ポジションIから揉みの動作の解放を始めてポジションIIに戻って来るまでが1周期となる。
【0038】
図10からわかる通り、揉み玉が互いに内側の位置にある場合には、揉み玉の回動動作の速度が遅くなっており、揉み玉が互いに外側の位置にある場合には、揉み玉の回動動作の速度が速くなっている。つまり、揉み玉が内側にある場合は回動速度が遅いため、揉み玉が内側に長い時間留まって施療することができる。逆に、揉み玉が外側にある場合は、回動速度が速いため揉み玉が外側に留まる時間は短くなる。このことから、ツボが集中している背骨近傍の領域を揉みの動作により広く長くマッサージすることができる。
【0039】
(2.揉み玉が移動する軌道)
図11は、本実施形態に係るマッサージ機の揉み玉が移動する軌道を示した模式図である。●はツボの位置を示している。図に示された通り、外側の領域に比べて内側の領域を多く施療することができるが、第1の実施形態と比較して、より多くの内側の領域を施療できることがわかる。しかも、第1の実施形態同様にローリングマッサージではなく、左右方向の動作と前後方向の動作も加わっているため、多様的で効果的なマッサージを行うことができる。また、より多くのツボを刺激することで、被施療者Mが顕著なマッサージ効果を実感することができる。
【0040】
(本発明の第3の実施形態)
(1.揉み玉の回動動作の速度変化の調整)
本発明の第3の実施形態に係るマッサージ機について図12を用いて説明する。本実施形態に係るマッサージ機の構成は、第1、第2の実施形態に係るマッサージ機と同様である。
図12に示すように、本実施形態では揉み玉の回動動作の速度変化を「大きい」「ふつう」「小さい」の3通りに変更可能とし、揉み玉の回動動作の速度を遅くする度合いを変更自在としている。図中の○は「大きい」の場合の速度変化を示しており、*は「ふつう」の場合の速度変化を示しており、■は「小さい」の場合の速度変化を示している。
【0041】
本実施例の具体例における揉み玉が外側の位置にある時の回動動作の速度は、速度変化が「大きい」「ふつう」「小さい」のいずれの場合も同じ最高速度とし、揉み玉が内側に移動するにつれて回動動作の速度を遅くし、「大きい」ではこの遅くする度合いが最も大きくなっており、「小さい」ではその度合いを最も小さくするように変化しているがこの例に限定されない。
【0042】
被施療者は好みに応じて「大きい」「ふつう」「小さい」の3通りの速度変化を選択出来、この速度変化の選択と昇降動作が合成することで、結果的に背骨近傍の揉み動作を行う割合を変更出来ることになる。
【0043】
本実施例において速度設定された例を、本マッサージ機の揉み動作の最高速度を80とした場合の相対値で表すと、図12に示すように「大きい」場合、速度は80から40の変化があり、「ふつう」の場合、速度は80から55の変化があり、「小さい」場合、速度は80から75の変化があるようにした。
【0044】
なお、この揉みの動作を昇降動作と複合させると上述のように揉み玉が内側に存在している時間が変更可能になるが、本実施例の場合、特に、揉み玉が外側の位置にある時の回動動作の速度は、速度変化が「大きい」「ふつう」「小さい」のいずれの場合も同じ最高速度としているので、揉み玉が内側に存在している時間が相対的に長くなり、背骨近傍の領域を長い時間に亘って揉み動作を実行させるには有利である。
【0045】
ところで、各実施形態のマッサージ機はいずれの場合も昇降動作を伴わず揉み玉の回動動作のみで揉み動作を行う事が出来るが、揉み動作に速度調整をさせる場合、一般的には回動動作の全体に亘って速度を変更させるものである。しかしながら、揉み玉が内側に位置しているときに最も突出する機構の場合、内側においてよりマッサージ効果が発揮されているので、内側においての動作速度が体感的な速度として認識されるが、発明者は、速度の実感は内側における回動動作の速度の値だけでなく、遅くする度合いも重要であり、被施療者はこの速度を遅くする度合いが大きいほど低速の体感を有すことを知見した。これは内側と外側の動作速度の差があればあるほど揉み玉が内側に存在している時間が長くなり、内側における揉み動作の速度が同じであっても、内側と外側の速度の差がある時のほうが低速を体感している時間が長くなり、印象としてより低速を実感できるものと推測される。よって、上記図12の速度変化を揉み動作の動作速度の速度調整として適用すれば、今まで以上に各速度間の違いを体感出来る。
【0046】
なお、揉みの動作速度、メカユニット10の昇降動作の動作速度は、昇降モータ21、右揉みモータ51a、左揉みモータ51b、右進退モータ58a、及び左進退モータ58bの駆動速度を変更し、制御することにより実現可能である。
【0047】
また、揉み上げ、及び揉み下げの動作、並びに揉み玉の上昇、及び下降する動作を組み合わせることで様々な揉みのバリエーションを実現することができる。例えば、揉み上げ時に、揉み玉が被施療者の背部の内側にある場合に揉み玉を上昇させると、背骨近傍の領域を揉みの動作により広く長く、さらに強く刺激してマッサージすることができる。
【0048】
また、本発明に係るマッサージ機は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な形態で実現することができる。
さらに、本発明に係るマッサージ機は椅子式のマッサージ機に限定されず、介護用ベッド等のマッサージ機能がついたものであれば何でも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施形態に係るマッサージ機の全体斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係るマッサージ機の側面断面図である。
【図3】第1の実施形態に係るマッサージ機のメカユニットの正面図である。
【図4】第1の実施形態に係るマッサージ機のメカユニットの側面図である。
【図5】第1の実施形態に係るマッサージ機の揉み玉の動作を被施療者の上面から見た場合の上面図である。
【図6】第1の実施形態に係るマッサージ機の揉み玉の動作を被施療者の背面から見た場合の背面図である。
【図7】第1の実施形態に係るマッサージ機のメカユニットの昇降動作を示す側面図である。
【図8】第1の実施形態に係るマッサージ機の揉み玉の昇降動作における速度変化のタイムチャートである。
【図9】第1の実施形態に係るマッサージ機の揉み玉が移動する軌道を示した模式図である。
【図10】第2の実施形態に係るマッサージ機の揉み玉の回動動作における速度変化のタイムチャートである。
【図11】第2の実施形態に係るマッサージ機の揉み玉が移動する軌道を示した模式図である。
【図12】第2の実施形態に係るマッサージ機の揉み玉の回動動作における複数パターンの速度変化のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 背もたれ部
2 座部
3 肘置き
4 脚載部
4a 右脚載部
4b 左脚載部
5 制御部
6a 上部フレーム
6b 底部フレーム
7a 右リンク
8 フットレスト用電動アクチュエータ
9a ブランケット
10 メカユニット
11 ガイドレール
13 ガイドローラ
14 ガイドローラ
15 ガイドローラ
16 ガイドローラ
17 ピニオンギア
18 ピニオンギア
19 右側組付台
20 左側組付台
21 昇降モータ
22 昇降軸
25 連結杆
26 中空杆
31 リクライニング用電動アクチュエータ
50a 右揉み玉ユニット
50b 左揉み玉ユニット
51a 右揉みモータ
51b 左揉みモータ
52a 右叩きモータ
52b 左叩きモータ
53a 右揉み玉
53b 左揉み玉
54a 右ハウジング
54b 左ハウジング
56a 右ピニオンギア
56b 左ピニオンギア
57a 右進退軸
57b 左進退軸
58a 右進退モータ
58b 左進退モータ
59 連結体
77a 右揉み玉支持アーム
77b 左揉み玉支持アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者の背部と接触する背もたれ部を備え、当該背もたれ部には当該被施療者に向かって突出しながら互いに接近して回動動作をすると共に、昇降動作をする少なくとも1対の揉み玉を備えるマッサージ機において、
前記揉み玉が、回動動作の左右方向の内側に位置している場合に、当該揉み玉の昇降動作の速度を速くすることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
請求項1に記載のマッサージ機において、
前記揉み玉が、回動動作の左右方向の内側に位置している場合に、当該揉み玉の回動動作の速度を遅くすることを特徴とするマッサージ機。
【請求項3】
請求項2に記載のマッサージ機において、
揉み玉の回動動作の速度を遅くする度合いを変更可能とすることを特徴とするマッサージ機。
【請求項4】
請求項3に記載のマッサージ機において、
前記度合いの変更は揉み玉が外側にある時の動作速度の最高速度を維持して、実行されることを特徴とするマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−302059(P2008−302059A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152740(P2007−152740)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【出願人】(000136491)株式会社フジ医療器 (137)
【Fターム(参考)】