説明

マッサージ機

【課題】 エアポンプ出力の小さなものでも、素早く人体に捻りを与えて、メリハリの利いた捻りマッサージを行えるマッサージ機を提供することを目的とする。
【解決手段】 人体を受ける背凭れ部20に左右一対配設され、エアポンプからの圧縮空気の供給を受けて膨張するエアバッグ30、32を具え、予め左右一対のエアバッグ30、32を所定量膨張させた状態で保持しておき、一方のエアバッグを膨張させると同時に他方のエアバッグを収縮させ、両エアバッグ30、32の動きの総和で人体を傾かせて人体に捻りマッサージを施し、該捻りマッサージ終了後は、左右一対のエアバッグを所定量膨張させた状態で保持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグによって、人体の例えば上半身に捻りマッサージを施すことのできるマッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被施療者の腰掛ける椅子の座部や背凭れ部の左右に、エアポンプからの圧縮空気の供給を受けて膨張するエアバッグを配置し、この左右のエアバッグを交互に膨張させて上半身に捻りマッサージを施すようにしたマッサージ機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−65779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エアバッグを膨張させるための時間は、エアポンプの出力に依存し、ポンプ出力の小さいものは、エアバッグを最大限膨張させるまでに時間がかかってしまい、メリハリの利いた捻りマッサージを行うことができない。一方出力の大きなポンプは、コストもかかりまた騒音の問題もある。
【0004】
本発明の目的は、ポンプ出力の小さなものでも、素早く人体に捻りを与えて、メリハリの利いた捻りマッサージを行うことのできるマッサージ機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明のマッサージ機は、
人体を受ける人体受け面に左右一対配設され、エアポンプからの圧縮空気の供給を受けて膨張するエアバッグを具え、
予め左右一対のエアバッグを所定量膨張させた状態で保持しておき、一方のエアバッグを膨張させると同時に他方のエアバッグを収縮させて人体に捻りマッサージを施し、該捻りマッサージ終了後は、左右一対のエアバッグを所定量膨張させた状態で保持するようにしたものである。
【0006】
捻りマッサージは、一方のエアバッグを膨張させると同時に他方のエアバッグを収縮させるという動作を左右交互に繰り返すのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマッサージ機によれば、左右一対のエアバッグを予め所定量膨張させた状態で保持しておき、この状態から一方のエアバッグは膨張させ、他方のエアバッグは収縮させ、両エアバッグの動きの総和で人体を傾かせるので、エアバッグを膨張させるために供給すべき空気量が少なくてすみ、時間も短くなり、スピーディに体を傾けさせることができて、メリハリの利いた捻りマッサージを施すことができる。また、捻りマッサージは、左右一対のエアバッグを予め所定量膨張させた状態で終了させるので、終了までの時間も短縮でき、また左右一対のエアバッグはマッサージ終了後のクッションとしての機能も果たす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明のマッサージ機を、椅子型マッサージ機(10)に適用した場合について説明するが、本発明は、マット型のマッサージ機にも適用できることは勿論である。
【0009】
椅子型マッサージ機(10)は、台座フレーム(11)の上部に形成され、被施療者の腰掛ける座部(12)と、該座部(12)の後端に揺動可能に支持された背凭れ部(20)、座部(12)の両側に形成された肘掛け部(14)(14)、被施療者のふくらはぎ等をマッサージするレッグレスト(15)とを具える。また、肘掛け部(14)には、マッサージ機(10)を操作し、また、マッサージ機(10)の種々の表示を行なう操作器(17)が配備されている。
【0010】
背凭れ部(20)、座部(12)及びレッグレスト(15)には、夫々圧縮空気の供給、排出により、膨張、収縮するエアバッグ(30)(32)(40)(13)(16)等からなるマッサージ手段が配備されている。
【0011】
図1及び図2に示すように、背凭れ部(20)には、被施療者の背中(70)の当たる部分(図3参照)に左右一対の施療用エアバッグ(30)(32)が配備されており、該施療用エアバッグ(30)(32)の上側には、頭部(72)の当たる部分を挟むように(図3参照)、左右一対の頭部保持用エアバッグ(40)(40)が配備されている。
【0012】
施療用エアバッグ(30)(32)及び頭部保持用エアバッグ(40)(40)は、図示しないエアポンプ接続されている。各エアバッグ(30)(32)及び(40)(40)とエアポンプとを接続する配管には、夫々電磁バルブが介在されている。電磁バルブは、所謂三方弁であり、各エアバッグ(30)(32)及び (40)(40)は、各々の配管に介在された電磁バルブを開くことにより、エアポンプと連通してエアポンプより圧縮空気が供給されて膨張し、電磁バルブ(図示せず)が閉じることにより、エアバッグとエアポンプとの連通を遮断すると共にエアバッグを大気と連通させてエアバッグ内の空気を排気して収縮し、さらに、エアバッグとエアポンプとの接続を断つと共に、エアバッグを大気からも遮断し、エアバッグ内の空気が排気されないようにする遮断位置を有している。各エアバッグ(30)(32)及び (40)(40)は、対応する電磁バルブの操作により夫々独立して膨張、収縮等の動作をする。各電磁バルブは、被施療者による操作器(17)の操作や、プログラムにより、夫々制御可能となっている。
【0013】
座部(12)のエアバグ(13)(13)、レッグレスト(15)のエアバッグ(16)(16)も同様に電磁バルブを介してエアポンプに接続され、独立して動作する。
【0014】
背凭れ部(20)、座部(12)、レッグレスト(15)は、クッション、カバー等により覆われており、エアバッグ(30)(32)(40)(13)(16)は外部からは見えない。また、被施療者の頭部(72)が当たる部分には、別途枕状のクッション(22)を配備することができる。
【0015】
施療用エアバッグ(30)(32)は、背凭れ部(20)の長手方向に沿って延びる略平行四辺形又は略長方形の形状とすることができ、背凭れ部(20)の中心(被施療者の背骨の当たる位置)を挟んで、左右対称に配置される。図1乃至図3に示すように、施療用エアバッグ(30)(32)は、背凭れ部(20)の上側(頭部側)の間隔が広く、下側に向かうほど間隔が狭くなる略V字状に配置することが望ましい。被施療者の肩側の間隔を広くすることで、後述する捻りマッサージ時に、被施療者の上半身を大きく捻ることができる。
【0016】
頭部保持用エアバッグ(40)(40)は、枕状クッション(22)の後面に配備されており、膨張時に、図4(b)及び図4(c)に示すように、被施療者の頭部(72)を挟み込むように膨らんで保持し、頭部(72)の左右動や回転を阻止する。
【0017】
上記した椅子型マッサージ機(10)において、被施療者が座部(12)に腰掛けて、背凭れ部(20)に凭れた状態で、マッサージを開始すると、左右一対の施療用エアバッグ(30)(32)は、同時に所定量だけ圧縮空気が供給されて、例えば図4(a)の如く、最大膨張時の半分ほど膨張した状態に保持される。
【0018】
操作器(17)の操作、又はプログラム制御により、捻りマッサージが選択されると、頭部保持用エアバッグ(40)(40)は、図4(b)及び図4(c)に示すように、膨張し、被施療者の頭部(72)を保持する。この状態で、図4(b)に示すように、一方の施療用エアバッグ(32)が膨張し、同時に他方のエアバッグ(30)が収縮する。その結果、右上半身が前方へ押し出され左上半身が後方へ引き寄せられ、背骨を中心とした左捻り方向の力を受け、捻りマッサージが施される。
【0019】
この捻りマッサージは、左右一対の施療用エアバッグ(30)(32)を予め所定量膨張させた状態で保持しておき、この状態から一方のエアバッグ(32)は膨張させ、他方のエアバッグ(30)は収縮させ、両エアバッグ(30)(32)の動きの総和で人体を傾かせるので、エアバグ(32)を膨張させるために供給すべき空気量が少なくてすみ、時間も短くなり、スピーディに体を傾けさせることができて、メリハリの利いた捻りマッサージを施すことができる。また、膨張させるための時間を短縮させるのにエアポンプの出力を大きくする必要もなく、小型のエアポンプでよく、エアポンプ運転時の騒音も小さくできる。
【0020】
次に膨張していた一方の施療用エアバッグ(32)を収縮させ、同時に他方のエアバッグ(30)を膨張させる。その結果、図4(c)に示すように、左上半身が前方へ押し出され右上半身が後方へ引き寄せられ、背骨を中心とした右捻り方向の力を受け、図4(b)とは逆方向の捻りマッサージが施される。
【0021】
またこの捻りマッサージを施す際、被施療者の頭部(72)は、頭部保持用エアバッグ(40)(40)により左右動及び回転が不能な状態に保持されているから、頭部は前方を向いたままで肩から腰にかけての上半身のみ背骨を中心に捻られるので、効果的な捻りマッサージとなる。特に、施療用エアバッグ(30)(32)を図1乃至図3に示すように、略V字状に配置しているから、被施療者の肩を効果的に前方に押し出すことができ、大きな捻り方向の力を被施療者の上半身に作用させることができる。
【0022】
上記左右交互の捻り動作を繰り返すことで、被施療者の上半身に背骨を中心とした捻りマッサージが施され、背骨の矯正、背中(70)の筋肉及び筋のほぐし、ストレッチ等の効果の高いマッサージを受けることができる。
【0023】
捻りマッサージの終了時は、図4(a)の如く左右一対の施療用エアバッグ(30)(32)に、所定量だけ圧縮空気が供給された状態で終了する。従って、終了までの時間も短縮でき、また終了後も左右一対のエアバッグには所定量の空気が供給された状態なので、マッサージ終了後のクッションとしての機能も果たす。
【0024】
なお、施療用エアバッグ(30)(32)は略V字状に配置されているが、図5の如く背骨に平行に配置しても良く、また、頭部保持用エアバッグ(40)(40)を省略し、又は、膨張させなくともよい。
【0025】
また、両施療用エアバッグ(30)(32)を同時に膨張させることで、押圧マッサージを施すことも、勿論可能である。
【0026】
以上の説明では、背凭れ部(20)に設けた施療用エアバッグ(30)(32)により背中に対して捻りマッサージを施す場合について述べたが、座部(12)のエアバッグ(13)(13)に対しても同様の動きをさせることにより、臀部から大腿部にかけて捻りマッサージを施すことも可能である。
【0027】
ところでエアバッグに圧縮空気を供給するエアポンプは、外形は殆ど同じでも出力の異なるものを使用する場合がある(例えばエアポンプを2社購買する場合など)。どのポンプを使用してもエアバッグは同じように膨張しなければならない。そのために、夫々のポンプ(ここでは、ポンプAとポンプBとする)用の制御基板が必要となる。サービス対応時には、どちらのポンプが使用されているか分からないために、2種類の制御基板を用意しなければならないという問題がある。
【0028】
そこで、制御基板は一つでも、生産組立て時に使われるポンプを判別して、エアバッグを、使用されるポンプにかかわらず同じように膨張させることのできる方法を説明する。
【0029】
図6は、一般的なエアポンプとエアバッグの電気回路及び配管図を示す。エアポンプ(A又はB)(50)とエアバッグA、B、Cとの通路には、夫々電磁弁A、B、Cが介在されている。エアポンプ(A又はB)へは、商用電源AC100VをAC−DC変換器(51)とDC−AC変換器(52)により生成された交流電圧が加えられ、エアポンプ(A又はB)は駆動される。エアポンプ(A又はB)は、電磁ポンプである。
【0030】
エアポンプ(A又はB)や電磁弁A、B、C等を制御する制御部(53)は、マイコン(54)を中心に構成され、マイコン(54)には、各種マッサージ動作指令を入力する操作部(55)(図ではキー入力と表示)、動作状態等を表示する表示部(56)、メモリ(57)が接続されている。制御部(53)へは、AC−DC変換器(51)から電源回路(58)(図では制御部電源変換と表示)を介して電圧が加えられる。マイコン(54)からは、DC−AC変換器(52)や、エアポンプ(A又はB)(50)や電磁弁A、B、C等に動作信号が送信され、エアポンプ(A又はB)へ印加される入力電圧の周波数や電圧値が調整され、エアポンプ(A又はB)の出力が調整され、また、電磁弁A、B、Cの開閉が制御される。
【0031】
ここで、生産組立て時に使われるエアポンプ(A又はB)を判別して、エアポンプの出力を調整する動作を、図7に基づいて説明する。操作部(55)から入力があれば(ステップ1・・・以下図ではS1と表示する。以下同じ)、それがエアポンプを判別する命令かどうかを判定し(ステップ2)、エアポンプを判別する命令でなければ通常のマッサージ運転を開始する(ステップ3)。エアポンプを判別する命令なら、エアポンプを駆動してエアバッグ(A〜Cのうちの一つ)に空気を送る(ステップ4)。
【0032】
エアバッグが最大膨張すると、エアポンプの電流値が増加する。この電流値の増加するタイミングは、エアポンプの出力の大きなものでは早く、出力の小さなものでは遅い。ここでは電流値が増加するタイミングを3段階に分けてポンプの出力を判別する。エアポンプの駆動から電流値が増加するまでの時間Tが、A≦T<Bならば、エアポンプの出力が大きいと判断し、マイコン(54)からエアポンプの出力を抑えるような信号を出し、この情報をメモリ(57)へ記憶する(ステップ5のYES、ステップ8、ステップ11)。時間Tが、B≦T<Cならば、エアポンプの出力が標準と判断し、マイコン(54)からエアポンプの出力がやや大きくなるような信号を出し、この情報をメモリ(57)へ記憶する(ステップ5のNO、ステップ6のYES、ステップ9、ステップ11)。時間TがC≦Tならば、エアポンプの出力が小さいと判断し、マイコン(54)からエアポンプの出力が大きくなるような信号を出し、この情報をメモリ(57)へ記憶する(ステップ6のNO、ステップ7のYES、ステップ10、ステップ11)。ステップ7において、C≦Tでもなければ、エアポンプが異常と判定し、全出力を停止する。(ステップ7のNO、ステップ12、ステップ13)。ここで、A<B<Cとする。
【0033】
このように、生産組立て時に、使われているエアポンプの出力の大きさを判別し、出力が異なっても、エアバッグの膨張速度が同じになるように、エアポンプの出力を調整して、この調整具合をメモリ(57)に記憶して、以後、この記憶した情報を基にエアポンプの出力を自動的に調整するので、エアポンプの出力毎に専用の基板は必要とせず、基板の共通化を図ることができる。従って、サービス性も向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、被施療者の上半身に捻りマッサージを施すことのできるマッサージ機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の椅子型マッサージ機の斜視図である。
【図2】本発明の椅子型マッサージ機の正面図である。
【図3】施療用エアバッグ及び頭部保持用エアバッグの被施療者に対する配置を説明する説明図である。
【図4】捻りマッサージを施す状態の説明図で、(a)は待機状態を示し、(b)(c)は、捻り動作の実行時を示す。
【図5】本発明の他の実施例の椅子型マッサージ機の斜視図である。
【図6】エアポンプや電磁弁の駆動回路の一例を示す回路図である。
【図7】使われるエアポンプの出力を判定して、エアポンプの出力を調整するためのフローチャートを示す。
【符号の説明】
【0036】
(20) 背凭れ部(人体受け面)
(30) 施療用エアバッグ
(32) 施療用エアバッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を受ける人体受け面に左右一対配設され、エアポンプからの圧縮空気の供給を受けて膨張するエアバッグを具え、
予め左右一対のエアバッグを所定量膨張させた状態で保持しておき、一方のエアバッグを膨張させると同時に他方のエアバッグを収縮させて人体に捻りマッサージを施し、該捻りマッサージ終了後は、左右一対のエアバッグを所定量膨張させた状態で保持するようにしたことを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記捻りマッサージは、一方のエアバッグを膨張させると同時に他方のエアバッグを収縮させるという動作を左右交互に繰り返すものである請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記人体受け面は、背中を受ける背凭れ部である請求項1又は請求項2に記載のマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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