説明

マッサージ機

【課題】調整範囲が広く且つ応答性の良い強弱調整を行う。
【解決手段】人体背面を支える支持面と、この支持面に設けられた開口部を通じて人体背面に接触するマッサージ用の施療子21と、該施療子にマッサージ動作を行わせる駆動手段とを備えるとともに、上記施療子の位置を変化させることで施療子による施療強度を変化させる第1の強弱駆動部と、上記支持面の位置を変化させることで施療子による施療強度を変化させる第2の強弱駆動部3と、上記2つの強弱駆動部の動作及び上記駆動手段の動作を制御する制御回路とを備える。第1の強弱駆動部による強弱調整に加え、支持面を移動させる第2の強弱駆動部によっても強弱調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機、殊にその施療強度の強弱調整機能に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の背もたれなどにマッサージ機構を組み込んで人体の背面に対してマッサージを行うことができるようにしたマッサージ機においては、その施療強度の強弱調整を行うにあたって、上記マッサージ機構そのものに施療子の人体側への突出量を変化させることで強弱調整を行うようにしたもの(特許文献1)と、上記背もたれの前面などの人体の背面を支持する支持面と上記マッサージ機構との間隔を変化させることができるようにすることで強弱調整を行うようにしたもの(特許文献2)とがある。
【0003】
ここにおいて、マッサージの強弱の個人的な好みに対応させるには、強弱調整範囲はできるだけ大きくとることが好ましいのであるが、前者の強弱調整機構は、構造上、マッサージ機構の大型化を招くことなく強弱調整範囲を大きくすることは困難である。特に特許文献1に示されたものでは、アームを回動させてその角度を変えることで強弱調整を行うために、強弱調整量を大きくするにはアームの長さを長くしなければならず、そしてアームの長さを長くすれば、上下の位置調整範囲も大きくしなくてはならないために、更に大型化を招いてしまうことになる。
【0004】
後者においては、マッサージ機構側に強弱調整のための機構を必要としないが、支持面全体を動かさなければならないために、どうしても強弱調整の応答性が低く、例えば施療が強すぎて使用者が痛みを感ずるような時に、施療強さを即座に弱にすることができない。
【特許文献1】特開2006−34635号公報
【特許文献2】特開2004−181153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、強弱調整範囲が広く且つ応答性の良い強弱調整を行うことができるマッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係るマッサージ機は、人体背面を支える支持面と、この支持面に設けられた開口部を通じて人体背面に接触するマッサージ用の施療子と、該施療子にマッサージ動作を行わせる駆動手段とを備えるとともに、上記施療子の位置を変化させることで施療子による施療強度を変化させる第1の強弱駆動部と、上記支持面の位置を変化させることで施療子による施療強度を変化させる第2の強弱駆動部と、上記2つの強弱駆動部の動作及び上記駆動手段の動作を制御する制御回路とを備えていることに特徴を有している。第1の強弱駆動部による強弱調整に加えて、支持面を移動させる第2の強弱駆動部によっても強弱調整を行えるようにしたものである。
【0007】
上記制御回路は、第2の強弱駆動部でラフな強弱調整を、第1の強弱駆動部で強弱の微調整を行わせるものが好ましい。ラフな強弱調整は支持面を移動させて使用者に負荷をかけることがないようにし、強弱微調整は応答性の良い第1の強弱駆動部で行うことで、常に適切な強弱調整動作を得ることができる。
【0008】
また、上制御回路は、第2の強弱駆動部によってセットされた所定の強弱位置で施療子によるマッサージ動作を開始させるものであると、あらかじめお薦めの強弱位置から開始できることにより、施療者にお薦めのマッサージ強さを提供することができる。
【0009】
上記所定の強弱位置は使用者からの操作入力で与えられた位置であってもよい。使用者の好みに合わせることができる。
【0010】
そして、施療子を人体背面に沿って動かす移動機構と、施療子と人体との接触圧を検出する圧力センサとを備えるとともに、上記制御回路は上記移動機構で施療子を動かした際の圧力センサの出力変化から人体の背面形状を認識して、該認識結果に基づいて強弱調整の初期設定動作を行うものであれば、使用者の体格や形状に合わせて自動的に強弱量を調整することができ、使用者が強弱調整のための操作をする必要がなくなる。
【0011】
初期設定動作の後も、圧力センサの出力変化に応じて制御回路は強弱調整動作を行わせるものであれば、マッサージ中の使用者の姿勢変化などにも追随して適切な施療強度でのマッサージを行うことができる。
【0012】
また、第2の強弱駆動部が支持面に配されて膨張収縮制御されるエアバッグであると、第2の強弱駆動部による強弱調整時に違和感を感じず、また体格の異なる人が座ってもエアバッグが背中にならって持ち上げることができる。
【0013】
複数のエアバッグを人体の上下方向において並べて配設したものとしてもよく、この場合、肩と腰部とで異なる施療強度に設定したりすることができて、バリエーションに富んだ施療が実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、第1の強弱駆動部に加えて第2の強弱駆動部を備えるために、両強弱駆動部を共に動作させることで強弱調整範囲を広くとることができるとともに、応答性の良さが求められる強弱調整動作はそれに応ずることができる強弱駆動部(第1の強弱駆動部)で行えばよいために、応答性が問題となるようなこともないものであり、また第1の強弱駆動部自体はその強弱調整範囲を大きくしなくても済むためにマッサージ機構の大型化を招くことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、図1は外装を外した状態の椅子型マッサージ機1を示しており、フレーム10と背もたれ11と座部12と肘掛け部13と脚載せ台14とからなるとともに、背もたれ11内にマッサージ機構2を内蔵している。
【0016】
上記マッサージ機構2は、総計4個の施療子21を備えているとともに、これら施療子21を動かすことで、背もたれ11に持たれた人体の背面に対してマッサージを行う駆動部を備えたもので、背もたれ11内のフレーム(図示せず)に上下に自走自在に配設されることで、施療子21の上下方向位置を変更することができるものとなっている。
【0017】
また、上記マッサージ機構2は、施療子21にマッサージのための動きを行わせるための機構部のほか、背もたれ11の前後方向における施療子21の位置を変更することで、施療子21によるマッサージの施療強度の強弱を調整することができる強弱駆動部22(図2参照)を備えている。
【0018】
なお、上記マッサージのための動きを行わせるための機構部や上記強弱駆動部22、上記上下自走のための機構については、どのような構成のものであってもよいために、ここでは説明を省略するが、例えば前記特許文献1に示されたものを用いることができる。また、上記強弱駆動部22としては、マッサージ機構全体を前後に動かすことで施療子21の位置を変化させる構造のものであってもよく、この場合、強弱調整範囲を更に大きくとることが容易となる。
【0019】
一方、背もたれ11はその前面の幅方向中央部が開口して上記施療子21の可動空間となっているとともに、その前面左右には夫々縦長のエアバッグ30,30が配設されている。図2に示すように、夫々電磁弁32を介してエアポンプ31に接続された上記エアバッグ30は、その膨張収縮により、背もたれ11に持たれる人体背面の位置を前後に移動させて施療子21から人体背面までの距離を変化させることで、施療子21が人体背面に接する圧力を変えるものであり、これらエアバッグ30とエアポンプ31と電磁弁32とで第2の強弱駆動部3を構成している。
【0020】
なお、エアバッグ30は図4に示すように複数個を縦に並べたものであってもよい。この場合、人体の肩のみ、あるいは腰部のみをエアバッグ30の膨張で持ち上げるといった特定の施療部位に対する強弱調整が可能となり、バリエーションに富んだ施療が実現できる。
【0021】
第2の強弱駆動部3にしても、例えばモータやリンク機構などを用いて、人体背面を支持する支持面を前後に動かすことができるものであれば、どのような構成のものであってもよく、上記エア駆動のものに限定されるものではないが、図10に示すように、背もたれ11の前面(支持面)が人体の背面形状に合わせた曲面を持つものにおいても、エアバッグ30を用いた場合、上記曲面に合わせた動きを行わせることができる。
【0022】
ただし、強弱駆動部22によるところの施療子21の強弱調整のための前後移動ストロークをS1、強弱駆動部3による人体背面を受ける支持面の前後方向移動ストロークをS2とする時、図3に示すように両ストロークS1,S2の範囲が重なるようにしておくとともに、強弱駆動部3でエアバッグ30を最も膨張させた時(最弱にセットした時)、強弱駆動部22による強弱調整の実効量が少しだけとなるように上記重なりを設定しておくのが好ましい。
【0023】
また、このマッサージ機では、上記強弱駆動部22によるところの施療子21の強弱位置(突出量)を検出する強弱センサ23と、人体に施療子21が接する圧力を検出する圧力センサ24を備えており、これらセンサ23,24及び操作器40が上記強弱駆動部22,3の動作を制御する制御回路4に接続されており、該制御回路4は強弱調整に際し、上記強弱駆動部22,3を次のように制御する。
【0024】
すなわち、このマッサージ機では、強弱調整範囲を図5に示すように、0(最弱)〜5(最強)の5ステップに分ける時、ステップの移行(図中M2)は強弱駆動部3で、1ステップ内での強弱調整(図中M1)は強弱駆動部22で行うようにしている。大まかな強弱調整はエアバッグ30の膨張収縮による人体背面の支持面の移動で行い、人体の形状などの微小変化などに対応するための細かい強弱調整は応答性の良い強弱駆動部22で行うのである。小範囲の強弱調整をゆっくりと行うと、使用者にしてみれば強弱調整がなされているのかどうか判らないし、施療子21を人体背面に沿って動かしていく「さすり」マッサージを行う時など、人体形状の変化への対応への遅れは痛みの原因となるからである。
【0025】
なお、強弱駆動部22による微調整を可能とするために、強弱駆動部3による強弱調整に際しては、強弱駆動部22をその調整範囲のほぼ中間位置に常に戻すようにしている。このために、強弱駆動部3でラフな強弱設定を行った後の強弱駆動部22による施療強度の微調整は、強側にも弱側にも可能である。ただし、最強位置では弱側にのみ、最弱位置では強側にのみ微調整が可能としてもよい。
【0026】
電源を投入してから最初のマッサージ動作は、図6に示すように、予め設定された(あるいは使用者が予め選択した)施療強度に強弱駆動部3がセットした後に開始するようにしておくのが好ましい。そして圧力センサ24で検出される圧力の小範囲内の変動に応じて、制御回路4は強弱調整機構22によって施療強度のフィードバック制御を行う。
【0027】
ただし、検出される圧力が大きく変化した時や、操作器40に施療強度の変更についての入力があった時には、強弱駆動部3によってラフな強弱調整を行い、次いで強弱駆動部22による細かい強弱調整を行う。
【0028】
強弱駆動部22による施療子21の位置を動かす強弱調整は、施療子21で何らかの施療動作を行っている時に行うと、施療動作に影響を与えてしまい、必要以上に強い力が人体に作用してしまう虞があるが、強弱駆動部3による強弱調整はこのような心配がないために、強弱調整の微調整は応答性の良い強弱駆動部22で、強弱調整の広範囲な調整は使用者に負荷をかけない強着駆動部3によって行うことで、適切に強弱調整を行うことができる。
【0029】
図7は施療子21を人体背面に沿って上下動させることで「背筋伸ばし(さすり)」マッサージを行う時の圧力センサ23の出力変化に対する応答例を示している。区間K1は施療子11の突出量(強弱位置)を一定にしたまま施療子21を上下動させて、人体の背面形状を検出している区間であり、図中K2は上記「背筋伸ばし」のマッサージのための施療強度の設定動作区間を、以降は圧力センサ23のフィードバックで強弱調整をしている区間である。
【0030】
また、図8は施療子21と人体との接触圧力を所定値(ここでは図中の2)にセットした時の圧力センサ23の圧力によるフィードバック動作を示しており、所定値に達していなかったり、所定値を大きく越える時には強弱駆動部3で強弱調整を行い、所定値近辺での強弱調整は強弱駆動部22で行う。
【0031】
図9に圧力センサ(体圧センサ)によるフィードバック動作についてのフローチャートを示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態の一例の外装カバーを外した状態の斜視図である。
【図2】同上のブロック回路図である。
【図3】同上の強弱調整範囲S1,S2を示す側面図である。
【図4】他例の斜視図である。
【図5】同上の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図6】同上の他の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図7】同上の圧力センサーで検出した圧力に基づくフィードバックについての説明図である。
【図8】同上の圧力センサーで検出した圧力に基づく他のフィードバックについての説明図である。
【図9】同上の動作を示すフローチャートである。
【図10】別の例の斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 マッサージ機
2 マッサージ機構
3 強弱駆動部
11 背もたれ
21 施療子
22 強弱駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体背面を支える支持面と、この支持面に設けられた開口部を通じて人体背面に接触するマッサージ用の施療子と、該施療子にマッサージ動作を行わせる駆動手段とを備えるとともに、上記施療子の位置を変化させることで施療子による施療強度を変化させる第1の強弱駆動部と、上記支持面の位置を変化させることで施療子による施療強度を変化させる第2の強弱駆動部と、上記2つの強弱駆動部の動作及び上記駆動手段の動作を制御する制御回路とを備えていることを特徴とするマッサージ機
【請求項2】
上記制御回路は、第2の強弱駆動部でラフな強弱調整を、第1の強弱駆動部で強弱の微調整を行わせるものであることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項3】
上制御回路は、第2の強弱駆動部によってセットされた所定の強弱位置で施療子によるマッサージ動作を開始させるものであることを特徴とする請求項2記載のマッサージ機。
【請求項4】
所定の強弱位置が使用者からの操作入力で与えられた位置であることを特徴とする請求項3記載のマッサージ機。
【請求項5】
施療子を人体背面に沿って動かす移動機構と、施療子と人体との接触圧を検出する圧力センサとを備えるとともに、上記制御回路は上記移動機構で施療子を動かした際の圧力センサの出力変化から人体の背面形状を認識して、該認識結果に基づいて強弱調整の初期設定動作を行うものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマッサージ機。
【請求項6】
初期設定動作の後も、圧力センサの出力変化に応じて制御回路は強弱調整動作を行わせるものであることを特徴とする請求項5記載のマッサージ機。
【請求項7】
第2の強弱駆動部は、支持面に配されて膨張収縮制御されるエアバッグであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のマッサージ機。
【請求項8】
複数のエアバッグが人体の上下方向において並べて配設されていることを特徴とする請求項7記載のマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−34242(P2009−34242A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199850(P2007−199850)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】