説明

マット、マットの製造方法、及び、排ガス浄化装置

【課題】 せん断強度が高く、嵩が適度に低く、可とう性が高く、製造コストが低いマットを提供すること。また、保持シール材に加工した場合に、巻き付け時の取り扱い性に優れ、圧入時にしわ等が発生しにくいマットを提供すること。
【解決手段】 第一主面と上記第一主面の反対側に位置する第二主面とを有しており、無機繊維が互いに絡み合って構成されたマットであって、
上記第一主面から上記マットの厚み方向に一定の範囲を占める第一層と、
上記第一層に隣接する第二層との少なくとも二層からなり、
上記第一層には、第一長繊維が含まれており、
上記第二層には、上記第一長繊維よりも平均繊維長が短い短繊維が含まれており、
上記第一主面から上記第二主面にかけて交絡部が設けられており、
上記交絡部には、上記交絡部以外の部分を構成する無機繊維に比べて互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維とが含まれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット、マットの製造方法、及び、排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカ繊維又はアルミナ繊維等の無機繊維を圧縮してなる不織布状のマットが知られており、このマットは耐熱性や弾性(反発力)等の特性に優れているため、種々の用途に使用されている。
【0003】
例えば、マットは、排ガス浄化装置の構成部材として使用されている。
具体的に説明すると、一般的な排ガス浄化装置は、円柱状の排ガス処理体、該排ガス処理体を収容する円筒状のケーシング、及び、排ガス処理体とケーシングとの間に配設されるマット状の保持シール材から構成されており、上述したマットは、この保持シール材を構成する部材として使用されている。なお、保持シール材は、マットを所定形状に切断する切断工程等を経て作製される。
【0004】
不織布状で反発力を有するマットから構成された保持シール材は、所定の保持力を有している。そのため、上記排ガス浄化装置では、排ガス処理体が保持シール材によりケーシング内の所定の位置にしっかりと保持される。また、保持シール材が排ガス処理体とケーシングとの間に配設されているので、振動等が加えられても排ガス処理体がケーシングと接触しにくく、また、排ガス処理体とケーシングとの間からは排ガスが漏れにくくなる。
【0005】
ここで、保持シール材を使用した排ガス浄化装置を製造する方法としては、例えば、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシングに圧入する方法が挙げられる。
具体的には、保持シール材を円柱状の排ガス処理体の外周部に巻き付けることにより巻付体を作製し、巻付体の外径よりも内径が小さい円筒状のケーシング内に、保持シール材を圧縮しつつ、巻付体をスライドさせながら圧入する。
そのため、この製造方法では、巻付体を圧入しやすくするために、排ガス処理体に巻き付けられた保持シール材の嵩を適度に低くする必要がある。
また、ケーシングへの圧入時には保持シール材に大きなせん断力が発生するので、せん断力により引き裂かれることがないように、保持シール材にはある程度の強度(以下、単に、せん断強度ともいう)が要求される。
さらに、保持シール材を排ガス処理体に巻き付ける際に保持シール材に割れが生じないように、保持シール材には、ある程度の柔軟性(以下、単に、可とう性ともいう)が要求される。
【0006】
係る保持シール材に用いる従来のマットとして、特許文献1には、アルミナ繊維からなるマットが開示されている。
この従来のマットは、焼成することにより無機繊維に転換されるアルミナ繊維前駆体を圧縮してシートを作製し、複数のバーブ(返し)が形成されたニードルをシートの厚み方向に抜き差しすることにより交絡部が形成されたニードリングシートを作製し、ニードリングシートを焼成することにより製造される。
製造されたマットは所定形状に切断され、保持シール材が作製される。
【0007】
特許文献2には、無機繊維からなる抄造シートの上面にポリエステル繊維不織布を積層し、上述したニードリング処理を施すことにより製造される従来のマットが開示されている。
製造されたマットは所定形状に切断され、保持シール材が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−56348号公報
【特許文献2】特開昭59−519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の従来のマットは、平均繊維長が長いアルミナ繊維(アルミナ長繊維)から構成されているため、マットの厚み方向に沿って形成された交絡部を中心としてアルミナ長繊維が複雑に絡み合っており、せん断強度が高く、嵩が適度に低いとされている。
また、柔軟なアルミナ長繊維を使用しているため、平均繊維長が短いアルミナ繊維(アルミナ短繊維)のみから構成されたマットに比べてマットの可とう性が高いと考えられる。
従って、このマットを使用した保持シール材は、せん断強度が高く、嵩が適度に低く、可とう性が高いと考えられる。
【0010】
しかしながら、アルミナ長繊維はアルミナ短繊維に比べて互いに絡み合いやすいので、マットにはアルミナ長繊維同士がよく絡み合って密度が高くなった部分(高密度部)と、アルミナ長繊維同士がそれほど絡み合わずに密度が低くなった部分(低密度部)とが混在している。低密度部は高密度部に比較して曲がりやすく、マットには曲げやすい部位と曲げにくい部位とが混在しているといえる。よって、このマットを使用した保持シール材を排ガス処理体に巻き付けると、保持シール材のたわみが発生して、排ガス処理体とマットとの間に隙間が生じやすい。そのため、保持シール材を排ガス処理体に慎重に巻き付けざるを得ず、巻き付け時の取り扱い性が低いという問題がある。
また、ケーシングへの圧入時には、保持シール材に発生するせん断力により、特に低密度部を中心として保持シール材にしわ等が発生しやすいという問題がある。
なお、アルミナ長繊維の密度が均一にならない理由は、下記するブローイング法を使用してアルミナ繊維前駆体を紡糸する工程や、作製したアルミナ繊維前駆体を圧縮して所定形状に成形する工程で、一部のアルミナ繊維前駆体同士が互いによく絡み合いすぎて塊になったり、アルミナ繊維前駆体が均一に飛散しなかったりするためであると推測される。
【0011】
また、特許文献1に記載の従来のマットを製造する場合、アルミナ繊維前駆体は、ブローイング法を用いて作製される。
しかしながら、一般的に、ブローイング法を使用して平均繊維長が長いアルミナ繊維前駆体を作製する場合のコストは、平均繊維長が短いアルミナ繊維前駆体のコストに比べて高いことが多い。
そのため、マットの製造コストが高くなるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明者は、製造コストが低く、平均繊維長が短い無機繊維前駆体を圧縮することによりシートを作製し、作製したシートにニードリング処理を施すことによりニードリングシートを作製し、作製したニードリングシートを焼成することによりマットを製造することを試みた。
しかしながら、平均繊維長が短い無機繊維前駆体からなるシートに対してニードリング処理を行っても、繊維長が短すぎて無機繊維前駆体同士が充分に絡み合わなかったためか、ニードリングシートを焼成してなるマットでは、無機繊維同士が充分に絡み合っていなかった。そのため、マットのせん断強度が低く、嵩を充分に低くすることができなかった。
また、柔軟性の低い短繊維から構成されているため、マットの可とう性が低かった。
【0013】
特許文献2に記載のマットでは、抄造シートを構成する平均繊維長が長い無機繊維と、ポリエステル繊維不織布を構成するポリエステル繊維とがマットの厚み方向に沿って形成された交絡部を中心として絡み合っており、有機バインダを使用していないにも関わらず、せん断強度が高く、嵩が適度に低いとされている。
また、平均繊維長が長い無機繊維及びポリエステル繊維を使用しているため、マットの可とう性が高いと考えられる。
従って、このマットを使用した保持シール材は、せん断強度が高く、嵩が適度に低く、可とう性が高いと考えられる。
【0014】
しかしながら、特許文献2に記載のマットを使用した保持シール材で排ガス浄化装置を製造し、製造した排ガス浄化装置を用いて排ガスを浄化すると、高温の排ガスに曝された際にポリエステル繊維が燃焼分解し、ガスが発生する。特に、近年では、燃費の向上を目的として理論空燃比に近い条件で内燃機関を運転させることがあり、排ガスの温度が1000℃程度の高温になる場合があるので、上記ポリエステル繊維不織布を使用する不具合がより顕著になることが懸念される。
また、このマットは、特許文献1に記載のマットと同様に、製造コストの高い平均繊維長が長い無機繊維を抄造シートの材料として使用しているため、製造コストが高いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者が上記課題を解決するために鋭意検討した結果、第一主面と該第一主面の反対側に位置する第二主面とを有し、無機繊維が互いに絡み合って構成されたマットにおいて、第一主面を含む第一層を長繊維で形成し、第一層以外の層を短繊維で形成し、長繊維と短繊維とが互いに緻密に絡み合ってなる交絡部を第一主面から第二主面にかけて設けることにより、マットのせん断強度を向上させることができることを見出した。また、嵩を適度に低くすることができること、良好な可とう性を確保することができること、及び、巻き付け時の取り扱い性を確保することができることを見出した。
また、ポリエステル繊維不織布等の有機材料を構成部材として使用する必要がなく、高温用途にも充分耐えうることを見出した。
さらに、製造コストの高い長繊維の使用量を減らしてマットの製造コストを低く抑えることができることを見出した。
本発明者が係る知見に基づいてさらに検討を続けた結果、上述した課題を解決することができる本発明のマットを完成させた。
【0016】
即ち、本発明のマットは、第一主面と上記第一主面の反対側に位置する第二主面とを有しており、無機繊維が互いに絡み合って構成されたマットであって、
上記第一主面から上記マットの厚み方向に一定の範囲を占める第一層と、
上記第一層に隣接する第二層との少なくとも二層からなり、
上記第一層には、第一長繊維が含まれており、
上記第二層には、上記第一長繊維よりも平均繊維長が短い短繊維が含まれており、
上記第一主面から上記第二主面にかけて交絡部が設けられており、
上記交絡部には、上記交絡部以外の部分を構成する無機繊維に比べて互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維とが含まれていることを特徴とする。
【0017】
本発明のマットには、第一主面から第二主面にかけて交絡部が設けられており、交絡部には、交絡部以外の部分を構成する無機繊維に比べて互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維とが含まれている。そのため、交絡部が設けられていないマットに比べて、マットのせん断強度が高く、嵩が適度に低い。
また、平均繊維長が長く、柔軟な第一長繊維が第一層に含まれており、マットの全てが、平均繊維長が短く、柔軟性の低い短繊維から構成されていないため、マットの可とう性が高い。
さらに、平均繊維長が短く、適度に絡み合うことにより高密度部を形成しにくい短繊維から第二層が構成されているため、第二層を構成する無機繊維の密度のばらつきが少ない。よって、平均繊維長が長く、高密度部を形成しやすい第一長繊維から構成された第一層の無機繊維の密度のばらつきが大きいものの、マット全体では無機繊維(第一長繊維及び短繊維)の密度のばらつきが低く抑えられている。
そのため、本発明のマットは均一に曲がりやすく、マットを使用した保持シール材は巻き付け時の取り扱い性に優れ、圧入時にしわ等が発生しにくい。
マットを構成する無機繊維には、製造コストの高い第一長繊維の他に、製造コストの低い短繊維が含まれているので、マットの製造コストを低く抑えることができる。
また、主要な構成部材に有機材料が使用されていないので、高温用途にも充分耐えうる。
本発明のマットの構成及び効果について、以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0018】
図1(a)は、本発明のマットを模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示すマットのA−A線断面図である。
【0019】
図1(a)に示す本発明のマット1の形状は、平面視略矩形状で所定の厚さを有する平板状である。
マット1のその他の構成に関しては、後述する本発明の第一実施形態の記載で説明することとして、主に本発明のマット1の内部の構成について以下に詳しく説明する。
【0020】
図1(a)及び図1(b)に示すように、本発明のマット1は、一方の主面(以下、第一主面ともいう)10aと、第一主面10aの反対側に位置する他方の主面(以下、第二主面ともいう)10bとを有している。
【0021】
マット1は、第一主面10aを含み、第一主面10aからマット1の厚み方向(図1(a)及び図1(b)中、マットの厚みを両矢印Tで示す)に一定の範囲を占める第一層14aと、第一層14aに隣接しており、第二主面10bを含み、マット1の厚み方向に一定の範囲を占める第二層14bとから構成されている。
なお、本発明のマットは、少なくとも二層からなるマットであればよく、図1(a)及び図1(b)に例示された二層のみからなるマットに限定されない。例えば、第一層又は第二層が複数の層に分割されていたり、種々の組成、平均繊維長及び平均繊維径等を有する無機繊維が互いに絡み合って構成された一の層又は複数の層が第一層と第二層との間に存在していたり、これらの層が第二層にさらに隣接していることにより、マットが三層以上の多層構造を形成していてもよい。
【0022】
本発明のマット1は、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、アルミナ繊維等の種々の組成の無機繊維が互いに絡み合って構成されている。
第一層14aには、第一長繊維15aが含まれており、第二層14bには、第一長繊維15aよりも平均繊維長が短い短繊維15bが含まれている。
なお、第一長繊維15a及び短繊維15bの組成については、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0023】
マット1では、柔軟性の高い第一長繊維15aが第一層14aに含まれており、マット1の全てが柔軟性の低い短繊維15bから構成されていないため、マット1の可とう性が高い。
さらに、平均繊維長が短く、高密度部を形成しにくい短繊維15bが第二層14bに含まれており、第一長繊維15aを含み、無機繊維の密度のばらつきがやや大きい第一層14aが含まれているにも関わらず、マット1全体では、無機繊維の密度のばらつきが平均化されており、低く抑えられている。それゆえ、マット1は均一に曲がりやすく、マット1を使用した保持シール材は、巻き付け時の取り扱い性に優れ、圧入時にしわ等が発生しにくい。
マット1では、製造コストの低い短繊維15bが第二層14bに含まれており、マット1を構成する無機繊維の全てが製造コストの高い第一長繊維15aで構成されていないので、マット1の製造コストが低い。
【0024】
第一主面10a上には、交絡点(以下、第一交絡点ともいう)11aが形成されており、第二主面10b上には、別の交絡点(以下、第二交絡点ともいう)11bが形成されている。そして、第一交絡点11aから第二交絡点11bにかけて、マット1の厚さ方向に沿って連続して交絡部12が形成されている。
交絡部12以外の部分(以下、単に、非形成領域ともいう)13では、無機繊維が比較的緩く絡み合っており、不織布状を呈している。具体的に説明すると、第一層14aでは第一長繊維15a同士が緩く絡み合っており、第二層14bでは短繊維15bが比較的緩く絡み合っている。
【0025】
一方、交絡部12では、第一長繊維15a及び短繊維15bが第二主面10b側に向かって配列しており、非形成領域13を構成する無機繊維よりも、第一長繊維15aと短繊維15bとが互いに緻密に絡み合っている。そのため、交絡部12が形成されていないマットに比較して、マット1のせん断強度が高くなっている。
また、互いに緻密に絡み合った第一長繊維15aと短繊維15bとにより、マット1が厚み方向に沿って縫い付けられたような状態になっている。
このため、交絡部12を中心として、マット1の嵩が適度に低くなっている。
従って、製造したマット1を所定形状に切断すること等により作製した保持シール材では、せん断強度を高くすることができ、嵩を適度に減らすことができる。よって、作製した保持シール材を排ガス浄化装置の製造に使用した場合には、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシングに圧入しやすい。また、製造した排ガス浄化装置では、保持シール材が破損しにくく、その耐久性が向上する。
【0026】
本発明のマットでは、上記第一長繊維の平均繊維長が上記マットの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長いことが望ましい。
第一長繊維の平均繊維長がマットの厚みを2倍した長さと同じである場合には、第一長繊維の平均繊維長が充分に長いため、交絡部に含まれる第一長繊維が第一交絡点から第二交絡点まで達することになると考えられる。特に、第一長繊維の平均繊維長がマットの厚みを2倍した長さよりも長い場合には、第一交絡点から第二交絡点まで達した第一長繊維の大部分は、第二交絡点で折り返して短繊維とより複雑に絡み合うと考えられる。
従って、交絡部を中心として第一長繊維と短繊維との絡み合いの程度がより高くなり、マットのせん断強度がより高くなる。
また、互いにより複雑に絡み合った第一長繊維と短繊維によって、マットが厚み方向に沿ってよりしっかりと縫い付けられたような状態になるので、マットの嵩を確実に低くすることができる。
また、第一長繊維の平均繊維長が充分に長いため、良好な可とう性を確保することができる。
【0027】
本発明のマットでは、上記第一長繊維の平均繊維長が20mm以上、100mm以下であり、上記短繊維の平均繊維長が3.5mm以上、20mm以下であることが望ましい。
第一長繊維の平均繊維長が20mm以上、100mm以下であり、短繊維の平均繊維長が3.5mm以上、20mm以下であると、第一長繊維の平均繊維長と短繊維の平均繊維長のバランスがとれているため、交絡部を中心とした第一長繊維と短繊維との絡み合いの程度がより高くなり、マットのせん断強度がより高くなる。また、交絡部を中心として、第一長繊維及び短繊維によりマットがよりしっかりと縫い付けられたような状態になるので、マットの嵩を確実に低くすることができる。
また、第一長繊維の平均繊維長が充分に長いため、良好な可とう性を確保することができる。
さらに、平均繊維長が3.5mm以上、20mm以下であり、高密度部をより形成しにくい短繊維から構成された第二層を有しているため、無機繊維の密度のばらつきが大きい第一層が含まれているにも関わらず、マット全体では、無機繊維の密度のばらつきが平均化されており、低く抑えられている。
それゆえ、マットがより均一に曲がりやすく、このマットを使用した保持シール材は、巻き付け時の取り扱い性により優れ、圧入時にしわ等が発生しにくい。
また、一般に、上記平均繊維長を有する短繊維は、第一長繊維に比べて製造コストが充分に低いことが多い。そのため、マットの製造コストを確実に低く抑えることができる。
なお、短繊維の平均繊維長は、第一長繊維の平均繊維長よりも短いので、第一長繊維の平均繊維長と短繊維の平均繊維長とがともに20mmであるマットは、本発明のマットから除外される。
【0028】
本発明のマットでは、上記第一層の厚みと上記第二層の厚みとの比が1:1〜1:10であることが望ましい。即ち、上記第一層の厚み:上記第二層の厚み=1:1〜1:10であることが望ましい。
上記第一層の厚みと上記第二層の厚みとの比が1:1〜1:10であると、第一長繊維の量が少なすぎることがなく、マットのせん断強度の向上、嵩の適度な低下及び良好な可とう性を確実に達成することができる。
また、短繊維の量が少なすぎることがなく、マット全体での無機繊維の密度のばらつきをより低く抑えることができる。
さらに、マット全体で使用する第一長繊維の量を必要最小限に留めて、製造コストを確実に抑制することができる。
一方、上記比における第一層の厚みの最大値(第一層の厚み:第二層の厚み=1:1)よりも第一層の厚みが厚い場合には、マットに含まれる短繊維の量が少なすぎて、マット全体での無機繊維の密度のばらつきが大きくなりやすく、巻き付け時の取り扱い性が低下しやすくなり、圧入時にしわ等が発生しやすくなる。また、マットの製造コストが高くなりやすい。
上記比における第一層の厚みの最小値(第一層の厚み:第二層の厚み=1:10)よりも第一層の厚みが薄い場合には、マットに含まれる第一長繊維の量が少なすぎて、マットのせん断強度が低下しやすくなる。また、嵩が低くなりにくく、可とう性が低くなりやすい。
【0029】
本発明のマットは、上記第二主面から上記マットの厚み方向に一定の範囲を占める第三層を含み、上記第三層には、上記短繊維よりも平均繊維長が長い第二長繊維が含まれており、上記交絡部には、上記交絡部以外の部分を構成する無機繊維に比べて互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維と第二長繊維とが含まれていてもよい。
【0030】
係る構成を有するマットでも、上述した本発明のマットの効果を好適に享受することができる。
このマットの詳細な構成については、後述の本発明の第二実施形態で説明することとする。
なお、本発明のマットは、少なくとも三層からなるマットであればよく、後述する本発明の第二実施形態の図8(a)及び図8(b)に例示されるような三層のみからなるマットに限定されない。例えば、第一層、第二層又は第三層が複数の層に分割されていたり、種々の組成、平均繊維長及び平均繊維径等を有する無機繊維が互いに絡み合って構成された一の層若しくは複数の層が第一層と第二層との間又は第二層と第三層との間に存在していたりすることにより、マットが三層以上の多層構造を形成していてもよい。
【0031】
本発明のマットにおいて、上記交絡部は、第一交絡部と、第二交絡部とからなり、上記第一交絡部には、上記第一主面側から第二主面側に向かって配列しつつ、互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維と第二長繊維とが含まれており、上記第二交絡部には、上記第二主面側から上記第一主面側に向かって配列しつつ、互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維と第二長繊維とが含まれていることが望ましい。
係る構成を有するマットでは、第一交絡部を形成する第一長繊維、短繊維及び第二長繊維の配列方向と、第二交絡部を形成する第一長繊維、短繊維及び第二長繊維の配列方向とが対向した関係にあるため、第一交絡部及び第二交絡部を中心として無機繊維がより複雑に絡み合う。そのため、マットのせん断強度がより高くなり、嵩の適度な低下を確実に達成できる。
【0032】
本発明のマットでは、上記第一長繊維及び上記第二長繊維の平均繊維長が、上記マットの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長いことが望ましい。
この場合、第一長繊維の平均繊維長が充分に長いため、第一交絡部に含まれる第一長繊維は、第一主面から第二主面まで達することになると考えられる。特に、第一長繊維の平均繊維長がマットの厚みを2倍した長さよりも長い場合、第一主面から第二主面まで達した第一長繊維の大部分は、第二主面で折り返して短繊維及び第二長繊維とより複雑に絡み合うと考えられる。
また、第二長繊維の平均繊維長が充分に長いため、第二交絡部に含まれる第二長繊維は、第二主面から第一主面まで達することになると考えられる。特に、第二長繊維の平均繊維長がマットの厚みを2倍した長さよりも長い場合、第二主面から第一主面まで達した第二長繊維の大部分は、第一主面で折り返して短繊維及び第一長繊維とより複雑に絡み合うと考えられる。
従って、係る構成を有するマットでは、交絡部を中心として第一長繊維、短繊維及び第二長繊維の絡み合いの程度がより高くなり、せん断強度がより高くなる。
また、互いにより複雑に絡み合った第一長繊維、短繊維及び第二長繊維によって、マットが厚み方向に沿ってよりしっかりと縫い付けられたような状態になるので、マットの嵩を確実に低くすることができる。
さらに、第一長繊維及び第二長繊維の平均繊維長が充分に長いため、良好な可とう性を確保することができる。
【0033】
本発明のマットでは、上記第一長繊維の平均繊維長が、20mm以上、100mm以下であり、上記短繊維の平均繊維長が、3.5mm以上、20mm以下であり、上記第二長繊維の平均繊維長が、20mm以上、100mm以下であることが望ましい。
第一長繊維と第二長繊維の平均繊維長が、それぞれ20mm以上、100mm以下であり、短繊維の平均繊維長が、3.5mm以上、20mm以下であると、第一長繊維及び第二長繊維の平均繊維長と短繊維の平均繊維長とのバランスがとれているため、交絡部を中心とした第一長繊維、短繊維及び第二長繊維の絡み合いの程度がより高くなり、マットのせん断強度がより高くなる。また、交絡部を中心として、第一長繊維、短繊維及び第二長繊維によりマットがよりしっかりと縫い付けられたような状態になるので、マットの嵩を確実に低くすることができる。
また、第一長繊維及び第二長繊維の平均繊維長が充分に長いため、良好な可とう性を確保することができる。
さらに、平均繊維長が3.5mm以上、20mm以下であり、高密度部をより形成しにくい短繊維から構成された第二層を有しているため、無機繊維の密度のばらつきが大きい第一層及び第三層が含まれているにも関わらず、マット全体では、無機繊維の密度のばらつきが平均化されており、低く抑えられている。
それゆえ、マットがより均一に曲がりやすく、このマットを使用した保持シール材は、巻き付け時の取り扱い性により優れ、圧入時にしわ等がより発生しにくい。
さらに、一般に、上記平均繊維長を有する短繊維は、第一長繊維及び第二長繊維に比べて製造コストが充分に低いことが多い。そのため、マットの製造コストを確実に低く抑えることができる。
なお、短繊維の平均繊維長は、第一長繊維の平均繊維長及び第二長繊維の平均繊維長よりも短いので、第一長繊維の平均繊維長、短繊維の平均繊維長及び第二長繊維の平均繊維長が20mmであるマットは、本発明のマットから除外される。
【0034】
本発明のマットでは、上記第一層及び上記第三層の合計の厚みと、上記第二層の厚みとの比は、1:1〜1:5であることが望ましい。即ち、上記第一層及び上記第三層の合計の厚み:上記第二層の厚み=1:1〜1:5であることが望ましい。
第一層及び第三層の合計の厚みと、第二層の厚みとの比が1:1〜1:5であると、第一長繊維及び第二長繊維の量が少なすぎることもなく、マットのせん断強度の向上、嵩の適度な低下及び良好な可とう性を確実に達成することができる。
また、短繊維の量が少なすぎることがなく、マット全体での無機繊維の密度のばらつきをより低く抑えることができる。
さらに、マット全体で使用する第一長繊維の量を必要最小限に留めて、製造コストを確実に抑制することができる。
一方、上記比における第一層及び第三層の合計の厚みの最大値(第一層及び第三層の合計の厚み:第二層の厚み=1:1)よりも第一層及び第三層の合計の厚みが厚い場合には、マットに含まれる短繊維の量が少なすぎて、マット全体での無機繊維の密度のばらつきが大きくなりやすく、巻き付け時の取り扱い性が低下しやすくなり、圧入時にしわ等が発生しやすくなる。また、マットの製造コストが高くなりやすい。
また、上記比における第一層及び第三層の合計の厚みの最小値(第一層及び第三層の合計の厚み:第二層の厚み=1:5)よりも第一層及び第三層の合計の厚みが薄い場合には、マットに含まれる第一長繊維及び第二長繊維の量が少なすぎて、マットのせん断強度が低下しやすくなる。また、嵩が低くなりにくく、可とう性が低くなりやすい。
【0035】
本発明のマットでは、上記無機繊維が、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維であることが望ましい。
これらの無機繊維は耐熱性等の特性に優れているので、これらの無機繊維からなるマット及び該マットを使用した保持シール材は耐熱性や保持力等に優れる。
また、マットを構成する無機繊維に溶解性繊維が含まれる場合には、マットの取り扱い時に溶解性繊維が飛散して体内に取り込まれたとしても溶解し、体外に排出されることになるため、人体に対する安全性に優れる。
【0036】
本発明のマットの製造方法は、第一主面と上記第一主面の反対側に位置する第二主面とを有しており、焼成することにより無機繊維に転換される無機繊維前駆体が互いに絡み合って構成されたシートを準備し、上記シートにニードルを貫通させることによりニードリングシートを作製するニードリング工程と、
上記ニードリングシートを焼成する焼成工程とを含むマットの製造方法であって、
上記シートは、上記第一主面から上記シートの厚み方向に一定の範囲を占める第一シートと、上記第一シートに隣接する第二シートとの少なくとも二枚の小シートからなり、上記第一シートには、第一長繊維前駆体が含まれており、上記第二シートには、上記第一長繊維前駆体よりも平均繊維長が短い短繊維前駆体が含まれており、
上記ニードリング工程では、上記第一主面側から上記第二主面側に向かって上記ニードルを貫通させることを特徴とする。
本発明のマットの製造方法では、上述した本発明のマットを好適に製造することができる。
【0037】
本発明のマットの製造方法で使用するニードリング工程の一例について図面を用いて説明する。
【0038】
図2(a)は、本発明のマットの製造方法に係るニードリング工程で使用されるニードリング装置とシートとを模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、本発明のマットの製造方法に係るニードルがシートを貫通した場合のニードリング装置及びシートを模式的に示す断面図である。
【0039】
図2(a)に示すニードリング装置100は、シート1xを支持可能な載置面111を有する支持板110と、突き刺し方向(シート1xの厚さ方向、図2(a)及び図2(b)中、両矢印Tで示す方向)に往復移動可能なピストン112と、支持板110の載置面111に対向して設けられており、ピストン112の先端に取り付けられたニードル板120とから構成されている。
【0040】
ニードル板120には、支持板110に対向する対向面122から垂直方向に立設した複数のニードル121が所定の間隔で取り付けられており、剣山様の形状を呈している。ニードル121は、細く先の尖ったニードルであり、該ニードル表面にニードルの先端方向に向かって突出した複数の刺状のバーブ(返し)121aが形成されたニードルである。
また、支持板110には、ニードル板120のニードル121が取り付けられた位置に対応する箇所に貫通孔113が設けられている。
そのため、ニードル板120が支持板110に接近した場合には、ニードル121が貫通孔113を貫通するので、載置面111と対向面122とが接触する程度にまでニードル板120を支持板110に近づけることができる。
【0041】
使用するシート1xの構成について説明する。
シート1xは、第一主面10xを含み、第一主面10xからシート1xの厚み方向に一定の範囲を占める第一シート15xと、第一シート15xに隣接しており、第二主面10yを含み、シート1xの厚み方向に一定の範囲を占める第二シート15yとから構成されている。
なお、本発明のマットの製造方法で使用するシートは、少なくとも二枚の小シートからなるシートであればよく、図2(a)及び図2(b)に例示したように、二枚の小シート(第一シート15x及び第二シート15y)からなるシートに限定されない。
例えば、第一シート又は第二シートが複数枚に分割されていたり、種々の組成、平均繊維長及び平均繊維径等を有する無機繊維前駆体を含んでなる一枚の小シート又は複数枚の小シートが第一シートと第二シートとの間に存在していたり、これらの小シートが第二シートにさらに隣接していることにより、シートが三層以上の多層構造を形成していてもよい。
【0042】
シート1xは、無機繊維前駆体が互いに絡み合って構成されている。
具体的にいうと、第一シート15xには、第一長繊維前駆体16xが含まれており、第二シート15yには、第一長繊維前駆体16xよりも平均繊維長が短い短繊維前駆体16yが含まれている。なお、無機繊維前駆体は焼成することにより、上述した本発明のマットを構成する無機繊維に転換される。
【0043】
図2(a)に示すように、ニードリング処理を行う場合には、支持板110の載置面111にシート1xを設置する。
この際、シート1xの第一主面10xがニードル板120の対向面122と対向し、シート1xの第二主面10yが支持板110の載置面111に接するように、シート1xを設置する。
【0044】
次に、ニードル板120をシート1xの厚み方向に沿って上下させる。
すると、シート1xの第一主面10x側から第二主面10yまで、第一シート15x、第二シート15yの順でニードル121が貫通し、貫通したニードル121がシート1xから引き抜かれてニードリング処理が完了する。
【0045】
図2(b)に示すように、係るニードリング処理では、ニードル121が第一主面10x側からシート1xに貫通する際にバーブ121aに第一長繊維前駆体16xが巻き付いた状態でニードル121がシート1x内部を移動していくので、バーブ121aに巻き付いた第一長繊維前駆体16xがシート1x内部に引き込まれていく。
第一長繊維前駆体16xは、充分に長い平均繊維長を有しているので、引き込まれる過程ですぐに切断されてしまうことはなく、第二シート15yを構成する短繊維前駆体16yのうちで、ニードル121の貫通箇所に位置する短繊維前駆体16yと互いによく絡み合いやすい。互いに緻密に絡み合った第一長繊維前駆体16x及び短繊維前駆体16yは、ニードル121が貫通していく方向に(即ち、第二主面10y側に)向かって配列する。
【0046】
ニードル121がシート1xから引き抜かれる際には、逆に第一長繊維前駆体16x及び短繊維前駆体16yがバーブ121aにやや引っ掛かりにくいので、第一長繊維前駆体16x及び短繊維前駆体16yの多くは、その配列状態及び交絡状態が維持される。
そのため、ニードル121がシート1xから完全に引き抜かれると、第一主面10x上の第一交絡点から第二主面10y上の第二交絡点まで厚み方向に連続した交絡部の前駆体が形成される。
なお、第一交絡点は、第一主面10x上のニードル121が貫通した箇所に形成され、第二交絡点は、第二主面の10y上のニードル121が貫通した箇所に形成される。
【0047】
本発明のマットの製造方法において、上記第一長繊維前駆体の平均繊維長は、上記シートの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長いことが望ましい。
第一長繊維の平均繊維長がマットの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長い本発明のマットを好適に製造することができるからである。
【0048】
本発明のマットの製造方法において、上記第一長繊維前駆体の平均繊維長は、30mm以上、140mm以下であり、上記短繊維前駆体の平均繊維長は、5mm以上、30mm以下であることが望ましい。
第一長繊維の平均繊維長が20mm以上、100mm以下であり、短繊維の平均繊維長が3.5mm以上、20mm以下である本発明のマットを好適に製造することができるからである。
【0049】
本発明のマットの製造方法において、上記第一シートの厚みと上記第二シートの厚みとの比は、1:1〜1:10であることが望ましい。即ち、上記第一シートの厚み:上記第二シートの厚み=1:1〜1:10であることが望ましい。
第一層の厚みと第二層の厚みとの比が1:1〜1:10である本発明のマットを好適に製造することができるからである。
【0050】
本発明のマットの製造方法では、上記シートが、上記第二主面から上記シートの厚み方向に一定の範囲を占める第三シートを含み、上記第三シートには、上記短繊維前駆体よりも平均繊維長が長い第二長繊維前駆体が含まれていてもよい。
本発明のマットの製造方法では、上述した第三層を含む本発明のマットを好適に製造することができる。
なお、本発明のマットの製造方法で使用するシートは、少なくとも三枚の小シートからなるシートであればよく、三枚の小シートからなるシートに限定されない。
例えば、第一シート、第二シート又は第三シートが複数枚に分割されていたり、種々の組成、平均繊維長及び平均繊維径等を有する無機繊維前駆体を含んでなる一枚の小シート若しくは複数枚の小シートが第一シートと第二シートとの間又は第二シートと第三シートとの間に存在していたりすることにより、シートが三層以上の多層構造を形成していてもよい。
【0051】
本発明のマットの製造方法において、上記ニードリング工程では、上記第一主面側から上記第二主面側に向かって上記ニードルを貫通させるとともに、上記第二主面側から上記第一主面側に向かって上記ニードルを貫通させることが望ましい。
第二主面側に配列するとともに、互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維と第二長繊維とからなる第一交絡部と、第一主面側に配列するとともに、互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維と第二長繊維とからなる第二交絡部とが形成された本発明のマットを、好適に製造することができるからである。
【0052】
本発明のマットの製造方法では、上記第一長繊維前駆体及び上記第二長繊維前駆体の平均繊維長が、上記シートの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長いことが望ましい。
第一長繊維及び第二長繊維の平均繊維長が、マットの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長い本発明のマットを好適に製造することができるからである。
【0053】
本発明のマットの製造方法では、上記第一長繊維前駆体の平均繊維長が、30mm以上、140mm以下であり、上記短繊維前駆体の平均繊維長が、5mm以上、30mm以下であり、上記第二長繊維前駆体の平均繊維長が、30mm以上、140mm以下であることが望ましい。
第一長繊維の平均繊維長が、20mm以上、100mm以下であり、短繊維の平均繊維長が、3.5mm以上、20mm以下であり、第二長繊維の平均繊維長が、20mm以上、100mm以下である本発明のマットを好適に製造することができるからである。
【0054】
本発明のマットの製造方法では、上記第一シート及び上記第三シートの合計の厚みと、上記第二シートの厚みとの比は、1:1〜1:5であることが望ましい。即ち、上記第一シート及び上記第三シートの合計の厚み:上記第二シートの厚み=1:1〜1:5であることが望ましい。
第一層及び第三層の合計の厚みと、第二層の厚みとの比が1:1〜1:5である本発明のマットを好適に製造することができるからである。
【0055】
本発明のマットの製造方法では、上記無機繊維前駆体が、アルミナ繊維前駆体、アルミナシリカ繊維前駆体、シリカ繊維前駆体、溶解性繊維前駆体及びガラス繊維前駆体からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維前駆体であることが望ましい。
アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維からなる本発明のマットを好適に製造することができるからである。
【0056】
本発明の排ガス浄化装置は、排ガス処理体と、
上記排ガス処理体を収容するケーシングと、
上記排ガス処理体と上記ケーシングとの間に配設され、上記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、
上記保持シール材は、本発明のいずれかのマットを使用していることを特徴とする。
【0057】
本発明の排ガス浄化装置は、排ガス処理体と、
上記排ガス処理体を収容するケーシングと、
上記排ガス処理体と上記ケーシングとの間に配設され、上記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、
上記保持シール材は、本発明のマットの製造方法で製造されたいずれかのマットを使用していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1(a)は、本発明のマットを模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示すマットのA−A線断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明のマットの製造方法に係るニードリング工程で使用されるニードリング装置とシートとを模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、本発明のマットの製造方法に係るニードルがシートを貫通した場合のニードリング装置及びシートを模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態のマットを使用した保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
【図4】図4(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示す排ガス浄化装置のB−B線断面図である。
【図5】図5(a)は、図4(a)に示した排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体を模式的に示す斜視図であり、図5(b)は、図4(a)に示した排ガス浄化装置を構成するケーシングを模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を構成する保持シール材、排ガス処理体及びケーシングを用いて排ガス浄化装置を製造する様子を模式的に説明する斜視図である。
【図7】せん断強度試験器を模式的に示す側面図である。
【図8】図8(a)は、本発明の第二実施形態のマットを模式的に示す斜視図であり、図8(b)は、図8(a)に示すマットのC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
(第一実施形態)
以下、本発明のマット、マットの製造方法及び排ガス浄化装置の一実施形態である第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態のマットは、上述した本発明のマットと同様の構成を有しているため、以下の説明では、図1(a)及び図1(b)を参照しながら説明する。また、本発明のマットに係る説明と重複する事項については、説明を省略する。
【0060】
図1(a)及び図1(b)に示す本実施形態のマット1は、所定の長さ(図1(a)中、両矢印Lで示す)、幅(図1(a)中、両矢印Wで示す)及び厚さ(図1(a)中、両矢印Tで示す)を有する平面視略矩形状である。
【0061】
具体的なマット1の大きさは、特に限定されないが、長さ100〜10000mm×幅100〜1500mm×厚さ5〜30mmである。
【0062】
マット1は、マット1の表面のうちで最も面積の大きい主面である第一主面10aと、第一主面10aの反対側に位置する第二主面10bとを有しており、第一主面10aを含む第一層14aと、第一層14aに隣接する第二層14bとの二層から構成されている。
第一層14aの厚みと第二層14bの厚みとの比は、1:1〜1:10であることが望ましい。
【0063】
マット1は、無機繊維が互いに絡み合って構成されており、第一層14aには、第一長繊維15aが含まれており、第二層14bには、第一長繊維15aよりも平均繊維長が短い短繊維15bが含まれている。
上記無機繊維(第一長繊維15a及び短繊維15b)は、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維から構成されていることが望ましい。
【0064】
アルミナ繊維には、アルミナ以外に、例えば、CaO、MgO、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
アルミナシリカ繊維の組成比としては、重量比で、Al:SiO=60:40〜80:20であることが望ましく、Al:SiO=70:30〜74:26であることがより望ましい。
シリカ繊維には、シリカ以外に、例えば、CaO、MgO、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
溶解性繊維は、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び、ホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物からなる無機繊維である。
これらの化合物からなる溶解性繊維は、いわゆる生体溶解性の無機繊維であり、人体に取り込まれても溶解しやすいので、これらの無機繊維が互いに絡み合って構成されたマットは人体に対する安全性に優れている。上記アルカリ金属化合物としては、例えば、Na、Kの酸化物等が挙げられ、上記アルカリ土類金属化合物としては、Mg、Ca、Baの酸化物等が挙げられる。上記ホウ素化合物としては、Bの酸化物等が挙げられる。
なお、第一長繊維15a及び短繊維15bの組成は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0065】
第一長繊維15aの平均繊維長は、マット1の厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長いことが望ましい。
より具体的にいうと、第一長繊維15aの平均繊維長は、20mm以上、100mm以下であり、短繊維15bの平均繊維長は、3.5mm以上、20mm以下であることが望ましい。
【0066】
第一長繊維15a及び短繊維15bの平均繊維径は、3〜10μmであることが望ましい。第一長繊維15a及び短繊維15bの平均繊維径が3〜10μmであると、第一長繊維15a及び短繊維15bの強度及び柔軟性が充分に高く、マット1のせん断強度及び可とう性を向上させることができる。
【0067】
第一主面10a上には、第一交絡点11aが形成されており、第二主面10b上には、第二交絡点11bが形成されている。そして、第一交絡点11aから第二交絡点11bにかけて、マット1の厚さ方向に沿って連続して交絡部12が形成されている。
なお、第一交絡点11a、第二交絡点11b及び交絡部12は、上述したニードリング処理においてニードルがシートを貫通した箇所に形成されている。
【0068】
交絡部12では、第一長繊維15a及び短繊維15bが第二主面10b側に配列しており、互いに緻密に絡み合っている。
また、交絡部12を中心として、互いに緻密に絡み合った第一長繊維15aと短繊維15bによりマット1が厚み方向に沿って縫い付けられたような状態になっており、交絡部12が形成されていない非形成領域13に比べて、交絡部12近傍の無機繊維の密度が高い。
【0069】
交絡部12の形成密度は、0.5〜30個/cmであることが望ましい。マット1のせん断強度がより高く、嵩が適度に低くなるからである。
これに対して、交絡部の形成密度が、0.5個/cm未満であると、単位面積あたりに形成された交絡部の数が少なすぎて、せん断強度が低くなりやすく、嵩が低くなりにくい。
また、交絡部の形成密度が30個/cmを超えると、単位面積あたりに形成された交絡部の数が多すぎるため、マットの嵩が低くなりすぎて反発力が低下しやすくなる。また、ニードリング処理で細かく裁断されてしまった無機繊維が多く含まれることになり、マットのせん断強度が低くなりやすい。
なお、本明細書において、交絡部の形成密度とは、第一主面及び第二主面に略平行な平面に沿ってマットを厚み方向の中間地点で略二等分に切断し、得られた主断面を目視又は拡大鏡で観察した場合に確認される、主断面の1cmあたりに形成された交絡部の個数のことをいう。
【0070】
交絡部12は、マット1の長さ方向及び幅方向のそれぞれの方向に沿って複数列形成されている。マット1の長さ方向に沿った一の交絡部12の列では、交絡部12が略均一な間隔で形成されており、マット1の幅方向に沿った一の交絡部12の列では、交絡部12が略均一な間隔で形成されている。
一の第一交絡点11a(一の第二交絡点11b)と、それに最近接する他の第一交絡点11a(他の第二交絡点11b)との最短距離(図1(a)中、両矢印Xで示す距離)は、1mm〜10mmであることが望ましい。交絡部12が密に集まりすぎず、マット1のせん断強度が充分に高くなりやすく、嵩が適度に低くなりやすいからである。
これに対して、第一交絡点(第二交絡点)とそれに最近接する他の第一交絡点(他の第二交絡点)との最短距離が10mmを超えると、単位面積あたりに形成された交絡部の数が少なすぎて、せん断強度が低くなりやすく、嵩がそれほど低くなりにくい。
また、上記最短距離が1mm未満であると、単位面積あたりに形成された交絡部の数が多すぎるため、マットの嵩が低くなりすぎて反発力が低下しやすくなる。また、ニードリング処理で細かく裁断されてしまった無機繊維が多く含まれることになり、マットのせん断強度が低くなりやすい。
【0071】
第一交絡点11a及び第二交絡点11bの直径は、0.1mm〜2mmであることが望ましい。
第一交絡点11a及び第二交絡点11bの直径が上記範囲にあると、第一交絡点11a及び第二交絡点11bの直径が大きすぎないため、マット1のせん断強度が充分に高くなりやすい。
これに対して、第一交絡点及び第二交絡点の直径が2mmを超えると、第一交絡点、第二交絡点及び交絡部を構成する無機繊維が粗な状態となり、マットのせん断強度が低くなりやすい。
また、第一交絡点及び第二交絡点の直径が0.1mm未満であると、交絡部で第一長繊維及び短繊維が充分に絡み合わないことがあり、マットのせん断強度が低くなりやすく、嵩が充分に低くなりにくい。
【0072】
マット1の目付量(単位面積あたりの重量)は、900〜3000g/mであることが望ましい。
マット1の目付量は、1500〜2800g/mであることがより望ましい。
また、マット1の密度は、0.08〜0.20g/cmであることが望ましい。
マット1の密度は、0.10〜0.15g/cmであることがより望ましい。
【0073】
次に、本実施形態のマットを使用した保持シール材及び排ガス浄化装置の構成について、図面を用いて説明する。
【0074】
図3は、本発明の第一実施形態のマットを使用した保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
【0075】
図3に示す保持シール材200は、上述した本実施形態のマット1を所定形状に切断することにより製造される。
【0076】
図3に示す保持シール材200の形状は、所定の長さ(図3中、矢印L´で示す)、幅(図3中、矢印W´で示す)及び厚さ(図3中、矢印T´で示す)を有する平面視略矩形状である。
また、保持シール材200の幅方向に平行な端面233a、233bのうち、一方の端面233aには、凸部234aが形成されており、他方の端面233bには、保持シール材200を丸めて端面233aと端面233bとを当接させた際に凸部234aと嵌合する形状の凹部234bが形成されている。
保持シール材200全体に含まれる有機バインダの合計量は、保持シール材200全体の重量の0.5〜20重量%である。
【0077】
保持シール材200の大きさは、長さ200〜1000mm×幅50〜500mm×厚さ5〜30mmである。
【0078】
この保持シール材200は、例えば、排ガス浄化装置に好適に使用することができる。
保持シール材200を用いた排ガス浄化装置の構成について、図面を用いて説明する。
【0079】
図4(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示す排ガス浄化装置のB−B線断面図である。
図5(a)は、図4(a)に示した排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体を模式的に示す斜視図であり、図5(b)は、図4(a)に示した排ガス浄化装置を構成するケーシングを模式的に示す斜視図である。
【0080】
図4(a)及び図4(b)に示すように、排ガス浄化装置60は、多数のセル41がセル壁42を隔てて長手方向に並設された柱状の排ガス処理体40と、排ガス処理体40を収容するケーシング50と、排ガス処理体40とケーシング50との間に配設され、排ガス処理体40を保持する本実施形態に係るマットを使用した保持シール材200とから構成されている。
なお、保持シール材200の構成については、既に述べているので省略する。
また、ケーシング50の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されていてもよい。
【0081】
図5(a)に示すように、排ガス処理体40は、主に多孔質セラミックからなり、その形状は略円柱状である。また、排ガス処理体40の外周には、排ガス処理体40の外周部を補強したり、形状を整えたり、排ガス処理体40の断熱性を向上させたりする目的で、コート層44が設けられている。
また、排ガス処理体40の各々のセルにおけるいずれか一方の端部は、封止材43によって目封じされている。
なお、排ガス処理体40としては、例えば、コージェライト又はチタン酸アルミニウム等からなり、図5(a)に示したように一体的に形成されたものであってもよい。また、炭化ケイ素又はケイ素含有炭化ケイ素等からなり、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含む接着材層を介して複数個結束してなる排ガス処理体であってもよい。
【0082】
ケーシング50について説明する。図5(b)に示すケーシング50は、主にステンレス等の金属からなり、その形状は、略円筒状である。また、その内径は、排ガス処理体40に保持シール材200が巻き付けられた状態の巻付体の直径より若干短くなっており、その長さは、排ガス処理体40の長手方向における長さと略同一となっている。
【0083】
なお、ケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば、上述したステンレスに限られず、アルミニウム、鉄等の金属類であってもよい。
また、上記ケーシングとしては、略円筒状のケーシングを長手方向に沿って複数のケーシング片に分割したケーシング(即ちクラムシェル)、長手方向に沿って延びるスリット(開口部)を1箇所にのみ有する断面C字状又はU字状の円筒状のケーシング、排ガス処理体に巻き付けられた保持シール材の外周に巻き締められることにより円筒状のケーシングとなる金属板等であってもよい。
【0084】
上述した構成を有する排ガス浄化装置60で排ガスが浄化される理由について、図4(b)を用いて以下に説明する。
図4(b)に示したように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置60に流入した排ガス(図4(b)中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体40の排ガス流入側端面40aに開口した一のセル41に流入し、セル41を隔てるセル壁42を通過する。この際、排ガス中のパティキュレートマター(以下、単にPMともいう)がセル壁42で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス流出側端面40bに開口した他のセル41から流出し、外部に排出される。
【0085】
次に、本実施形態のマットを製造する方法と、製造したマットを使用して保持シール材を作製する方法と、作製した保持シール材を使用して排ガス浄化装置を製造する方法について説明する。
【0086】
本実施形態のマットは、以下の工程(1)〜(5)を経て製造する。
ここでは、アルミナシリカ繊維を含んでなるマットを製造する場合について説明するが、本実施形態のマットを構成する無機繊維については、アルミナシリカ繊維に限られるものではなく、上述したアルミナ繊維等の種々の組成の無機繊維であってもよい。
【0087】
(1)第一シート作製工程
(1−1)第一長繊維作製工程
Al含有量、及び、AlとClとの原子比が所定の値となるように調製された塩基性塩化アルミニウム水溶液に、焼成後の無機繊維における組成比が、例えば、Al:SiO=60:40〜80:20(重量比)となるようにシリカゾルを添加する。さらに、成形性向上を目的として有機重合体を適量添加して混合液を調製する。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して所定の平均繊維径及び平均繊維長を有する無機繊維前駆体である第一長繊維前駆体を作製する。この際、後の工程を経て作製されるシートの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長い平均繊維長を有する第一長繊維前駆体や、30mm以上、140mm以下の平均繊維長を有する第一長繊維前駆体を作製する場合には、例えば、紡糸条件を調整すればよい。
ブローイング法とは、エアーノズルから吹き出す高速のガス流(空気流)の中に、紡糸用混合物供給用ノズルから押し出される紡糸用混合物を供給することによって無機繊維前駆体の紡糸を行う方法のことをいう。
【0088】
(1−2)圧縮工程
次に、第一長繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続した長尺シートを作製する。
圧縮工程は、例えば、クロスレイヤー法により行うことができる。
【0089】
(1−3)切断工程
次に、長尺シートを所定の大きさに切断することにより、第一シートを作製する。
作製された第一シートは、平面視略矩形状であり、第一主面と第一主面の反対側に位置する第二主面とを有しており、上述した所定の平均繊維長を有する第一長繊維前駆体が互いに絡み合って構成されたシートである。
【0090】
(2)第二シート作製工程
第一シート作製工程(1)における工程(1−1)〜(1−3)と同様の工程を経ることにより、第二シートを作製する。
但し、工程(1−1)で第一長繊維前駆体を作製する代わりに、平均繊維長が第一長繊維前駆体より短い短繊維前駆体を作製し、作製した短繊維前駆体を使用して工程(1−2)及び工程(1−3)と同様の工程を経ることにより第二シートを作製する。
この際、平均繊維長が5mm以上、30mm以下である短繊維前駆体を作製する場合には、例えば、紡糸条件を調整すればよい。
作製された第二シートは、平面視略矩形状であり、第一主面と上記第一主面の反対側に位置する第二主面とを有しており、上述した所定の平均繊維長を有する短繊維前駆体が互いに絡み合って構成されたシートである。
なお、第一シートの厚みと第二シートの厚みとの比を1:1〜1:10に調整するには、使用する短繊維前駆体の量を減らしたり、短繊維前駆体の圧縮の程度を変更したりすることにより、第二シートの厚みを調整すればよい。
【0091】
(3)積層工程
第一シートの第二主面と第二シートの第一主面とが互いに接するように、第一シートを第二シートの上に積層する。
これにより、第一主面からシートの厚み方向に一定の範囲を占める第一シートと、第一シートに隣接する第二シートとの二枚の小シートからなるシートを作製する。
なお、後の工程を経て作製されるシートにおける第一シートの厚みと第二シートの厚みとの比は、1:1〜1:10であることが望ましい。
【0092】
(4)ニードリング工程
ニードリング工程では、ニードリング装置を使用してニードリング処理を行う。
ニードリング装置としては、図2(a)に示したニードリング装置と略同様の構成を有するニードリング装置を使用してもよい。
【0093】
ニードリング処理を行う場合には、まず、支持板の載置面とシートの第二主面(下側の主面)とが接するように、載置面に上記工程(3)で作製したシートを設置し、支持板及びシートの上方に位置するニードル板をシートの厚さ方向に沿って下降させることにより、複数のニードルを第一主面側(第一シートの第一主面側、即ち、図2(a)及び図2(b)に示すシートの上側の主面)から第二主面側(第二シートの第二主面側、即ち、図2(a)及び図2(b)に示すシートの下側の主面)に向かって貫通させる。その後、ニードルをシートから引き抜く。第一主面上のニードルが貫通した箇所は、後の工程を経て作製されるマットの第一主面上に形成された第一交絡点となり、第二主面上のニードルが貫通した箇所は、マットの第二主面上に形成された第二交絡点となり、ニードルが貫通したシート内部の箇所は、マットの交絡部となる。
なお、交絡部の形成密度が0.5個〜30個/cmであり、一の第一交絡点(一の第二交絡点)と、それに最近接する他の第一交絡点(他の第二交絡点)との最短距離が1mm〜10mmであり、第一交絡点及び第二交絡点の直径が0.1mm〜2mmであるマットを製造するには、ニードル板の対向面の単位面積あたりに所定の数のニードル(所定の直径を有するニードル)が所定の間隔で取り付けられたニードル板を使用すればよい。
係るニードリング処理を経ることにより、ニードリングシートを作製する。
【0094】
(5)焼成工程
続いて、ニードリングシートを最高温度約1000〜約1600℃で焼成することにより、第一長繊維前駆体を第一長繊維に転換し、短繊維前駆体を短繊維に転換することにより本実施形態のマットを製造する。
【0095】
工程(5)を経て製造したマットを使用して保持シール材を作製する場合には、製造したマットを下記工程(6)に供することにより行ってもよい。
【0096】
(6)成形切断工程
マットを切断して所定の大きさを有する保持シール材を作製する。この際、保持シール材の端面のうち、一方の端面の一部に凸部が形成され、他方の端面の一部に凸部と嵌合する形状の凹部が形成されるようにして切断する。
具体的には、ピストンの先端に取り付けられており、上下方向に往復運動可能な打ち抜き板と、打ち抜き板と対向し、マットを載置可能な載置板とを備える打ち抜き装置を使用することにより保持シール材を作製してもよい。
【0097】
打ち抜き板には、製造する保持シール材の外形に対応する形状の打ち抜き刃と、伸縮自在なゴム等からなる弾性部材とが固定されている。また、載置板には、打ち抜き板が載置板に接近した場合に、打ち抜き刃が載置板と接触しないよう、打ち抜き刃に対応する位置に貫通孔が設けられている。
【0098】
このような打ち抜き装置を用いてマットを打ち抜く場合には、マットの第一主面が打ち抜き板側に、第二主面が載置板側に位置するように、載置板上にマットを載置し、打ち抜き板を上下方向に運動させる。
すると、弾性部材がマットに押し付けられてマットの厚さ方向に収縮し、これと同時に、打ち抜き刃がマットの第一主面側からマットの内部に侵入し、マットを打ち抜き刃が貫通することにより、マットが図3に示したような所定形状に打ち抜かれ、保持シール材が作製される。
【0099】
工程(6)を経て作製した保持シール材を使用して排ガス浄化装置を製造する場合には、作製した保持シール材を下記工程(7)に供することにより行ってもよい。
以下に排ガス浄化装置を製造する工程(7)について、図面を用いて説明する。
【0100】
図6は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を構成する保持シール材、排ガス処理体及びケーシングを用いて排ガス浄化装置を製造する様子を模式的に説明する斜視図である。
【0101】
(7)圧入工程
円柱状の排ガス処理体(ハニカムフィルタ)40の外周に上記工程(6)で作製した保持シール材200を凸部234aと凹部234bとが嵌合するようにして巻き付ける。そして、図6に示したように、保持シール材200を巻き付けた排ガス処理体40(巻付体)を、円筒状であり、主に金属等からなるケーシング50に圧入する。なお、ケーシング50の内径は、巻付体の直径より若干短い。
以上の工程を経て、本実施形態の排ガス浄化装置60を作製する。
【0102】
以下、本発明の第一実施形態のマット、マットの製造方法及び排ガス浄化装置の作用効果を列挙する。
【0103】
(1)本実施形態のマットは、第一交絡点から第二交絡点にかけて、マットの厚さ方向に沿って連続して形成された交絡部を有している。
交絡部では、第一長繊維及び短繊維が第二主面側に配列しており、互いに絡み合っているので、マットのせん断強度が高くなる。
また、交絡部を中心として、互いに緻密に絡み合った第一長繊維及び短繊維によりマットの嵩が適度に減っている。
従って、係るマットを用いた保持シール材を排ガス浄化装置の製造に使用した場合には、保持シール材が破損しにくく、その耐久性が向上するし、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシングに圧入しやすくなる。
また、第一長繊維が第一層に含まれており、マットの全てが短繊維から構成されていないため、マットの可とう性が高い。そのため、係るマットを用いた保持シール材を排ガス処理体に巻き付ける際には、保持シール材に割れが生じにくくなる。
また、平均繊維長が長く、高密度部を形成しやすい第一長繊維から第一層が構成されているにも関わらず、平均繊維長が短く、高密度部を形成しにくい短繊維から第二層が構成されているため、マット全体では、無機繊維の密度のばらつきが平均化されており、低く抑えられている。それゆえ、本実施形態のマットは均一に曲がりやすく、マットを使用した保持シール材は、巻き付け時の取り扱い性に優れ、圧入時にしわ等が発生しにくい。
さらに、第二層には製造コストの低い短繊維が含まれており、マットを構成する無機繊維の全てが製造コストの高い第一長繊維で構成されていないので、マットの製造コストを低くすることができる。
【0104】
(2)第一長繊維の平均繊維長がマットの厚みを2倍した長さと同じである場合には、交絡部に含まれる第一長繊維が第一交絡点から第二交絡点まで達することになると考えられる。特に、第一長繊維の平均繊維長がマットの厚みを2倍した長さよりも長い場合には、第一交絡点から第二交絡点まで達した第一長繊維の大部分が、第二交絡点で折り返して短繊維とより複雑に絡み合うと考えられる。
また、第一長繊維の平均繊維長が20mm以上、100mm以下であり、短繊維の平均繊維長が3.5mm以上、20mm以下である場合には、第一長繊維の平均繊維長と短繊維の平均繊維長のバランスがとれることになる。そのため、交絡部を中心として第一長繊維と短繊維とがより複雑に絡み合い、せん断強度がより高くなる。さらに、交絡部を中心として互いにより複雑に絡み合った第一長繊維と短繊維によって、マットが厚み方向に沿ってよりしっかりと縫い付けられたような状態になるので、マットの嵩が充分に低くなる。また、第一長繊維の平均繊維長が充分に長いため、良好な可とう性を確保することができる。
短繊維の平均繊維長が3.5mm以上、20mm以下である場合には、短繊維が高密度部をより形成しにくいため、マット全体では、無機繊維の密度のばらつきがより平均化されることになる。それゆえ、このマットを使用した保持シール材は、巻き付け時の取り扱い性により優れ、圧入時にしわ等がより発生しにくい。
また、一般に、平均繊維長が3.5mm以上、20mm以下である短繊維は、第一長繊維に比べて製造コストが低いことが多く、マットの製造コストが充分に低くなる。
【0105】
(3)第一層の厚みと第二層の厚みとの比が1:1〜1:10である場合には、第一長繊維の量が少なすぎることがなく、マットのせん断強度の向上、嵩の適度な低下及び良好な可とう性を確実に達成することができる。
また、短繊維の量が少なすぎることがなく、マット全体での無機繊維の密度のばらつきをより低く抑えることができる。
さらに、マット全体で使用する第一長繊維の量を必要最小限に留めて、製造コストをより低くすることができる。
【0106】
(4)マットを構成する無機繊維が、耐熱性等の特性に優れたアルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維からなる場合には、マット及び該マットを使用した保持シール材の耐熱性や保持力等が優れることになる。
また、マットを構成する無機繊維が溶解性繊維である場合には、マットの取り扱い時に溶解性繊維が飛散して体内に取り込まれたとしても溶解し、体外に排出されることになるため、人体に対する安全性が優れる。
【0107】
(5)本実施形態のマットの製造方法では、上述した構成及び作用効果を有する本実施形態のマットを好適に製造することができる。
【0108】
(6)本実施形態の排ガス浄化装置は、上述した構成を有する排ガス処理体を備えているので、排ガス中のPMや有害ガス等を除去することができる。
また、排ガス浄化装置を構成する保持シール材に、製造コストが低く、せん断強度が高い本実施形態のマットを使用しているので、使用時等に保持シール材が破損しにくく、排ガス浄化装置の製造コストが低くなる。
【実施例】
【0109】
(実施例1)
以下の工程(1)〜(5)を経ることにより、本実施形態に係るマットを製造した。
【0110】
(1)第一シート作製工程
(1−1)紡糸工程
Al含有量が70g/lであり、Al:Cl=1:1.8(原子比)となるように調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して無機繊維前駆体(第一長繊維前駆体)を作製した。
第一長繊維前駆体の平均繊維長は100mmであり、平均繊維径は8.0μmであった。
【0111】
(1−2)圧縮工程
上記工程(1−1)で得られた第一長繊維前駆体をクロスレイヤー法により圧縮し、所定の大きさの連続した長尺シートを作製した。
【0112】
(1−3)切断工程
次に、長尺シートを所定の大きさに切断することにより、第一シートを作製した。
作製された第一シートは、平面視略矩形状であり、長さ150mm×幅150mm×厚さ6.3mmであり、単位面積あたりの重量が340g/mであった。
【0113】
(2)第二シート作製工程
上記工程(1−1)と同様の操作を行うことにより、短繊維前駆体を作製した。
但し、紡糸条件を変更することにより、短繊維前駆体の平均繊維長を20mmとし、平均繊維径を8.0μmとした。
この短繊維前駆体を上記工程(1−2)と同様にして圧縮することにより、所定の大きさの連続した長尺シートを作製した。
作製した長尺シートを上記工程(1−3)と同様にして所定の大きさに切断することにより、第二シートを作製した。
作製された第二シートは、平面視略矩形状であり、長さ150mm×幅150mm×厚さ18.7mmであって、単位面積あたりの重量が1020g/mであった。
【0114】
(3)積層工程
第一シートの第二主面と第二シートの第一主面とが互いに接するように、第一シートを第二シートの上に積層した。
これにより、第一主面からシートの厚み方向に一定の範囲を占める第一シートと、第一シートに隣接する第二シートとの二枚の小シートからなるシートを作製した。
作製したシートは、平面視略矩形状であり、長さ150mm×幅150mm×厚さ25mmであって、単位面積あたりの重量が1360g/mであった。作製されたシートにおける第一シートの厚みと第二シートの厚みとの比は、1:3であった。
【0115】
(4)ニードリング工程
図2(a)に模式的に示した構成を有するニードリング装置を準備した。
なお、ニードル板としては、ニードル板の対向面の単位面積(1cm)あたりに形成されたニードルの数が7個であり、直径2mmのニードルが所定の間隔(ニードル間の最短距離:1mm)で取り付けられたニードル板を使用した。
【0116】
次に、ニードリング装置の支持板の載置面とシートの第二主面(下側の主面)とが接するように載置面にシートを設置し、支持板及びシートの上方に位置するニードル板をシートの厚さ方向に沿って下降させることにより、複数のニードルを第一主面(上側の主面)側から第二主面側に向かって貫通させた。その後、ニードルをシートから引き抜いた。
係るニードリング処理を行うことにより、ニードリングシートを作製した。
【0117】
(5)焼成工程
続いて、ニードリングシートを、最高温度1200℃で焼成することにより本実施形態のマットを製造した。
製造したマットは、長さ105mm×幅105mm×厚さ10mmであって、単位面積あたりの重量は1400g/mであった。
第一シートが焼成されることにより形成された第一層の厚みは、2.5mmであり、第二シートが焼成されることにより形成された第二層の厚みは、7.5mmであり、第一層の厚みと第二層の厚みとの比は、1:3であった。
マットは、アルミナシリカ繊維が互いに絡み合って構成されており、第一層には、平均繊維長が70mmの第一長繊維が含まれており、第二層には、平均繊維長が14mmの短繊維が含まれていた。
また、第一主面上及び第二主面上には交絡点が形成されており、第一主面上の交絡点から第二主面上の交絡点まで連続して交絡部が形成されていた。交絡部は、マットの長さ方向及び幅方向のそれぞれの方向に沿って複数列形成されており、マットの長さ方向に沿った一の交絡部の列では交絡部が略均一な間隔で形成されており、マットの幅方向に沿った一の交絡部の列では交絡部が略均一な間隔で形成されていた。また、交絡部の形成密度は、7個/cmであった。交絡部では、第一長繊維及び短繊維が第二主面側に配列しており、互いに絡み合っていた。
また、一の交絡点と、それに最近接する他の交絡点との最短距離は、約3mmであった。
第一主面上の交絡点及び第二主面上の交絡点の直径は、約1mmであった。
【0118】
なお、第一長繊維及び短繊維の平均繊維長の測定は、以下のようにして行った。
まず、製造したマットを第一層と第二層との二層に分離した。
次に、第一層から測定点を10箇所無作為に選択した。
一の測定点につき、任意に50本の第一長繊維を選択し、選択した50本の第一長繊維の繊維長を10倍の倍率の光学顕微鏡を用いることにより測定した。これを全ての測定点について行うことにより、合計500本の第一長繊維の繊維長を測定し、第一長繊維の平均繊維長を算出した。
短繊維の平均繊維長の測定は、第一層の代わりに第二層を用いること以外は、第一長繊維の平均繊維長を算出する方法と同様にして行った。
【0119】
(せん断強度測定試験)
せん断強度測定試験は、図7に示すせん断強度試験器を用いて行った。
【0120】
図7は、せん断強度試験器を模式的に示す側面図である。
【0121】
図7に示すせん断強度試験器70は、一方の主面のみに77個の円錐状の突起(底面の直径1mm×高さ1.6mm)72が形成されたSUS製の2枚の板材(長さ50mm×幅50mm×厚さ3mm)71a、71bと、両主面にそれぞれ77個の円錐状の突起(底面の直径1mm×高さ1.6mm)72が形成されたSUS製の中間板材(長さ50mm×幅50mm×厚さ3mm)73とから構成されている。
せん断強度試験器70を用いたせん断強度の測定は、次のようにして行った。
【0122】
まず、製造したマットを平面視寸法50×50mmに打ち抜き、せん断強度測定用サンプルとした。
一方の板材71aの突起72が形成された主面上に一の測定用サンプル80を載せ、その上に両面に突起72が形成された中間板材73を載せることにより、一の測定用サンプル80を所定の間隔gをもって挟み込んだ。
次いで、中間板材73上にもう一つの測定用サンプル80を載せ、さらにこの測定用サンプル80の上に、他方の板材71bを所定の間隔gをもって載せた。
これにより、三枚の板材のそれぞれの間に一枚ずつ合計二枚の測定用サンプル80を挟み込み、圧縮した。
この際、圧縮された各々のサンプル80の密度が0.35g/cmとなるように、三枚の板材の間隔を調整した。
【0123】
次いで、上下2枚の板材71a、71bと中間板材73とを互いに逆の方向(図7中、矢印tの方向)に引っ張り、その際に生じる応力(N)を測定した。
その結果、作製したサンプルのせん断強度は、183.8Nであった。
【0124】
(密度測定試験)
製造したマットを平面視寸法100mm×100mmに打ち抜き、密度測定用サンプルとした。
このサンプルの厚さ(mm)を測定して体積(cm)を算出し、重量(g)を測定することにより、密度(g/cm)を算出した。
その結果、作製したサンプルの密度は、0.140g/cmであった。
なお、本試験において、密度が高いことはマットを構成する無機繊維がより圧縮されていることを示しており、このことはマットの嵩が低いことを意味している。
【0125】
(巻き付け性確認試験)
直径127mm×長手方向の長さ150mmで円柱状の多孔質セラミック製の排ガス処理体を用意した。
製造したマットと同様の方法を経て、平面視寸法で長さ400mm×幅100mmの大きさの巻き付け試験用サンプルを作製した。
排ガス処理体の外周部に、このサンプルを巻き付けた。
このときに、サンプルに割れが発生したか否かを目視で観察した。
その結果、作製したサンプルでは、割れが発生せず、排ガス処理体と巻き付けたサンプルとの間に隙間が生じなかった。
【0126】
(実施例2〜4)
実施例1の工程(2)における短繊維前駆体の平均繊維長を変更することにより、短繊維の平均繊維長を下記する表1に示すように変更(実施例2は20mm、実施例3は10mm、実施例4は5mm)したこと以外は、実施例1と同様にしてマットを製造した。
【0127】
(実施例5〜8)
実施例1の工程(1−1)における第一長繊維前駆体の平均繊維長を変更することにより、第一長繊維の平均繊維長を下記する表1に示すように変更(実施例5は30mm、実施例6は40mm、実施例7は80mm、実施例8は100mm)したこと以外は、実施例1と同様にしてマットを製造した。
【0128】
(実施例9〜11)
実施例1の工程(1−1)における第一長繊維前駆体の圧縮の度合い、及び、工程(2)における短繊維前駆体の圧縮の度合いを変えることにより、第一層の厚みと第二層の厚みとの比を表1に示すように変更(実施例9は1:5、実施例10は1:1、実施例11は1:10)したこと以外は、実施例1と同様にしてマットを製造した。
【0129】
(参考例1〜3)
実施例2〜11と同様の方法により、第一長繊維の平均繊維長、短繊維の平均繊維長、マットの厚み又は第一層の厚みと第二層の厚みとの比を表1に示したように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマットを製造した。
参考例1は、第一長繊維の平均繊維長が20mm、短繊維の平均繊維長が10mmである点等が実施例1と異なり、参考例2は、第一層の厚みと第二層の厚みとの比が1:15である点等が実施例1と異なり、参考例3は、第一層の厚みと第二層の厚みとの比が1:0.5である点等が実施例1と異なる。
【0130】
(比較例1、2)
比較例1では、実施例1の工程(1−1)で使用した第一長繊維前駆体を平均繊維長が20mmの短繊維前駆体に変更することにより、第一層及び第二層をともに平均繊維長が14mmの短繊維で形成したこと以外は、実施例1と同様にしてマットを製造した。
比較例2では、実施例1の工程(1−1)で使用した短繊維前駆体を平均繊維長が100mmの長繊維前駆体に変更することにより、第一層及び第二層をともに平均繊維長が70mmの長繊維で形成したこと以外は、実施例1と同様にしてマットを製造した。
【0131】
(比較例3)
比較例1で使用した短繊維前駆体と同じ短繊維前駆体を使用し、ニードリング処理を施さなかったこと以外は、比較例1と同様にしてマットを製造した。
【0132】
実施例1〜11、参考例1〜3、並びに、比較例1〜3の主要な構成について、表1にまとめて示す。
なお、表1には示していないが、実施例1〜11、参考例1〜3、及び、比較例1、2における一の交絡点と、それに最近接する他の交絡点との最短距離は、約3mmであった。また、実施例1〜11、参考例1〜3、並びに、比較例1、2では、第一主面上の第一交絡点及び第二主面上の第二交絡点の直径が、約1mmであった。
【0133】
【表1】

【0134】
実施例2〜11、参考例1〜3、並びに、比較例1〜3で製造したマットについて、実施例1と同様にしてせん断強度測定試験、密度測定試験及び巻き付け性確認試験を行った。
実施例2〜11、参考例1〜3、並びに、比較例1〜3の結果を、実施例1の結果と合わせて表2に示す。
【0135】
【表2】

【0136】
表2に示したように、実施例1〜11、参考例1〜3で製造したマットは、せん断強度が高く、密度が高く(即ち、嵩が適度に低く)、サンプルに割れが発生しにくく、排ガス処理体とサンプルとの間に隙間が生じなかった。
参考例1のマットは、実施例1のマットと比べて、せん断強度及び密度がやや低かった。また、巻き付け性確認試験において、サンプルの表面に放置すれば割れにつながる可能性が推認されるごく微小な切れ目が発生した。
これは、参考例1のマットにおける第一長繊維の平均繊維長が20mmであり、第一長繊維の平均繊維長がマットの厚みを2倍した長さ(25.4mm)よりも短かったためであると推測される。
参考例2のマットでは、第一層の厚み:第二層の厚み=1:15であったためか、実施例1のマットと比較してせん断強度及び密度がやや低かった。また、巻き付け性確認試験において、サンプルの表面に放置すれば割れにつながる可能性が推認されるごく微小な切れ目が発生した。
参考例3のマットでは、第一層の厚み:第二層の厚み=1:0.5であったためか、サンプルに割れが発生しなかったものの、部位によっては巻きつけ時にサンプルがやや曲げにくかった。但し、巻き付け時の取り扱い性が劣っているとまではいえなかった。
比較例1のマットは、全て平均繊維長14mmの短繊維から構成されており、せん断強度が低く、密度が低かった。また、巻き付け性確認試験でサンプルに割れが発生した。
比較例2のマットは、全て平均繊維長70mmの長繊維から構成されており、巻き付け性確認試験で排ガス処理体と巻き付けたサンプルとの間に隙間が生じた箇所があり、巻き付け時の取り扱い性が劣っていた。また、マットの製造コストが高いと考えられた。
比較例3のマットは、全て平均繊維長14mmの短繊維から構成されており、交絡部を有していなかったためか、せん断強度が極めて低く、密度が極めて低かった。また、巻き付け性確認試験でサンプルに割れが発生した。
【0137】
(第二実施形態)
次に、本発明の一実施形態である第二実施形態について図面を用いて説明する。
本発明の第二実施形態のマットは、第一主面と第一主面の反対側に位置する第二主面とを有しており、無機繊維が互いに絡み合って構成されたマットであって、第一主面からマットの厚み方向に一定の範囲を占める第一層と、第一層に隣接する第二層と、第二主面からマットの厚み方向に一定の範囲を占める第三層とを含み、第一層には、第一長繊維が含まれており、第二層には、第一長繊維よりも平均繊維長が短い短繊維が含まれており、第三層には、短繊維よりも平均繊維長が長い第二長繊維が含まれており、第一主面から第二主面にかけて交絡部が設けられており、交絡部には、交絡部以外の部分を構成する無機繊維に比べて互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維と第二長繊維とが含まれている。
【0138】
図8(a)は、本発明の第二実施形態のマットを模式的に示す斜視図であり、図8(b)は、図8(a)に示すマットのC−C線断面図である。
【0139】
図8(a)及び図8(b)に示す本実施形態のマット2は、所定の長さ(図8(a)中、両矢印Lで示す)、幅(図8(a)中、両矢印Wで示す)及び厚さ(図8(a)中、両矢印Tで示す)を有する平面視略矩形状である。
マット2の表面のうちで最も面積の大きい主面が第一主面20aであり、第一主面20aの反対側に位置する主面が第二主面20bである。
【0140】
マット2の大きさは、長さ100〜10000mm×幅100〜1500mm×厚さ5〜30mmである。
【0141】
マット2は、第一主面20aを含み、第一主面20aからマット2の厚み方向に一定の範囲を占める第一層24aと、第一層24aに隣接する第二層24bと、第二主面20bを含み、第二主面20bからマット2の厚み方向に一定の範囲を占めており、第二層24bと隣接する第三層24cとの三層から構成されている。
第一層24a及び第三層24cの合計の厚みと第二層24bの厚みとの比は、1:1〜1:5であることが望ましい。
【0142】
第一層24aには、第一長繊維25aが含まれており、第二層24bには、第一長繊維25aよりも平均繊維長が短い短繊維25bが含まれており、第三層24cには、短繊維25bよりも平均繊維長が長い第二長繊維25cが含まれている。
第一長繊維25a、短繊維25b及び第二長繊維25cは、本発明の第一実施形態で説明した無機繊維(第一長繊維及び短繊維)と同種の無機繊維であり同様の組成を有している。なお、第一長繊維25a、短繊維25b及び第二長繊維25cの組成は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0143】
第一長繊維25a及び第二長繊維25cの平均繊維長及び平均繊維径は、本発明の第一実施形態の第一長繊維15aの平均繊維長及び平均繊維径と同じであってもよい。なお、第一長繊維25aの平均繊維長及び平均繊維径は、第二長繊維25cの平均繊維長及び平均繊維径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
短繊維25bの平均繊維長及び平均繊維径は、本発明の第一実施形態の短繊維15bの平均繊維長及び平均繊維径と同じであってもよい。
【0144】
第一主面20a上には、第一交絡点21aが形成されており、第二主面20b上には、第二交絡点21bが形成されている。そして、第一交絡点21aから第二交絡点21bにかけて、マット2の厚さ方向に沿って連続して第一交絡部22aが形成されている。
なお、第一交絡点21a、第二交絡点21b及び第一交絡部22aは、ニードリング処理においてニードルがシートを貫通した箇所に形成されている。
【0145】
第一交絡部22aには、第二主面20b側に配列するとともに、互いに緻密に絡み合った第一長繊維25a、短繊維25b及び第二長繊維25cが含まれている。
また、第一交絡部22aを中心として、互いに緻密に絡み合った第一長繊維25a、短繊維25b及び第二長繊維25cによりマット2が厚み方向に沿って縫い付けられたような状態になっている。
【0146】
第一主面20a上には、第三交絡点21cが形成されており、第二主面20b上には、第四交絡点21dが形成されている。そして、第三交絡点21cから第四交絡点21dにかけて、連続して第二交絡部22bが形成されている。
なお、第三交絡点21c、第四交絡点21d及び第二交絡部22bは、ニードリング処理においてニードルがシートを貫通した箇所に形成されている。
【0147】
第二交絡部22bには、第一主面20a側に配列するとともに、互いに緻密に絡み合った第一長繊維25a、短繊維25b及び第二長繊維25cが含まれている。
また、第二交絡部22bを中心として、互いに緻密に絡み合った第一長繊維25a、短繊維25b及び第二長繊維25cによりマット2が厚み方向に沿って縫い付けられたような状態になっている。
【0148】
一方、第一交絡部22a及び第二交絡部22b以外の非形成領域23は、第一長繊維25a、短繊維25b及び第二長繊維25cが比較的緩く絡み合うことにより形成されており、不織布状を呈している。
【0149】
従って、第一交絡部22a及び第二交絡部22bが形成されていない非形成領域23に比べて、第一交絡部22a及び第二交絡部22b近傍では、無機繊維の密度が高くなっている。
【0150】
第一交絡部22aと第二交絡部22bの合計の形成密度は、0.5〜30個/cmが望ましい。マット2のせん断強度がより高く、嵩が適度に低くなるからである。
これに対して、第一交絡部と第二交絡部の合計の形成密度が、0.5個/cm未満であると、単位面積あたりに形成された第一交絡部と第二交絡部の数が少なすぎて、せん断強度が低くなりやすく、嵩が低くなりにくい。
また、第一交絡部と第二交絡部の合計の形成密度が30個/cmを超えると、単位面積あたりに形成された第一交絡部と第二交絡部の数が多すぎて、マットの嵩が低くなり、反発力が低下しやすくなる。また、ニードリング処理で細かく裁断されてしまった無機繊維が多く含まれることになり、マットのせん断強度が低くなりやすい。
なお、本明細書において、第一交絡部と第二交絡部の合計の形成密度とは、第一主面及び第二主面に略平行な平面に沿ってマットを厚み方向の中間地点で略二等分に切断し、得られた主断面を目視又は拡大鏡で観察した場合に確認される、主断面の1cmあたりに形成された第一交絡部と第二交絡部の合計の個数のことをいう。
【0151】
第一交絡部22a及び第二交絡部22b(第一交絡点21a、第二交絡点21b、第三交絡点21c及び第四交絡点21d)は、マット2の長さ方向L及び幅方向Wのそれぞれの方向に沿って複数列形成されている。
マット2の長さ方向Lに沿った一の列では、第一交絡部22a(第一交絡点21a及び第二交絡点21b)と第二交絡部22b(第三交絡点21c及び第四交絡点21d)とが略均一な間隔で交互に形成されている。また、マット2の幅方向Wに沿った一の列では、第一交絡部22aと第二交絡部22bとが、上記間隔とは異なる略均一な間隔で交互に形成されている。
なお、第一交絡部22aと第二交絡部22bとは交互に異なる位置に形成されていることが望ましいが、一の第一交絡部22aと他の第一交絡部22aとが隣り合っていてもよく、一の第二交絡部22bと他の第二交絡部22bとが隣り合っていてもよい。
【0152】
第一交絡点21a(第二交絡点21b)と、それに最近接する第三交絡点21c(第四交絡点21d)との最短距離(図8(a)中、両矢印Yで示す距離)は、1mm〜10mmが望ましい。第一交絡部22a及び第二交絡部22が密に集まりすぎず、マット2のせん断強度が充分に高く、嵩が適度に低くなるからである。
これに対して、第一交絡点(第二交絡点)とそれに最近接する第三交絡点(第四交絡点)との最短距離が10mmを超えると、単位面積あたりに形成された第一交絡部及び第二交絡部の数が少なすぎて、せん断強度が低くなりやすく、嵩が低くなりにくい。
また、上記最短距離が1mm未満であると、単位面積あたりに形成された第一交絡部及び第二交絡部の数が多すぎて、マットの嵩が低くなりやすく反発力が低下しやすくなる。
また、ニードリング処理で細かく裁断されてしまった無機繊維が多く含まれることになり、マットのせん断強度が低くなりやすい。
【0153】
第一交絡点21a、第二交絡点21b、第三交絡点21c及び第四交絡点21dの直径は、0.1mm〜2mmであることが望ましい。
第一交絡点21a、第二交絡点21b、第三交絡点21c及び第四交絡点21dの直径が大きすぎず、マット2のせん断強度が充分に高くなるからである。
これに対して、第一交絡点、第二交絡点、第三交絡点及び第四交絡点の直径が2mmを超えると、第一交絡点、第二交絡点、第一交絡部、第三交絡点、第四交絡点及び第二交絡部を構成する無機繊維が粗な状態となり、マットのせん断強度が低くなりやすい。
また、第一交絡点、第二交絡点、第三交絡点及び第四交絡点の直径が0.1mm未満であると、第一交絡部及び第二交絡部で第一長繊維、短繊維及び第二長繊維が充分に絡み合わないことがあり、マットのせん断強度が低くなりやすく、嵩が充分に低くなりにくい。
【0154】
マット2の目付量(単位面積あたりの重量)は、900〜3000g/mであることが望ましい。
マット2の目付量は、1500〜2800g/mであることがより望ましい。
また、マット2の密度は、0.08〜0.20g/cmであることが望ましい。
マット2の密度は、0.10〜0.15g/cmであることがより望ましい。
【0155】
本実施形態の保持シール材の構成については、上述した本実施形態のマットを使用していること以外は、本発明の第一実施形態のマットと同様の構成を有しているので、説明を省略する。
本実施形態の排ガス浄化装置の構成については、上述した本実施形態のマットを使用した保持シール材を用いていること以外は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置と同様の構成を有しているので、説明を省略する。
【0156】
本実施形態のマットは、以下の工程を経て製造する。
【0157】
まず、本発明の第一実施形態の第一シート作製工程(1)と同様の工程を経ることにより、第一長繊維前駆体からなる第一シートを作製する。
同様にして、第二長繊維前駆体からなる第三シートを作製する。
【0158】
別途、本発明の第一実施形態の第二シート作製工程(2)と同様の工程を経ることにより、短繊維前駆体からなる第二シートを作製する。
なお、第一シート及び第三シートの合計の厚みと、第二シートの厚みとの比を1:1〜1:5に調整するには、使用する短繊維前駆体の量を減らしたり、短繊維前駆体の圧縮の程度を変更したりすることにより、第二シートの厚みを調整すればよい。
【0159】
次に、第一シートの第二主面と第二シートの第一主面とが互いに接し、第二シートの第二主面と第三シートの第一主面とが互いに接するように、第一シートと第二シートと第三シートとを積層する。
これにより、第一主面からシートの厚み方向に一定の範囲を占める第一シートと、第一シートに隣接する第二シートと、第二主面からシートの厚み方向に一定の範囲を占める第三シートとの三枚の小シートからなるシートを作製する。
なお、後の工程を経て作製されるシートにおける第一シートの厚み及び第三シートの合計の厚みと第二シートの厚みとの比は、1:1〜1:5であることが望ましい。
【0160】
その後、ニードリング装置を使用してニードリング処理を行う。
ニードリング装置としては、図2(a)に示したニードリング装置と略同様の構成を有するニードリング装置を使用してもよい。
なお、第一交絡部と第二交絡部の合計の形成密度が0.5個〜30個/cmであり、一の第一交絡点(一の第二交絡点)と、それに最近接する他の第三交絡点(他の第四交絡点)との最短距離が1mm〜10mmであり、第一交絡点及び第二交絡点の直径が0.1mm〜2mmであるマットを製造するには、ニードル板の対向面の単位面積あたりに所定の数のニードル(所定の直径を有するニードル)が所定の間隔で取り付けられたニードル板を使用すればよい。
【0161】
具体的には、ニードリング処理は下記のようにして行う。
まず、支持板の載置面とシートの第二主面(下側の主面)とが接するように載置面に作製したシートを設置し、支持板及びシートの上方に位置するニードル板をシートの厚さ方向に沿って下降させることにより、複数のニードルを第一主面(上側の主面)側から第二主面側に向かって貫通させる。その後、ニードルをシートから引き抜くことにより、一回目のニードリング処理を完了する。
なお、第一主面上のニードルが貫通した箇所は、後の工程を経て作製されるマットの第一主面上に形成された第一交絡点となり、第二主面上のニードルが貫通した箇所は、マットの第二主面上に形成された第二交絡点となり、ニードルが貫通した箇所は、マットの第一交絡部となる。
【0162】
次に、一回目のニードリング処理後のシートの第一主面と第二主面とを上下反対にする。即ち、支持板の載置面と上記シートの第一主面とが接するように、シートを載置面に設置する。
そして、支持板及びシートの上方に位置するニードル板をシートの厚さ方向に沿って下降させることにより、複数のニードルを第二主面側から第一主面側に向かって貫通させる。このとき、一回目にニードルが貫通した箇所と、二回目にニードルが貫通する位置とが交互に異なるようにニードルをシートに貫通させる。
その後、ニードルをシートから引き抜く。これにより、二回目のニードリング処理を完了する。
係る二回のニードリング処理を行うことにより、ニードリングシートを作製する。
なお、第一主面上のニードルが貫通した箇所は、後の工程を経て作製されるマットの第一主面上に形成された第三交絡点となり、第二主面上のニードルが貫通した箇所は、マットの第二主面上に形成された第四交絡点となり、ニードルが貫通した箇所は、マットの第二交絡部となる。
また、支持板及びシートを挟んで対向する2つのニードル板を備えるニードリング装置を使用し、シートの両主面側からニードルを略同時に貫通させることにより、シートの両主面にニードリング処理を施してもよい。この方法によっても、ニードリングシートを作製することができる。
【0163】
続いて、ニードリングシートを、最高温度約1000〜約1600℃で焼成することにより、第一長繊維前駆体を第一長繊維に転換し、短繊維前駆体を短繊維に転換し、第二長繊維前駆体を第二長繊維に転換することにより本実施形態のマットを製造する。
【0164】
製造したマットを使用して保持シール材を作製する場合には、製造したマットを本発明の第一実施形態で述べた工程(6)に供することにより行ってもよい。
作製した保持シール材を使用して排ガス浄化装置を製造する場合には、作製した保持シール材を本発明の第一実施形態で述べた工程(7)に供することにより行ってもよい。
【0165】
本発明の第二実施形態のマット、マットの製造方法及び排ガス浄化装置でも、本発明の第一実施形態で説明した効果(4)、(5)及び(6)を発揮することができる。
また、以下の効果(7)〜(9)を発揮することができる。
【0166】
(7)本実施形態のマットは、第一交絡点から第二交絡点にかけて、マットの厚さ方向に沿って連続して形成された第一交絡部を有している。また、第三交絡点から第四交絡点にかけて、マットの厚さ方向に沿って連続して形成された第二交絡部を有している。
そして、第一交絡部を形成する第一長繊維、短繊維及び第二長繊維の配列方向と、第二交絡部を形成する第一長繊維、短繊維及び第二長繊維の配列方向とは、対向した関係にあり、第一交絡部及び第二交絡部を中心として無機繊維がより複雑に絡み合っている。
そのため、マットのせん断強度が高く、マットの嵩が適度に低くなる。
従って、係るマットを用いた保持シール材を排ガス浄化装置の製造に使用した場合には、保持シール材が破損しにくく、その耐久性が向上するし、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシングに圧入しやすくなる。
また、第一長繊維が第一層に含まれており、第二長繊維が第三層に含まれており、マットの全てが短繊維から構成されていないため、マットの可とう性が高くなる。
そのため、係るマットを用いた保持シール材を排ガス処理体に巻き付ける際には、保持シール材に割れが生じにくくなる。
また、平均繊維長が長く、高密度部を形成しやすい第一長繊維から第一層が構成されており、高密度部を形成しやすい第二長繊維から第三層が構成されているにも関わらず、平均繊維長が短く、高密度部を形成しにくい短繊維から第二層が構成されているため、マット全体では、無機繊維の密度のばらつきが平均化されており、低く抑えられている。それゆえ、本実施形態のマットは均一に曲がりやすく、マットを使用した保持シール材は、巻き付け時の取り扱い性に優れ、圧入時にしわ等が発生しにくい。
さらに、第二層には製造コストの低い短繊維が含まれており、マットを構成する無機繊維の全てが製造コストの高い第一長繊維及び第二長繊維で構成されていないので、マットの製造コストを低くすることができる。
【0167】
(8)第一長繊維及び第二長繊維の平均繊維長がマットの厚みを2倍した長さと同じである場合には、第一交絡部に含まれる第一長繊維が第一主面から第二主面まで達することになると考えられる。特に、第一長繊維の平均繊維長がマットの厚みを2倍した長さよりも長い場合には、第一主面から第二主面まで達した第一長繊維の大部分が、第二主面で折り返して短繊維及び第二長繊維とより複雑に絡み合うと考えられる。また、第二交絡部に含まれる第二長繊維は、第二主面から第一主面まで達することになると考えられる。特に、第二長繊維の平均繊維長がマットの厚みを2倍した長さよりも長い場合、第二主面から第一主面まで達した第二長繊維の大部分は、第一主面で折り返して短繊維及び第一長繊維とより複雑に絡み合うと考えられる。
また、第一長繊維及び第二長繊維の平均繊維長が、それぞれ20mm以上、100mm以下であり、短繊維の平均繊維長が3.5mm以上、20mm以下である場合には、第一長繊維及び第二長繊維の平均繊維長と短繊維の平均繊維長とのバランスがとれることになる。そのため、第一交絡部及び第二交絡部を中心として第一長繊維、短繊維及び第二長繊維の絡み合いの程度がより高くなり、せん断強度がより高くなる。さらに、第一交絡部及び第二交絡部を中心として、互いにより複雑に絡み合った第一長繊維、短繊維及び第二長繊維によって、マットが厚み方向に沿ってよりしっかりと縫い付けられたような状態になるので、マットの嵩が充分に低くなる。また、第一長繊維及び第二長繊維の平均繊維長が充分に長いため、良好な可とう性を確保することができる。
平均繊維長が3.5mm以上、20mm以下である場合には、短繊維が高密度部をより形成しにくいため、マット全体では、無機繊維の密度のばらつきがより平均化されることになる。それゆえ、このマットを使用した保持シール材は、巻き付け時の取り扱い性により優れ、圧入時にしわ等がより発生しにくい。
また、一般に、上述した平均繊維長を有する短繊維は、第一長繊維及び第二長繊維に比べて製造コストが充分に低いことが多く、マットの製造コストが充分に低くなる。
【0168】
(9)第一層及び第三層の合計の厚みと、第二層の厚みとの比が1:1〜1:5である場合には、第一長繊維及び第二長繊維の量が少なすぎることがなく、マットのせん断強度の向上、嵩の適度な低下及び良好な可とう性を確実に達成することができる。
また、短繊維の量が少なすぎることがなく、マット全体での無機繊維の密度のばらつきをより低く抑えることができる。
さらに、マット全体で使用する第一長繊維及び第二長繊維の量を必要最小限に留めて、製造コストをより低くすることができる。
【0169】
(その他の実施形態)
本発明のマットは、有機バインダをさらに含んでいてもよい。
有機バインダが含まれたマット(以下、単に、バインダマットともいう)を使用した保持シール材を排ガス浄化装置に用いると、排ガス浄化装置の使用時には、高温の排ガスにより有機バインダが分解し、無機繊維の接着が解除され、保持シール材が膨張するので、高い保持力を発揮することができる。
なお、有機バインダは、例えば、アクリル系樹脂、アクリルゴム等のゴム、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等であってもよい。これらの中では、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが特に望ましい。
また、バインダマット全体に含まれる有機バインダの合計量は、バインダマット全体の重量の0.5〜20重量%であることが望ましい。バインダマットを構成する無機繊維同士をより強固に接着することができるので、バインダマットの強度を向上させることができるからである。また、バインダマットの嵩を適度に低くしやすくなるからである。
一方、バインダマット全体に含まれる有機バインダの合計量が、バインダマット全体の重量の0.5重量%未満であると、有機バインダの量が少なすぎて、無機繊維が飛散しやすくなり、バインダマットの強度が低下しやすくなる。
また、バインダマット全体に含まれる有機バインダの合計量が、バインダマット全体の重量の20重量%を超えると、バインダマットを使用した保持シール材を排ガス浄化装置に用いた場合に、排出される排ガス中の有機成分の量が増加することになるので、環境に負荷がかかりやすくなる。
【0170】
上記バインダマットを作製する場合には、次の工程(A)〜(C)を行うことによりバインダマットを作製してもよい。
【0171】
(A)含浸工程
まず、上記有機バインダを含む有機バインダ溶液をフローコート等により焼成工程を経て製造したマット全体に均一に含浸させることにより、含浸マットを作製する。
なお、有機バインダ溶液は、水や有機溶媒等の溶媒に上記有機バインダを溶解させたり、水等の分散媒に上記有機バインダを分散させることにより作製することができる。
また、有機バインダ溶液の濃度については、後の工程を経て作製されるバインダマット全体に含まれる有機バインダの合計量が、バインダマット全体の重量の0.5〜20重量%となるように適宜調整することが望ましい。
【0172】
(B)吸引工程
次に、含浸マットから、吸引装置等を用いて過剰な有機バインダ溶液を吸引除去する。
なお、吸引工程については、必ずしも行う必要はなく、例えば、含浸マットに含まれる有機バインダ溶液の量が少ないのであれば、含浸工程の後、得られた含浸マットを下記乾燥工程に直接供してもよい。
【0173】
(C)乾燥工程
その後、含浸マットに残留した有機バインダ溶液に含まれる溶媒等を、熱風乾燥機等を用いて含浸マットを圧縮しながら揮発させる。
これにより、バインダマットを作製する。
【0174】
本発明のマットは、膨張材をさらに含んでいてもよい。
膨張材が含まれたマットを使用した保持シール材では、排ガス浄化装置の使用時における高温の排ガスにより膨張材が膨張するので、高い保持力を発揮することができる。
膨張材としては、例えば、膨張性バーミキュライト、ベントナイト、膨張性黒鉛等が挙げられる。
【0175】
本発明のマットにおいて、第一長繊維の平均繊維長は、マットの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長いことが望ましい。
また、第一長繊維の平均繊維長が20mm以上、100mm以下であり、短繊維の平均繊維長が3.5mm以上、20mm以下であることがより望ましく、第一長繊維の平均繊維長が40mm以上、100mm以下であり、短繊維の平均繊維長が5mm以上、20mm以下であることがさらに望ましく、第一長繊維の平均繊維長が70mm以上、100mm以下であり、短繊維の平均繊維長が14mm以上、20mm以下であることが特に望ましい。
第一長繊維の平均繊維長と短繊維の平均繊維長のバランスがとれており、交絡部を中心として第一長繊維と短繊維とがより複雑に絡み合って、せん断強度がより高くなり、嵩が適度に低くなり、良好な可とう性を確保することができるからである。
また、マット全体での無機繊維の密度のばらつきを低く抑えることができ、マットの製造コストを充分に低く抑えることができるからである。
【0176】
本発明のマットでは、本発明の第二実施形態で述べたように、交絡部が第一交絡部と第二交絡部とからなり、第一交絡部には、第二主面側に配列するとともに、互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維と第二長繊維とが含まれており、第二交絡部には、第一主面側に配列するとともに、互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維と第二長繊維とが含まれていることが望ましい。第一交絡部を形成する第一長繊維、短繊維及び第二長繊維の配列方向と、第二交絡部を形成する第一長繊維、短繊維及び第二長繊維の配列方向とが対向した関係にあるため、第一交絡部及び第二交絡部を中心として無機繊維がより複雑に絡み合うからである。
しかしながら、第一交絡部を構成する無機繊維の配列方向と、第二交絡部を構成する無機繊維の配列方向とが同じ方向に揃っていても、本発明の第一実施形態のマットの説明で述べたように、第一交絡部及び第二交絡部を中心として無機繊維を互いに絡み合わせることが可能である。
【0177】
本発明のマットにおいて、第一長繊維及び第二長繊維の平均繊維長は、マットの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長いことが望ましい。
また、第一長繊維及び第二長繊維の平均繊維長が20mm以上、100mm以下であり、短繊維の平均繊維長が3.5mm以上、20mm以下であることがより望ましく、第一長繊維及び第二長繊維の平均繊維長が40mm以上、100mm以下であり、短繊維の平均繊維長が5mm以上、20mm以下であることがさらに望ましく、第一長繊維の平均繊維長が70mm以上、100mm以下であり、短繊維の平均繊維長が14mm以上、20mm以下であることが特に望ましい。
第一長繊維及び第二長繊維の平均繊維長と短繊維の平均繊維長のバランスがとれており、交絡部を中心として第一長繊維及び第二長繊維と短繊維とがより複雑に絡み合って、せん断強度がより高くなり、嵩が適度に低くなり、良好な可とう性を確保することができるからである。また、マット全体での無機繊維の密度のばらつきを低く抑えることができ、マットの製造コストを充分に低く抑えることができるからである。
【0178】
本発明のマットにおいては、第一層の厚みと第二層の厚みとの比が、1:1〜1:10であることが望ましく、1:2〜1:8であることがより望ましく、1:3〜1:8であることが極めて望ましい。
第一層の厚みと第二層の厚みとの比が1:1〜1:10であると、マット全体で使用する第一長繊維の量を必要最小限に留めて製造コストを確実に抑制することができる。また、マット全体で使用する第一長繊維の量が少なすぎることもなく、マットのせん断強度の向上、嵩の適度な低下及び良好な可とう性を確実に達成することができる。
【0179】
本発明のマットにおいては、第一層の厚み及び第三層の合計の厚みと、第二層の厚みとの比が1:1〜1:5であることが望ましく、1:2〜1:5であることがより望ましく、1:3〜1:5であることが極めて望ましい。
第一層及び第三層の合計の厚みと、第二層の厚みとの比が1:1〜1:5であると、マット全体で使用する第一長繊維及び第二長繊維の量を必要最小限に留めて製造コストを確実に抑制することができ、マット全体で使用する第一長繊維及び第二長繊維の量が少なすぎることもなく、マットのせん断強度の向上、嵩の適度な低下及び良好な可とう性を確実に達成することができる。
【0180】
本発明のマットの製造方法では、短繊維前駆体を含んでなる第二シートを使用している。
しかしながら、この第二シートに代えて、第一主面と第二主面とを有しており、第一長繊維前駆体(第一長繊維前駆体及び第二長繊維前駆体)よりも平均繊維長が短い短繊維を含んでなるシートを使用してもよい。短繊維を含んでなるシートを第二シートとして使用しても、本発明のマットを製造することができる。
短繊維を含んでなるシートは、本発明のマットの製造方法で使用する短繊維前駆体を含んでなる第二シートを焼成することにより作製することができるし、遠心法等を利用して作製することもできる。
遠心法を利用する場合には、周壁に多数の小孔が形成された回転可能な円筒体を加熱しつつ、高速で回転させ、円筒体内に溶融シリカや溶融アルミナ等の溶融原料を供給し、供給した溶融原料を遠心力により上記小孔を介して外部に吐出させ、吐出された溶融原料を円筒体の周辺部に設けられたバーナーで加熱することにより延伸させ、延伸した繊維状の溶融原料を冷却することにより短繊維を作製することができる。作製された短繊維を圧縮することにより、短繊維を含んでなるシートを作製することができる。
短繊維を含んでなるシートを構成する無機繊維としては、上述した本発明のマットを構成する無機繊維と同様の構成(種類、組成、平均繊維長、平均繊維径等)を有する無機繊維を使用することができる。
【符号の説明】
【0181】
1、2 マット
第一主面 10a、20a
第二主面 10b、20b
第一層 14a、24a
第二層 14b、24b
第一長繊維 15a、25a
短繊維 15b、25b
交絡部 12、22a、22b

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一主面と前記第一主面の反対側に位置する第二主面とを有しており、無機繊維が互いに絡み合って構成されたマットであって、
前記第一主面から前記マットの厚み方向に一定の範囲を占める第一層と、
前記第一層に隣接する第二層との少なくとも二層からなり、
前記第一層には、第一長繊維が含まれており、
前記第二層には、前記第一長繊維よりも平均繊維長が短い短繊維が含まれており、
前記第一主面から前記第二主面にかけて交絡部が設けられており、
前記交絡部には、前記交絡部以外の部分を構成する無機繊維に比べて互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維とが含まれていることを特徴とするマット。
【請求項2】
前記第一長繊維の平均繊維長は、前記マットの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長い請求項1に記載のマット。
【請求項3】
前記第一長繊維の平均繊維長は、20mm以上、100mm以下であり、前記短繊維の平均繊維長は、3.5mm以上、20mm以下である請求項1又は2に記載のマット。
【請求項4】
前記第一層の厚みと前記第二層の厚みとの比は、1:1〜1:10である請求項1〜3のいずれかに記載のマット。
【請求項5】
前記マットは、前記第二主面から前記マットの厚み方向に一定の範囲を占める第三層を含み、
前記第三層には、前記短繊維よりも平均繊維長が長い第二長繊維が含まれており、
前記交絡部には、前記交絡部以外の部分を構成する無機繊維に比べて互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維と第二長繊維とが含まれている請求項1に記載のマット。
【請求項6】
前記交絡部は、第一交絡部と、第二交絡部とからなり、
前記第一交絡部には、前記第一主面側から第二主面側に向かって配列しつつ、互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維と第二長繊維とが含まれており、
前記第二交絡部には、前記第二主面側から前記第一主面側に向かって配列しつつ、互いに緻密に絡み合った第一長繊維と短繊維と第二長繊維とが含まれている請求項5に記載のマット。
【請求項7】
前記第一長繊維及び前記第二長繊維の平均繊維長は、前記マットの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長い請求項5又は6に記載のマット。
【請求項8】
前記第一長繊維の平均繊維長は、20mm以上、100mm以下であり、
前記短繊維の平均繊維長は、3.5mm以上、20mm以下であり、
前記第二長繊維の平均繊維長は、20mm以上、100mm以下である請求項5〜7のいずれかに記載のマット。
【請求項9】
前記第一層及び前記第三層の合計の厚みと、前記第二層の厚みとの比は、1:1〜1:5である請求項5〜8のいずれかに記載のマット。
【請求項10】
前記無機繊維は、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維である請求項1〜9のいずれかに記載のマット。
【請求項11】
第一主面と前記第一主面の反対側に位置する第二主面とを有しており、焼成することにより無機繊維に転換される無機繊維前駆体が互いに絡み合って構成されたシートを準備し、前記シートにニードルを貫通させることによりニードリングシートを作製するニードリング工程と、
前記ニードリングシートを焼成する焼成工程とを含むマットの製造方法であって、
前記シートは、前記第一主面から前記シートの厚み方向に一定の範囲を占める第一シートと、前記第一シートに隣接する第二シートとの少なくとも二枚の小シートからなり、前記第一シートには、第一長繊維前駆体が含まれており、前記第二シートには、前記第一長繊維前駆体よりも平均繊維長が短い短繊維前駆体が含まれており、
前記ニードリング工程では、前記第一主面側から前記第二主面側に向かって前記ニードルを貫通させることを特徴とするマットの製造方法。
【請求項12】
前記第一長繊維前駆体の平均繊維長は、前記シートの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長い請求項11に記載のマットの製造方法。
【請求項13】
前記第一長繊維前駆体の平均繊維長は、30mm以上、140mm以下であり、前記短繊維前駆体の平均繊維長は、5mm以上、30mm以下である請求項11又は12に記載のマットの製造方法。
【請求項14】
前記第一シートの厚みと前記第二シートの厚みとの比は、1:1〜1:10である請求項11〜13のいずれかに記載のマットの製造方法。
【請求項15】
前記シートは、前記第二主面から前記シートの厚み方向に一定の範囲を占める第三シートを含み、前記第三シートには、前記短繊維前駆体よりも平均繊維長が長い第二長繊維前駆体が含まれている請求項11に記載のマットの製造方法。
【請求項16】
前記ニードリング工程では、前記第一主面側から前記第二主面側に向かって前記ニードルを貫通させるとともに、前記第二主面側から前記第一主面側に向かって前記ニードルを貫通させる請求項15に記載のマットの製造方法。
【請求項17】
前記第一長繊維前駆体及び前記第二長繊維前駆体の平均繊維長は、前記シートの厚みを2倍した長さと同じか、それよりも長い請求項15又は16に記載のマットの製造方法。
【請求項18】
前記第一長繊維前駆体の平均繊維長は、30mm以上、140mm以下であり、
前記短繊維前駆体の平均繊維長は、5mm以上、30mm以下であり、
前記第二長繊維前駆体の平均繊維長は、30mm以上、140mm以下である請求項15〜17に記載のマットの製造方法。
【請求項19】
前記第一シート及び前記第三シートの合計の厚みと、前記第二シートの厚みとの比は、1:1〜1:5である請求項15〜18のいずれかに記載のマットの製造方法。
【請求項20】
前記無機繊維前駆体は、アルミナ繊維前駆体、アルミナシリカ繊維前駆体、シリカ繊維前駆体、溶解性繊維前駆体及びガラス繊維前駆体からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維前駆体である請求項11〜19のいずれかに記載のマットの製造方法。
【請求項21】
排ガス処理体と、
前記排ガス処理体を収容するケーシングと、
前記排ガス処理体と前記ケーシングとの間に配設され、前記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は、請求項1〜10のいずれかに記載のマットを使用していることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項22】
排ガス処理体と、
前記排ガス処理体を収容するケーシングと、
前記排ガス処理体と前記ケーシングとの間に配設され、前記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は、請求項11〜20のいずれかに記載のマットの製造方法で製造されたマットを使用していることを特徴とする排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−236526(P2011−236526A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109614(P2010−109614)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】