説明

マトリックスメタロプロテアーゼ阻害用の経口投与組成物

【課題】 食品原料など、連続摂取が可能な原料であって、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害作用を有するものを提供する。
【解決手段】 トチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides)の植物体の抽出物を有効成分とする、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害の為の経口投与組成物を提供する。前記トチュウ科トチュウの植物体は、葉が好ましく、前記経口投与組成物は、食品であることが好ましく、前記経口投与組成物は、次に示す疾病の改善及び/又は予防を目的とするものであることが好ましい。(疾病)関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症、歯周炎、多発性硬化症、歯肉炎、角膜表皮性潰瘍、胃潰瘍、アテローム性動脈硬化症、動脈効果性閉塞処理後の血管再狭窄、虚血性心不全につながる新生内膜増殖

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などの経口投与組成物に関し、更に詳細には、マトリックスメタロプロテアーゼの阻害に好適な経口投与組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックスメタロプロテアーゼは、金属イオンの存在下蛋白分解作用を発現する酵素の一種であり、種々の疾病との因果関係が疑われている酵素である。即ち、特定の疾病に際して、その活性が亢進するプロテアーゼであり、中でも、マトリックスメタロプロテアーゼ13(以下、単にMMP13と称する場合も存する。)は疾病との因果関係が強く、前記疾患としては、関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症、歯周炎、多発性硬化症、歯肉炎、角膜表皮性潰瘍、胃潰瘍、アテローム性動脈硬化症、動脈効果性閉塞処理後の血管再狭窄、虚血性心不全につながる新生内膜増殖等が例示できる。(例えば、特許文献1を参照)即ち、マトリックスメタロプロテアーゼ、取り分けMMP13の亢進を抑制できれば、前記疾患の改善が為されるので、MMP13抑制作用を有する成分の開発が望まれていたと言える。特に、MMP13そのものが生体にとって必要なプロテアーゼであり、その亢進のみを抑制することが必要なことから、長期間の連用が可能で、且つ、効果も緩和なものが望まれていた。即ち、食品組成物であって、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害活性が存するものの開発が望まれていたと言える。
【0003】
一方、トチュウの抽出物について、脂肪代謝改善作用を有する物質が含まれること(例えば、特許文献2を参照)、グリケーション阻害作用を有する物質が含まれること(例えば、特許文献3を参照)、グルタチオン増強作用を有する物質が含まれること(例えば、特許文献4を参照)、リパーゼ活性促進作用を有する物質が含まれること(例えば、特許文献5を参照)などが知られているが、プロテアーゼとの関連については全く知られていない。
【0004】
【特許文献1】特表2006−502114号公報
【特許文献2】特開2006−36788号公報
【特許文献3】特開2004−250445号公報
【特許文献4】特開2002−275079号公報
【特許文献5】特開平09−301821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な条件下為されたものであり、食品原料など、連続摂取が可能な原料であって、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害作用を有するものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、食品原料など、連続摂取が可能な原料であって、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害作用を有するものを求めて、鋭意研究努力を重ねたところ、トチュウ科トチュウの抽出物がその様な作用を有していることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示す通りである。
(1)トチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides)の植物体の抽出物を有効成分とする、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害の為の経口投与組成物。
(2)前記トチュウ科トチュウの植物体は、葉であることを特徴とする、(1)に記載の経口投与組成物。
(3)前記経口投与組成物は、食品であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の経口投与組成物。
(4)前記経口投与組成物は、次に示す疾病の改善及び/又は予防を目的とするものであることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の経口投与組成物。
(疾病)関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症、歯周炎、多発性硬化症、歯肉炎、角膜表皮性潰瘍、胃潰瘍、アテローム性動脈硬化症、動脈効果性閉塞処理後の血管再狭窄、虚血性心不全につながる新生内膜増殖
(5)食品であることを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の経口投与組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、食品原料など、連続摂取が可能な原料であって、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害作用を有するものを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、トチュウ科トチュウの抽出物を有効成分とする、経口投与組成物に関するものである。前記トチュウ科トチュウの抽出物は、トチュウ科トチュウの植物体に、1から20倍量の溶媒を加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、所望により、濾過などにより不溶分を取り除いた後、減圧濃縮或いは凍結乾燥などにより溶媒を除去することにより製造できる。前記トチュウの植物体は、葉、花、蕾、樹皮、木幹、根何れも使用可能であるが、葉を用いることが好ましい。これは、葉が充分な効果量の有効成分を含むことと、再生産性に優れるためである。又、抽出のための溶媒としては、通常この様な抽出に用いられるものであれば特段の限定はなく、特に極性溶媒が好ましく、例えば、水、1,3−ブタンジオールやエタノールなどのアルコール、酢酸エチルや蟻酸メチルなどのエステル類、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類が好ましく例示でき、水及び/又はアルコールが特に好ましい。以下に製造例を示す。
【0009】
<製造例1>
トチュウ科トチュウの葉1Kgに水5lを加え、加熱して2時間煮沸し、室温まで冷却した後、濾過して不溶物を取り除いた後、凍結乾燥し、トチュウ抽出物1を淡黄色のアモルファスとして314g得た。
【0010】
斯くして得られた抽出物は、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害活性、特に、マトリックスメタロプロテアーゼ13(MMP13)阻害作用に優れ、これにより、関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症、歯周炎、多発性硬化症、歯肉炎、角膜表皮性潰瘍、胃潰瘍、アテローム性動脈硬化症、動脈効果性閉塞処理後の血管再狭窄或いは虚血性心不全につながる新生内膜増殖を緩和したり、関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症、歯周炎、多発性硬化症、歯肉炎、角膜表皮性潰瘍、胃潰瘍、アテローム性動脈硬化症、動脈効果性閉塞処理後の血管再狭窄或いは虚血性心不全につながる新生内膜増殖が悪化するのを防ぐ作用を有する。本発明の経口投与組成物は、前記の疾病の治療薬とともに、該治療薬を補助する目的で摂取することも出来る。この様な作用を発揮するためには、これらの抽出物は、一日あたり10〜10000mgを1回乃至は数回に分けて、経口経路で投与されることが好ましい。又、本発明の経口投与物におけるトチュウの抽出物の重要な薬効はマトリックスメタロプロテアーゼ阻害作用であるため、この作用の程度を確かめた上で使用することも好ましい。阻害活性は既存のMMP13阻害活性測定用のキット、例えば、フナコシ薬品株式会社から販売されている、「MMP−13 Colorimetric Assay Kit (AK-412)」等を用い、測定することが出来る。阻害活性は、(1−検体存在下のプロテアーゼの反応速度/検体非存在下でのプロテアーゼの反応速度)×100の式で算出される。前記のMMP13の阻害活性が、抽出物の0.1%溶液において、50%を下回るときには、その抽出物は充分に有効成分の抽出されていない抽出物であると判断することが好ましい。即ち、本発明の経口投与組成物においては、予め、MMP13阻害活性が50%以上であるものを確認した上で用いることが好ましい。
【0011】
かかる成分は、製剤化のための任意成分とともに処理することにより、本発明の経口投与組成物に加工することが出来る。本発明の経口投与組成物としては、経口投与される特徴を備えていれば特段の限定無く、例えば、経口投与医薬組成物、食品、飲み物などが好適に例示できる。この中では、食品が特に好ましく、中でも特定の機能を期待される特定保健用食品などの食品が特に好ましい。前記製剤化のための任意成分としては、例えば、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンなどの賦形剤、デンプン、セルロースなどの崩壊剤、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアガムなどの結合剤、ペクチン、レシチンなどの乳化・分散剤、白糖、蜂蜜、麦芽糖などの矯味剤、シェラック、ゼラチンなどの被覆剤などが好適に例示できる。
【0012】
以下に、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0013】
製造例1で作製した抽出物1について、そのMMP13阻害活性を「MMP−13 Colorimetric Assay Kit (AK-412)」を用いて測定した。結果は、抽出物1の0.1%水溶液の阻害活性が80%であり、0.01%水溶液での阻害活性が26%であった。何れの抽出物も0.1%で50%以上の阻害率を示していることがわかる。更に、これよりも10倍薄い濃度でも、これらの多くがMMP13阻害活性を示していることもわかる。
【実施例2】
【0014】
下記の処方に従って、本発明の経口投与組成物である、食品(錠剤)を作製した。即ち、成分を「ニューマルメライザー」(不二パウダル株式会社製)に仕込み、送風攪拌下、水100mlを噴霧し、造粒し、40℃の温風を3時間送風して、乾燥させ、これを打錠して、錠剤1(100mg)を得た。抽出物1をデキストリンに置換したプラシーボ1も同様に作製した。
【0015】
【表1】

【0016】
<試験例1>
関節炎・関節症に悩む人10人を選抜して、5人ずつ2群に分け、1群には錠剤1を、残る1群にはプラシーボ1を渡し、60日間朝晩2錠ずつ摂取してもらい、その後に関節炎・関節症の改善度を、著しく改善した、明らかに改善した、わずかに改善した、殆ど改善しない、変わらない、悪化したのカテゴリーに分けてどれであったかをアンケートにて答えてもらった結果を表2に示す。これより、本発明の経口投与組成物は関節炎・関節症の改善効果に優れることがわかる。
【0017】
【表2】

【0018】
<試験例2>
試験例1と同様に、歯肉炎に悩むパネラー6名を用い、3人ずつ2群に分け、1群には錠剤1を、残る1群にはプラシーボ1を渡し、60日間朝晩2錠ずつ摂取してもらい、その後に歯肉炎の改善度を、著しく改善した、明らかに改善した、わずかに改善した、殆ど改善しない、変わらない、悪化したのカテゴリーに分けてどれであったかをアンケートにて答えてもらった結果を表3に示す。これより、本発明の経口投与組成物は歯肉炎の改善効果に優れることがわかる。
【0019】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、関節炎・関節症、歯肉炎などのMMP13関連疾患の予防・改善に好適な食品に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides)の植物体の抽出物を有効成分とする、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害の為の経口投与組成物。
【請求項2】
前記トチュウ科トチュウの植物体は、葉であることを特徴とする、請求項1に記載の経口投与組成物。
【請求項3】
前記経口投与組成物は、食品であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の経口投与組成物。
【請求項4】
前記経口投与組成物は、次に示す疾病の改善及び/又は予防を目的とするものであることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の経口投与組成物。
(疾病)関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症、歯周炎、多発性硬化症、歯肉炎、角膜表皮性潰瘍、胃潰瘍、アテローム性動脈硬化症、動脈効果性閉塞処理後の血管再狭窄、虚血性心不全につながる新生内膜増殖
【請求項5】
食品であることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の経口投与組成物。

【公開番号】特開2008−104394(P2008−104394A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289367(P2006−289367)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】