説明

マリンホース

【課題】交換時期を容易且つ正確に判断することのできるマリンホースを提供する。
【解決手段】コントロールユニット40の変形量検出部44はホース本体10の各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3における曲率(ホース曲げ方向の変形量)をそれぞれ検出可能であり、コントロールユニット40の換算処理部46は変形量検出部44によって検出された各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3の曲率をそれぞれ耐久性影響数値に換算処理可能であることから、ホース本体10の各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3にそれぞれ複数回の曲げ方向の変形が生じ、各変形の大きさが様々である場合でも、各変形ごとに耐久性影響数値が得られる。即ち、各変形ごとに得られた耐久性影響数値を累積した累積結果に基づき、マリンホースの交換時期を判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原油等の液体燃料をタンカーから陸上のタンクに輸送するための液体燃料輸送用のマリンホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のマリンホースとしては、耐油性の内側ゴム層と内側ゴム層の外側に配置された補強層とが設けられたホース本体と、ホース本体の軸方向の両端にそれぞれ設けられた口金と、口金の外周面側における補強層の締結部の近傍に設けられた応力検知センサと、応力検知センサによって所定の閾値以上の応力値が検知されると、検知された応力値を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されている応力値を陸上に送信する送信手段とを備え、所定の閾値以上の応力が入力された回数や応力値に基づき、検査員がマリンホースの交換時期を判断するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−153284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記マリンホースは、配置される場所やその場所の状況により変形状態が異なるので、前記応力検知センサによる応力値の検知結果にも配置場所やその状況による傾向があらわれる。例えば、複数のマリンホースによって海上のタンカーと陸上のタンクとを接続する場合は、陸側に配置されるマリンホースよりもタンカー側に配置されるマリンホースの方が海上のうねりによって変形し易いので、タンカー側に配置されたマリンホースの方が応力検知センサによって検知される応力値が大きくなり、所定の閾値以上の応力が検知される回数も多くなる傾向がある。また、海上のうねりの状況によって応力検知センサによって検知される応力値の大きさや回数が変化し、うねりが大きい状況でマリンホースが海上に配置される場合は、所定の閾値以上の応力が検知される回数が極めて多くなる。即ち、応力検知センサによって検知される応力値は様々であり、所定の閾値以上の応力が検知される回数も極めて多い。
【0004】
ここで、前記マリンホースでは、所定の閾値以上の応力が入力された回数や応力値に基づき、検査員がマリンホースの交換時期を判断するようになっているが、応力値の検知結果はマリンホースの配置場所やその状況により傾向が異なり、所定の閾値以上の応力が入力される回数も極めて多いことから、所定の閾値以上の応力が入力された回数や応力値に基づき交換時期を判断するには相当の知識や経験が必要であり、検査員の経験により交換時期の判断にばらつきが生ずるという問題点があった。
【0005】
さらに、近年マリンホースが外洋において使用されるようになってきているが、外洋では大きなうねりが発生することが多く、マリンホースに加わる応力の傾向が従来とは異なるものになってきているので、検査員が従来の経験に基づいてマリンホースの交換時期を正確に判断することができないという問題点もあった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、交換時期を容易且つ正確に判断することのできるマリンホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、所定の液体燃料に対する耐油性を有する内側ゴム層と内側ゴム層よりも外側に配置された補強層とが少なくとも設けられた多層構造のホース本体と、ホース本体の軸方向の両端にそれぞれ設けられた口金とを備えたマリンホースにおいて、前記ホース本体内に設けられ、ホース本体の軸方向所定範囲におけるホース曲げ方向の変形量を検出する変形量検出手段と、変形量検出手段によって検出された変形量を所定の基準に基づきホース本体の耐久性への影響をあらわす耐久性影響数値に換算処理する換算処理手段とを備えている。
【0008】
これにより、ホース本体の軸方向所定範囲におけるホース曲げ方向の変形量を検出可能な変形量検出手段と、変形量検出手段によって検出された変形量を所定の基準に基づきホース本体の耐久性への影響をあらわす耐久性影響数値に換算処理する換算処理手段とを備えているので、例えばホース本体が海上のうねりによって繰返し変形するとともに、ホース本体の前記軸方向所定範囲に複数回のホース曲げ方向の変形が生じ、各変形の大きさが様々である場合でも、各変形ごとに耐久性影響数値が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えばホース本体が海上のうねりによって繰返し変形するとともに、ホース本体の前記軸方向所定範囲に複数回のホース曲げ方向の変形が生じ、各変形の大きさが様々である場合でも、各変形ごとに耐久性影響数値を得ることができるので、各変形ごとに得られた耐久性影響数値を累積した累積結果に基づき、マリンホースの交換時期を判断することができる。即ち、ホース本体に加わる曲げ方向の変形量の大きさや回数に拘わらず、マリンホースの交換時期を容易且つ正確に判断することができるので、ホース本体からの液体燃料の漏洩による環境汚染を防止する上で極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図5は本発明の一実施形態を示すもので、図1はマリンホースの要部断面図、図2はマリンホースの側面図、図3はコントロールユニットのブロック図、図4は曲率の検出結果の一例を示すグラフ、図5は換算処理結果の一例を示す表である。
【0011】
このマリンホースは、ホース本体10と、ホース本体10の軸方向の両端にそれぞれ設けられた口金20とを備えている。このマリンホースは、例えば海上に停泊しているタンカーと陸上のタンクとを接続し、タンカーから陸上のタンクに原油を給送するために用いられる。
【0012】
ホース本体10は、原油に対する耐油性を有する内側ゴム層11と、内側ゴム層11の外周面側に配置された補強層12と、補強層12の外周面側に配置された浮力材層13と、内側ゴム層11、補強層12及び浮力材層13を覆うように形成されたカバーゴム層14とを備えている。即ち、ホース本体10は各層11,12,13,14を有する多層構造である。
【0013】
内側ゴム層11はアクリロニトリルブタジエンゴム等の周知の耐油性ゴムから成り、ホース本体10の最も径方向内側に設けられている。即ち、ホース本体10の内側ゴム層11の中を原油が流通するようになっている。
【0014】
補強層12は例えば第1耐圧コード層12aと第2耐圧コード層12bとを有する。各耐圧コード層12a,12bはナイロンコード、ポリエステルコード、金属コード等によって補強されたゴム層であり、ホース本体10に用いられる周知の構造を有するものである。
【0015】
浮力材層13はスポンジ状部材から成り、マリンホースを海上に浮かせるために設けられている。
【0016】
カバーゴム層14はスチレンブタジエンゴムやクロロプレンゴム等の耐候性を有するゴム材料から成る。
【0017】
尚、内側ゴム層11、補強層12、浮力材層13及びカバーゴム層14を有するマリンホースは一般的であり、必要に応じて浮力材層13を省いた構成にすることも可能であり、その他の構成を追加することも可能である。
【0018】
各口金20は金属材料から成り、他のマリンホースの口金20と着脱自在に接続されるようになっている。
【0019】
ホース本体10の第1の軸方向所定範囲AR1における補強層12の外周面側には複数(本実施形態では3個)の第1導電性エラストマー部材31が設けられ、各第1導電性エラストマー部材31は互いにホース本体10の周方向に間隔をおいて配置されている。第1の軸方向所定範囲AR1はホース本体10の軸方向一端側であり、口金20との取付け部の近傍である。各第1導電性エラストマー部材31は例えばホース本体10の軸方向に延びる帯状に形成され、周知の導電性カーボンが配合されたイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等の合成ゴムから成る。また、各第1導電性エラストマー部材31を導電性カーボンが配合された天然ゴムから構成することも可能であり、導電性カーボンが配合されたゴム状弾性を有する他の材料から構成することも可能である。さらに、導電性カーボンの代わりに導電性を有する他の粉状の補強剤や粉状の充填剤を用いることも可能である。
【0020】
即ち、各第1導電性エラストマー部材31は導電性を有する。また、第1導電性エラストマー部材31がホース本体10の軸方向に引っ張られるように変形すると、第1導電性エラストマー部材31内の導電性カーボン同士の間隔が大きくなり、第1導電性エラストマー部材31の長さ方向一端と他端との間の抵抗値が大きくなる。また、各第1導電性エラストマー部材31がホース本体10の軸方向に圧縮されるように変形すると、第1導電性エラストマー部材31内の導電性カーボン同士の間隔が小さくなり、第1導電性エラストマー部材31の長さ方向一端と他端との間の抵抗値が小さくなる。
【0021】
ホース本体10の第2の軸方向所定範囲AR2における補強層12の外周面側には複数(本実施形態では3個)の第2導電性エラストマー部材32が設けられ、各第2導電性エラストマー部材32は互いにホース本体10の周方向に間隔をおいて配置されている。第2の軸方向所定範囲AR2はホース本体10の軸方向他端側であり、口金20との取付け部の近傍である。各第2導電性エラストマー部材32は例えばホース本体10の軸方向に延びる帯状に形成され、周知の導電性カーボンが配合されたイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等の合成ゴムから成る。また、各第2導電性エラストマー部材32を導電性カーボンが配合された天然ゴムから構成することも可能であり、導電性カーボンが配合されたゴム状弾性を有する他の材料から構成することも可能である。さらに、導電性カーボンの代わりに導電性を有する他の粉状の補強剤や粉状の充填剤を用いることも可能である。
【0022】
即ち、各第2導電性エラストマー部材32は導電性を有する。また、第2導電性エラストマー部材32がホース本体10の軸方向に引っ張られるように変形すると、第2導電性エラストマー部材32内の導電性カーボン同士の間隔が大きくなり、第2導電性エラストマー部材32の長さ方向一端と他端との間の抵抗値が大きくなる。また、各第2導電性エラストマー部材32がホース本体10の軸方向に圧縮されるように変形すると、第2導電性エラストマー部材32内の導電性カーボン同士の間隔が小さくなり、第2導電性エラストマー部材32の長さ方向一端と他端との間の抵抗値が小さくなる。
【0023】
ホース本体10の第3の軸方向所定範囲AR3における補強層12の外周面側には複数(本実施形態では3個)の第3導電性エラストマー部材33が設けられ、各第3導電性エラストマー部材33は互いにホース本体10の周方向に間隔をおいて配置されている。第3の軸方向所定範囲AR3はホース本体10の軸方向中央側である。各第3導電性エラストマー部材33は例えばホース本体10の軸方向に延びる帯状に形成され、周知の導電性カーボンが配合されたイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等の合成ゴムから成る。また、各第3導電性エラストマー部材33を導電性カーボンが配合された天然ゴムから構成することも可能であり、導電性カーボンが配合されたゴム状弾性を有する他の材料から構成することも可能である。さらに、導電性カーボンの代わりに導電性を有する他の粉状の補強剤や粉状の充填剤を用いることも可能である。
【0024】
即ち、各第3導電性エラストマー部材33は導電性を有する。また、第3導電性エラストマー部材33がホース本体10の軸方向に引っ張られるように変形すると、第3導電性エラストマー部材33内の導電性カーボン同士の間隔が大きくなり、第3導電性エラストマー部材33の長さ方向一端と他端との間の抵抗値が大きくなる。また、各第3導電性エラストマー部材33がホース本体10の軸方向に圧縮されるように変形すると、第3導電性エラストマー部材33内の導電性カーボン同士の間隔が小さくなり、第3導電性エラストマー部材33の長さ方向一端と他端との間の抵抗値が小さくなる。
【0025】
ホース本体10の軸方向一端側にはコントロールユニット40が設けられている。コントロールユニット40には、各第1導電性エラストマー部材31の抵抗値をそれぞれ検出可能な周知の第1検出器41と、各第2導電性エラストマー部材32の抵抗値をそれぞれ検出可能な周知の第2検出器42と、各導電性エラストマー部材33の抵抗値をそれぞれ検出可能な周知の第3検出器43と、各検出器41,42,43と接続されている変形量検出部44と、変形量検出部44に接続されている変形量記憶部45と、変形量記憶部45に接続されている換算処理部46と、換算処理部46に接続されている累積処理記憶部47と、累積処理記憶部47に接続されている疲労度推定部48と、表示装置49とを有する(図3参照)。
【0026】
第1検出器41は、導線41aを介して各第1導電性エラストマー部材31の長さ方向の一端にそれぞれ接続されるとともに、導線(図示せず)を介して各第1導電性エラストマー部材31の長さ方向の他端にそれぞれ接続されている。第2検出器42及び第3検出器43も、導線(図示せず)を介して各導電性エラストマー部材32,33の長さ方向の一端に接続され、導線(図示せず)を介して各導電性エラストマー部材32,33の長さ方向の他端に接続されている。
【0027】
変形量検出部44は周知のマイクロコンピュータから成り、各検出器41,42,43の検出結果に応じて各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3の曲率(ホース曲げ方向の変形量)を検出可能である。例えば、第1の軸方向所定範囲AR1に所定の曲率で曲げ方向の変形を加えると、各第1導電性エラストマー部材31のうち2本が引っ張られる方向に変形するとともに1本が圧縮される方向に変形するか、1本が引っ張られる方向に変形するとともに2本が圧縮される方向に変形することにより、各第1導電性エラストマー部材31の抵抗値がそれぞれ変化する。また、各第1導電性エラストマー部材31の抵抗値の変化量合計と第1の軸方向所定範囲AR1の曲率との間には所定の傾向があらわれ、この傾向はホース本体10の曲げ方向による影響をほとんど受けない。さらに、例えば陸上において第1の軸方向所定範囲AR1に様々な曲率を与えるとともに、その際の各導電性エラストマー部材31の抵抗値の変化量を検出し、各第1導電性エラストマー部材31の抵抗値の変化量合計と第1の軸方向所定範囲AR1の曲率との関係を得ることにより、変形量検出部44は第1検出器41の検出結果に応じて第1の軸方向所定範囲AR1の曲率を検出することが可能となる。
【0028】
変形量記憶部45は周知のハードディスク等から成り、変形量検出部44によって検出された曲率を各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3ごとに記憶可能である。ここで、変形量記憶部45は、例えば所定の閾値を超えて検出される曲率の最大値を記憶するように構成されており、図4のように第1の軸方向所定範囲AR1の曲率が変化する場合は、ポイントP1,P2の曲率が記憶されるようになっている。尚、閾値を設けずに、変形量検出部44によって検出された曲率を連続的に記憶することも可能である。
【0029】
換算処理部46は周知のマイクロコンピュータから成り、変形量記憶部45に記憶されている曲率をそれぞれホース本体10の耐久性への影響をあらわす耐久性影響数値に換算処理するようになっている。例えば、図5に示すように、変形量記憶部45に各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3ごとにそれぞれ複数回の曲率が記憶されている場合に、各曲率がそれぞれ耐久性影響数値に換算処理される。ここで、曲率の大きさがホース本体10の耐久性に与える影響は、ホース本体10の曲率が例えば2倍になった場合は2倍を超える数倍〜数百倍になる。これは、出願人は経験から得ているものである。また、曲率に対する前記倍率は、曲率に応じて異なるとともに、ホース本体10の寸法、構造、材質等によって異なるが、前述のような経験から、ホース本体10の曲率、寸法、構造、材質等に応じて倍率を設定可能である。即ち、前記倍率は出願人の経験に基づき設定可能であり、本実施形態では曲率が2倍になると前記倍率が10倍になるように設定されている。即ち、前記倍率が特許請求の範囲に記載した所定の基準に相当し、前記倍率はホース本体10の曲率、寸法、構造、材質等に応じて異なり、経験や試験結果などによって設定されるものである。
【0030】
累積処理記憶部47は周知のマイクロコンピュータから成り、換算処理部46によって得られた耐久性影響数値を各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3ごとに累積処理するとともに、その累積結果を記憶するようになっている。
【0031】
疲労度推定部48は周知のマイクロコンピュータから成り、累積処理記憶部47の累積結果に基づき、ホース本体10の疲労度を各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3ごとに推定するようになっている。即ち、使用が終わってマリンホースが回収された場合は、そのマリンホースを用いて破壊試験や分解試験が行われ、そのマリンホースのホース本体10の疲労度の推定が行われるのが一般的であるが、破壊試験や分解試験によって推定された第1の軸方向所定範囲AR1の疲労度と第1の軸方向所定範囲AR1の耐久性影響数値の累積結果との対比結果に基づき、ホース本体10の第1の軸方向所定範囲AR1の疲労度の推定を行うことが可能である。例えば、破壊試験や分解試験によるホース本体10の疲労度が40%(残存寿命が60%)であった場合に、前記累積結果が40万であれば、前記累積結果が40万の時に疲労度が40%であると推定され、前記累積結果が50万の時に疲労度が50%であると推定されるように、疲労度推定部48を構成することができる。
【0032】
表示装置49は累積処理記憶部47の累積結果を各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3ごとに表示するとともに、疲労度推定部48の推定結果を各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3ごとに表示する周知の機器から成り、コントロールユニット40におけるホース本体10から露出している部分に設けられている。
【0033】
以上のように構成されたマリンホースは海上等に配置され、ホース本体10には海上のうねり等によって曲げ方向の変形が繰返し加わる。
【0034】
ここで、コントロールユニット40の変形量検出部44はホース本体10の各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3における曲率(ホース曲げ方向の変形量)をそれぞれ検出可能であり、コントロールユニット40の換算処理部46は変形量検出部44によって検出された各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3の曲率をそれぞれ耐久性影響数値に換算処理可能であることから、ホース本体10が海上のうねりによって繰返し変形するとともに、ホース本体10の各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3にそれぞれ複数回の曲げ方向の変形が生じ、各変形の大きさが様々である場合でも、各変形ごとに耐久性影響数値が得られる。
【0035】
このように、本実施形態によれば、各変形ごとに得られた耐久性影響数値を累積した累積結果に基づき、マリンホースの交換時期を判断することができるので、ホース本体10に加わる曲げ方向の変形量の大きさや回数に拘わらず、マリンホースの交換時期を容易且つ正確に判断することができる。即ち、ホース本体10からの液体燃料の漏洩による環境汚染を防止する上で極めて有利である。
【0036】
また、ホース本体10の各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3に互いにホース本体10の周方向に間隔をおいて設けられた複数の導電性エラストマー部材31,32,33の抵抗値の変化に基づき、ホース本体10の各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3における曲率(曲げ方向の変形量)を変形量検出部44によって検出するように構成したので、ホース本体10の曲げ方向の変形量を確実に検出することができる。また、導電性エラストマー部材31,32,33を用いており、導電性エラストマー部材31,32,33はホース本体10を構成する各層11,12,14と接着可能であるとともに、各層11,12,14の変形に追随可能であることから、ホース本体10の曲げ方向の変形量を検出するためにホース本体10の耐久性を低下させることがない。
【0037】
また、変形量検出部44により、互いにホース本体の軸方向に位置の異なる複数の軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3における曲率(ホース曲げ方向の変形量)をそれぞれ検出可能に構成したことから、ホース本体10の交換時期をより正確に判断することが可能となる。
【0038】
ここで、出願人が経験によって得た知識によると、マリンホースが配置される場所に応じて、ホース本体10の軸方向端部側と中央側の疲労度が異なる場合がある。これに対し、変形量検出部44により、ホース本体10の軸方向端部側である第1の軸方向所定範囲AR1及び第2の軸方向所定範囲AR2における曲率(ホース曲げ方向の変形量)を検出するとともに、ホース本体10の軸方向中央側の第3の軸方向所定範囲AR3における曲率(ホース曲げ方向の変形量)を検出するように構成したので、マリンホースが配置される位置によってホース本体10の軸方向端部と中央側の疲労度が異なる場合でも、ホース本体10の交換時期を正確に判断することができる。
【0039】
また、コントロールユニット40の換算処理部46の換算処理結果を累積した累積結果に基づいてホース本体10の疲労度を推定する疲労度推定部48を設けたので、疲労度推定部48の推定結果に基づき、ホース本体10の交換時期を判断することができる。即ち、誰でもホース本体10の交換時期を容易且つ確実に判断することができ、ホース本体10からの液体燃料の漏洩による環境汚染を防止する上で極めて有利である。
【0040】
尚、本実施形態では、変形量検出部44によって検出された曲率を各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3ごとに変形量記憶部45に記憶し、換算処理部46によって変形量記憶部45に記憶されている曲率をそれぞれ耐久性影響数値に換算処理するようにしたものを示した。これに対し、変形量検出部44によって検出された曲率を直接換算処理部46で耐久性影響係数に換算処理することも可能である。
【0041】
また、本実施形態では、累積処理記憶部47の累積結果に基づき、疲労度推定部48によってホース本体10の疲労度を各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3ごとに推定するようになっている。これに対し、疲労度推定部48を設けない場合でも、累積処理記憶部47に記憶されている耐久性影響数値の累積結果を例えば作業員が所定の基準値と比較し、その比較結果からホース本体10の疲労度を推定するようにした場合でも、ホース本体10の交換時期を容易且つ正確に判断することができる。
【0042】
尚、本実施形態では、コントロールユニット40に変形量検出部44、変形量記憶部45、換算処理部46、累積処理記憶部47、疲労度推定部48及び表示装置49を設けたものを示したが、これらの代わりにコントロールユニット40に情報送信装置を設けるとともに、マリンホースの外部に情報受信装置を設け、情報受信装置に変形量検出部44、変形量記憶部45、換算処理部46、累積処理記憶部47、疲労度推定部48及び表示装置49を設けることも可能である。ここで、情報送信装置及び情報受信装置に特開平11−153284号公報に示されているような周知のトランスポンダを用いることが可能である。これにより、情報受信装置を陸上に設けることが可能となり、ホース本体10の交換時期を容易且つ正確に判断する上で極めて有利である。
【0043】
尚、本実施形態では、各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3にそれぞれ導電性エラストマー部材31,32,33を3つずつ設けたものを示したが、各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3にそれぞれ導電性エラストマー部材31,32,33が2つ以上設けられていれば、各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3の曲率を検出することが可能となる。ここで、導電性エラストマー部材31,32,33が2つずつである場合は、一つ一つの導電性エラストマー部材31,32,33の幅寸法を大きくする必要があるので、各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3に導電性エラストマー部材31,32,33が3つ以上設けられていることが好ましい。
【0044】
また、本実施形態では、各導電性エラストマー部材31,32,33を補強層12の外周面側に設けたものを示したが、補強層12の内周面側やその他の位置に配置することも可能である。
【0045】
尚、本実施形態では、各導電性エラストマー部材31,32,33を帯状に形成したものを示したが、その他の形状の各導電性エラストマー部材31,32,33を用いることも可能である。
【0046】
また、本実施形態では、ホース本体10のホース曲げ方向の変形量を曲率として検出するようにしたものを示したが、ホース本体10の各軸方向所定範囲AR1,AR2,AR3の軸方向両端同士の角度変化を変形量として検出することも可能であり、その他の変形量を検出することも可能である。
【0047】
尚、本実施形態では、内側ゴム層11が原油に対して耐油性を有する耐油性ゴムから成るものを示したが、給送する液体燃料の種類に応じ、内側ゴム層11のゴム材料を選定することにより、各種液体燃料用のマリンホースにおいて前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明における一実施形態を示すマリンホースの要部断面図
【図2】マリンホースの側面図
【図3】コントロールボックスのブロック図
【図4】曲率の検出結果の一例を示すグラフ
【図5】換算処理結果の一例を示す表
【符号の説明】
【0049】
10…ホース本体、11…内側ゴム層、12…補強層、12a…第1耐圧コード層、12b…第2耐圧コード層、13…浮力材層、14…カバーゴム層、20…口金、31…第1導電性エラストマー部材、32…第2導電性エラストマー部材、33…第3導電性エラストマー部材、40…コントロールユニット、41…第1検出器、41a…導線、42…第2検出器、43…第3検出器、44…変形量検出部、45…変形量記憶部、46…換算処理部、47…累積処理記憶部、48…疲労度推定部、49…表示装置、AR1…第1の軸方向所定範囲、AR2…第2の軸方向所定範囲、AR3…第3の軸方向所定範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の液体燃料に対する耐油性を有する内側ゴム層と内側ゴム層よりも外側に配置された補強層とが少なくとも設けられた多層構造のホース本体と、ホース本体の軸方向の両端にそれぞれ設けられた口金とを備えたマリンホースにおいて、
前記ホース本体内に設けられ、ホース本体の軸方向所定範囲におけるホース曲げ方向の変形量を検出する変形量検出手段と、
変形量検出手段によって検出された変形量を所定の基準に基づきホース本体の耐久性への影響をあらわす耐久性影響数値に換算処理する換算処理手段とを備えた
ことを特徴とするマリンホース。
【請求項2】
前記変形量検出手段を、ホース本体の軸方向所定範囲内に互いにホース本体の周方向に間隔をおいて設けられた複数の導電性エラストマー部材の抵抗値の変化に基づき、ホース本体の軸方向所定範囲における曲げ方向の変形量を検出するように構成した
ことを特徴とする請求項1記載のマリンホース。
【請求項3】
前記変形量検出手段を、互いにホース本体の軸方向に位置の異なる複数の軸方向所定範囲におけるホース曲げ方向の変形量をそれぞれ検出するように構成した
ことを特徴とする請求項1または2記載のマリンホース。
【請求項4】
前記変形量検出手段を、ホース本体の軸方向端部側の軸方向所定範囲におけるホース曲げ方向の変形量を検出するとともに、ホース本体の軸方向中央側の軸方向所定範囲におけるホース曲げ方向の変形量を検出するように構成した
ことを特徴とする請求項3記載のマリンホース。
【請求項5】
前記換算処理手段の換算結果を累積した累積結果に基づきホース本体の疲労度を推定する疲労度推定手段を備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のマリンホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−68536(P2009−68536A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235268(P2007−235268)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】