説明

マルチキャスト通信システム及びマルチキャスト通信制御方法

【課題】 マルチキャスト配信ルータが利用者から大量の視聴要求を受けた時に利用者が公平に映像切替の機会を提供する。
【解決手段】 本発明は、送信装置において、送信装置内部のマルチキャスト制御プロトコルを処理する制御手段が、非輻輳状態から輻輳状態になった、または、輻輳状態から非輻輳状態になったことを検出し、輻輳が検出された場合には、所定の要求送出レート上限値を格納したメッセージを作成し、輻輳からの回復を検出した場合には、所定の輻輳回復を一意とする値を格納したメッセージを作成し、受信装置に送出する。受信装置では、送信装置から受信したメッセージから要求送出レート上限値、または、輻輳回復を一意とする値を取り出し、要求送出レート上限値が抽出された場合は、送信するマルチキャスト制御プロトコルのメッセージについて、送信規制を行って送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチキャスト通信システム及びマルチキャスト通信制御方法に係り、特に、IGMP(Internet Group management Protocol)、MLD(Multicast Listener Discovery(RFC 3810))などを用いたマルチキャスト輻輳制御システムで使用されるマルチキャスト通信システム及びマルチキャスト通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のIP(Internet Protocol)ネットワークでは、マルチキャストパケットの転送開始、転送継続及び転送プロトコルとしてIGMP(Internet Group management Protocol)、MLDが用いられる。マルチキャストパケットの転送は受信装置が転送開始要求をルータに送信する事でルータは転送開始要求を受信したならば、受信装置へマルチキャスト配信を開始する。
【0003】
しかし、受信装置から大量に転送開始要求や転送離脱要求を行うことで、ルータは輻輳
状態に陥り、結果として受信装置からの転送要求を処理できなくなる。この問題に対して、ルータが輻輳状態に陥った時に、受信装置から転送開始要求を停止する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図13に従来の具体的な通信制御を示す。
【0005】
具体的には、ルータがマルチキャスト制御プロトコルによって、ルータが輻輳状態か非輻輳状態を監視し(ステップ10)、監視手段が輻輳を検出した場合は(ステップ11)、輻輳通知メッセージを受信装置へ送信し(ステップ12)、受信装置が輻輳通知メッセージを受信すると転送開始要求を抑制する(ステップ13)。受信装置が転送開始要求を抑制する事でルータが輻輳から回復を検出した場合(ステップ14)、ルータは輻輳回復通知メッセージを送信し(ステップ15)、受信装置が輻輳回復通知メッセージを受信した場合は、送信抑止を解除する(ステップ16)。
【0006】
上記のように、受信装置からの転送開始要求を抑止する事で、ルータへの処理できない要求を抑止することができるが、受信装置の送信が抑止されることで、マルチキャスト配信を受けていない受信装置は転送開始要求を抑止されるまで転送開始要求を受けられない。結果として、ルータの輻輳からの回復を検出した場合に受信装置に送信する輻輳回復通知メッセージ後に転送開始要求が一斉に集まる事から再度輻輳制御が起動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−174489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
IPマルチキャスト技術を活用したIP放送サービスでは、番組の視聴要求や番組切替は
受信端末からマルチキャスト配信ルータに向けてIGMPv3/MLDv2などのプロトコルを用いて、視聴要求を行い、マルチキャスト配信ルータでは要求されたIPマルチキャストアドレスを持つパケットを
受信装置に送信し、受信装置で視聴可能になる。
【0009】
しかし、番組切替時などマルチキャスト配信ルータが収容している多数の受信装置から
一斉に大量の視聴切替要求を受信した場合、装置は処理性能を超えて輻輳状態に陥ることで、受信装置からの転送開始要求を処理できなくなる。さらに、利用者からは映像配信を実施しているサーバに問題があるのか、マルチキャスト配信を実施しているルータに問題があるのか自らの操作が悪いのか判断できない。つまり、番組切替時に視聴中のエンドユーザからチャネル切替(リモコンを押してから切り替わるまでの時間)が遅くなる可能性がある。このとき、ユーザは、その原因が自身の操作による遅延かネットワークによるものか、映像配信事業者によるものかは判断できず、混乱することが想定され、何度も同じ処理を繰り返す等により転送要求が何度も送出されることも考えられるため、利便性が低下する。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、マルチキャスト配信ルータが利用者から大量の視聴要求を受けた時に利用者が公平に映像切替の機会を提供することが可能なマルチキャスト通信システム及びマルチキャスト通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は、マルチキャストパケットの送信装置と、マルチキャストパケットの受信装置からなり、該装置間で、該送信装置から該受信装置へのマルチキャストパケットの転送開始、転送停止を動的に制御するマルチキャスト通信システムであって、
前記送信装置は、
前記送信装置内部のマルチキャスト制御プロトコルを処理する制御手段が、非輻輳状態から輻輳状態になった、または、輻輳状態から非輻輳状態になったことを検出する輻輳状態検出手段と、
前記輻輳状態検出手段が輻輳を検出した場合には、所定の要求送出レート上限値を格納した要求送出レート指定メッセージを作成し、該輻輳状態検出手段が輻輳からの回復を検出した場合には、所定の輻輳回復を一意とする値を格納した要求送出レート指定メッセージを作成する要求送出レート指定メッセージ作成手段と、
要求送出レート指定メッセージ作成手段で作成した要求送出レート指定メッセージを前記受信装置に送出するパケット送信手段と、
を具備し、
前記受信装置は、
前記送信装置から前記要求送出レート指定メッセージを受信するメッセージ受信手段と、
前記要求送出レート指定メッセージから、前記要求送出レート上限値、または、前記輻輳回復を一意とする値を取り出す要求送出レート抽出手段と、
要求送出レート抽出手段で前記要求送出レート上限値が抽出された場合は、送信するマルチキャスト制御プロトコルのメッセージについて、送信規制を行って送信し、前記輻輳回復を一意とする値が抽出された場合は、送信するマルチキャスト制御プロトコルのメッセージについて、送信規制を解除して送信するメッセージ送信手段とを具備する。
【発明の効果】
【0012】
上述のように本発明によれば、利用者から視聴切替要求が大量に発生しても、マルチキャスト配信ルータは輻輳を回避しつつ、全ての利用者にサービスを提供する事ができる。さらに、輻輳制御を回避する場合においても、視聴切替要求レートを監視し、マルチキャスト配信ルータが処理できるレートを検出する。
【0013】
また、マルチキャスト配信ルータに具備したタイマ機能により一斉送信が予測される
時間帯では輻輳状態を回避する対策を事前に実施する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるシステム構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における装置構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるマルチキャスト通信システムのシーケンスチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態における動作を説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における送信装置側の動作のフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態における装置構成図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における動作を説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における送信装置側の動作のフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施の形態における装置構成図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態における動作を説明するための図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における送信装置側の動作のフローチャートである。
【図12】本発明の第3の実施の形態における受信間隔設定を示す図である。
【図13】従来の通信制御方法のシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるシステム構成を示す。
【0017】
マルチキャストパケットの送信装置100と受信装置2001〜200NがIPネットワーク300を介して接続され、送信装置100は、受信装置200からの要求を契機として、マルチキャストパケットを送信する。受信装置200は、送信装置100からのマルチキャストパケットを受信する。
【0018】
図2は、本発明の第1の実施の形態における装置構成図である。
【0019】
送信装置100は、パケット送信部101、パケット受信部102、MLD抽出部103、規制フラグ部104、MLD制御部105、パケット転送部106、システム状態監視部107、レート機能通知部108、MLD受信レート監視部109、制御部110から構成される。
【0020】
パケット送信部101は、レート機能通知部108及びパケット転送部106からの指示に基づいて、IP、Ether(登録商標)パケットを作成して受信装置200に送信する。
【0021】
パケット受信部102は、受信装置200等からのIP、Ether(登録商標)パケットを受信し、MLD抽出部103に出力する。
【0022】
MLD抽出部103は、パケット受信部102から取得したパケットからMLDプロトコルのメッセージを抽出し、MLD受信レート監視部109に出力する。
【0023】
規制フラグ部104は、システム状態監視部107の制御により、受信装置200からのMLDメッセージの受付数を制限している状態か否かのフラグを記憶する。
【0024】
MLD制御部105は、MLDなどの制御パケットについてCPUやメモリに対し、プッシュ、ポップ操作を行う。
【0025】
パケット転送部106は、パケット送信部101に対して、MLD制御部105で処理された情報のパケット転送の指示を行う。
【0026】
システム状態監視部107は、MLD制御部105のCPUとメモリのキューの状態を定期的に監視し、キュー溢れを検知した(輻輳状態)場合は、規制フラグ部104のフラグを"1"(ON)に、それ以外の場合はフラグを"0"(OFF)にし、MLD受信レート監視部109にする。
【0027】
レート通知機能部108は、規制フラグ部104のフラグが"1"(ON)の場合は、輻輳があることを示す要求送出レート上限値を格納したメッセージを生成し、フラグが"0"の場合は、輻輳回復を一意とする値を格納したメッセージを生成し、MLD抽出部103、IPパケット送信部101を介して全受信装置200にレート通知を行う。
【0028】
MLD受信レート監視部109は、受信装置(ユーザ)毎の受信キューを監視する機能を有し、各受信装置200毎に一定時間あたりのMLD到着数をカウントし、所定の要求送出レートの上限値を超過した場合には要求メッセージを廃棄する。
【0029】
受信装置200は、IPパケット受信部201、制御部202、IPパケット送信部203、インタフェース部204から構成される。
【0030】
IPパケット受信部201は、送信装置100のパケット送信部101から送信されたパケットを受信する。
【0031】
制御部202は、インタフェース部204からユーザが操作することにより取得した情報に基づいてIPパケット受信部201を制御する。
【0032】
IPパケット送信部203は、受信したMLDメッセージのMLDに上限レートが記載されていた場合は、当該上限レートを記憶する上限レート記憶部の上限レート値に従って、受信装置200の利用者からのチャネル切替通知を取得し、MLDメッセージを送信する。
【0033】
インタフェース部204は、利用者からのチャネル切替通知を受け取る。
【0034】
以下に、上記の構成における動作を説明する。
【0035】
図3は、本発明の第1の実施の形態におけるマルチキャスト通信システムのシーケンスチャートである。
【0036】
ステップ111)受信装置200は、ユーザからの指示により、MLDメッセージを含む視聴要求パケットをパケット送信部23から送信装置100に送信する。
【0037】
ステップ112)送信装置100は、パケット受信部102にて視聴要求パケットを受信する。
【0038】
ステップ113) MLD抽出部103にて、受信した視聴要求パケットからMLDプロトコルメッセージを抽出し、MLD制御部105にてプロトコル処理を行い、MLD受信レート監視部109に出力する。このとき、MLD受信レート監視部109が、ユーザ端末毎の受信キューを監視し、受信装置200側に通知したレートを超過した場合には、キュー内の要求を廃棄する。
【0039】
ステップ114) レート超過していない場合、MLD制御部105は、視聴要求に対応する処理を行い、要求のあったマルチキャストパケットを受信装置200に転送するようにパケット転送部106に指示する。
【0040】
ステップ115) パケット転送部106は、要求されたマルチキャストパケットをパケット送信部101に送出する。また、レート機能通知部108がシステム状態監視部107からフラグ"1"を取得した場合には、輻輳状態にあることを示すための、要求送出レート上限値を含む要求送出レート指定メッセージを生成してIPパケット送信部101を介して受信装置200に送信する。また、システム状態監視部107からフラグ"0"を取得した場合には、輻輳回復したことを示す値を含む要求送出レート指定メッセージを生成して送信する。
【0041】
ステップ116) 受信装置200のIPパケット部201にて、マルチキャストパケットを受信する。要求送出レート指定メッセージを受信した場合には、要求送出レート上限値または、輻輳回復したことを示す値を抽出し、それらのメッセージ応じて、送信規制を行う、または、送信規制を解除して送信装置100にメッセージを送信する。
【0042】
以下に具体的に説明する。
【0043】
図4は、本発明の第1の実施の形態における動作を説明するための図である。
【0044】
同図では、送信装置100をマルチキャスト配信ルータとし、受信装置200をホストとして説明する。以下では、マルチキャスト配信ルータ100がホスト200側から視聴要求パケットを送信し、パケット受信部102を介して受信し、ユーザ毎の受信キューに蓄積されているものとして説明する。
【0045】
図5は、発明の第1の実施の形態における送信装置(マルチキャスト配信ルータ)の動作のフローチャートである。
【0046】
マルチキャスト配信ルータ100のシステム状態監視部107は、定期的にシステムキューを監視し(ステップ201)、システムキューの溢れにより廃棄が生じたことを検知すると(ステップ202、Yes)、これをトリガとして、規制フラグ部104のフラグを"1"にし、当該フラグをMLD受信レート監視部109及びレート制御通知部108に通知する(ステップ203)。
【0047】
MLD受信レート監視部109は、ユーザ端末毎の受信キューを監視し、システム状態監視部107からフラグ"1"を取得すると(ステップ205、Yes)、レート監視機能が所定のレート以上の要求を破棄する(ステップ206)。
【0048】
レート制御通知部108は、システム状態監視部107からフラグ"1"を通知された場合には、要求送出レート上限値を格納した要求送出レート指定メッセージを生成し、パケット送信部101を介してホスト200側のユーザ端末に通知する(ステップ207)。
【0049】
一方、システム状態監視部107が、定期的にシステムキューを監視し(ステップ201)、廃棄が生じていない場合には輻輳から回復したものとして(ステップ202、No)、規制フラグ部104のフラグを"0"にし、当該フラグをMLD受信レート監視部109及びレート制御通知108に通知する(ステップ204)。
【0050】
MLD受信レート監視部109は、システム状態監視部107からフラグ"0"を通知された場合は、以下の条件を満たすかを判定する。
【0051】
1)システムトータル受信キューの破棄量=0
2)All rate use<Rate max(使用中のレートが最大レートより小さい)
上記の1)、2)の両方の条件を満たすとき、レート制御を解除してもユーザ端末からの一斉発呼はないと判断して、レート制御を解除する(ステップ208)。これにより、ユーザ毎の受信キューのメッセージはシステムキューにプッシュされ、MLD制御部105によってMLD処理され、当該メッセージに対応するパケットガパケット転送部106からホスト側200のユーザに送信される。
【0052】
また、システム状態監視部107からフラグ"0"を取得したレート制御通知部108は、輻輳回復したことを示す値を格納した要求送出レート指定メッセージを生成し、パケット送信部101を介してホスト200側のユーザ端末に通知する(ステップ209)。
【0053】
ホスト200側のユーザ端末は、要求送出レート指定メッセージを受信し、当該メッセージから要求送出レート上限値、または、輻輳回復したことを示す値を抽出する。要求送出レート上限値を取得した場合には、マルチキャスト配信ルータ100に送信するメッセージについて送信規制を行って送信し、輻輳を回復したことを示す値を取得した場合は、送信規制を解除してメッセージを送信する。なお、ここで、「送信規制」とは、ホスト200側では、上記のレートの範囲内で送出するタイミングを遅らせ(待機し)た後で、メッセージを送信することを指す。
【0054】
[第2の実施の形態]
本実施の形態では、タイマを用いてレート監視を行う例を説明する。
【0055】
図6は、本発明の第2の実施の形態における装置構成を示す。
【0056】
同図において、図2と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
本実施の形態における送信装置100は、図2の構成にレート時刻保持部111を付加した構成である。
【0058】
レート時刻保持部111は、設定されたレート制御開始時刻とレート制御解除時刻を保持し、当該指定時刻が到来したらレート制御またはレート制御解除をMLD受信レート監視部109に通知する機能を有する。
【0059】
図7は、本発明の第2の実施の形態における動作を説明するための図であり、図8は、本発明の第2の実施の形態におけるマルチキャスト配信ルータの動作のフローチャートである。
【0060】
予め、送信装置100の利用者がインタフェース機能(図示せず)を介して、レート時刻保持部111にレート監視を開始する時刻及びレート監視解除する時刻を設定しておき(ステップ301)、タイマ監視を行い(ステップ302)、レート時刻保持部111に設定されているレート監視開始時刻が到来したら、レート制御通知部108は、ホスト200側のユーザ端末に対して、要求送出レート上限値を含むメッセージを送信する(ステップ303)。
一方、タイマ監視により設定されているレート監視解除時刻が到来したら、レート制御通知部108は、輻輳回復を示す値を含むメッセージを送信する(ステップ304)。
【0061】
ホスト200側の処理は第1の実施の形態と同様である。
【0062】
[第3の実施の形態]
本実施の形態では、受信装置200(ユーザ端末)から受信したMLDのメッセージの受信時刻を管理し、現在時刻との差分によりメッセージ送信の規制を行う例を示す。
【0063】
図9は、本発明の第3の実施の形態における装置構成を示す。
【0064】
同図において、図2と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図9に示す構成は、図2の構成に対象受信装置特定部112を具備した構成である。
【0066】
図10は、本発明の第3の実施の形態における動作を説明するための図であり、図11は、本発明の第3の実施の形態における送信装置側の動作のフローチャートである。
【0067】
図10では、受信装置100をホストとし、送信装置100をマルチキャスト配信ルータとして説明する。
【0068】
MLD抽出部103は、ホスト200側のユーザ端末から受信したMLDの情報を抽出し、対象受信装置特定部112に出力する。
【0069】
対象受信装置特定部112は、MLDv2 Report(加入要求)/MLDv2 Report(離脱要求)受信時刻記憶部113を有し、取得したMLDの情報からMLDv2 Report(加入要求)(転送開始要求)/ MLDv2 Report(離脱要求)(転送停止要求)を受信した時刻を抽出し、MLDv2 Report(加入要求)/ MLDv2 Report(離脱要求)受信時刻記憶部113に格納する(ステップ401)。なお、受信時刻記憶部113には、新たに受信したMLDv2 Report(加入要求)の受信時刻と、前回受信したMLDv2 Report(加入要求)の受信時刻と、前回受信したMLDv2 Report(離脱要求)の受信時刻を同時に保持する。対象受信装置特定部112は、新たに受信したMLDv2 Report(加入要求)の受信時刻と前回受信したMLDv2 Report(加入要求)の受信時刻の差分及び受信したMLDv2 Report(加入要求)の受信時刻とMLDv2 Report(離脱要求)の受信時刻との差分を算出し、図12に示すようにΔT1,ΔT2を定義する(ステップ402)。
【0070】
対象受信装置特定部112は、予め設定されている閾値(ΔTth1、ΔTth2)とΔT1、ΔT2をそれぞれ比較する(ステップ403)。
【0071】
当該閾値以上である場合には、レート機能通知部108に要求送出レート上限値を含むメッセージを送信することを通知する(ステップ404)。また、閾値より低い場合は、メモリ(図示せず)に当該受信装置200の識別子を格納し、規制フラグを参照し、"1"であれば、メモリ(図示せず)に格納された受信装置の識別子に対応する受信装置に対し、要求送出レート上限値を設定したメッセージを送信する。一方、規制フラグが"0"、または、定期的に規制フラグを監視し、規制フラグが"1"から"0"に遷移した場合は、輻輳回復を示す値を設定したメッセージをメモリ(図示せず)に格納された受信装置の識別子に対応する受信装置に送信する(ステップ405)。
【0072】
<評価>
レート制御を行わない場合と、本発明を適用してレート制御を行った場合を比較した。
【0073】
同時利用ユーザ数は200(IP放送契約数500ユーザ×利用率40%)であるとき、コマーシャル時間帯の視聴要求数を見積もる。
【0074】
視聴したい番組を探すユーザ数Aについては、
150ユーザ×5ch連続切替(映像切替が遅れても番組名は表示され、番組名にて番組探しのための連続操作)×2要求(切断、接続)=1500要求
となる。
【0075】
また、上記以外のユーザB(決めた番組にチャネル切替するユーザ)については、
50ユーザ×1ch切替×2要求(切断、接続)=100要求
となり、ユーザA、Bについての要求数は1600要求となる。
【0076】
1秒あたり、100要求を処理するものとすると、全ての要求を処理するために、16秒(1600要求÷100要求/秒)必要であり、最悪15秒程度のチャネル切り替えの映像配信遅延が発生する。ユーザA,Bはリモコン操作(チャネル切り替え操作)したにもかかわらず、5秒以上、リモコン反応(映像のチャネル切り替え)がない場合は、原因が不明なため、自身のリモコン操作に原因があると考え、再操作することで、さらに要求メッセージを再送することになる。映像配信の遅れの要因(STB(端末側)、網側、映像配信サーバ側)が不明なため、ユーザ混乱を引き起こす。
【0077】
次に、本発明を適用してレート制御を行った場合を説明する。
【0078】
上記と同様に、同時利用ユーザ200(IP放送契約数500ユーザ×利用率40%)であるとき、100要求/秒÷500ユーザ=1STBにつき、10秒間あたり、2要求でレート制御(ルータからSTBに通知)するものとする。
【0079】
視聴したい番組を探すユーザ数Aについては、
150ユーザ×25要求(切断、接続)=300要求
となり、また、上記以外のユーザB(決めた番組にチャネル切替するユーザ)については、
50ユーザ×2要求(切断、接続)=100要求
となり、ユーザA、Bについての要求数は400要求となる。
【0080】
本発明では、全ての要求を処理するために4秒(400要求÷100要求/秒)必要であり、差悪4秒程度のチャネル切り替え遅延が発生する。つまり、視聴したい番組を探しているユーザAは、リモコン操作(チャネル切り替え装置)の結果、最大4秒待つことになる。決めた番組にチャネル切り替えするユーザBについても、最悪4秒ほどの切り替え遅延が発生することになるが、最初の1要求目に対する切り替え遅延は、ユーザあの最初のものと公平である。さらに、ルータからのレート通知により、網側で混み合っていることが理解できるため、ユーザ混乱がなく、せっかちなユーザでも再操作することなく、更なる要求メッセージの再送はない。
【0081】
なお、上記の各実施の形態の図2、図6、図9に示す送信装置側及び受信装置側の各構成要素の動作をプログラムとして構築し、送信装置(マルチキャスト配信ルータ)、受信装置(ユーザ端末)として利用されるコンピュータにインストールする、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0082】
また、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々変更及び応用が可能である。
【符号の説明】
【0083】
100 送信装置(マルチキャスト配信ルータ)
101 パケット送信部
102 パケット受信部
103 MLD抽出部
104 規制フラグ部
105 MLD制御部
106 パケット転送部
107 システム状態監視部
108 レート機能通知部
109 MLD受信レート監視部
110 制御部
111 レート時刻保持部
112 対象受信装置特定部(ザッピングユーザ判定処理部)
200 受信装置(ホスト)
201 IPパケット受信部
202 制御部
203 IPパケット送信部
204 インタフェース部
300 IP.ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャストパケットの送信装置と、マルチキャストパケットの受信装置からなり、該装置間で、該送信装置から該受信装置へのマルチキャストパケットの転送開始、転送停止を動的に制御するマルチキャスト通信システムであって、
前記送信装置は、
前記送信装置内部のマルチキャスト制御プロトコルを処理する制御手段が、非輻輳状態から輻輳状態になった、または、輻輳状態から非輻輳状態になったことを検出する輻輳状態検出手段と、
前記輻輳状態検出手段が輻輳を検出した場合には、所定の要求送出レート上限値を格納した要求送出レート指定メッセージを作成し、該輻輳状態検出手段が輻輳からの回復を検出した場合には、所定の輻輳回復を一意とする値を格納した要求送出レート指定メッセージを作成する要求送出レート指定メッセージ作成手段と、
要求送出レート指定メッセージ作成手段で作成した要求送出レート指定メッセージを前記受信装置に送出するパケット送信手段と、
を具備し、
前記受信装置は、
前記送信装置から前記要求送出レート指定メッセージを受信するメッセージ受信手段と、
前記要求送出レート指定メッセージから、前記要求送出レート上限値、または、前記輻輳回復を一意とする値を取り出す要求送出レート抽出手段と、
要求送出レート抽出手段で前記要求送出レート上限値が抽出された場合は、送信するマルチキャスト制御プロトコルのメッセージについて、送信規制を行って送信し、前記輻輳回復を一意とする値が抽出された場合は、送信するマルチキャスト制御プロトコルのメッセージについて、送信規制を解除して送信するメッセージ送信手段と、
を具備することを特徴とするマルチキャスト通信システム。
【請求項2】
マルチキャストパケットの送信装置と、マルチキャストパケットの受信装置からなり、該装置間で、該送信装置から該受信装置へのマルチキャストパケットの転送開始、転送停止を動的に制御するマルチキャスト通信システムであって、
前記送信装置は、
前記送信装置内部の利用者が、レート規制開始時刻と終了時刻を入力するインタフェース手段と、
前記利用者が入力したレート規制開始時刻とレート規制解除時刻を記憶するレート規制時刻記憶手段と、
現在の時刻情報を保持するタイマと、
前記タイマの時刻情報と前記レート規制時刻記憶手段の前記レート規制開始時刻を比較し、一致した場合には、所定の要求送出レート上限値を格納した要求送出レート指定メッセージを作成し、前記タイマの時刻情報とレート規制時刻記憶手段の前記レート規制解除時刻を比較し、一致した場合には、所定の輻輳回復を一意とする値を格納した要求送出レート指定メッセージを作成する要求送出レート指定メッセージ作成手段と、
要求送出レート指定メッセージ作成手段で作成した要求送出レート指定メッセージを前記受信装置に送出するパケット送信手段と、
を具備し、
前記受信装置は、
前記送信装置から要求送出レート指定メッセージを受信するメッセージ受信手段と、
前記要求送出レート指定メッセージから、前記要求送出レート上限値、または、前記輻輳回復を一意とする値を抽出する要求送出レート抽出手段と、
要求送出レート抽出手段で前記要求送出レート上限値が抽出された場合は、送信するマルチキャスト制御プロトコルのメッセージについて、送信規制を行って送信し、前記輻輳回復を一意とする値が抽出された場合は、送信するマルチキャスト制御プロトコルのメッセージについて、送信規制を解除して送信するメッセージ送信手段と、
を具備することを特徴とするマルチキャスト通信システム。
【請求項3】
前記送信装置は、
輻輳検出中において、前記要求送出レート上限値に従って、前記受信装置からのマルチキャスト制御プロトコルのメッセージの受信レートを監視し、該要求送出レート上限値以上の受信があった場合には、超過分のマルチキャスト制御プロトコルのメッセージを廃棄する受信制御手段を更に有する
請求項1または2記載のマルチキャスト通信システム。
【請求項4】
前記送信装置は、
前記送信装置内部の利用者が、前記要求送出レート指定メッセージを送信する受信装置の識別子を入力する識別子入力手段と、
前記利用者が入力した受信装置の識別子を記憶する対象受信装置識別子情報記憶手段と、
を更に有し、
前記パケット送信手段は、
前記対象受信装置識別子情報記憶手段から取り出した前記受信装置の識別子の受信装置に前記要求送出レート指定メッセージを送信する手段を有する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマルチキャスト通信システム。
【請求項5】
前記輻輳状態検出手段は、
輻輳状態を検出した場合は規制フラグを"1"に、輻輳状態から回復した場合は規制フラグを"0"とするフラグ設定手段を有し、
前記各受信装置から受信した転送開始要求及び転送停止要求を受信した時刻を保持する要求受信時刻記憶手段と、
前記各受信装置から転送開始要求を受信した場合、前記受信時刻記憶手段に格納されている転送開始要求の受信時刻と受信した転送停止要求を受信した時刻との差が設定値以下であり、前記受信時刻記憶手段の転送停止要求の受信時刻と受信した新たな転送開始要求を受信した時刻との差が設定値以下の場合に、該受信装置の識別子を前記対象受信装置識別子情報記憶手段に記憶する差分比較手段と、
前記対象受信装置識別子情報記憶手段に受信装置の識別子が記憶された場合、規制フラグを確認し、"1"であれば、該対象受信装置識別子情報記憶手段から取り出した受信装置の識別子の受信装置に前記要求送出レート上限値を記載した前記要求送出レート指定メッセージを送信し、規制フラグを確認し、規制フラグが"1"から"0"に遷移した場合には、該対象受信装置識別子情報記憶手段から取り出した受信装置の識別子の受信装置に前記輻輳回復を一意とする値を記載した前記要求送出レート指定メッセージを送信する対象受信装置特定手段を更に具備する
請求項4に記載のマルチキャスト通信システム。
【請求項6】
マルチキャストパケットの送信装置と、マルチキャストパケットの受信装置からなり、該装置間で、該送信装置から該受信装置へのマルチキャストパケットの転送開始、転送停止を動的に制御するマルチキャスト通信制御方法であって、
前記送信装置において、
輻輳状態検出手段が、前記送信装置内部のマルチキャスト制御プロトコルを処理する制御手段が、非輻輳状態から輻輳状態になった、または、輻輳状態から非輻輳状態になったことを検出する輻輳状態検出ステップと、
要求送出レート指定メッセージ作成手段が、前記輻輳状態検出ステップにおいて輻輳が検出された場合には、所定の要求送出レート上限値を格納した要求送出レート指定メッセージを作成し、該輻輳状態検出手段が輻輳からの回復を検出した場合には、所定の輻輳回復を一意とする値を格納した要求送出レート指定メッセージを作成する要求送出レート指定メッセージ作成ステップと、
パケット送信手段が、要求送出レート指定メッセージ作成ステップで作成された要求送出レート指定メッセージを前記受信装置に送出するパケット送信ステップと、
を行い、
前記受信装置において、
メッセージ受信手段が、前記送信装置から要求送出レート指定メッセージを受信するメッセージ受信ステップと、
要求送出レート抽出手段が、前記要求送出レート指定メッセージから、前記要求送出レート上限値、または、前記輻輳回復を一意とする値を取り出す要求送出レート抽出ステップと、
メッセージ送信手段が、要求送出レート抽出ステップで前記要求送出レート上限値が抽出された場合は、送信するマルチキャスト制御プロトコルのメッセージについて、送信規制を行って送信し、前記輻輳回復を一意とする値が抽出された場合は、送信するマルチキャスト制御プロトコルのメッセージについて、送信規制を解除して送信するメッセージ送信ステップと、
を行うことを特徴とするマルチキャスト通信制御方法。
【請求項7】
マルチキャストパケットの送信装置と、マルチキャストパケットの受信装置からなり、該装置間で、該送信装置から該受信装置へのマルチキャストパケットの転送開始、転送停止を動的に制御するマルチキャスト制御方法であって、
前記送信装置は、
前記送信装置内部の利用者が、レート規制開始時刻と終了時刻を入力するインタフェース手段と、
前記利用者が入力したレート規制開始時刻とレート規制解除時刻を記憶するレート規制時刻記憶手段と、
現在の時刻情報を保持するタイマと、
前記タイマの時刻情報と前記レート規制時刻記憶手段の前記レート規制開始時刻を比較し、一致した場合には、所定の要求送出レート上限値を格納した要求送出レート指定メッセージを作成し、前記タイマの時刻情報とレート規制時刻記憶手段の前記レート規制解除時刻を比較し、一致した場合には、所定の輻輳回復を一意とする値を格納した要求送出レート指定メッセージを作成する要求送出レート指定メッセージ作成手段と、
要求送出レート指定メッセージ作成手段で作成した要求送出レート指定メッセージを前記受信装置に送出するパケット送信手段と、
を具備し、
前記受信装置は、
前記送信装置から前記要求送出レート指定メッセージを受信するメッセージ受信手段と、
前記要求送出レート指定メッセージから、前記要求送出レート上限値、または、前記輻輳回復を一意とする値を抽出する要求送出レート抽出手段と、
要求送出レート抽出手段で前記要求送出レート上限値が抽出された場合は、送信するマルチキャスト制御プロトコルのメッセージについて、送信規制を行って送信し、前記輻輳回復を一意とする値が抽出された場合は、送信するマルチキャスト制御プロトコルのメッセージについて、送信規制を解除して送信するメッセージ送信手段と、
を具備することを特徴とするマルチキャスト通信方法。
【請求項8】
前記送信装置において、
受信制御手段が、輻輳検出中において、前記要求送出レート上限値に従って、前記受信装置からのマルチキャスト制御プロトコルのメッセージの受信レートを監視し、該要求送出レート上限値以上の受信があった場合には、超過分のマルチキャスト制御プロトコルのメッセージを廃棄する受信制御ステップを更に行う
請求項6または7記載のマルチキャスト通信制御方法。
【請求項9】
前記送信装置において、
識別子入力手段が、前記送信装置内部の利用者からの、前記要求送出レート指定メッセージを送信する受信装置の識別子の入力を受け付け、該識別子を記憶する対象受信装置識別子情報記憶手段に格納する識別子入力ステップを更に行い、
前記パケット送信ステップにおいて、
前記対象受信装置識別子情報記憶手段から取り出した前記受信装置の識別子の受信装置に前記要求送出レート指定メッセージを送信する
請求項6乃至8のいずれか1項に記載のマルチキャスト通信制御方法。
【請求項10】
前記輻輳状態検出ステップにおいて、輻輳状態を検出した場合は規制フラグを"1"に、輻輳状態から回復した場合は規制フラグを"0"とするものとし、
前記各受信装置から受信した転送開始要求及び転送停止要求を受信した時刻を要求受信時刻記憶手段に格納し、
差分比較手段が、前記各受信装置から転送開始要求を受信した場合、前記受信時刻記憶手段に格納されている転送開始要求の受信時刻と受信した転送停止要求を受信した時刻との差が設定値以下であり、前記受信時刻記憶手段の転送停止要求の受信時刻と受信した新たな転送開始要求を受信した時刻との差が設定値以下の場合に、該受信装置の識別子を前記対象受信装置識別子情報記憶手段に記憶する差分比較ステップと、
対象受信装置特定手段が、前記対象受信装置識別子情報記憶手段に受信装置の識別子が記憶された場合、前記規制フラグを確認し、"1"であれば、該対象受信装置識別子情報記憶手段から取り出した受信装置の識別子の受信装置に前記要求送出レート上限値を記載した前記要求送出レート指定メッセージを送信し、前記規制フラグを確認し、該規制フラグが"1"から"0"に遷移した場合には、該対象受信装置識別子情報記憶手段から取り出した受信装置の識別子の受信装置に前記輻輳回復を一意とする値を記載した前記要求送出レート指定メッセージを送信する対象受信装置特定ステップと、
を更に行う
請求項9に記載のマルチキャスト通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−175200(P2012−175200A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32659(P2011−32659)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】