説明

マルチソース符号化X線画像化

断層撮影装置(10)は、一意的に符号化された放射線を生成するよう異なるスイッチングパターンにより同時に駆動される少なくとも2つのX線源(16)を有する。断層撮影装置(10)は、更に、少なくとも2つのX線源(16)の中のその対応する1つによって発せられる一次放射線と、残りのX線源(16)の中の少なくとも1つからの交差散乱放射線とを夫々検出する少なくとも2つの検出器(20)を有する。少なくとも2つの検出器(20)の夫々は、検出された一次放射線及び交差散乱放射線を表す集合信号を生成する。断層撮影装置(10)は、更に、異なるスイッチングパターンに基づいて、集合信号において少なくとも2つのX線源(16)の中の少なくとも1つに対応する少なくとも1つの信号を特定して、その特定された信号を対応するX線源(16)と関連付けるデカップラ(30)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、画像化(imaging)システムに関する。それは、特に、コンピュータ断層撮影(CT)に、より具体的に、異なるX線源からの同時に検出される放射線を処理することに適用される。
【背景技術】
【0002】
従来の単一X線管CTシステムにより、X線管はシステムの性能を制限する。特に、X線管の陽極での熱放散は、管電力を制限する1つの要因である。管は、100%よりも低いデューティーサイクルで動作され得ることで、陽極の熱放散を促す。しかし、これは、管のより効率的でない使用と光子束の減少とをもたらす。高い光子束が、例えば心臓CTのような過渡的な処理を画像化するのに望まれる。
【0003】
デュアル管CTシステムにより、光子束は、両方の管を用いることによって増大しうる。かかるシステムは、両方の管が同時にX線を生成して放射するように、又は、管が交互に作動する如何なる所与の時点でも、一方の管のみがX線を生成して放射するように、動作する。同時動作により、夫々の管に対応する検出器は、また、一次放射と、他の管からの放射(交差散乱(cross scatter))とを検出する。このようにして、いずれかの検出器の組によって検出された集合的な散乱は、単一の管の使用に比べて増大する。管を交互に用いることは交差散乱を軽減するが、管の数に基づく単位時間ごとの各管の光子放射を減らす。結果として、取得時間は増大し、管電力は、同様の信号対雑音比(SNR)を達成すべく増大される必要がある。管を交互に用いることは、また、夫々の管が一部の時間の間だけオンしている点で非効率的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上より、従来のシステムに関する上記及び/又は他の欠陥を解消する改善されたシステム及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、これらの問題及びその他に対処する。
【0006】
一態様に従って、断層撮影装置が説明される。この断層撮影装置は、少なくとも2つのX線源と、少なくとも2つの検出器と、デカップラとを有する。少なくとも2つのX線源は、一意的に符号化された放射線を生成するよう、異なるスイッチングパターンを有して同時に駆動され得る。各検出器は、少なくとも2つのX線源の中のその対応する1つによって発せられた一次放射線と、残りのX線源の中の少なくとも1つからの交差散乱放射線とを検出する。放射線を検出すると、少なくとも2つの検出器の夫々は、検出した一次放射線及び交差散乱放射線を表す集合信号(aggregate signal)を生成する。デカップラは、異なるスイッチングパターンに基づき、集合信号において少なくとも2つのX線源の中の少なくとも1つに対応する少なくとも1つの信号を特定し、特定した信号をその対応するX線源に関連付ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1を参照すると、画像化システム10が表されている。画像化システム10は、医用画像化システム、動物用画像化システム、産業用画像化システム等でありうる。画像化システム10は、撮像される対象の一部分を照射するために、複数の同時に作動するX線源を用いる。各X線源によって発せられる放射線は、(例えば、周波数、コード、位相、振幅、及び/又はデューティーサイクル符号化を介して)一意的に符号化される。放射線検出器は、対応するX線源によって発せられた一次放射線と、他のX線源によって発せられた交差散乱放射線とを検出し、集合信号を生成する。集合信号は、検出された一次放射線及び交差散乱放射線を示す信号成分を含む。放射線の一意の符号化は、集合信号から個々の信号成分の中の1又はそれ以上を分離し又は別な方法で抽出するために使用され得る。1つの限定されない態様において、これは、取得画像の時間分解能を増大し、ガントリ(gantry)の回転速度を低下させ、機械的構成を簡単化し、従来の代替モード(alternatively mode)X線管アプローチと比べてより高速な画像化を提供し、且つ/あるいは、従来の同時モードアプローチに比べて交差散乱を減らすために使用され得る。
【0008】
画像化システム10は、N個のX線源16、16(ここでは、集合的にX線源16と呼ばれる。)を支持する回転ガントリ14を具えたCTスキャナ12を有する。ここで、Nは2以上の整数である。X線源16は、互いから角度オフセット(例えば、2つのX線源については、90度+.5*ファンアングル。)を有してガントリ14の周囲に配置されている。X線源16の夫々は、一意的に符号化されたスイッチングパターンを生成するためにグリッド、シャッター及び/又はその他同様のものを有することができる。一実施において、X線源16は、グリッド制御型X線管として実施される。この場合に、グリッドは、所望のスイッチングパターンに従って夫々の管の出力を変調し又は別な方法で制御する働きをする。例えば、グリッドは、所望の符号化パターンに従ってX線源16の夫々を“オン”及び“オフ”に切り替えるために使用され得る。望ましい符号化を提供する他の適切な電気回路又は他のメカニズムの使用が、また、考えられる。熱陰極(フィラメント)を具えた従来のX線管の適切な代替案は、例えば“冷陰極(cold cathodes)”のような電界放射陰極を組み込むX線源である。これは、本願に参照することで援用される、G.Z.Yue氏等によって2002年7月8日に公開された、Appl.Phys.Lett.、Vol.81、No.2に掲載の“Generation of continuous and pulsed diagnostic imaging x-ray radiation using a carbon-nanotube-based field-emission cathode”に記載されるように、通常、例えば100kHzといった、より高い周波数パルス放射を可能にする。
【0009】
制御部18は、様々なX線源16によって生成される放射線を一意的に符号化するようX線源16へ制御信号又は他のコマンドを送る。一実施において、様々なX線源16が異なるスイッチング周波数で駆動されるように、周波数符号化が使用される。周波数符号化に加えて、例えば、コード、位相、振幅、及びデューティーサイクル符号化のような他の符号化技術が(いずれか1つ又は様々な組み合わせで)考えられる。このような符号化は、X線源16の中の2又はそれ以上が同時の放射線を放つよう一斉に動作することができるように実行される。1つの例で、様々なスイッチングパターンは共通の発振器によって生成される。これにより、個々のX線源16の間の相対的な周波数ドリフトは軽減される。
【0010】
ガントリ14は、また、X線感知検出器20及び20の組(ここでは、集合的にX線感知検出器20の組と呼ばれる。)を支持する。X線感知検出器20の各組は、それらの間に撮像領域22を定めるべくX線源16の中のその対応する1つの反対側に角度円弧(angular arc)を定めるようガントリ14の周囲に配置されている。検出器20は、様々な検出器技術に基づくことができる。例えば、1つの例で、少なくとも1つの検出器は、(例えば、硫酸化ガドリニウム(GOS;gadolinium oxysulphide)シンチレータを組み込む)間接変換技術を用いる。他の例では、少なくとも1つの検出器は、(例えば、結晶性テルル化亜鉛カドミウム(CZT;cadmium zinc telluride)を組み込む)直接変換技術を用いる。
【0011】
他の実施例で、医用画像化システム10における幾つかのX線源16は、例えば、Zhou氏等によって出願された米国特許出願公開2004/0213378(A1)号明細書(“Computed tomography system for imaging of human and small animal”)に記載されるように、あるいは、C.Ribbing氏等によって2006年2月2日に出願された欧州特許出願公開061011755号明細書(“Imaging apparatus using distributed x-ray sources and method thereof”)に記載されるように、撮像される対象の部分を囲む固定フレームに取り付けられる。いずれの特許文献も本願に参照することで援用される。このような画像化システムは、通常、それほど構成が複雑ではないが、回転機構と同じ品質の画像を得るためにより多くのX線源16及び/又はX線感知検出器20を必要とすることがある。
【0012】
対象(又は患者)支持台24は、撮像領域内22内で、例えば人間のような対象を支持する。支持台24は、オペレータが、例えば、z軸26に沿って支持台24を動かすことによって、螺旋走査、軸方向走査、及び/又は他の走査を実行する前、実行している間、及び/又は実行した後で撮像領域22内の適切な場所に対象を導くことを可能にするために動作可能であっても良い。システム10は第3世代のCTシステムとして記載されてきたが、他の構成が考えられる。例えば、1又はそれ以上の固定された検出器リングを具える第4世代のシステムも考えられる。このような実施では、特定のX線源に対応する検出器リングの検出器は、X線源の角度位置の関数として変化しうる。
【0013】
X線源16の中の2又はそれ以上が一斉に動作する場合に、検出器20の各組は夫々、X線源16の中のその対応する1つ及び他のX線源16によって発せられた放射線を検出する。このようにして、検出器20の特定の組、例えば20に関し、検出された放射線は、そのX線源16によって発せられた放射線(一次放射線及び前方散乱放射線)と、X線源16によって発せられた放射線(交差散乱)とを含む。各検出器は、一次放射線及び交差散乱放射線の両方の信号成分を含む集合信号を生成する。
【0014】
様々な検出器20からの信号はデカップラ30へ供給される。デカップラ30は、各検出器20によって生成された集合信号から個々の信号の1又はそれ以上を取り出す。周波数符号化された信号とともに使用されるのに適した1つの実施において、ロックイン(lock-in)増幅器32は、集合信号内の基準パターン/変調周波数に従って信号の1又はそれ以上に“ロックイン”するために使用される。ロックイン増幅器32を使用する場合に、集合信号に加えて、関心のある信号に対応するスイッチングパターンが、SYNC接続31を介してロックイン増幅器32へ供給される。ロックイン増幅器32は、スイッチングパターンの中の1つを集合信号に乗じる。この例に関し、集合信号は、X線源16からの放射線を示す信号に対応するスイッチングパターンを乗じられるとする。
【0015】
集合信号及びスイッチングパターンの生成は、低域通過フィルタ又はスイッチングパターンの周波数に中心がある帯域通過フィルタ等によって処理される。フィルタは、一定成分を通し、時間変化する成分を抑える。スイッチングパターンにより符号化された信号及びスイッチングパターンは同じ周波数を有するので、X線源16に対応する信号は回復される。他の一意的に符号化された信号は、このスイッチングパターンとは異なる周波数と関連するので、それらは抑制される。ソース16に対応するスイッチングパターンにより符号化された信号は、同様に、適切なスイッチングパターンを集合信号に乗じることによって得られる。
【0016】
ロックイン増幅器32を用いると、集合信号は分離(demultiplex)され、集合信号内の信号の中の1又はそれ以上の強さ寄与が識別されて、X線源16の中のその対応する1つと関連付けられ又はその1つに特定される。目的が、同時に動作するX線源16の場合に散乱放射を把握することである場合は、ロックイン増幅器32の中の少なくとも1つは、検出器20の夫々について設けられて、検出器の夫々のX線源16によって生成される信号成分を取り出すために使用され得る。他の用途では、散乱放射線の発生源を特定する能力は、例えば、透過及び散乱断層撮影を用いる散乱画像化及び/又はマルチモダリティ機構を容易にすることができる。
【0017】
散乱画像化では、前方向及び後ろ方向の両方における散乱光子が画像再構成のために使用され得る。後方散乱は、コンプトン(Compton)(インコヒーレント)散乱が主である。この散乱は、単位体積ごとの電子の数に敏感である。前方散乱は主としてコヒーレント散乱であって、X線回折のもとであり、分子構造のはっきりとした特徴を与える。その交差部分は、無定型の物質に関しても、物質固有の方法で光子エネルギー及び角度とともに変化する。原子組成及び分子構造に依存する散乱は、患者の体内の組織を区別するのに役立つ。従って、医療画像では、散乱放射線は付加的な情報源でありうる。
【0018】
幾つかの画像化タスクのために、コントラスト及びSNRは、散乱の一部を集めて解析することによって、放射線量を変えることなく改善され得る。例えば、本願に参照することによって援用される、P.C.Johns、R.C.Leclair、M.P.Wismayerによって公開された、SPIE Regional Meeting on Optoelectronics,Photonics and Imaging、SPIE TD01、355〜357頁(2002年)に掲載の“Medical x-ray imaging with scattered photons”を参照されたし。本発明によれば、放射線の一意の符号化は、集合信号から幾つかの個々の信号成分の中の1又はそれ以上を取り出すために使用され得る。より具体的には、交差散乱放射線は、その放射源に特定され、且つ/あるいは、撮像される対象に関する、例えば、より高いコントラスト及び/又はSNRへ寄与し且つ/あるいは原子番号若しくは化学構造に関する情報を提供する付加的な情報を得るために使用され得る。
【0019】
例えばサブトラクション(subtraction)34、フーリエ変換36、及びウェーブレット分解38のような他の分離技術も考えられる。
【0020】
分離された信号は再構成システム40へ供給される。再構成システム40は、対象の走査された領域を示す体積データを生成するよう、分離された信号を再構成する。画像処理装置42は、再構成システム40によって生成された体積画像データを処理する。次いで、生成された画像は、表示され、撮影され、アーカイブに保管され、治療を行う医師へ転送され(例えば、電子メール等。)、他の画像診断法による画像と融合され、(例えば、測定及び/又は視覚化利用及び/又は専用の視覚化システムを介して)更に処理され、記憶等をされ得る。
【0021】
計算システム44は、スキャナ12とのオペレータの対話及び/又はスキャナ12の制御を助ける。計算システム44は、例えば、ワークステーション、デスクトップ、タワー、ラップトップ等のようなコンピュータでありうる。計算システム44によって実行されるソフトウェアアプリケーションは、オペレータがスキャナ12の動作を設定及び/又は制御することを可能にする。例えば、オペレータは、計算システム44と対話して、走査プロトコルの選択、走査の開始、一時停止及び終了、画像の視認、体積画像データの操作、データの様々な特性(例えば、CT番号、雑音等。)の測定等を行うことができる。計算システム44は、制御部18へ様々な情報を伝える。かかる情報は、特定の走査プロトコルに関してスキャナ12を設定及び/又は制御するコンピュータ読取可能な命令を含みうる。例えば、かかる情報は、X線管の電圧、電流、パルス周波数、位相、振幅、デューティーサイクル等、分離(デカップリング)、デマルチプレクス・アルゴリズム等の情報を含みうる。制御部18は、スキャナ12を制御するために、上述されたように、かかる情報を用いる。
【0022】
先に論じられたように、異なるスイッチングパターンは、X線源16の夫々を一意的に符号化するために、X線源16の夫々について使用され得る。ここで図2を参照すると、例となる周波数符号化スキームが、2つのX線源16を有するシステムに関して記載されている。X線源16、16からの放射線を符号化するための例となるスイッチングパターン46、46(ここでは、集合的にスイッチングパターン46と呼ぶ。)は、時間の関数として示されている。この限定されない例において、X線源16に適用されるスイッチングパターン46は異なる周波数を有する。1つの例で、X線源16の中の少なくとも1つは、ある周波数を有して繰り返される一意のパターンに従って切り替えられる。周波数は動作モード、最大データ取得速度、及び/又はガントリ回転速度に依存しうる。典型的な周波数は、アンダーサンプリング(undersampling)を回避するよう、検出器システムの最大読出周波数に適合する数百ヘルツから数キロヘルツの範囲にある。
【0023】
図3は、X線源16と関連する検出器によって生成される、例となる結合若しくは集合信号48を表す。この例で、集合信号48は、スイッチングパターン46、46に夫々対応する一次放射線信号50及び交差散乱放射線信号50からの寄与を有する。交差散乱放射線信号50の強さは、散乱時の強度損失により、一次放射線信号50の強さよりも低い。集合信号48は、交差散乱放射線信号を含む部分52と、一次放射線信号を含む部分54と、交差散乱信号及び一次放射線信号の両方を含む部分56とを有する。明らかにされない限り、散乱の寄与は、再構成される画像の品質に悪影響を与えうる。
【0024】
図4は、例となる分離された信号を表す。このような分離は、様々な技術を介して達成され得る。例えば、ロックイン増幅器32は、上述されたように、所望の信号にロックインして、集合信号48からその信号を取り出すために使用され得る。この図で、個々の信号50は、説明及び明瞭さのために別個の信号として表されている。当然、集合信号48からの信号50の夫々の物理的な分離は生じない場合もあれば生ずる場合もある。例えば、1つの例で、信号50の夫々は集合信号48から分離される。他の例で、信号50の1又はそれ以上は、集合信号48内で特定され且つ/あるいは集合信号から取り出され得る。更なる他の例で、信号50の中の1又はそれ以上の所望の信号は、識別され、ロックインされ、通され、保持され、高められ得る。更に/あるいは、信号50の中の1又はそれ以上の不必要な信号は、抑制され、捨てられ、無視され得る。次いで、取り出された信号は、再構成システム40へ供給されて、上述されたように処理され得る。
【0025】
図5は、サブトラクション法34を用いる分離アプローチを表す。矩形波スイッチングパターン46を用いる場合に、結果として得られる放射線信号50は、X線源16のいずれもが“オン”ではない期間58、X線源16の1つのみが“オン”である期間60、62、及びX線源16のいずれも“オン”である期間64と関連する。期間58〜64は夫々、期間66、68、70及び72で集合信号48に反映され、集合信号32から個々の信号50の中の1又はそれ以上を取り出すために使用され得る。例えば、集合信号48から、期間66及び68での部分は、信号50及び50を特定するために使用され得る。特定されると、信号50は、信号50を回復するために集合信号48から減じられ得、信号50は、信号50を回復するために集合信号48から減じられ得る。次いで、取り出された信号は、再構成システム40へ供給されて、上述されたように処理され得る。
【0026】
上述される周波数符号化の代替案は位相符号化である。図6は、例となる、位相符号化されたパターン74及び74(集合的に位相符号化パターン74と呼ぶ。)を表す。図7は、位相符号化パターン74及び74から夫々得られる、例となる、位相符号化された交差散乱放射線信号76及び一次放射線信号76(集合的に、位相符号化放射線信号76と呼ぶ。)を表す。集合信号78は、位相符号化された交差散乱放射線信号76及び一次放射線信号76の成分を含む。位相多重化(マルチプレクス)により、例えばフーリエ及びウェーブレットに基づく変換及び/又は他のアプローチのような様々な分離技術が、信号の特定及び/又は抽出のために使用され得る。更に、位相多重化を用いる場合に、X線源16は、50%より大きいデューティーサイクルで半周期に限定されない位相差を有して動作することができる。
【0027】
前出の例では、スイッチングパターン50及び76は、約50%のデューティーサイクルを有して異なる周波数(スイッチングパターン50)及び異なる位相(スイッチングパターン76)で駆動される矩形パルスの列又は連続を有する。当然、他の例では、様々なパルス形状(例えば、制限関数、三角形、sinc等。)、周波数、振幅、及び/又はデューティーサイクル(より大きい若しくはより小さい)が使用され得る。50%より大きいデューティーサイクルの使用は、各X線源16が半分以上の時間に放射線を生成して放射しているので、より高い効率性を提供する。
【0028】
集合信号48をサンプリングする場合に、読出周波数(又はサンプリング周波数)は、集合信号48における最高周波数max(fswitch)の少なくとも2倍である(ナイキスト定理)。しかし、1つの例では、複数の重畳信号が信号分離の間に分解されているので、読出周波数はスイッチング周波数の間の最小差min(Δf)の関数でもある。一例として、100マイクロ秒の積分時間は10キロヘルツに対応し、3及び3.5キロヘルツで切り替えられる2つの多重X線信号を分解するために使用されうる。従来のCT画像化によれば、比較的高速なガントリの回転及び比較的多い投影数のために、100マイクロ秒程度の信号積分時間が使用される。1つの例で、より小さいmin(Δf)及びより大きいmax(fswitch)は、より高いサンプルレート(又はより短いフレーム時間)をもたらす。1つの例で、これは、より速いガントリの回転速度を可能にする。
【0029】
図8は、画像化システム10により対象を走査するための限定されない方法を表す。参照番号80で、走査パラメータが初期化される。このステップは、撮像領域22で対象を走査すべくスキャナ12の動作を設定及び/又は制御するよう計算システム44によって実行されるスキャナソフトウェアアプリケーションとの対話を含む。82で、計算システム44は制御部18と交信する。その後、制御部18は、放射線符号化スキーム、スイッチングパターン、デューティーサイクル、分離アルゴリズム等を含め、制御コマンドをX線源16へ伝える。かかる放射線符号化スキームは、周波数、位相、振幅、デューティーサイクル等に基づくことができる。適切なスイッチングパターンがここで説明される。先に論じられたように、各X線源16のデューティーサイクルは、50%より小さいか、50%に等しいか、又は50%より大きく、分離アルゴリズムは、ロックイン増幅器32、サブトラクション34、フーリエ36、ウェーブレット38、及び/又は他(例えば、周波数、位相等。)の技術に基づくことができる。
【0030】
参照番号84で、X線源16の夫々は、そのスイッチングパターンにより一意的に符号化される放射線ビームを生成して放射する。86で、各検出器は、その対応するX線源16によって発せられた一次放射線と、他のX線源16によって発せられた交差散乱放射線とを検出し、ここで論じられるように、一意的に符号化された放射線を表す集合信号を生成する。88で、異なる検出器の夫々の集合信号48は測定されてサンプリングされ(例えば、ナイキスト定理における因数分解(factoring)及びスイッチング周波数管の最小差。)、デカップラ30は、集合信号48から個々の信号の1又はそれ以上を特定及び/又は抽出する。ここに記載される技術を用いて、取り出された信号はX線源16の中のその1つと関連付けられる。
【0031】
90で、再構成システム40は一次信号を再構成し、画像処理装置42は、その再構成されたデータを処理して、対応する画像を生成する。画像は、オペレータによる目視観測、撮影、更なる処理等のために、計算部44に記憶及び/又は供給され得る。
【0032】
ここに記載されるシステム及び/又は方法且つ/あるいはその派生物は、例えば、心臓CTのような(しかし、それだけに限定されない)医療画像用途、動物X線画像化、荷物走査システム、非破壊材料解析若しくは欠陥検出、マシンビジョン(machine vision)、分散ソース(sources)組み込みシステム、産業画像化、光学画像化システム等で利用され得る。
【0033】
本発明は、好ましい実施形態を参照して記載されてきた。当然、上記を読んで理解することで、それら実施形態に対して変更及び代替が行われ得る。本発明は、添付の特許請求の範囲の適用範囲内にある限りこのような変更及び代替の全てを含むと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】符号化されたX線ビームを生成する複数の同時に駆動されるX線源を具える例となる画像化システムを表す。
【図2】同時に駆動されるX線源によって発せられる放射線を一意的に周波数符号化するための例となるスイッチングパターンを表す。
【図3】異なるスイッチングパターンにより周波数符号化された信号成分を含む例となる結合信号を表す。
【図4】集合信号から少なくとも1つの信号を分離する第1の例となる技術を表す。
【図5】集合信号から少なくとも1つの信号を分離する他の例となる技術を表す。
【図6】同時に駆動されるX線源によって発せられる放射線を一意的に位相符号化するための例となるスイッチングパターンを表す。
【図7】異なるスイッチングパターンにより位相符号化された信号成分を含む例となる結合信号を表す。
【図8】異なった同時に駆動されるX線源に対応する一意的に符号化された信号を結合及び分離する例となる方法を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一意的に符号化された放射線を生成するよう異なるスイッチングパターンにより同時に駆動される少なくとも2つのX線源;
夫々が、前記少なくとも2つのX線源の中の対応する1つによって発せられる一次放射線と、前記少なくとも2つのX線源の他の中の少なくとも1つからの交差散乱放射線とを検出して、該検出された一次放射線及び交差散乱放射線を表す集合信号を生成する少なくとも2つの検出器;及び
前記異なるスイッチングパターンに基づき、前記集合信号において前記少なくとも2つのX線源の中の少なくとも1つに対応する少なくとも1つの信号を特定し、該特定された信号をその対応するX線源と関連付けるデカップラ;
を有する断層撮影装置。
【請求項2】
前記特定された信号は前記一次放射線を示す、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項3】
撮像領域内の対象の画像を生成するよう前記一次放射線信号を再構成する再構成システムを更に有する、請求項2記載の断層撮影装置。
【請求項4】
前記異なるスイッチングパターンの夫々は、X線放射線を一意的に周波数符号化するよう互いに異なる周波数で駆動される、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項5】
前記異なるスイッチングパターンは、X線放射線を一意的に符号化するよう符号変調される、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項6】
前記異なるスイッチングパターンは、X線放射線を一意的に位相符号化するよう互いに対して位相シフトされる、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項7】
前記異なるスイッチングパターンの中の少なくとも1つは、50%より大きいデューティーサイクルを有する、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項8】
前記異なるスイッチングパターンは、X線放射線を一意的に符号化するよう互いに異なるデューティーサイクルで駆動される、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項9】
前記異なるスイッチングパターンは、X線放射線を一意的に符号化するよう互いに対して異なる周波数、デューティーサイクル、及び振幅の中の2又はそれ以上と関連する、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項10】
前記デカップラは、前記少なくとも2つのX線源の夫々から前記集合信号への強さ寄与を決定する、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項11】
前記異なるスイッチングパターンを生成する共通発振器及び/又はパターン発生器を更に有する、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項12】
前記少なくとも2つのX線源の中の1又はそれ以上は、そのスイッチングパターンの生成を手助けする制御グリッドを有する、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項13】
前記デカップラは、前記集合信号から前記少なくとも1つの信号を分離するためにサブトラクション法、フーリエ変換、ウェーブレット分解、及びロックイン増幅器の中の少なくとも1つを用いる、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項14】
前記少なくとも2つの検出器は、間接変換検出器及び直接変換検出器の中の1つを有する、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項15】
前記異なるスイッチングパターンの中の少なくとも1つは、略矩形、正弦関数、三角形及びsincパルスの中の1つの連続を有する、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項16】
前記集合信号は、スイッチング周波数間の最小差及び最大管スイッチ周波数の関数としてサンプリングされる、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項17】
前記一次放射線及び前記交差散乱放射線は、心臓のCTスキャンの間に検出される、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項18】
前記少なくとも2つのX線源は、撮像領域に関し回転する、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項19】
前記少なくとも2つのX線源は、撮像領域の近くに固定して位置付けられる、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項20】
医用画像、動物画像、非破壊画像、及び産業画像断層撮影装置の中の1つである、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項21】
CTスキャナを更に有し、該CTスキャナは前記少なくとも2つのX線源を有する、請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項22】
撮像領域に放射線を発する少なくとも2つの同時駆動されるX線源の個々の出力を、異なるスイッチングパターンを有して符号化する工程;
前記少なくとも2つのX線源の中の対応する1つからの一意的に符号化された一次放射線と、前記少なくとも2つのX線源の他の中のもう1つからの一意的に符号化された交差散乱放射線とを含む放射線を検出する少なくとも1つの検出器により、前記少なくとも2つのX線源によって発せられる放射線を同時に検出する工程;
前記検出された一次放射線及び交差散乱放射線を示す成分を有するコンポジット信号を生成する工程;
前記スイッチングパターンに基づき、前記コンポジット信号内で一次放射線信号を見つけて、該一次放射線信号を前記少なくとも2つのX線源の中の対応する1つと関連付ける工程;及び
前記撮像領域内の対象の画像を生成するよう前記一次放射線信号を再構成する工程;
を有する、コンピュータ断層撮影の再構成方法。
【請求項23】
前記コンポジット信号内で交差散乱放射線信号を見つける工程;
前記スイッチングパターンに基づき、前記交差散乱放射線信号を前記少なくとも2つのX線源の中の対応する1つと関連付ける工程;及び
前記交差散乱放射線信号を再構成する工程;
を更に有する、請求項22記載の再構成方法。
【請求項24】
X線放射線を周波数符号化するよう異なるスイッチング周波数を有して前記異なるスイッチングパターンの夫々を生成する工程を更に有する、請求項22記載の再構成方法。
【請求項25】
X線放射線を位相符号化するよう異なる位相を有して前記異なるスイッチングパターンの夫々を生成する工程を更に有する、請求項22記載の再構成方法。
【請求項26】
異なるコードパターンを有してX線放射線を符号化する工程を更に有する、請求項22記載の再構成方法。
【請求項27】
50%より大きいデューティーサイクルを有して前記異なるスイッチングパターンの中の少なくとも1つを生成する工程を更に有する、請求項22記載の再構成方法。
【請求項28】
前記コンポジット信号から前記一次放射線信号を分離するためにサブトラクション法、フーリエ変換、ロックイン増幅器、及びウェーブレット変換の中の少なくとも1つを用いる工程を更に有する、請求項22記載の再構成方法。
【請求項29】
一意的に符号化されたX線ビームを同時に発生させる手段;
前記X線ビームを示す信号を結合する手段;及び
前記結合された信号における個々の信号の中の少なくとも1つを特定し、これをX線源の中の対応する1つと関連付ける手段;
を有する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−540943(P2009−540943A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516637(P2009−516637)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/071101
【国際公開番号】WO2007/149751
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】