説明

マルチディメンジョナルガスクロマトグラフシステム

【課題】2台のGCを組み合わせたMDGCシステムにおける休止実行時の操作性を改善する。
【解決手段】コンピュータ本体40にインストールされた専用のソフトウエアにより具現化される第1制御・処理部41は、両GC装置1、3の休止状態での各部の状態を指示するメソッドファイルを一括して設定するための設定画面を表示する機能と、その設定画面で休止実行が指示されたときに1次GC装置1用のメソッドファイルを読み出して分析制御部17に制御指令を送る機能と、2次GC装置3用のメソッドファイルを第2制御・処理部43へ転送する機能を有する。同じコンピュータ本体40にインストールされた専用のソフトウエアにより具現化される第2制御・処理部43は、転送されてきた2次GC装置3用のメソッドファイルを読み出して分析制御部34に制御指令を送る機能を有する。これにより、第1次、第2次GC装置1、3は連動して休止状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離特性の相違する複数のカラムを用いるマルチディメンジョナルガスクロマトグラフシステムに関し、さらに詳しくは、独立した2台のガスクロマトグラフ装置を組み合わせたマルチディメンジョナルガスクロマトグラフシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境分析、石油化学分析、香料分析などの分野では、多種類の微量成分が含まれる複雑な組成の試料中の各成分を分離して高い感度で定量分析する必要があるが、一般的なガスクロマトグラフ(GC)では複数の成分のピークを完全には分離できず、十分な分析ができない場合も多い。こうした場合に、分離特性の相違する複数のカラムを組み合わせたマルチディメンジョナルガスクロマトグラフ(以下、MDGCと称す)が非常に有用である。
【0003】
MDGCでは、大別して、2つのシステム構成が考えられる。その1つは、第1カラム、第1カラムで成分分離された試料ガス中の各成分を検出する第1検出器、第1カラムとは分離特性の相違する第2カラム、第2カラムで成分分離された試料ガス中の各成分を検出する第2検出器、及び、第1カラムを通過した試料ガスを第2カラム又は第1検出器のいずれか一方に選択的に送るように流路を切り替える流路切替部、を1つのカラムオーブンに収容したシステム構成である。他の1つは、第1カラム、第1検出器、及び流路切替部を1つのカラムオーブン内に収容し、第2カラム及び第2検出器を別の1つのカラムオーブン内に収容したシステム構成である。後者の場合、独立した2台のGCを組み合わせてシステムを構築するのが、一般的である(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
上述のように2台のGCを組み合わせたシステムの場合、システムを制御するためのハードウエアとしてのコンピュータは1台のみでよいが、各GCの分析動作やデータ収集動作は、1台のコンピュータ上でそれぞれ独立に動作する2つの専用の制御・処理ソフトウエアの下で制御されることになる。この2つの制御・処理ソフトウエアはそれぞれ独立したものであるため、分析担当者が分析条件を設定したり、そうした分析条件を全て設定した上で分析開始の指示を行ったり、或いは、途中で分析中止の指示を行ったりする際には、それぞれの制御・処理ソフトウエア上で別々に操作を行う必要がある。具体的には、それぞれの制御・処理ソフトウエアにおいて、所定の操作画面を開いてその画面上に設けられた所定のボタンをクリックする、という操作を2回行う必要がある。
【0005】
ところで、一般にGCでは、カラムへのキャリアガスの供給を完全に停止してしまうとカラムが劣化する或いは次に分析を行う際にカラムを安定状態にするまでに時間が掛かる、カラムオーブンで加熱を停止してしまうと次に分析を行う際に温度が安定するまでに時間が掛かる、などといった問題がある。また、検出器に質量分析計を用いている場合には、真空チャンバ内の真空雰囲気を解除してしまうと再び真空雰囲気に戻すまでに時間が掛かるという問題もある。このような問題を避けるため、システムを使用していないときでも電源を切断せず、カラムには少量のキャリアガスを流し続け、カラムオーブンも或る程度の温度に保ち、検出器としての質量分析計の真空チャンバも或る程度の真空度を保つ状態としておくことが多い。もちろん、このような状態では電力やガスの消費を抑えるために分析時に比べてガス流量を減らし、目標温度や目標真空度を低く設定する(例えば特許文献1参照)。本明細書では、こうした状態を休止状態と呼ぶこととする。
【0006】
上述したように2台のGCを組み合わせたMDGCシステムの場合、分析作業が終了した後にシステムを休止状態にするには、2台のGCをいずれも休止状態にする必要がある。そのため、2つの制御・処理ソフトウエアの操作画面においてそれぞれ休止状態の設定(例えば休止状態におけるガス流量などの条件設定)を行った上で、休止の実行指示を行う必要がある。したがって、分析担当者にとっては操作が二度手間で面倒であるとともに、操作ミス、操作忘れなどを引き起こす一因ともなっている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−304751号公報
【非特許文献1】「複雑なマトリックスから目的成分を高分離!マルチディメンジョナルGCシステム」、[online]、株式会社島津製作所、[平成19年12月11日検索]、インターネット<URL : http://www.an.shimadzu.co.jp/products/gc/mlt-d-gc.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、2台のGCを組み合わせたマルチディメンジョナルガスクロマトグラフシステムにおいて、システムを休止状態にするための操作性を改善することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係るマルチディメンジョナルガスクロマトグラフシステムは、
a)試料気化室、該試料気化室に入口端が接続された第1カラム、該第1カラムで成分分離された試料を検出する第1検出器、前記第1カラムを通過した試料を前記第1検出器又は後記第2カラムのいずれかに選択的に流すように流路を切り替える流路切替部、及び、前記第1カラムと前記流路切替部とを内装する第1カラムオーブン、を含む第1ガスクロマトグラフ装置と、
b)前記第1カラムで成分分離され、前記流路切替部により選択的に送られてくる試料を成分分離する第2カラム、該第2カラムにより分離された試料を検出する第2検出器、及び、前記第2カラムを内装する第2カラムオーブン、を含む第2ガスクロマトグラフ装置と、
c)使用者により操作される操作手段及び表示手段が接続されたコンピュータであって、前記第1ガスクロマトグラフ装置の動作を制御するとともに第1検出器で得られるクロマトグラムデータを収集するための第1制御・処理ソフトウエアが当該コンピュータ上で実行されることにより機能する第1制御・処理部と、前記第2ガスクロマトグラフ装置の動作を制御するとともに第2検出器で得られるクロマトグラムデータを収集するための第2制御・処理ソフトウエアが当該コンピュータ上で実行されることにより機能する第2制御・処理部と、を含むコンピュータと、
を備え、第1及び第2制御・処理部の一方は、
第1ガスクロマトグラフ装置の各部の休止状態と第2ガスクロマトグラフ装置の各部の休止状態とを一括して入力設定可能な設定画面を前記表示手段に表示させる表示制御部と、
使用者が前記設定画面を見ながら前記操作手段により所定操作を行ったとき、その操作に応じた休止状態の設定内容を記憶する記憶部と、
前記設定画面上での操作に応じて又は分析終了イベントの発生に応じて休止実行指示が行われたときに、前記記憶部に記憶された設定内容の中で当該制御・処理部に対応したガスクロマトグラフ装置に対する設定内容に応じた制御信号を該ガスクロマトグラフ装置に送出する休止実行制御部と、
前記設定画面上での操作に応じて又は分析終了イベントの発生に応じて休止実行指示が行われたときに、前記記憶部に記憶された設定内容の中で他方の制御・処理部に対応したガスクロマトグラフ装置に対する設定内容及び休止実行指示をその他方の制御・処理部に転送する転送部と、を含み、
前記第1及び第2制御・処理部の他方は、前記転送部により送られて来た設定内容に応じた制御信号を当該制御・処理部に対応したガスクロマトグラフ装置に送出する休止実行制御部を含む、ことを特徴としている。
【0010】
本発明に係るMDGCでは、例えば、分析担当者が第1制御・処理部の表示制御部により表示画面上に描出される所定の設定画面上で、両GC装置それぞれの休止状態における条件内容の設定を行った上で、例えばマウスのクリック操作等により休止の実行指示を行う。その設定内容は記憶部に一旦格納される。ここで、休止状態の条件の設定は、休止状態での各部の状態(例えばガス流量など)が記述されたファイル名を指定することで行うこともできる。上記休止の実行指示を受けた第1制御・処理部では、休止実行制御部が、記憶部に記憶された設定内容の中で第1ガスクロマトグラフ装置に対する設定内容に応じた制御信号を該ガスクロマトグラフ装置に送出する。これにより、第1ガスクロマトグラフ装置では、指定された条件を満たすように各部が、例えば第1カラムに流れるキャリアガス流量、第1カラムオーブンの温度などが適宜に設定されて、休止状態に入る。
【0011】
これと並行して、転送部は記憶部に記憶された設定内容の中で第2ガスクロマトグラフ装置に対する設定内容及び休止実行指示を第2制御・処理部に転送する。この指示を受けた第2制御・処理部では、休止実行制御部が、転送されてきた第2ガスクロマトグラフ装置に対する設定内容に応じた制御信号を該ガスクロマトグラフ装置に送出する。これにより、第2ガスクロマトグラフ装置でも、指定された条件を満たすように各部が設定されて、休止状態に入る。このようにして、両ガスクロマトグラフ装置はほぼ同時に休止状態に移行する。
【0012】
なお、操作手段からの操作に応じてではなく、分析が終了した後に分析終了イベントを発生し、このイベントに応じた休止実行の指示を行うようにすることもできる。これは、例えば無人運転を行う場合に分析終了後に自動的に休止状態に移行させるのに便利である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るMDGCによれば、システムを休止状態にするために、従来、別々の操作画面上でそれぞれ操作を行う必要があったものが、一方の操作画面上で1回の操作を行うことによりシステムを休止状態に移行させることが可能となる。したがって、分析担当者にとっては操作が非常に簡単になり、操作ミスやそれに起因する不適切な装置状態になることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るMDGCの一実施例について図面を参照して説明する。図1は本実施例によるMDGCシステムの装置構成図、図2は本実施例によるMDGCシステムの流路及び制御系の要部の構成図である。
【0015】
図1に示すように、本実施例のMDGCシステムでは、1次GC装置1と2次GC装置3の2台のGC装置が連結部5により連結され、1次GC装置1には複数用意された試料の中で任意の試料を選択して注入するためのオートサンプラ2が接続されている。1次GC装置1、2次GC装置3の動作を制御するとともにデータを収集して解析処理するためのハードウエアとしてのコンピュータ4は、両GC装置1、3に共通に1台のみ設けられている。
【0016】
図2に示すように、1次GC装置1は、キャリアガス(例えばヘリウムHe)が供給される試料気化室10と、図示しないヒータが付設された第1カラムオーブン11と、試料気化室10に入口端が接続された第1カラム12と、第1カラム12の出口端に接続された流路切替部13と、第1検出器16と、流路切替部13と第1検出器16との間を接続する第1分岐管14と、流路切替部13と2次GC装置3の第2カラム32とを接続する第2分岐管15と、後述する第1制御・処理部41からの指示に基づいて、カラムオーブン11のヒータ、オートサンプラ2、流路切替部13、第1検出器16などの各部に制御信号を送る分析制御部17と、を含む。
【0017】
流路切替部13は例えばディーンズ方式の流路切替装置であり、内蔵した三方バルブで外部から供給されるキャリアガスと同じスイッチングガスの流路を切り替えてガス圧のバランス状態を変化させることで、第1カラム12を通過してきたガスを第1分岐管14と第2分岐管15とのいずれかに択一的に流す。このとき、第1分岐管14と第2分岐管15との他方にはスイッチングガスが供給される。
【0018】
2次GC装置3は、図示しないヒータが付設された第2カラムオーブン31と、第2カラム32と、第2カラム32を通過したガスが導入される第2検出器33と、後述する第2制御・処理部43からの指示に基づいて、カラムオーブン31のヒータ、第2検出器33などの各部に制御信号を送る分析制御部34と、を含む。
【0019】
コンピュータ4は、周知のようにCPU、RAM、ROM、ハードディスク駆動装置などを内蔵するコンピュータ本体40と、キーボード、マウスなどのポインティングデバイスを含む操作部(本発明における操作手段に相当)45と、ディスプレイ(本発明における表示手段に相当)46とを含む。コンピュータ本体40には、1次GC装置1を制御するための制御・処理ソフトウエアと2次GC装置3を制御するための制御・処理ソフトウエアとが、オペレーティングシステム(OS)上で動作するアプリケーションソフトウエアの1つとしてインストールされており、それら制御・処理ソフトウエアが起動されるとそれぞれ第1制御・処理部41及び第2制御・処理部43として機能する。
【0020】
本実施例のMDGCにおける典型的な分析動作の一例を概略的に説明する。
まず1次GC装置1のみを利用したモニタ動作を行う。即ち、試料気化室10を介して第1カラム12に一定流量でキャリアガスを供給している状態で、オートサンプラ2において選択された目的試料を少量だけ試料気化室10内に注入する。注入された試料は即座に気化し、キャリアガス流に乗って第1カラム12に導入され、第1カラム12を通過する間に試料中の各成分は時間的に分離されてその出口端から溶出する。このとき、流路切替部13は第1カラム12から到来するガスの全量が第1分岐管14に流れるように流路が設定されており、分離された成分は第1検出器16に到達して順次検出される。この検出信号を受けた第1制御・処理部41ではクロマトグラムを作成し、これをディスプレイ46の画面上に表示する。
【0021】
分析担当者は上記クロマトグラムを見て詳細に分析したい時間範囲などを決定し、流路切替部13を制御するためのスイッチングプログラムを作成し、2回目の分析を実行する。このときには、目的試料が試料気化室10内に注入された後、スイッチングプログラムで規定されている時間範囲だけ、第1カラム12から到来するガスの全量が第2カラム32に流れるように流路切替部13で流路が切り替わる。したがって、その時間範囲には2次GC装置3の第2カラム32に第1カラム12で一旦成分分離された試料が導入され、高い分離能によって時間的に成分分離される。そのため、第1カラム12では分離できなかった時間的に近接した複数のピークが第2カラム32を通して十分に分離されるようになる。こうして分離された成分が第2検出器33に到達して検出される。この検出信号を受けた第2制御・処理部43ではクロマトグラムを作成し、これをディスプレイ46の画面上に表示する。
【0022】
1次GC装置1、2次GC装置3はもともと独立したGC装置であり、各GC装置は同じ制御・処理ソフトウエアで制御され得る。但し、MDGCの場合には、流路切替部13など単体のGC装置では使用しない構成要素が追加され、また、MDGCに対応したグラフィカルユーザインターフェイスを実現するために各制御・処理ソフトウエアの一部は書き換えられ、それによって第1制御・処理部41と第2制御・処理部43とは全く同一ではない。さらに、本実施例のMDGCでは、第1制御・処理部41の設定画面上で成された特定の設定や指示を第2制御・処理部41に転送することで、両制御・処理部41、43を連動させる機能がそれぞれに組み込まれている。したがって、第1制御・処理部41には、本発明における表示制御部、記憶部、休止実行制御部、及び転送部の機能が内蔵されており、第2制御・処理部43には本発明における休止実行制御部の機能が内蔵されている。
【0023】
なお、上記のように第1制御・処理部41と第2制御・処理部43とを連動させる機能は、既にコンピュータ本体40に2つの制御・処理ソフトウエアがインストールされている状態で追加又は更新プログラムを新たにインストールすることで付加することができる。
【0024】
次に本実施例のMDGCにおける特徴的な動作を説明する。上記のような分析が終了してシステムを休止状態にしたい場合、分析担当者は1次GC装置1に対応付けられた第1制御・処理部41の操作画面上で操作部45により所定の操作を行う。すると、デイリーシャットダウン機能が起動され、ディスプレイ46の画面には、図3に示すようなデイリーシャットダウン設定画面50が表示される。このデイリーシャットダウン設定画面50には、1次GC装置1の休止状態(デイリーシャットダウン状態)での各部の状態を指定するためのメソッドファイル表示欄51、2次GC装置3の休止状態での各部の状態を指定するためのメソッドファイル表示欄52、ファイル表示欄51、52に表示されるメソッドファイルを選択するための選択ボタン53、デイリーシャットダウンを実行するための「OK」ボタン54などが配置されている。
【0025】
デイリーシャットダウン用のメソッドファイルは、予め作成して記憶させておけばよい。図4はこのメソッドファイル作成用の設定画面60の一例である。この例では、GCの各部の設定が可能となっており、カラムオーブンのヒータの温度、試料気化室のヒータの温度、カラムに導入するキャリアガス流量、などをそれぞれ数値で入力できるようになっている。これら各項目のいずれかを設定する必要がある場合には、「GC」プロパティページを開き、必要な項目のチェックボックスをマウスでクリックしてチェックマークを記入し、その項目の数値をキーボードから入力すればよい。こうして必要な項目について入力設定が終わったならば、「記憶」ボタン61をクリックして入力設定された数値をファイル化する。入力設定すべき項目は使用される検出器の種類などによっても相違する。
【0026】
分析担当者がデイリーシャットダウン設定画面50で適宜のメソッドファイルを1次GC装置1及び2次GC装置3に対してそれぞれ設定した上で、「OK」ボタン54をクリック操作すると、休止実行の指示が第1制御・処理部41に与えられる。この指示を受けて、第1制御・処理部41は1次GC装置1に対応したメソッドファイルの内容を読み出し、その内容に従って分析制御部17に制御指令を送ることで、1次GC装置1の各部の状態をメソッドファイルに指示されている状態に移行させる。これにより、一般的には、試料気化室10や第1カラムオーブン11の設定温度が下がり、試料気化室10を経てカラム12へ送給されるキャリアガス流量は減少する。
【0027】
同時に、第1制御・処理部41は2次GC装置3に対応したメソッドファイルの情報(例えばファイル名)を第2制御・処理部43へと転送し、休止実行指示も送る。この指示を受けて、第2制御・処理部43は2次GC装置3に対応したメソッドファイルの内容を読み出し、その内容に従って分析制御部34に制御指令を送ることで、2次GC装置3の各部の状態をメソッドファイルに指示されている状態に移行させる。これにより、一般的には、第2カラムオーブン32の設定温度が下がり、第2検出器33が質量分析計である場合には、その真空チャンバ内の真空度も下がる。
【0028】
以上のようにして、1次GC装置1に対応した第1制御・処理部1の操作画面上で所定の操作を行うだけで、1次GC装置1、2次GC装置3ともに休止状態に移行させることができる。なお、こうした休止状態の際には、コンピュータ本体1自体もシャットダウンさせたりスタンバイモードに移行させたりすることができる。
【0029】
上記説明は、分析担当者が手動でシャットダウンを実行させる場合であるが、例えば、自動連続分析が終了した後に自動的にシャットダウンを行うようにすることもできる。その場合には、手動による休止実行指示と同様の指示を分析終了イベントに同期して発生させ、これを受けて第1制御・処理部41が上記のような動作を行うようにすればよい。
【0030】
また上記実施例は一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例によるMDGCシステムの装置構成図。
【図2】本実施例によるMDGCシステムの流路及び制御系の要部の構成図。
【図3】本実施例によるMDGCシステムにおけるデイリーシャットダウン設定画面の一例を示す図。
【図4】本実施例によるMDGCシステムにおけるメソッドファイル作成用の設定画面の一例を示す図。
【符号の説明】
【0032】
1…1次GC装置
10…試料気化室
11…第1カラムオーブン
12…第1カラム
13…流路切替部
14…第1分岐管
15…第2分岐管
16…第1検出器
17…分析制御部
2…オートサンプラ
3…2次GC装置
31…第2カラムオーブン
32…第2カラム
33…第2検出器
34…分析制御部
4…コンピュータ
40…コンピュータ本体
41…第1制御・処理部
43…第2制御・処理部
45…操作部
46…ディスプレイ
5…連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)試料気化室、該試料気化室に入口端が接続された第1カラム、該第1カラムで成分分離された試料を検出する第1検出器、前記第1カラムを通過した試料を前記第1検出器又は後記第2カラムのいずれかに選択的に流すように流路を切り替える流路切替部、及び、前記第1カラムと前記流路切替部とを内装する第1カラムオーブン、を含む第1ガスクロマトグラフ装置と、
b)前記第1カラムで成分分離され、前記流路切替部により選択的に送られてくる試料を成分分離する第2カラム、該第2カラムにより分離された試料を検出する第2検出器、及び、前記第2カラムを内装する第2カラムオーブン、を含む第2ガスクロマトグラフ装置と、
c)使用者により操作される操作手段及び表示手段が接続されたコンピュータであって、前記第1ガスクロマトグラフ装置の動作を制御するとともに第1検出器で得られるクロマトグラムデータを収集するための第1制御・処理ソフトウエアが当該コンピュータ上で実行されることにより機能する第1制御・処理部と、前記第2ガスクロマトグラフ装置の動作を制御するとともに第2検出器で得られるクロマトグラムデータを収集するための第2制御・処理ソフトウエアが当該コンピュータ上で実行されることにより機能する第2制御・処理部と、を含むコンピュータと、
を備え、第1及び第2制御・処理部の一方は、
第1ガスクロマトグラフ装置の各部の休止状態と第2ガスクロマトグラフ装置の各部の休止状態とを一括して入力設定可能な設定画面を前記表示手段に表示させる表示制御部と、
使用者が前記設定画面を見ながら前記操作手段により所定操作を行ったとき、その操作に応じた休止状態の設定内容を記憶する記憶部と、
前記設定画面上での操作に応じて又は分析終了イベントの発生に応じて休止実行指示が行われたときに、前記記憶部に記憶された設定内容の中で当該制御・処理部に対応したガスクロマトグラフ装置に対する設定内容に応じた制御信号を該ガスクロマトグラフ装置に送出する休止実行制御部と、
前記設定画面上での操作に応じて又は分析終了イベントの発生に応じて休止実行指示が行われたときに、前記記憶部に記憶された設定内容の中で他方の制御・処理部に対応したガスクロマトグラフ装置に対する設定内容及び休止実行指示をその他方の制御・処理部に転送する転送部と、を含み、
前記第1及び第2制御・処理部の他方は、前記転送部により送られて来た設定内容に応じた制御信号を当該制御・処理部に対応したガスクロマトグラフ装置に送出する休止実行制御部を含む、ことを特徴とするマルチディメンジョナルガスクロマトグラフシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate