マルチビュー表示装置
マルチビューディスプレイは、第1の及び第2の反射層並びに前記反射層間に配置された発光層により形成される光キャビティを持つ発光素子を有し、少なくとも前記第2の反射層は半透明であり、前記光キャビティは、少なくとも2つの好適な観察方向に放射された光が他の方向に放射された光より高い強度を持つように設計される。本発明は、前記光キャビティ内の干渉現象に基づき、他の方向より前記好適な観察方向に多くの光を本質的に放射する発光素子を実現することを可能にする。この発光プロファイルは、前記発光素子をマルチビューディスプレイにおいて非常に有用にし、クロストークの問題を軽減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビュー(multi view)ディスプレイ、すなわちいずれの方向から見られるかに依存して異なる画像情報を同時に提供するように構成されたディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなマルチビューディスプレイは、例えば、自動車のミッドコンソール(midconsole)に取り付けられることができ、運転手及び乗客に対して異なる画像を表示することができる、自動車用アプリケーションにおいて有用である。
【0003】
特別な場合(デュアルビュー、dual view)は、法線方向に低い発光を持ち、左右に傾いた角度(例えば+/−30度)で通常の画像を提供するディスプレイである。
【0004】
このようなデュアルビューディスプレイは、幾つかの方法で構成されることができる。周知の方法は、従来のディスプレイ(例えばLCD)上にバリア層を挿入することによる。前記バリア層は、縦方向に位置合わせされたスリットの水平アレイからなる。これらの開口は、1つのディスプレイ画素からの光が、ディスプレイ法線の左への視角の下で見えることを可能にし、近隣の画素からの光が右の傾いた角度の下で見えることを可能にする。このように、2つの独立した画像が、1つは左に、1つは右に、表示されることができる。このようなディスプレイの一例はGB2403367において与えられる。
【0005】
しかしながら、ディスプレイ法線に近い方向において、両方のビューが見え、これは"クロストーク"として知られる現象である。この角度から前記ディスプレイを見る観察者は、1つの画像に融合されたビュー1及びビュー2の画像を見る。これは、望ましくなく、自動車用アプリケーションにおいて、運転手の気を散らすので、危険な状況である可能性がある。
【0006】
この問題を解決するために、バックライトが、所望の方向に発光するように修正される必要があるか、又は前記ディスプレイ自体が、不所望な方向への光の透過を防ぐように修正される必要があるかのいずれかである。2つの可能な解決法が提案されている。
‐二重カラーフィルタが、カラーフィルタとして及びバリア層としての両方で機能する。これは、問題を解決するが、既存の部品と位置合わせされる必要がある新しい光学部品の使用を必要とし、したがって高価になると予測される。
‐特別に設計されたLCモードが、前方向において光を吸収する性質を持つ。このようなLCDと上記バリア層を組み合わせることにより、クロストーク問題を解決する。しかしながら、この解決法は、特別に設計されたLCDの使用を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の態様の目的は、これらの問題を克服又は少なくとも軽減することであり、クロストークの無い又は少ないデュアルビューディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この及び他の目的は、第1の及び第2の反射層並びに前記反射層間に配置された発光層により形成される光キャビティを含む発光素子を有するマルチビューディスプレイにより達成され、少なくとも前記第2の反射層は半透明であり、前記光キャビティは、少なくとも2つの好適な観察方向に放射された光が、他の方向に放射された光より高い強度を持つように設計される。一例として、前記ディスプレイの法線に沿って放射された光は、前記法線に対して視角をなして放射された光より低い強度を持つ。
【0009】
本発明の目的に対して、強度という用語は、単色発光(に近い)の場合には1つの波長における光強度として使用され、又は非単色光の場合には関与する関連波長に対して積分された光強度として使用される。
【0010】
本発明は、前記光キャビティにおける共振現象に基づき、これは、他の方向より優先的な観察方向において多くの光を本質的に放射する発光素子を実現することを可能にする。この発光プロファイルは、前記発光素子をマルチビューディスプレイにおいて非常に有用にし、クロストークの問題を軽減する。
【0011】
所望の発光プロファイルは、前記光キャビティの光学的性質を調整することにより実現される。前記発光に対する前記光キャビティの主要な効果は、可能なキャビティモードに対応する特定の波長のみが所定の方向に放射されるように光子状態密度を再分配することである。
【0012】
好適な実施例によると、発光層は、エレクトロルミネセント材料を有する。例えば、前記発光素子は、例えば、小分子有機物(smOLED)又はポリマ有機物(pLED)に基づく有機発光ダイオード(OLED)であることができる。
【0013】
法線に沿って放射される光強度と、前記法線の両側における所定の面内に前記法線に対して所定の視角をなして放射される光強度との間の比は、好ましくは、2を超過し、更に好ましくは5を超過する。約13の比が、満足な結果を提供することが示されている。
【0014】
好ましくは、前記面内における視角の関数としての放射される光強度は、本質的に前記視角において最大値を持ち、本質的に前記法線方向において最小値を持つ。このような設計は、上述の比を増大させる。
【0015】
前記光キャビティは、好ましくは、実部が1.5より小さく、好ましくは1.45より小さく、最も好ましくは1.4より小さい屈折率を持つ少なくとも1つの層を含む。
【0016】
前記第2の半透明反射層は、好ましくは、0.5より大きく、好ましくは0.7より大きく、最も好ましくは0.8より大きな反射率を持つ。反射率のこのような値が、前記キャビティを設計するために有利な条件を提供することが示されることができる。より大きな反射率は、より強調されたピークを持つ発光プロファイルを生じ、したがって上述の比を増大させる。前記第1の反射層は、好ましくは完全な反射板(reflector)であり、すなわち反射率は1に等しい。
【0017】
前記発光材料は、好ましくは、典型的には100nm以下、好ましくは50nm以下の狭い波長範囲内の光を放射するように構成される。特別な場合には、前記発光材料は、単色光を放射するように構成される。これは、上の基準による設計を実施するのを容易にする。しかしながら、本発明は、決して単色光に限定されず、所要の光強度分布は、光のスペクトル分布でも達成されることができる。この場合、上記の方程式は、波長領域内で考慮されなければならず、放射スペクトルと比較されなければならない。
【0018】
前記発光素子は、バックライトとして機能するように構成されることができ、この場合、前記ディスプレイは、前記バックライトから放射された光を変調する光変調パネル(例えばLCD)を更に有する。代わりに、前記発光素子は、ディスプレイドライバにより制御可能であるアドレス可能なディスプレイパネルを形成するためにパターン化画素構造(patterned pixel structure)で構築される。
【0019】
本発明の第2の態様の目的は、マルチビューディスプレイの垂直な視角範囲、例えば、水平方向に差別化された視野を持つマルチビューディスプレイにおける縦方向の視角範囲を向上することである。
【0020】
本発明のこの態様は、マルチビュー画像を生成する手段、及び前記画像を生成する手段と観察者との間に配置された非対称拡散板(asymmetric diffuser)を有するマルチビューディスプレイに関し、前記非対称拡散板は、本質的に一方向のみに光を散乱するように構成される。このような拡散板は、発光プロファイルを一方向に伸ばし、細長くする効果を持つ。前記非対称拡散板を正しい方向に向けることにより、これは、前記ディスプレイのマルチプルビューの角度的な広がりに垂直な方向に改良された角度的視角を提供する。例えば、前記ディスプレイが、水平方向に異なる視野領域を持つように構成される場合、前記非対称拡散板は、前記発光プロファイルを縦方向に伸ばすような方向に向けられることができ、したがって、前記観察者の縦の位置におけるより大きな変化を許容する。
【0021】
本発明の前記第2の態様は、前記第1の態様と有利に組み合わされることができ、すなわち前記マルチビュー画像を生成する手段は、光キャビティを有することができる。前記光キャビティから放射された光は、典型的には円対称であるので、前記非対称拡散板は、前記角度的な視角を大幅に向上させる。
【0022】
本発明のこの及び他の態様は、本発明の現在好適である実施例を示す添付の図面を参照してより詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下の記載は、マルチビューディスプレイの一例としてデュアルビューディスプレイに基づく。デュアルビューディスプレイは、自動車用アプリケーションに対して使用されることができ、異なる方向に異なる画像を表示することができる。図1に示されるアプリケーションの一例は、運転手側2の方向に1つの画像を提示し、乗客側3の方向に他の画像を提示するデュアルビューディスプレイ1である。例えば、ディスプレイ1は、運転手にルートプランナ(route planner)を示しながら、乗客が電子メールを読む、映画を見る又はゲームをすることを可能にする。安全面の理由から、前記運転手は、前記乗客に示される情報を見ることを可能にされない。典型的な自動車用アプリケーションにおいて、前記運転手及び乗客を対象とする視野領域は、図2aに示される要件を満たすべきである。図2aから、前記ディスプレイが前記ディスプレイ表面に対する法線を中心とする角度範囲φ1において情報を表示すべきでなく、前記法線の左の角度範囲φ2において第1の画像を表示し、右の角度範囲φ3において第2の画像を表示する。図2bは、視角、この場合には水平方向の視角の関数として強度の対応する図を示す。この関数は、理想的には、典型的には30°ないし40°辺りのθviewに対してθ=θviewにおいて最大値を持ち、θ=0においてゼロ強度を持つべきである。
【0024】
本発明の図示された実施例によると、前記ディスプレイは、所望の視野領域を実現するのに適した発光プロファイルを持つように設計された、光キャビティを含む発光素子に基づく。一例として、前記光キャビティは、OLED技術に基づくことができる。前記発光素子は、ディスプレイドライバにより制御されるべき多数の個別にアドレス可能な画素を有し、これによりディスプレイ全体を形成することができる。代わりに、前記発光素子は、適切な変調技術(例えばLCD)と組み合わせてバックライトとして機能することができる。
【0025】
図3は、基板10と、2つの反射面11及び12(少なくとも一方は半透明であり、光がキャビティから放射されることを可能にする)と、光生成層14が配置される空間13とを有する光キャビティの基本構造の展開図を示す。例えば、前記面の一方は、不透明であることができ、他方は半透明であることができる。代替的には、両方の面が半透明である。明確性のため、図は、画素レイアウト及びカプセル化の詳細を図示しない。
【0026】
この構造において、前記光キャビティの干渉特性は、多数の性質により規定され、最も重要なのは、反射面11と12との間の光学的距離d、層14内の光生成の場所と前記キャビティの非発光側の反射面11との間の光学的距離d1、並びに前記2つの反射面の反射率r1及びr2である。光学的距離d及びd1は、対応する物理的距離及び空間13内の材料の屈折率の関数である。前記発光材料が空間13内の材料のみである単純な場合には、前記光学的距離は、単純にこの材料の屈折率により乗算された前記物理的距離である。異なる材料の複数の層が存在する場合、前記光学的距離は、より複雑な関数になる。
【0027】
距離d1に関して、光が、典型的には、前記発光層の厚さの小さな部分のみで生成されることに注意することは重要である。例えば、pLEDの場合には、前記発光層は、多くの場合、約100nmの厚さを持ち、光は、"再結合領域(recombination zone)"においてのみ生成される。
【0028】
表面11及び12の反射特性は、金属又は半透明導電フィルムを場合により誘電性保護膜と組み合わせて使用することにより得られることができる。多くの場合、下で図4に示されるように、発光デバイスは、異なる屈折率を持つ多くの層を含み、反射は、各接触面において起こりうる。通常は、しかしながら、前記発光層のいずれの側においても、前記デバイス内の光学的干渉効果に対して支配的である反射面が識別される。
【0029】
一例として、図4は、OLEDに基づく光キャビティの設計を示し、ここでpLEDスタックが、上部発光pLEDにおける緑エミッタに対応する。ここで、底面11(基板10の直接上にある)は、AG反射板16である。上面12は、ZnSeの40nmの厚さの層17により形成された電極でコーティングされたAg(半透明)の15nmの厚さの層18である。空間13において、375nmのITO電極15と、緑LEPの80nmの厚さの層19及び220nmの厚さのPEDOT層21を有する光生成層14とが配置される。様々な層、特に前記ITO及びPEDOTの厚さは、前記pLEDスタックにおいて、結果として生じる光キャビティが所望の角度発光プロファイルを示すように決定されている。
【0030】
図5は、図4における例の前記スタックから計算された角度発光プロファイルを示す。図5から明らかなように、光は、傾いた角度(30°ないし50°)の下で主に放射される。前記計算は、双極子遷移による光子の放出に対する量子力学的放射性崩壊速度と、古典的な基本的双極子アンテナにより放射されるパワーとの間の等価性を使用して、マイクロキャビティにおける光学的干渉効果のシミュレーションに基づく。これは、例えば、"Simulation of light emission from thin-film microcavities", Kristiaan A. Neyts, J. Opt. Soc. Am. A, Vol 15, no 4, April 1998に記載されている。図示された例において、前記法線に沿って放射された光と30°に沿って放射された光との間の比は13である。
【0031】
同様に、サブ画素の光キャビティは、赤及び青発光に対して最適化されることができる。ディスプレイが、カラーフィルタと組み合わせて白色発光有機材料を有する場合、前記サブ画素は、所望の角度発光プロファイルによって光を放射するように最適化されることもできる。
【0032】
OLEDからの発光が、典型的には円対称であることに注意すべきである。結果として、前記角度発光プロファイルは、全ての方位角に対して、すなわち図6に図示されるように光の原点から所定の距離において、得られる。非対称拡散層は、前記光の散乱を一方向に促進し、他の方向に光を散乱しないように設けられることができる。追加のバリアが、前記視野を更に分割するために設けられることもできる。
【0033】
以下、所望のキャビティモードを達成するための幾つかの設計規則及び条件が、図7ないし11を参照して記載される。
【0034】
図7は、図3における前記光キャビティの一部の側面図を示す。参照番号11及び12は、前に使用されており、参照番号24は、ここで、光が生成される前記発光層の面を示す。
【0035】
2つのタイプの共振、すなわち広角共振(wide-angle resonance)及び多ビーム共振(multiple-beam resonance)が、このような光キャビティで生じる。ここで、共振という用語を全ての積極的な干渉効果を示すために使用する。前記共振は、前記反射面の間の光学的距離d及び前記発光層の位置、すなわち前記発光層内の光生成の場所と反射面11との間の光学的距離d1に依存する。以下の表現において、反射面11と12との間に1つの媒体のみが存在し、前記光学的距離をこの材料の屈折率neの実部により乗算された物理的距離に等しくすると仮定される。
【0036】
広角共振は、(半透明電極12に向かう)前記観察者の方向に直接的に放射される光と、反対の反射面から反射される光(図5における点線25及び26)との干渉に関係する。光出力の上昇(enhancement)(又は抑制、suppression)は、波長λ、光学的距離d1、視角θに依存する。共振条件(最大上昇)は、
φ1+2π(2d1/λ)cosθ'=N2π (1)
であり、ここで、φ1は、面11における反射から生じる位相シフトであり、neは、前記媒体の屈折率(の実部)であり、Nは整数である。内部伝播角度(internal propagation angle)θ'は、スネルの法則、
sinθ=nesinθ' (2)
により与えられる。
【0037】
発光上昇は、
φ1+2π(2d1/λ)cosθ'=(N+(1/2))2π (3)
である場合に最小である。
【0038】
多ビーム共振は、何回も行ったり来たり反射される広角干渉から生じる光(図7における点線27及び28)の間の干渉の結果である。この場合、前記共振は、波長λ、光学的距離d及び視角θに依存し、共振条件(最大上昇)は、
φ1+φ2+2π(2d/λ)cosθ'=M2π (4)
であり、ここでMは整数であり、φ2は半透明面12における反射から生じる位相シフトである。
【0039】
典型的には−π<φ1,φ2<0であるので、N及びMの最小値はゼロである。上述のように、他の材料が、前記発光媒体に加えて前記反射面間に存在する場合、式(1)、(3)及び(4)は、より複雑な式により置きかえられなければならないが、共振現象は極めて似ており、特定のλ及びθに対する共振は、光学的厚さの同様の値において生じる。
【0040】
視角の関数としての所望の強度分布の一例が、図2bに示される。設計規則を形成する際に、2つの場合、すなわち、1)発光が(仮想的に)単色である場合、2)発光スペクトルが大きな幅を持つ場合が、識別されることができる。前者は、デュアルビューディスプレイにおいて光分布に対して最良の制御を提供する理想的な場合である。1つの規則は、両方の場合に適用される。最大光出力に対して、反射面11における反射率r1の絶対値は、可能な限り1に近くなくてはならない(例えば、Agが非常に良い反射板である)。これは、θ=0における最小の可能な強度最小値の作成をも可能にし、すなわち、|r1|=1に対して、広角共振最小値において完全に有害な干渉が存在する。
【0041】
単色発光
一般に、厳密にθ=θviewにおいて広角共振最大値を持ち、厳密にθ=0において最小値を持つことは可能ではない。しかしながら、厳密にθ=θviewにおいて共振最大値を持ち、θ=0の近くで最小値を持つ、又は厳密にθ=0において共振最小値を持ち、θ=θviewの近くで最大値を持つことは可能である。両方の場合において、光学的距離d1は、
【数1】
に近くなくてはならず、ここでθ'viewは、式(2)のようにスネルの法則によりθviewに関連する。これは、θ'=0の場合の式(3)からθ'=θ'viewの場合の式(1)を減算し、θの関数としてφ1の小さな変化を無視することから得られる。
【0042】
厳密にθ=θviewにおいて共振最大値を持つために、光学的距離d1は、θ'=θ'view(N=1,2,3,...)の場合の式(1)を満たし、可能な限り
に近いものが選択されなければならない。厳密にθ=0において共振最小値を持つためには、光学的距離d1は、代わりに、θ'=0の場合の式(3)を満たし、再び可能な限り
に近いものが選択されなければならない。
【0043】
多ビーム共振最大値は、広角最大値と一致すべきである。したがって、光学的距離dは、θ'=θ'viewの場合の式(4)が満たされるように選択されなければならない。明らかに、M≧Nであり、M=Nを選択することが有利であることが分かっている。
【0044】
実際には、特定の許容誤差を許容する必要があるかもしれず、(整数を除く)上述のパラメータの数値が、所定の関係を厳密に満たす値から約10%、好ましくは5%以下外れることを許容されることができることが分かっている。
【0045】
図8は、(厳密にθ=0において共振最小値を持つ)このように得られた強度分布の一例を示す。銀が反射板として使用され、半透明面12における反射率r2の絶対値は0.3であり、前記キャビティは、緑LEP材料からなる。光学的距離d1は約2400nmであり、M=Nである。
【0046】
前記デバイスが上記のように最適化される場合、常に前記強度分布内に第2の最大値が存在する(図8参照)。これは不所望でありうる。式(1)を満たす系列からより小さなd1(より小さなN)を選択することは、前記第2の最大値をより大きなθに移動し、最終的に除去する(図9参照)。しかしながら、より小さなd1は、前記共振最小値がもはやθ=0に又は近くになく、結果として、前記強度分布の最大値及び最小値の好適でない比を生じることをも意味する。これを補償するために、前記多ビーム共振は、θ=θviewの周りにより強力にピークを作成されることができる。前記ピークの幅(FWHM)は、積|r1r2|及び光学的距離dに依存する。したがって、前記幅を減少する2つの方法が存在し、すなわち|r2|を増大する及び/又はdを増大する。前記半透明面における反射の強度は、例えば、金属層の厚さを変えることにより、又は金属層に隣接する高い屈折率を持つ層の厚さを変えることにより調整されることができる。より大きな|r2|の追加の利点は、より大きな共振強度上昇である。前記多ビーム共振の幅は、視野の所望の幅より小さくされるべきでない。dの増大に関して、多ビーム共振が前記強度分布において見える第2の最大値を生成することを防ぐために、MがNより大幅に大きくてはならないことに注意すべきである。
【0047】
図9は、図7に対して使用されたものと同様であるが、約1500nmの光学的距離d1及び|r2|=0.7を持つデバイス構成に対する強度分布を示す。
【0048】
スペクトル分布を持つ発光
この場合、問題は、波長領域において考慮されるべきである。図10は、θ=0に対して、波長の関数としてキャビティ共振による発光強度上昇を示す。ピーク間の波長における距離は、光学的距離d1に依存し、すなわち、d1が大きければ、前記距離はより小さい。これは、前記波長領域における幅(FWHM)が減少されることをも意味する。広角共振及び多ビーム共振の性質は同様である。前記共振最大値の波長位置は、視角と共にシフトする。
【0049】
λmax(θ)は、特定の共振最大値(所定のd1及びNを持つ広角又は所定のd及びMを持つ多ビーム)に対応する波長を示すとする。前記キャビティが、前記発光媒体のみを含み、θに対するφ1及びφ2の依存性が無視される場合、式(1)及び(4)から、
λmax(θ)=λmax(0)cosθ' (6)
という結果になる。したがって、前記共振最大値は、視角がθviewに増加する場合、
Δλmax=λmax(0)(1−cosθ'view) (7)
だけシフトし、波長を下げる。
【0050】
図10は、一例として、緑LEPのスペクトルをも示す。前記スペクトルに対する前記共振の重複は、観察者に向かって放射される強度を決定する。デュアルビューディスプレイに対して、前記重複は、共振ピークが式(6)及び(7)により記載されるようにシフトされる場合、θ=0において最小であり、θ=θviewにおいて最大であるべきである。これは、
i:前記共振最大値間の波長距離が、広角及び多ビーム干渉に対してほぼ同じである場合、すなわちN=Mである場合、
ii:この距離が、少なくともおよそスペクトル幅Δspecである場合に、
最良に実現されることができる。位相シフトφ1及びφ2が−π(理想的な鏡に対する値)として近似されることができると仮定すると、これは、要件
600nm/(M+2)>Δspec (8)
を導き、ここで、600nmは、関連する共振に対するλmax(0)の特性値として使用される。
【0051】
λ0は、前記共振最大値がλ0にある場合に前記スペクトルと典型的な共振ピークとの間の重複が最大であるような波長であるとする。最適なデバイスにおいて、光学的厚さdが、関連する共振に対するλmax(θview)がλ0に近いように選択されなければならないことは明らかである。これに関連してλ0を支配的波長と称する。
【0052】
θ=θview及びθ=0における放射される強度の比は、シフトΔλmaxが、少なくとも前記スペクトルの高波長半値幅(high-wavelength half-width)Δ+spec(スペクトルの最大値と高波長端との間の波長距離)である場合に更に最適化される。主にLEP材料で埋められたキャビティに対して、Δλmaxは、典型的には、Δ+specより大幅に小さい。これは、前記キャビティに低n層を含むことにより増大されることができる。低nは、ここで、前記材料が可視スペクトルにおいて透明であり、前記可視スペクトルの少なくとも一部に対してRen1<1.4を持つ屈折率n1を持つことを意味する。前記デバイスの動作に必要とされる前記低n層は、前記キャビティ内の層に加えられ、典型的には屈折率n>1.4を持つ。増大されたシフトは、(neがn1により置き換えられた)式(3)により規定されるように、高n材料における比較的小さな伝播角度θ'の結果である。前記低n層が可能な限り平均θ'に対して支配的であるように、所要の層に最小の厚さを与えることは好ましい。前記シフトに対する上限は、
750nm(1−cosθview) (9)
により与えられ、ここで750nmはλmax(0)に対する限界として使用されている。前記キャビティ全体においてn=1を仮定することから得られる。
【0053】
式(8)を満たすM値に対応する光学的厚さdは、Δλmaxを大幅に増大させるのに十分な低n材料を含めることを可能にするには小さすぎるかもしれない。(図10の例のように)広域スペクトルに対して、わずかに高いMは、より良い強度比を与えることができる。より高いMがより大きなd、したがって、1)より多い低n材料及びより大きなΔλmax、2)より小さな共振幅を意味することに注意する。より小さな共振幅は、前記強度比において波長λmax(θview)におけるスペクトル強度とλmax(0)におけるスペクトル強度との間の差をより良く反映する。多ビーム共振のFWHMが、積|r1r2|に依存するので、これは、前記半透明面における反射率で調整されることができる(|r1|が常に大きくなくてはならないことを念頭に置く)。より大きな|r2|は、より狭い共振を与え、したがってより良い強度比を与える。スペクトルと共振との間の最大重複が減少されるので、欠点は、より低い最大強度である。
【0054】
前記共振最大値は、2つの偏光TE及びTMに対してわずかに異なる波長において生じる。したがって、完全な最適化は、両方の寄与を考慮に入れる妥協でなければならない。
【0055】
図10に示される強度上昇は、約850nmの光学的厚さdを持つデバイス構成に対するものであり、このうち650nmは低n材料であり、N=M=2であり、|r2|=0.7である。これは、TE偏光及びθ=0に対する状況を示す。θ=θviewに対する対応する上昇プロファイルは、図11に示される。ここで、前記共振ピークと前記緑LEPのスペクトルとの間の重複は、最大である。視角の関数としての結果として生じる強度プロファイルは、図12にプロットされる。このプロファイルにおいて、TE及びTM偏光の両方が考慮される。約350nmへの前記低n層の減少(合計光学的厚さdは、この場合、約550nmであり、N=M=1である)は、前記共振ピーク間の距離を増大し、したがって、前記強度プロファイルにおいて65°に近い第2の最大値の抑制を可能にする。しかしながら、より小さなシフトΔλmax及びより幅広い共振ピークは、より小さな強度比を与える。前記より幅広い共振の利点は、より高い最大強度である。前記例において使用された緑LEPのスペクトルは、高波長端部においてロングテールを持つ。小分子OLEDのスペクトルは、典型的には、より狭く、より良い強度比を可能にする。
【0056】
前記共振が視角と共にシフトする場合、前記スペクトルの異なる部分が強調される。これは、前記強度の減少が、放射される光の色の変化を伴うことを意味する。これは、カラーフィルタにより抑制されることができ、これは既知である。
【0057】
当業者は、本発明が決して上述の好適な実施例に限定されないことに気が付く。反対に、多くの修正例及び変更例が、添付の請求項の範囲内で可能である。例えば、光キャビティを有し、したがって所望の角度発光プロファイルによって光を放射するように調整されることができる多くの異なるOLED構造が存在することに注意すべきである。更に、小分子有機物及びポリマベースの有機物の両方が、光生成に使用されることができる。法線に沿った光と傾いた角度に沿った光との間の比を更に向上するために、バリアが、例えば前記ディスプレイの法線に沿って全ての不所望な光を遮るように挿入されることもできる。このようなバリアの例は既知である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】どのようにデュアルビューディスプレイが自動車において有用であることができるかを図示する。
【図2a】デュアルビューディスプレイに対する所望の視角範囲を図示する。
【図2b】図2aの性能に対応する視角の関数として放射される光強度の図を示す。
【図3】OLED構造を概略的に示す。
【図4】本発明の一実施例によるOLED設計の一例を示す。
【図5】図4のOLEDからの発光プロファイルを示す。
【図6】遠視野におけるx/y平面に投影された発光プロファイルを示す。
【図7】2つの反射面の間の光キャビティにおける共振を図示する。
【図8】本発明の第1の実施例による光キャビティに対する発光強度プロファイルを示す。
【図9】本発明の第2の実施例による光キャビティに対する発光強度プロファイルを示す。
【図10】θ=0に対する波長の関数としてのキャビティ共振による発光強度上昇の一例を示す。
【図11】θ=θviewに対する波長の関数としてのキャビティ共振による発光強度上昇の一例を示す。
【図12】本発明の第3の実施例による光キャビティに対する発光強度プロファイルを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビュー(multi view)ディスプレイ、すなわちいずれの方向から見られるかに依存して異なる画像情報を同時に提供するように構成されたディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなマルチビューディスプレイは、例えば、自動車のミッドコンソール(midconsole)に取り付けられることができ、運転手及び乗客に対して異なる画像を表示することができる、自動車用アプリケーションにおいて有用である。
【0003】
特別な場合(デュアルビュー、dual view)は、法線方向に低い発光を持ち、左右に傾いた角度(例えば+/−30度)で通常の画像を提供するディスプレイである。
【0004】
このようなデュアルビューディスプレイは、幾つかの方法で構成されることができる。周知の方法は、従来のディスプレイ(例えばLCD)上にバリア層を挿入することによる。前記バリア層は、縦方向に位置合わせされたスリットの水平アレイからなる。これらの開口は、1つのディスプレイ画素からの光が、ディスプレイ法線の左への視角の下で見えることを可能にし、近隣の画素からの光が右の傾いた角度の下で見えることを可能にする。このように、2つの独立した画像が、1つは左に、1つは右に、表示されることができる。このようなディスプレイの一例はGB2403367において与えられる。
【0005】
しかしながら、ディスプレイ法線に近い方向において、両方のビューが見え、これは"クロストーク"として知られる現象である。この角度から前記ディスプレイを見る観察者は、1つの画像に融合されたビュー1及びビュー2の画像を見る。これは、望ましくなく、自動車用アプリケーションにおいて、運転手の気を散らすので、危険な状況である可能性がある。
【0006】
この問題を解決するために、バックライトが、所望の方向に発光するように修正される必要があるか、又は前記ディスプレイ自体が、不所望な方向への光の透過を防ぐように修正される必要があるかのいずれかである。2つの可能な解決法が提案されている。
‐二重カラーフィルタが、カラーフィルタとして及びバリア層としての両方で機能する。これは、問題を解決するが、既存の部品と位置合わせされる必要がある新しい光学部品の使用を必要とし、したがって高価になると予測される。
‐特別に設計されたLCモードが、前方向において光を吸収する性質を持つ。このようなLCDと上記バリア層を組み合わせることにより、クロストーク問題を解決する。しかしながら、この解決法は、特別に設計されたLCDの使用を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の態様の目的は、これらの問題を克服又は少なくとも軽減することであり、クロストークの無い又は少ないデュアルビューディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この及び他の目的は、第1の及び第2の反射層並びに前記反射層間に配置された発光層により形成される光キャビティを含む発光素子を有するマルチビューディスプレイにより達成され、少なくとも前記第2の反射層は半透明であり、前記光キャビティは、少なくとも2つの好適な観察方向に放射された光が、他の方向に放射された光より高い強度を持つように設計される。一例として、前記ディスプレイの法線に沿って放射された光は、前記法線に対して視角をなして放射された光より低い強度を持つ。
【0009】
本発明の目的に対して、強度という用語は、単色発光(に近い)の場合には1つの波長における光強度として使用され、又は非単色光の場合には関与する関連波長に対して積分された光強度として使用される。
【0010】
本発明は、前記光キャビティにおける共振現象に基づき、これは、他の方向より優先的な観察方向において多くの光を本質的に放射する発光素子を実現することを可能にする。この発光プロファイルは、前記発光素子をマルチビューディスプレイにおいて非常に有用にし、クロストークの問題を軽減する。
【0011】
所望の発光プロファイルは、前記光キャビティの光学的性質を調整することにより実現される。前記発光に対する前記光キャビティの主要な効果は、可能なキャビティモードに対応する特定の波長のみが所定の方向に放射されるように光子状態密度を再分配することである。
【0012】
好適な実施例によると、発光層は、エレクトロルミネセント材料を有する。例えば、前記発光素子は、例えば、小分子有機物(smOLED)又はポリマ有機物(pLED)に基づく有機発光ダイオード(OLED)であることができる。
【0013】
法線に沿って放射される光強度と、前記法線の両側における所定の面内に前記法線に対して所定の視角をなして放射される光強度との間の比は、好ましくは、2を超過し、更に好ましくは5を超過する。約13の比が、満足な結果を提供することが示されている。
【0014】
好ましくは、前記面内における視角の関数としての放射される光強度は、本質的に前記視角において最大値を持ち、本質的に前記法線方向において最小値を持つ。このような設計は、上述の比を増大させる。
【0015】
前記光キャビティは、好ましくは、実部が1.5より小さく、好ましくは1.45より小さく、最も好ましくは1.4より小さい屈折率を持つ少なくとも1つの層を含む。
【0016】
前記第2の半透明反射層は、好ましくは、0.5より大きく、好ましくは0.7より大きく、最も好ましくは0.8より大きな反射率を持つ。反射率のこのような値が、前記キャビティを設計するために有利な条件を提供することが示されることができる。より大きな反射率は、より強調されたピークを持つ発光プロファイルを生じ、したがって上述の比を増大させる。前記第1の反射層は、好ましくは完全な反射板(reflector)であり、すなわち反射率は1に等しい。
【0017】
前記発光材料は、好ましくは、典型的には100nm以下、好ましくは50nm以下の狭い波長範囲内の光を放射するように構成される。特別な場合には、前記発光材料は、単色光を放射するように構成される。これは、上の基準による設計を実施するのを容易にする。しかしながら、本発明は、決して単色光に限定されず、所要の光強度分布は、光のスペクトル分布でも達成されることができる。この場合、上記の方程式は、波長領域内で考慮されなければならず、放射スペクトルと比較されなければならない。
【0018】
前記発光素子は、バックライトとして機能するように構成されることができ、この場合、前記ディスプレイは、前記バックライトから放射された光を変調する光変調パネル(例えばLCD)を更に有する。代わりに、前記発光素子は、ディスプレイドライバにより制御可能であるアドレス可能なディスプレイパネルを形成するためにパターン化画素構造(patterned pixel structure)で構築される。
【0019】
本発明の第2の態様の目的は、マルチビューディスプレイの垂直な視角範囲、例えば、水平方向に差別化された視野を持つマルチビューディスプレイにおける縦方向の視角範囲を向上することである。
【0020】
本発明のこの態様は、マルチビュー画像を生成する手段、及び前記画像を生成する手段と観察者との間に配置された非対称拡散板(asymmetric diffuser)を有するマルチビューディスプレイに関し、前記非対称拡散板は、本質的に一方向のみに光を散乱するように構成される。このような拡散板は、発光プロファイルを一方向に伸ばし、細長くする効果を持つ。前記非対称拡散板を正しい方向に向けることにより、これは、前記ディスプレイのマルチプルビューの角度的な広がりに垂直な方向に改良された角度的視角を提供する。例えば、前記ディスプレイが、水平方向に異なる視野領域を持つように構成される場合、前記非対称拡散板は、前記発光プロファイルを縦方向に伸ばすような方向に向けられることができ、したがって、前記観察者の縦の位置におけるより大きな変化を許容する。
【0021】
本発明の前記第2の態様は、前記第1の態様と有利に組み合わされることができ、すなわち前記マルチビュー画像を生成する手段は、光キャビティを有することができる。前記光キャビティから放射された光は、典型的には円対称であるので、前記非対称拡散板は、前記角度的な視角を大幅に向上させる。
【0022】
本発明のこの及び他の態様は、本発明の現在好適である実施例を示す添付の図面を参照してより詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下の記載は、マルチビューディスプレイの一例としてデュアルビューディスプレイに基づく。デュアルビューディスプレイは、自動車用アプリケーションに対して使用されることができ、異なる方向に異なる画像を表示することができる。図1に示されるアプリケーションの一例は、運転手側2の方向に1つの画像を提示し、乗客側3の方向に他の画像を提示するデュアルビューディスプレイ1である。例えば、ディスプレイ1は、運転手にルートプランナ(route planner)を示しながら、乗客が電子メールを読む、映画を見る又はゲームをすることを可能にする。安全面の理由から、前記運転手は、前記乗客に示される情報を見ることを可能にされない。典型的な自動車用アプリケーションにおいて、前記運転手及び乗客を対象とする視野領域は、図2aに示される要件を満たすべきである。図2aから、前記ディスプレイが前記ディスプレイ表面に対する法線を中心とする角度範囲φ1において情報を表示すべきでなく、前記法線の左の角度範囲φ2において第1の画像を表示し、右の角度範囲φ3において第2の画像を表示する。図2bは、視角、この場合には水平方向の視角の関数として強度の対応する図を示す。この関数は、理想的には、典型的には30°ないし40°辺りのθviewに対してθ=θviewにおいて最大値を持ち、θ=0においてゼロ強度を持つべきである。
【0024】
本発明の図示された実施例によると、前記ディスプレイは、所望の視野領域を実現するのに適した発光プロファイルを持つように設計された、光キャビティを含む発光素子に基づく。一例として、前記光キャビティは、OLED技術に基づくことができる。前記発光素子は、ディスプレイドライバにより制御されるべき多数の個別にアドレス可能な画素を有し、これによりディスプレイ全体を形成することができる。代わりに、前記発光素子は、適切な変調技術(例えばLCD)と組み合わせてバックライトとして機能することができる。
【0025】
図3は、基板10と、2つの反射面11及び12(少なくとも一方は半透明であり、光がキャビティから放射されることを可能にする)と、光生成層14が配置される空間13とを有する光キャビティの基本構造の展開図を示す。例えば、前記面の一方は、不透明であることができ、他方は半透明であることができる。代替的には、両方の面が半透明である。明確性のため、図は、画素レイアウト及びカプセル化の詳細を図示しない。
【0026】
この構造において、前記光キャビティの干渉特性は、多数の性質により規定され、最も重要なのは、反射面11と12との間の光学的距離d、層14内の光生成の場所と前記キャビティの非発光側の反射面11との間の光学的距離d1、並びに前記2つの反射面の反射率r1及びr2である。光学的距離d及びd1は、対応する物理的距離及び空間13内の材料の屈折率の関数である。前記発光材料が空間13内の材料のみである単純な場合には、前記光学的距離は、単純にこの材料の屈折率により乗算された前記物理的距離である。異なる材料の複数の層が存在する場合、前記光学的距離は、より複雑な関数になる。
【0027】
距離d1に関して、光が、典型的には、前記発光層の厚さの小さな部分のみで生成されることに注意することは重要である。例えば、pLEDの場合には、前記発光層は、多くの場合、約100nmの厚さを持ち、光は、"再結合領域(recombination zone)"においてのみ生成される。
【0028】
表面11及び12の反射特性は、金属又は半透明導電フィルムを場合により誘電性保護膜と組み合わせて使用することにより得られることができる。多くの場合、下で図4に示されるように、発光デバイスは、異なる屈折率を持つ多くの層を含み、反射は、各接触面において起こりうる。通常は、しかしながら、前記発光層のいずれの側においても、前記デバイス内の光学的干渉効果に対して支配的である反射面が識別される。
【0029】
一例として、図4は、OLEDに基づく光キャビティの設計を示し、ここでpLEDスタックが、上部発光pLEDにおける緑エミッタに対応する。ここで、底面11(基板10の直接上にある)は、AG反射板16である。上面12は、ZnSeの40nmの厚さの層17により形成された電極でコーティングされたAg(半透明)の15nmの厚さの層18である。空間13において、375nmのITO電極15と、緑LEPの80nmの厚さの層19及び220nmの厚さのPEDOT層21を有する光生成層14とが配置される。様々な層、特に前記ITO及びPEDOTの厚さは、前記pLEDスタックにおいて、結果として生じる光キャビティが所望の角度発光プロファイルを示すように決定されている。
【0030】
図5は、図4における例の前記スタックから計算された角度発光プロファイルを示す。図5から明らかなように、光は、傾いた角度(30°ないし50°)の下で主に放射される。前記計算は、双極子遷移による光子の放出に対する量子力学的放射性崩壊速度と、古典的な基本的双極子アンテナにより放射されるパワーとの間の等価性を使用して、マイクロキャビティにおける光学的干渉効果のシミュレーションに基づく。これは、例えば、"Simulation of light emission from thin-film microcavities", Kristiaan A. Neyts, J. Opt. Soc. Am. A, Vol 15, no 4, April 1998に記載されている。図示された例において、前記法線に沿って放射された光と30°に沿って放射された光との間の比は13である。
【0031】
同様に、サブ画素の光キャビティは、赤及び青発光に対して最適化されることができる。ディスプレイが、カラーフィルタと組み合わせて白色発光有機材料を有する場合、前記サブ画素は、所望の角度発光プロファイルによって光を放射するように最適化されることもできる。
【0032】
OLEDからの発光が、典型的には円対称であることに注意すべきである。結果として、前記角度発光プロファイルは、全ての方位角に対して、すなわち図6に図示されるように光の原点から所定の距離において、得られる。非対称拡散層は、前記光の散乱を一方向に促進し、他の方向に光を散乱しないように設けられることができる。追加のバリアが、前記視野を更に分割するために設けられることもできる。
【0033】
以下、所望のキャビティモードを達成するための幾つかの設計規則及び条件が、図7ないし11を参照して記載される。
【0034】
図7は、図3における前記光キャビティの一部の側面図を示す。参照番号11及び12は、前に使用されており、参照番号24は、ここで、光が生成される前記発光層の面を示す。
【0035】
2つのタイプの共振、すなわち広角共振(wide-angle resonance)及び多ビーム共振(multiple-beam resonance)が、このような光キャビティで生じる。ここで、共振という用語を全ての積極的な干渉効果を示すために使用する。前記共振は、前記反射面の間の光学的距離d及び前記発光層の位置、すなわち前記発光層内の光生成の場所と反射面11との間の光学的距離d1に依存する。以下の表現において、反射面11と12との間に1つの媒体のみが存在し、前記光学的距離をこの材料の屈折率neの実部により乗算された物理的距離に等しくすると仮定される。
【0036】
広角共振は、(半透明電極12に向かう)前記観察者の方向に直接的に放射される光と、反対の反射面から反射される光(図5における点線25及び26)との干渉に関係する。光出力の上昇(enhancement)(又は抑制、suppression)は、波長λ、光学的距離d1、視角θに依存する。共振条件(最大上昇)は、
φ1+2π(2d1/λ)cosθ'=N2π (1)
であり、ここで、φ1は、面11における反射から生じる位相シフトであり、neは、前記媒体の屈折率(の実部)であり、Nは整数である。内部伝播角度(internal propagation angle)θ'は、スネルの法則、
sinθ=nesinθ' (2)
により与えられる。
【0037】
発光上昇は、
φ1+2π(2d1/λ)cosθ'=(N+(1/2))2π (3)
である場合に最小である。
【0038】
多ビーム共振は、何回も行ったり来たり反射される広角干渉から生じる光(図7における点線27及び28)の間の干渉の結果である。この場合、前記共振は、波長λ、光学的距離d及び視角θに依存し、共振条件(最大上昇)は、
φ1+φ2+2π(2d/λ)cosθ'=M2π (4)
であり、ここでMは整数であり、φ2は半透明面12における反射から生じる位相シフトである。
【0039】
典型的には−π<φ1,φ2<0であるので、N及びMの最小値はゼロである。上述のように、他の材料が、前記発光媒体に加えて前記反射面間に存在する場合、式(1)、(3)及び(4)は、より複雑な式により置きかえられなければならないが、共振現象は極めて似ており、特定のλ及びθに対する共振は、光学的厚さの同様の値において生じる。
【0040】
視角の関数としての所望の強度分布の一例が、図2bに示される。設計規則を形成する際に、2つの場合、すなわち、1)発光が(仮想的に)単色である場合、2)発光スペクトルが大きな幅を持つ場合が、識別されることができる。前者は、デュアルビューディスプレイにおいて光分布に対して最良の制御を提供する理想的な場合である。1つの規則は、両方の場合に適用される。最大光出力に対して、反射面11における反射率r1の絶対値は、可能な限り1に近くなくてはならない(例えば、Agが非常に良い反射板である)。これは、θ=0における最小の可能な強度最小値の作成をも可能にし、すなわち、|r1|=1に対して、広角共振最小値において完全に有害な干渉が存在する。
【0041】
単色発光
一般に、厳密にθ=θviewにおいて広角共振最大値を持ち、厳密にθ=0において最小値を持つことは可能ではない。しかしながら、厳密にθ=θviewにおいて共振最大値を持ち、θ=0の近くで最小値を持つ、又は厳密にθ=0において共振最小値を持ち、θ=θviewの近くで最大値を持つことは可能である。両方の場合において、光学的距離d1は、
【数1】
に近くなくてはならず、ここでθ'viewは、式(2)のようにスネルの法則によりθviewに関連する。これは、θ'=0の場合の式(3)からθ'=θ'viewの場合の式(1)を減算し、θの関数としてφ1の小さな変化を無視することから得られる。
【0042】
厳密にθ=θviewにおいて共振最大値を持つために、光学的距離d1は、θ'=θ'view(N=1,2,3,...)の場合の式(1)を満たし、可能な限り
に近いものが選択されなければならない。厳密にθ=0において共振最小値を持つためには、光学的距離d1は、代わりに、θ'=0の場合の式(3)を満たし、再び可能な限り
に近いものが選択されなければならない。
【0043】
多ビーム共振最大値は、広角最大値と一致すべきである。したがって、光学的距離dは、θ'=θ'viewの場合の式(4)が満たされるように選択されなければならない。明らかに、M≧Nであり、M=Nを選択することが有利であることが分かっている。
【0044】
実際には、特定の許容誤差を許容する必要があるかもしれず、(整数を除く)上述のパラメータの数値が、所定の関係を厳密に満たす値から約10%、好ましくは5%以下外れることを許容されることができることが分かっている。
【0045】
図8は、(厳密にθ=0において共振最小値を持つ)このように得られた強度分布の一例を示す。銀が反射板として使用され、半透明面12における反射率r2の絶対値は0.3であり、前記キャビティは、緑LEP材料からなる。光学的距離d1は約2400nmであり、M=Nである。
【0046】
前記デバイスが上記のように最適化される場合、常に前記強度分布内に第2の最大値が存在する(図8参照)。これは不所望でありうる。式(1)を満たす系列からより小さなd1(より小さなN)を選択することは、前記第2の最大値をより大きなθに移動し、最終的に除去する(図9参照)。しかしながら、より小さなd1は、前記共振最小値がもはやθ=0に又は近くになく、結果として、前記強度分布の最大値及び最小値の好適でない比を生じることをも意味する。これを補償するために、前記多ビーム共振は、θ=θviewの周りにより強力にピークを作成されることができる。前記ピークの幅(FWHM)は、積|r1r2|及び光学的距離dに依存する。したがって、前記幅を減少する2つの方法が存在し、すなわち|r2|を増大する及び/又はdを増大する。前記半透明面における反射の強度は、例えば、金属層の厚さを変えることにより、又は金属層に隣接する高い屈折率を持つ層の厚さを変えることにより調整されることができる。より大きな|r2|の追加の利点は、より大きな共振強度上昇である。前記多ビーム共振の幅は、視野の所望の幅より小さくされるべきでない。dの増大に関して、多ビーム共振が前記強度分布において見える第2の最大値を生成することを防ぐために、MがNより大幅に大きくてはならないことに注意すべきである。
【0047】
図9は、図7に対して使用されたものと同様であるが、約1500nmの光学的距離d1及び|r2|=0.7を持つデバイス構成に対する強度分布を示す。
【0048】
スペクトル分布を持つ発光
この場合、問題は、波長領域において考慮されるべきである。図10は、θ=0に対して、波長の関数としてキャビティ共振による発光強度上昇を示す。ピーク間の波長における距離は、光学的距離d1に依存し、すなわち、d1が大きければ、前記距離はより小さい。これは、前記波長領域における幅(FWHM)が減少されることをも意味する。広角共振及び多ビーム共振の性質は同様である。前記共振最大値の波長位置は、視角と共にシフトする。
【0049】
λmax(θ)は、特定の共振最大値(所定のd1及びNを持つ広角又は所定のd及びMを持つ多ビーム)に対応する波長を示すとする。前記キャビティが、前記発光媒体のみを含み、θに対するφ1及びφ2の依存性が無視される場合、式(1)及び(4)から、
λmax(θ)=λmax(0)cosθ' (6)
という結果になる。したがって、前記共振最大値は、視角がθviewに増加する場合、
Δλmax=λmax(0)(1−cosθ'view) (7)
だけシフトし、波長を下げる。
【0050】
図10は、一例として、緑LEPのスペクトルをも示す。前記スペクトルに対する前記共振の重複は、観察者に向かって放射される強度を決定する。デュアルビューディスプレイに対して、前記重複は、共振ピークが式(6)及び(7)により記載されるようにシフトされる場合、θ=0において最小であり、θ=θviewにおいて最大であるべきである。これは、
i:前記共振最大値間の波長距離が、広角及び多ビーム干渉に対してほぼ同じである場合、すなわちN=Mである場合、
ii:この距離が、少なくともおよそスペクトル幅Δspecである場合に、
最良に実現されることができる。位相シフトφ1及びφ2が−π(理想的な鏡に対する値)として近似されることができると仮定すると、これは、要件
600nm/(M+2)>Δspec (8)
を導き、ここで、600nmは、関連する共振に対するλmax(0)の特性値として使用される。
【0051】
λ0は、前記共振最大値がλ0にある場合に前記スペクトルと典型的な共振ピークとの間の重複が最大であるような波長であるとする。最適なデバイスにおいて、光学的厚さdが、関連する共振に対するλmax(θview)がλ0に近いように選択されなければならないことは明らかである。これに関連してλ0を支配的波長と称する。
【0052】
θ=θview及びθ=0における放射される強度の比は、シフトΔλmaxが、少なくとも前記スペクトルの高波長半値幅(high-wavelength half-width)Δ+spec(スペクトルの最大値と高波長端との間の波長距離)である場合に更に最適化される。主にLEP材料で埋められたキャビティに対して、Δλmaxは、典型的には、Δ+specより大幅に小さい。これは、前記キャビティに低n層を含むことにより増大されることができる。低nは、ここで、前記材料が可視スペクトルにおいて透明であり、前記可視スペクトルの少なくとも一部に対してRen1<1.4を持つ屈折率n1を持つことを意味する。前記デバイスの動作に必要とされる前記低n層は、前記キャビティ内の層に加えられ、典型的には屈折率n>1.4を持つ。増大されたシフトは、(neがn1により置き換えられた)式(3)により規定されるように、高n材料における比較的小さな伝播角度θ'の結果である。前記低n層が可能な限り平均θ'に対して支配的であるように、所要の層に最小の厚さを与えることは好ましい。前記シフトに対する上限は、
750nm(1−cosθview) (9)
により与えられ、ここで750nmはλmax(0)に対する限界として使用されている。前記キャビティ全体においてn=1を仮定することから得られる。
【0053】
式(8)を満たすM値に対応する光学的厚さdは、Δλmaxを大幅に増大させるのに十分な低n材料を含めることを可能にするには小さすぎるかもしれない。(図10の例のように)広域スペクトルに対して、わずかに高いMは、より良い強度比を与えることができる。より高いMがより大きなd、したがって、1)より多い低n材料及びより大きなΔλmax、2)より小さな共振幅を意味することに注意する。より小さな共振幅は、前記強度比において波長λmax(θview)におけるスペクトル強度とλmax(0)におけるスペクトル強度との間の差をより良く反映する。多ビーム共振のFWHMが、積|r1r2|に依存するので、これは、前記半透明面における反射率で調整されることができる(|r1|が常に大きくなくてはならないことを念頭に置く)。より大きな|r2|は、より狭い共振を与え、したがってより良い強度比を与える。スペクトルと共振との間の最大重複が減少されるので、欠点は、より低い最大強度である。
【0054】
前記共振最大値は、2つの偏光TE及びTMに対してわずかに異なる波長において生じる。したがって、完全な最適化は、両方の寄与を考慮に入れる妥協でなければならない。
【0055】
図10に示される強度上昇は、約850nmの光学的厚さdを持つデバイス構成に対するものであり、このうち650nmは低n材料であり、N=M=2であり、|r2|=0.7である。これは、TE偏光及びθ=0に対する状況を示す。θ=θviewに対する対応する上昇プロファイルは、図11に示される。ここで、前記共振ピークと前記緑LEPのスペクトルとの間の重複は、最大である。視角の関数としての結果として生じる強度プロファイルは、図12にプロットされる。このプロファイルにおいて、TE及びTM偏光の両方が考慮される。約350nmへの前記低n層の減少(合計光学的厚さdは、この場合、約550nmであり、N=M=1である)は、前記共振ピーク間の距離を増大し、したがって、前記強度プロファイルにおいて65°に近い第2の最大値の抑制を可能にする。しかしながら、より小さなシフトΔλmax及びより幅広い共振ピークは、より小さな強度比を与える。前記より幅広い共振の利点は、より高い最大強度である。前記例において使用された緑LEPのスペクトルは、高波長端部においてロングテールを持つ。小分子OLEDのスペクトルは、典型的には、より狭く、より良い強度比を可能にする。
【0056】
前記共振が視角と共にシフトする場合、前記スペクトルの異なる部分が強調される。これは、前記強度の減少が、放射される光の色の変化を伴うことを意味する。これは、カラーフィルタにより抑制されることができ、これは既知である。
【0057】
当業者は、本発明が決して上述の好適な実施例に限定されないことに気が付く。反対に、多くの修正例及び変更例が、添付の請求項の範囲内で可能である。例えば、光キャビティを有し、したがって所望の角度発光プロファイルによって光を放射するように調整されることができる多くの異なるOLED構造が存在することに注意すべきである。更に、小分子有機物及びポリマベースの有機物の両方が、光生成に使用されることができる。法線に沿った光と傾いた角度に沿った光との間の比を更に向上するために、バリアが、例えば前記ディスプレイの法線に沿って全ての不所望な光を遮るように挿入されることもできる。このようなバリアの例は既知である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】どのようにデュアルビューディスプレイが自動車において有用であることができるかを図示する。
【図2a】デュアルビューディスプレイに対する所望の視角範囲を図示する。
【図2b】図2aの性能に対応する視角の関数として放射される光強度の図を示す。
【図3】OLED構造を概略的に示す。
【図4】本発明の一実施例によるOLED設計の一例を示す。
【図5】図4のOLEDからの発光プロファイルを示す。
【図6】遠視野におけるx/y平面に投影された発光プロファイルを示す。
【図7】2つの反射面の間の光キャビティにおける共振を図示する。
【図8】本発明の第1の実施例による光キャビティに対する発光強度プロファイルを示す。
【図9】本発明の第2の実施例による光キャビティに対する発光強度プロファイルを示す。
【図10】θ=0に対する波長の関数としてのキャビティ共振による発光強度上昇の一例を示す。
【図11】θ=θviewに対する波長の関数としてのキャビティ共振による発光強度上昇の一例を示す。
【図12】本発明の第3の実施例による光キャビティに対する発光強度プロファイルを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を有するマルチビューディスプレイにおいて、前記素子が、第1の反射層及び第2の反射層、並びに前記反射層間に配置された発光層により形成された光キャビティを含み、少なくとも前記第2の反射層が半透明であり、前記光キャビティが、少なくとも2つの好適な観察方向に放射される光が他の方向に放射される光より高い強度を持つように設計されることを特徴とするマルチビューディスプレイ。
【請求項2】
前記ディスプレイの法線に沿って放射される光が、前記法線に対して視角をなして放射される光より低い強度を持つ、請求項1に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項3】
前記発光層が、エレクトロルミネセンス材料を有する、請求項1又は2に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項4】
前記発光素子が、有機発光ダイオードである、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項5】
前記法線に沿って放射される光強度と前記法線の両側に所定の面内で、前記法線に対して所定の視角をなして放射される光強度との間の比が、2を超過し、好ましくは5を超過する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項6】
前記面内の視角の関数としての放射される光強度が、前記視角に近い方向に最大値を持ち、前記法線に近い方向に最小値を持つ、請求項5に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項7】
前記発光層における光生成の場所と前記第1の反射面との間の光学的距離d1が、
λ/(16(1−cosθ'view))
より大きく、ここで、λが前記放射される光の波長であり、θ'viewが視角θviewに対応する内部伝播角度である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項8】
前記反射面間の光学的距離d、前記放射される光の支配的な波長λ、前記第1の反射層及び前記第2の反射層における反射から生じる位相シフトφ1及びφ2、前記視角θviewに対応する内部伝播角度θ'view、及び整数Mが、
φ1+φ2+2π(2d/λ)cosθ'view=M2π
をおおよそ満たす、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項9】
前記発光層における光生成の場所と前記第1の反射面との間の光学的距離d1及び整数N≦Mが、
φ1+2π(2d1/λ)cosθ'view=N2π
を満たす、請求項8に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項10】
前記発光層における光生成の場所と前記第1の反射面との間の光学的距離d1及び整数N≦Mが、
φ1+2π(2d1/λ)cosθ'view=(N+(1/2))2π
を満たす、請求項8に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項11】
前記光学的距離d1が可能な限りλ/(4(1−cosθ'view))に近くなるように選択される、請求項9又は10の記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項12】
与えられた式のいずれか1つは、含まれる変数の数値が、厳密に10%以下、好ましくは5%以下だけ、前記式が成り立つ値から外れる場合に、おおよそ満たされると見なされる、請求項8ないし11のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項13】
M=Nである、請求項8ないし12のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項14】
前記光キャビティが、1.5より小さい、好ましくは1.45より小さい、最も好ましくは1.4より小さい実部を持つ屈折率を持つ少なくとも1つの層を更に含む、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項15】
前記第2の半透明の反射層が、0.5より大きい、好ましくは0.7より大きい、最も好ましくは0.8より大きい反射率を持つ、請求項1ないし14のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項16】
前記第1の反射層が、実質的に1に等しい反射率を持つ、請求項1ないし15のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項17】
前記発光材料が、100nmより小さい、好ましくは50nmより小さい波長範囲内の光を放射するように構成される、請求項1ないし16のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項18】
前記発光材料が、単色光を放射するように構成される、請求項17に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項19】
前記光キャビティと観察者との間に配置された非対称拡散板を更に有し、前記非対称拡散板が、本質的に一方向にのみ光を散乱するように構成される、請求項1ないし18のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項20】
前記発光素子が、バックライトとして機能するように構成され、前記ディスプレイが、前記バックライトから放射された光を変調する光変調パネルを更に有する、請求項1ないし19のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項21】
前記発光素子が、ディスプレイドライバにより制御可能であるアドレス可能な発光パネルを形成するようにパターン化画素構造で構築される、請求項1ないし19のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項22】
発光素子、及び前記発光素子と観察者との間に配置された非対称拡散板を有するマルチビューディスプレイ。
【請求項23】
前記非対称拡散板が、本質的に一方向にのみ光を散乱するように構成される、請求項22に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項24】
前記非対称拡散板が、前記ディスプレイの複数のビューの角度的な広がりに本質的に垂直な方向に光を散乱するように構成される、請求項23に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項1】
発光素子を有するマルチビューディスプレイにおいて、前記素子が、第1の反射層及び第2の反射層、並びに前記反射層間に配置された発光層により形成された光キャビティを含み、少なくとも前記第2の反射層が半透明であり、前記光キャビティが、少なくとも2つの好適な観察方向に放射される光が他の方向に放射される光より高い強度を持つように設計されることを特徴とするマルチビューディスプレイ。
【請求項2】
前記ディスプレイの法線に沿って放射される光が、前記法線に対して視角をなして放射される光より低い強度を持つ、請求項1に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項3】
前記発光層が、エレクトロルミネセンス材料を有する、請求項1又は2に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項4】
前記発光素子が、有機発光ダイオードである、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項5】
前記法線に沿って放射される光強度と前記法線の両側に所定の面内で、前記法線に対して所定の視角をなして放射される光強度との間の比が、2を超過し、好ましくは5を超過する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項6】
前記面内の視角の関数としての放射される光強度が、前記視角に近い方向に最大値を持ち、前記法線に近い方向に最小値を持つ、請求項5に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項7】
前記発光層における光生成の場所と前記第1の反射面との間の光学的距離d1が、
λ/(16(1−cosθ'view))
より大きく、ここで、λが前記放射される光の波長であり、θ'viewが視角θviewに対応する内部伝播角度である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項8】
前記反射面間の光学的距離d、前記放射される光の支配的な波長λ、前記第1の反射層及び前記第2の反射層における反射から生じる位相シフトφ1及びφ2、前記視角θviewに対応する内部伝播角度θ'view、及び整数Mが、
φ1+φ2+2π(2d/λ)cosθ'view=M2π
をおおよそ満たす、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項9】
前記発光層における光生成の場所と前記第1の反射面との間の光学的距離d1及び整数N≦Mが、
φ1+2π(2d1/λ)cosθ'view=N2π
を満たす、請求項8に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項10】
前記発光層における光生成の場所と前記第1の反射面との間の光学的距離d1及び整数N≦Mが、
φ1+2π(2d1/λ)cosθ'view=(N+(1/2))2π
を満たす、請求項8に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項11】
前記光学的距離d1が可能な限りλ/(4(1−cosθ'view))に近くなるように選択される、請求項9又は10の記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項12】
与えられた式のいずれか1つは、含まれる変数の数値が、厳密に10%以下、好ましくは5%以下だけ、前記式が成り立つ値から外れる場合に、おおよそ満たされると見なされる、請求項8ないし11のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項13】
M=Nである、請求項8ないし12のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項14】
前記光キャビティが、1.5より小さい、好ましくは1.45より小さい、最も好ましくは1.4より小さい実部を持つ屈折率を持つ少なくとも1つの層を更に含む、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項15】
前記第2の半透明の反射層が、0.5より大きい、好ましくは0.7より大きい、最も好ましくは0.8より大きい反射率を持つ、請求項1ないし14のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項16】
前記第1の反射層が、実質的に1に等しい反射率を持つ、請求項1ないし15のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項17】
前記発光材料が、100nmより小さい、好ましくは50nmより小さい波長範囲内の光を放射するように構成される、請求項1ないし16のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項18】
前記発光材料が、単色光を放射するように構成される、請求項17に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項19】
前記光キャビティと観察者との間に配置された非対称拡散板を更に有し、前記非対称拡散板が、本質的に一方向にのみ光を散乱するように構成される、請求項1ないし18のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項20】
前記発光素子が、バックライトとして機能するように構成され、前記ディスプレイが、前記バックライトから放射された光を変調する光変調パネルを更に有する、請求項1ないし19のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項21】
前記発光素子が、ディスプレイドライバにより制御可能であるアドレス可能な発光パネルを形成するようにパターン化画素構造で構築される、請求項1ないし19のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項22】
発光素子、及び前記発光素子と観察者との間に配置された非対称拡散板を有するマルチビューディスプレイ。
【請求項23】
前記非対称拡散板が、本質的に一方向にのみ光を散乱するように構成される、請求項22に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項24】
前記非対称拡散板が、前記ディスプレイの複数のビューの角度的な広がりに本質的に垂直な方向に光を散乱するように構成される、請求項23に記載のマルチビューディスプレイ。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−544449(P2008−544449A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516463(P2008−516463)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051824
【国際公開番号】WO2006/134519
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051824
【国際公開番号】WO2006/134519
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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