マルチプロジェクションシステム、プロジェクター、画像投射方法、及び、プロジェクターの制御方法
【課題】複数のプロジェクターを備えたマルチプロジェクションシステムにおいて、プロジェクターが備える遮光板の動作異常に起因してマルチプロジェクションシステムが使用できなくなる事態を回避または抑制する。
【解決手段】複数のプロジェクター2を用い、隣接する複数のプロジェクターから投射される投射画像が重畳領域を形成するように、複数のプロジェクター2からスクリーンSCに投射画像を投射し、プロジェクター2が備える遮光板31を移動させて投射光を遮光することにより、重畳領域の投射光を所定の状態に減光して投射を行い、いずれかのプロジェクター2が備える遮光板31によって投射光が所定の状態に減光されない場合に、このプロジェクター2またはこのプロジェクター2に隣接して配置されたプロジェクター2が投射する投射光の減光状態を制御する。
【解決手段】複数のプロジェクター2を用い、隣接する複数のプロジェクターから投射される投射画像が重畳領域を形成するように、複数のプロジェクター2からスクリーンSCに投射画像を投射し、プロジェクター2が備える遮光板31を移動させて投射光を遮光することにより、重畳領域の投射光を所定の状態に減光して投射を行い、いずれかのプロジェクター2が備える遮光板31によって投射光が所定の状態に減光されない場合に、このプロジェクター2またはこのプロジェクター2に隣接して配置されたプロジェクター2が投射する投射光の減光状態を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプロジェクターを備えたマルチプロジェクションシステム、このマルチプロジェクションシステムを構成するプロジェクター、画像投射方法、及び、プロジェクターの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のプロジェクターにより1つの画像を投射するマルチプロジェクションシステムが知られている。この種のシステムでは、隣り合うプロジェクターの投射範囲の境界が目立たなくなるように投射範囲の一部を重複させる。ここで、重ね合わせ部分の輝度が他の部分よりも高くなってしまうことを避けるため、プロジェクターの光束の通過経路上に遮光装置を設けて、重ね合わせ部に投射される光を減光する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−268476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のマルチプロジェクションシステムが使用する遮光装置は、プロジェクターの光束に対し、遮光板を進退させて減光を行う。このように部材を移動させる駆動部を利用して減光を行う構成では、駆動部の故障或いは動作不良が起こり得る。特許文献1の例では1つのプロジェクターが4枚の遮光板を備えており、マルチプロジェクションシステムを構成するプロジェクターの数が増えると遮光板及び駆動部の数も飛躍的に増加するので、駆動部の故障率は無視できない水準となり、マルチプロジェクションシステム全体の可用性への影響が懸念される。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数のプロジェクターを備えたマルチプロジェクションシステムにおいて、プロジェクターが備える遮光板の動作異常に起因してマルチプロジェクションシステムが使用できなくなる事態を回避または抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、複数のプロジェクターを備え、隣接する複数の前記プロジェクターから投射される投射画像が重畳領域を形成するように、前記複数のプロジェクターから投射面に前記投射画像を投射するマルチプロジェクションシステムであって、前記プロジェクターは、光源と、前記光源が発した光を変調する変調手段と、前記変調手段によって変調された光を投射する投射手段と、前記投射手段によって投射された投射光を遮光する遮光板を備え、当該遮光板を移動させて前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光する減光手段と、を備え、いずれかの前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、この前記プロジェクターまたはこの前記プロジェクターに隣接して配置された前記プロジェクターが投射する投射光の減光状態を制御する減光制御装置とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、マルチプロジェクションシステムにおいて、重畳領域の投射光が遮光板によって所定の状態に減光されない場合に、このプロジェクターまたは隣接するプロジェクターの投射光の減光状態を制御して、重畳領域の投射光を本来減光されるべき所定の状態に近づけることができる。
ここで、所定の状態に減光されない場合とは、減光が不十分なために投射光が所定の状態より明るくなっている場合だけでなく、投射光が過度に減光されて所定の状態より暗くなっている場合を含む。所定の状態とは、例えば、投射面において重畳領域が目立たなくなる状態である。
これにより、遮光板の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステムを停止させてプロジェクターを交換する等の措置を行わずに、マルチプロジェクションシステムの使用を続け、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0006】
また、本発明は、上記マルチプロジェクションシステムにおいて、前記減光制御装置は、いずれかの前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、前記重畳領域を前記所定の状態とすべく、この前記プロジェクターまたはこの前記プロジェクターに隣接して配置された前記プロジェクターが備える前記変調手段を制御することを特徴とする。
本発明によれば、重畳領域の投射光が遮光板によって所定の状態まで減光されない場合に、そのプロジェクターまたは隣接するプロジェクターが備える変調手段の減光状態を制御し、遮光板の機能を修復することなく、重畳領域を所定の状態に減光できる。これにより、遮光手段の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステムの使用停止を回避し、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0007】
また、本発明は、上記マルチプロジェクションシステムにおいて、前記減光制御装置は、前記投射面に投射された投射画像を撮影した撮影画像に基づいて、或いは、前記減光手段の動作状態を検出することにより、投射光が前記所定の状態に減光されているか否かを判別することを特徴とする。
本発明によれば、マルチプロジェクションシステムを構成するプロジェクターが遮光板によって所定の状態に減光できているか否かを、速やかに、かつ確実に検出できる。
【0008】
また、本発明は、上記マルチプロジェクションシステムにおいて、投射画像の投射に使用する前記プロジェクターの数を変更可能に構成され、前記減光制御装置は、投射画像の投射に使用する前記プロジェクターの数が変更された際、または、前記プロジェクターの起動時に、投射光が前記所定の状態に減光されているか否かを判別することを特徴とする。
本発明によれば、マルチプロジェクションシステムを構成するプロジェクターの遮光板が移動される機会に、遮光板によって重畳領域が所定の状態まで減光されているか否かを判別するので、遮光手段の動作異常等を速やかに検出できる。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明は、複数のプロジェクターとともにマルチプロジェクションシステムを構成し、隣接する前記プロジェクターから投射される投射画像と自己が投射する投射画像とが重畳領域を形成するように投射面に投射を行うプロジェクターであって、光源と、前記光源が発した光を変調する変調手段と、前記変調装置によって変調された光を投射する投射手段と、前記投射手段によって投射された投射光を遮光する遮光板を備え、当該遮光板を移動させて前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光する減光手段と、自己または他の前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、自己が備える前記投射手段により投射された投射光の減光状態を制御する減光制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明のプロジェクターによれば、隣接するプロジェクターと投射光が重なる重畳領域の投射光が遮光板によって所定の状態まで減光されない場合に、投射光の減光状態が制御され、重畳領域に投射される投射光を本来減光されるべき所定の状態に近づけることができる。これにより、本発明のプロジェクターをマルチプロジェクションシステムに採用することで、遮光板の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステムを停止させてプロジェクターを交換する等の措置を行わずに、使用を続け、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記減光制御手段は、自己または他の前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、前記重畳領域を前記所定の状態とすべく、自己または他の前記プロジェクターが備える前記変調手段によって投射光を減光させることを特徴とする。
本発明によれば、変調手段の減光状態を調整することで、遮光板の機能を修復することなく、重畳領域を所定の状態に減光できる。これにより、このプロジェクターで構成したマルチプロジェクションシステムにおいては、遮光手段の動作異常等が発生しても、システムの使用停止を回避し、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0011】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記減光制御手段は、隣接する前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されないことで、投射面に形成される投射画像の前記重畳領域が所定の状態にならない場合に、前記重畳領域を前記所定の状態とすべく、自己が備える前記減光手段を制御することを特徴とする。
本発明によれば、遮光板によって所定の状態まで減光されない場合に、隣接するプロジェクターの遮光板による減光状態を調整することで、遮光板を修理しなくても重畳領域を所定の状態に減光できる。これにより、このプロジェクターで構成したマルチプロジェクションシステムにおいては、遮光板の動作異常等が発生しても、システムの使用停止を回避し、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0012】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記投射面を撮影する撮影手段を備え、前記撮影手段により撮影された撮影画像に基づいて、前記重畳領域が前記所定の状態に減光されないことを検出することを特徴とする。
本発明によれば、遮光板によって所定の状態まで減光されているか否かを、速やかに、かつ確実に検出できる。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明は、複数のプロジェクターを用いた画像投射方法であって、隣接する複数の前記プロジェクターから投射される投射画像が重畳領域を形成するように、前記複数のプロジェクターから投射面に前記投射画像を投射し、前記プロジェクターが備える遮光板を移動させて投射光を遮光することにより、前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光して投射を行い、いずれかの前記プロジェクターが備える前記遮光板によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、この前記プロジェクターまたはこの前記プロジェクターに隣接して配置された前記プロジェクターが投射する投射光の減光状態を制御することを特徴とする。
本発明の画像投射方法を適用することにより、マルチプロジェクションシステムにおいて、隣接するプロジェクターの投射光が重なる重畳領域の投射光が遮光板によって所定の状態まで減光されない場合に、投射光の減光状態を制御して、重畳領域の投射光を本来減光されるべき所定の状態に近づけることができる。これにより、本発明の制御方法を適用したプロジェクターをマルチプロジェクションシステムに採用することで、プロジェクターが備える遮光板の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステムを停止させてプロジェクターを交換する等の措置を行わずに、使用を続け、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明は、複数のプロジェクターとともにマルチプロジェクションシステムを構成するプロジェクターの制御方法であって、隣接する前記プロジェクターから投射される投射画像と自己が投射する投射画像とが重畳領域を形成するように、投写面に前記投写画像を投射し、前記プロジェクターが備える遮光板を移動投射光を遮光することにより、前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光し、自己または他の前記プロジェクターが備える前記遮光板によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、自己の投射光の減光状態を制御することを特徴とする。
本発明の制御方法を適用したプロジェクターは、隣接するプロジェクターと投射光が重なる重畳領域の投射光が遮光板によって所定の状態まで減光されない場合に、投射光の減光状態を制御して、重畳領域の投射光を本来減光されるべき所定の状態に近づけることができる。これにより、本発明の制御方法を適用したプロジェクターをマルチプロジェクションシステムに採用することで、遮光板の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステムを停止させてプロジェクターを交換する等の措置を行わずに、使用を続け、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プロジェクターが備える遮光板の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステムを停止させてプロジェクターを交換する等の措置を行わずに、使用を続け、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態におけるマルチプロジェクションシステムの概略構成を示す図である。
【図2】マルチプロジェクションシステムによる投射態様を模式的に示す図である。
【図3】プロジェクター及び画像処理装置の構成を示す図である。
【図4】マルチプロジェクションシステムの動作モードと、動作モード毎の遮光板の使用状態とを示す説明図である。
【図5】マルチプロジェクションシステムの動作を示すフローチャートである。
【図6】プロジェクターの遮光装置の動作異常を検出する異常検出処理を示すフローチャートである。
【図7】プロジェクターの遮光装置の動作異常を検出する異常検出処理を示すフローチャートである。
【図8】プロジェクターの遮光板の異常に対応する異常対応処理を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態においてプロジェクターの動作を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態においてプロジェクターが実行する異常対応処理を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態においてプロジェクターが実行する異常対応処理を示すフローチャートである。
【図12】第3の実施形態におけるプロジェクター及び画像処理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係るマルチプロジェクションシステム1の概略構成を示す図である。
この図1に示すマルチプロジェクションシステム1は、複数のプロジェクター2を並べて配置し、これら複数のプロジェクター2による投射画像を組み合わせて、タイリング表示による一つの大画面画像を投射するシステムである。本実施形態では、横7列×縦3列の21台のプロジェクター2を配置した構成を例に挙げて説明する。このマルチプロジェクションシステム1は、使用するプロジェクター2の台数が異なる複数の動作モードを実行可能である。例えば、21台のプロジェクター2の全部を使用して投射を行う動作モード、横5列×縦3列の15台のプロジェクター2を使用して投射する動作モード等を実行できる。投射に使用されないプロジェクター2は、後述するように投射光を出さないよう制御される。
各プロジェクター2には、投射される画像の画像データをプロジェクター2に出力する画像処理装置10が、画像送信ケーブル41を介して接続される。
画像処理装置10は、マルチプロジェクションシステム1により投射される上記大画面画像の原画像を、実行中の動作モードで使用するプロジェクター2の数に対応する部分画像に分割し、各プロジェクター2が投射すべき部分画像を表す画像データ(部分画像データ)を生成する。そして、画像処理装置10は生成した各部分画像データを、その部分画像に対応する位置に配置されたプロジェクター2に対し、画像送信ケーブル41を介して出力する。このため、各プロジェクター2は、画像処理装置10から入力される画像データを投射するだけで、マルチプロジェクションシステム1全体としてタイリングによる画像投射を行える。
【0018】
図2は、複数のプロジェクター2を用いた投射態様を模式的に示す図である。
この図2には、4台のプロジェクター2を用い、タイリングによってスクリーンSC(投射面)に一つの投射画像100を投射する場合を例示する。この例では、スクリーンSCの左上にプロジェクター2Aが投射し、スクリーンSCの右上にプロジェクター2Bが、左下にプロジェクター2Cが、右下にプロジェクター2Dが投射する。ここで、タイリングによる境界がスクリーンSCで目立たないように、各プロジェクター2A,2B,2C,2Dが投射する投射画像は少しずつ重ね合わされる。すなわち、プロジェクター2Aが投射する投射画像101と、その右隣にプロジェクター2Bが投射する投射画像102とは、図中に示すように互いの縁が重ね合わされ、重畳領域111が形成されている。同様に、プロジェクター2Cが投射する投射画像103と、プロジェクター2Cの右隣のプロジェクター2Dによる投射画像104とは重畳領域112を形成するよう重ねられる。さらに、投射画像は上下方向にも重ね合わされ、重畳領域113、114が形成される。
【0019】
スクリーンSC上において各プロジェクター2A,2B,2C,2Dが画像を投射する範囲は、スクリーンSCと各プロジェクター2A〜2Dとの距離、隣接するプロジェクター2どうしの間隔、及び、スクリーンSCに対する各プロジェクター2A〜2Dの光軸の角度により決定される。つまり、各プロジェクター2A〜2DはスクリーンSC上で重畳領域111〜114を形成する位置及び角度に、予め設置されている。
図2の例で、画像処理装置10は、投射画像100を4台のプロジェクター2A〜2Dで投射するために投射画像100を4つの部分画像に分割する。画像処理装置10は、重畳領域111〜114が形成されることを加味して、投射画像100の4分の1よりも大きい範囲を各プロジェクター2A〜2Dに割り当てる。画像処理装置10は、各プロジェクター2A〜2Dの割り当て分の部分画像データを、画像送信ケーブル41を介して各プロジェクター2A〜2Dに出力する。
【0020】
画像処理装置10は、投射画像101と投射画像102とが重畳領域111で同じ画像となるように部分画像データを生成するので、重畳領域111には他の部分と同様の鮮明な画像が投射されている。重畳領域112〜114でも同様である。しかしながら、重畳領域111〜114では、複数のプロジェクター2から投射された光が合成されているので、光量が他の部分より多く、結果として重畳領域111〜114の輝度が他の部分より高くなってしまう。これでは各プロジェクター2の投射画像の境界が目立ってしまうので、マルチプロジェクションシステム1は、重畳領域111〜114の輝度を他の部分と同程度に抑えるため、プロジェクター2に遮光装置3(減光手段)を設けている。
【0021】
すなわち、図1に示すように、プロジェクター2は、投射光が出力される投射光学系25(投射手段)の周囲に配置された複数の遮光板31と、これら遮光板31を駆動する遮光部30とを有する遮光装置3を備えている。遮光板31は、不透明または透光性の低い矩形の板であり、プロジェクター2が投射する矩形の投射画像の各辺に対応して4枚設けられている。各々の遮光板31は、遮光部30により独立してスライドされ、投射光学系25の前側に進出して投射画像を遮ることも、投射画像に影響を与えないように投射光学系25を遮らない位置まで後退させることも可能である。複数の遮光板31によって、投射光学系25からの光が通過可能な投射窓20Aが形成される。
【0022】
遮光装置3は、4枚の矩形の遮光板31を、投射光学系25を完全に遮らない位置まで後退させて投射画像を全く遮らない状態とすることも、遮光板31の遮光位置を投射光学系25の中央に設定して投射画像を中央付近まで遮光することもできる。遮光板31の移動量を大きくして、投射光学系25の投射光を完全に遮る状態とすることも可能である。各辺に対応する遮光板31はそれぞれ独立して駆動できる。
このように、プロジェクター2は、遮光部30によって遮光板31を投射光学系25の前方すなわち投射光の投射範囲に進退するように移動させ、投射光学系25の投射光を周縁部から遮って減光する。これにより、各プロジェクター2の投射画像の周縁の光量を減らして、図2に示した重畳領域111〜114の輝度を他の部分と同程度に抑え、タイリングの境界を目立たなくすることができる。
【0023】
遮光装置3による遮光量は、例えば、各々の遮光板31がどこまで進出するか、その先端の位置で表すことができる。以下、遮光板31の先端の位置を遮光位置と呼ぶ。
図2のように複数のプロジェクター2を並べた場合、投射画像101〜104と重畳領域111〜114との位置関係は、投射画像101〜104ごとに異なっている。例えば、投射画像101は右端と下端が重畳領域となっており、投射画像104は左端と上端が重畳領域となっている。つまり、タイリングの境界を目立たなくするために好適な遮光位置はプロジェクター2ごとに異なっており、一つのプロジェクター2においても遮光板31の辺ごとに異なる。従って、プロジェクター2は、マルチプロジェクションシステム1が有するプロジェクター2群の中における自己の位置に適した遮光位置となるように、遮光装置3によって4枚の遮光板31を駆動する。
【0024】
図1に示すように、プロジェクター2は、それぞれ通信回線43を介してネットワーク5に接続されている。ここで、通信回線43はプロジェクター2をネットワーク5に有線接続するケーブルであってもよいし、プロジェクター2に外部接続または内蔵された無線通信モジュールにより形成される無線通信回線であってもよい。
ネットワーク5は、有線又は無線通信回線により構成されるLAN(Local Area Network)等の双方向通信可能なネットワークであり、各プロジェクター2とともに制御装置8が接続されている。
【0025】
制御装置8は、各プロジェクター2とネットワーク5を介して通信を実行し、カメラ9により撮影した撮影画像に基づいて、遮光装置3による遮光量を調整させる装置である。制御装置8は、図2に示した重畳領域111〜114の輝度が、重畳領域以外の領域の輝度と視認できる差を生じないように、プロジェクター2に対して遮光装置3の動作を指示する制御情報を送信する。カメラ9は、制御装置8の制御に従って、スクリーンSCにおいてプロジェクター2が投射画像を投射する範囲を撮影し、撮影画像を制御装置8に出力するデジタルカメラである。カメラ9は、制御装置8に対して、USB(Universal Serial Bus)ケーブル45を介して接続されているが、USBケーブル45に限らず有線又は無線の各種通信回線を用いることができ、例えば、IEEE1394規格に準じたケーブルや、Bluetooth(登録商標)、Wireless USB、無線LAN等の無線通信手段を利用できる。
【0026】
図3は、マルチプロジェクションシステム1の各部の機能的構成を示す図であり、合わせてプロジェクター2のハードウェア構成を模式的に図示する。
画像処理装置10は、プロジェクター2が投射する投射画像の画像データを取得する画像取得部11と、各プロジェクター2の投射位置が設定された投射位置設定部12と、重畳領域の位置および大きさが設定されたオーバーラップ量設定部13と、各プロジェクター2により投射する部分画像データを生成する部分画像生成部14と、を備える。画像取得部11は、内蔵する記憶装置(図示略)に記憶した画像データまたは外部の映像ソース機器から入力される画像データを取得する。各プロジェクター2には固有の識別情報が付与されており、投射位置設定部12には、各プロジェクター2の識別情報と、各プロジェクター2の位置関係が設定され、この設定状態を示す情報が投射位置設定部12からオーバーラップ量設定部13へ出力される。
【0027】
オーバーラップ量設定部13には、各プロジェクター2の識別情報と、各プロジェクター2が投射する画像において、隣接するプロジェクター2の投射画像と重複する領域(重畳領域)の位置及びサイズが対応付けて設定されている。この設定は、外部の装置からオーバーラップ量設定部13に予め入力され、オーバーラップ量設定部13が記憶していても良いし、投射位置設定部12から入力される情報に基づいてオーバーラップ量設定部13が算出する構成としてもよい。オーバーラップ量設定部13は、投射位置設定部12から入力される情報と、各プロジェクター2が投射する画像における重畳領域の位置及びサイズを示す情報とを、部分画像生成部14に出力する。
【0028】
部分画像生成部14は、オーバーラップ量設定部13から入力される情報に基づいて、画像取得部11が取得した画像データをプロジェクター2の数に分割し、分割した各々の画像データを重畳領域の分だけ拡張して部分画像データを生成する。そして、部分画像生成部14は、生成した部分画像データを、各プロジェクター2に出力する。なお、画像処理装置10は、多数の画像送信ケーブル41を介して各プロジェクター2と1対1で接続されても良いし、複数のプロジェクター2が共通の画像送信ケーブル41を介して画像処理装置10に接続された構成としても良い。
【0029】
プロジェクター2は、リフレクター23を備えたランプ22と、ランプ22が発した光を変調する変調手段としての光変調装置24と、光変調装置24によって変調された光をスクリーンSCに向けて投射する投射光学系25と、これらの各部を制御する制御装置21とを本体20に具備している。
光源としてのランプ22は、例えば、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、LED等を用いることができ、リフレクター23の他に、投射光の光学特性を高めるためのレンズ群(図示略)、偏光板、補助リフレクター(図示略)等を備えたものとしてもよい。また、ランプ22及び光変調装置24の組み合わせによる構成を、レーザー光源とレーザー光を走査する走査機構とによって置き換えてもよい。
光変調装置24は、例えば、RGBの各色に対応した3枚の透過型または反射型の液晶ライトバルブを用いた方式、1枚の液晶ライトバルブとカラーホイールを組み合わせた方式、3枚のデジタルミラーデバイスを用いた方式、1枚のデジタルミラーデバイスとカラーホイールを組み合わせたDMD方式等により構成される。また、投射光学系25は、光変調装置24により変調されたRGB3色の変調光を合成するプリズム26と、プリズム26により合成された投射画像をスクリーンSCで結像させるレンズ27を備えている。プリズム26は光変調装置24の構成に合わせて、1または複数の光学プリズムやミラーを組み合わせて構成される。本実施形態では光変調装置24として3枚の液晶ライトバルブを備え、これら3枚の液晶ライトバルブにより変調された光をプリズム26で合成する構成とする。なお、光変調装置24として1枚のみの液晶ライトバルブまたはDMDを用いる場合には、プリズム26に相当する部材は不要である。
レンズ27は、例えば複数のレンズ群で構成され、フォーカスを調整する駆動機構(図示略)により駆動される。
そして、上述のように投射光学系25が投射光を投射する投射窓20Aの周辺には遮光板31が配置され、遮光板31を個々に駆動する遮光装置3が設けられている。
【0030】
制御装置21は、通信回線43に接続され、制御装置8から送信された制御情報を受信する通信制御部212と、ランプ22に電力を供給してランプ22を点灯させる光源駆動部213と、通信制御部212が受信した制御情報に基づいて各部を制御する制御部211とを備える。制御部211は、光源駆動部213によるランプ22の点灯制御、光変調装置24における描画制御、遮光装置3による遮光制御等を行う。
【0031】
制御装置21は、画像処理装置10から入力される部分画像データを受信する画像受信部214と、画像受信部214が受信した部分画像データを解析して、光変調装置24の表示画素数に対応した投射画像データを生成し、この投射画像データに基づいて光変調装置24を駆動する駆動信号を生成する画像処理部217と、画像処理部217が生成した駆動信号に基づいて光変調装置24を駆動し、投射光を変調させる光変調装置駆動部218とを備える。
【0032】
また、制御装置21は、制御部211の制御に従って遮光装置3を動作させるための駆動信号を生成するとともに、現在の遮光板31の遮光位置を記憶する遮光装置制御部219と、遮光装置制御部219が生成した駆動信号に基づいて遮光部30を駆動する遮光装置駆動部220と、を備えている。これら制御部211、遮光装置制御部219及び遮光装置駆動部220が動作することにより、制御装置21は遮光制御装置として機能する。
【0033】
遮光装置駆動部220は、上述した遮光部30が備えるステッピングモーター(図示略)に対して駆動パルスを出力することで、遮光装置3の遮光板31をスライド移動させるとともに、ステッピングモーターの動作量に基づいて遮光板31の位置を算出し、記憶する。なお、遮光部30がモーターまたはアクチュエーターと、遮光板31の位置を検出するリニアエンコーダーとを備えた構成としてもよく、この場合、遮光装置駆動部220は、遮光部30のモーターまたはアクチュエーターに駆動電流を供給するとともに、リニアエンコーダーにより遮光板31の位置を検出する。
【0034】
制御装置8は、プロジェクター2がスクリーンSCに投射している状態でカメラ9に撮影を実行させ、カメラ9から撮影画像データが入力されると、入力された撮影画像データを解析して重畳領域の輝度の目標値を決定する。次に、制御装置8は、決定した目標の輝度と、撮影画像における重畳領域の輝度とを比較して、比較結果に基づき遮光装置3の遮光量を増大させるか低減させるかを決定してプロジェクター2に指示を送信する。この指示に従ってプロジェクター2が遮光装置3を調整した後、制御装置8は上記の動作を繰り返し、撮影画像において重畳領域の輝度が好ましい状態になったら、調整を終了する。このプロセスは、プロジェクター2ごとに順次実行される。つまり、制御装置8は、マルチプロジェクションシステム1が有する複数のプロジェクター2の中から、調整対象のプロジェクター2を選んで投射を行わせ、このプロジェクター2の投射画像をカメラ9で撮影する。
【0035】
カメラ9は、各プロジェクター2の投射範囲をカバーできる範囲を撮影するものであってもよく、多数の撮影対象のプロジェクター2に対応するため、調整対象のプロジェクター2に合わせてカメラ9の向きを変えられることが好ましい。また、カメラ9がスクリーンSC全体を撮影するのに十分な画角と撮影解像度を有する構成としてもよく、この場合はカメラ9がスクリーンSC全体を撮影した撮影画像から、各プロジェクター2が投射した投射画像を含む領域をトリミングできることが好ましい。
【0036】
制御装置8が遮光装置3の遮光位置の調整を行う場合、画像処理装置10は、プロジェクター2に対してテストパターン画像の画像データを出力する。このテストパターン画像は、例えばスクリーンSCの投射範囲において明るさ(輝度)の差が顕著に表れやすいようなパターンであり、例えば全面が白色すなわち最高輝度で投射される。テストパターンの画像データは、画像処理装置10が予め記憶しており、制御装置8から画像処理装置10に対して遮光装置3の調整が指示された場合にプロジェクター2へ出力される。
制御装置8は、マルチプロジェクションシステム1の動作モードに対応して、予め、各プロジェクター2の遮光装置3の遮光位置を記憶しており、基本的にはマルチプロジェクションシステム1の起動時や動作モードの変更時に、動作モードに対応した遮光位置を各プロジェクター2に送信し、遮光装置3を動作させる。
【0037】
図4は、マルチプロジェクションシステム1の動作モードと、各プロジェクター2の遮光位置とを対応付けるテーブルの例を示す。この図4に示す例では、遮光位置を、投射光学系25が投射光を出射する範囲において遮光板31が隠す割合(%)である遮光量で示している。マルチプロジェクションシステム1のプロジェクター2には、No.1〜21の番号が付与されていて、スクリーンSCに向かって左上隅のプロジェクター2がNo.1、その右隣のプロジェクター2がNo.2、…、右下隅のプロジェクター2がNo.21とされている。
7×3モードはマルチプロジェクションシステム1の全21台のプロジェクター2を使用して投射する動作モードである。No.1のプロジェクター2は左上の隅にあるため左と上には他の重畳領域が無い。このため、7×3モードでは上と左を遮光する必要がないので、上と左の遮光量は0%に設定される。また、No.1のプロジェクター2の投射範囲の下と右には他のプロジェクター2との重畳領域があるため、遮光量が25%に設定される。
【0038】
これに対し、5×3モードでは、横5列×縦3列のプロジェクター2のみが使用される。本実施形態では、5×3モードで左端の2列すなわち6台のプロジェクター2が使用されず、残り15台のプロジェクター2が投射する。5×3モードではNo.1、No.2のプロジェクター2は投射光を発しないので、投射範囲の上下左右から遮光量が100%となるよう遮光板31が進出する。5×3モードで使用されないプロジェクター2はランプ22を消灯してもよいが、その後に7×3モードに切り替わった場合に速やかに投射開始できるようにランプ22を点灯する場合がある。このため遮光板31は、投射光学系25の投射光を全て隠す位置まで進出する。なお、このプロジェクター2においては光変調装置24が、投射光の光量ができるだけ少なくなるよう制御される。
また、プロジェクター2は、電源がオフにされると遮光板31を、投射窓20Aを隠さない位置まで退避させる。すなわち電源オフ時の遮光量は0%であり、電源が投入されると、画像処理装置10から送信される遮光位置またはデフォルトの遮光位置として制御部211が記憶している位置に、遮光板31を移動させる。
【0039】
ところで、遮光装置3において、遮光板31を移動させるステッピングモーターやアクチュエーターが故障したり、遮光板31を支持する支持構造(図示略)の劣化や塵埃の影響で遮光板31がスムーズに動作しなくなったりして、遮光板31が指定された遮光位置まで移動しないことがある。この場合、重畳領域に相当する光を十分に減光することができない。つまり、重畳領域の輝度が望ましい程度に調整されなくなる。重畳領域の明るさが、許容可能な範囲から逸脱した場合には、遮光装置3に何らかの不具合があることが考えられる。このような状態を、以下の説明では動作異常とする。遮光装置3の動作異常は、重畳領域を目立たなくする制御ができなくなることを意味し、投射画像の品位を低下させる要因となる。従って、マルチプロジェクションシステム1を停止させてプロジェクター2を交換し、或いは修理する必要があるが、本実施形態のマルチプロジェクションシステム1では、遮光装置3の動作異常に対応して、重畳領域に投射される投射光を、光変調装置24または他のプロジェクター2を使用して、十分に減光する。以下、この動作について説明する。以下の動作において、制御装置8は、減光制御装置として機能する。
【0040】
図5は、マルチプロジェクションシステム1の動作を示すフローチャートである。この図5に示す動作において、マルチプロジェクションシステム1は、遮光装置3の動作異常を検出して、動作異常が発生した場合に対応する処理を行う。
制御装置8は、マルチプロジェクションシステム1の電源がオンにされた場合、或いは、マルチプロジェクションシステム1の動作モードが変更された場合に待機し(ステップS11)、電源がオンにされた直後または動作モードが変更された直後であった場合(ステップS11;Yes)、制御装置8は、異常検出処理を実行する(ステップS12)。異常検出処理の詳細については図6及び図7を参照して後述する。
【0041】
異常検出処理を行った後、制御装置8は、いずれかの遮光装置3において動作異常が生じたか否かを判別し(ステップS13)、どの遮光装置3でも動作異常が無ければ(ステップS13;No)、本処理を終了する。また、動作異常を生じた遮光装置3があった場合(ステップS13;Yes)、制御装置8は、動作異常が発生した遮光装置3を備えるプロジェクター2と、動作異常により十分に減光していない遮光板31とを特定し(ステップS14)、この遮光板31の機能を補償するように、異常対応処理を行う(ステップS15)。異常対応処理の詳細については図8を参照して後述する。
【0042】
異常対応処理を行った後、制御装置8は、異常対応処理によって補正された状態を判定する(ステップS16)。この判定は、例えば、カメラ9によりスクリーンSCの投射画像全体、または各プロジェクター2の投射範囲を撮影し、撮影画像に基づいて各々の重畳領域の明るさが許容範囲内であるかを判別することで実行できる。制御装置8は判定結果を参照し(ステップS17)、補正状態が良好でない場合は(ステップS17;No)、ステップS15に戻って再び異常対応処理を行う。また、補正状態が良好な場合は(ステップS17;Yes)、ステップS14で特定したプロジェクター2と遮光板31とを示す情報、及び、ステップS15の異常対応処理で使用した補正方法とを、例えばネットワーク5を介して接続された他の装置(図示略)や、プロジェクター2、画像処理装置10、或いは画像処理装置10に接続された他の装置(図示略)に通知し(ステップS18)、本処理を終了する。通知がされた相手側の装置は、例えば、マルチプロジェクションシステム1を操作するオペレーターに対して、異常発生の状態等を報知することができる。
【0043】
ここで、遮光装置3の動作異常を検出する動作について、2通りの検出方法を例に挙げて説明する。
図6は、遮光装置3の動作異常を検出する異常検出処理を示すフローチャートであり、カメラ9を用いて検出する方法を示す。
図6の動作において、制御装置8は、画像処理装置10によって所定のテストパターンを取得させ、画像処理装置10からプロジェクター2にテストパターンの部分画像を送信させることにより、実行中の動作モードで使用するプロジェクター2に、テストパターンを投射させる(ステップS21)。
続いて、制御装置8は、カメラ9により撮影を行わせて、撮影画像を取得する(ステップS22)。この撮影画像はスクリーンSC上の投射画像全体を撮影した1枚の画像であってもよいし、各重畳領域を個別に撮影した複数枚の撮影画像であってもよい。
【0044】
制御装置8は、カメラ9の撮影画像から重畳領域を特定し、各重畳領域の明るさを検出し(ステップS23)、検出した明るさが許容範囲外となっている重畳領域の有無を判定する(ステップS24)。許容範囲外の明るさとなっている重畳領域があれば(ステップS24;Yes)、制御装置8は、動作異常が発生したと判定し(ステップS25)、許容範囲外の明るさとなっている重畳領域が無ければ(ステップS24;No)、動作異常なしと判定する(ステップS26)。
【0045】
また、図7は、遮光装置3の動作異常を検出する異常検出処理を示すフローチャートであり、遮光部30の動作に伴い出力される信号に基づいて異常を検出する方法を示す。
図7の動作において、制御装置8は、マルチプロジェクションシステム1のプロジェクター2が備える全ての遮光板31のうち、対象の遮光板31を選択し、この遮光板31を有するプロジェクター2に対して制御信号を送信して、当該遮光板31を駆動させる(ステップS31)。対象の遮光板31は1個ずつ選択してもよいし、複数の遮光板31をまとめて対象としてもよい。制御装置8は、対象の遮光板31を有するプロジェクター2を制御して、この遮光板31を駆動する遮光部30が有する機器の動作状態を反映する電圧または電流を検出することで、当該機器の動作状態を検出する(ステップS32)。具体的には、遮光部30のステッピングモーターが動作時に出力するパルス、遮光部30のリニアエンコーダーが出力する検出信号、負荷に応じてステッピングモーターやアクチュエーターに流れる電流等を検出する。
【0046】
制御装置8は、検出した電圧または電流等に基づいて当該機器の動作状態が正常か異常かを判別し(ステップS33)、当該機器が正常動作していない場合は(ステップS33;No)、その遮光板31において動作異常発生と判定し(ステップS34)、当該機器が正常動作している場合には(ステップS33;Yes)、異常なしと判定する(ステップS35)。
制御装置8は、対象の遮光板31を特定する情報と、判定結果とを対応付けて、図示しない揮発性メモリー又は不揮発性メモリーに一時的に記憶する(ステップS36)。その後、制御装置8は、全ての遮光板31の検出が完了したか否かを判別し(ステップS37)、検出が完了していない場合は(ステップS37;No)ステップS31に戻り、全ての遮光板31について検出が完了した場合は(ステップS37;Yes)、一時的に記憶した判定結果を参照して、異常が発生した遮光板31の有無を判別する(ステップS38)。異常が発生した遮光板31があった場合(ステップS38;Yes)、動作異常が発生したと判定し(ステップS39)、異常が発生した遮光板31が無ければ(ステップS38;No)、動作異常なしと判定する(ステップS40)。
【0047】
以上の異常検出処理によって異常が検出されると、異常が検出された遮光板31と、この遮光板31を有する駆動する遮光装置3、及び、この遮光板31を有するプロジェクター2が特定される。そして、この遮光板31が十分に減光できない状態を補償し、重畳領域に投射される投射光を望ましい状態に減光するため、制御装置8は異常対応処理を実行する。
【0048】
図8は、遮光装置3の動作異常が発生した場合に実行される異常対応処理を示すフローチャートである。
この図8の動作に先立って、制御装置8は、ある遮光板31により十分に減光できない状態を、その遮光板31を有するプロジェクター2によって補償するか、或いは、そのプロジェクター2に隣接するプロジェクター2によって補償するかを決定する。これは、予めいずれか一方に設定されていてもよいし、その都度、制御装置8が決定することも可能である。
【0049】
また、いくつかの条件に対応付けて、動作異常が発生したプロジェクター2により対応するか、隣接するプロジェクター2により対応するか、その両方により対応するかを判別する方法もある。例えば、動作異常が発生した遮光装置3を有するプロジェクター2が、実行中の動作モードにおいてスクリーンSCに投射される投射画像のどの部分を投射するかに応じて決定する方法がある。より具体的な例としては、重畳領域の明るさの差が目立ちやすい中央部分に投射するプロジェクター2において動作異常が発生した場合は、当該プロジェクター2と、隣接するプロジェクター2との両方により対応処理を行い、周縁部を投射するプロジェクター2において動作異常が発生した場合は隣接するプロジェクター2のみにより対応処理を行い、重畳領域の明るさの差が目立ちにくい下部を投射するプロジェクター2において動作異常が発生した場合は、当該プロジェクター2のみにより対応処理を行うよう決定するとよい。
【0050】
異常対応処理の方法としては、動作異常により十分に動かない遮光板31の影響を解消するため、このプロジェクター2が有する光変調装置24の減光状態を調整する方法、隣接するプロジェクター2が有する光変調装置24の減光状態を調整する方法、及び、隣接するプロジェクター2が有する遮光装置3の減光状態を調整する方法がある。また、光変調装置24の減光状態と遮光装置3の減光状態の両方を調整する方法も実現可能である。
また、遮光板31を駆動する遮光装置3の動作異常は、投射光学系25の投射光が十分に減光されないで、重畳領域が明るくなってしまうという事態だけでなく、投射光が過度に減光されて重畳領域が望ましい状態より暗くなってしまう事態を招く。このため、上記の異常対応処理においては、光変調装置24または隣接するプロジェクター2の遮光板31により投射光を強く減光して暗くするだけでなく、光変調装置24または隣接するプロジェクター2の遮光板31を調整してより多くの投射光を投射することも可能である。
【0051】
図8には、異常が発生したプロジェクター2または隣接するプロジェクター2の光変調装置24を用いる異常対応処理を示す。
この図8の動作において、制御装置8は、制御対象のプロジェクター2を設定し(ステップS51)、この対象のプロジェクター2の投射範囲のうち、減光状態を調整する範囲を特定する(ステップS52)。制御装置8は、特定した範囲において光変調装置24に描画する画像の階調値を画素毎に調整するマスクを生成し(ステップS53)、このマスクをかけて画像を光変調装置24に描画して投射する旨を指示する制御情報を生成する(ステップS54)。その後、制御装置8は、生成したマスク及び制御情報を、対象のプロジェクター2に送信し(ステップS55)、本処理を終了する。
【0052】
以上のように、本発明を適用した第1の実施形態によれば、複数のプロジェクター2を備え、隣接する複数のプロジェクター2から投射される投射画像が重畳領域を形成するように、複数のプロジェクター2からスクリーンSCに投射画像を投射するマルチプロジェクションシステム1において、プロジェクター2は、光源としてのランプ22と、ランプ22が発した光を変調する光変調装置24と、光変調装置24によって変調された光を投射する投射光学系25と、投射光学系25によって投射された投射光を遮光する遮光板31を備え、重畳領域の投射光を所定の状態に減光する遮光装置3と、を備え、いずれかのプロジェクター2が備える遮光装置3によって投射光が所定の状態に減光されない場合に、このプロジェクター2またはこのプロジェクター2に隣接して配置されたプロジェクター2が投射する投射光の減光状態を制御する制御装置8とを備える。このため、マルチプロジェクションシステム1において、プロジェクター2の遮光装置3の動作に支障が生じて投射光が所定の状態に減光されない場合に、制御装置8によって投射光の減光状態を制御し、スクリーンSCの重畳領域に投射される投射光を本来減光されるべき所定の状態に近づけることができる。これにより、遮光板31を駆動する遮光装置3の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステム1を停止させてプロジェクター2を交換する等の措置を行わずに、マルチプロジェクションシステム1の使用を続け、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0053】
また、制御装置8は、遮光装置3の動作異常が発生したプロジェクター2または当該プロジェクター2に隣接して配置されたプロジェクター2が備える光変調装置24を制御して、遮光板31の機能を修復することなく、重畳領域を所定の状態に減光できる。これにより、遮光板31の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステム1の使用停止を回避し、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0054】
また、制御装置8は、スクリーンSCに投射された投射画像を撮影した撮影画像に基づいて、或いは、遮光装置3の動作状態を検出することにより、投射光が所定の状態に減光されているか否かを判別するので、遮光板31によって重畳領域が所定の状態まで減光されているか否かを、速やかに、かつ確実に検出できる。
さらに、マルチプロジェクションシステム1は、投射画像の投射に使用するプロジェクター2の数を変更可能に構成され、制御装置8は、投射画像の投射に使用するプロジェクター2の数が変更された際、または、プロジェクター2の起動時に、投射光が所定の状態に減光されているか否かを判別するので、マルチプロジェクションシステム1を構成するプロジェクター2の遮光板31が移動される可能性が高い機会に、遮光板31によって重畳領域が所定の状態まで減光されているか否かを判別するので、遮光板31の動作異常等を速やかに検出できる。
なお、上記第1の実施形態では、プロジェクター2に接続された制御装置8の制御によって、遮光装置3の動作異常を検出する異常検出処理および検出された動作異常に対応する異常対応処理が実行される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各々のプロジェクター2が自律的に異常検出処理および異常対応処理を実行してもよい。この場合について第2の実施形態として説明する。
【0055】
[第2の実施形態]
本第2の実施形態では、図6及び図7に示す異常検出処理および図8に示す異常対応処理をプロジェクター2が実行する。ここで、マルチプロジェクションシステム1の各部の構成について上記第1の実施形態と共通する部分については、同符号を付して説明を省略する。
図9は、本第2の実施形態におけるプロジェクター2の動作を示すフローチャートである。以下の動作を実行する制御装置21は、減光制御手段として機能する。
上記第1の実施形態では制御装置8が実行した処理を、第2の実施形態ではプロジェクター2が行う。すなわち、各々のプロジェクター2は、制御装置21の機能により、遮光装置3が駆動されるタイミングまで待機し(ステップS61)、マルチプロジェクションシステム1の動作開始またはプロジェクター2の電源がオンにされた場合や、マルチプロジェクションシステム1の動作モードの変更に伴い制御装置8から遮光量の変更を指示する制御情報を受信した場合等、遮光板31を移動させるまでは、画像処理装置10から入力された画像を投射する動作を行っている。
【0056】
遮光装置3が駆動される場合(ステップS61;Yes)、プロジェクター2は、異常検出処理を実行する(ステップS62)。このステップS62で実行する異常検出処理は、図6に示した処理と同様である。ここで、テストパターンの投射は、電源オンまたは動作モードの変更時に制御装置8の制御に基づいて実行され、制御装置8は、カメラ9により撮影した撮影画像を各プロジェクター2の投射範囲に対応して分割し、各々のプロジェクター2に対して送信する。プロジェクター2は、制御装置8から受信した撮影画像を元に、図6のステップS23〜ステップS26の処理を実行する。これにより、遮光装置3の動作異常により遮光板31が所定の位置にないことを速やかに、かつ確実に検出できる。
また、プロジェクター2は、ステップS62において、図7に示す異常検出処理を実行できる。この場合、プロジェクター2は、自己が備える遮光装置3の4枚の遮光板31のみを対象として、ステップS31〜ステップS40の処理を実行する。この場合には、制御装置8の制御によるテストパターンの投射や、撮影画像の送信を必要とせず、自律的に遮光装置3の動作異常を検出できるという利点がある。
【0057】
異常検出処理を行った後、プロジェクター2は、いずれかの遮光板31の動作異常が生じたか否かを判別し(ステップS63)、動作異常が無ければ(ステップS63;No)、本処理を終了する。また、いずれかの遮光板31の動作異常を生じた場合(ステップS63;Yes)、プロジェクター2は、動作異常が発生した遮光板31を特定し(ステップS64)、この遮光板31の機能を補償するように、異常対応処理を行う(ステップS65)。異常対応処理の詳細については図10を参照して後述する。
【0058】
異常対応処理を行った後、プロジェクター2は、異常対応処理によって補正された状態を判定する(ステップS66)。この判定は、例えば、カメラ9により撮影された撮影画像が制御装置8から送信されるのを待機し、制御装置8から撮影画像を受信した場合に、この撮影画像を用いて行われる。プロジェクター2は、撮影画像における重畳領域の明るさが許容範囲内であるかに基づいて判定を行い、判定結果を参照し(ステップS67)、補正状態が良好でない場合は(ステップS67;No)、ステップS65に戻って再び異常対応処理を行う。また、補正状態が良好な場合は(ステップS67;Yes)、本処理を終了する。
【0059】
図10は、第2の実施形態においてプロジェクター2が実行する異常対応処理を示すフローチャートである。
この図10に示す異常対応処理において、プロジェクター2は、自己が備える光変調装置24を用いて減光状態を制御する。すなわち、制御装置21の機能により、自己が備える投射光学系25の投射範囲のうち、減光状態を調整する範囲を特定する(ステップS71)。プロジェクター2は、特定した範囲において光変調装置24に描画する画像の階調値を画素毎に調整するマスクを生成し(ステップS72)、光変調装置24に描画する画像に、生成したマスクをかけて描画する動作を開始し(ステップS73)、本処理を終了する。
【0060】
このように、制御装置8の制御によらず、プロジェクター2自身が異常検出処理と異常対応処理とを実行して、遮光板31による減光に異常が発生した場合に、この異常による影響を補償するように、重畳領域の減光状態を調整できる。
また、光変調装置24による減光状態の制御に限らず、隣接するプロジェクター2の動作異常の影響を解消するため、自己が有する遮光装置3の減光状態を調整する方法がある。また、光変調装置24の減光状態と遮光装置3の減光状態の両方を調整する方法も実現可能である。
【0061】
さらに、プロジェクター2は、ステップS62において、図6に示した処理と、図7に示した処理とを続けて実行することもできる。例えば、図6の処理により、自己が投射する投射範囲における重畳領域の明るさが、重畳領域を目立たなくするための所定の状態でないことを検出した場合に、図7の処理で、自己が備える遮光装置3に動作異常がないことが検出されることがあり得る。この場合、隣接するプロジェクター2の遮光装置3に動作異常が発生していることになる。プロジェクター2の上下左右に隣接するプロジェクター2のうち、どのプロジェクター2において遮光装置3の動作異常が発生したかは、明るさが許容範囲から逸脱した重畳領域の位置が、投射範囲の上下左右のどこであるかに基づいて、容易に特定できる。
この場合、プロジェクター2は、図10に示す異常対応処理を行って、隣接するプロジェクター2が有する遮光装置3の動作の異常による影響を補償するように、重畳領域の減光状態を調整できる。このような動作は、例えば、隣接するプロジェクター2が異常対応処理を実行する機能を持たない場合には非常に有効である。
【0062】
また、プロジェクター2は、遮光装置3の動作異常が発生したプロジェクター2と相互に通信を行って、異常対応処理を実行できる。
図11は、プロジェクター2が実行する異常対応処理の別の例を示すフローチャートである。
この図11において、(A)は動作異常が発生したプロジェクター2の動作を示し、(B)は動作異常が発生していないプロジェクター2の動作を示す。
プロジェクター2は、自己の動作異常を上記のように検出した場合に、図11の動作を開始し、自己が備える投射光学系25の投射範囲のうち、減光状態を調整する範囲を特定して、所定の状態に減光されていない重畳領域側のプロジェクター2に対して通知する(図11(A)のステップS81)。
この通知を受信したプロジェクター2は、自己が備える投射光学系25の投射範囲のうち、通知された範囲に対応する範囲を特定し(図11(B)のステップS91)、特定した範囲において光変調装置24に描画する画像の階調値を画素毎に調整するマスクを生成し(ステップS92)、光変調装置24に描画する画像に、生成したマスクをかけて描画する動作を開始する(ステップS93)。その後、プロジェクター2は、減光状態を調整する対応が終了したことを、動作異常が発生したプロジェクター2に通知し(ステップS94)、本処理を終了する。一方、動作異常が発生したプロジェクター2は、隣接するプロジェクター2からの通知を受信して、対応が終了したことを確認する(図11(A)のステップS82)。このステップS82の後、プロジェクター2は、再び異常検出処理を行って、適切に減光状態が調整されたか否かを確認してもよい。
【0063】
[第3の実施形態]
図12は、第3の実施形態におけるプロジェクター200及び画像処理装置10の構成を示す図である。
本第3の実施形態では、上記第1及び第2の実施形態で説明したプロジェクター2自身に、スクリーンSCの投射範囲を撮影するカメラ28と、カメラ28により撮影を実行させて撮影画像を取得し、制御装置21Aに出力する撮影制御部29とを備えている。プロジェクター200及び制御装置21Aにおいて、カメラ28、撮影制御部29を除く各部は上記第1、第2の実施形態と共通する構成である。カメラ28は、カメラ9と同様に構成され、このプロジェクター200の投射光学系25がスクリーンSCに投射する投射範囲を撮影可能な画角を有する。また、撮影制御部29は、制御装置21Aの制御により、カメラ28に対して撮影指示を出力し、撮影を実行させ、撮影後に撮影画像をカメラ28から取得して、撮影画像データとして制御装置21Aに出力する。
【0064】
この第3の実施形態におけるプロジェクター200は、自身が備えるカメラ28によってスクリーンSC上の投射範囲を撮影して、第2の実施形態で説明した異常検出処理を実行できる。この場合、プロジェクター200は、制御装置21の機能により、任意のタイミングで、或いは隣接するプロジェクター2と同期してテストパターンを投射し、カメラ28による撮影を行うことができる。すなわち、制御装置8の動作に影響されず、プロジェクター200単体で、或いは隣接する複数のプロジェクター200により、自律的に異常検出処理を実行できるという利点がある。そして、プロジェクター200は、重畳領域の明るさを検出し、この明るさが許容範囲を逸脱する場合に、遮光装置3の動作異常があると判定し、図10及び図11に示した異常対応処理を実行できる。
また、マルチプロジェクションシステム1を、上記第1、第2の実施形態で説明したプロジェクター2と、プロジェクター200とを混在させて構成してもよい。この場合、プロジェクター2どうしが隣接しないようにプロジェクター200を配置すれば、全てのプロジェクター2、200における遮光装置3の動作異常を検出し、この動作異常に対応して減光状態を調整できる。
【0065】
なお、上記各実施形態で説明したマルチプロジェクションシステム1は、スクリーンSCの正面側にプロジェクター2、200を配置し、スクリーンSCの正面に投射画像を投射する構成として説明したが、本発明はこれに限定されず、各プロジェクター2、200をスクリーンSCの背面側に配置して、スクリーンSCの背面に投射画像を投射する構成としてもよい。プロジェクター2、200がスクリーンSCの背面側に配置される背面投射型の構成とした場合、カメラ9、28のみをスクリーンSCの前面側に配置して、スクリーンSCの前面から撮影した撮影画像をもとに重畳領域の輝度を調整してもよい。この場合、背面投射型の構成でありながら、実際に見られるスクリーンSCの前面側の画像を基準として、より適切に遮光装置3の異常検出等を行える。
【0066】
また、上記各実施形態では、プロジェクター2が投射画像の投射光を発する投射光学系25を備えた本体20の前面に、遮光板31を設けた構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、遮光板31をプロジェクター2の本体20に内蔵して、投射光学系25を通る投射光を遮る位置、或いは投射光学系25と投射窓20Aとの間に設けてもよい。また、変調手段としての光変調装置24が液晶ライトバルブで構成される場合には、遮光板31のような板状部材に代えて、液晶ライトバルブにおいて投射画像の周縁を遮光することも可能である。すなわち、遮光板31を投射光学系25に進出させて光を遮り、光量を調整する構成に代えて、光変調装置24の周縁部分において階調値を下げて減光することが考えられる。この場合、遮光板31のようなハードウェアを用いることなく、光変調装置24を透過する光量を周縁部において絞ることができるので、遮光板31を進出させた場合と同様に投射光学系25が投射する投射画像を減光させて、重畳領域における輝度や色調を調整し、高品位な画像を投射できる。
さらに、マルチプロジェクションシステム1が備えるプロジェクター2の数は任意であり、制御装置8の機能と他のサーバー装置の機能とが一つのコンピューターによって構成されても良く、その他の細部構成についても任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…マルチプロジェクションシステム、2、200…プロジェクター、3…遮光装置(減光手段)、5…ネットワーク、8…制御装置(遮光制御装置)、9…カメラ(撮像装置)、10…画像処理装置、14…部分画像生成部、20A…投射窓、21、21A…制御装置(遮光制御手段)、22…ランプ(光源)、24…光変調装置(変調手段)、25…投射光学系(投射手段)、30…遮光部、31…遮光板、111、112、113、114…重畳領域、SC…スクリーン(投射面)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプロジェクターを備えたマルチプロジェクションシステム、このマルチプロジェクションシステムを構成するプロジェクター、画像投射方法、及び、プロジェクターの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のプロジェクターにより1つの画像を投射するマルチプロジェクションシステムが知られている。この種のシステムでは、隣り合うプロジェクターの投射範囲の境界が目立たなくなるように投射範囲の一部を重複させる。ここで、重ね合わせ部分の輝度が他の部分よりも高くなってしまうことを避けるため、プロジェクターの光束の通過経路上に遮光装置を設けて、重ね合わせ部に投射される光を減光する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−268476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のマルチプロジェクションシステムが使用する遮光装置は、プロジェクターの光束に対し、遮光板を進退させて減光を行う。このように部材を移動させる駆動部を利用して減光を行う構成では、駆動部の故障或いは動作不良が起こり得る。特許文献1の例では1つのプロジェクターが4枚の遮光板を備えており、マルチプロジェクションシステムを構成するプロジェクターの数が増えると遮光板及び駆動部の数も飛躍的に増加するので、駆動部の故障率は無視できない水準となり、マルチプロジェクションシステム全体の可用性への影響が懸念される。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数のプロジェクターを備えたマルチプロジェクションシステムにおいて、プロジェクターが備える遮光板の動作異常に起因してマルチプロジェクションシステムが使用できなくなる事態を回避または抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、複数のプロジェクターを備え、隣接する複数の前記プロジェクターから投射される投射画像が重畳領域を形成するように、前記複数のプロジェクターから投射面に前記投射画像を投射するマルチプロジェクションシステムであって、前記プロジェクターは、光源と、前記光源が発した光を変調する変調手段と、前記変調手段によって変調された光を投射する投射手段と、前記投射手段によって投射された投射光を遮光する遮光板を備え、当該遮光板を移動させて前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光する減光手段と、を備え、いずれかの前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、この前記プロジェクターまたはこの前記プロジェクターに隣接して配置された前記プロジェクターが投射する投射光の減光状態を制御する減光制御装置とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、マルチプロジェクションシステムにおいて、重畳領域の投射光が遮光板によって所定の状態に減光されない場合に、このプロジェクターまたは隣接するプロジェクターの投射光の減光状態を制御して、重畳領域の投射光を本来減光されるべき所定の状態に近づけることができる。
ここで、所定の状態に減光されない場合とは、減光が不十分なために投射光が所定の状態より明るくなっている場合だけでなく、投射光が過度に減光されて所定の状態より暗くなっている場合を含む。所定の状態とは、例えば、投射面において重畳領域が目立たなくなる状態である。
これにより、遮光板の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステムを停止させてプロジェクターを交換する等の措置を行わずに、マルチプロジェクションシステムの使用を続け、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0006】
また、本発明は、上記マルチプロジェクションシステムにおいて、前記減光制御装置は、いずれかの前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、前記重畳領域を前記所定の状態とすべく、この前記プロジェクターまたはこの前記プロジェクターに隣接して配置された前記プロジェクターが備える前記変調手段を制御することを特徴とする。
本発明によれば、重畳領域の投射光が遮光板によって所定の状態まで減光されない場合に、そのプロジェクターまたは隣接するプロジェクターが備える変調手段の減光状態を制御し、遮光板の機能を修復することなく、重畳領域を所定の状態に減光できる。これにより、遮光手段の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステムの使用停止を回避し、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0007】
また、本発明は、上記マルチプロジェクションシステムにおいて、前記減光制御装置は、前記投射面に投射された投射画像を撮影した撮影画像に基づいて、或いは、前記減光手段の動作状態を検出することにより、投射光が前記所定の状態に減光されているか否かを判別することを特徴とする。
本発明によれば、マルチプロジェクションシステムを構成するプロジェクターが遮光板によって所定の状態に減光できているか否かを、速やかに、かつ確実に検出できる。
【0008】
また、本発明は、上記マルチプロジェクションシステムにおいて、投射画像の投射に使用する前記プロジェクターの数を変更可能に構成され、前記減光制御装置は、投射画像の投射に使用する前記プロジェクターの数が変更された際、または、前記プロジェクターの起動時に、投射光が前記所定の状態に減光されているか否かを判別することを特徴とする。
本発明によれば、マルチプロジェクションシステムを構成するプロジェクターの遮光板が移動される機会に、遮光板によって重畳領域が所定の状態まで減光されているか否かを判別するので、遮光手段の動作異常等を速やかに検出できる。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明は、複数のプロジェクターとともにマルチプロジェクションシステムを構成し、隣接する前記プロジェクターから投射される投射画像と自己が投射する投射画像とが重畳領域を形成するように投射面に投射を行うプロジェクターであって、光源と、前記光源が発した光を変調する変調手段と、前記変調装置によって変調された光を投射する投射手段と、前記投射手段によって投射された投射光を遮光する遮光板を備え、当該遮光板を移動させて前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光する減光手段と、自己または他の前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、自己が備える前記投射手段により投射された投射光の減光状態を制御する減光制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明のプロジェクターによれば、隣接するプロジェクターと投射光が重なる重畳領域の投射光が遮光板によって所定の状態まで減光されない場合に、投射光の減光状態が制御され、重畳領域に投射される投射光を本来減光されるべき所定の状態に近づけることができる。これにより、本発明のプロジェクターをマルチプロジェクションシステムに採用することで、遮光板の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステムを停止させてプロジェクターを交換する等の措置を行わずに、使用を続け、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記減光制御手段は、自己または他の前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、前記重畳領域を前記所定の状態とすべく、自己または他の前記プロジェクターが備える前記変調手段によって投射光を減光させることを特徴とする。
本発明によれば、変調手段の減光状態を調整することで、遮光板の機能を修復することなく、重畳領域を所定の状態に減光できる。これにより、このプロジェクターで構成したマルチプロジェクションシステムにおいては、遮光手段の動作異常等が発生しても、システムの使用停止を回避し、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0011】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記減光制御手段は、隣接する前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されないことで、投射面に形成される投射画像の前記重畳領域が所定の状態にならない場合に、前記重畳領域を前記所定の状態とすべく、自己が備える前記減光手段を制御することを特徴とする。
本発明によれば、遮光板によって所定の状態まで減光されない場合に、隣接するプロジェクターの遮光板による減光状態を調整することで、遮光板を修理しなくても重畳領域を所定の状態に減光できる。これにより、このプロジェクターで構成したマルチプロジェクションシステムにおいては、遮光板の動作異常等が発生しても、システムの使用停止を回避し、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0012】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記投射面を撮影する撮影手段を備え、前記撮影手段により撮影された撮影画像に基づいて、前記重畳領域が前記所定の状態に減光されないことを検出することを特徴とする。
本発明によれば、遮光板によって所定の状態まで減光されているか否かを、速やかに、かつ確実に検出できる。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明は、複数のプロジェクターを用いた画像投射方法であって、隣接する複数の前記プロジェクターから投射される投射画像が重畳領域を形成するように、前記複数のプロジェクターから投射面に前記投射画像を投射し、前記プロジェクターが備える遮光板を移動させて投射光を遮光することにより、前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光して投射を行い、いずれかの前記プロジェクターが備える前記遮光板によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、この前記プロジェクターまたはこの前記プロジェクターに隣接して配置された前記プロジェクターが投射する投射光の減光状態を制御することを特徴とする。
本発明の画像投射方法を適用することにより、マルチプロジェクションシステムにおいて、隣接するプロジェクターの投射光が重なる重畳領域の投射光が遮光板によって所定の状態まで減光されない場合に、投射光の減光状態を制御して、重畳領域の投射光を本来減光されるべき所定の状態に近づけることができる。これにより、本発明の制御方法を適用したプロジェクターをマルチプロジェクションシステムに採用することで、プロジェクターが備える遮光板の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステムを停止させてプロジェクターを交換する等の措置を行わずに、使用を続け、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明は、複数のプロジェクターとともにマルチプロジェクションシステムを構成するプロジェクターの制御方法であって、隣接する前記プロジェクターから投射される投射画像と自己が投射する投射画像とが重畳領域を形成するように、投写面に前記投写画像を投射し、前記プロジェクターが備える遮光板を移動投射光を遮光することにより、前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光し、自己または他の前記プロジェクターが備える前記遮光板によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、自己の投射光の減光状態を制御することを特徴とする。
本発明の制御方法を適用したプロジェクターは、隣接するプロジェクターと投射光が重なる重畳領域の投射光が遮光板によって所定の状態まで減光されない場合に、投射光の減光状態を制御して、重畳領域の投射光を本来減光されるべき所定の状態に近づけることができる。これにより、本発明の制御方法を適用したプロジェクターをマルチプロジェクションシステムに採用することで、遮光板の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステムを停止させてプロジェクターを交換する等の措置を行わずに、使用を続け、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プロジェクターが備える遮光板の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステムを停止させてプロジェクターを交換する等の措置を行わずに、使用を続け、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態におけるマルチプロジェクションシステムの概略構成を示す図である。
【図2】マルチプロジェクションシステムによる投射態様を模式的に示す図である。
【図3】プロジェクター及び画像処理装置の構成を示す図である。
【図4】マルチプロジェクションシステムの動作モードと、動作モード毎の遮光板の使用状態とを示す説明図である。
【図5】マルチプロジェクションシステムの動作を示すフローチャートである。
【図6】プロジェクターの遮光装置の動作異常を検出する異常検出処理を示すフローチャートである。
【図7】プロジェクターの遮光装置の動作異常を検出する異常検出処理を示すフローチャートである。
【図8】プロジェクターの遮光板の異常に対応する異常対応処理を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態においてプロジェクターの動作を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態においてプロジェクターが実行する異常対応処理を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態においてプロジェクターが実行する異常対応処理を示すフローチャートである。
【図12】第3の実施形態におけるプロジェクター及び画像処理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係るマルチプロジェクションシステム1の概略構成を示す図である。
この図1に示すマルチプロジェクションシステム1は、複数のプロジェクター2を並べて配置し、これら複数のプロジェクター2による投射画像を組み合わせて、タイリング表示による一つの大画面画像を投射するシステムである。本実施形態では、横7列×縦3列の21台のプロジェクター2を配置した構成を例に挙げて説明する。このマルチプロジェクションシステム1は、使用するプロジェクター2の台数が異なる複数の動作モードを実行可能である。例えば、21台のプロジェクター2の全部を使用して投射を行う動作モード、横5列×縦3列の15台のプロジェクター2を使用して投射する動作モード等を実行できる。投射に使用されないプロジェクター2は、後述するように投射光を出さないよう制御される。
各プロジェクター2には、投射される画像の画像データをプロジェクター2に出力する画像処理装置10が、画像送信ケーブル41を介して接続される。
画像処理装置10は、マルチプロジェクションシステム1により投射される上記大画面画像の原画像を、実行中の動作モードで使用するプロジェクター2の数に対応する部分画像に分割し、各プロジェクター2が投射すべき部分画像を表す画像データ(部分画像データ)を生成する。そして、画像処理装置10は生成した各部分画像データを、その部分画像に対応する位置に配置されたプロジェクター2に対し、画像送信ケーブル41を介して出力する。このため、各プロジェクター2は、画像処理装置10から入力される画像データを投射するだけで、マルチプロジェクションシステム1全体としてタイリングによる画像投射を行える。
【0018】
図2は、複数のプロジェクター2を用いた投射態様を模式的に示す図である。
この図2には、4台のプロジェクター2を用い、タイリングによってスクリーンSC(投射面)に一つの投射画像100を投射する場合を例示する。この例では、スクリーンSCの左上にプロジェクター2Aが投射し、スクリーンSCの右上にプロジェクター2Bが、左下にプロジェクター2Cが、右下にプロジェクター2Dが投射する。ここで、タイリングによる境界がスクリーンSCで目立たないように、各プロジェクター2A,2B,2C,2Dが投射する投射画像は少しずつ重ね合わされる。すなわち、プロジェクター2Aが投射する投射画像101と、その右隣にプロジェクター2Bが投射する投射画像102とは、図中に示すように互いの縁が重ね合わされ、重畳領域111が形成されている。同様に、プロジェクター2Cが投射する投射画像103と、プロジェクター2Cの右隣のプロジェクター2Dによる投射画像104とは重畳領域112を形成するよう重ねられる。さらに、投射画像は上下方向にも重ね合わされ、重畳領域113、114が形成される。
【0019】
スクリーンSC上において各プロジェクター2A,2B,2C,2Dが画像を投射する範囲は、スクリーンSCと各プロジェクター2A〜2Dとの距離、隣接するプロジェクター2どうしの間隔、及び、スクリーンSCに対する各プロジェクター2A〜2Dの光軸の角度により決定される。つまり、各プロジェクター2A〜2DはスクリーンSC上で重畳領域111〜114を形成する位置及び角度に、予め設置されている。
図2の例で、画像処理装置10は、投射画像100を4台のプロジェクター2A〜2Dで投射するために投射画像100を4つの部分画像に分割する。画像処理装置10は、重畳領域111〜114が形成されることを加味して、投射画像100の4分の1よりも大きい範囲を各プロジェクター2A〜2Dに割り当てる。画像処理装置10は、各プロジェクター2A〜2Dの割り当て分の部分画像データを、画像送信ケーブル41を介して各プロジェクター2A〜2Dに出力する。
【0020】
画像処理装置10は、投射画像101と投射画像102とが重畳領域111で同じ画像となるように部分画像データを生成するので、重畳領域111には他の部分と同様の鮮明な画像が投射されている。重畳領域112〜114でも同様である。しかしながら、重畳領域111〜114では、複数のプロジェクター2から投射された光が合成されているので、光量が他の部分より多く、結果として重畳領域111〜114の輝度が他の部分より高くなってしまう。これでは各プロジェクター2の投射画像の境界が目立ってしまうので、マルチプロジェクションシステム1は、重畳領域111〜114の輝度を他の部分と同程度に抑えるため、プロジェクター2に遮光装置3(減光手段)を設けている。
【0021】
すなわち、図1に示すように、プロジェクター2は、投射光が出力される投射光学系25(投射手段)の周囲に配置された複数の遮光板31と、これら遮光板31を駆動する遮光部30とを有する遮光装置3を備えている。遮光板31は、不透明または透光性の低い矩形の板であり、プロジェクター2が投射する矩形の投射画像の各辺に対応して4枚設けられている。各々の遮光板31は、遮光部30により独立してスライドされ、投射光学系25の前側に進出して投射画像を遮ることも、投射画像に影響を与えないように投射光学系25を遮らない位置まで後退させることも可能である。複数の遮光板31によって、投射光学系25からの光が通過可能な投射窓20Aが形成される。
【0022】
遮光装置3は、4枚の矩形の遮光板31を、投射光学系25を完全に遮らない位置まで後退させて投射画像を全く遮らない状態とすることも、遮光板31の遮光位置を投射光学系25の中央に設定して投射画像を中央付近まで遮光することもできる。遮光板31の移動量を大きくして、投射光学系25の投射光を完全に遮る状態とすることも可能である。各辺に対応する遮光板31はそれぞれ独立して駆動できる。
このように、プロジェクター2は、遮光部30によって遮光板31を投射光学系25の前方すなわち投射光の投射範囲に進退するように移動させ、投射光学系25の投射光を周縁部から遮って減光する。これにより、各プロジェクター2の投射画像の周縁の光量を減らして、図2に示した重畳領域111〜114の輝度を他の部分と同程度に抑え、タイリングの境界を目立たなくすることができる。
【0023】
遮光装置3による遮光量は、例えば、各々の遮光板31がどこまで進出するか、その先端の位置で表すことができる。以下、遮光板31の先端の位置を遮光位置と呼ぶ。
図2のように複数のプロジェクター2を並べた場合、投射画像101〜104と重畳領域111〜114との位置関係は、投射画像101〜104ごとに異なっている。例えば、投射画像101は右端と下端が重畳領域となっており、投射画像104は左端と上端が重畳領域となっている。つまり、タイリングの境界を目立たなくするために好適な遮光位置はプロジェクター2ごとに異なっており、一つのプロジェクター2においても遮光板31の辺ごとに異なる。従って、プロジェクター2は、マルチプロジェクションシステム1が有するプロジェクター2群の中における自己の位置に適した遮光位置となるように、遮光装置3によって4枚の遮光板31を駆動する。
【0024】
図1に示すように、プロジェクター2は、それぞれ通信回線43を介してネットワーク5に接続されている。ここで、通信回線43はプロジェクター2をネットワーク5に有線接続するケーブルであってもよいし、プロジェクター2に外部接続または内蔵された無線通信モジュールにより形成される無線通信回線であってもよい。
ネットワーク5は、有線又は無線通信回線により構成されるLAN(Local Area Network)等の双方向通信可能なネットワークであり、各プロジェクター2とともに制御装置8が接続されている。
【0025】
制御装置8は、各プロジェクター2とネットワーク5を介して通信を実行し、カメラ9により撮影した撮影画像に基づいて、遮光装置3による遮光量を調整させる装置である。制御装置8は、図2に示した重畳領域111〜114の輝度が、重畳領域以外の領域の輝度と視認できる差を生じないように、プロジェクター2に対して遮光装置3の動作を指示する制御情報を送信する。カメラ9は、制御装置8の制御に従って、スクリーンSCにおいてプロジェクター2が投射画像を投射する範囲を撮影し、撮影画像を制御装置8に出力するデジタルカメラである。カメラ9は、制御装置8に対して、USB(Universal Serial Bus)ケーブル45を介して接続されているが、USBケーブル45に限らず有線又は無線の各種通信回線を用いることができ、例えば、IEEE1394規格に準じたケーブルや、Bluetooth(登録商標)、Wireless USB、無線LAN等の無線通信手段を利用できる。
【0026】
図3は、マルチプロジェクションシステム1の各部の機能的構成を示す図であり、合わせてプロジェクター2のハードウェア構成を模式的に図示する。
画像処理装置10は、プロジェクター2が投射する投射画像の画像データを取得する画像取得部11と、各プロジェクター2の投射位置が設定された投射位置設定部12と、重畳領域の位置および大きさが設定されたオーバーラップ量設定部13と、各プロジェクター2により投射する部分画像データを生成する部分画像生成部14と、を備える。画像取得部11は、内蔵する記憶装置(図示略)に記憶した画像データまたは外部の映像ソース機器から入力される画像データを取得する。各プロジェクター2には固有の識別情報が付与されており、投射位置設定部12には、各プロジェクター2の識別情報と、各プロジェクター2の位置関係が設定され、この設定状態を示す情報が投射位置設定部12からオーバーラップ量設定部13へ出力される。
【0027】
オーバーラップ量設定部13には、各プロジェクター2の識別情報と、各プロジェクター2が投射する画像において、隣接するプロジェクター2の投射画像と重複する領域(重畳領域)の位置及びサイズが対応付けて設定されている。この設定は、外部の装置からオーバーラップ量設定部13に予め入力され、オーバーラップ量設定部13が記憶していても良いし、投射位置設定部12から入力される情報に基づいてオーバーラップ量設定部13が算出する構成としてもよい。オーバーラップ量設定部13は、投射位置設定部12から入力される情報と、各プロジェクター2が投射する画像における重畳領域の位置及びサイズを示す情報とを、部分画像生成部14に出力する。
【0028】
部分画像生成部14は、オーバーラップ量設定部13から入力される情報に基づいて、画像取得部11が取得した画像データをプロジェクター2の数に分割し、分割した各々の画像データを重畳領域の分だけ拡張して部分画像データを生成する。そして、部分画像生成部14は、生成した部分画像データを、各プロジェクター2に出力する。なお、画像処理装置10は、多数の画像送信ケーブル41を介して各プロジェクター2と1対1で接続されても良いし、複数のプロジェクター2が共通の画像送信ケーブル41を介して画像処理装置10に接続された構成としても良い。
【0029】
プロジェクター2は、リフレクター23を備えたランプ22と、ランプ22が発した光を変調する変調手段としての光変調装置24と、光変調装置24によって変調された光をスクリーンSCに向けて投射する投射光学系25と、これらの各部を制御する制御装置21とを本体20に具備している。
光源としてのランプ22は、例えば、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、LED等を用いることができ、リフレクター23の他に、投射光の光学特性を高めるためのレンズ群(図示略)、偏光板、補助リフレクター(図示略)等を備えたものとしてもよい。また、ランプ22及び光変調装置24の組み合わせによる構成を、レーザー光源とレーザー光を走査する走査機構とによって置き換えてもよい。
光変調装置24は、例えば、RGBの各色に対応した3枚の透過型または反射型の液晶ライトバルブを用いた方式、1枚の液晶ライトバルブとカラーホイールを組み合わせた方式、3枚のデジタルミラーデバイスを用いた方式、1枚のデジタルミラーデバイスとカラーホイールを組み合わせたDMD方式等により構成される。また、投射光学系25は、光変調装置24により変調されたRGB3色の変調光を合成するプリズム26と、プリズム26により合成された投射画像をスクリーンSCで結像させるレンズ27を備えている。プリズム26は光変調装置24の構成に合わせて、1または複数の光学プリズムやミラーを組み合わせて構成される。本実施形態では光変調装置24として3枚の液晶ライトバルブを備え、これら3枚の液晶ライトバルブにより変調された光をプリズム26で合成する構成とする。なお、光変調装置24として1枚のみの液晶ライトバルブまたはDMDを用いる場合には、プリズム26に相当する部材は不要である。
レンズ27は、例えば複数のレンズ群で構成され、フォーカスを調整する駆動機構(図示略)により駆動される。
そして、上述のように投射光学系25が投射光を投射する投射窓20Aの周辺には遮光板31が配置され、遮光板31を個々に駆動する遮光装置3が設けられている。
【0030】
制御装置21は、通信回線43に接続され、制御装置8から送信された制御情報を受信する通信制御部212と、ランプ22に電力を供給してランプ22を点灯させる光源駆動部213と、通信制御部212が受信した制御情報に基づいて各部を制御する制御部211とを備える。制御部211は、光源駆動部213によるランプ22の点灯制御、光変調装置24における描画制御、遮光装置3による遮光制御等を行う。
【0031】
制御装置21は、画像処理装置10から入力される部分画像データを受信する画像受信部214と、画像受信部214が受信した部分画像データを解析して、光変調装置24の表示画素数に対応した投射画像データを生成し、この投射画像データに基づいて光変調装置24を駆動する駆動信号を生成する画像処理部217と、画像処理部217が生成した駆動信号に基づいて光変調装置24を駆動し、投射光を変調させる光変調装置駆動部218とを備える。
【0032】
また、制御装置21は、制御部211の制御に従って遮光装置3を動作させるための駆動信号を生成するとともに、現在の遮光板31の遮光位置を記憶する遮光装置制御部219と、遮光装置制御部219が生成した駆動信号に基づいて遮光部30を駆動する遮光装置駆動部220と、を備えている。これら制御部211、遮光装置制御部219及び遮光装置駆動部220が動作することにより、制御装置21は遮光制御装置として機能する。
【0033】
遮光装置駆動部220は、上述した遮光部30が備えるステッピングモーター(図示略)に対して駆動パルスを出力することで、遮光装置3の遮光板31をスライド移動させるとともに、ステッピングモーターの動作量に基づいて遮光板31の位置を算出し、記憶する。なお、遮光部30がモーターまたはアクチュエーターと、遮光板31の位置を検出するリニアエンコーダーとを備えた構成としてもよく、この場合、遮光装置駆動部220は、遮光部30のモーターまたはアクチュエーターに駆動電流を供給するとともに、リニアエンコーダーにより遮光板31の位置を検出する。
【0034】
制御装置8は、プロジェクター2がスクリーンSCに投射している状態でカメラ9に撮影を実行させ、カメラ9から撮影画像データが入力されると、入力された撮影画像データを解析して重畳領域の輝度の目標値を決定する。次に、制御装置8は、決定した目標の輝度と、撮影画像における重畳領域の輝度とを比較して、比較結果に基づき遮光装置3の遮光量を増大させるか低減させるかを決定してプロジェクター2に指示を送信する。この指示に従ってプロジェクター2が遮光装置3を調整した後、制御装置8は上記の動作を繰り返し、撮影画像において重畳領域の輝度が好ましい状態になったら、調整を終了する。このプロセスは、プロジェクター2ごとに順次実行される。つまり、制御装置8は、マルチプロジェクションシステム1が有する複数のプロジェクター2の中から、調整対象のプロジェクター2を選んで投射を行わせ、このプロジェクター2の投射画像をカメラ9で撮影する。
【0035】
カメラ9は、各プロジェクター2の投射範囲をカバーできる範囲を撮影するものであってもよく、多数の撮影対象のプロジェクター2に対応するため、調整対象のプロジェクター2に合わせてカメラ9の向きを変えられることが好ましい。また、カメラ9がスクリーンSC全体を撮影するのに十分な画角と撮影解像度を有する構成としてもよく、この場合はカメラ9がスクリーンSC全体を撮影した撮影画像から、各プロジェクター2が投射した投射画像を含む領域をトリミングできることが好ましい。
【0036】
制御装置8が遮光装置3の遮光位置の調整を行う場合、画像処理装置10は、プロジェクター2に対してテストパターン画像の画像データを出力する。このテストパターン画像は、例えばスクリーンSCの投射範囲において明るさ(輝度)の差が顕著に表れやすいようなパターンであり、例えば全面が白色すなわち最高輝度で投射される。テストパターンの画像データは、画像処理装置10が予め記憶しており、制御装置8から画像処理装置10に対して遮光装置3の調整が指示された場合にプロジェクター2へ出力される。
制御装置8は、マルチプロジェクションシステム1の動作モードに対応して、予め、各プロジェクター2の遮光装置3の遮光位置を記憶しており、基本的にはマルチプロジェクションシステム1の起動時や動作モードの変更時に、動作モードに対応した遮光位置を各プロジェクター2に送信し、遮光装置3を動作させる。
【0037】
図4は、マルチプロジェクションシステム1の動作モードと、各プロジェクター2の遮光位置とを対応付けるテーブルの例を示す。この図4に示す例では、遮光位置を、投射光学系25が投射光を出射する範囲において遮光板31が隠す割合(%)である遮光量で示している。マルチプロジェクションシステム1のプロジェクター2には、No.1〜21の番号が付与されていて、スクリーンSCに向かって左上隅のプロジェクター2がNo.1、その右隣のプロジェクター2がNo.2、…、右下隅のプロジェクター2がNo.21とされている。
7×3モードはマルチプロジェクションシステム1の全21台のプロジェクター2を使用して投射する動作モードである。No.1のプロジェクター2は左上の隅にあるため左と上には他の重畳領域が無い。このため、7×3モードでは上と左を遮光する必要がないので、上と左の遮光量は0%に設定される。また、No.1のプロジェクター2の投射範囲の下と右には他のプロジェクター2との重畳領域があるため、遮光量が25%に設定される。
【0038】
これに対し、5×3モードでは、横5列×縦3列のプロジェクター2のみが使用される。本実施形態では、5×3モードで左端の2列すなわち6台のプロジェクター2が使用されず、残り15台のプロジェクター2が投射する。5×3モードではNo.1、No.2のプロジェクター2は投射光を発しないので、投射範囲の上下左右から遮光量が100%となるよう遮光板31が進出する。5×3モードで使用されないプロジェクター2はランプ22を消灯してもよいが、その後に7×3モードに切り替わった場合に速やかに投射開始できるようにランプ22を点灯する場合がある。このため遮光板31は、投射光学系25の投射光を全て隠す位置まで進出する。なお、このプロジェクター2においては光変調装置24が、投射光の光量ができるだけ少なくなるよう制御される。
また、プロジェクター2は、電源がオフにされると遮光板31を、投射窓20Aを隠さない位置まで退避させる。すなわち電源オフ時の遮光量は0%であり、電源が投入されると、画像処理装置10から送信される遮光位置またはデフォルトの遮光位置として制御部211が記憶している位置に、遮光板31を移動させる。
【0039】
ところで、遮光装置3において、遮光板31を移動させるステッピングモーターやアクチュエーターが故障したり、遮光板31を支持する支持構造(図示略)の劣化や塵埃の影響で遮光板31がスムーズに動作しなくなったりして、遮光板31が指定された遮光位置まで移動しないことがある。この場合、重畳領域に相当する光を十分に減光することができない。つまり、重畳領域の輝度が望ましい程度に調整されなくなる。重畳領域の明るさが、許容可能な範囲から逸脱した場合には、遮光装置3に何らかの不具合があることが考えられる。このような状態を、以下の説明では動作異常とする。遮光装置3の動作異常は、重畳領域を目立たなくする制御ができなくなることを意味し、投射画像の品位を低下させる要因となる。従って、マルチプロジェクションシステム1を停止させてプロジェクター2を交換し、或いは修理する必要があるが、本実施形態のマルチプロジェクションシステム1では、遮光装置3の動作異常に対応して、重畳領域に投射される投射光を、光変調装置24または他のプロジェクター2を使用して、十分に減光する。以下、この動作について説明する。以下の動作において、制御装置8は、減光制御装置として機能する。
【0040】
図5は、マルチプロジェクションシステム1の動作を示すフローチャートである。この図5に示す動作において、マルチプロジェクションシステム1は、遮光装置3の動作異常を検出して、動作異常が発生した場合に対応する処理を行う。
制御装置8は、マルチプロジェクションシステム1の電源がオンにされた場合、或いは、マルチプロジェクションシステム1の動作モードが変更された場合に待機し(ステップS11)、電源がオンにされた直後または動作モードが変更された直後であった場合(ステップS11;Yes)、制御装置8は、異常検出処理を実行する(ステップS12)。異常検出処理の詳細については図6及び図7を参照して後述する。
【0041】
異常検出処理を行った後、制御装置8は、いずれかの遮光装置3において動作異常が生じたか否かを判別し(ステップS13)、どの遮光装置3でも動作異常が無ければ(ステップS13;No)、本処理を終了する。また、動作異常を生じた遮光装置3があった場合(ステップS13;Yes)、制御装置8は、動作異常が発生した遮光装置3を備えるプロジェクター2と、動作異常により十分に減光していない遮光板31とを特定し(ステップS14)、この遮光板31の機能を補償するように、異常対応処理を行う(ステップS15)。異常対応処理の詳細については図8を参照して後述する。
【0042】
異常対応処理を行った後、制御装置8は、異常対応処理によって補正された状態を判定する(ステップS16)。この判定は、例えば、カメラ9によりスクリーンSCの投射画像全体、または各プロジェクター2の投射範囲を撮影し、撮影画像に基づいて各々の重畳領域の明るさが許容範囲内であるかを判別することで実行できる。制御装置8は判定結果を参照し(ステップS17)、補正状態が良好でない場合は(ステップS17;No)、ステップS15に戻って再び異常対応処理を行う。また、補正状態が良好な場合は(ステップS17;Yes)、ステップS14で特定したプロジェクター2と遮光板31とを示す情報、及び、ステップS15の異常対応処理で使用した補正方法とを、例えばネットワーク5を介して接続された他の装置(図示略)や、プロジェクター2、画像処理装置10、或いは画像処理装置10に接続された他の装置(図示略)に通知し(ステップS18)、本処理を終了する。通知がされた相手側の装置は、例えば、マルチプロジェクションシステム1を操作するオペレーターに対して、異常発生の状態等を報知することができる。
【0043】
ここで、遮光装置3の動作異常を検出する動作について、2通りの検出方法を例に挙げて説明する。
図6は、遮光装置3の動作異常を検出する異常検出処理を示すフローチャートであり、カメラ9を用いて検出する方法を示す。
図6の動作において、制御装置8は、画像処理装置10によって所定のテストパターンを取得させ、画像処理装置10からプロジェクター2にテストパターンの部分画像を送信させることにより、実行中の動作モードで使用するプロジェクター2に、テストパターンを投射させる(ステップS21)。
続いて、制御装置8は、カメラ9により撮影を行わせて、撮影画像を取得する(ステップS22)。この撮影画像はスクリーンSC上の投射画像全体を撮影した1枚の画像であってもよいし、各重畳領域を個別に撮影した複数枚の撮影画像であってもよい。
【0044】
制御装置8は、カメラ9の撮影画像から重畳領域を特定し、各重畳領域の明るさを検出し(ステップS23)、検出した明るさが許容範囲外となっている重畳領域の有無を判定する(ステップS24)。許容範囲外の明るさとなっている重畳領域があれば(ステップS24;Yes)、制御装置8は、動作異常が発生したと判定し(ステップS25)、許容範囲外の明るさとなっている重畳領域が無ければ(ステップS24;No)、動作異常なしと判定する(ステップS26)。
【0045】
また、図7は、遮光装置3の動作異常を検出する異常検出処理を示すフローチャートであり、遮光部30の動作に伴い出力される信号に基づいて異常を検出する方法を示す。
図7の動作において、制御装置8は、マルチプロジェクションシステム1のプロジェクター2が備える全ての遮光板31のうち、対象の遮光板31を選択し、この遮光板31を有するプロジェクター2に対して制御信号を送信して、当該遮光板31を駆動させる(ステップS31)。対象の遮光板31は1個ずつ選択してもよいし、複数の遮光板31をまとめて対象としてもよい。制御装置8は、対象の遮光板31を有するプロジェクター2を制御して、この遮光板31を駆動する遮光部30が有する機器の動作状態を反映する電圧または電流を検出することで、当該機器の動作状態を検出する(ステップS32)。具体的には、遮光部30のステッピングモーターが動作時に出力するパルス、遮光部30のリニアエンコーダーが出力する検出信号、負荷に応じてステッピングモーターやアクチュエーターに流れる電流等を検出する。
【0046】
制御装置8は、検出した電圧または電流等に基づいて当該機器の動作状態が正常か異常かを判別し(ステップS33)、当該機器が正常動作していない場合は(ステップS33;No)、その遮光板31において動作異常発生と判定し(ステップS34)、当該機器が正常動作している場合には(ステップS33;Yes)、異常なしと判定する(ステップS35)。
制御装置8は、対象の遮光板31を特定する情報と、判定結果とを対応付けて、図示しない揮発性メモリー又は不揮発性メモリーに一時的に記憶する(ステップS36)。その後、制御装置8は、全ての遮光板31の検出が完了したか否かを判別し(ステップS37)、検出が完了していない場合は(ステップS37;No)ステップS31に戻り、全ての遮光板31について検出が完了した場合は(ステップS37;Yes)、一時的に記憶した判定結果を参照して、異常が発生した遮光板31の有無を判別する(ステップS38)。異常が発生した遮光板31があった場合(ステップS38;Yes)、動作異常が発生したと判定し(ステップS39)、異常が発生した遮光板31が無ければ(ステップS38;No)、動作異常なしと判定する(ステップS40)。
【0047】
以上の異常検出処理によって異常が検出されると、異常が検出された遮光板31と、この遮光板31を有する駆動する遮光装置3、及び、この遮光板31を有するプロジェクター2が特定される。そして、この遮光板31が十分に減光できない状態を補償し、重畳領域に投射される投射光を望ましい状態に減光するため、制御装置8は異常対応処理を実行する。
【0048】
図8は、遮光装置3の動作異常が発生した場合に実行される異常対応処理を示すフローチャートである。
この図8の動作に先立って、制御装置8は、ある遮光板31により十分に減光できない状態を、その遮光板31を有するプロジェクター2によって補償するか、或いは、そのプロジェクター2に隣接するプロジェクター2によって補償するかを決定する。これは、予めいずれか一方に設定されていてもよいし、その都度、制御装置8が決定することも可能である。
【0049】
また、いくつかの条件に対応付けて、動作異常が発生したプロジェクター2により対応するか、隣接するプロジェクター2により対応するか、その両方により対応するかを判別する方法もある。例えば、動作異常が発生した遮光装置3を有するプロジェクター2が、実行中の動作モードにおいてスクリーンSCに投射される投射画像のどの部分を投射するかに応じて決定する方法がある。より具体的な例としては、重畳領域の明るさの差が目立ちやすい中央部分に投射するプロジェクター2において動作異常が発生した場合は、当該プロジェクター2と、隣接するプロジェクター2との両方により対応処理を行い、周縁部を投射するプロジェクター2において動作異常が発生した場合は隣接するプロジェクター2のみにより対応処理を行い、重畳領域の明るさの差が目立ちにくい下部を投射するプロジェクター2において動作異常が発生した場合は、当該プロジェクター2のみにより対応処理を行うよう決定するとよい。
【0050】
異常対応処理の方法としては、動作異常により十分に動かない遮光板31の影響を解消するため、このプロジェクター2が有する光変調装置24の減光状態を調整する方法、隣接するプロジェクター2が有する光変調装置24の減光状態を調整する方法、及び、隣接するプロジェクター2が有する遮光装置3の減光状態を調整する方法がある。また、光変調装置24の減光状態と遮光装置3の減光状態の両方を調整する方法も実現可能である。
また、遮光板31を駆動する遮光装置3の動作異常は、投射光学系25の投射光が十分に減光されないで、重畳領域が明るくなってしまうという事態だけでなく、投射光が過度に減光されて重畳領域が望ましい状態より暗くなってしまう事態を招く。このため、上記の異常対応処理においては、光変調装置24または隣接するプロジェクター2の遮光板31により投射光を強く減光して暗くするだけでなく、光変調装置24または隣接するプロジェクター2の遮光板31を調整してより多くの投射光を投射することも可能である。
【0051】
図8には、異常が発生したプロジェクター2または隣接するプロジェクター2の光変調装置24を用いる異常対応処理を示す。
この図8の動作において、制御装置8は、制御対象のプロジェクター2を設定し(ステップS51)、この対象のプロジェクター2の投射範囲のうち、減光状態を調整する範囲を特定する(ステップS52)。制御装置8は、特定した範囲において光変調装置24に描画する画像の階調値を画素毎に調整するマスクを生成し(ステップS53)、このマスクをかけて画像を光変調装置24に描画して投射する旨を指示する制御情報を生成する(ステップS54)。その後、制御装置8は、生成したマスク及び制御情報を、対象のプロジェクター2に送信し(ステップS55)、本処理を終了する。
【0052】
以上のように、本発明を適用した第1の実施形態によれば、複数のプロジェクター2を備え、隣接する複数のプロジェクター2から投射される投射画像が重畳領域を形成するように、複数のプロジェクター2からスクリーンSCに投射画像を投射するマルチプロジェクションシステム1において、プロジェクター2は、光源としてのランプ22と、ランプ22が発した光を変調する光変調装置24と、光変調装置24によって変調された光を投射する投射光学系25と、投射光学系25によって投射された投射光を遮光する遮光板31を備え、重畳領域の投射光を所定の状態に減光する遮光装置3と、を備え、いずれかのプロジェクター2が備える遮光装置3によって投射光が所定の状態に減光されない場合に、このプロジェクター2またはこのプロジェクター2に隣接して配置されたプロジェクター2が投射する投射光の減光状態を制御する制御装置8とを備える。このため、マルチプロジェクションシステム1において、プロジェクター2の遮光装置3の動作に支障が生じて投射光が所定の状態に減光されない場合に、制御装置8によって投射光の減光状態を制御し、スクリーンSCの重畳領域に投射される投射光を本来減光されるべき所定の状態に近づけることができる。これにより、遮光板31を駆動する遮光装置3の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステム1を停止させてプロジェクター2を交換する等の措置を行わずに、マルチプロジェクションシステム1の使用を続け、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0053】
また、制御装置8は、遮光装置3の動作異常が発生したプロジェクター2または当該プロジェクター2に隣接して配置されたプロジェクター2が備える光変調装置24を制御して、遮光板31の機能を修復することなく、重畳領域を所定の状態に減光できる。これにより、遮光板31の動作異常等が発生しても、マルチプロジェクションシステム1の使用停止を回避し、或いは使用停止の回数を減らすことが可能となる。
【0054】
また、制御装置8は、スクリーンSCに投射された投射画像を撮影した撮影画像に基づいて、或いは、遮光装置3の動作状態を検出することにより、投射光が所定の状態に減光されているか否かを判別するので、遮光板31によって重畳領域が所定の状態まで減光されているか否かを、速やかに、かつ確実に検出できる。
さらに、マルチプロジェクションシステム1は、投射画像の投射に使用するプロジェクター2の数を変更可能に構成され、制御装置8は、投射画像の投射に使用するプロジェクター2の数が変更された際、または、プロジェクター2の起動時に、投射光が所定の状態に減光されているか否かを判別するので、マルチプロジェクションシステム1を構成するプロジェクター2の遮光板31が移動される可能性が高い機会に、遮光板31によって重畳領域が所定の状態まで減光されているか否かを判別するので、遮光板31の動作異常等を速やかに検出できる。
なお、上記第1の実施形態では、プロジェクター2に接続された制御装置8の制御によって、遮光装置3の動作異常を検出する異常検出処理および検出された動作異常に対応する異常対応処理が実行される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各々のプロジェクター2が自律的に異常検出処理および異常対応処理を実行してもよい。この場合について第2の実施形態として説明する。
【0055】
[第2の実施形態]
本第2の実施形態では、図6及び図7に示す異常検出処理および図8に示す異常対応処理をプロジェクター2が実行する。ここで、マルチプロジェクションシステム1の各部の構成について上記第1の実施形態と共通する部分については、同符号を付して説明を省略する。
図9は、本第2の実施形態におけるプロジェクター2の動作を示すフローチャートである。以下の動作を実行する制御装置21は、減光制御手段として機能する。
上記第1の実施形態では制御装置8が実行した処理を、第2の実施形態ではプロジェクター2が行う。すなわち、各々のプロジェクター2は、制御装置21の機能により、遮光装置3が駆動されるタイミングまで待機し(ステップS61)、マルチプロジェクションシステム1の動作開始またはプロジェクター2の電源がオンにされた場合や、マルチプロジェクションシステム1の動作モードの変更に伴い制御装置8から遮光量の変更を指示する制御情報を受信した場合等、遮光板31を移動させるまでは、画像処理装置10から入力された画像を投射する動作を行っている。
【0056】
遮光装置3が駆動される場合(ステップS61;Yes)、プロジェクター2は、異常検出処理を実行する(ステップS62)。このステップS62で実行する異常検出処理は、図6に示した処理と同様である。ここで、テストパターンの投射は、電源オンまたは動作モードの変更時に制御装置8の制御に基づいて実行され、制御装置8は、カメラ9により撮影した撮影画像を各プロジェクター2の投射範囲に対応して分割し、各々のプロジェクター2に対して送信する。プロジェクター2は、制御装置8から受信した撮影画像を元に、図6のステップS23〜ステップS26の処理を実行する。これにより、遮光装置3の動作異常により遮光板31が所定の位置にないことを速やかに、かつ確実に検出できる。
また、プロジェクター2は、ステップS62において、図7に示す異常検出処理を実行できる。この場合、プロジェクター2は、自己が備える遮光装置3の4枚の遮光板31のみを対象として、ステップS31〜ステップS40の処理を実行する。この場合には、制御装置8の制御によるテストパターンの投射や、撮影画像の送信を必要とせず、自律的に遮光装置3の動作異常を検出できるという利点がある。
【0057】
異常検出処理を行った後、プロジェクター2は、いずれかの遮光板31の動作異常が生じたか否かを判別し(ステップS63)、動作異常が無ければ(ステップS63;No)、本処理を終了する。また、いずれかの遮光板31の動作異常を生じた場合(ステップS63;Yes)、プロジェクター2は、動作異常が発生した遮光板31を特定し(ステップS64)、この遮光板31の機能を補償するように、異常対応処理を行う(ステップS65)。異常対応処理の詳細については図10を参照して後述する。
【0058】
異常対応処理を行った後、プロジェクター2は、異常対応処理によって補正された状態を判定する(ステップS66)。この判定は、例えば、カメラ9により撮影された撮影画像が制御装置8から送信されるのを待機し、制御装置8から撮影画像を受信した場合に、この撮影画像を用いて行われる。プロジェクター2は、撮影画像における重畳領域の明るさが許容範囲内であるかに基づいて判定を行い、判定結果を参照し(ステップS67)、補正状態が良好でない場合は(ステップS67;No)、ステップS65に戻って再び異常対応処理を行う。また、補正状態が良好な場合は(ステップS67;Yes)、本処理を終了する。
【0059】
図10は、第2の実施形態においてプロジェクター2が実行する異常対応処理を示すフローチャートである。
この図10に示す異常対応処理において、プロジェクター2は、自己が備える光変調装置24を用いて減光状態を制御する。すなわち、制御装置21の機能により、自己が備える投射光学系25の投射範囲のうち、減光状態を調整する範囲を特定する(ステップS71)。プロジェクター2は、特定した範囲において光変調装置24に描画する画像の階調値を画素毎に調整するマスクを生成し(ステップS72)、光変調装置24に描画する画像に、生成したマスクをかけて描画する動作を開始し(ステップS73)、本処理を終了する。
【0060】
このように、制御装置8の制御によらず、プロジェクター2自身が異常検出処理と異常対応処理とを実行して、遮光板31による減光に異常が発生した場合に、この異常による影響を補償するように、重畳領域の減光状態を調整できる。
また、光変調装置24による減光状態の制御に限らず、隣接するプロジェクター2の動作異常の影響を解消するため、自己が有する遮光装置3の減光状態を調整する方法がある。また、光変調装置24の減光状態と遮光装置3の減光状態の両方を調整する方法も実現可能である。
【0061】
さらに、プロジェクター2は、ステップS62において、図6に示した処理と、図7に示した処理とを続けて実行することもできる。例えば、図6の処理により、自己が投射する投射範囲における重畳領域の明るさが、重畳領域を目立たなくするための所定の状態でないことを検出した場合に、図7の処理で、自己が備える遮光装置3に動作異常がないことが検出されることがあり得る。この場合、隣接するプロジェクター2の遮光装置3に動作異常が発生していることになる。プロジェクター2の上下左右に隣接するプロジェクター2のうち、どのプロジェクター2において遮光装置3の動作異常が発生したかは、明るさが許容範囲から逸脱した重畳領域の位置が、投射範囲の上下左右のどこであるかに基づいて、容易に特定できる。
この場合、プロジェクター2は、図10に示す異常対応処理を行って、隣接するプロジェクター2が有する遮光装置3の動作の異常による影響を補償するように、重畳領域の減光状態を調整できる。このような動作は、例えば、隣接するプロジェクター2が異常対応処理を実行する機能を持たない場合には非常に有効である。
【0062】
また、プロジェクター2は、遮光装置3の動作異常が発生したプロジェクター2と相互に通信を行って、異常対応処理を実行できる。
図11は、プロジェクター2が実行する異常対応処理の別の例を示すフローチャートである。
この図11において、(A)は動作異常が発生したプロジェクター2の動作を示し、(B)は動作異常が発生していないプロジェクター2の動作を示す。
プロジェクター2は、自己の動作異常を上記のように検出した場合に、図11の動作を開始し、自己が備える投射光学系25の投射範囲のうち、減光状態を調整する範囲を特定して、所定の状態に減光されていない重畳領域側のプロジェクター2に対して通知する(図11(A)のステップS81)。
この通知を受信したプロジェクター2は、自己が備える投射光学系25の投射範囲のうち、通知された範囲に対応する範囲を特定し(図11(B)のステップS91)、特定した範囲において光変調装置24に描画する画像の階調値を画素毎に調整するマスクを生成し(ステップS92)、光変調装置24に描画する画像に、生成したマスクをかけて描画する動作を開始する(ステップS93)。その後、プロジェクター2は、減光状態を調整する対応が終了したことを、動作異常が発生したプロジェクター2に通知し(ステップS94)、本処理を終了する。一方、動作異常が発生したプロジェクター2は、隣接するプロジェクター2からの通知を受信して、対応が終了したことを確認する(図11(A)のステップS82)。このステップS82の後、プロジェクター2は、再び異常検出処理を行って、適切に減光状態が調整されたか否かを確認してもよい。
【0063】
[第3の実施形態]
図12は、第3の実施形態におけるプロジェクター200及び画像処理装置10の構成を示す図である。
本第3の実施形態では、上記第1及び第2の実施形態で説明したプロジェクター2自身に、スクリーンSCの投射範囲を撮影するカメラ28と、カメラ28により撮影を実行させて撮影画像を取得し、制御装置21Aに出力する撮影制御部29とを備えている。プロジェクター200及び制御装置21Aにおいて、カメラ28、撮影制御部29を除く各部は上記第1、第2の実施形態と共通する構成である。カメラ28は、カメラ9と同様に構成され、このプロジェクター200の投射光学系25がスクリーンSCに投射する投射範囲を撮影可能な画角を有する。また、撮影制御部29は、制御装置21Aの制御により、カメラ28に対して撮影指示を出力し、撮影を実行させ、撮影後に撮影画像をカメラ28から取得して、撮影画像データとして制御装置21Aに出力する。
【0064】
この第3の実施形態におけるプロジェクター200は、自身が備えるカメラ28によってスクリーンSC上の投射範囲を撮影して、第2の実施形態で説明した異常検出処理を実行できる。この場合、プロジェクター200は、制御装置21の機能により、任意のタイミングで、或いは隣接するプロジェクター2と同期してテストパターンを投射し、カメラ28による撮影を行うことができる。すなわち、制御装置8の動作に影響されず、プロジェクター200単体で、或いは隣接する複数のプロジェクター200により、自律的に異常検出処理を実行できるという利点がある。そして、プロジェクター200は、重畳領域の明るさを検出し、この明るさが許容範囲を逸脱する場合に、遮光装置3の動作異常があると判定し、図10及び図11に示した異常対応処理を実行できる。
また、マルチプロジェクションシステム1を、上記第1、第2の実施形態で説明したプロジェクター2と、プロジェクター200とを混在させて構成してもよい。この場合、プロジェクター2どうしが隣接しないようにプロジェクター200を配置すれば、全てのプロジェクター2、200における遮光装置3の動作異常を検出し、この動作異常に対応して減光状態を調整できる。
【0065】
なお、上記各実施形態で説明したマルチプロジェクションシステム1は、スクリーンSCの正面側にプロジェクター2、200を配置し、スクリーンSCの正面に投射画像を投射する構成として説明したが、本発明はこれに限定されず、各プロジェクター2、200をスクリーンSCの背面側に配置して、スクリーンSCの背面に投射画像を投射する構成としてもよい。プロジェクター2、200がスクリーンSCの背面側に配置される背面投射型の構成とした場合、カメラ9、28のみをスクリーンSCの前面側に配置して、スクリーンSCの前面から撮影した撮影画像をもとに重畳領域の輝度を調整してもよい。この場合、背面投射型の構成でありながら、実際に見られるスクリーンSCの前面側の画像を基準として、より適切に遮光装置3の異常検出等を行える。
【0066】
また、上記各実施形態では、プロジェクター2が投射画像の投射光を発する投射光学系25を備えた本体20の前面に、遮光板31を設けた構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、遮光板31をプロジェクター2の本体20に内蔵して、投射光学系25を通る投射光を遮る位置、或いは投射光学系25と投射窓20Aとの間に設けてもよい。また、変調手段としての光変調装置24が液晶ライトバルブで構成される場合には、遮光板31のような板状部材に代えて、液晶ライトバルブにおいて投射画像の周縁を遮光することも可能である。すなわち、遮光板31を投射光学系25に進出させて光を遮り、光量を調整する構成に代えて、光変調装置24の周縁部分において階調値を下げて減光することが考えられる。この場合、遮光板31のようなハードウェアを用いることなく、光変調装置24を透過する光量を周縁部において絞ることができるので、遮光板31を進出させた場合と同様に投射光学系25が投射する投射画像を減光させて、重畳領域における輝度や色調を調整し、高品位な画像を投射できる。
さらに、マルチプロジェクションシステム1が備えるプロジェクター2の数は任意であり、制御装置8の機能と他のサーバー装置の機能とが一つのコンピューターによって構成されても良く、その他の細部構成についても任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…マルチプロジェクションシステム、2、200…プロジェクター、3…遮光装置(減光手段)、5…ネットワーク、8…制御装置(遮光制御装置)、9…カメラ(撮像装置)、10…画像処理装置、14…部分画像生成部、20A…投射窓、21、21A…制御装置(遮光制御手段)、22…ランプ(光源)、24…光変調装置(変調手段)、25…投射光学系(投射手段)、30…遮光部、31…遮光板、111、112、113、114…重畳領域、SC…スクリーン(投射面)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプロジェクターを備え、隣接する複数の前記プロジェクターから投射される投射画像が重畳領域を形成するように、前記複数のプロジェクターから投射面に前記投射画像を投射するマルチプロジェクションシステムであって、
前記プロジェクターは、
光源と、
前記光源が発した光を変調する変調手段と、
前記変調手段によって変調された光を投射する投射手段と、
前記投射手段によって投射された投射光を遮光する遮光板を備え、当該遮光板を移動させて前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光する減光手段と、を備え、
いずれかの前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、この前記プロジェクターまたはこの前記プロジェクターに隣接して配置された前記プロジェクターが投射する投射光の減光状態を制御する減光制御装置と、
を備えることを特徴とするマルチプロジェクションシステム。
【請求項2】
前記減光制御装置は、いずれかの前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、前記重畳領域を前記所定の状態とすべく、この前記プロジェクターまたはこの前記プロジェクターに隣接して配置された前記プロジェクターが備える前記変調手段を制御することを特徴とする請求項1記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項3】
前記減光制御装置は、前記投射面に投射された投射画像を撮影した撮影画像に基づいて、或いは、前記減光手段の動作状態を検出することにより、投射光が前記所定の状態に減光されているか否かを判別することを特徴とする請求項1または2記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項4】
投射画像の投射に使用する前記プロジェクターの数を変更可能に構成され、
前記減光制御装置は、投射画像の投射に使用する前記プロジェクターの数が変更された際、または、前記プロジェクターの起動時に、投射光が前記所定の状態に減光されているか否かを判別することを特徴とする請求項3記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項5】
複数のプロジェクターとともにマルチプロジェクションシステムを構成し、隣接する前記プロジェクターから投射される投射画像と自己が投射する投射画像とが重畳領域を形成するように投射面に投射を行うプロジェクターであって、
光源と、
前記光源が発した光を変調する変調手段と、
前記変調手段によって変調された光を投射する投射手段と、
前記投射手段によって投射された投射光を遮光する遮光板を備え、当該遮光板を移動させて前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光する減光手段と、
自己または他の前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、自己が備える前記投射手段により投射された投射光の減光状態を制御する減光制御手段と、
を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
前記減光制御手段は、自己または他の前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、前記重畳領域を前記所定の状態とすべく、自己または他の前記プロジェクターが備える前記変調手段によって投射光を減光させることを特徴とする請求項5記載のプロジェクター。
【請求項7】
前記減光制御手段は、隣接する前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されないことで、投射面に形成される投射画像の前記重畳領域が所定の状態にならない場合に、前記重畳領域を前記所定の状態とすべく、自己が備える前記減光手段を制御することを特徴とする請求項5または6記載のプロジェクター。
【請求項8】
前記投射面を撮影する撮影手段を備え、前記撮影手段により撮影された撮影画像に基づいて、前記重畳領域が前記所定の状態に減光されないことを検出することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載のプロジェクター。
【請求項9】
複数のプロジェクターを用いた画像投射方法であって、
隣接する複数の前記プロジェクターから投射される投射画像が重畳領域を形成するように、前記複数のプロジェクターから投射面に前記投射画像を投射し、
前記プロジェクターが備える遮光板を移動させて投射光を遮光することにより、前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光して投射を行い、
いずれかの前記プロジェクターが備える前記遮光板によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、この前記プロジェクターまたはこの前記プロジェクターに隣接して配置された前記プロジェクターが投射する投射光の減光状態を制御すること、
を特徴とする画像投射方法。
【請求項10】
複数のプロジェクターとともにマルチプロジェクションシステムを構成するプロジェクターの制御方法であって、
隣接する前記プロジェクターから投射される投射画像と自己が投射する投射画像とが重畳領域を形成するように、投写面に前記投写画像を投射し、
前記プロジェクターが備える遮光板を移動させて投射光を遮光することにより、前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光し、
自己または他の前記プロジェクターが備える前記遮光板によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、自己の投射光の減光状態を制御すること、
を特徴とするプロジェクターの制御方法。
【請求項1】
複数のプロジェクターを備え、隣接する複数の前記プロジェクターから投射される投射画像が重畳領域を形成するように、前記複数のプロジェクターから投射面に前記投射画像を投射するマルチプロジェクションシステムであって、
前記プロジェクターは、
光源と、
前記光源が発した光を変調する変調手段と、
前記変調手段によって変調された光を投射する投射手段と、
前記投射手段によって投射された投射光を遮光する遮光板を備え、当該遮光板を移動させて前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光する減光手段と、を備え、
いずれかの前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、この前記プロジェクターまたはこの前記プロジェクターに隣接して配置された前記プロジェクターが投射する投射光の減光状態を制御する減光制御装置と、
を備えることを特徴とするマルチプロジェクションシステム。
【請求項2】
前記減光制御装置は、いずれかの前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、前記重畳領域を前記所定の状態とすべく、この前記プロジェクターまたはこの前記プロジェクターに隣接して配置された前記プロジェクターが備える前記変調手段を制御することを特徴とする請求項1記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項3】
前記減光制御装置は、前記投射面に投射された投射画像を撮影した撮影画像に基づいて、或いは、前記減光手段の動作状態を検出することにより、投射光が前記所定の状態に減光されているか否かを判別することを特徴とする請求項1または2記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項4】
投射画像の投射に使用する前記プロジェクターの数を変更可能に構成され、
前記減光制御装置は、投射画像の投射に使用する前記プロジェクターの数が変更された際、または、前記プロジェクターの起動時に、投射光が前記所定の状態に減光されているか否かを判別することを特徴とする請求項3記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項5】
複数のプロジェクターとともにマルチプロジェクションシステムを構成し、隣接する前記プロジェクターから投射される投射画像と自己が投射する投射画像とが重畳領域を形成するように投射面に投射を行うプロジェクターであって、
光源と、
前記光源が発した光を変調する変調手段と、
前記変調手段によって変調された光を投射する投射手段と、
前記投射手段によって投射された投射光を遮光する遮光板を備え、当該遮光板を移動させて前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光する減光手段と、
自己または他の前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、自己が備える前記投射手段により投射された投射光の減光状態を制御する減光制御手段と、
を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
前記減光制御手段は、自己または他の前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、前記重畳領域を前記所定の状態とすべく、自己または他の前記プロジェクターが備える前記変調手段によって投射光を減光させることを特徴とする請求項5記載のプロジェクター。
【請求項7】
前記減光制御手段は、隣接する前記プロジェクターが備える前記減光手段によって投射光が前記所定の状態に減光されないことで、投射面に形成される投射画像の前記重畳領域が所定の状態にならない場合に、前記重畳領域を前記所定の状態とすべく、自己が備える前記減光手段を制御することを特徴とする請求項5または6記載のプロジェクター。
【請求項8】
前記投射面を撮影する撮影手段を備え、前記撮影手段により撮影された撮影画像に基づいて、前記重畳領域が前記所定の状態に減光されないことを検出することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載のプロジェクター。
【請求項9】
複数のプロジェクターを用いた画像投射方法であって、
隣接する複数の前記プロジェクターから投射される投射画像が重畳領域を形成するように、前記複数のプロジェクターから投射面に前記投射画像を投射し、
前記プロジェクターが備える遮光板を移動させて投射光を遮光することにより、前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光して投射を行い、
いずれかの前記プロジェクターが備える前記遮光板によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、この前記プロジェクターまたはこの前記プロジェクターに隣接して配置された前記プロジェクターが投射する投射光の減光状態を制御すること、
を特徴とする画像投射方法。
【請求項10】
複数のプロジェクターとともにマルチプロジェクションシステムを構成するプロジェクターの制御方法であって、
隣接する前記プロジェクターから投射される投射画像と自己が投射する投射画像とが重畳領域を形成するように、投写面に前記投写画像を投射し、
前記プロジェクターが備える遮光板を移動させて投射光を遮光することにより、前記重畳領域の投射光を所定の状態に減光し、
自己または他の前記プロジェクターが備える前記遮光板によって投射光が前記所定の状態に減光されない場合に、自己の投射光の減光状態を制御すること、
を特徴とするプロジェクターの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−150192(P2012−150192A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7560(P2011−7560)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]