マルチポイントタッチ表面コントローラ
【課題】透明なタッチセンサの利用を可能にし且つ好都合に統合されたパッケージングを提供するマルチタッチ可能なタッチスクリーンコントローラを提供する。
【解決手段】マルチポイント表面コントローラが開示される。コントローラは、容量性マルチタッチセンサを駆動するための出力回路及び該センサを読み取るための入力回路を含む集積回路を含む。また、本明細書で開示されるものは、種々のノイズ除去及びダイナミックレンジ向上技術であり、これによりコントローラをハードウェアの再設定なして種々の条件で種々のセンサと共に用いることが可能となる。
【解決手段】マルチポイント表面コントローラが開示される。コントローラは、容量性マルチタッチセンサを駆動するための出力回路及び該センサを読み取るための入力回路を含む集積回路を含む。また、本明細書で開示されるものは、種々のノイズ除去及びダイナミックレンジ向上技術であり、これによりコントローラをハードウェアの再設定なして種々の条件で種々のセンサと共に用いることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチポイントタッチ表面コントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンピュータシステムにおいてオペレーションを実行するための多くのスタイルの入力デバイスが存在する。一般に、このオペレーションは、ディスプレイ画面上でのカーソルの移動及び/又は選択の実施に対応する。例証として、入力デバイスとしては、ボタン又はキー、マウス、トラックボール、タッチパッド、ジョイスティック、タッチスクリーン、及び同様のものを含むことができる。タッチパッド及びタッチスクリーン(総称して「タッチ表面」)は、その操作が容易且つ汎用性があり、並びに価格が下がってきているので、ますます普及してきている。タッチ表面により、ユーザは、パッド又はディスプレイ画面とすることができる表面を指、スタイラス、又は同様のものを用いて単にタッチすることによって選択を実行し、カーソルを移動させることが可能になる。一般に、タッチ表面は、タッチ及びそのタッチの位置を認識し、コンピュータシステムがそのタッチを解釈して、次いでタッチに基づいたアクションを実行する。
【0003】
特に関心があるのはタッチスクリーンである。2004年5月6日に出願された名称「Multipoint Touchscreen」の本出願人による同時係属中の米国特許出願シリアル番号10/840,862において、種々のタイプのタッチスクリーンが記載されており、当該出願は引用により全体が本明細書に組み込まれる。当該出願で述べているように、タッチスクリーンは通常、タッチパネル、コントローラ、及びソフトウェアドライバを含む。タッチパネルは一般に、タッチ感知面を備えた透明なパネルである。タッチパネルは、タッチ感知面がディスプレイ画面の可視領域を有効範囲に含むようにディスプレイ画面の前面に位置付けられる。タッチパネルは、タッチ事象を記録し、これらの信号をコントローラに送る。コントローラはこれらの信号を処理し、そのデータをコンピュータシステムに送る。ソフトウェアドライバは、タッチ事象をコンピュータ事象に変換する。
【0004】
抵抗式、容量式、赤外線式、表面弾性波式、電磁式、近接場イメージング式、その他を含む、幾つかのタイプのタッチスクリーン技術がある。これらのデバイスの各々には、利点と欠点とがあり、これらはタッチスクリーンの設計又は構成の際に考慮される。先行技術において見られる1つの問題点は、感知面上に複数の物体が置かれたときでも、これらのデバイスが単一のポイントしか報告できないことである。すなわち、これらには複数の接触ポイントを同時に探知する機能がない。抵抗式及び従来の容量式技術では、同時に発生する全てのタッチポイントの平均が求められ、タッチポイント間のどこか1つのポイントが報告される。表面弾性波及び赤外線技術では、マスキングに起因して、同じ水平ライン又は垂直ライン上にある複数のタッチポイントの正確な位置を見分けることはできない。いずれの場合においても、誤った結果がもたらされる。
【0005】
これらの問題は、タブレットPCなどのハンドヘルドデバイスにおいて特に問題であり、ここでは、一方の手はタブレットを握るのに用いて、他方の手はタッチ事象を生成するのに用いる。例えば、図1A及び1Bに示すように、タブレット2を握ると、親指3がタッチスクリーン5のタッチ感知面4の縁部と重なる。図1Aに示すように、抵抗式及び容量式パネルにより使用されるタッチ技術が平均化を使用する場合には、左手の親指3と右手の人差し指6との間のどこかにある単一のポイントが報告されることになる。図1Bに示すように、赤外線及び表面弾性波パネルにより使用される技術が投影走査式を使用する場合には、親指の垂直成分が大きいことに起因して、人差し指6の正確な垂直位置を見分けることは困難である。タブレット2は、グレーで示されるパッチを解像することしかできない。本質的に、親指3は、人差し指6の垂直位置を無効にする。
【0006】
現在利用可能な実質的に全ての市販のタッチスクリーンベースのシステムは、単一ポイント検出しか提供しておらず、解像度及び速度が限定されるが、現在利用可能な他の製品では、複数のタッチポイントを検出することができる。残念なことに、これらの製品は、回路素子を電極構造の背部に配置する必要があるので、不透明な表面上でしか機能しない。このような製品の実施例には、Fingerworksシリーズのタッチバッド製品が含まれる。これまでのところ、このような技術を用いて検出可能なポイントの数は、検出回路のサイズにより限定されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願シリアル番号10/840,862公報
【特許文献2】米国特許第6,323,846号公報
【特許文献3】米国特許第6,888,536号公報
【特許文献4】米国特許第6,677,932号公報
【特許文献5】米国特許第6,570,557号公報
【特許文献6】米国特許出願第11/015,434号公報
【特許文献7】米国特許第10/903,964号公報
【特許文献8】米国特許第11/048,264号公報
【特許文献9】米国特許第11/038,590号公報
【特許文献10】米国特許第11/228,758号公報
【特許文献11】米国特許第11/228,700号公報
【特許文献12】米国特許第11/228,737号公報
【特許文献13】米国特許第11/367,749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当該技術において必要とされることは、透明なタッチセンサの利用を可能にし且つ好都合に統合されたパッケージングを提供するマルチタッチ可能なタッチスクリーンコントローラである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書ではマルチタッチタッチ表面用コントローラが開示される。マルチタッチタッチ表面用コントローラの1つの態様は、マルチタッチセンサ及び感知回路を刺激し、マルチタッチセンサを単一の集積パッケージに読み込むための駆動電子回路の統合に関する。
【0010】
コントローラの別の態様は、異なる周波数を有する複数の刺激波形をセンサに提供することによりセンサ内のノイズを抑制する技術に関する。これにより、ノイズが特定の周波数で現れる場合の少なくとも1つのノイズの無い検出サイクルが可能となる。
【0011】
コントローラの別の態様は、種々のセンサ条件に対して最適な感知構成を提供するように回路を容易に構成することが可能にされたプログラム可能構成要素、すなわちプログラム可能抵抗及びキャパシタを含む電荷増幅器に関する。
【0012】
コントローラの別の態様は、マルチタッチ表面センサ出力の静的部分を排除し、感知回路の全ダイナミックレンジを出力信号の変化部分に割り当てることを可能にすることによって、コントローラのダイナミックレンジを拡張するオフセット補償回路に関する。
【0013】
コントローラの別の態様は、特定の周波数特性をもつことが知られている特定の復調波形を適用することによって、センサ構成のノイズ排除性を高める復調回路に関する。
【0014】
コントローラの別の態様は、システムのノイズ排除性を更に高めるために上述の複数の刺激周波数から得られたセンサ出力に様々なアルゴリズムを適用することに関する。
【0015】
これら及び他の態様は、以下の詳細な図面及び各図を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】従来技術のタッチスクリーン技術に伴う特定の問題を示す図である。
【図1B】従来技術のタッチスクリーン技術に伴う特定の問題を示す図である。
【図2】本発明の特定の技術によるマルチタッチスクリーン及びマルチタッチタッチ画面コントローラを組み込んだコンピュータデバイスの透視図である。
【図3】本発明の特定の技術によるマルチタッチスクリーン及びマルチタッチタッチ画面コントローラを組み込んだコンピュータデバイスのブロック図である。
【図4A】マルチタッチタッチ表面のドライブ電極及び感知電極の実施可能な構成を示す図である。
【図4B】マルチタッチタッチ表面のドライブ電極及び感知電極の実施可能な構成を示す図である。
【図5】本発明の種々の教示を組み込んだマルチコントローラを用いて、マルチタッチ表面とホストコンピュータデバイスとの間の通信を示す階層図である。
【図6】本開示の種々の教示を組み込んだマルチタッチコントローラの出力回路、マルチタッチセンサのセル、及びマルチタッチコントローラの入力回路を示す等価回路である。
【図7】本開示の種々の教示を組み込んだマルチコントローラのある実施形態に組み込まれる電荷増幅器の回路図である。
【図8】本開示の種々の教示によるマルチタッチ表面及びマルチタッチコントローラシステムのブロック図である。
【図9】本開示の特定の教示に従って様々な周波数の駆動波形がマルチタッチセンサに適用されるシーケンスを示す図である。
【図10】本開示の特定の教示によるマルチタッチコントローラの入力回路を示すブロック図である。
【図11A】種々の復調波形並びにこれらの通過帯域の周波数スペクトルを示す図である。
【図11B】種々の復調波形並びにこれらの通過帯域の周波数スペクトルを示す図である。
【図12】刺激波形のシーケンス、並びに特定の復調波形、及び結果として得られる出力を示す図である。
【図13】多数決原理アルゴリズムにより利用されるノイズ除去技術を示す図である。
【図14】コントローラのオペレーションを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここでマルチポイントスクリーンコントローラを説明する。カリフォルニア州Cupertino所在のApple Computer,Inc.製コンピュータシステムと互換性があるデバイス及びアプリケーションに関して説明される本発明の以下の実施形態は、単なる例証に過ぎず、どのような点においても限定とみなすべきではない。
【0018】
図2は、タッチスクリーン構成30の斜視図であり、ディスプレイ構成30は、ディスプレイ34と、ディスプレイの前面に位置付けられた透明タッチスクリーン36とを含む。ディスプレイ34は、場合によってはポインタ又はカーソル並びにユーザへの他の情報を含むグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を表示するよう構成することができる。透明なタッチスクリーン36は、ユーザのタッチを感知する入力デバイスであり、これによってユーザは、ディスプレイ34上でグラフィカルユーザインタフェースと対話することができる。一般に、タッチスクリーン36は、タッチスクリーン36の表面38上のタッチ事象を認識した後、この情報をホストデバイスに出力する。ホストデバイスは、例えば、デスクトップ、ラップトップ、ハンドヘルド又はタブレットコンピュータなそのコンピュータに相当することができる。ホストデバイスは、タッチ事象を解釈し、次いでそのタッチ事象に基づいてアクションを実行する。
【0019】
従来のタッチスクリーンとは対照的に、本明細書に示すタッチスクリーン36は、タッチ感知表面38上の異なる位置で同時に発生する複数のタッチ事象を認識するよう構成される。すなわち、タッチスクリーン36は、複数のコンタクトポイントT1〜T4を同時に探知することを可能にする。タッチスクリーン36は、タッチスクリーン36の表面上で同時に発生する各タッチポイントT1〜T4に対して別個の探索信号S1〜S4を生成する。1つの実施形態において、認識可能なタッチの数は、約15とすることができ、これにより、ユーザの10本の指及び2つの掌を他の3つのコンタクトと共に探知することが可能になる。ホストデバイスを制御するのに使用される複数のタッチスクリーンの多くの実施例が、米国特許第6,323,846号;第6,888,536号;第6,677,932号;第6,570,557号、並びに同時継続中の米国特許出願第11/015,434号;第10/903,964号;第11/048,264号;第11/038,590号;第11/228,758号;第11/228,700号;第11/228,737号;第11/367,749号に記載されており、これらの各々は引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
図3は、マルチタッチスクリーンを利用したコンピュータシステム50のブロック図である。コンピュータシステム50は、例えば、デスクトップ、ラップトップ、タブレット、又はハンドヘルドコンピュータのようなパーソナルコンピュータシステムとすることができる。コンピュータシステムはまた、案内所、現金自動預入支払機(ATM)、販売時点管理機構(POS)、産業機械、ゲーム機、業務用ゲーム機械、自動販売機、電子航空チケット端末、レストラン予約端末、顧客サービスステーション、図書館用端末、学習用デバイス、その他などの公共のコンピュータシステムとすることができる。
【0021】
コンピュータシステム50は、命令を実行するよう構成され、更にコンピュータシステムに関連付けられるオペレーションを実施するよう構成されたプロセッサ56を含む。プロセッサ56により必要とされるコンピュータコード及びデータは、一般に、プロセッサ56に動作可能に結合されるストレージブロック58に格納される。ストレージブロック58は、読み出し専用メモリ(ROM)60、ランダムアクセスメモリ(RAM)62、ハードディスクドライブ64、及び/又はCD−ROM、PC−カード、フロッピー(登録商標)ディスク、及び磁気テープなどの取り外し可能ストレージ媒体を含むことができる。また、これらのストレージデバイスのいずれもネットワーク上でアクセスすることができる。コンピュータシステム50はまた、プロセッサ56に動作可能に結合されるディスプレイデバイス68を含む。ディスプレイデバイス68は、液晶ディスプレイ(例えば、アクティブマトリクス、パッシブマトリクス、その他)、冷陰極管(CRT)、プラズマディスプレイ、その他を含む種々のディスプレイタイプのいずれかとすることができる。
【0022】
コンピュータシステム50はまた、I/Oコントローラ66及びタッチスクリーンコントローラ76を介してプロセッサ56に動作可能に結合されたタッチスクリーン70を含む。(I/Oコントローラ66は、プロセッサ56と統合してもよく、或いは別個の構成要素であってもよい)いずれの場合においても、タッチスクリーン70は、ディスプレイデバイス68の前面に位置付けられる透明パネルであり、ディスプレイデバイス68と統合してもよく、或いは別個の構成要素であってもよい。タッチスクリーン70は、ユーザのタッチから入力を受け取り、この情報をプロセッサ56に送るように構成される。ほとんどの場合において、タッチスクリーン70は、タッチ並びに該タッチの位置及び大きさを認識している。
【0023】
図3に示すシステムの階層図である図5を参照すると、タッチセンサとホストコンピュータシステムとの間の相互作用に関する良好な理解を得ることができる。タッチセンサ301は最下層に位置する。好ましい実施形態において、センサはASIC(特定用途向け集積回路)305とインタフェース接続され、ASICが、以下でより詳細に説明するようにセンサを刺激して生のセンサ出力を読み取る。ASIC305は、信号送信306によりDSP(デジタル信号プロセッサ)及び/又はマイクロコントローラ307とインタフェース接続され、DSP及び/又はマイクロコントローラ307は、キャパシタンスイメージを生成する。ASIC305及びDSP/マイクロコントローラ307は協働してマルチポイントタッチスクリーンコントローラを形成する。
【0024】
DSP/マイクロコントローラ307は、ASIC305からの送信信号306を受け入れるためのインタフェース308を含み、次いで、これらの信号は、データキャプチャ及びエラー除去層309に渡される。この層からのデータは、モジュール310並びに特徴部(すなわちタッチポイント)抽出及び圧縮モジュール311による較正、ベースライン、及びスタンバイ処理のためにアクセスすることができる。特徴部が抽出されると、これらの特徴部は、高レベル情報としてインタフェース303を介してホストコンピュータ302に渡される。インタフェース303は、例えば、USB(ユニバーサルシリアルバス)インタフェースとすることができる。或いは、IEEE1394(「Firewire」)、RS−232シリアルインタフェース、SCSI(小型コンピュータ用周辺機器インタフェース)、その他などの他の形式のインタフェースを用いることができる。
【0025】
本明細書で開示されるタッチスクリーンコントローラを完全に理解するためには、感知デバイスの正確な物理構造は必要ではない。それでも、この構造の詳細は、上記で引用により組み込まれた特許及び特許出願を参照することにより理解することができる。本明細書の目的において、センサは、図4A及び4Bを参照して以下で説明されるように構成された相互キャパシタンスデバイスと仮定することができる。
【0026】
センサパネルは、2層式電極構造から構成され、一方の層上に駆動ラインと、他の層上に感知ラインとを備える。いずれの場合においても、両層は誘電材料により分離される。図4Aの直交配置において、1つの層は、N個の水平、好ましくは等間隔に離間した横列の電極81から構成され、他の層は、M個の垂直、好ましくは等間隔に離間した縦列の電極82から構成される。図4Bに示す極配置において、感知ラインは同心円とすることができ、駆動ラインは、半径方向に延びるラインとすることができる(或いはその逆もまた同様である)。当業者には理解されるように、無制限の種々の座標系に基づく他の配置も実施可能である。
【0027】
各交点83は、ピクセルを表し且つ特性的な相互キャパシタンスCSIGを有する。ピクセル83に有限の距離から接近する接地物体(指など)は、横と縦の交点の間の電場を短絡し、当該位置で相互キャパシタンスCSIGの減少を引き起こす。典型的なセンサパネルの場合、典型的な信号キャパシタンスCSIGは約0.75pFであり、ピクセルにタッチする指により誘起される変化は約0.25pFである。
【0028】
電極材料は、用途に応じて変えることができる。タッチスクリーン用途では、電極材料は、ガラス基板上のITO(インジウムスズ酸化物)とすることができる。タッチタブレットでは、透明である必要はなく、FR4基板上の銅を用いることができる。また、感知ポイント83の数は広範囲に変えることができる。タッチスクリーン用途では、感知ポイント83の数は一般に、タッチスクリーン70の所望の感度並びに所望の透明度によって決まる。一般に、ノード又は感知ポイントが多くなるほど、感度も高くなるが、透明度は低下する(その逆も同様である)。
【0029】
オペレーションの間、各横列(又は縦列)は、所定の電圧波形85で駆動することによって順次的に充電される(以下でより詳細に説明する)。電荷は、交点において縦列(又は横列)に容量的に結合される。各交点83のキャパシタンスは、複数の物体がタッチ表面にタッチしたときのその複数の物体の位置を求めるために測定される。感知回路は、移動された電荷と、各ノードで生じるキャパシタンスの変化を検出するのに要した時間とを監視する。変化が生じた位置及びこれらの変化の大きさは、複数のタッチ事象を識別し定量化するのに用いられる。
【0030】
図6は、各結合ノード用の等価相互キャパシタンス回路220の簡略図である。相互キャパシタンス回路220は、駆動ライン222と、感知ライン224とを含み、これらは空間的に分離され、それにより容量結合ノード226を形成する。物体が存在しない場合には、ノード226における容量結合はほとんど一定のままである。指などの物体がノード226に近接して置かれた場合、ノード226を通じて容量結合が変化する。物体により電界が効果的に短絡され、ノード226全体にわたって移動される電荷が少なくなる。
【0031】
図5及び8を参照すると、ASIC305は、センサパネルを走査するのに必要な全ての駆動波形を発生する。具体的には、マイクロプロセッサは、ASICのタイミングを設定するためのクロック信号321を送り、次いで、ASICは、適切なタイミング波形322を発生して、センサ301への横列刺激を作成する。デコーダ311は、タイミング信号を解読し、センサ301の各横列を順に駆動する。レベルシフタ310は、タイミング信号322を送信信号レベル(例えば3.3V)からセンサを駆動するのに用いるレベル(例えば18V)に変換する。
【0032】
センサパネルの各横列は、マイクロプロセッサ307により決められたように駆動される。ノイズ除去の目的から、複数の異なる周波数でパネルを駆動するのが望ましい。特定の駆動周波数で存在するノイズは、他の周波数では存在できず、恐らくは存在しないことになる。好ましい実施形態において、各センサパネルの横列は、12の方形波サイクルのうちの3つのバースト(50%デューティサイクル、振幅18V)で刺激され、残りの横列は接地に維持される。以下でより詳細に説明されるようなノイズ除去を良好にするために、各バーストの周波数は異なっており、例示的なバースト周波数は、140kHz、200kHz、及び260kHzである。
【0033】
パルスの各バーストの間、ASIC305は、縦列電極の測定を行う。このプロセスは、センサパネルの残りの全ての横列について繰り返される。この結果として得られるのは、各々が異なる刺激周波数で取得された3つのイメージである。
【0034】
加えて、後続の各バーストに必要な刺激周波数変化の量を最小にすることが好ましい。従って、この変化を最小にする周波数ホッピングパターンが望ましい。図29は、1つの実施可能な周波数ホッピングパターンを示している。この構成において、第1の横列は240kHzバーストで駆動され、次いで200kHz、及び最後に260kHzバーストで駆動される。次いで、次の横列は、260kHz、200kHz、及び140kHzの3つのバーストでそれぞれ駆動される。この特定の周波数パターンは、周波数間の変化が小さく維持され、周波数遷移が滑らかで且つグリッチなしにできるように選択された。しかしながら、3つよりも多い周波数の走査、記載された順序パターン以外での疑似ランダムシーケンスでの周波数の走査、及びノイズ環境に基づいて走査周波数が選択される適応周波数ホッピングを含む、他の周波数ホッピング構成も実施可能である。
【0035】
再度図6を参照すると、感知ライン224は、容量感知回路230に電気的に結合される。容量感知回路230は、電流変化及び該電流変化が生じたノード226位置を検出及び定量化し、この情報をホストコンピュータに報告する。関心のある信号は、キャパシタンスCSIGであり、RCネットワークAからRCネットワークBに電荷を結合する。RCネットワークBからの出力は、ASIC305のアナログ入力端子に直接接続する。ASIC305はまた、マイクロプロセッサ307(図8)からのクロック信号321(図8)を用いて、キャパシタンス信号の検出及び定量化の時間を計測する。
【0036】
図10は、ASIC305の入力段を示すブロック図である。最初に、入力信号は、電荷増幅器401により受け取られる。電荷増幅器は、以下のタスク、すなわち、(1)電荷から電圧への変換、(2)電荷増幅、(3)縦列電極に存在するキャパシタンスの除去又は遊離、(4)アンチエイリアシング、及び(5)異なる周波数でのゲイン等化を実施する。図7は1つの実施可能な電荷増幅器401の図である。
【0037】
電荷電圧変換は、演算増幅器450のフィードバック経路においてキャパシタCFBにより実施される。1つの実施形態において、フィードバックキャパシタは、2〜32pFの範囲の値でプログラムすることができ、これにより、ある範囲のCSIG値に対して最良のダイナミックレンジを得るように出力電圧レベルを調節することが可能となる。フィードバック抵抗RFBはまた、好ましくは増幅ゲインを制御するようプログラム可能である。
【0038】
CSIGは、様々な製造公差に関連する要因によりタッチ表面全体で変わることになるので、1ピクセル当たりに基づいて電荷増幅器フィードバックキャパシタンスCFBを調整することは有用である。これによりゲイン補償を実施して各ピクセルの性能を最適化することができる。1つの実施形態において、疑似1ピクセル当たり調整が以下のように実施される。フィードバックキャパシタCFBは、CFB_REGとして知られるレジスタにより設定された値を有する。CFB_REGの値は、以下の式に従って設定される。
CFB_REG[Y]=CFB_UNIV+CFB[Y]
上式で、Yはある横列内の個々のピクセル、CFB_UNIVは横列毎に調節され、及びCFB[Y]は、システム起動時にロードされるルックアップテーブルである。代替の構成において、CFB_UNIVは、全横列について一定とすることができ、又はCFB[Y]ルックアップテーブルは、横列毎に切り換えることができる。また、横列及び縦列に関して検討してきたが、調整配置は、非直交座標系に同様に適用可能である。
【0039】
物理センサ内のあらゆる寄生抵抗及びキャパシタンスの作用をできる限り除去しながらCSIGを測定することが望ましいことは明らかである。センサ内の寄生抵抗及びキャパシタンスの除去は、増幅器45Dの非反転入力451を一定値(例えば接地)に保持することによって達成することができる。反転入力452は、測定されているノードに結合される。従って、当業者には明らかなように、反転入力452(測定中の縦列電極に接続)は仮想接地に保持される。その結果、縦列電極に存在するあらゆる寄生キャパシタンス、例えば、ユーザの縦列電極のタッチにより引き起こされたPCB浮遊キャパシタンス又はダイナミック浮遊キャパシタンスは、浮遊キャパシタの正味電荷が充電されない(すなわち、浮遊キャパシタンスの両端の電圧は仮想接地に保持される)ので除去される。従って、電荷増幅器出力電圧453は、刺激電圧、CSIG、及びCFBだけの関数である。刺激電圧及びCFBは、コントローラによって決まり、CSIGは容易に推測することができる。
【0040】
ASIC入力ピン455と電荷増幅器の反転入力452との間の直列抵抗454は、RFB及びCFBのフィードバックネットワークと組み合わせてアンチエイリアシングフィルタを形成する。
【0041】
電荷増幅器の高域ロールオフは、フィードバック抵抗RFB及びフィードバックキャパシタCFBを並列に組み合わせることによって設定される。
【0042】
同様に図10を参照すると、電荷増幅器401の出力が復調器403に渡される。復調器403は、5ビット定量化連続時間アナログ(4象限)乗算器である。復調器403の目的は、信号が入ってくるASIC305上に存在する帯域外ノイズ源(携帯電話、電子レンジ、その他からのもの)を除去することである。電荷増幅器(VSIG)の出力402は、ルックアップテーブル404内に格納された5ビット定量化波形と組み合わされる。復調波形の形状、振幅、及び周波数は、好適な係数をルックアップテーブル404にプログラムすることによって決まる。復調波形は、ミクサの通過帯域、阻止帯域、阻止域リップル、及び他の特徴を決定付ける。好ましい実施形態では、復調波形としてガウス形正弦波が使用される。ガウス形正弦波は、阻止域リップルが低減された鋭い通過帯域を提供する。
【0043】
復調器403の別の態様は、復調器位相遅延調整に関する。図10を参照すると分かるように、タッチ表面電極は、交差する点において相互キャパシタンス(CSIG)を有するRCネットワーク(RCネットワークA及びRCネットワークB)により表すことができる。RCネットワークの各々は低域通過フィルタを構成し、CSIGは、高域通過フィルタ応答を提供する。従って、タッチパネルは、帯域通過フィルタに類似しており、特定の周波数レンジを有する信号だけがパネルを通過することができる。この周波数レンジ、すなわちCSIGのカットオフを下回るがRCネットワークA及びBのカットオフを上回る周波数は、タッチパネルを駆動するのに用いることができる刺激周波数を決定付ける。
【0044】
従って、パネルは、刺激波形が該パネルを通過するときに位相遅延を与える。この位相遅延は、電極構造が通常PCBトレースにより形成される従来の不透明なタッチパネルでは無視してもよく、該トレースの抵抗は、特性インピーダンスに対して無視できるほどのものである。しかしながら、透明パネルでは、通常はインジウムスズ酸化物(ITO)導電性トレースを用いて構成されており、抵抗成分は極めて大きい可能性がある。これは、刺激電圧がパネルを通って伝播する際に有意な時間(位相)遅延をもたらすことになる。この位相遅延により、復調波形が前置増幅器に入る信号に対して遅延されるようになり、それによりADCより出てくる信号のダイナミックレンジが低減される。
【0045】
この位相遅延を補償するために、遅延クロックレジスタ(「DCL」図示せず)を設けることができ、これを用いて前置増幅器に入る信号に対して復調波形を遅延させ、その結果、外部パネル遅延を補償しダイナミックレンジを最大にすることができる。このレジスタは、復調器403に入力され、単に復調波形を所定量だけ遅延させる。この量は、パネルの起動時に測定により決定することができ、或いは、既知の製造特性に基づいてパネル全体について推定することができる。タッチ表面の各ピクセルは、その独自の一意的に決定された遅延パラメータを有することができ、又は横列毎に遅延パラメータを決定してもよい。調整は、電荷増幅器フィードバックキャパシタ及びオフセット補償電圧の調整について上述した技術にほぼ類似したものとなる。
【0046】
次いで、復調信号はオフセット補償回路に渡される。オフセット補償回路は、ミクサ402及びプログラム可能オフセットDAC405を含む。ミクサ402は、復調器の出力電圧453を受け取り、オフセット電圧(以下で説明される)を差し引いてシステムのダイナミックレンジを増大させる。
【0047】
ピクセルキャパシタンスCSIGは、静的部分と動的部分とから構成されるので、オフセット補償が必要となる。静的部分はセンサ構造の関数である。動的部分は、指がピクセルに近づいたときのCSIGの変化の関数であり、すなわち関心のある信号である。オフセット補償器の目的は、静的成分を除去又は最小にし、それによりシステムのダイナミックレンジを拡大することである。
【0048】
上述のように、オフセット補償回路は、プログラム可能オフセットDAC405及びミクサ402の2つの部分から構成される。オフセットDAC405は、デジタル静的オフセット値VOFF_REGからのプログラム可能オフセット電圧を発生する。このデジタル値は、DACにより静的アナログ電圧(又は電流、電流領域で動作している場合)に変換された後、復調波形の絶対値(ブロック404bで求められたもの)により設定される電圧(又は電流)と(ミクサ403bにより)組み合わされる。結果として得られるものは、復調波形を整流した波形であり、その振幅は、VOFF_REGの静的値及びDMODルックアップテーブル404から現在取り出された復調波形の絶対部分により設定される。これにより、復調波形の所与の部分に対するオフセット補償を適正な量にすることができるようになる。従って、オフセット補償波形は、復調波形を効果的に追従する。
【0049】
電荷増幅器フィードバックキャパシタと同様に、製造公差などによる個々のピクセルキャパシタンスのばらつきを考慮するようオフセット補償回路を調整することは有用である。調整は、電荷増幅器フィードバックキャパシタに関して上述されたものと実質的に類似したものとすることができる。具体的には、VOFF_REGに格納されたオフセット電圧値は、次式で計算することができる。
VOFF_REG[Y]=VOFF_UNIV+ VOFF[Y]
上式で、Yは、ある横列内の個々の縦列、VOFF_UNIVは、横列毎に設定されたオフセット電圧、及びVOFF[Y]は、ルックアップテーブルである。この場合も同様に、調整は、真のピクセル毎に実施することができ、又は、VOFF_UNIVは特定の実施に応じて単一の一定値とすることができる。また、横列及び縦列に関して検討したが、調整配置は、非直交座標系に同様に適用可能である。
【0050】
図10に関する上述の配置に対する代替として、復調の前にオフセット補償を行うことができる。この場合、オフセット補償波形の形状は、復調器から出てくる波形ではなく、前置増幅器から出てくる波形に一致する必要があり、すなわち、パネルでの減衰を無視した場合、駆動波形の形状が保たれるように方形波でなければならない。また、オフセット補償が最初に実施される場合、オフセット波形は、基準電圧に対するAC波形であり、すなわち最大値はVREFに関して正であり、最小値はVREFに関して負である。オフセット波形の振幅は、オフセット補償の量に等しい。反対に、最初に復調が実施される場合、オフセット波形は、DC波形であり、すなわちVrefに関して正か、又は負(復調波形はまた、Vrefに関してDCであるので)である。同様に、この場合の振幅は、復調波形のあらゆる部分についてオフセット補償の量に等しい。本質的に、オフセット補償回路は、波形の形状に応じて必要なオフセット補償の量を相関付ける必要がある。
【0051】
次に、プログラム可能ゲインADC406により復調オフセット補償信号が処理される。1つの実施形態において、ADC406は、シグマデルタとすることができるが、同様のタイプのADC(次に続くカウンタ段を備えた電圧周波数コンバータなど)を用いてもよい。ADCは、(1)ミクサ構成から出てくるオフセット補償波形をデジタル値に変換すること、及び(2)低域通過フィルタ機能を実施する、すなわちミクサ構成から出てくる整流信号を平均化することの2つの機能を実施する。オフセット補償復調信号は、整流ガウス形正弦波に類似しており、その振幅はCFB及びCSIGの関数である。ホストコンピュータに戻されるADC結果は、実際には当該信号の平均である。
【0052】
シグマデルタADCを用いる1つの利点は、こうしたADCがデジタル領域で平均化を行うのに一層効率的なことである。加えて、デジタルゲートは、アナログ低域通過フィルタ及びサンプルホールド要素よりも遙かに小さく、よってASIC全体のサイズが低減される。更に当業者であれば、特に消費電力及びクロック速度に関して他の利点を理解するであろう。
【0053】
或いは、コントローラASICから分離されたADCを使用してもよい。これには、複数のチャネル間でADCを共有するためのマルチプレクサと、復調波形の平均を平均化し保持するための各チャネルについてのサンプルホールド回路とが必要となる。これは、多数のピクセルを有するタッチ表面で使用するよう意図されたコントローラでは実施可能ではないほど多くのダイ領域を費やす可能性がある。更に、許容可能なオペレーションを行うためには、多数のピクセルを極めて迅速に処理し、ユーザの入力に応答して適時且つスムーズな結果を提供しなければならないので、外部ADCは極めて高速に動作することが必要となる。
【0054】
上述のように、センサは、3つの異なる周波数で駆動されて3つのキャパシタンスイメージがもたらされ、これは、以下で説明されるノイズ除去に用いられる。3つの周波数は、1つの特定の周波数の通過帯域が他の周波数の通過帯域と重ならないように選択される。上述のように、好ましい実施形態では、140kHz、200kHz、及び240kHzの周波数を使用する。復調波形は、側波帯が抑制されるように選択される。
【0055】
上述のように、図11Aに側波帯周波数スペクトルと共に示すガウス包絡線正弦波形は、1つの好ましい復調波形である。ガウス形正弦波形は、最小の阻止帯域リップルを備えた明確に定義された通過帯域を提供する。或いは、最小の阻止帯域リップルを備えた明確に定義された通過帯域を有する他の波形を用いてもよい。例えば、図11Bに阻止帯域周波数スペクトルと共に示すランプ包絡正弦波はまた、明確に定義された通過帯域を有するが、阻止帯域リップは、ガウス包絡線正弦波におけるよりも僅かに大きい。当業者には理解できるように、他の波形を用いてもよい。
【0056】
ここで図12を参照すると、システムのノイズ抑制特性を説明する9つの波形が図示されている。電圧波形501は、センサに印加される刺激波形を実際に示す方形波である。波形504は、復調波形として用いられるガウス包絡線正弦波である。波形507は、復調器の出力、すなわち波形501と504の積である。これは、印加方形波電圧の基本周波数における明確に定義されたパルスを提供する点に留意されたい。
【0057】
中央の列は例示的なノイズ波形502を示している。復調波形505は、復調波形504と同じである。復調ノイズ信号508は、あまり大きなスパイクは発生せず、これは、ノイズ信号の基本周波数が復調信号の通過帯域であるためである点に留意されたい。
【0058】
励起波形とノイズ信号の合成が503に示されている。同様に、復調波形506は、復調波形505及び504と同様である。復調合成は、依然としてノイズ波形を示しているが、種々の信号処理アルゴリズムを適用してこの比較的孤立したスパイクを抽出することができる。
【0059】
加えて、ノイズ除去は、種々の周波数の複数の刺激電圧を提供し、その結果に多数決原理を適用することによって達成することができる。多数決原理アルゴリズムにおいて、各キャパシタンスノード毎に最良の振幅整合をもたらす2つの周波数チャネルが平均化され、残りのチャネルは破棄される。例えば、図13において、垂直ライン600は測定キャパシタンスを表し、マーキング601、602、及び603は、3つの刺激周波数で測定された3つの値を表している。値602及び603は最良整合を提供し、値601は誤りである可能性があることを示唆している。従って、値601は破棄され、値602及び603は平均化されて出力を形成する。
【0060】
或いは、メジアンフィルタを適用してもよく、この場合には、値602すなわち中央値が出力として選択されることになる。更に別の代替形態として、3つの結果を単に平均化してもよく、この場合、およそ値601から602位の値が生じることになる。複数のサンプル値に対する様々な他のノイズ除去技術が当業者には明らかであり、そのいずれもが本明細書で説明されるコントローラで好適に用いることができる。
【0061】
コントローラのオペレーションを示すフローチャートである図14に関して、回路の動作を更に理解することができる。明確にするために、種々のタイミング及び記憶装置の問題はこのフローチャートから除外される点は、当業者であれば理解されるであろう。
【0062】
ブロック701でイメージ取得が開始される。次いで、システムは、図9に関して上記で説明されたような中間クロック周波数(例えば200kHz)でサンプルを取得するようにクロックを設定する(ブロック702)。次に、こうしたパラメータを電圧オフセット、振幅ゲイン、遅延クロック、その他として制御する種々のプログラム可能レジスタが更新される(ブロック703)。全縦列が読み出され、結果が中間ベクトルとして格納される(ブロック704)。次に、高クロック周波数が設定され(ブロック705)、レジスタを更新するステップ(ブロック706)及び全縦列を読み出し結果を格納するステップ(ステップ707)が高サンプル周波数について繰り返される。次いで、クロックが低周波数に設定され(ステップ708)、レジスタ更新(ブロック709)及び縦列読み出し(ブロック710)が低サンプル周波数について繰り返される。
【0063】
次に、上記のアルゴリズムに従って、3つのベクトルがオフセット補償される(ブロック711)。次いで、オフセット補償されたベクトルは、上述のメジアンフィルタを受ける。或いは、図13に関して説明された多数決原理アルゴリズム又は何らかの他の好適なフィルタ処理技術によりフィルタ処理することができる。いずれの場合においても結果は格納される。横列が更に残っている場合、プロセスは、ブロック702の中間周波数サンプリングに戻る。全横列が完了する(ブロック713)と、全体のイメージがホストデバイスに出力され(ブロック714)、続いて、新しいイメージが取得される(ブロック701)。
【0064】
幾つかの好ましい実施形態について本発明を説明してきたが、本発明の範囲内にある改変形態、置換形態、及び均等物が存在する。例えば、用語「コンピュータ」は、何らかの特定の種類のデバイス、ハードウェア及び/又はソフトウェアの組み合わせを意味するものではなく、更に汎用又は専用のデバイスに限定されたものとみなすべきでもない。加えて、本明細書の実施形態は、タッチスクリーンに関連して説明してきたが、本発明の教示は、タッチパッド又は何らかの他のタッチ表面タイプのセンサに等しく適用可能である。更に、本開示は主に容量性感知に関するものであるが、本明細書で記載された特徴の一部又は全ては他の感知手法にも適用できる点を理解されたい。また、本発明の方法及び本発明の装置を実施する多数の代替手法が存在することも理解されたい。従って、添付の請求項は、本発明の真の思想及び範囲に含まれるこうした改変、置換、及び均等物全てを含むものとして解釈することが意図されている。
【符号の説明】
【0065】
30 タッチスクリーン構成
34 ディスプレイ
36 タッチスクリーン
38 タッチ感知表面
50 コンピュータシステム
56 プロセッサ
58 ストレージブロック
60 ROM
62 RAM
64 ハードディスクドライブ
66 I/Oコントローラ
68 ディスプレイデバイス
70 タッチスクリーン
76 タッチスクリーンコントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチポイントタッチ表面コントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンピュータシステムにおいてオペレーションを実行するための多くのスタイルの入力デバイスが存在する。一般に、このオペレーションは、ディスプレイ画面上でのカーソルの移動及び/又は選択の実施に対応する。例証として、入力デバイスとしては、ボタン又はキー、マウス、トラックボール、タッチパッド、ジョイスティック、タッチスクリーン、及び同様のものを含むことができる。タッチパッド及びタッチスクリーン(総称して「タッチ表面」)は、その操作が容易且つ汎用性があり、並びに価格が下がってきているので、ますます普及してきている。タッチ表面により、ユーザは、パッド又はディスプレイ画面とすることができる表面を指、スタイラス、又は同様のものを用いて単にタッチすることによって選択を実行し、カーソルを移動させることが可能になる。一般に、タッチ表面は、タッチ及びそのタッチの位置を認識し、コンピュータシステムがそのタッチを解釈して、次いでタッチに基づいたアクションを実行する。
【0003】
特に関心があるのはタッチスクリーンである。2004年5月6日に出願された名称「Multipoint Touchscreen」の本出願人による同時係属中の米国特許出願シリアル番号10/840,862において、種々のタイプのタッチスクリーンが記載されており、当該出願は引用により全体が本明細書に組み込まれる。当該出願で述べているように、タッチスクリーンは通常、タッチパネル、コントローラ、及びソフトウェアドライバを含む。タッチパネルは一般に、タッチ感知面を備えた透明なパネルである。タッチパネルは、タッチ感知面がディスプレイ画面の可視領域を有効範囲に含むようにディスプレイ画面の前面に位置付けられる。タッチパネルは、タッチ事象を記録し、これらの信号をコントローラに送る。コントローラはこれらの信号を処理し、そのデータをコンピュータシステムに送る。ソフトウェアドライバは、タッチ事象をコンピュータ事象に変換する。
【0004】
抵抗式、容量式、赤外線式、表面弾性波式、電磁式、近接場イメージング式、その他を含む、幾つかのタイプのタッチスクリーン技術がある。これらのデバイスの各々には、利点と欠点とがあり、これらはタッチスクリーンの設計又は構成の際に考慮される。先行技術において見られる1つの問題点は、感知面上に複数の物体が置かれたときでも、これらのデバイスが単一のポイントしか報告できないことである。すなわち、これらには複数の接触ポイントを同時に探知する機能がない。抵抗式及び従来の容量式技術では、同時に発生する全てのタッチポイントの平均が求められ、タッチポイント間のどこか1つのポイントが報告される。表面弾性波及び赤外線技術では、マスキングに起因して、同じ水平ライン又は垂直ライン上にある複数のタッチポイントの正確な位置を見分けることはできない。いずれの場合においても、誤った結果がもたらされる。
【0005】
これらの問題は、タブレットPCなどのハンドヘルドデバイスにおいて特に問題であり、ここでは、一方の手はタブレットを握るのに用いて、他方の手はタッチ事象を生成するのに用いる。例えば、図1A及び1Bに示すように、タブレット2を握ると、親指3がタッチスクリーン5のタッチ感知面4の縁部と重なる。図1Aに示すように、抵抗式及び容量式パネルにより使用されるタッチ技術が平均化を使用する場合には、左手の親指3と右手の人差し指6との間のどこかにある単一のポイントが報告されることになる。図1Bに示すように、赤外線及び表面弾性波パネルにより使用される技術が投影走査式を使用する場合には、親指の垂直成分が大きいことに起因して、人差し指6の正確な垂直位置を見分けることは困難である。タブレット2は、グレーで示されるパッチを解像することしかできない。本質的に、親指3は、人差し指6の垂直位置を無効にする。
【0006】
現在利用可能な実質的に全ての市販のタッチスクリーンベースのシステムは、単一ポイント検出しか提供しておらず、解像度及び速度が限定されるが、現在利用可能な他の製品では、複数のタッチポイントを検出することができる。残念なことに、これらの製品は、回路素子を電極構造の背部に配置する必要があるので、不透明な表面上でしか機能しない。このような製品の実施例には、Fingerworksシリーズのタッチバッド製品が含まれる。これまでのところ、このような技術を用いて検出可能なポイントの数は、検出回路のサイズにより限定されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願シリアル番号10/840,862公報
【特許文献2】米国特許第6,323,846号公報
【特許文献3】米国特許第6,888,536号公報
【特許文献4】米国特許第6,677,932号公報
【特許文献5】米国特許第6,570,557号公報
【特許文献6】米国特許出願第11/015,434号公報
【特許文献7】米国特許第10/903,964号公報
【特許文献8】米国特許第11/048,264号公報
【特許文献9】米国特許第11/038,590号公報
【特許文献10】米国特許第11/228,758号公報
【特許文献11】米国特許第11/228,700号公報
【特許文献12】米国特許第11/228,737号公報
【特許文献13】米国特許第11/367,749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当該技術において必要とされることは、透明なタッチセンサの利用を可能にし且つ好都合に統合されたパッケージングを提供するマルチタッチ可能なタッチスクリーンコントローラである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書ではマルチタッチタッチ表面用コントローラが開示される。マルチタッチタッチ表面用コントローラの1つの態様は、マルチタッチセンサ及び感知回路を刺激し、マルチタッチセンサを単一の集積パッケージに読み込むための駆動電子回路の統合に関する。
【0010】
コントローラの別の態様は、異なる周波数を有する複数の刺激波形をセンサに提供することによりセンサ内のノイズを抑制する技術に関する。これにより、ノイズが特定の周波数で現れる場合の少なくとも1つのノイズの無い検出サイクルが可能となる。
【0011】
コントローラの別の態様は、種々のセンサ条件に対して最適な感知構成を提供するように回路を容易に構成することが可能にされたプログラム可能構成要素、すなわちプログラム可能抵抗及びキャパシタを含む電荷増幅器に関する。
【0012】
コントローラの別の態様は、マルチタッチ表面センサ出力の静的部分を排除し、感知回路の全ダイナミックレンジを出力信号の変化部分に割り当てることを可能にすることによって、コントローラのダイナミックレンジを拡張するオフセット補償回路に関する。
【0013】
コントローラの別の態様は、特定の周波数特性をもつことが知られている特定の復調波形を適用することによって、センサ構成のノイズ排除性を高める復調回路に関する。
【0014】
コントローラの別の態様は、システムのノイズ排除性を更に高めるために上述の複数の刺激周波数から得られたセンサ出力に様々なアルゴリズムを適用することに関する。
【0015】
これら及び他の態様は、以下の詳細な図面及び各図を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】従来技術のタッチスクリーン技術に伴う特定の問題を示す図である。
【図1B】従来技術のタッチスクリーン技術に伴う特定の問題を示す図である。
【図2】本発明の特定の技術によるマルチタッチスクリーン及びマルチタッチタッチ画面コントローラを組み込んだコンピュータデバイスの透視図である。
【図3】本発明の特定の技術によるマルチタッチスクリーン及びマルチタッチタッチ画面コントローラを組み込んだコンピュータデバイスのブロック図である。
【図4A】マルチタッチタッチ表面のドライブ電極及び感知電極の実施可能な構成を示す図である。
【図4B】マルチタッチタッチ表面のドライブ電極及び感知電極の実施可能な構成を示す図である。
【図5】本発明の種々の教示を組み込んだマルチコントローラを用いて、マルチタッチ表面とホストコンピュータデバイスとの間の通信を示す階層図である。
【図6】本開示の種々の教示を組み込んだマルチタッチコントローラの出力回路、マルチタッチセンサのセル、及びマルチタッチコントローラの入力回路を示す等価回路である。
【図7】本開示の種々の教示を組み込んだマルチコントローラのある実施形態に組み込まれる電荷増幅器の回路図である。
【図8】本開示の種々の教示によるマルチタッチ表面及びマルチタッチコントローラシステムのブロック図である。
【図9】本開示の特定の教示に従って様々な周波数の駆動波形がマルチタッチセンサに適用されるシーケンスを示す図である。
【図10】本開示の特定の教示によるマルチタッチコントローラの入力回路を示すブロック図である。
【図11A】種々の復調波形並びにこれらの通過帯域の周波数スペクトルを示す図である。
【図11B】種々の復調波形並びにこれらの通過帯域の周波数スペクトルを示す図である。
【図12】刺激波形のシーケンス、並びに特定の復調波形、及び結果として得られる出力を示す図である。
【図13】多数決原理アルゴリズムにより利用されるノイズ除去技術を示す図である。
【図14】コントローラのオペレーションを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここでマルチポイントスクリーンコントローラを説明する。カリフォルニア州Cupertino所在のApple Computer,Inc.製コンピュータシステムと互換性があるデバイス及びアプリケーションに関して説明される本発明の以下の実施形態は、単なる例証に過ぎず、どのような点においても限定とみなすべきではない。
【0018】
図2は、タッチスクリーン構成30の斜視図であり、ディスプレイ構成30は、ディスプレイ34と、ディスプレイの前面に位置付けられた透明タッチスクリーン36とを含む。ディスプレイ34は、場合によってはポインタ又はカーソル並びにユーザへの他の情報を含むグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を表示するよう構成することができる。透明なタッチスクリーン36は、ユーザのタッチを感知する入力デバイスであり、これによってユーザは、ディスプレイ34上でグラフィカルユーザインタフェースと対話することができる。一般に、タッチスクリーン36は、タッチスクリーン36の表面38上のタッチ事象を認識した後、この情報をホストデバイスに出力する。ホストデバイスは、例えば、デスクトップ、ラップトップ、ハンドヘルド又はタブレットコンピュータなそのコンピュータに相当することができる。ホストデバイスは、タッチ事象を解釈し、次いでそのタッチ事象に基づいてアクションを実行する。
【0019】
従来のタッチスクリーンとは対照的に、本明細書に示すタッチスクリーン36は、タッチ感知表面38上の異なる位置で同時に発生する複数のタッチ事象を認識するよう構成される。すなわち、タッチスクリーン36は、複数のコンタクトポイントT1〜T4を同時に探知することを可能にする。タッチスクリーン36は、タッチスクリーン36の表面上で同時に発生する各タッチポイントT1〜T4に対して別個の探索信号S1〜S4を生成する。1つの実施形態において、認識可能なタッチの数は、約15とすることができ、これにより、ユーザの10本の指及び2つの掌を他の3つのコンタクトと共に探知することが可能になる。ホストデバイスを制御するのに使用される複数のタッチスクリーンの多くの実施例が、米国特許第6,323,846号;第6,888,536号;第6,677,932号;第6,570,557号、並びに同時継続中の米国特許出願第11/015,434号;第10/903,964号;第11/048,264号;第11/038,590号;第11/228,758号;第11/228,700号;第11/228,737号;第11/367,749号に記載されており、これらの各々は引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
図3は、マルチタッチスクリーンを利用したコンピュータシステム50のブロック図である。コンピュータシステム50は、例えば、デスクトップ、ラップトップ、タブレット、又はハンドヘルドコンピュータのようなパーソナルコンピュータシステムとすることができる。コンピュータシステムはまた、案内所、現金自動預入支払機(ATM)、販売時点管理機構(POS)、産業機械、ゲーム機、業務用ゲーム機械、自動販売機、電子航空チケット端末、レストラン予約端末、顧客サービスステーション、図書館用端末、学習用デバイス、その他などの公共のコンピュータシステムとすることができる。
【0021】
コンピュータシステム50は、命令を実行するよう構成され、更にコンピュータシステムに関連付けられるオペレーションを実施するよう構成されたプロセッサ56を含む。プロセッサ56により必要とされるコンピュータコード及びデータは、一般に、プロセッサ56に動作可能に結合されるストレージブロック58に格納される。ストレージブロック58は、読み出し専用メモリ(ROM)60、ランダムアクセスメモリ(RAM)62、ハードディスクドライブ64、及び/又はCD−ROM、PC−カード、フロッピー(登録商標)ディスク、及び磁気テープなどの取り外し可能ストレージ媒体を含むことができる。また、これらのストレージデバイスのいずれもネットワーク上でアクセスすることができる。コンピュータシステム50はまた、プロセッサ56に動作可能に結合されるディスプレイデバイス68を含む。ディスプレイデバイス68は、液晶ディスプレイ(例えば、アクティブマトリクス、パッシブマトリクス、その他)、冷陰極管(CRT)、プラズマディスプレイ、その他を含む種々のディスプレイタイプのいずれかとすることができる。
【0022】
コンピュータシステム50はまた、I/Oコントローラ66及びタッチスクリーンコントローラ76を介してプロセッサ56に動作可能に結合されたタッチスクリーン70を含む。(I/Oコントローラ66は、プロセッサ56と統合してもよく、或いは別個の構成要素であってもよい)いずれの場合においても、タッチスクリーン70は、ディスプレイデバイス68の前面に位置付けられる透明パネルであり、ディスプレイデバイス68と統合してもよく、或いは別個の構成要素であってもよい。タッチスクリーン70は、ユーザのタッチから入力を受け取り、この情報をプロセッサ56に送るように構成される。ほとんどの場合において、タッチスクリーン70は、タッチ並びに該タッチの位置及び大きさを認識している。
【0023】
図3に示すシステムの階層図である図5を参照すると、タッチセンサとホストコンピュータシステムとの間の相互作用に関する良好な理解を得ることができる。タッチセンサ301は最下層に位置する。好ましい実施形態において、センサはASIC(特定用途向け集積回路)305とインタフェース接続され、ASICが、以下でより詳細に説明するようにセンサを刺激して生のセンサ出力を読み取る。ASIC305は、信号送信306によりDSP(デジタル信号プロセッサ)及び/又はマイクロコントローラ307とインタフェース接続され、DSP及び/又はマイクロコントローラ307は、キャパシタンスイメージを生成する。ASIC305及びDSP/マイクロコントローラ307は協働してマルチポイントタッチスクリーンコントローラを形成する。
【0024】
DSP/マイクロコントローラ307は、ASIC305からの送信信号306を受け入れるためのインタフェース308を含み、次いで、これらの信号は、データキャプチャ及びエラー除去層309に渡される。この層からのデータは、モジュール310並びに特徴部(すなわちタッチポイント)抽出及び圧縮モジュール311による較正、ベースライン、及びスタンバイ処理のためにアクセスすることができる。特徴部が抽出されると、これらの特徴部は、高レベル情報としてインタフェース303を介してホストコンピュータ302に渡される。インタフェース303は、例えば、USB(ユニバーサルシリアルバス)インタフェースとすることができる。或いは、IEEE1394(「Firewire」)、RS−232シリアルインタフェース、SCSI(小型コンピュータ用周辺機器インタフェース)、その他などの他の形式のインタフェースを用いることができる。
【0025】
本明細書で開示されるタッチスクリーンコントローラを完全に理解するためには、感知デバイスの正確な物理構造は必要ではない。それでも、この構造の詳細は、上記で引用により組み込まれた特許及び特許出願を参照することにより理解することができる。本明細書の目的において、センサは、図4A及び4Bを参照して以下で説明されるように構成された相互キャパシタンスデバイスと仮定することができる。
【0026】
センサパネルは、2層式電極構造から構成され、一方の層上に駆動ラインと、他の層上に感知ラインとを備える。いずれの場合においても、両層は誘電材料により分離される。図4Aの直交配置において、1つの層は、N個の水平、好ましくは等間隔に離間した横列の電極81から構成され、他の層は、M個の垂直、好ましくは等間隔に離間した縦列の電極82から構成される。図4Bに示す極配置において、感知ラインは同心円とすることができ、駆動ラインは、半径方向に延びるラインとすることができる(或いはその逆もまた同様である)。当業者には理解されるように、無制限の種々の座標系に基づく他の配置も実施可能である。
【0027】
各交点83は、ピクセルを表し且つ特性的な相互キャパシタンスCSIGを有する。ピクセル83に有限の距離から接近する接地物体(指など)は、横と縦の交点の間の電場を短絡し、当該位置で相互キャパシタンスCSIGの減少を引き起こす。典型的なセンサパネルの場合、典型的な信号キャパシタンスCSIGは約0.75pFであり、ピクセルにタッチする指により誘起される変化は約0.25pFである。
【0028】
電極材料は、用途に応じて変えることができる。タッチスクリーン用途では、電極材料は、ガラス基板上のITO(インジウムスズ酸化物)とすることができる。タッチタブレットでは、透明である必要はなく、FR4基板上の銅を用いることができる。また、感知ポイント83の数は広範囲に変えることができる。タッチスクリーン用途では、感知ポイント83の数は一般に、タッチスクリーン70の所望の感度並びに所望の透明度によって決まる。一般に、ノード又は感知ポイントが多くなるほど、感度も高くなるが、透明度は低下する(その逆も同様である)。
【0029】
オペレーションの間、各横列(又は縦列)は、所定の電圧波形85で駆動することによって順次的に充電される(以下でより詳細に説明する)。電荷は、交点において縦列(又は横列)に容量的に結合される。各交点83のキャパシタンスは、複数の物体がタッチ表面にタッチしたときのその複数の物体の位置を求めるために測定される。感知回路は、移動された電荷と、各ノードで生じるキャパシタンスの変化を検出するのに要した時間とを監視する。変化が生じた位置及びこれらの変化の大きさは、複数のタッチ事象を識別し定量化するのに用いられる。
【0030】
図6は、各結合ノード用の等価相互キャパシタンス回路220の簡略図である。相互キャパシタンス回路220は、駆動ライン222と、感知ライン224とを含み、これらは空間的に分離され、それにより容量結合ノード226を形成する。物体が存在しない場合には、ノード226における容量結合はほとんど一定のままである。指などの物体がノード226に近接して置かれた場合、ノード226を通じて容量結合が変化する。物体により電界が効果的に短絡され、ノード226全体にわたって移動される電荷が少なくなる。
【0031】
図5及び8を参照すると、ASIC305は、センサパネルを走査するのに必要な全ての駆動波形を発生する。具体的には、マイクロプロセッサは、ASICのタイミングを設定するためのクロック信号321を送り、次いで、ASICは、適切なタイミング波形322を発生して、センサ301への横列刺激を作成する。デコーダ311は、タイミング信号を解読し、センサ301の各横列を順に駆動する。レベルシフタ310は、タイミング信号322を送信信号レベル(例えば3.3V)からセンサを駆動するのに用いるレベル(例えば18V)に変換する。
【0032】
センサパネルの各横列は、マイクロプロセッサ307により決められたように駆動される。ノイズ除去の目的から、複数の異なる周波数でパネルを駆動するのが望ましい。特定の駆動周波数で存在するノイズは、他の周波数では存在できず、恐らくは存在しないことになる。好ましい実施形態において、各センサパネルの横列は、12の方形波サイクルのうちの3つのバースト(50%デューティサイクル、振幅18V)で刺激され、残りの横列は接地に維持される。以下でより詳細に説明されるようなノイズ除去を良好にするために、各バーストの周波数は異なっており、例示的なバースト周波数は、140kHz、200kHz、及び260kHzである。
【0033】
パルスの各バーストの間、ASIC305は、縦列電極の測定を行う。このプロセスは、センサパネルの残りの全ての横列について繰り返される。この結果として得られるのは、各々が異なる刺激周波数で取得された3つのイメージである。
【0034】
加えて、後続の各バーストに必要な刺激周波数変化の量を最小にすることが好ましい。従って、この変化を最小にする周波数ホッピングパターンが望ましい。図29は、1つの実施可能な周波数ホッピングパターンを示している。この構成において、第1の横列は240kHzバーストで駆動され、次いで200kHz、及び最後に260kHzバーストで駆動される。次いで、次の横列は、260kHz、200kHz、及び140kHzの3つのバーストでそれぞれ駆動される。この特定の周波数パターンは、周波数間の変化が小さく維持され、周波数遷移が滑らかで且つグリッチなしにできるように選択された。しかしながら、3つよりも多い周波数の走査、記載された順序パターン以外での疑似ランダムシーケンスでの周波数の走査、及びノイズ環境に基づいて走査周波数が選択される適応周波数ホッピングを含む、他の周波数ホッピング構成も実施可能である。
【0035】
再度図6を参照すると、感知ライン224は、容量感知回路230に電気的に結合される。容量感知回路230は、電流変化及び該電流変化が生じたノード226位置を検出及び定量化し、この情報をホストコンピュータに報告する。関心のある信号は、キャパシタンスCSIGであり、RCネットワークAからRCネットワークBに電荷を結合する。RCネットワークBからの出力は、ASIC305のアナログ入力端子に直接接続する。ASIC305はまた、マイクロプロセッサ307(図8)からのクロック信号321(図8)を用いて、キャパシタンス信号の検出及び定量化の時間を計測する。
【0036】
図10は、ASIC305の入力段を示すブロック図である。最初に、入力信号は、電荷増幅器401により受け取られる。電荷増幅器は、以下のタスク、すなわち、(1)電荷から電圧への変換、(2)電荷増幅、(3)縦列電極に存在するキャパシタンスの除去又は遊離、(4)アンチエイリアシング、及び(5)異なる周波数でのゲイン等化を実施する。図7は1つの実施可能な電荷増幅器401の図である。
【0037】
電荷電圧変換は、演算増幅器450のフィードバック経路においてキャパシタCFBにより実施される。1つの実施形態において、フィードバックキャパシタは、2〜32pFの範囲の値でプログラムすることができ、これにより、ある範囲のCSIG値に対して最良のダイナミックレンジを得るように出力電圧レベルを調節することが可能となる。フィードバック抵抗RFBはまた、好ましくは増幅ゲインを制御するようプログラム可能である。
【0038】
CSIGは、様々な製造公差に関連する要因によりタッチ表面全体で変わることになるので、1ピクセル当たりに基づいて電荷増幅器フィードバックキャパシタンスCFBを調整することは有用である。これによりゲイン補償を実施して各ピクセルの性能を最適化することができる。1つの実施形態において、疑似1ピクセル当たり調整が以下のように実施される。フィードバックキャパシタCFBは、CFB_REGとして知られるレジスタにより設定された値を有する。CFB_REGの値は、以下の式に従って設定される。
CFB_REG[Y]=CFB_UNIV+CFB[Y]
上式で、Yはある横列内の個々のピクセル、CFB_UNIVは横列毎に調節され、及びCFB[Y]は、システム起動時にロードされるルックアップテーブルである。代替の構成において、CFB_UNIVは、全横列について一定とすることができ、又はCFB[Y]ルックアップテーブルは、横列毎に切り換えることができる。また、横列及び縦列に関して検討してきたが、調整配置は、非直交座標系に同様に適用可能である。
【0039】
物理センサ内のあらゆる寄生抵抗及びキャパシタンスの作用をできる限り除去しながらCSIGを測定することが望ましいことは明らかである。センサ内の寄生抵抗及びキャパシタンスの除去は、増幅器45Dの非反転入力451を一定値(例えば接地)に保持することによって達成することができる。反転入力452は、測定されているノードに結合される。従って、当業者には明らかなように、反転入力452(測定中の縦列電極に接続)は仮想接地に保持される。その結果、縦列電極に存在するあらゆる寄生キャパシタンス、例えば、ユーザの縦列電極のタッチにより引き起こされたPCB浮遊キャパシタンス又はダイナミック浮遊キャパシタンスは、浮遊キャパシタの正味電荷が充電されない(すなわち、浮遊キャパシタンスの両端の電圧は仮想接地に保持される)ので除去される。従って、電荷増幅器出力電圧453は、刺激電圧、CSIG、及びCFBだけの関数である。刺激電圧及びCFBは、コントローラによって決まり、CSIGは容易に推測することができる。
【0040】
ASIC入力ピン455と電荷増幅器の反転入力452との間の直列抵抗454は、RFB及びCFBのフィードバックネットワークと組み合わせてアンチエイリアシングフィルタを形成する。
【0041】
電荷増幅器の高域ロールオフは、フィードバック抵抗RFB及びフィードバックキャパシタCFBを並列に組み合わせることによって設定される。
【0042】
同様に図10を参照すると、電荷増幅器401の出力が復調器403に渡される。復調器403は、5ビット定量化連続時間アナログ(4象限)乗算器である。復調器403の目的は、信号が入ってくるASIC305上に存在する帯域外ノイズ源(携帯電話、電子レンジ、その他からのもの)を除去することである。電荷増幅器(VSIG)の出力402は、ルックアップテーブル404内に格納された5ビット定量化波形と組み合わされる。復調波形の形状、振幅、及び周波数は、好適な係数をルックアップテーブル404にプログラムすることによって決まる。復調波形は、ミクサの通過帯域、阻止帯域、阻止域リップル、及び他の特徴を決定付ける。好ましい実施形態では、復調波形としてガウス形正弦波が使用される。ガウス形正弦波は、阻止域リップルが低減された鋭い通過帯域を提供する。
【0043】
復調器403の別の態様は、復調器位相遅延調整に関する。図10を参照すると分かるように、タッチ表面電極は、交差する点において相互キャパシタンス(CSIG)を有するRCネットワーク(RCネットワークA及びRCネットワークB)により表すことができる。RCネットワークの各々は低域通過フィルタを構成し、CSIGは、高域通過フィルタ応答を提供する。従って、タッチパネルは、帯域通過フィルタに類似しており、特定の周波数レンジを有する信号だけがパネルを通過することができる。この周波数レンジ、すなわちCSIGのカットオフを下回るがRCネットワークA及びBのカットオフを上回る周波数は、タッチパネルを駆動するのに用いることができる刺激周波数を決定付ける。
【0044】
従って、パネルは、刺激波形が該パネルを通過するときに位相遅延を与える。この位相遅延は、電極構造が通常PCBトレースにより形成される従来の不透明なタッチパネルでは無視してもよく、該トレースの抵抗は、特性インピーダンスに対して無視できるほどのものである。しかしながら、透明パネルでは、通常はインジウムスズ酸化物(ITO)導電性トレースを用いて構成されており、抵抗成分は極めて大きい可能性がある。これは、刺激電圧がパネルを通って伝播する際に有意な時間(位相)遅延をもたらすことになる。この位相遅延により、復調波形が前置増幅器に入る信号に対して遅延されるようになり、それによりADCより出てくる信号のダイナミックレンジが低減される。
【0045】
この位相遅延を補償するために、遅延クロックレジスタ(「DCL」図示せず)を設けることができ、これを用いて前置増幅器に入る信号に対して復調波形を遅延させ、その結果、外部パネル遅延を補償しダイナミックレンジを最大にすることができる。このレジスタは、復調器403に入力され、単に復調波形を所定量だけ遅延させる。この量は、パネルの起動時に測定により決定することができ、或いは、既知の製造特性に基づいてパネル全体について推定することができる。タッチ表面の各ピクセルは、その独自の一意的に決定された遅延パラメータを有することができ、又は横列毎に遅延パラメータを決定してもよい。調整は、電荷増幅器フィードバックキャパシタ及びオフセット補償電圧の調整について上述した技術にほぼ類似したものとなる。
【0046】
次いで、復調信号はオフセット補償回路に渡される。オフセット補償回路は、ミクサ402及びプログラム可能オフセットDAC405を含む。ミクサ402は、復調器の出力電圧453を受け取り、オフセット電圧(以下で説明される)を差し引いてシステムのダイナミックレンジを増大させる。
【0047】
ピクセルキャパシタンスCSIGは、静的部分と動的部分とから構成されるので、オフセット補償が必要となる。静的部分はセンサ構造の関数である。動的部分は、指がピクセルに近づいたときのCSIGの変化の関数であり、すなわち関心のある信号である。オフセット補償器の目的は、静的成分を除去又は最小にし、それによりシステムのダイナミックレンジを拡大することである。
【0048】
上述のように、オフセット補償回路は、プログラム可能オフセットDAC405及びミクサ402の2つの部分から構成される。オフセットDAC405は、デジタル静的オフセット値VOFF_REGからのプログラム可能オフセット電圧を発生する。このデジタル値は、DACにより静的アナログ電圧(又は電流、電流領域で動作している場合)に変換された後、復調波形の絶対値(ブロック404bで求められたもの)により設定される電圧(又は電流)と(ミクサ403bにより)組み合わされる。結果として得られるものは、復調波形を整流した波形であり、その振幅は、VOFF_REGの静的値及びDMODルックアップテーブル404から現在取り出された復調波形の絶対部分により設定される。これにより、復調波形の所与の部分に対するオフセット補償を適正な量にすることができるようになる。従って、オフセット補償波形は、復調波形を効果的に追従する。
【0049】
電荷増幅器フィードバックキャパシタと同様に、製造公差などによる個々のピクセルキャパシタンスのばらつきを考慮するようオフセット補償回路を調整することは有用である。調整は、電荷増幅器フィードバックキャパシタに関して上述されたものと実質的に類似したものとすることができる。具体的には、VOFF_REGに格納されたオフセット電圧値は、次式で計算することができる。
VOFF_REG[Y]=VOFF_UNIV+ VOFF[Y]
上式で、Yは、ある横列内の個々の縦列、VOFF_UNIVは、横列毎に設定されたオフセット電圧、及びVOFF[Y]は、ルックアップテーブルである。この場合も同様に、調整は、真のピクセル毎に実施することができ、又は、VOFF_UNIVは特定の実施に応じて単一の一定値とすることができる。また、横列及び縦列に関して検討したが、調整配置は、非直交座標系に同様に適用可能である。
【0050】
図10に関する上述の配置に対する代替として、復調の前にオフセット補償を行うことができる。この場合、オフセット補償波形の形状は、復調器から出てくる波形ではなく、前置増幅器から出てくる波形に一致する必要があり、すなわち、パネルでの減衰を無視した場合、駆動波形の形状が保たれるように方形波でなければならない。また、オフセット補償が最初に実施される場合、オフセット波形は、基準電圧に対するAC波形であり、すなわち最大値はVREFに関して正であり、最小値はVREFに関して負である。オフセット波形の振幅は、オフセット補償の量に等しい。反対に、最初に復調が実施される場合、オフセット波形は、DC波形であり、すなわちVrefに関して正か、又は負(復調波形はまた、Vrefに関してDCであるので)である。同様に、この場合の振幅は、復調波形のあらゆる部分についてオフセット補償の量に等しい。本質的に、オフセット補償回路は、波形の形状に応じて必要なオフセット補償の量を相関付ける必要がある。
【0051】
次に、プログラム可能ゲインADC406により復調オフセット補償信号が処理される。1つの実施形態において、ADC406は、シグマデルタとすることができるが、同様のタイプのADC(次に続くカウンタ段を備えた電圧周波数コンバータなど)を用いてもよい。ADCは、(1)ミクサ構成から出てくるオフセット補償波形をデジタル値に変換すること、及び(2)低域通過フィルタ機能を実施する、すなわちミクサ構成から出てくる整流信号を平均化することの2つの機能を実施する。オフセット補償復調信号は、整流ガウス形正弦波に類似しており、その振幅はCFB及びCSIGの関数である。ホストコンピュータに戻されるADC結果は、実際には当該信号の平均である。
【0052】
シグマデルタADCを用いる1つの利点は、こうしたADCがデジタル領域で平均化を行うのに一層効率的なことである。加えて、デジタルゲートは、アナログ低域通過フィルタ及びサンプルホールド要素よりも遙かに小さく、よってASIC全体のサイズが低減される。更に当業者であれば、特に消費電力及びクロック速度に関して他の利点を理解するであろう。
【0053】
或いは、コントローラASICから分離されたADCを使用してもよい。これには、複数のチャネル間でADCを共有するためのマルチプレクサと、復調波形の平均を平均化し保持するための各チャネルについてのサンプルホールド回路とが必要となる。これは、多数のピクセルを有するタッチ表面で使用するよう意図されたコントローラでは実施可能ではないほど多くのダイ領域を費やす可能性がある。更に、許容可能なオペレーションを行うためには、多数のピクセルを極めて迅速に処理し、ユーザの入力に応答して適時且つスムーズな結果を提供しなければならないので、外部ADCは極めて高速に動作することが必要となる。
【0054】
上述のように、センサは、3つの異なる周波数で駆動されて3つのキャパシタンスイメージがもたらされ、これは、以下で説明されるノイズ除去に用いられる。3つの周波数は、1つの特定の周波数の通過帯域が他の周波数の通過帯域と重ならないように選択される。上述のように、好ましい実施形態では、140kHz、200kHz、及び240kHzの周波数を使用する。復調波形は、側波帯が抑制されるように選択される。
【0055】
上述のように、図11Aに側波帯周波数スペクトルと共に示すガウス包絡線正弦波形は、1つの好ましい復調波形である。ガウス形正弦波形は、最小の阻止帯域リップルを備えた明確に定義された通過帯域を提供する。或いは、最小の阻止帯域リップルを備えた明確に定義された通過帯域を有する他の波形を用いてもよい。例えば、図11Bに阻止帯域周波数スペクトルと共に示すランプ包絡正弦波はまた、明確に定義された通過帯域を有するが、阻止帯域リップは、ガウス包絡線正弦波におけるよりも僅かに大きい。当業者には理解できるように、他の波形を用いてもよい。
【0056】
ここで図12を参照すると、システムのノイズ抑制特性を説明する9つの波形が図示されている。電圧波形501は、センサに印加される刺激波形を実際に示す方形波である。波形504は、復調波形として用いられるガウス包絡線正弦波である。波形507は、復調器の出力、すなわち波形501と504の積である。これは、印加方形波電圧の基本周波数における明確に定義されたパルスを提供する点に留意されたい。
【0057】
中央の列は例示的なノイズ波形502を示している。復調波形505は、復調波形504と同じである。復調ノイズ信号508は、あまり大きなスパイクは発生せず、これは、ノイズ信号の基本周波数が復調信号の通過帯域であるためである点に留意されたい。
【0058】
励起波形とノイズ信号の合成が503に示されている。同様に、復調波形506は、復調波形505及び504と同様である。復調合成は、依然としてノイズ波形を示しているが、種々の信号処理アルゴリズムを適用してこの比較的孤立したスパイクを抽出することができる。
【0059】
加えて、ノイズ除去は、種々の周波数の複数の刺激電圧を提供し、その結果に多数決原理を適用することによって達成することができる。多数決原理アルゴリズムにおいて、各キャパシタンスノード毎に最良の振幅整合をもたらす2つの周波数チャネルが平均化され、残りのチャネルは破棄される。例えば、図13において、垂直ライン600は測定キャパシタンスを表し、マーキング601、602、及び603は、3つの刺激周波数で測定された3つの値を表している。値602及び603は最良整合を提供し、値601は誤りである可能性があることを示唆している。従って、値601は破棄され、値602及び603は平均化されて出力を形成する。
【0060】
或いは、メジアンフィルタを適用してもよく、この場合には、値602すなわち中央値が出力として選択されることになる。更に別の代替形態として、3つの結果を単に平均化してもよく、この場合、およそ値601から602位の値が生じることになる。複数のサンプル値に対する様々な他のノイズ除去技術が当業者には明らかであり、そのいずれもが本明細書で説明されるコントローラで好適に用いることができる。
【0061】
コントローラのオペレーションを示すフローチャートである図14に関して、回路の動作を更に理解することができる。明確にするために、種々のタイミング及び記憶装置の問題はこのフローチャートから除外される点は、当業者であれば理解されるであろう。
【0062】
ブロック701でイメージ取得が開始される。次いで、システムは、図9に関して上記で説明されたような中間クロック周波数(例えば200kHz)でサンプルを取得するようにクロックを設定する(ブロック702)。次に、こうしたパラメータを電圧オフセット、振幅ゲイン、遅延クロック、その他として制御する種々のプログラム可能レジスタが更新される(ブロック703)。全縦列が読み出され、結果が中間ベクトルとして格納される(ブロック704)。次に、高クロック周波数が設定され(ブロック705)、レジスタを更新するステップ(ブロック706)及び全縦列を読み出し結果を格納するステップ(ステップ707)が高サンプル周波数について繰り返される。次いで、クロックが低周波数に設定され(ステップ708)、レジスタ更新(ブロック709)及び縦列読み出し(ブロック710)が低サンプル周波数について繰り返される。
【0063】
次に、上記のアルゴリズムに従って、3つのベクトルがオフセット補償される(ブロック711)。次いで、オフセット補償されたベクトルは、上述のメジアンフィルタを受ける。或いは、図13に関して説明された多数決原理アルゴリズム又は何らかの他の好適なフィルタ処理技術によりフィルタ処理することができる。いずれの場合においても結果は格納される。横列が更に残っている場合、プロセスは、ブロック702の中間周波数サンプリングに戻る。全横列が完了する(ブロック713)と、全体のイメージがホストデバイスに出力され(ブロック714)、続いて、新しいイメージが取得される(ブロック701)。
【0064】
幾つかの好ましい実施形態について本発明を説明してきたが、本発明の範囲内にある改変形態、置換形態、及び均等物が存在する。例えば、用語「コンピュータ」は、何らかの特定の種類のデバイス、ハードウェア及び/又はソフトウェアの組み合わせを意味するものではなく、更に汎用又は専用のデバイスに限定されたものとみなすべきでもない。加えて、本明細書の実施形態は、タッチスクリーンに関連して説明してきたが、本発明の教示は、タッチパッド又は何らかの他のタッチ表面タイプのセンサに等しく適用可能である。更に、本開示は主に容量性感知に関するものであるが、本明細書で記載された特徴の一部又は全ては他の感知手法にも適用できる点を理解されたい。また、本発明の方法及び本発明の装置を実施する多数の代替手法が存在することも理解されたい。従って、添付の請求項は、本発明の真の思想及び範囲に含まれるこうした改変、置換、及び均等物全てを含むものとして解釈することが意図されている。
【符号の説明】
【0065】
30 タッチスクリーン構成
34 ディスプレイ
36 タッチスクリーン
38 タッチ感知表面
50 コンピュータシステム
56 プロセッサ
58 ストレージブロック
60 ROM
62 RAM
64 ハードディスクドライブ
66 I/Oコントローラ
68 ディスプレイデバイス
70 タッチスクリーン
76 タッチスクリーンコントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチセンサパネルの1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルにおけるキャパシタンスの変化を検出する電荷増幅器であって、
前記1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルに接続された反転入力端子、非反転入力端子、及び出力端子を有する演算増幅器と、
前記出力端子と前記反転入力端子との間に接続され、ある範囲の値をもつようにプログラム可能なフィードバックキャパシタと、
前記出力端子と前記反転入力端子との間に接続され、ある範囲の値をもつようにプログラム可能なフィードバック抵抗と、
を備える電荷増幅器。
【請求項2】
前記反転入力端子と前記1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルとの間に接続された抵抗を更に備え、該抵抗が、前記フィードバック抵抗及び前記フィードバックキャパシタと組み合わせてアンチエイリアシングフィルタを形成する請求項1に記載の電荷増幅器。
【請求項3】
前記電荷増幅器の非反転入力端子が接地されている請求項1に記載の電荷増幅器。
【請求項4】
前記フィードバックキャパシタの値が前記電荷増幅器のダイナミックレンジを最大にするように選択されている請求項1に記載の電荷増幅器。
【請求項5】
前記フィードバックキャパシタが各ピクセルについて異なる値をもつように構成されている請求項1に記載の電荷増幅器。
【請求項6】
前記フィードバックキャパシタの値を設定する抵抗を更に備える請求項1に記載の電荷増幅器。
【請求項7】
前記抵抗が、前記フィードバックキャパシタの値を各タッチピクセルについてもつように構成された値のルックアップテーブルから成る請求項6に記載の電荷増幅器。
【請求項8】
タッチセンサパネルの1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルにおけるキャパシタンスの変化を検出する方法であって、
寄生抵抗及びキャパシタンスの作用を除去しながら前記1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルにおけるキャパシタンスの変化を検出するためにタッチピクセル感知ラインの仮想接地電荷増幅を行う段階と、
前記仮想接地電荷増幅のダイナミックレンジをプログラム可能に最適化する段階と、
を含む方法。
【請求項9】
前記仮想接地電荷増幅について利得補償をプログラム可能に行う段階を更に含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
製造公差を考慮するように各ピクセルについて前記仮想接地電荷増幅のダイナミックレンジを最適化する段階を更に含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
複数のタッチピクセルと、
前記複数のタッチピクセルに接続されていて、該複数のタッチピクセルの各ピクセルにおけるタッチによるキャパシタンスの変化を検出する1つ若しくはそれ以上の電荷増幅器と、を備え、
前記1つ若しくはそれ以上の電荷増幅器がタッチセンサパネルにおける変化を考慮するように各ピクセルについて構成可能である、
タッチセンサパネル。
【請求項12】
各電荷増幅器が、該電荷増幅器のダイナミックレンジを最大にするように構成可能なフィードバックキャパシタを備える請求項11に記載のタッチセンサパネル。
【請求項13】
前記フィードバックキャパシタが各ピクセルについて異なる値をもつように構成されている請求項12に記載のタッチセンサパネル。
【請求項14】
前記フィードバックキャパシタの値を設定する抵抗を更に備える請求項13に記載のタッチセンサパネル。
【請求項15】
前記抵抗が、前記フィードバックキャパシタの値を各タッチピクセルについてもつように構成された値のルックアップテーブルから成る請求項14に記載のタッチセンサパネル。
【請求項16】
各電荷増幅器が、利得補償を行うようにプログラム可能なフィードバック抵抗を備える請求項11に記載のタッチセンサパネル。
【請求項17】
複数のタッチピクセルを有するタッチセンサパネルを補償する方法であって、
前記タッチセンサパネルの複数のタッチピクセルに1つ若しくはそれ以上の電荷増幅器を接続して、前記複数のタッチピクセルの各ピクセルにおけるタッチによるキャパシタンスの変化を検出する段階と、
前記タッチセンサパネルにおける変化を補償するように前記1つ若しくはそれ以上の電荷増幅器を各ピクセルについて構成する段階と、
を含む方法。
【請求項18】
各電荷増幅器のダイナミックレンジを最大にするように各電荷増幅器にフィードバックキャパシタを構成する段階を更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フィードバックキャパシタの値を各タッチピクセルについてもつように構成された値のルックアップテーブルを使用する段階を更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
利得補償を行うために各電荷増幅器においてフィードバック抵抗をプログラムする段階を更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項21】
タッチセンサパネルを有するコンピュータデバイスであって、前記タッチセンサパネルが、
複数のタッチピクセルと、
前記複数のタッチピクセルに接続されていて、該複数のタッチピクセルの各ピクセルにおけるタッチによるキャパシタンスの変化を検出する1つ若しくはそれ以上の電荷増幅器と、を備え、
前記1つ若しくはそれ以上の電荷増幅器がタッチセンサパネルにおける変化を考慮するように各ピクセルについて構成可能である、
コンピュータデバイス。
【請求項22】
タッチセンサパネルの1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルにおけるキャパシタンスの変化を検出する装置であって、
寄生抵抗及びキャパシタンスの作用を除去しながら前記1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルにおけるキャパシタンスの変化を検出するためにタッチピクセル感知ラインの仮想接地電荷増幅を行う手段と、
前記仮想接地電荷増幅のダイナミックレンジをプログラム可能に最適化する手段と、
を備える装置。
【請求項23】
前記仮想接地電荷増幅について利得補償をプログラム可能に行う手段を更に備える請求項22に記載の装置。
【請求項24】
製造公差を考慮するように各ピクセルについて前記仮想接地電荷増幅のダイナミックレンジを最適化する手段を更に備える請求項22に記載の装置。
【請求項1】
タッチセンサパネルの1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルにおけるキャパシタンスの変化を検出する電荷増幅器であって、
前記1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルに接続された反転入力端子、非反転入力端子、及び出力端子を有する演算増幅器と、
前記出力端子と前記反転入力端子との間に接続され、ある範囲の値をもつようにプログラム可能なフィードバックキャパシタと、
前記出力端子と前記反転入力端子との間に接続され、ある範囲の値をもつようにプログラム可能なフィードバック抵抗と、
を備える電荷増幅器。
【請求項2】
前記反転入力端子と前記1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルとの間に接続された抵抗を更に備え、該抵抗が、前記フィードバック抵抗及び前記フィードバックキャパシタと組み合わせてアンチエイリアシングフィルタを形成する請求項1に記載の電荷増幅器。
【請求項3】
前記電荷増幅器の非反転入力端子が接地されている請求項1に記載の電荷増幅器。
【請求項4】
前記フィードバックキャパシタの値が前記電荷増幅器のダイナミックレンジを最大にするように選択されている請求項1に記載の電荷増幅器。
【請求項5】
前記フィードバックキャパシタが各ピクセルについて異なる値をもつように構成されている請求項1に記載の電荷増幅器。
【請求項6】
前記フィードバックキャパシタの値を設定する抵抗を更に備える請求項1に記載の電荷増幅器。
【請求項7】
前記抵抗が、前記フィードバックキャパシタの値を各タッチピクセルについてもつように構成された値のルックアップテーブルから成る請求項6に記載の電荷増幅器。
【請求項8】
タッチセンサパネルの1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルにおけるキャパシタンスの変化を検出する方法であって、
寄生抵抗及びキャパシタンスの作用を除去しながら前記1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルにおけるキャパシタンスの変化を検出するためにタッチピクセル感知ラインの仮想接地電荷増幅を行う段階と、
前記仮想接地電荷増幅のダイナミックレンジをプログラム可能に最適化する段階と、
を含む方法。
【請求項9】
前記仮想接地電荷増幅について利得補償をプログラム可能に行う段階を更に含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
製造公差を考慮するように各ピクセルについて前記仮想接地電荷増幅のダイナミックレンジを最適化する段階を更に含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
複数のタッチピクセルと、
前記複数のタッチピクセルに接続されていて、該複数のタッチピクセルの各ピクセルにおけるタッチによるキャパシタンスの変化を検出する1つ若しくはそれ以上の電荷増幅器と、を備え、
前記1つ若しくはそれ以上の電荷増幅器がタッチセンサパネルにおける変化を考慮するように各ピクセルについて構成可能である、
タッチセンサパネル。
【請求項12】
各電荷増幅器が、該電荷増幅器のダイナミックレンジを最大にするように構成可能なフィードバックキャパシタを備える請求項11に記載のタッチセンサパネル。
【請求項13】
前記フィードバックキャパシタが各ピクセルについて異なる値をもつように構成されている請求項12に記載のタッチセンサパネル。
【請求項14】
前記フィードバックキャパシタの値を設定する抵抗を更に備える請求項13に記載のタッチセンサパネル。
【請求項15】
前記抵抗が、前記フィードバックキャパシタの値を各タッチピクセルについてもつように構成された値のルックアップテーブルから成る請求項14に記載のタッチセンサパネル。
【請求項16】
各電荷増幅器が、利得補償を行うようにプログラム可能なフィードバック抵抗を備える請求項11に記載のタッチセンサパネル。
【請求項17】
複数のタッチピクセルを有するタッチセンサパネルを補償する方法であって、
前記タッチセンサパネルの複数のタッチピクセルに1つ若しくはそれ以上の電荷増幅器を接続して、前記複数のタッチピクセルの各ピクセルにおけるタッチによるキャパシタンスの変化を検出する段階と、
前記タッチセンサパネルにおける変化を補償するように前記1つ若しくはそれ以上の電荷増幅器を各ピクセルについて構成する段階と、
を含む方法。
【請求項18】
各電荷増幅器のダイナミックレンジを最大にするように各電荷増幅器にフィードバックキャパシタを構成する段階を更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フィードバックキャパシタの値を各タッチピクセルについてもつように構成された値のルックアップテーブルを使用する段階を更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
利得補償を行うために各電荷増幅器においてフィードバック抵抗をプログラムする段階を更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項21】
タッチセンサパネルを有するコンピュータデバイスであって、前記タッチセンサパネルが、
複数のタッチピクセルと、
前記複数のタッチピクセルに接続されていて、該複数のタッチピクセルの各ピクセルにおけるタッチによるキャパシタンスの変化を検出する1つ若しくはそれ以上の電荷増幅器と、を備え、
前記1つ若しくはそれ以上の電荷増幅器がタッチセンサパネルにおける変化を考慮するように各ピクセルについて構成可能である、
コンピュータデバイス。
【請求項22】
タッチセンサパネルの1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルにおけるキャパシタンスの変化を検出する装置であって、
寄生抵抗及びキャパシタンスの作用を除去しながら前記1つ若しくはそれ以上のタッチピクセルにおけるキャパシタンスの変化を検出するためにタッチピクセル感知ラインの仮想接地電荷増幅を行う手段と、
前記仮想接地電荷増幅のダイナミックレンジをプログラム可能に最適化する手段と、
を備える装置。
【請求項23】
前記仮想接地電荷増幅について利得補償をプログラム可能に行う手段を更に備える請求項22に記載の装置。
【請求項24】
製造公差を考慮するように各ピクセルについて前記仮想接地電荷増幅のダイナミックレンジを最適化する手段を更に備える請求項22に記載の装置。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−154734(P2011−154734A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111590(P2011−111590)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【分割の表示】特願2009−509911(P2009−509911)の分割
【原出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(503260918)アップル インコーポレイテッド (568)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【分割の表示】特願2009−509911(P2009−509911)の分割
【原出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(503260918)アップル インコーポレイテッド (568)
【Fターム(参考)】
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