説明

マルチモード撮像のシステム及び方法

【課題】 1以上の試料のマルチモード撮像システム及び方法を提供する。
【解決手段】 本システムは、1以上の光源と、撮像システムの動作モードに応じて選択される光学系と、画素の選択的読取りが可能な検出器とを備える。段階的試料移動及び連続的試料移動からなる群から選択される試料移動法を用いて光学系に対して1以上の試料を移動させる。方法は、(1)撮像システムの動作モードを選択する段階、(2)1以上の光源から、撮像システムの動作モードに応じて選択される光学系を通して光を伝送する段階、(3)段階的試料移動及び連続的試料移動からなる群から選択される試料移動法を用いて1以上の試料を光学系に対して移動させる段階、及び(4)検出器で画素を選択的に読み取る段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広義には撮像システムに関し、具体的にはマルチモード撮像システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数多くの光学撮像システム設計が開発されており、それぞれ独自の撮像技術が用いられている。顕微鏡観察に関しては、あるシステムには広視野撮像技術が用いられており、別のシステムには共焦点撮像法が用いられている。
【0003】
広視野撮像では、試料を照明して実質的に視野全体の像を検出する。広視野撮像は数多くの用途に使用されている。蛍光顕微鏡法は、広視野撮像が利用されてきた用途の一例である。
【0004】
共焦点撮像は、撮像システムの視野の所定の部分だけを撮像する特殊な照明及び検出構成を利用する。従来の撮像光学機器に加えて、共焦点撮像は、視野を有する検出器と、視野のサブセットを画成する絞りと、視野と光学的に共役な試料領域を照明する照明系とを備える。共焦点撮像は、焦点外れの光を阻止し、オプティカルセクショニング(optical sectioning)を可能にすることによって、広視野撮像よりも優れた軸方向解像度を得ることができる。蛍光顕微鏡法に関して、共焦点撮像は、撮像領域のサブセットの外又は支持媒体からの背景蛍光を阻止することによって、信号対雑音比を向上させる。
【特許文献1】米国特許第4826299号明細書
【特許文献2】米国特許第6388788号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、1以上の試料のマルチモード撮像システム及び方法について開示する。本発明の一実施形態では、本システムは、1以上の光源と、撮像システムの動作モードに応じて選択される光学系と、画素の選択的読取りが可能な検出器とを備える。段階的試料移動及び連続的試料移動からなる群から選択される試料移動法を用いて光学系に対して1以上の試料を移動させる。
【0006】
本発明の別の実施形態では、1以上の試料のマルチモード撮像方法について開示する。本方法は、(1)撮像システムの動作モードを選択する段階、(2)1以上の光源から、撮像システムの動作モードに応じて選択される光学系を通して光を伝送する段階、(3)段階的試料移動及び連続的試料移動からなる群から選択される試料移動法を用いて1以上の試料を光学系に対して移動させる段階、及び(4)検出器で画素を選択的に読取る段階を含む。
【0007】
上記動作モードは、広視野モード、固定線共焦点モード、走査線共焦点モード、点共焦点モード又は透過モードとし得る。
【0008】
光学系としては、撮像システムの動作モードに応じて選択されるビーム整形素子、光を試料上に偏向させるビーム偏向素子、及び光を平行化するビームコリメータが挙げられる。ビーム整形素子としては、パウエルレンズ、円柱レンズ、回折光子、ホログラフィック素子、集光ミラー、従来の球面レンズ、従来の非球面レンズ及びこれらの組合せが挙げられる。ビームコリメータは、レンズ型コリメータでも、ミラー型コリメータでもよい。ビーム偏向素子としては、走査ミラーと1以上のアクチュエータとを備えるものがある。システムは、1以上の光学フィルタをさらに含んでいてもよい。
【0009】
本発明の技術的利点は、マルチモード撮像システム及び方法が開示されることである。本発明の別の技術的利点は、システムを、広視野モード、固定線共焦点モード、走査線共焦点モード、点共焦点モード又は透過モードで動作させることができることである。本発明のもう一つの技術的利点は、試料の移動に階的試料移動及び連続的試料移動を使用できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明についての十分な理解を図るべく、以下、添付の図面を参照して説明する。
【0011】
本発明のシステム及び方法は、広視野、真(点)共焦点及び線共焦点顕微鏡での使用に適している。かかるデバイスの例は、「Method and Apparatus for Fluorescent Confocal Microscopy」と題する米国特許出願第11/184444号、「Autofocus Method And System For An Automated Microscope」と題する米国特許出願第11/320676号及び「System And Method For Fiber Optic Bundle−Based Illumination For Imaging System」と題する米国特許出願第11/320675号に開示されており、それらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0012】
本発明の好ましい実施形態及びそれらの効果は図1〜図10を参照すれば明らかであろう。これらの図面において、同様の要素には同様の符号を付した。
【0013】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るマルチモード撮像システムの概略図が示されており、蛍光(蛍光染色又は蛍光標識された)ターゲット150を励起させるための1以上の光源1101〜110nと、蛍光放射を検出するための1以上の検出器190とを含む。システム100は、共焦点及び広視野蛍光顕微鏡で通常みられるような他の部品を含んでいてもよい。以下、上記その他の部品について詳細に説明する。幾つかの部品については、複数の実施形態が可能である。
【0014】
単なる例示として、励起光を破線101で示し、反射光を破線102で示す。
【0015】
光源1101〜110nは、励起波長の光をターゲットに送達することができる光源であればどんなものでもよい。好適な光源の例としては、レーザ、レーザダイオード、発光ダイオード、ランプが挙げられる。その他の光源も適宜使用できる。
【0016】
一実施形態では、近赤外乃至近紫外域の光スペクトルをカバーする2以上のレーザが光源1101〜1104として設けられる。実用的な任意の数のレーザを使用することができ、設けられる光源の数は、異なる励起光波長が必要とされる試料中に存在する蛍光色素の数に依存する。
【0017】
米国特許出願第11/184444号に開示されているように、光源からの光は、適当な空間及び時間パラメータ(直径、方向及び平行度など)の自由空間ビームとして光を送達することによって或いは米国特許出願第11/320675号に開示されているような光ファイバ光送達システムによってシステムの残りの部分と結合される。自由空間の実施形態(図示せず)では、レーザ選択モジュールを用いて、自由空間を通して伝送すべきレーザを選択する。図1に示す光ファイバ光送達の実施形態では、光源1101〜1104からの光は光ファイバ束120を通して又は光ファイバビームコンバイナによって送達される。
【0018】
一実施形態では、光源115は試料150の背後に配置してもよい。これによって、システム100を透過モードで動作させることができる。光源は、レーザ、レーザダイオード、発光ダイオード、ランプ及びこれらの組合せを始めとする、任意の適当な光源でよい。適宜、その他の光源も使用し得る。
【0019】
光ファイバ束120又は自由空間を出る光は、ビームコリメータ125に送られる。ビームコリメータ125は、レンズ型コリメータであっても、ミラー型コリメータであってもよい。ビームコリメータ125は発散ビームを平行ビームへと変換する。或いは、ビームコリメータ125はビームエキスパンダとしても使用できる。
【0020】
励起光はビーム整形素子130に通してもよい。ビーム整形素子130によって、システム100を線共焦点モード、点共焦点モード又は広視野モードで動作できるようになる。ビーム整形素子130が、ビームコリメータ/エクスパンダ機能を果たすこともある。
【0021】
一実施形態では、システム100を線共焦点モードで動作させる場合、ビーム整形素子130は、レーザ光の平行ビームを一方向だけに発散する集束ビームへと変換してもよい。出力ビームの全発散角Dqは、以下の式で計算できる。
【0022】
Dq=2×arctan(D/2×f))
式中、fは顕微鏡対物レンズ145の焦点距離であり、Dはターゲット150上の撮像領域の線の軸方向の直線距離である。一実施形態では、米国特許第4826299号(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。)に開示されているようなパウエルレンズを使用できる。別の実施形態では、円柱レンズを使用してもよい。
ルレンズを使用できる。別の実施形態では、円柱レンズを使用してもよい。
【0023】
その他の好適なビーム整形素子130としては、集光ミラー、回折格子及びホログラフィック素子が挙げられる。
【0024】
別の実施形態では、システム100を広視野モードで動作させる場合、ビーム整形素子130は、従来の球面又は非球面レンズとすることができる。別の実施形態では、ビーム整形素子130は集光ミラーであってもよい。必要なビーム整形素子130は、対応動作モードの選択後に、所定の位置に自動的に移動させればよい。
【0025】
光は、ビーム整形素子130の後、走査ミラーのようなビーム偏向素子140へと送られる。ビーム偏向素子140は、試料150上での照明領域(線、点又は広視野など)の位置調整に使用される。
【0026】
一実施形態では、ビーム偏向素子140は、顕微鏡対物レンズ145の後方に中心をもつ又は軸方向にオフセットした細いミラーを含んでいてもよい。この実施形態は、以下の幾何形状及び反射特性を有する。
幅:対物レンズの後方開口の直径の約1/10倍、
長さ:対物レンズの後方開口の直径の約1.6倍、
光学的に平坦、
300nm〜800nmで反射率が高い。
【0027】
このようなミラーの特性は、幾つかの重要な効果をもたらす。第1に、すべての励起波長に対して単一のミラーを使用できる。マルチバンドダイクロイックミラーに比べると、これによってシステムを広範な光源に適合させる際の柔軟性が大幅に高まる。
【0028】
第2に、対物レンズの後方開口をその最も広い点で使用する。これによって、達成可能な回折レベルが最低となり、ひいては試料上でのレーザ照明の線幅が最も狭くなる。
【0029】
第3に、達成できる視野が、単純な単一傾斜鏡法を用いたときと同じくらい大きい。2枚のミラー又は2つの回転軸を有する1枚のミラーを用いることによって、ビームの方向を変更すると同時に、ビームを並進させることができる。
【0030】
ビーム偏向素子140は、ダイクロイックミラーであってもよい。ダイクロイックミラーの設計は、すべての励起レーザからの放射光を効率的に反射し、蛍光発光に相当する波長域の光が効率的に透過されるようにする。好適なダイクロイックミラーの一例は、Rugate技術に基づくマルチバンドミラーである。
【0031】
一実施形態では、ビーム偏向素子140は、動作モードに応じて選択される。例えば、システム100を真(点)共焦点モードで動作させる場合、ビーム偏向素子140は、二方向に走査できるダイクロイックミラーとすることができる。別の実施形態では、システム100を広視野モード又は線共焦点モードで動作させる場合、ビーム偏向素子は、固定式又は一方向に走査できる狭いミラーとすることができる。必要なビーム偏向素子140は、対応動作モードの選択後に、所定の位置に自動又は手動で移動させればよい。
【0032】
ビーム偏向素子140はアクチュエータ135によって一方向又は二方向に走査される。一実施形態では、アクチュエータ135は、角度位置検出用の内蔵センサを備えたガルバノメータとすることができる。ガルバノメータは、適切に同調されたサーボシステムで駆動される。軸受系は、軸受内の摩耗及び摩擦の問題を効果的になくすためフレクシャ式のものである。ガルバノメータの一例は、Nutfield Technology社(米国ニューハンプシャー州ウィンダム、レンジロード49)から入手可能なCross Flexure Pivot Suspension Moving Magnet Galvanometerである。
【0033】
一実施形態では、システム100を線共焦点モードで動作させる場合、アクチュエータ135は、光ファイバ束120からの光が試料150を横断するように、ビーム偏向素子140を動かす。
【0034】
別の実施形態では、システム100を真(点)共焦点モードで動作させる場合、アクチュエータ135は、光120が試料150を横断するように、ビーム偏向素子140を二方向に動かす。
【0035】
別の実施形態では、システム100を広視野モードで動作させる場合、アクチュエータ135は、ビーム偏向素子140を試料150に対して固定させる。例えば照明軸に対して45度の角度などに固定できる。さらに別の実施形態では、システム100を広視野モードで動作させる場合、アクチュエータ135は、検出器190で光を取得する周波数よりも高い周波数でビーム偏向素子140を試料150に対して動かすようにしてもよい。かかる運動は、試料150上に一段と均一な光照射野をもたらす。
【0036】
検出器190は、試料150から蛍光を検出するために設けられる。一実施形態では、検出器190としては、蛍光を検出し、像を生成できるCMOS及びCCD検出器がある。検出器190は独立に画素のリセット及び読取りが可能なもの(ランダムアクセス機能)でもよい。
【0037】
一実施形態では、米国特許出願第11/184444号に記載されているように、複数の検出器を設けてもよい。
【0038】
反射光を透過させ、他の波長の光を減衰させるため、光学フィルタ180を設けてもよい。一実施形態では、光学フィルタ180は、リニア可変フィルタ(Schott社のVerilフィルタなど)とすることができる。別の実施形態では、通常の色素特異的な蛍光フィルタを使用してもよい。さらに別の実施形態では、マルチスペクトル画像を与えるためバンドパスフィルタを使用してもよい。別の実施形態では、フィルタを使用しなくてもよい。
【0039】
一実施形態では、検出器190の前に追加の絞り187を設けてもよい。一実施形態では、追加の絞り187は、システム100を線共焦点モードで動作させるときに用いられる。追加の絞り187は、鋼、アルミニウム、セラミックなどの不透明材料の物理的スリットであればよい。
【0040】
かかる実施形態では、物理的スリットの幅は、検出器190での画素の画素幅よりも狭くすることができる。これによって、システム100の共焦点性の程度が増す。一実施形態では、追加の絞り187における物理的スリットの幅は調節可能としてもよい。これによって、画素幅以外の幅を与えるように物理的スリットの幅を調節できる。例えば、物理的スリットの幅を画素幅の1.5倍とすることができる。
【0041】
追加の絞り187の挿入及び除去は自動的でも、手動でもよい。同様に、物理的スリットの幅の調節は自動的でも、手動でもよい。
【0042】
一実施形態では、検出器190の物理的制約のために追加の絞り187を検出器190の画素の上方に直接配置できない場合、検出器190上に物理的スリットを再結像するため、追加の絞り187と検出器190の間に追加の光学系(図示せず)を配置してもよい。例えば、追加の光学系はリレーレンズとすることができる。
【0043】
顕微鏡対物レンズ145、試料支持体155、光学フィルタ165、光学フィルタ165用のアクチュエータ170、結像レンズ175及び光学フィルタ180用のアクチュエータ185を始めとする、システム100の残りについては、米国特許出願第11/184444号に十分に記載されている。
【0044】
なお、本発明のシステム及び方法を図1のシステムに関して説明するが、本発明はかかるシステムに限定されない。同様に、本発明のシステム及び方法を蛍光システムに関して説明するが、本発明のシステム及び方法は非蛍光システムにも使用できる。
【0045】
上述の通り、本発明のシステムは、広視野、真(点)共焦点及び線共焦点モードで動作させることができる。線共焦点モードには、固定線共焦点モードと走査線共焦点モードとがある。固定線共焦点モードでは、ビーム偏向素子140は固定され、試料150上の線照明の位置が固定される。走査線共焦点モードでは、ビーム偏向素子140によって試料150上で線照明を走査する。
【0046】
試料を撮像するため、本発明のシステムでは、試料と照明系との相対位置を調節するのに様々な技術を用いることができる。以下、かかる技術について説明する。
【0047】
一実施形態では、試料と照明系との相対位置は、試料を移動させることによって調節できる。これは、試料が載置される試料支持体を移動させることによって達成できる。そのためのシステムの一例は、「Method and apparatus for screening chemical compounds」と題する米国特許第6388788号に開示されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0048】
別の実施形態では、試料と照明系との相対位置は、照明系を移動させることによって調節できる。例えば、照明系全体を移動させるか、或いは照明系の一部だけを移動させる。さらに別の実施形態では、試料と照明系との相対位置は、試料と照明系の移動の組合せによって調節できる。
【0049】
図2a〜dを参照すると、試料と照明系との相対位置は、「段階的試料移動」法を用いて調節できる。一般に、段階的試料移動では、像取得中の試料と照明系との相対位置は固定されたままである。システムを広視野モード及び線共焦点モードを始めとする幾つかのモードで動作させるときに段階的試料移動を使用することができる。
【0050】
段階的試料移動は、試料200の像の配列の検出に用いられる。この方法では、試料200の画像領域は、複数の小さな画像領域2501…250nに「分割」される。各画像領域250nを別途撮像してから、次の画像領域250n+1に移動して画像領域250n+1を撮像する。一実施形態では、画像領域2501…250nを行毎に撮像してもよい。別の実施形態では、画像領域2501…250nを列毎に撮像してもよい。さらに別の実施形態では、撮像は、関心事項の位置に基づくものでもよい。例えば、試料200が、スライド又はウェル全体にランダムに分布した細胞のような多数の小さな物体を有する場合、移動はランダムであってもよい。
【0051】
図2a〜2dは、段階的試料移動法の様々な実施法を示す。図2aでは、試料200は、本発明の一実施形態にしたがってタイプライタの移動と同様の相対移動を用いて行毎に撮像する(例えば、左から右に移動してキャリッジを戻し、左から右に移動)。図2bでは、試料200は行毎に良好方向に撮像する。図2cでは、試料200は列毎に一方向に撮像する。図2dでは、試料200は列毎に両方向に撮像する。所望に応じて、その他の移動方向及び方法を用いてもよい。
【0052】
各画像領域250nはその隣接画像領域と重複するように撮像してもよい。
【0053】
図3を参照すると、一実施形態では、システムは、広視野モードで動作させることができ、段階的試料移動法を用いることができる。この実施形態では、各画像領域2501〜250nについて広視野「スナップショット」を別々に撮像する。各「スナップショット」の最中は、試料200と照明系はいずれも相互に固定されたままである。試料200の撮像は上述の通り実施される。
【0054】
図4を参照すると、一実施形態では、システムは、走査線共焦点モードで動作させることができ、段階的試料移動法を用いることができる。この実施形態では、照明系は、各画像領域2501〜250n上の線260を別々に照明する。一実施形態では、撮像中、試料200と照明系はいずれも相互に固定されたである。この実施形態では、線照明260が試料200を横断して移動するように照明系の走査部分だけを移動させる。試料200の撮像は上述の通り実施される。
【0055】
図3及び図4では、段階的試料移動法の1種類のみしか示していないが、所望に応じて他の段階的試料移動法も使用できる。
【0056】
図5a及び5bは、本発明の別の実施形態に係る「連続的試料移動」法を示す。一般に、連続的試料移動法では、像取得時に、照明系の光学系を固定したまま、試料と照明系の相対位置を調節する。連続的試料移動は好ましくはシステムを固定線共焦点モードで動作させるときに用いられるが、システムを広視野モードのような他のモードで動作させるときにも使用できる。
【0057】
一実施形態では、連続的試料移動法及び固定線共焦点モードを用いるときには、追加の絞り187を使用してもよい。
【0058】
連続的試料移動法を固定線共焦点モードと組み合わせると、撮像システムの視野よりも大きな像を単一像として取得できる。したがって、連続的試料移動は、2種以上の試料を単一像として撮像するのに、つまりバッチ試料処理に使用することもできる。
【0059】
図5aに示すように、システムは、固定線共焦点モードで動作させることができ、試料200を照明系に対して一方向に移動させることによって試料200を一方向に撮像する。試料200をその初期位置に戻して、プロセスを繰り返す。別の実施形態では、図5bに示すように、試料を両方向に撮像してもよい。所望に応じて、その他の移動方向及び方法を用いてもよい。
【0060】
別法として、図5a又はbに示すように試料の相対位置をその初期位置に戻す際に、試料の他の線形区域をカバーするように線照明260を移動してもよい。この場合、試料をビーム下で両方向に移動させながら撮像する。
【0061】
別の実施形態では、システムは広視野モードで動作させることができ、連続的試料移動を用いることができる。この実施形態では、試料を照明系に対して移動させながら、試料に照明光をパルスで照射する。
【0062】
システムを固定線共焦点モードで動作したときの連続的試料移動法の例を図6に示す。この図では、標準的な顕微鏡スライド上に寸法15×15mmの試料を準備する。照明系から長さ0.7mmの線照明を照射する。倍率は40倍である。走査速度は100mm/秒である。検出器は高速CCD/CMOSカメラである。
【0063】
この実施形態では、試料の完全な画像を得るため試料を照明系に対して22回通過するように移動しなければならない。全走査長は330mmである。理想的な走査時間は330/100であり、標準的な顕微鏡スライド当たり3.3秒に等しい。試料支持体の加速、減速、線間での試料支持体のシフトに対する追加の遅延についての補正は、理想的な走査時間の300〜400%である。現実的な走査時間は15秒である。
【0064】
図7を参照すると、本発明に係る撮像システムは複数の試料7001、7002…700nで動作できる。線照明760を照射し、試料7001、7002…700nを線照明760に対して移動させる。図7の実施形態では、連続的試料移動法で一方向に走査する。図8の実施形態では、連続的試料移動法で両方向に走査する。図7及び図8に示す構成を用いて、任意の数の試験片を撮像できる。
【0065】
図8は、バッチスライド組織撮像に本発明の例示的な実施形態を適用した例を示す。各々15×15mmの大きさの試料800、805、810、820及び825をスライド(図示せず)上に準備する。線照明は0.7mmの長さを有し得る。この例では、バッチに50枚のスライドが存在する。用意するスライドの枚数はこれよりも多くても少なくてもよい。倍率は40倍であり、走査速度は200mm/秒である。検出器は高速CCD/CMOSカメラである。試料支持体の長さは1000mmである。
【0066】
図6の実施例と同様に、スライド当たりのパス数は22である。ただし、全走査長は22000mmである。理想的な走査時間は110秒/バッチである。試料支持体の加速、減速、線間での試料支持体のシフトに対する追加の遅延についての補正は、理想的な走査時間の50%である。これは、単一スライド走査に対するよりも小さい。補正バッチ走査時間は165秒である。平均走査時間はスライド当たり3秒である。
【0067】
スライド上の試料の位置合わせを支援するため、スライドの基板上に1以上のアライメントマークを設けてもよい。例えば、図9を参照すると、スライド900には試料910とカバーガラス920が設けられる。スライド900に複数のアライメントマーク930が設けられる。アライメントマーク930は、スライド900又はカバーガラス920の表面を擦過又はエッチングすることによって形成できる。図9ではアライメントマークとして十字を示したが、所要及び所望に応じて、その他の形状、タイプ、数及び位置のアライメントマークを使用できる。
【0068】
試料の位置合わせは様々な方式で実施できる。一実施形態では、位置合わせは、高解像度撮像の前に実施できる。別の実施形態では、位置合わせは、高解像度撮像と同時に実施できる。
【0069】
一実施形態では、励起光を試料910に向けてアライメントマーク930を照明する。次いで、光を部分的に吸収、散乱、反射させるか、或いは最も一般的には、異なる特性(長波長、強度変化など)で発光させればよい。放出光は、背景とは区別して検出でき、アライメントマークの像は検出器190(図1に示す)又は別個の検出器(図示せず)によって位置合わせすることができる。この像は、各蛍光チャネル毎に位置合わせされ、例えば、組織試料像から関心領域を選択できるような画像解析時に使用できる。
【0070】
図10に示すように、放出光の特徴に基づいて、撮像中に幾つかの位置合わせ法を用いることができる。例えば、一実施形態では、励起光をアライメントマークのエッジ(縁)上で散乱させ、像空間で特徴的な2重スパイクを生成させると、アライメントマークのエッジを検出できる。かかる実施形態を図10aに示す。別の実施形態では、図10bに示すマーク上での反射率変化によって「W形」信号を形成させることもできる。別の実施形態では、基板上にフレネルゾーンターゲットの形態でアライメントマークの輪郭を描かけば、ターゲット上での回折によって単一のスパイク信号が生成する。これを図10cに示す。さらに別の実施形態では、アライメントマークに発光団材料を導入するか、或いは例えば擦過又はエッチングされたマークの蛍光挙動によって、蛍光信号を発生する。かかる例を図10dに示す。
【0071】
一実施形態では、アライメントマーク並びにカバーガラスの縁から反射光を検出する。一実施形態では、アライメントマークを試料の像と共に記録する。アライメントマークの検出は、試料と照明系の相対移動の制御にも使用できる。
【0072】
本発明のその他の実施形態、使用法及び効果は、本明細書の記載内容並びに本明細書に開示された発明の実施によって、当業者には明らかとなろう。仕様及び具体例は、例示にすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態に係るマルチモード撮像システムのブロック図である。
【図2a−d】本発明の実施形態に係る段階的試料移動法の概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る広視野モードを用いた段階的試料移動法の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る線共焦点モードを用いた段階的試料移動法の概略図である。
【図5a−b】本発明の実施形態に係る連続的試料移動法の概略図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る線共焦点モードを用いた連続的試料移動法の概略図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る複数の試料で線共焦点モードを用いた連続的試料移動法の概略図である。
【図8】本発明の別の実施形態に係る複数の試料で線共焦点モードを用いた連続的試料移動法の概略図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る位置合わせに用いられるアライメントマークを有するスライドを示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係るアライメントマークを用いた位置合わせ法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の光源と、
撮像システムの動作モードに応じて選択される光学系と、
画素の選択的読取りが可能な検出器と
を備える1以上の試料のマルチモード撮像システムであって、
段階的試料移動及び連続的試料移動からなる群から選択される試料移動法を用いて1以上の試料を光学系に対して移動させる、システム。
【請求項2】
前記動作モードが広視野モードである、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記動作モードが固定線共焦点モード及び走査線共焦点モードからなる群から選択される、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記動作モードが点共焦点モードである、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記動作モードが透過モードである、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記光学系が、撮像システムの動作モードに応じて選択されるビーム整形素子と、光を1以上の試料上に偏向させるビーム偏向素子とを備える、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
1以上の試料を保持する試料支持体をさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記光学系が、光を平行化するビームコリメータをさらに含んでおり、ビームコリメータがレンズ型コリメータ及びミラー型コリメータからなる群から選択される、請求項6記載のシステム。
【請求項9】
前記ビーム整形素子が、パウエルレンズ、円柱レンズ、回折格子、ホログラフィック素子、集光ミラー及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項6記載のシステム。
【請求項10】
前記ビーム整形素子が、従来の球面レンズ、従来の非球面レンズ、集光ミラー及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項6記載のシステム。
【請求項11】
前記ビーム偏向素子が、走査ミラーと1以上のアクチュエータとを備える、請求項6記載のシステム。
【請求項12】
前記走査ミラーが、反射ミラー及びダイクロイックミラーからなる群から選択される、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
1以上の光学フィルタをさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
物理的スリットを有する追加の絞りをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項15】
物理的スリットの幅が調節可能である、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
1以上の試料のマルチモード撮像方法であって、
撮像システムの動作モードを選択し、
1以上の光源から、撮像システムの動作モードに応じて選択される光学系を通して光を伝送し、
段階的試料移動及び連続的試料移動からなる群から選択される試料移動法を用いて1以上の試料を光学系に対して移動させ、
検出器で画素を選択的に読取る
ことを含んでなる方法。
【請求項17】
前記動作モードが広視野モードである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記動作モードが固定線共焦点モード及び走査線共焦点モードからなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記動作モードが点共焦点モードである、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記動作モードが透過モードである、請求項16記載の方法。
【請求項21】
1以上の光源から光学系を通して光を伝送する段階が、選択された動作モードに基づいてビーム整形素子を用意し、光を1以上の試料上に偏向させることを含む、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記ビーム整形素子が、パウエルレンズ、円柱レンズ、回折格子、ホログラフィック素子、集光ミラー及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記ビーム整形素子が、従来の球面レンズ、従来の非球面レンズ、集光ミラー及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
光を1以上の試料上に偏向させる段階が、走査ミラー及び1以上のアクチュエータで光を1以上の試料上に偏向させることを含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
1以上の光源から光学系を通して光を伝送する段階が、レンズ型コリメータ及びミラー型コリメータからなる群から選択されるビームコリメータで光を平行化することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項26】
1以上の光学フィルタで1以上の試料からの光を濾光する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項27】
1以上の試料を試料支持体上に用意する、請求項16記載の方法。
【請求項28】
1以上の試料を位置合わせすることをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項29】
1以上の試料を位置合わせする段階が、スライド上の1以上のアライメントマークを検出することを含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
1以上の光源と、
撮像システムの動作モードに応じて選択される光学系であって、該動作モードが、広視野モード、固定線共焦点モード、走査線共焦点モード、点共焦点モード及び透過モードからなる群から選択される、光学系と、
画素の選択的読取りが可能な検出器と
を備える1以上の試料のマルチモード撮像システムであって、
試料移動法を用いて光学系に対して試料を移動させる、システム。
【請求項31】
試料移動法が、段階的試料移動及び連続的試料移動からなる群から選択される、請求項30記載のシステム。

【図1】
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【図2a−d】
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【図3】
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【図4】
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【図5a−b】
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【図7】
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【図10】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−528577(P2009−528577A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557454(P2008−557454)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/062667
【国際公開番号】WO2007/103642
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】