説明

マルチローブフィラメントヤーンを有するピラミッド状布地および浸食防止方法

【課題】効果的な植物再生、浸食防止および水質改善を斜面で達成するピラミッド状布地を提供する。
【解決手段】相互に実質的に直角の方向に織り上げた2組のマルチローブフィラメントヤーンを含んでなるピラミッド状布地であって、マルチローブフィラメントヤーンのそれぞれが予め決められた、異なった熱収縮特性を有するので、加熱した時に、この布地は、三次元的な、先端が尖った輪郭を形成する、ピラミッド状布地。土壌を安定化させ、植物再生を促進する方法であって、三次元的な輪郭のはっきりした織布を土壌中に配置する工程、該布地を大地に固定する工程、および該布地上に土壌および種子を配分し、大地の該区域が急速に植物再生し、それによってさらなる浸食から保護されるようにする工程を含んでなる方法。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願の関連出願
本願は、米国において2004年6月29日に出願された仮特許出願No.60/584,881の優先権主張を伴ったものである。
発明の背景
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般的には三次元的な、輪郭のはっきりした(high-profile)、織り上げた幾何学布地[ジオテキスタイル(geotextile)]構造と、土壌の保持および安定化並びに植物成長の促進における使用における、それらの方法に関する。より詳しくは、本発明は、断面がマルチローブ状のフィラメントヤーンから織り上げた、全体的に平らな、単層の、均質な布地に関し、該ヤーンは、異なった熱収縮特性を有し、そのため、加熱した時に、該布地は、三次元的な厚さ、先端が尖った輪郭を形成する。このマルチローブフィラメントヤーンは、引張強度が比較的高く、10%伸長におけるモジュラスが比較的高いので、他の三次元的な織り上げたジオテキスタイル構造よりも強度が高く、寸法安定性が高い布地を提供する。そのようなジオテキスタイル布地は、斜面、溝およびその他の堤防、並びに浸食防止、土壌安定化および/または植物生長促進が必要とされる表面に使用するのに好適である。この布地は、均質で、単一成分的な性質を有し、取扱が容易であり、破損点が最少に抑えられるとともに、設置された時に、厚い、強力な、寸法的に安定した製品を提供しうる。
【背景技術】
【0003】
浸食の保護および防止に使用されている公知のジオテキスタイル製品としては、ピラミッド状布地および芝生補強マット(TRM)がある。後者は、典型的には、下記の3通りの方法、すなわち(1)重合体モノフィラメントまたは天然有機繊維を一つに縫合すること、(2)重合体モノフィラメントを融解させて網形成すること、または(3)重合体モノフィラメントを浸食防止構造に織り上げること、の一つの方法により製造される。前者は、輪郭のはっきりした、織り上げたジオテキスタイル布地を包含する。
【0004】
熱収縮性ヤーンを取り入れた織布は公知である。例えば、1950年代初頭のB.H. Fosterへの少なくとも3件の特許(米国特許第2,627,644号[特許文献1]、第2,635,648号[特許文献2]および第2,771,661号[特許文献3]の各明細書)および1956年のMcCordへの1件(米国特許第2,757,434号[特許文献4]明細書)は、熱収縮性ヤーンを非熱収縮性ヤーンと共に使用し、寝具、衣服、等に使用するハニカム状の、ふくれた(puffed)および/または波形の布地を製造する。
【0005】
さらに、本発明と同じか、または類似の、全体的に先端が尖った輪郭または「ハニカム」型の織り形状を有する織布は、この分野で公知であり、塔充填材として、または霧除去装置(mist eliminator)における分離媒体として使用される。例えば、Pedersenの米国特許第4,002,596号[特許文献5]明細書は、流体を通過させ、流体から粒子状物質を除去することができる流体処理媒体に関する。使用する材料は、少なくとも2組のストランドを含んでなり、これらのストランドは、一つの方向に伸びるストランドが全体的に直線的であるのに対し、別の方向に伸びるストランドは、先端が尖った形状または輪郭を有する布地を与えるように幾何学的に配置され、相互に特定の配置でとじ込められている。本発明の布地は、輪郭は類似しているが、ただし、ヤーンのストランドを両方向で曲げることができる点で相違している。
【0006】
土壌設計における布地の使用および性能にとって、重量、強度およびモジュラスも非常に重要である。ジオテキスタイル布地が土壌保持および安定化ならびに芝生の補強に使用するのに適しているかを決定するのは、厚さを包含する、これらの特性の組合せである。好ましくは、引張強度が、米国試験および材料協会(the American Society for Testing and Materials)(ASTM)標準試験方法D6818により測定して少なくとも約4000x3000ポンド/フィート(それぞれ縦糸x横糸)であり、10%伸長でのモジュラスがASTM D6818により測定して少なくとも約10000ポンド/フィートである布地が、斜面、堤防、路盤および埋立地のような場所におけるベニヤ層に対する土壌安定化および浸食防止に必要である。これまで、ある種のマット材および他の類似構造が土壌保持または浸食防止の補助に使用されているが、これらの構造のほとんどは、真の安定性および補強性を土壌に与えるには、一般的に有効ではない。事実、先行技術の構造のほとんどは、少なくとも一つの方向で一般的に直線的なヤーンを使用しており、熱収縮性ではなく、および/または一つに溶融結合したフィラメントを有するので、布地の結合に対して破損点が存在する原因になっている。
【0007】
例えば、Daimler et al.の米国特許第3,934,421号[特許文献6]明細書は、複数の連続的で無定形の合成熱可塑性フィラメントを含んでなり、フィラメントがそれらの交差点で一つに結合している、路盤の安定化に使用できるマット材を開示している。
【0008】
Murhling et al.の米国特許第4,002,034号[特許文献7]明細書は、大量の水を取り囲む堤防の浸食を阻止するための多層マット材に関し、水に最も近い層は、水から離れている層よりも細孔空間が少なく、より細い繊維を有することに向けられている。
【0009】
Bronnerの米国特許第4,329,392号[特許文献8]明細書は、溶融紡糸された合成重合体フィラメントの、それらの交差点で結合された層、そこに結合された細い繊維のフィルター層、およびその中を通して分散された第三の層を含んでなる、土壌粒子の再配置を阻止するための水力工学用マット材を開示している。
【0010】
Ter Burg et al.の米国特許第4,421,439号[特許文献9]明細書は、道路、溝、等の堤防に使用する、支持布地またはマット材を開示している。この布地は、一般的に、縦糸および横糸の両方向で直線的なヤーンを含み、結合ヤーンが縦糸方向に伸び、横糸方向の直線的ヤーンの周りで織られている。しかし、これらのヤーンは、直線的ヤーンに強度を与えていない。
【0011】
Leachの米国特許第4,472,086号[特許文献10]明細書は、縦糸と横糸の両方向で波形になっていない合成糸を有し、公知のヤーンが縦糸および横糸を一つに縫合している、浸食防止用のジオテキスタイル布地に関する。
【0012】
最後に、一般的に土壌保持および浸食防止に使用するための、熱収縮性ヤーンを使用する(ただし、単層ではない)、輪郭のはっきりした市販の構造は、Stancliffe et al.の米国特許第4,762,581号[特許文献11]明細書に開示されている。この特許は、カーペットの下敷きおよびマットレスならびに堤防安定化および排水路として有用であるされている、輪郭のはっきりした構造または複合材料に関する。これらの構造は、Tensarの商品名で、英国、Mill HillのNetlon Limitedから市販されている。
【0013】
しかし、Stancliffe et al.の構造は、平らな二軸熱収縮性のプラスチックメッシュ層を、平らな比較的非熱収縮性のプラスチックメッシュ層に、全体的に正方形の格子で空間的に分離された区域で溶接することにより、形成される。従って、熱収縮性層を加熱し、収縮させると、非熱収縮性層が全体的に先端が尖った形状を取り、非熱収縮性層上の溶接点が熱収縮性層と接触したままになる。この特許は、単層布地を与えず、各層を一つに結合している溶接点で破損を受け易い。
【0014】
別のピラミッド状布地は、本譲受人により所有される米国特許第5,567,087号[特許文献12]明細書および米国特許第5,616,399号[特許文献13]明細書に記載されている。これらの特許で開示されている布地は、丸いモノフィラメントヤーンから織ってあり、そのような布地およびそれらの製造の説明は、上記の特許に記載されており、その内容をここに参考として含める。
【0015】
このように、土壌を安定化および保持するための、および芝生を補強するための好適な手段を提供する試みがこれまでなされているが、この分野は、斜面および水路での効果的な植物再生、浸食防止および水質改善を達成するための、ピラミッド状布地に対する改良をこれまで開示していない。
【特許文献1】米国特許第2,627,644号
【特許文献2】米国特許第2,635,648号
【特許文献3】米国特許第2,771,661号
【特許文献4】米国特許第2,757,434号
【特許文献5】米国特許第4,002,596号
【特許文献6】米国特許第3,934,421号
【特許文献7】米国特許第4,002,034号
【特許文献8】米国特許第4,329,392号
【特許文献9】米国特許第4,421,439号
【特許文献10】米国特許第4,472,086号
【特許文献11】米国特許第4,762,581号
【特許文献12】米国特許第5,567,087号
【特許文献13】米国特許第5,616,399号
【発明の開示】
【0016】
発明の概要
【0017】
従って、本発明の一態様は、効果的な植物再生、浸食防止および水質改善を斜面で達成するピラミッド状布地を提供することである。
【0018】
本発明の別の態様は、マルチローブフィラメントヤーンから織り上げ、表面積を増加したピラミッド状布地を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、本発明のピラミッド状布地を使用し、浸食防止および植物再生支援を行う方法を提供することである。
【0020】
上記態様の少なくとも一つ以上は、下記する本明細書の内容から明らかなように、ピラミッド状布地に関連する公知の技術に対して優位性を有すると共に、以下本明細書において開示され、特許請求の範囲に記載された、本発明により達成される。
【0021】
一般的に、本発明は、相互に実質的に直角の方向に織り上げた2組のマルチローブフィラメントヤーンを含んでなるピラミッド状布地を提供するが、マルチローブフィラメントヤーンのそれぞれが予め決められた、異なった熱収縮特性を有するので、加熱した時に、この布地は、三次元的な、先端が尖った輪郭を形成する。
【0022】
本発明はまた、土壌を安定化させ、植物成長を促進する方法を包含するものであり、該方法は、三次元的な輪郭のはっきりした織った布地を土壌中に配置し、
前記布地は、相互に実質的に直角の方向に織り上げた2組のマルチローブフィラメントヤーンを含んでなり、該マルチローブフィラメントヤーンのそれぞれが予め決められた、異なった熱収縮特性を有するので、加熱した時に、該布地は、三次元的な、先端が尖った輪郭を形成するものであり、
前記布地を大地に固定し、および
前記布地上に土壌および種子を配分し、大地の該区域が急速に植物再生し、それによってさらなる浸食から保護されるようにすることを含んでなるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、上記の米国特許第5,567,087号明細書および第5,616,399号明細書に記載されているジオテキスタイル布地に関連する。これらの特許と本発明に記載されている布地の違いは、前者が丸いモノフィラメントを使用して布地を織っているのに対し、本発明の布地は、マルチローブフィラメントヤーンから織ってあり、ここではピラミッド状布地と呼ぶ。そのような布地は、露出された表面の浸食を阻止し、前に浸食された表面の植物再生を促進するために使用される。
【0024】
本発明の概念を具体化するジオテキスタイル布地は、添付の図面で全体的に番号10で示してあり、相互に実質的に直角方向で織り上げた2組のフィラメント15W(縦糸方向)および15F(横糸方向)を包含する。図2に最も分かり易く示すように、繊維またはフィラメントヤーンは、最初に、織り技術で「ワッフル織り」と呼ばれるパターンの型または「ハニカム」型の織りパターンに織り上げるのが好ましい。この分野で良く知られているこの織り手順は、実質的にすべての従来型布地織り装置で行うことができ、布地の片側で隣接するピラミッドが、布地の反対側にある隣接するピラミッドと対向し、突き合わせになっている、全体的に平らで、独特な外観を有する単層布地を製造する。
【0025】
本発明のジオテキスタイル布地の製造に使用するフィラメントヤーンは、2軸方向で熱収縮し得ることが重要である。すなわち、加熱した時に、フィラメントヤーンは両方向で収縮する。しかし、熱収縮の量は、織布中の位置に応じて、各フィラメントヤーン毎に異なる。従って、織り上げた、最初は平らな布地10を、好ましくは高温の蒸気または水浴で加熱すると、フィラメント15Wおよび15Fは、各フィラメントが有する熱収縮の異なったレベルに比例して、収縮する。重要なことに、フィラメントを、それらの熱収縮性レベルに基づいて、予め決められた、良く知られている様式で配置することにより、最初は平らなジオテキスタイル布地10が、より厚くなり、より三次元的な形状になる。図4および5で分かるように、フィラメントはジグザグ断面を形成し、布地が比較的平らである時よりも、体積が実質的に大きくなる。その結果、図1に示すような、三次元的な、輪郭のはっきりした、織り上げたジオテキスタイル布地が形成される。
【0026】
その上、布地の独特な外観は、より目立つようになる。すなわち、布地中のピラミッド形状が著しく深く、より明確になる。ジオテキスタイル布地の厚さは、好ましくは少なくとも約0.4インチ(400ミル)に成長すべきである。布地のこの厚さならびに他の特徴により、土壌保持および芝生補強に使用できるようになる。さらに一般的には、この布地の厚さは、約0.4インチ(400ミル)から約0.5インチ(500ミル)に成長することが可能である。
【0027】
例えば、本発明の布地は、好ましくは、米国試験および材料協会(ASTM)標準試験方法D6818により、縦糸方向で少なくとも約4000ポンド/フィートであり、約4900ポンド/フィートまでの、横糸方向で少なくとも約3000ポンド/フィートであり、約3600ポンド/フィートまでの、引張強度を有するべきである。布地は、10%伸長でのモジュラスが、ASTM 試験方法D6818により測定して縦糸方向で少なくとも約12500ポンド/フィート、横糸方向で少なくとも約11000ポンド/フィートであるべきである。
【0028】
より好ましくは、布地は、引張強度が、ASTM標準試験方法D6818により、縦糸方向で少なくとも約4700ポンド/フィート、横糸方向で少なくとも約3500ポンド/フィートである。また、布地は、10%伸長でのモジュラスが、ASTM 試験方法D6818により測定して縦糸方向で少なくとも約18,500ポンド/フィート、横糸方向で少なくとも約16,000ポンド/フィートであるべきである。
【0029】
ここで、本発明のジオテキスタイル布地に使用するフィラメントは、好ましくは、ポリエチレンおよびポリプロピレン単独重合体、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、特定のフルオロ重合体、およびそれらの混合物のような材料を含んでなる、熱可塑性の、断面がマルチローブのフィラメントヤーンである。しかし、無論、本発明の布地に使用するのに好適なフィラメントまたは繊維を製造できるすべての材料が、本発明の範囲内に入り、本発明の技術的範囲から離れることなく、決定することができる。最も好ましくは、本発明のフィラメントは、ポリプロピレン、ポリエチレン、高靱性(tenacity)ポリエステル、またはそれらの混合物から製造する。
【0030】
さらに、本発明の操作をより具体的に、詳細に説明する前に、ジオテキスタイル布地の製造方法はこの分野で良く知られていることを理解すべきである。上に述べたように、この織り上げ方法は、本発明の布地を製造するのに好適な従来の織物取扱装置のいずれによっても行うことができ、従って、熱可塑性重合体状ヤーンから製造される「ハニカム」型の織物もこの分野で良く知られている。しかし、本発明の目的には、単層の均質な布地は使用されていないことを理解すべきである。重要なのは、熱を作用させた時、本発明で使用する、予め配置されたフィラメントが収縮することにより、布地の厚さが増加するために、本発明は、浸食防止および土壌のベニヤ被覆および安定化の用途に利用できることである。
【0031】
ピラミッド状布地の構築に現在使用されている繊維は、形状が円形か、または長円形である。本発明のピラミッド状布地10のフィラメントヤーン15Wおよび15Fは、図6で番号15により一般的に示されるマルチローブフィラメントヤーンからなる。繊維15は、多地点、マルチローブまたは他次元が特徴であり、図7に示すように、3個の分離した地点またはエッジ16、17および18、並びにこれらの地点の間にある3本の溝または通路19、20および21を与える。繊維の幾何学的配向により、ヤーン15に沿った溝/通路で表面積が増加する。フィラメントヤーン15は、繊維の断面を見た時、最少3個の地点を与えるが、3に限定するものではない。例えば図8〜10に関して、別のフィラメントヤーン30、40および60をそれぞれ示す。繊維30は、4個のエッジまたは地点31〜34および4本の通路35〜38を与える。繊維40は、5個のエッジまたは地点41〜45および5本の通路46〜51を与える。繊維60は、6個のエッジまたは地点61〜66および6本の通路67〜72を与える。本説明の目的には、繊維15を参照するが、無論、これは多地点の幾何学的形状を有する繊維を代表するものであって、本発明の実施は、3個のエッジおよび3本の通路を有する繊維の特定形態に限定されるものではない。
【0032】
繊維15は、多地点幾何学的形状を形成するダイを通して押し出される。この形状は、繊維の押出工程で形成される。繊維のこの独特な幾何学的配向−多地点断面が堆積物75(図6)および水を捕獲し、これらが、より効果的な植物生長を促進する。堆積物および水分は、繊維の溝/通路(16/19等)中に捕獲され、これが種子の生長および根の確立を促進する。繊維は、繊維の幾何学的配向のために、波形の振幅を増大させる。弾性データは、標準的な円形または長円形モノフィラメントに対して10%増加を示している。植物の生長を容易にする弾性増加はピラミッド状布地の機能に不可欠である。本発明のピラミッド状布地10は、独立した第三者の研究室で試験した時に、標準的な、一般的に使用されているモノフィラメント繊維のピラミッド状布地に対して、1488%までの種子発芽改善をもたらした。実験室規模のせん断試験では、ピラミッド状布地10を使用する植物の部分的生長区画は、モノフィラメントから織ったピラミッド状布地に対して、少なくとも30%の土壌損失低下を示した。
【0033】
繊維15は、重合体、例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、およびそれらの混合物、を基材とし、ポリプロピレンが好ましい。繊維15は、独特な多次元形状を形成し、多地点断面を有する繊維を与えるダイを通して、380°Fから440°F(193°から227℃)の温度を超える温度で押し出す。繊維は、温度70℃の急冷水浴を通して押し出す。次いで、繊維は幾つかの送風機および乾燥機を通過し、繊維の通路から過剰の水を除去する。次いで、繊維を、温度280±15℃の加熱炉中に、延伸比6.0/1から8.0/1で通す。
【0034】
各繊維は1本の連続したストランド(ダイ1個あたり最少160穴)であり、巻取機上に巻き取り、パッケージまたはスプールを形成する。繊維15のデニールは、実際の断面幾何学的構造に関係なく、約300(333デシテックス)〜約2000(2222デシテックス)であり、約500(555デシテックス)〜約1100(1222デシテックス)が好ましい。無論、図面は、各エッジまたはローブ、例えば16、17、18、および通路、例えば19、20、21、が一様な、繊維の理想化された多地点断面を示している。実際には、エッジおよび通路は、急冷のために、対称的に、または鮮明に限定されてはいないが、フィラメントヤーンは明確なエッジおよび通路を有し、多次元的な幾何学的構造を与える。
【0035】
本発明の特別な実施態様では、浸食防止または不毛土壌または以前に浸食された区域の植物再生促進方法、またはその両方を提供する。本発明のマルチローブフィラメントヤーンの増加した表面積は、流水が下にある土壌に損傷、すなわち浸食、を与えることなく、排水することができる大きな表面積を与えると考えられる。さらに、本ピラミッド状布地の不規則形状の空隙は、堆積物、土壌、および存在する場合、種子、が入り込める十分な空間を与え、それによって布地を保持すると共に保護すべき表面の中/上に取り込み易くする。
【0036】
例えば、本発明は、土壌を安定化させ、植物生長を促進する方法であって、三次元的な輪郭のはっきりした織布を土壌中に配置し、
ここで、該布地は、相互に実質的に直角の方向に織り上げた2組のマルチローブフィラメントヤーンを含んでなり、該マルチローブフィラメントヤーンのそれぞれが予め決められた、異なった熱収縮特性を有するので、加熱した時に、該布地は、三次元的な、先端が尖った輪郭を形成するものであり、
該布地を大地に固定し、および
大地の該区域が急速に植物再生し、それによってさらなる浸食から保護されるように、該布地上に土壌および種子を配分することを含んでなる方法を包含する。
【0037】
この布地はU型ワイアーステープルまたは金属ジオテキスタイルパインによって大地に固定させることができる。ワイアステープルは、最小限8ゲージ(4.3mm)の厚みとされるべきである。金属パインは、そのパインの頭において、少なくとも3/14インチ(4.7mm)径のスチール、1.5インチ(38mm)のスチールワッシャーとされるべきである。ワイアステープルと金属とは、土壌表面にしっかりと打ち込まれるべきである。斜面に応じて、このステープルとパインとは1平方ヤードあたり1〜3の数である。設置する前に、設置区域を区画し固めて、かつ、岩、粘土、植物または他の障害物を取り除くことにより、その設置されたマットが土壌表面に直接接触するようにする。最終の区画の前に、土壌最表面の2〜3インチ(50〜75mm)に土をばらまくための種床の用意をする。石灰、肥料等の改質剤は、必要であれば、土壌に含ませてもよい。種はマットに設置する前か設置した後に、土壌表面に付与されてよい。
【0038】
ロール巻きにした浸食防止製品(RECP)の試験を、よりコスト的に有利に、短時間で行うための一連の性能関連インデックス試験が、浸食防止技術審議会(the Erosion Control Technology Concil )(ECTC)により開発されている。本発明の有効性を立証するために、本発明の芝生補強マットをRECPとして使用し、これらの試験方法をRECP試験に使用した。先ず、RECP試験の背景を手短に説明する。
【0039】
土壌損失および土壌損失比
斜面に使用する場合、RECP系の最も重要なことは、それらの、急激で短時間の流水により引き起こされる土壌損失を低減させる能力である。土壌損失比は、比較し得る裸の土壌(比較用)条件と比較した、特定RECP系を使用する時の土壌損失の減少に等しい。
【0040】
許容し得るせん断設計
通路を流れる水は、通路の側面および底部にせん断応力をかける。通路の内張に使用するRECPの許容せん断応力が、課せられるせん断よりも大きい場合、その内張は、妥当な浸食耐性を与えると考えられる。
【0041】
マルチングおよびRECP寿命
RECPは、浸食保護と共に、短期間のマルチングを与え、植物生長を促すために使用されることが多い。そのため、RECPの、種子の初期生長支援効率を評価する必要がある。さらに、植物は、十分な浸食保護被覆性能が得られるまでに長い生長期間を必要とすることがある。その期間は、湿った環境における6週間から、乾燥条件における数年間までにわたることがある。RECPの中には、芝生を永久的に補強することを要求されるものもある。いずれの場合も、RECPは適切な寿命を有することを示さなければならない。
試験方法
【0042】
ECTC斜面浸食試験
「実験室規模の条件下における、植物が生えていないロール巻きにした浸食防止製品(RECP)の、降雨と、それに関連する流水から土壌を保護する能力を測定するための標準インデックス試験方法」と題するECTC試験方法は、ロール巻きにした浸食防止製品(RECP)の、降雨および直後の流水により引き起こされる浸食から土壌を保護する能力を評価するための手順を規定している。測定する保護の不可欠な要素は、RECPの、雨滴の衝撃力を吸収し、それによって「跳ね」機構による土壌粒子のゆるみを低減する能力である。この試験方法は、大規模な現場シミュレーションではなく、実験室規模の試験装置を利用する。
【0043】
ECTC通路浸食試験
「実験室規模の条件下における、植物が生えていないロール巻きにした浸食防止製品(RECP)の、水力により誘発されるせん断応力から土壌を保護する能力を測定するための標準インデックス試験方法」と題するECTC試験方法は、ロール巻きにした浸食防止製品(RECP)の、流れにより誘発される浸食から土壌を保護する能力を評価するための手順を規定している。
【0044】
ECTCマルチング試験
「一時的に分解し得るロール巻きにした浸食防止製品(RECP)の、種子発芽および植物生長を促進する性能を測定するための標準インデックス試験方法」と題する試験方法は、RECPの、種子発芽および植物の初期生長を促進する能力を評価する手順を規定している。この試験の結果は、RECPおよび他の浸食防止方法を比較し、様々な気候における植物生長を促進するのにどれが最も効果的であるかを決定するのに使用できる。
【0045】
試験結果のまとめ
試料AおよびBを使用して下記のASTM試験を行った。試料Aは、不織マットに円形のモノフィラメント繊維を使用する既存のピラミッド状布地であった。試料Bは、マルチローブフィラメントヤーンを使用する本発明のピラミッド状布地であった。比較試験では、土壌の上にピラミッド状布地は使用しなかった。各試験は、物理的特性、例えば引張強度を、先ずA試料に関して、続いてB試料に関して確認する。試験結果を表I〜IIIに報告する。表Iに報告する引張試験は、ASTM D6818により行い、弾性試験は、ASTM D6524により行った。発芽試験は、表IIに報告し、実験室規模のせん断試験は表IIIに報告する。
【0046】
実験室規模のせん断試験は、下記の装置および手順を使用する。RECP保護された土壌を含む直径8インチ(20.3cm)、深さ4インチ(10.2cm)のポットを水中に浸漬し、表面に、インペラーの回転により引き起こされるせん断応力を30分間作用させる。せん断応力試験装置は、タンク、窪みの付いたポットを保持するための内部「テーブル」、およびインペラーを包含する。インペラーは、円筒形のタンク中に、ブレードの下側縁部がポットの表面より僅かに上になるように取り付ける。内部テーブルは、土壌のポットを保持する開口部を有する。ポットをテーブルの開口部中に設置した時、試験表面はテーブルの最上部と同一平面になる。浸食される土壌の量は、試験の前と後に、土壌を満たした容器を秤量することにより、求められる。試験は、一般的に複数(少なくとも3つ)のせん断応力レベルで行う。このデータから、臨界量の土壌損失に関連するせん断応力(典型的には0.5インチ(1.25cm))を計算することができる。臨界せん断応力は、RECPの「許容せん断応力」と呼ばれることもある。
【0047】
X=せん断応力(lb/ft2)であるせん断は、下記のデータを使用して計算される。
y=水の単位重量(lb/ft3)
y⌒=流れの深さ(ft)
2f=エネルギーグレードラインの角度(度)
x=yy⌒2f
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
これらのデータに関して、21日後、試料Bの製品は、発芽種子/面積に関して、試料Aの製品に対して1488%の改善を示した。平均植物高さに関して、試料Aに対する試料Bの改善は、50%であり、植物質量/面積に関しては、試料Aに対する試料Bの改善は、760%であった。一般に、本発明による布地を使用した場合、それぞれに、発芽種子/面積は、円形のモノフィラメントで製造された布地に対して少なくとも約50%の改善を与えており、平均植物高さに関しても同様に、本発明の布地において約30%〜約50%の改良を与えている。植物質量/面積にあっては、その改良は、本発明の布地において約350%〜約760%である。
【0051】
【表3】

【0052】
表IIIで、水流は、第一欄にポンド/平方フィート(psf)で示す。水流により損失した土壌を、次の2つの欄に布地AおよびBに関してグラムで示す。実験室規模試験から内挿することにより、土壌の損失450グラムは、現場では半インチ(1.25cm)に等しく、許容できない。表IIIの結果は、試料Bが、3.87Psfおよび4.72psfで試料Aより30%少なく、5.57Psfでは試料Aより37%少ないことを示している。いずれの場合も、布地Bは450グラムの土壌を損失していない。
【0053】
本発明の布地を使用する場合、円形のモノフィラメントで構成されたピラミッド状の布地と比較しても、土壌損失は少なくとも約30%減少可能である。
【0054】
本発明のピラミッド状の布地(試料B)はまた、伝統的な円形のモノフィラメントヤーンピラミッド状の布地(試料A)に対して、植物テストにおいて評価された。その結果を表VIにおいて報告する。
【0055】
【表4】

【0056】
表4の結果から、本発明によるピラミッド状の布地は剪断応力及び粘度のいずれにおいてっも改良されたことが示された。さらに、成長時間は、本発明によるピラミッド状の布地を使用した場合、明らかに増加した。本発明によるピラミッド状の布地を使用した場合、伝統的な円形ヤーンで製造されたピラミッド状の布地と比較して、少なくとも約50%の成長時間の増加が得られた。
【0057】
従って、本発明のピラミッド状布地および方法は、露出表面の浸食防止および以前に浸食された表面の植物再生促進に非常に効果的であることが明らかである。本発明は、浸食防止および以前に浸食された土地の植物再生促進に特に効果的であるが、必ずしもそれに限定するものではない。
【0058】
上記の開示から、ここに記載するピラミッド状布地を使用することにより、上記の目的が達成されることは明らかである。従って、無論、明らかな変形はすべて特許請求する本発明の範囲内に入り、ここに開示および記載する本発明の技術的思想から離れることなく、特定の成分要素を選択することができる。特に、本発明のマルチローブフィラメントヤーンは、三つ葉状断面を有するヤーンに限定されるものではない。従って、本発明の範囲は、付随する請求項の範囲内に入るすべての修正および変形を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、本発明のピラミッド状布地を示す透視図である。
【図2】図2は、図1の拡大図である。
【図3】図3は、図1に示すピラミッド状布地の全体的な形状を図式的に示す図である。
【図4】図4は、図3で実質的に線4−4に沿って見た拡大断面図である。
【図5】図5は、図3で実質的に線5−5に沿って見た拡大断面図である。
【図6】図6は、本発明のピラミッド状布地を形成するマルチローブフィラメントヤーンの一部を示す透視図である。
【図7】図7は、図6に示すマルチローブフィラメントヤーンの断面図である。
【図8】図8は、本発明のピラミッド状布地の形成に使用できる、別のマルチローブフィラメントヤーンの断面図である。
【図9】図9は、本発明のピラミッド状布地の形成に使用できる、別のマルチローブフィラメントヤーンの断面図である。
【図10】図10は、本発明のピラミッド状布地の形成に使用できる、別のマルチローブフィラメントヤーンの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピラミッド状ジオテキスタイル布地であって、
相互に実質的に直角の方向に織り上げた2組のマルチローブフィラメントヤーンを含んでなり、
前記マルチローブフィラメントヤーンのそれぞれが、予め決められた、異なった熱収縮特性を有することにより、加熱した時に、前記布地が、三次元的な、先端が尖った輪郭を形成してなる、布地。
【請求項2】
前記布地の厚さが、約0.4インチ(400ミル)〜約0.5インチ(500ミル)である、請求項1に記載の布地。
【請求項3】
前記布地が、縦糸方向で少なくとも約4000ポンド/フィートから約4900ポンド/フィートまでであり、かつ、横糸方向で少なくとも約3000ポンド/フィートから約3600ポンド/フィートまででの、引張強度を有するものである、請求項1に記載の布地。
【請求項4】
前記布地が、縦糸方向で少なくとも約12500ポンド/フィート、横糸方向で少なくとも約11000ポンド/フィートである、10%伸長でのモジュラスを有する、請求項1に記載の布地。
【請求項5】
前記ヤーンのデニールが、約300(333デシテックス)〜約2000(2222デシテックス)である、請求項1に記載の布地。
【請求項6】
前記ヤーンが、ポリエチレンおよびポリプロピレン単独重合体、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、フルオロ重合体、およびこれらの混合物からなる群から選択されてなる、請求項1に記載の布地。
【請求項7】
前記マルチローブフィラメントヤーンが、三つ葉状である、請求項1に記載の布地。
【請求項8】
土壌を安定化させ、植物成長を促進する方法であって、
三次元的な輪郭のはっきりした織った布地を土壌中に配置し、
前記布地は、相互に実質的に直角の方向に織り上げた2組のマルチローブフィラメントヤーンを含んでなり、該マルチローブフィラメントヤーンのそれぞれが予め決められた、異なった熱収縮特性を有することにより、加熱した時に、該布地は、三次元的な、先端が尖った輪郭を形成するものであり、
前記布地を大地に固定し、および
前記布地上に土壌および種子を配分し、大地の区域が急速に植物を成長させ、それによってさらなる浸食から保護することを含んでなるものである。
【請求項9】
前記布地の厚さが、約0.4インチ(400ミル)〜約0.5インチ(500ミル)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記布地が、縦糸方向で少なくとも約4000ポンド/フィートから約4900ポンド/フィートまでであり、かつ、横糸方向で少なくとも約3000ポンド/フィートから約3600ポンド/フィートまでの、引張強度を有するものである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記布地が、縦糸方向で少なくとも約12500ポンド/フィート、横糸方向で少なくとも約11000ポンド/フィートである、10%伸長でのモジュラスを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ヤーンのデニールが、約300(333デシテックス)〜約2000(2222デシテックス)である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記マルチローブフィラメントヤーンが、三つ葉状である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記布地の使用が、発芽種子/面積に関して、円形のモノフィラメントヤーンにより構成されてなる通常のピラミッド状布地と比較して少なくとも約50%の増加を与えてなる、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記布地の使用が、平均植物高さに関して、円形のモノフィラメントにより構成されてなる通常のピラミッド状布地を使用するものの植物高さと比較して約30%〜約50%の増加を与えてなる、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記布地の使用が、植物質量/面積に関して、円形のモノフィラメントにより構成されてなる通常のピラミッド状布地を使用するものの植物質量と比較して約350%〜約760%の増加を与えてなる、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−16745(P2006−16745A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−189552(P2005−189552)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(505247292)エスアイ、コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】SI CORPORATION
【Fターム(参考)】