説明

マルチ電極

【課題】
【解決手段】本発明は、1の検出部位における生体電気の電位差を記録する互いに離れた電極面が設けられたキャリア(8)を有するマルチ電極(5)を具える。この電極面は、1以上のアクティブ電極面(6)と、2以上の参照電極面(7a、7b)とを具え、これにより同一の検出部位で複数回の電位差を記録する2以上の記録ペアが構成される。このマルチ電極は、処理手段に接続されるよう構成されており、この処理手段は検出部位で記録された生体電気の電位差の総和を計算する加法手段を具え、これにより信号/ノイズ比が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体電気の電位差による低出力信号を記録するマルチ電極と、本発明のマルチ電極で記録された信号の処理方法と、低出力生体電気信号を記録し増幅するシステムと、本発明のマルチ電極の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ECG(electrocardiography:心電図記録法)、EMG(electromyography:筋電計測法)、EneG(electroneurography:電気生理学的検査)など、生体電気信号を記録する検査では、生体電気信号を電極で検出して記録する。特にENeGで用いられる記録用電極は、例えば、患者の神経の近くに宛がわれる、塩素処理した銀の2つの大きなプレートまたは球を2分割した金属例えば銀の表面を具えている。これら2つの電極の導電面の寸法形状は、個別の実施例や設計によるが、これらの間の距離は通常例えば20−30mmに固定され、樹脂モールドで覆われている。塩水または他の導電性の液体に浸したフェルト素材を電極面を保持する凹部に配置して、電極面が肌に接触するようにしている。
【0003】
電極を構成する導電面は、個別に、粘着テープで皮膚のそれぞれ適切な位置に直接取り付けられてもよい。
【0004】
手足の末梢神経からの低出力信号を記録する場合、電極は神経の上の皮膚に、電極と手足の周りに回される粘着テープやベルクロストラップで位置決めされ固定される。記録用の電極は、記録面が神経に最も近くなるよう、好適には2つの導電記録面が皮膚の神経の上へ神経に沿って取り付けられる。
【0005】
一般に、人間の手足の神経からの神経信号の強さは100−5マイクロボルトと微弱であるため、記録システムには非常に高い増幅度が求められる。反復反応の多重または平均化処理を用いると、連続的に記録される神経反応の信号/ノイズ比を向上させることができ、ここで信頼性のある応答の弁別限界は約1マイクロボルトである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの電極にはいくつかの問題がある。神経信号の強度が微弱であるため、記録の精度が簡単に乱れてしまう。この記録処理は、例えば患者の発汗や動作など、他に同時発生的な電位の干渉がある場合や、同時に50Hzの外乱が生じた場合には再実施する必要がある。平均化処理を行う場合には、間欠的に電気刺激を与えて誘発される神経活動が長引くようにするため、患者にさらなる不快感を与えてしまう。
【0007】
他の利用可能な技術は、マクロ電極針(needle macroelectrode)による神経付近の記録を用いるものがある。マクロ電極針は、先端に比較的大きな記録領域をもつ電極針であり、この先端を経皮的に(皮膚内に)挿入し、神経の付近あるいは外側に接触する位置に配置する。参照電極を皮下で近くに配置する。神経付近の記録において、針の先端がアクティベートした神経繊維の近くにあるため、信号/ノイズ比が改善する。平均化処理と組み合わせると、強さが僅か0.5−0.2マイクロボルトの信号の弁別が可能である。
【0008】
別の記録技術であるマイクロニューログラフィでは、ソリッドなタングステンの微細電極または外径が僅か200マイクロメータの同軸電極を皮膚の神経内に挿入する。アクティブ記録電極の微小面を神経繊維の個々の神経の束に密接させ、参照電極面を近くに配置し、これにより例えば太い或いは細い有髄繊維や、直径20−1マイクロメータ、導電速度が70−1m/secの太い無髄繊維など神経繊維スペクトル全体から、電気的に誘発された神経反応の神経筋電図を記録することができる。これは、挿入された神経束の神経感応領域内に与えられる様々な自然の刺激に対する個々の有髄および無髄の神経繊維の反応を記録できる唯一の技術である。
【0009】
しかしながら、これらの処理では、滅菌された電極針を用いるものであり、技術的な規格が非常に厳しく、時間がかかりマニュアル処置が困難であった。このため、これらは臨床ルーチンの試験器具として不適切であった。
【0010】
関連する技術が米国特許5,976,094にも記載されている。
【0011】
最も近い従来技術は米国特許5,660,177であり、電極アレイを具える生体電気感知電極が開示されており、例えば胸部などをスクリーンすべく患者の数カ所の異なる検出部位で直流電圧を記録する(図1、第5段落、32−60行参照)。米国出願2003/009,096にも従来技術が開示されており、3つの電極のアレイを用いて、患者の頭部の異なる箇所で生体電気の電位差を検出する測定システムが記載されている。これらの従来技術の文献においていずれの技術でも、生体信号は測定箇所ごとに一度しか記録されない。これとは異なり、本発明は、例えば神経繊維や筋肉繊維といった1カ所における同じ生体電気のインパルス発生部からの生体電気の電位差記録の改良を開示するものであり、複数記録を行うとともにこの検出部位における前記インパルス発生部からの生体電気の電位差を用い、1つの電極で得られる複数の記録ペアを用いて信号/ノイズ比を改善するものである。
【0012】
本発明の目的は、低出力の生体電気信号を記録する際の上述した問題のいくつかを制限あるいは解消し、改良された、非侵襲性の記録極と記録信号の新規な処理方法を提供し、特に、信号の信号/ノイズ比を従来技術に比して改善し、本発明を臨床的な患者の測定に適合させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、添付のクレームにかかるマルチ電極、記録方法、記録システム、および製造方法によって達成され、その全容を以下に説明する。
【0014】
クレームは、1の検出部位において生体電気の電位差記録を改善する2つの互いに隔てられた電極面をもつキャリアを具えるマルチ電極に関する。この互いに隔てられた電極面は、2またはそれ以上の記録ペアに出力する、1またはそれ以上のアクティブ電極面と2またはそれ以上の電極面とを具え、各アクティブ電極面が、同じ検出部位で前記生体電気の電位差を複数回記録する1以上の記録ペアを構成する。この記録ペアは、前記記録される電位差の信号/ノイズ比を改善する反転手段と加法手段とを具える処理手段に接続可能に構成されている。
【0015】
アクティブ電極面は、キャリアの表面領域の中心に配置されており、参照電極面はアクティブ電極面とキャリアの表面領域を規定する端縁との間に対称的に配置されている。
【0016】
このキャリは、2またはそれ以上の個別のサブキャリアで構成されていてもよく、各サブキャリアが少なくとも1の互いに隔てられた電極面を具え、合計の電極面が少なくとも3となる。
【0017】
アクティブ電極面はいずれもほぼ同じ寸法と形状であり、参照電極面もほぼ同じ寸法形状であってもよい。参照電極面の寸法および/または形状はアクティブ電極面の寸法および/または形状とほぼ同じであっても、実質的に異なっていてもよい。
【0018】
キャリアの表面には、電極面を取り付ける立ち上がり部を具えてもよく、あるいは電極面が固定される凹部を具えてもよく、電極面は前記立ち上がり部またはキャリアの凹部の側方に延びていてもよい。
【0019】
キャリアの凹部は、キャリア表面から立ち上がる垂直エッジで画定され、これにより隣接する電極面との回路短絡が防止される。
【0020】
電極面の少なくとも幾つかに、導電手段を設けてもよい。
【0021】
キャリアおよび/または電極面は、このマルチ電極を検出部位へ取り付ける粘着剤が設けられてもよい。
【0022】
キャリアと電極面は、電極面パターンが形成された絶縁材料でなる1またはそれ以上の薄い層から構成されてもよい。
【0023】
このキャリアは、3またはそれ以上の滅菌針を具え、各針の先端にそれぞれ電極面の一部が形成されていてもよい。
【0024】
クレームはまた、検出部位の生体電気の電位差を示す信号の処理方法に関し、本発明にかかるマルチ電極によりこの信号が記録され、この方法は少なくとも2の記録ペアにより検出部位で記録される信号の加法処理を含み、前記信号は生体電気の電位差の発生部から誘発される。
【0025】
前記加重の前に、少なくとも1の信号の反転を行ってもよい。
【0026】
前記加重の前に、誘発反応の開始時から遅延を行ってもよく、また前記加重の前に少なくとも1またはそれ以上の信号の一部をミュートしてもよい。
【0027】
クレームはまた、少なくとも一部がマニュアルプロセス、またはプロセスの少なくとも一部が機械的製造手段による前記マルチ電極の製造方法に関する。この工程は、絶縁材料の薄い層を製造し、いくつかの層に電極面のパターンを形成し、これらの層を重ね、固定しおよび/または接着するステップを含む。
【0028】
クレームはまた、検出部位における生体電気の電位差を示す信号を記録するシステムに関し、このシステムは少なくとも1のマルチ電極と、当該マルチ電極に接続された処理手段とを具え、この処理手段は加法手段と反転手段とを具える。
【0029】
この処理手段はさらに、遅延手段とミュート手段とを具えてもよい。
【0030】
本発明の他の特徴とさらなる利点が以下の説明と本発明を限定するものではない実施例により明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、現在利用されているマクロ電極の平面図である。
【図2】図2は、電気誘発神経活動を記録する構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明のマルチ電極の第1実施例の平面図である。
【図4】図4は、本発明のマルチ電極の第2実施例の平面図である。
【図5】図5は、本発明のマルチ電極の第4実施例の平面図である。
【図6】図6は、本発明のマルチ電極で記録した生体電気信号の処理方法の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の目的の一つは、例えば神経繊維や運動単位など生体電気の電位差の発生部から生ずる低出力の生体電気信号記録を改良することにある。これは、本発明の方法により互いに離れた複数の記録面を具える本発明の電極と、本発明の処理方法と、本発明のシステムと、本発明の製造方法により実現することができる。
【0033】
図1は、従来技術のマクロ電極1を示しており、好適には金属材料といった導電材料でなる2つの電極面2a、2bを具えている。この従来技術のマクロ電極のサイズは約1cm×2.5cm×5cmであり、2つの電極面のサイズはそれぞれ約6mm×20mmである。このマクロ電極は、神経の上の皮膚に、電極面を皮膚に向けて固定される。
【0034】
図2は、患者の腕の末梢神経にある多数の神経繊維の神経活動を記録する構成を示す図である。この構成において、生体電気神経活動は、患者の指にある刺激箇所3に電気的な刺激を患者に繰り返し与えて誘発される。しかしながら、生体電気活動は、例えば皮膚への刺激などこれとは別に磁石や物理的や自然の刺激によって誘発してもよく、他の構成として、任意の筋収縮、フラッシュ光または音などでもよい。患者の皮膚の2つの場所の間の生体電気信号は、神経活動により誘発され、患者の手首にある検出部位に取り付けられた記録電極で検出される。この構成はさらに、本図に示さないが適切な電気アース手段を具える。この電極で記録された信号は電子処理され、例えばオシロスコープで表示する光学信号となる。
【0035】
動物の生体電気信号を記録する場合、検出部位はこの動物の皮膚の上であり、あるいは皮膚弁で規定されたパラフィン注入プールであり、ここに電極面が注入され動物の神経または神経根といった他の生体電気電位差の発生部に直接触れるようにする。このプールの電極面は、前記発生部の上部または下部に近接または密接配置される。
【0036】
例えば患者の神経の直接上の皮膚にある検出部位で記録された生体電気の電位差の信号/ノイズ比を向上すべく、本発明にかかる新規な電極は、複数の互いに離れた電極面を設けたキャリアを具えている。この電極面は、検出部位の中央の皮膚に装着する1またはそれ以上のアクティブ電極面と、この検出部位の中央から少し離れて皮膚に取り付けられる2またはそれ以上の参照電極面とを具える。このアクティブ電極面は好適には電極キャリアの中心に配置され、参照電極面は好適にはアクティブ電極面とキャリア表面領域の端縁との間に配置されるが、この配置はキャリアの形状とサイズによるものとする。参照電極面はグループ化され、このグループがキャリア上でアクティブ電極面を囲んで対称に配置されている。
【0037】
例えば生体電気信号などの電位差の記録は、アクティブ(負)と参照(正)の電極面でなる一対の電極面により達成され、これにより電位差が検出される。複数の電極面を用いた手段により、この部位の幾つかの記録ペアで、1以上の記録ペアがもつアクティブ電極面を用いて、1の検出部位で発生する生体電気の電位差を複数回計測する。マルチ電極に接続された処理手段は、反転ユニットと加法ユニットを具えており、記録ペアのそれぞれで検出される生体電気の電位差の記録値について、値の1以上を加重の前に反転させて加重し、これにより信号/ノイズ比といった生体電気信号記録を改善することができる。
【0038】
マルチ電極に搭載されるアクティブ電極面の数は1またはそれ以上であり、通常は1から3の間である。参照電極面の数は2またはそれ以上であり、通常は4から20の間である。
【0039】
1つのマルチ電極の電極面の形状と寸法はそれぞれ異なってもよい。しかしながら、電極面をほぼ同じ寸法形状とすると、電気インピーダンスが同レベルとなり好適である。本発明の一実施例では、マルチ電極のアクティブ電極面がすべて同じ寸法形状であり、参照電極面もすべて同じ寸法形状であるが、参照電極面の寸法形状がアクティブ電極面の寸法形状とは異なっており、あるいは、電極面の形状だけが異なりサイズは同じである。
【0040】
図3−5は、本発明のマルチ電極の実施例の平面図であり、複数の電極面が互いに離して設けられている。検出部位における電位差が複数の記録ペアで検出・測定され、記録ペアはそれぞれ、1つのマルチ電極のアクティブ電極面と1つの参照電極面とで構成される。記録された値は処理され加重され、生体電気信号記録の改善が達成される。
【0041】
図3は、第1実施例にかかる本発明のマルチ電極5を示しており、長方形の電極キャリア8を具え、この上に長方形の電極面が取り付けられている。この電極は、本実施例では、2つのアクティブ電極面を1つのグループ6とし、それぞれ3枚の参照電極面でなる2つのグループ7a、7bが、このアクティブ電極面のグループ6の両側に配置されている。このマルチ電極は、アクティブ電極面を検出部位すなわち患者の神経の上に直接配置するように患者に適用する。長方形の電極キャリアを神経の延在方向に沿って配置すると、個々の長方形の電極面が神経の延在方向と直交することになる。
【0042】
図4は、第2実施例にかかる本発明のマルチ電極5を示しており、より正方形に近い形状の電極キャリア8に、電極面8が離して配置されている。この第2実施例のマルチ電極は、3つのほぼ正方形のアクティブ電極面のグループ6と、それぞれ5つの四角形の参照電極でなる2つのグループ7a、7bを具えている。本実施例において、3つの電極面のグループはキャリア上で平行に、アクティブ電極面のグループが2つの参照電極面のグループの間に配置され、ここを神経の伸長方向に直接配置するよう構成されている。
【0043】
本発明のマルチ電極の図示しない第3実施例では、マルチ電極のキャリア8の構成が、それぞれ患者の検出部位4に宛がわれる2またはそれ以上のサブキャリアを具える。各サブキャリアは1またはそれ以上の互いに離れた電極面を具え、好ましくはアクティブ電極面は同じサブキャリアに配置されている。電極面の合計数は3以上となる。
【0044】
図5は、第4実施例にかかる本発明のマルチ電極5を示しており、個別に電極面が取り付けられる立ち上がり部を具える円形のキャリア8を具える。このマルチ電極は単一の、中心に配置されたアクティブ電極面6と、それぞれ3つの参照電極をもつ4つの参照電極面7a、7b、7c、7dのグループとを具え、これら4つのグループはアクティブ電極面の周囲にそれぞれ約90度をなす角度で配置されている。本実施例のキャリア面は例えば円形、半円形、半楕円形、部分的に長方形、部分的に正方形に延びていてもよい。別の実施例として、電極面はこのタイプの電極キャリアの凹部に取り付けられている。
【0045】
図5のマルチ電極は主に、例えば前胸部からの心電図や筋電図記録時に発生する一様に広がる信号の検出部位における信号記録に用いられるものである。
【0046】
本発明のマルチ電極のキャリアサイズは、マルチ電極の考え得る適用例に応じて変更可能であるが、図3に示す本実施例では例えば長さ約5cm、幅2.5−3cm、厚さ1−1.5cmの長方形である。電極面はキャリア凹部の底に取り付けられており、この凹部は例えば深さ10mm、長さ20mm、幅2−4mmである。電極面は凹部の両側に延在してもよい。あるいは、この電極面はキャリアの凸部に例えば接着剤で接着されており、この凸部は高さ約10−15mmまで、長さ約10mm、幅約1.5mmである。電極面はこの凸部の両側に延在してもよい。
【0047】
電極面の一部を絶縁材料でカバーして被覆してもよい。
【0048】
露出あるいは被覆された個々の電極面の寸法は実施例によるが、通常40−150mmの範囲である。しかしながら、電極面は数mmと小さくてもよいし、200mmより大きくてもよい。
【0049】
電極面を凹部の両側やキャリアの凸部の両側に延在させることにより、表面積が大きくなり、インピーダンスを低減することができる。
【0050】
隣り合う電極面間の距離、すなわち電極間距離はキャリアのサイズや電極面の寸法形状などの実施例によって異なるが、通常は1mm−2mmである。しかしながら、電極間距離を変化させると、アクティブ電極面および参照電極面のパッキングおよび/またはグループ化の組み合わせを変化させることができる。
【0051】
記録ペアの電極面間の距離は、例えば電極キャリアのサイズやアクティブ電極に対する参照電極の位置によって異なる。通常は12−20mmの間であるが、1つのマルチ電極において、これより短くても長くてもよい。対の記録電極を構成する電極面間の距離は変化させてもよいが、好ましくは5mm以下である。
【0052】
例えばゲルや水分吸収素材、塩水に浸したフェルトなどの導電材料を電極面に取り付け、電極面と皮膚を接触させるようにしてもよい。この取り付けは、例えば導電材料を凹部内にプレスしたり、凸部を覆ってからプラスチック片や適切に構成したOリングで保持するようにすることができる。
【0053】
キャリアおよび/または電極面に粘着剤を塗布して、電極が患者の皮膚に確実に取り付けられるようにしてもよい。
【0054】
電極面は、プラスチック、枠、空間などで互いに電気的に絶縁され、ケーブル内にシールドされた導体に個々に接続されており、これにより記録ペアで得られた信号が処理手段に供給される。
【0055】
キャリアの凹部は、キャリアの水平面から立ち上がる薄い、直立したエッジで区切られており、これにより当該凹部に配置される隣接する電極面の回路短絡が防止される。
【0056】
本発明のマルチ電極の別の実施例によれば、マルチ電極を薄型に構成して貼り付け式とし、患者の皮膚に粘着テープで取り付けるよう構成してもよい。このマルチ電極は、様々な電極面パターンが形成された半弾性成型樹脂の1またはそれ以上の薄い層で形成され、個々の層が絶縁層で隔てられている。1またはそれ以上の層をカットおよび/または重ねることにより、異なる設計のフラットなマルチ電極を得ることができる。
【0057】
本発明のマルチ電極の別の実施例では、先端に電極面または電極面の一部が構成された3本またはそれ以上の針をキャリアに設けている。このように滅菌したマルチ電極は患者の皮膚を貫通するよう構成される。
【0058】
マルチ電極において記録ペアからの信号は、マルチ電極に接続された処理手段に送られ、加法手段で加重され、これにより所望の改善された信号/ノイズ比が得られる。異なる記録ペアから記録すると極性が異なる場合がある。しかしながら、同じ極性の方が処理手段にとって好適であるため、加重の前にいくつかの記録の反転が行われる。
【0059】
電気刺激で生体電気信号を誘発し、これを多数の記録ペアで記録すると、例えば人口刺激(stimulus artefact)などの神経反応を起こす電気刺激信号が加法ユニットの飽和原因となり、記録に歪みが生じてしまう。これは、記録信号のいくつかを人口刺激の後に遅延させ反転することによって人口刺激を打ち消す遅延手段を設けることにより解消するものであり、したがって関連する人口刺激でなく神経反応のみを反転させるようにする。あるいは、加法ユニットに接続されたパラレル増幅器を電気刺激の間だけミュートするようにして、ミュート手段としてもよい。また、いくつかのケースでは、神経反応を加重の前に反転させる必要がある。
【0060】
図6は、1つのアクティブ電極面6と、2つの参照電極面7a、7bとを具える本発明の一実施例にかかるマルチ電極5の記録信号の処理方法を示す図である。患者の神経の上の皮膚における生体電気の電位差が、2つの記録ペア9a、9bで検出され測定される。これらの記録ペアは増幅・フィルタ手段10a、10bに接続されており、ここから反転・遅延手段11a、11bに出力信号が供給される。反転・遅延手段の出力信号は加法手段12に供給される。加重された信号は、その後、例えばパーソナルコンピュータやオシロスコープなどの表示手段13で表示される。
【0061】
このマルチ電極は、適切な機械的製造手段で製造することができ、その一部はマニュアル作業であってもよい。ほぼフラットなマルチ電極は、電極面が複数のパターンに形成された薄い層と非常に薄いプラスチックまたは他の絶縁材料とを例えば接着剤で接着させて製造することができる。
【0062】
このように、上述した互いに離された複数の電極面を具えるマルチ電極と、このマルチ電極で記録した信号のパラレル処理と、このマルチ電極と処理手段を具えるシステムと、これらの製造方法とにより、生体電気の電位差から派生する低出力の生体電気信号の記録を改良することができる。
【0063】
本発明は図示し上述した実施例に限定されるものではなく、添付のクレームの範囲内で自由に変更することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の検出部位(4)における生体電気の電位差記録を改善する互いに離れた電極面が設けられたキャリア(8)を具えるマルチ電極(5)において、前記互いに離れた電極面が、2またはそれ以上の記録ペア(9a、9b)に出力する1またはそれ以上のアクティブ電極面(6)および2またはそれ以上の参照電極面(7a、7b)を具え、前記アクティブ電極面(6)がそれぞれ、同じ検出部位(4)において前記生体電気の電位差を複数回取得する1以上の前記記録ペア(9a、9b)に接続されており、この記録ペアが、反転手段と加法手段(12)とを具え前記生体電気の電位差記録の信号/ノイズ比を改善しうるマルチ電極。
【請求項2】
請求項1にのマルチ電極において、前記アクティブ電極面(6)がキャリア(8)の中央部に配置されているマルチ電極。
【請求項3】
請求項2のマルチ電極において、前記参照電極面(7a、7b)が前記アクティブ電極面と前記キャリアの表面領域を画定している縁部との間に対称配置されているマルチ電極。
【請求項4】
請求項1のマルチ電極において、前記キャリア(8)が2またはそれ以上の別個のサブキャリアからなり、各サブキャリアが少なくとも1の互いに離れた電極面を具え、この電極面の合計が3以上であるマルチ電極。
【請求項5】
請求項1乃至4のマルチ電極において、前記アクティブ電極面(6)がいずれもほぼ同じ寸法形状であるマルチ電極。
【請求項6】
請求項1乃至5のマルチ電極において、前記参照電極面(7a、7b)がいずれもほぼ同じ寸法形状であるマルチ電極。
【請求項7】
請求項1乃至6のマルチ電極において、前記参照電極面(7a、7b)の寸法および/または形状が、前記アクティブ電極面(6)の寸法および/形状と実質的に異なるマルチ電極。
【請求項8】
請求項1乃至6のマルチ電極において、前記電極面がいずれもほぼ同じ寸法形状であるマルチ電極。
【請求項9】
請求項1乃至8のマルチ電極において、前記キャリア(8)が、表面に電極面が設けられる凸部を具えるマルチ電極。
【請求項10】
請求項9のマルチ電極において、前記電極面の1以上が前記キャリア表面の凸部の両側に延在しているマルチ電極。
【請求項11】
請求項1乃至8のマルチ電極において、前記キャリア(8)が、電極面が固定される凹部を具えるマルチ電極。
【請求項12】
請求項11のマルチ電極において、前記電極面の1以上が前記キャリアの凹部の両側に延在しているマルチ電極。
【請求項13】
請求項11または12のマルチ電極において、前記キャリアの凹部が、前記キャリア表面から垂直方向に立ち上がる縁部により画定されており、これにより隣り合う電極面との回路短絡が防止されるマルチ電極。
【請求項14】
請求項1乃至13のマルチ電極において、前記電極面の1以上に導電手段が接続されているマルチ電極。
【請求項15】
請求項1乃至14のマルチ電極において、前記キャリア(8)および/または電極面に、前記マルチ電極(5)を検出部位(4)に取り付ける粘着剤が設けられているマルチ電極。
【請求項16】
請求項1乃至8のマルチ電極において、前記キャリア(8)と電極面が、導電電極面のパターンが形成された1またはそれ以上の層で構成されているマルチ電極。
【請求項17】
請求項1乃至8のマルチ電極において、前記キャリア(8)が3以上の滅菌針を具え、各針の先端が電極面の少なくとも一部をなすマルチ電極。
【請求項18】
検出部位(4)における生体電気の電位差を示す信号の処理方法において、前記信号が請求項1乃至17のいずれかに記載のマルチ電極により記録され、前記検出部位でマルチ電極(5)の少なくとも2の記録ペア(9a、9b)で記録された信号を加重するステップを具える方法。
【請求項19】
請求項18の方法において、前記加重の前に前記信号の1以上を反転させるステップを具える方法。
【請求項20】
請求項18または19の方法において、1以上の信号を前記加重の前の反転の前に、誘発された反応の開始時から遅延させるステップを具える方法。
【請求項21】
請求項18乃至20の方法において、前記加重の前に1またはそれ以上の信号の少なくとも一部をミュートするステップを具える方法。
【請求項22】
請求項1乃至17のマルチ電極(5)の製造方法において、少なくともその方法の一部が手作業である方法。
【請求項23】
請求項1乃至17のマルチ電極(5)の製造方法において、少なくともその方法の一部が機械的製造手段により行われる方法。
【請求項24】
請求項22または23のマルチ電極(5)の製造方法において:
絶縁材料の薄い層を製造するステップと;
いくつかの層に電極面のパターンを形成するステップと;
前記層を重ね、固定し、接着するステップとを具える方法。
【請求項25】
1の検出部位(4)における生体電気の電位差を示す信号を記録するシステムにおいて、当該システムが請求項1乃至17のいずれかのマルチ電極(5)と、前記マルチ電極に接続された処理手段とを具え、当該処理手段が加法手段(12)と反転手段とを具えるシステム。
【請求項26】
請求項25の信号記録システムにおいて、前記処理手段が遅延手段を具えることを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項25または26の信号記録システムにおいて、前記処理手段がミュート手段を具えるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−508100(P2007−508100A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535302(P2006−535302)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001462
【国際公開番号】WO2005/037098
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(506130218)
【出願人】(506130263)
【Fターム(参考)】