説明

ミキシングベーン検査方法と検査装置

【課題】斜めに曲げられたベーンを高速で測定検査する。
【解決手段】格子空間に対向して4つの投光器を設ける。投光器から格子空間のベーン8に対して斜め方向に交差ラインレーザ光を投射してベーンの表面に投影する。ベーンのある格子空間を上方の第一撮像カメラで撮像する。画像処理手段で、ベーンの撮像画像から投影線上の複数の点について画像処理により三次元座標点を確定する。複数の三次元座標点から近似直線を求め、ベーンが平面であるか否かを判別する。ベーンが平面と判別できない場合には、投光器を上下動させて投影線がずれた複数の画像を得る。投影線から三次元座標点を確定し、最小二乗近似平面を算出して三次元座標点との差を求めてベーン表面の歪みや変形をも算出する。これらからベーンの傾斜角を含む寸法と位置を測定し、検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子炉燃料集合体の燃料棒を支持するための支持格子上で斜めに曲げられたミキシングベーンを非接触で自動検査するミキシングベーン検査方法と検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉に用いる燃料集合体は、上部ノズルと下部ノズルの間に複数の支持格子が所定間隔で配設され、計装用管及び複数の制御棒案内管が各支持格子と上部ノズル及び下部ノズルにそれぞれ固定されている。そして、各支持格子には多数の燃料棒が挿入されて、各格子空間内でディンプルとスプリングで挟持されている。
例えば図16に示すように、各支持格子1は、薄板帯状のストラップ2、2を格子状に交差させて構成され、各格子空間3内には各ストラップ2に設けられたスプリング4とディンプル5とが対向して突出して、燃料棒6を支持するようになっている。
そして、少なくとも一部の支持格子1には、各ストラップ2の上端部に設けられたミキシングベーン(以下、ベーンという)8が、支持格子1の格子上面部から折り曲げられてそれぞれの格子空間3内に傾斜して突出し、原子炉稼働時に燃料集合体内を流れる冷却材を攪拌して燃料棒6を冷却するようになっている。そのため、炉内の燃料棒6の温度を制御するために、各ベーン8は冷却材を攪拌、混合して温度分布を一様化するように、所定の角度で傾斜し適当な流水間隔で保持されていることが要求される。
【0003】
ところで、近年、ベーン8の形状は、支持格子1の核燃料冷却性能を高めるため、燃料捧6、6間に形成された冷却材の流路での流動混合性を向上させるための形状に変わりつつある。
例えば、特許文献1では、冷却材の圧力損失への影響が小さく、しかも優れた攪拌混合作用を呈するベーンが提案されている。この発明では、格子空間3内に折り曲げられたベーンは、ベーンの傾斜面の基点となる折り曲げ線K(図17参照)を格子空間のコーナ側を高くしてベーンを傾斜させている。
ベーン8はその位置及び折り曲げ方向を冷却材の撹拌が一方方向に偏らないように左右に混在している。そのため、ベーン8は図16の平面図に示すように8つの方向に折り曲げられている。
【0004】
一方、特許文献2では、ベーンの傾斜面の基点となる折り曲げ線が支持格子の上面即ちストラップの上端縁に沿って位置し、格子空間内に所定角度で折り曲げられている。この場合には、傾斜しているベーンを上面からみた投影画像を平面画像として得て、この平面画像上でのベーンの投影距離(長さ)を計測し、その投影距離でベーンの傾斜角が許容誤差範囲内にあるか否かを判別している。
【特許文献1】特開2000−28772号公報
【特許文献2】特開平9−61573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された支持格子の上面に対して傾斜した折り曲げ線で折り曲げられたベーンの場合には、安定した冷却効果を得るために、特許文献2記載のベーンのように単に傾斜するベーンの平面画像での距離Xによって概略折り曲げ角度を検査して調整するだけでは不十分であった。
このような傾斜した折り曲げ線を有するベーンを用いて、より安定した冷却効果を得るためには、特許文献2に示すように平面画像から投影距離を計測するベーンの検査だけではなく、ベーンの傾斜角を含む寸法も測定して検査する必要がある。
このようなベーンの傾斜角を測定する方法として例えば下記3つの手段が考えられる。第一の手段は単眼カメラを用いるものであるが、ベーンについて二次元方向の寸法しか測定できず、傾斜角は代替え測定となる。第二の手段は複眼カメラを用いるものであるが、金属面や無地の面測定は測定精度が安定せず、高精度の測定が難しい。第三の手段はスポットレーザ変位計/共焦点立体測定器を用いるものであるが、高速で測定できない。
そのため、従来のベーン検査装置では、これら傾斜した折り曲げ線を有するベーンを設けた多数の格子空間を備える支持格子の傾斜角を含む寸法について高速で安定して実用的な全数検査をすることは困難であった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて、斜めに曲げられたミキシングベーンの傾斜角を含む寸法や位置を高速で簡単に検査できるようにしたミキシングベーン検査方法と検査装置を提供することを目的とする。
また本発明の他の目的は、ミキシングベーンに歪みや変形があっても傾斜角を含む寸法、位置、表面歪みを測定できるようにしたミキシングベーン検査方法と検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるミキシングベーン検査方法は、複数のストラップを交差させてなる支持格子の格子空間内に、ストラップから折り曲げたベーンが傾斜して突出してなる燃料集合体の支持格子において、複数のラインレーザ投光器から支持格子に対して所定角度でラインレーザ光を投光してベーン上に複数の投影線として照射させ、該ベーンを支持格子に対向する方向から第一撮像カメラで撮像し、得られた撮像画像から各投影線上における複数の三次元座標点を画像処理によりそれぞれ確定し、複数の三次元座標点から各投影線の近似直線を求め、ミキシングベーンが平面であるか否かを判別し、ベーンが平面と判別した場合に当該ベーンの傾斜角を含む寸法と位置を測定するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、格子空間内にそれぞれ斜めに曲げられたベーン上にラインレーザ光による複数の投影線が投射された画像が撮像され、この撮像画像からベーン表面における複数の投影線上の三次元座標点(x、y、z)を確定でき、これら三次元座標点(x、y、z)から近似直線を求めて対比することでベーンが平面か否かを判別できる。平面と判別した場合、これら三次元座標点(x、y、z)に基づいてベーンの傾斜角を測定でき、ベーンの傾斜角を含む寸法と位置が容易に測定できる。また、ベーンの境界を求めて、その立体形状を確定できる。
本発明によれば、一枚の撮像画像からベーン表面の平面性と立体形状の合理性を評価でき、ベーンの表面が測定に必要な精度で平面であるか否かを判断できる。製品の支持格子のほとんどのベーンがこのワンショット画像から測定できるレベルに有るため、製品の支持格子は単一の撮像画像で測定でき、迅速な検査を行える。そのため、簡単且つ高速な検査で、ベーンの平面性だけでなく、傾斜角と寸法と位置を算出できる。
【0008】
また、各投影線の近似直線と立体形状の合理性からベーンが平面と判別できない場合には、ラインレーザ投光器のベーンに対する高さを変えてそれぞれ第一撮像カメラで撮像し、得られた複数の撮像画像に基づいてベーン上で位置が所定間隔でずれた複数の投影線を有する撮像画像を得て、複数の投影線上における複数の三次元座標点を画像処理によりそれぞれ確定し、複数の三次元座標点から最小二乗近似平面を算出して前記三次元座標点と対比してベーン表面の歪みや変形を算出して、傾斜角を含む寸法と位置を測定することを特徴とする。
ベーンに対するラインレーザ投光器の高さを変えて第一撮像カメラで順次撮像することで、ベーン上での各投影線が略平行な方向にずれた複数枚の投影画像を得られ、これら投影画像を画像処理によって各投影線が重ねられたベーンの撮像画像が得られ、この撮像画像から各投影線の三次元座標点(x、y、z)を演算して確定し、予め定めた基準画像データとの比較でベーンの歪みと変形を検出する。そして、ベーンの画像境界と投影線の各三次元座標点(x、y、z)から立体形状を確定し、ベーンの傾斜角を含む寸法、位置を測定する。
【0009】
本発明によるミキシングベーン検査装置は、複数のストラップを交差させてなる支持格子の格子空間内に、ストラップから斜めに折り曲げたベーンが傾斜して突出してなる燃料集合体の支持格子において、支持格子の格子空間に対して所定角度で斜め方向にラインレーザ光を投光してベーン上に複数の投影線として照射させる複数のラインレーザ投光器と、当該ベーンを支持格子に対向する方向から撮像する第一撮像カメラと、該第一撮像カメラで得た撮像画像からベーン上の複数の投影線上の複数の点について画像処理により三次元座標点を確定する三次元座標点確定手段と、複数の三次元座標点から最小二乗近似式で各投影線の近似直線を求める演算手段と、投影線の三次元座標点と近似直線との比較評価によりベーンの表面が平面であるか否かを判定する判定手段とを有する画像処理手段とを備え、判定手段でベーンの表面が平面と判定された場合、ベーンの傾斜角を含む寸法と位置を測定するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、複数のラインレーザ投光器から支持格子の格子空間に対して異なる方向から所定角度で投光して水平ラインレーザ光をベーン上に投影線として照射させて第一撮像カメラで撮像し、得られたベーンを含む格子空間の撮像画像からベーン上の複数の投影線の複数の点について画像処理により二次元座標点(x、y)を求めて三次元座標点(x、y、z)を確定し、これら複数の三次元座標点(x、y、z)から最小二乗近似式で近似直線を求めて判別手段でベーンの平面状態を判別し、平面と判定された場合にベーンの傾斜角を含む寸法と位置を測定できる。
【0010】
また判定手段でベーンの表面が平面と判定された場合、演算手段で当該ベーンの平面を求めると共にベーンの傾斜角度を測定し、撮像画像からベーンの画像境界を得て立体形状を確定し、ベーンの傾斜角を含む寸法と位置を測定することができる。
そのため、簡単且つ高速な検査で、ベーンの立体形状を確定して平面性と傾斜角と寸法と位置を算出できる。
【0011】
また、ラインレーザ投光器を第一撮像カメラの光軸方向に相対移動させる駆動部を更に備え、判定手段でベーンの表面が平面でないと判定された場合、ラインレーザ投光器を駆動部によって光軸方向に順次移動させて投影線がずれたベーンを第一撮像カメラで順次撮像して複数の撮像画像を得て、画像処理手段の三次元座標点確定手段によって複数の撮像画像からベーン上の複数の投影線上の複数の点について画像処理により複数の三次元座標点(x、y、z)を確定し、これら複数の三次元座標点(x、y、z)から演算手段によってベーンの傾斜平面を求め、その傾斜角を含む寸法と位置、立体形状、表面歪み等の少なくとも1つを測定するようにした。
本発明では、通常は単一の撮像画像で高速検査を行ってベーンの平面性を評価するが、単一の撮像画像でベーンの傾斜角を測定できるだけの平面であると判定できない場合または指示により詳細測定を求められた場合には、ベーンに対するラインレーザ投光器の高さを変化させて投影線をずらせた複数枚の撮像画像を撮像し、これらを画像処理によって1つのベーン上に複数の投影線を所定間隔で配列させた処理画像を得て、三次元座標確定手段でこれら投影線の三次元座標点(x、y、z)を確定して、これに基づいて最小二乗近似平面を求め、ベーンの立体形状を確定する。そして、複数の三次元座標点(x、y、z)と最小二乗近似平面との差からベーン表面の歪みや変形を抽出し、より精度の高いベーンの傾斜角を含む寸法、位置を測定することができる。
【0012】
また、第一撮像カメラと同じ光軸を有していて格子空間とディンプルを含む撮像画像を撮像する第二撮像カメラを更に備え、画像処理手段によって、第二撮像カメラで得た撮像画像から仮想の燃料棒位置を確定し、当該仮想の燃料棒と第一撮像カメラで得た撮像画像から演算したベーンとの相互の位置関係に基づいて格子空間内における仮想流水間隔を測定するようにしてもよい。
高速検査モードまたは詳細検査モードによって撮像したベーンを画像処理によって確定し、第二撮像カメラで撮像した撮像画像でディンプルを基準として仮想の燃料棒とベーンを書き込み、演算して仮想流水間隔を求めることができる。
その際、第一撮像カメラの光路外に第二撮像カメラを配設し、第二撮影カメラの撮像光路はハーフミラーを介して第一撮像カメラの撮像光路と重なるように設定しておき、第一撮像カメラではベーンにピントを合わせ、第二の撮像カメラではディンプルにピントを合わせてそれぞれ撮像し、これらの撮像画像から仮想の燃料棒とベーンとの仮想流水間隔を測定するようにしてもよい。第一及び第二撮像カメラの各1回の撮影でも仮想流水間隔を測定できるので測定を高速化できる。
【発明の効果】
【0013】
上述のように、本発明に係るミキシングベーン検査方法と装置は、1回の撮像による高速検査モードによって自動的に高速にベーンの傾斜角を含む寸法と位置を検査でき、そのためにベーンの全数検査を実用的レベルで行うことができる。
また、高速検査モードの検査によってベーンの平面度が悪いと判定された場合、または詳細検査指示がある所の測定には、投影線の位置をずらした複数回の撮像による詳細測定によってベーンの歪みや変形等をも自動的に測定できる。
また、本発明はベーン傾斜角修正のためのベーンの実態把握にも使える。この測定によりベーンの傾斜角や寸法や位置等の情報を抽出でき、これらの情報からベーンの形成状態が明瞭に分かり、補正すべきベーンの傾斜角等を立体的に算出できる。また、この情報を製造段階にフィードバックしてベーンの製造精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態によるベーン検査装置について添付の図1乃至図15を参照して説明する。図1は本発明の実施形態によるベーン検査装置の正面図、図2はA−A線断面図、図3はラインレーザ投光器セットの正面図、図4は平面図、図5は高速検査モードによる格子空間の撮像状態平面図、図6は詳細検査モードによる格子空間の平面図、図7は高速検査モードのフロー図、図8は高速検査モードにおけるベーンの再構成画像を示す図、図9はベーンの立体形状を示す図,図10はその測定結果の図、図11は詳細検査モードのフロー図、図12は詳細検査モードにおけるベーンの再構成画像を示す図、図13は立体形状を示す図、図14は画像処理で得られたベーンと仮想燃料棒との間の仮想流水間隔を示す格子空間の平面図、図15は画像処理手段の要部ブロック図である。
以下、実施の形態によるベーン検査装置について説明する。本実施形態で検査対象となる多数のベーン8は図16に示すものと同一であり、各ベーン8は概略同一形状であり、格子空間内への取り付け位置に応じて例えばベーン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g、8hとして異なる符号で識別されている。そして、各ベーン8は図17に示すように折り曲げ線Kで曲げられて格子空間3内に突出することになる。そして格子空間3内で燃料棒6がディンプル5とスプリング4とで挟持された状態で、燃料棒6とベーン8との間隙に流水空間10が形成される。
図16に示す例では、支持格子1の各格子空間3内で二つのベーン8が対向するストラップ2、2から対角方向の角部にそれぞれ傾斜して突出しており、平面視で格子空間3内にオーバーラップしている。
【0015】
図1及び図2に示すベーン検査装置20はこのような支持格子1のベーン8の傾斜角及び寸法を測定・検査するものである。ベーン検査装置20において、水平な基板21上に垂直方向に支持板19が連結されている。基板21上には、Xステージ22がX軸方向に移動可能に設けられ、Xステージ22の上にはYステージ23がY軸方向に移動可能に設けられている。これらXステージ22とYステージ23とでX−Y軸ステージ18を構成する。X軸とY軸は基板21の平面内での互いに直交する方向を示すものである。そして、Yステージ23上には、検査対象である支持格子1を載置するための固定台24が設けられている。
固定台24の下側には支持格子1を透過照明するための透過照明器25がYステージ23及び固定台24に干渉しないように取り付けられている。固定台24上の支持格子1を挟んで透過照明器25に対向する上方の位置には第一撮像カメラ27(撮像カメラ)が設けられている。
【0016】
また、支持格子1と第一撮像カメラ27との間には、支持格子1の上面(水平面)に対して例えば45°の傾斜角で格子空間3内の2つのベーン8,8にラインレーザ光を照射するラインレーザ投光器セット28が設けられている。図3及び図4に示すように、このラインレーザ投光器セット28は4つのラインレーザ投光器(以下、単に投光器という)29とこれら投光器29をそれぞれ支えるステージ30とを備えている。
ラインレーザ投光器セット28は、測定時に平面視における中心を測定対象の格子空間3の中心Oと一致させるように配設される。しかもラインレーザ投光器セット28,格子空間3の各中心は第一撮像カメラ27の光軸O1と重なるものとする。
ステージ30は略四角形枠形状とされ、それぞれの枠部30a〜30dの中央には投光器29が水平面に対して略45°の傾斜状態で取り付けられ、これらの投光器29は例えば符号29a、29b、29c、29dが付与されている(図4参照)。そして、各投光器29a〜29dから投射されたラインレーザ光31をそれぞれ符号31a、31b、31c、31dで示すものとすると、各ラインレーザ光31a、31b、31c、31dはそれぞれの投光器29a〜29dを支持する各枠部30a〜30dと略平行なライン状のレーザ光線として格子空間3の中心Oに向けて放射される。
これらラインレーザ光31a〜31dは、例えば図5に示すように2本のラインレーザ光31a、31bが格子空間3内の一方のベーン8aに照射されてその表面8abに投影線31A、31Bとして投影され、他の2本のラインレーザ光31c、31dが格子空間3内の他方のベーン8bの表面8abに照射されて投影線31C,31Dとして投影される。
【0017】
また、図1及び図2において、ラインレーザ投光器セット28は支持板19に固定された駆動部33によって上下動可能に支持されている。駆動部33は駆動機構33aを介してステージ30を上下動させるものであり、駆動部33によってラインレーザ投光器セット28を上下動させることで、各ベーン8,8に投影される投影線31A,31B、31C,31Dの位置をずらすことができる。
上述した第一撮像カメラ27は、このような格子空間3内のベーン8,8を撮像するものである。光軸O1上にはハーフミラー34が設けられており、ハーフミラー34の横方向には第二撮像カメラ35が支持板19に取り付けられている。そのため、第二撮像カメラ35の撮影光路の光軸O2はハーフミラー34で略直角に折り曲げられて光軸O1と重なって被写体である格子空間3へ向かうことになる。
第一及び第二撮像カメラ27,35はそれぞれテレセントリックな撮像レンズ27a、35aを先端に取り付けている。
【0018】
また、ラインレーザ投光器セット28において、略四角枠形状のステージ30の内側には、撮像対象の格子空間3を照射するためのリング照明器37が設けられている。リング照明器37は、支持板19に取り付けられた筒状部38の下端に支持されている。そして、リング照明器37と筒状部38は第一撮像カメラ27の撮影光束と干渉しないような内径寸法で略同軸に形成されている。
第一撮像カメラ27で撮像された撮像画像は図5に示すようなストラップ2とベーン8を含む一つの格子空間3が鉛直方向から撮像された画像となる。第一撮像カメラ27で得た撮像画像データと、X−Y軸ステージ18で得た位置データと、駆動部33で得た支持格子1に対する投光器29の高さデータとが1組の測定データとして出力され、画像処理手段39に入力して画像処理し、ベーン8の測定・検査を行う。画像処理手段39に入力した撮像画像や画像処理結果については、ディスプレイ40によって表示できる。
【0019】
画像処理手段39は、図15に示すように第一撮像カメラ27で撮像したベーン8を含む撮像画像の向きを確定して再構成してベーン8の画像境界を確定する画像再構成手段50と、撮像画像からベーン8上の投影線31A〜31Dの二次元座標(x、y)を抽出し、投光器29の高さ及びラインレーザ光31の投射角に基づきz画素(高さ)を含む三次元座標点(x、y、z)を確定する三次元座標点確定手段51と、三次元座標点(x、y、z)から最小二乗一次近似式で近似直線を求めたり、三次元座標点(x、y、z)から最小二乗近似平面を求めてベーン8の歪みや変形を演算する演算手段52と、メモリ53及びメモリ55とを備えている。更に、高速検査モードにおいて三次元座標点(x、y、z)と近似直線を対比してベーン8が平面と見なせるか否かを判別する等の判定手段54とを備えている。
また、画像処理手段39では、上述したベーン8の画像データと第二撮像カメラ35で撮像した格子空間3内のディンプル5、5を含む第二画像bとを画像処理して仮想燃料棒6Aや仮想流水間隔48a、48bを演算する手段を備えている。
【0020】
ここで、ベーン8、8に投影される各2本のラインレーザ光31a〜31dの投影線31A及び31Bと31C及び31Dはベーン8の表面8abでそれぞれ角度を持って交差投影される。そして、ベーン8の表面8abが測定に耐えられるレベルの平面と見なせれば、ラインレーザ投光器セット28を上下動させずに、最適な固定高さ位置でベーン8の傾斜角、寸法及び複数のベーン8,8の位置関係をワンショットの画像から測定できる。このような測定による検査を高速検査モードという。
一方、ベーン8に捩れや曲がり等があると、ベーン8を平面として測定する高速検査モードの測定だけでは傾斜角や寸法の測定精度が不十分であるため、より詳細な検査を必要とする。このような場合には、ラインレーザ投光器ユニット28を駆動部33によって鉛直上下方向に一定距離(ステップ)づつ移動させ、各ステップ毎に第一撮像カメラ27で格子空間3を撮影する。ステージ30の高さを変えることで、各ベーン8についてラインレーザ光31の投影線31A〜31Dが順次異なる位置に照射された複数枚の画像を撮像できる。そして、これら複数の撮像画像における投影線31A〜31Dを画像処理によって重ねたベーン8の撮像画像を得ることで、図6に示すように網目状の投影線31A〜31Dが順次投影されたベーン8の処理画像を得て、ベーン8の表面歪み、より高精度な傾斜角及び寸法を測定する。このような詳細な検査を詳細検査モードという。
【0021】
本実施の形態によるベーン検査装置20は上述の構成を備えており、次にベーン検査装置20の機器動作制御プログラムに基づいて、ベーンの検査方法を図7及び図11に示すフローチャートを中心に説明する。
最初に高速検査モードによるベーン測定方法について図7に示すフローチャートに沿って説明する。
先ず、図1及び図2に示すように、測定対象である支持格子1をX−Y軸ステージ18の固定台24にセットする。そして、Xステージ22、Yステージ23を適宜移動させて、検査対象となる格子空間3を所定高さ位置(初期位置)に保持されているラインレーザ投光器セット28と同軸の位置に持ち来たし静止させる(ステップ101)。
このような状態から、図3及び図4に示すように、4基の投光器29a〜29dからのラインレーザ光31a〜31dを検査対象の格子空間3に照射すると(ステップ102)、各ラインレーザ光31a〜31dは各投光器29a〜29dがそれぞれ支持されているステージ30の枠部30a〜30dと略平行な方向に線状に拡がって格子空間3の中心Oをめざす。例えば隣り合う2基の投光器29a、29bから射出する2本のラインレーザ光31a、31bは、図5に示す傾斜状態の一方のベーン8aに照射され、ベーン8aの表面8ab上で投影線31A、31Bとして投影される。また、他の投光器29c、29dから照射されるラインレーザ光31c、31dは他方のベーン8bの表面8abに投影線31C,31Dを投影する。
そして、各2本のラインレーザ光の投影線31A,31B、31C,31Dが照射された二つのベーン8a、8bを含む格子空間3を真上の第一撮像カメラ27により1ショットで撮影する(ステップ103)。撮像画像とラインレーザ投光器セット28の高さ位置とX−Y軸ステージ18のX,Y軸方向位置は画像処理手段39のメモリ55に記憶される。格子空間3を明瞭に撮像するため透過照明部25とリング照明器37の照明はそれぞれ適度な明るさに設定する。
【0022】
検査対象の格子空間3にあるベーン8は図16に示すように、ベーン8a、8b以外にベーン8c、8d、8e、8f、8g、8hの8方向に傾斜状態で配設されている。これら8種類、4対のベーン8、8のいずれかに対して4方向からのラインレーザ光31により各2本の投影線31A〜31Dが投影される。 なお、ベーン8a〜8dと異なる対角方向に設けた図16に示すような傾斜状態のベーン8e、8f(そして8g、8h)に対しては、例えば隣り合う2基の投光器29a、29dから射出する2本のラインレーザ光31a、31dが一方のベーン8eに照射され、ベーン8eの表面8ab上で投影線31A、31Dとして交差して投影される。他の投光器29b、29cから照射されるラインレーザ光31b、31cは他方のベーン8fの表面8abに投影線31B,31Cを交差状態で照射する。
画像処理手段39では、図5に示す撮像画像中の格子空間3を画像認識プログラムで割り出し、格子空間3を囲む4方向のストラップ2と8方向のいずれか二枚のベーン8を認識してその境界を割り出す。図5に示すベーン8a、8bの配置を例にとると、2つのベーン8a、8bを認識して向きを確定する(ステップ104)。画像再構成手段50において、2つのベーン8a、8bの画像を個別に切り取って図8に示す再構成画像として8方向のいずれかをなすベーン8の向きを同一方向に正規化する(ステップ105)。これによって向きの異なる二枚のベーン8a、8b(そして他の6種類のベーン8c、8d、8e,8f、8g、8h)を同一アルゴリズムで計測できる。
そして、三次元座標点確定手段51では、図8の再構成画像からベーン8aを認識し、ベーン8aの画像境界45を検知し確定する(ステップ106)。そのベーン画像境界45の範囲でX軸方向に縦線「Xi」を走査させ、二本の投影線31A、31Bを順次検知し、縦線Xiとの交差点を投影線31A,31Bの二次元座標点(x、y)として確定する(ステップ107)。次に、予め設定された投光器29の高さ位置から投影線31A,31Bの各二次元座標点(x、y)の高さ(z軸方向位置)を計算し、三次元座標点(x、y、z)を確定する(ステップ108)。
この場合、投光器29a、29bからのラインレーザ光31a、31bは支持格子1の上面(水平面)に対して平行で一定(例えば45°)の角度に照射されているから、各投影線31A,31Bの水平面内の各二次元座標点(x、y)から高さ方向の位置zを算出できる。演算手段52で、これらの三次元座標点(x、y、z)から、二本の投影線31A,31Bの近似直線31A′,31B′を最小二乗一次近似式で求める。
【0023】
最小二乗一次近似式で得た各近似直線31A′,31B′と投影線31A,31B上の各三次元座標点(x、y、z)との差の大きさと分布及び近似直線の交わりを評価し、判定手段54で各ベーン8aの表面を平面と認定する妥当性を判別する(ステップ109)。その差が(メモリ53に記憶させた)予め設定した基準値との比較で妥当性が低いと判定した場合はベーン8aの表面を平面と認定するには無理があるので、後述する詳細検査モードで詳細測定を行わせる(ステップ119)。
妥当性が高いと判定した場合にはベーン8aの表面8abを平面と見なし、二本の投影線31A,31Bの三次元座標点(x、y、z)から、ベーン8aの表面(投影面)を平面として、演算手段52において最小二乗法近似式でベーン8a(8b)の平面〔y=ax+bz+c〕を計算し、測定結果上の平面とする(ステップ110)。
【0024】
そして演算手段52において、ベーン8aの撮像画像から検知したベーン8aの画像境界45と、表面8abの測定結果の平面と、ベ−ン8aの厚さ(tとする)とから、ベーン8aの立体形状を計算する。これを図9の(a)と(b)で示す様にベーン8a、8bの立体形状の正面図、側面図としてディスプレイ40に表示する(ステップ111)。
これを図8の再構成画像クラスに逆変換して判定手段54で比較することで、ベーン8aの表面を平面と見なした不合理性が出ていないかを評価し(ステップ112)、不合理性が見られるときは後述する詳細検査モードでの詳細測定を行わせ(ステップ119)、この結果を反映して、必要に応じてベーン8aの表面を平面と認定する妥当性を評価するステップ109の判別パラメータを修正する。準備期段階では、強制的に詳細検査モードでの詳細測定を行わせ(ステップ119)、このデータベースを十分に集め、これを元にベーン8aの表面を平面とする妥当性を評価する判別パラメータを構築しておく。
判定手段54での評価結果が良好なら、これらのデータから図10に示す立体形状のベーン8aについて、演算手段52によってベーン8aの折り曲げ角度α1、折り曲げ角度β1、曲り幅L、最大高さHを算出して評価し、出力する。また、X−Y軸ステージ18の移動量を元に支持格子1の格子空間3の間隔及び配置についても測定する。これらの測定値を確定する(ステップ113)。
この検知及び測定されたデータを逆変換して、格子空間3の撮像画像上に上書きすると、図5と同様の構成となる。
そして、X−Y軸ステージ18をX-Y方向に移動して次に検査すべき格子空間3をラインレーザ投光器セット28と同軸の位置に移動させて、上述の処理を繰り返す。
【0025】
次に高速検査モードのステップ109またはステップ112において、高速検査モードによるベーン測定ではベーン8を平面として取り扱うことに妥当性がないと判断された場合、または詳細検査を指示された場合、詳細検査モードの検査を行う(ステップ119)。この詳細検査モードによるベーン測定方法について図11に示すフローチャートに沿って説明する。
詳細検査モードでは、判定手段54の判別結果に基づいて、ラインレーザ投光器セット28を駆動部33によって上下方向に所定距離毎にステップ移動させる。それぞれ1ステップ上下動した位置で、ラインレーザ光31a、31bと31c、31dが照射されたベーン8a、8bを含む検査対象の格子空間3を第一撮像カメラ27で撮像する(ステップ120)。1ステップ毎の各撮像画像で、ステージ30の高さが異なるために、各ベーン8a、8b上に映った投影線31A、31B、31C,31Dの位置が略等間隔にずれた画像になる。
これらの各撮像画像はステージ30の高さ及びX−Y軸ステージ18の位置と対応づけられて画像処理手段39のメモリ55に書き込まれる。この場合、ステージ30のステップ(上下動)の間隔は小さい方が多くの枚数を撮像でき、ベーン8a、8bの表面歪み及び変形の測定ポイントが撮像画像の枚数に比例して増え、細かい測定ができる。しかしながら、その場合、測定時間は増大していくので、要求される測定精度に合った適宜のステップ間隔を設定して検査速度を制御する。
【0026】
そして、ステージ30の高さを変えて得た複数の撮像画像について、画像処理手段39で順次図7に示す高速検査モードのステップ105〜108と同様の処理を行う(ステップ121)。
これによって、全ての撮像画像について、ベーン8の再構成画像を切り出して、各二本の投影線31A、31Bと31C、31Dを確定する。三次元座標点確定手段51において、撮像した投影線31A〜31Dが映っている全ての撮像画像からベーン8上における投影線31A〜31Dを抽出して、縦線Xiとの関係で投影線31A〜31Dの画素位置の二次元座標点(x、y)を確定する。図12は再構成画像中のベーン8a上に複数の撮像画像中の各投影線31A、31Bを書き込んだ合成撮像画像である。これにより、ベーン8a(8b)で、一方の投影線31Aに基づく近似直線がNf本、他方の投影線31Bに基づく近似直線がNs本、それぞれ確定する。これをベーン8の再構成画像から元の位置に逆計算して格子空間3の撮像画像のベーン8a、8bにプロットした画像が図6である。
【0027】
そして、三次元座標点確定手段51において、各画像毎に図8に準じた再構成画像からベーン8aの測定面内で、それぞれ抽出した投影線31A〜31Dの各二次元座標点(x、y)を使い、ラインレーザ光31a、31bの投影角と各画像撮影時のステージ30の高さから各二次元座標点(x、y)でのベーン8aの測定面の高さzを計算し、ラインレーザ光31a〜31dの投影線31A〜31Dの全画素の位置を三次元座標点(x、y、z)として確定する(ステップ121)。
演算手段52で、これら全画像の全三次元座標点(x、y、z)から最小二乗近似平面を求め、ベーン8の立体形状を確定する(ステップ122)。そして、最小二乗近似平面と全投影線31A〜31Dの全画素の三次元座標点(x、y、z)との差を求める(ステップ123)。これによってベーン8の歪みと変形を抽出して測定する(ステップ124)。
【0028】
図12に示すベーン8aの再構成画像で、ベーン8の表面8abと先端側面で投影線31A、31Bが屈曲している。ベーン8の先端側面はベーン8の表面8abに直角にできているので、ベーン8の表面8abの角度が決定すると厚さtを計算できる。この厚さデータを入れると図13(a)、(b)に示すベーン8の正面図と側面図からなる立体図を作成できる(ステップ125)。上述したベーン8の全画素の三次元座標点(x、y、z)と最小二乗近似平面との差を演算して得られたベーン8の表面8abの歪みと変形を図13に示す立体図に乗せると歪み及び変形の乗った実態図が得られる。また、撮像画像に正規化の逆計算をして貼り付けると図6の画像となる。
なお、歪みや変形のない理想形状寸法のベーン8を設計基準モデルとして予め設定してメモリ53に記憶しておき、これを図12の再構成画像及び図13の立体図に重ねてその差を算出することにより、設計基準モデルに対する測定したベーン8のズレ量を測定できる。
また、上述の高速検査モードと詳細検査モードはベーン8a、8bを有する格子空間3について説明したが、他の配置姿勢を備えたベーン8c、8d、8e、8f、8g、8hについても同様の手法を用いて測定・検査する。
【0029】
また、撮像画像に基づくベーン8の角度測定プログラムでは、高速検査モードにより、または高速検査モード及び詳細検査モードで撮像した撮像画像からベーン8の表面8abを測定する。得られたデータから画像処理手段39で図10に示すベーン8aの立体形状を描き、折り曲げ角度α1、折り曲げ角度β1、曲り幅L、最大高さHを演算手段52で算出し、出力する。そして、 ベーン8の傾斜角度をディスプレイ40で表示する。
また、詳細検査モードにおいても、同様にして画像処理手段39で得られたベーン8の詳細なデータから高速検査モードに対応した、折り曲げ角度α1、折り曲げ角度β1、曲り幅L、最大高さH等を演算手段52で算出して表示できる。
【0030】
上述したベーン検査装置20によるベーン検査方法によれば、各ベーン8について高速検査モードで表面8abが平面と判定された場合には、非接触且つ高速で各ベーン8の傾斜角、寸法、位置を1ショットの撮像画像に基づいて高速で測定・検査できる。
それ以外の場合には更に詳細検査モードを用いることで、ベーン8の表面を全面に渡る多数の表面データにより、捻れや歪み、傾斜角、寸法、位置等を非接触でより高精度に測定・検査できる。これにより、不良品を排除できて信頼性の高い検査が高速でできる。
しかも、これらの測定結果からより詳しい製品データを製造工程にフェードバックでき、より安定した信頼性が高い製品を作ることができ、製品も保証できる。
【0031】
次に、上述の実施の形態における高速検査モードまたは詳細検査モードによって得られたベーン8に関連して、格子空間3内に仮想設置した仮想燃料棒6Aとベーン8との間隙に形成される仮想流水間隔の測定について、図1、図2及び図14により説明する。
図1において、第一撮像カメラ27で格子空間3のベーン8a、8bに焦点を合わせて撮像し、測定・検査を行うと同時に、第二撮像カメラ35では、ハーフミラー34を介して格子空間3内のディンプル5に焦点を合わせて撮像する。この場合、第二撮像カメラ35は第一撮像カメラ27と同一の光軸を有し、同じ倍率で撮像する。しかも、必要な絞りでテレセントリックに撮像できるように調整しておく。必要なら、第二撮像カメラ35と第一撮像カメラ27の撮像画像の位置関係を校正しておく。
このとき、透過照明部25で格子空間内のディンプル5を下方から必要な明るさの透過光で照明する。また支持格子1の上方からはリング照明器37で格子空間3内を必要な明るさで照明する。
【0032】
第二撮像カメラ35で得た撮像画像データは画像処理手段39に入力され、撮像画像から格子空間3内の二カ所のディンプル5、5が画像処理手段39で認識される。そして、画像処理手段39では、図14に示すように、認識したディンプル5、5の位置を基準として仮想燃料棒6Aをスプリング4、4との間に挟持させた場合にディンプル5、5上に仮想燃料棒6Aが接する仮想接触点5a、5bを割り出し、仮想燃料棒6Aの画像における仮想中心Onを求める。次にこの二つの仮想接触点5a、5bに接する仮想燃料棒6Aの中心Onと外周線Rを、撮像画像を表示用に複製した第二画像bに書き出す。
他方、上述の実施の形態で説明したように、第一撮像カメラ27で撮像され、画像処理手段39で画像処理されたベーン8a、8bの立体図とストラップ2の境界(格子空間3の境界)とを図5または図6の所定位置に戻して鉛直方向から見たベーン8a、8bの平面形状8a′、8b′を位置合わせて第二画像bに書き込む。
【0033】
そして、第二画像bの座標系における仮想燃料棒6Aの仮想中心Onと外周線Rとベーン8a′、8b′の仮想燃料棒6A側の境界とを計算し、仮想燃料棒6Aとベーン8a′、8b′との間隙である仮想流水間隔48a、48bを認識し、その最大値、最小値、平均値及び長さを求める。この仮想流水間隔48a、48bの最大値、最小値を含めて、妥当性を評価し、出力する。このような第二画像をディスプレイ40に表示する。その際、第二画像bに、二つの仮想流水間隔48a、48bのエリアを色で識別してもよい。
【0034】
第一及び第二撮像カメラ27,35のそれぞれまたは同時の各1回の撮影で仮想流水間隔を測定できるので測定を高速化できる。測定精度または撮像明るさ条件が許せば、第一撮像カメラ27の被写界深度を深くして撮像し、この画像からディンプル5とベーン8の位置データを割り出して測定することも可能となる。
また、より精度良く測定する時は、詳細測定時などに、第二撮像カメラ35の駆動部35bで第二撮像カメラ35を駆動して格子空間3内の深さ方向の各の部材(ディンプル5やスプリング4)の撮像をすることで、より高精度な測定ができる。より時間が許せば、ベーン8の詳細測定後、第一撮像カメラ27の駆動部27bで第一撮像カメラ27を駆動して格子空間3内の深さ方向の各部材(ディンプル5やスプリング4)の撮像をも同一カメラで撮像することで、より精度の高い測定もできる。
通常、これら各カメラ27、35の駆動部27b、35bは調整や特別測定に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態によるベーン検査装置の正面図である。
【図2】図1に示すベーン検査装置のA−A線断面図である。
【図3】図1に示すラインレーザ投光器セットの拡大正面図である。
【図4】ラインレーザ投光器セットの拡大平面図である。
【図5】高速検査モードで、格子空間のベーンに2本の投影線が投影された状態を示す図である。
【図6】詳細検査モードで、格子空間のベーンに異なる高さ位置から投影された投影線を画像処理で合成した図である。
【図7】高速検査モードの処理フローを示す図である。
【図8】高速検査モードにおけるベーンの再構成画像を示す図である。
【図9】画像処理手段で再構成したベーンの立体形状を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図10】ベーンの立体形状で示す測定結果の図である。
【図11】詳細検査モードの処理フローを示す図である。
【図12】詳細検査モードにおけるベーンの再構成画像を示す図である。
【図13】画像処理手段で再構成したベーンの立体形状を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図14】画像処理によって得られたベーンと仮想燃料棒との間の仮想流水間隔を示す格子空間の平面図である。
【図15】画像処理手段の要部ブロック図である。
【図16】支持格子の格子空間を示す図である。
【図17】図16に示すベーンの(a)正面図と(b)側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 支持格子
2 ストラップ
3 格子空間
5 ディンプル
6A 仮想燃料棒
8,8a,8b,8c,8d,8e,8f,8g,8h ミキシングベーン(ベーン)
18 X−Y軸ステージ
20 ベーン検査装置
27 第一撮像カメラ
28 ラインレーザ投光器セット
29 投光器
33 駆動部
30 ステージ
35 第二撮像カメラ
39 画像処理手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のストラップを交差させてなる支持格子の格子空間内に、前記ストラップから折り曲げたミキシングベーンが傾斜して突出してなる燃料集合体の支持格子において、
複数のラインレーザ投光器から支持格子に対して所定角度でラインレーザ光を投光してミキシングベーン上に複数の投影線として照射させ、
該ミキシングベーンを支持格子に対向する方向から第一撮像カメラで撮像し、得られた撮像画像から前記各投影線上における複数の三次元座標点を画像処理によりそれぞれ確定し、
前記複数の三次元座標点から各投影線の近似直線を求め、ミキシングベーンが平面であるか否かを判別し、
ミキシングベーンが平面と判別した場合に当該ミキシングベーンの傾斜角を含む寸法と位置を測定するようにしたことを特徴とするミキシングベーン検査方法。
【請求項2】
前記各投影線の近似直線からミキシングベーンが平面と判別できない場合には、前記ラインレーザ投光器の前記ミキシングベーンに対する高さを変えてそれぞれ第一撮像カメラで撮像し、
得られた複数の撮像画像に基づいてミキシングベーン上で位置がずれた複数の投影線を有する撮像画像を得て前記複数の投影線上における複数の三次元座標点を画像処理によりそれぞれ確定し、
前記複数の三次元座標点から最小二乗近似平面を算出して前記三次元座標点と対比してベーン表面の歪みや変形を算出して、傾斜角を含む寸法と位置を測定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のミキシングベーン検査方法。
【請求項3】
複数のストラップを交差させてなる支持格子の格子空間内に、前記ストラップから斜めに折り曲げたミキシングベーンが傾斜して突出してなる燃料集合体の支持格子において、
支持格子の格子空間に対して所定角度で斜め方向にラインレーザ光を投光してミキシングベーン上に複数の投影線として照射させる複数のラインレーザ投光器と、
前記ミキシングベーンを支持格子に対向する方向から撮像する第一撮像カメラと、
該第一撮像カメラで得た撮像画像からミキシングベーン上の複数の投影線上の複数の点について画像処理により三次元座標点を確定する三次元座標点確定手段と、前記複数の三次元座標点から最小二乗近似式で各投影線の近似直線を求める演算手段と、前記投影線の三次元座標点と近似直線との比較評価によりミキシングベーンの表面が平面であるか否かを判定する判定手段とを有する画像処理手段とを備え、
前記判定手段でミキシングベーンの表面が平面と判定された場合、ベーンの傾斜角を含む寸法と位置を測定するようにしたことを特徴とするミキシングベーン検査装置。
【請求項4】
前記判定手段でミキシングベーンの表面が平面と判定された場合、前記演算手段で当該ミキシングベーンの平面を求めると共にミキシングベーンの傾斜角度を測定し、前記撮像画像からミキシングベーンの画像境界を得て立体形状を確定して、ミキシングベーンの傾斜角を含む寸法と位置を測定するようにした請求項3に記載のミキシングベーン検査装置。
【請求項5】
前記ラインレーザ投光器を第一撮像カメラの光軸方向に相対移動させる駆動部を更に備え、
前記判定手段でミキシングベーンの表面が平面でないと判定された場合、前記ラインレーザ投光器を前記駆動部によって光軸方向に順次移動させて投影線がずれたミキシングベーンを前記第一撮像カメラで順次撮像して複数の撮像画像を得て、前記画像処理手段の三次元座標点確定手段によって複数の前記撮像画像からミキシングベーン上の複数の前記投影線上における複数の三次元座標点を確定し、
当該複数の三次元座標点から前記演算手段によってミキシングベーンの傾斜平面を求め、その傾斜角を含む寸法と位置、立体形状、表面歪み等の少なくとも1つを測定するようにした請求項3または4に記載のミキシングベーン検査装置。
【請求項6】
前記第一撮像カメラと同じ光軸を有していて前記格子空間とディンプルを含む撮像画像を撮像する第二撮像カメラを更に備え、
前記画像処理手段によって、前記第二撮像カメラで得た撮像画像から仮想の燃料棒位置を確定し、当該仮想の燃料棒と前記第一撮像カメラで得た撮像画像から演算したミキシングベーンとの相互の位置関係に基づいて格子空間内における仮想流水間隔を測定するようにした請求項3乃至5のいずれかに記載のミキシングベーン検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−337142(P2006−337142A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161335(P2005−161335)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000176796)三菱原子燃料株式会社 (11)
【Fターム(参考)】