説明

ミシンのモータ制御回路

【課題】 モータの回転数の検出を安価で、かつ、安全性を向上した方法で実現できること。
【解決手段】 電源回路1からの出力をモータ3に供給する駆動回路4の駆動出力回路4Aと、駆動回路4のオン・オフ制御信号を生成する駆動制御回路4Bとの間に、また、モータ3の両端の逆起電圧を検出する電圧検出回路2Aと、モータ3の両端に接続した電圧検出回路2Aから信号を得て検出制御信号とする検出制御回路2Bとの間に、信号伝達が可能で、かつ、電気的絶縁を持たせた。したがって、電源回路1は通常商用電源から供給される電力をモータ3に供給しても、駆動回路4及び逆起電圧検出回路2内で、駆動制御回路4Bと駆動出力回路4A、電圧検出回路2Aと検出制御回路2Bとが互いに絶縁しているので、電力側の回路と弱電制御系回路が接触する可能性がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン用のモータの回転数制御を行うミシンの制御回路に関するもので、特に、ミシン用のモータから、そのモータの回転数を検出し、希望する回転速度に一致させるミシンのモータ制御回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンのモータ制御回路の基本的な技術思想は、特許文献1、特許文献2に掲載のように、フォトインタラプタとエンコーダディスク(100パルス/1回転)とを組み付け、パルス幅の計測、パルス数の計測によって速度を検出する方法を採用している。
【0003】
また、従来のミシンのモータ制御回路において、モータの逆起電力による電圧値から速度を求める方法の基本的な技術思想も、特許文献3に掲載されている。
【0004】
これらの基本的なモータの速度検出方法は共に公知である。
【特許文献1】特開平8−150279
【特許文献2】特開2004−321771
【特許文献3】特開2000−354395
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1及び特許文献2等のパルス幅、パルス数の計測によって回転速度を検出する方法は、フォトインタラプタ、エンコーダディスク等の構成部品が必要であり、コスト的に高価とならざるを得ない。また、パルス幅計測用の精度の高いクロックパルスで駆動されるカウンタも必要となり、低速度から高速度まで広い領域で速度を検出するには、それを計数するカウンタ及びメモリの容量が大きくなり、高速処理回路及びメモリが必要不可欠となる。そして、仮に、高速処理機能を有するカウンタ及び高速処理回路を有していても、フォトインタラプタの出力として整形されたパルスが到来しないと実速度が正確に計測できない。
【0006】
また、特許文献3等のモータの逆起電圧から回転数を求める方法は、商用電源からなる構成のため、制御回路は商用電源から電気的に絶縁する絶縁回路の採用が必要となる。したがって、二重絶縁構造(クラスII)の規格等が要求されない日本国内であれば、廉価に
製造できるものの、二重絶縁構造の規格が適用される外国においては、採算上問題がある。
【0007】
そして、特許文献3等のミシンのモータ制御回路は、ミシンのモータ速度制御が周囲の環境(温度、ミシントルク等)に依存されるため、前者のパルス幅、パルス数の計測によって回転数を検出する方法よりも回転数制御の安定化に劣る。しかし、部品点数が少ない構成で実現できるから、安価な構成とすることができるという利点がある。また、電圧検出のためリアルタイムで計測ができるという利点もある。
【0008】
そこで、本発明は、これらの特徴を考慮してなされたもので、モータの回転数の検出を安価で、かつ、安全性を向上した方法で実現できるミシンのモータ制御回路の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1のミシンのモータ制御回路は、電源回路からの出力を駆動回路によってオン・オフ制御してモータを回転させ、そのときのモータの逆起電圧(逆起電力)を逆起電圧検出回路で検出し、前記駆動回路に前記逆起電圧検出回路で検出した実測速度と回転数指示回路に設定された設定速度との差をフィードバックして速度制御するミシンのモータ制御回路において、前記駆動回路は駆動制御回路及び駆動出力回路からなリ、また、前記逆起電圧検出回路は電圧検出回路及び検出制御回路からなると共に、前記電源回路からの出力をスイッチング回路を介して前記モータに供給する前記駆動出力回路と前記モータの逆起電圧を検出する前記電圧検出回路は、前記駆動出力回路のスイッチング回路をオン・オフ制御する制御信号を生成する駆動制御回路と前記電圧検出回路で検出された逆起電圧を制御対象の変量とする検出制御回路との間が、信号伝達が可能で、かつ、電気的に絶縁されているものである。
【0010】
ここで、上記回転数指示回路は、ミシンの駆動源としてのモータの回転数を指示する機能を有する可変抵抗器、テンキー、切替スイッチ等の入力手段を介して入力する構成とすることができる。そして、前記電源回路は、モータに電力を供給する半波整流回路、全波整流回路または他の回路構成と共に設定することにより交流回路とすることができる。
【0011】
また、前記駆動回路は、前記電源回路からの出力をスイッチング回路のオン・オフ制御によって、前記回転数指示回路からの指示に従った電力を前記モータに供給するように制御するものであり、交流回路の所定の繰り返し半波のタイミングのみでオン制御した直流とすることができる。半波整流回路、全波整流回路の出力を、所定のタイミングでオン制御する回路とすることができる。
【0012】
そして、前記逆起電圧検出回路は、前記電源回路からの出力を前記駆動回路によってオフ状態にし、モータの端子間電圧によって逆起電圧を検出するものであるが、本発明を実施する場合には、モータの回転を検出する専用のコイルから回転検出することもできる。
【0013】
更に、前記比較回路は、前記回転数指示回路から指示した回転数と、前記逆起電圧検出回路の検出回路から得た回転数とを比較し、例えば、その比較結果が実際の回転数が指示した回転数よりも少ないとき、前記駆動回路に実際の回転数を高めるべくフィードバックするものであり、アナログ的、ディジタル的に処理する回路とすることができる。
【0014】
更にまた、前記駆動回路は、駆動制御回路及び駆動出力回路からなリ、前記駆動出力回路は前記電源回路からの出力をスイッチング回路を介して前記モータに供給する回路であり、前記駆動制御回路は前記駆動出力回路のスイッチング回路をオン・オフ制御する制御信号を生成する回路である。
【0015】
そして、前記逆起電圧検出回路は、電圧検出回路及び検出制御回路からなリ、前記電圧検出回路は前記モータの逆起電圧を検出する回路であり、前記検出制御回路は前記電圧検出回路で検出された逆起電圧を制御対象の前記モータの速度に比例した変量として用いる回路である。
【0016】
加えて、前記信号伝達が可能で、かつ、電気的に絶縁されるとは、前記駆動回路の電源回路からの出力を前記モータに供給する電力側の回路と、前記駆動回路のオン・オフ制御信号を生成する回路及び逆起電圧検出回路の逆起電圧を検出する回路との間に、電気的導通が形成できないように、電気的不導体からなる絶縁物を介在していることを意味する。
【0017】
請求項2のミシンのモータ制御回路の前記信号伝達が可能で、かつ、電気的絶縁は、発光素子及び受光素子からなるフォトカプラとして、両者間に絶縁を持たせたものである。
【0018】
具体的には、前記駆動回路の一部である駆動制御回路で生成されたオン・オフ制御信号は、駆動制御回路の発光素子から、モータの電流を決定するスイッチング回路を駆動する駆動出力回路の受光素子に光結合されている。また、前記モータの逆起電圧は、直接モータに検出回路を接続し、前記検出回路の発光素子と検出制御回路の受光素子とが光結合されている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1にかかるミシンのモータ制御回路においては、電源回路からの出力をモータに供給する駆動回路の駆動出力回路と、前記駆動回路のオン・オフ制御信号を生成する駆動制御回路との間に、信号伝達が可能で、かつ、電気的絶縁を持たせたものである。また、前記モータの逆起電圧は、前記モータの両端の逆起電圧を検出する電圧検出回路と、前記モータの両端に接続した電圧検出回路から信号を得て検出制御信号とする検出制御回路との間に信号伝達が可能で、かつ、電気的絶縁を持たせたものである。
【0020】
したがって、電源回路は通常商用電源から供給される電力をモータに供給しても、駆動回路及び逆起電圧検出回路内の駆動制御回路と駆動出力回路、電圧検出回路と検出制御回路とが互いに絶縁されているので、電力側の回路とマイコン等の制御系回路が接触する可能性がなくなる。また、構成部品が格別増加するものではなく、電子部品の増加のみで対応できるから、廉価に製造できる。
【0021】
請求項2にかかるミシンのモータ制御回路においては、前記電気的絶縁をフォトカプラとすることにより、廉価にしかも確実な絶縁を両者間に持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態のミシンのモータ制御回路について、図を用いて説明する。
【0023】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態のミシンのモータ制御回路の構成を示す概念図、図2は本発明の実施の形態のミシンのモータ制御回路の構成を示す具体的な回路構成図である。また、図3は本発明の実施の形態のミシンのモータ制御回路の各回路信号の波形図であり、図4は本発明の実施の形態のミシンのモータ制御回路の逆起電圧検出回路のモータ回転数とモータ逆起電圧信号との特性図である。
【0024】
図1及び図2において、電源回路1は、直流電動機からなるモータ3に電力を供給する商用電源11及びその整流回路10からなる。この整流回路10としては、全波整流回路、半波整流回路の使用が可能である。本発明を実施する場合には、整流回路の使用に限定されるものではなく、後述する駆動回路4に交流のスイッチング特性を持たせれば、交流回路の使用も可能となる。
【0025】
逆起電圧検出回路2は、電源回路1からの出力を駆動回路4によってオフ状態のタイミングでモータ3の逆起電圧を検出する回路であり、具体的には、モータ3の逆起電圧を光として検出する電圧検出回路2Aと、電圧検出回路2Aで検出された逆起電圧を制御対象のモータ3の実回転数N(実際の回転数)に比例する変量(アナログ値)を得る検出制御回路2Bからなる。そして、モータ3は、直流電動機でPWM信号等の制御電流によって回転数制御が可能なものである。
【0026】
また、駆動回路4は、電源回路1からの出力をオン・オフ制御によって回転数指示回路6からの指示に従った電力をモータ3に供給するように制御するもので、特定のタイミングでオン・オフ制御することができる。この駆動回路4は、電源回路1からの出力をスイッチング素子MOSを介してモータ3に供給する駆動出力回路4Aと、駆動出力回路4Aのスイッチング素子MOSをオン・オフ制御する光制御信号を生成する駆動制御回路4Bからなっている。
【0027】
なお、ここでスイッチング素子MOSは、本発明のスイッチング回路を構成するもので、他にトランジスタ等の素子、アナログゲート等のゲートとすることもできる。
【0028】
回転数指示回路6は、ミシンの駆動源としてのモータ3の目標回転数を可変抵抗器、テンキー、切替スイッチとして入力する入力手段を含む回路である。また、比較回路5は、回転数指示回路6から指示した目標回転数と、逆起電圧検出回路2から得た実回転数Nとを比較し、その比較結果が実際の目標回転数が指示した回転数よりも低いとき、駆動回路4に実回転数Nを高めるべく制御量をフィードバックし、また、その比較結果が目標回転数よりも実回転数Nが高いとき、駆動回路4に実回転数Nを抑えるべく制御量をフィードバックさせる回路である。
【0029】
更に、前述の電源回路1からの出力をスイッチング素子MOSを介してモータ3に供給する駆動出力回路4Aと、モータ3の逆起電圧を検出する電圧検出回路2Aとは、駆動出力回路4Aのスイッチング素子MOSをオン・オフ制御する制御信号を生成する駆動制御回路4B及び電圧検出回路2Aで検出された逆起電圧を制御対象のモータ3の回転速度に比例する変量として得る検出制御回路2Bとの間が、フォトカプラ7,8によって信号伝達が自在となっており、かつ、電気的に絶縁された結合状態となっている。
【0030】
更に、主に、図2の本実施の形態のミシンのモータ制御回路の具体的構成に基づき説明する。
【0031】
図2において、電源回路1は、商用電源11及びその全波整流回路12からなり、モータ3の一方の端子にその電力を供給している。また、モータ3の他方の端子は、駆動出力回路4Aのスイッチング素子MOSに接続されており、スイッチング素子MOSがオンのときに、電力が供給されるようになっている。
【0032】
なお、光結合している受光素子8b、抵抗R1、スイッチング素子MOSは、駆動出力回路4Aを構成し、光結合している受光素子8bの信号で、抵抗R1の端子電圧を変更させ、スイッチング素子MOSがスイッチング動作を行うように構成されている。
【0033】
また、モータ3の逆起電圧は、モータ3の端子間に接続された制限抵抗R2と直列接続された発光素子7aの光量として検出される。なお、これらモータ3の端子間に接続された制限抵抗R2と直列接続された発光素子7aは、モータ3の逆起電圧を発光素子7aの光量として検出する電圧検出回路2Aを構成する。
【0034】
発光素子7aは、受光素子7bと共にフォトカプラ7を構成し、発光素子7aの発光は、受光素子7bで検出され、受光タイミングに応じた電流がコンデンサC1に充電される。受光タイミングとは、駆動回路4の出力をオフにしたとき、即ち、比較回路5の出力が“H”になったとき、ベース抵抗R7を介してトランジスタTR2をオンとしたタイミングのときのみ、受光素子7b、トランジスタTR2、コンデンサC1と放電抵抗R3との並列回路に電流が流れ、コンデンサC1の充電は受光素子7bの出力に依存する。なお、コンデンサC1の充電は、放電抵抗R3を介して放電される。
【0035】
したがって、受光素子7b、トランジスタTR2、コンデンサC1と放電抵抗R3の並列回路からなる回路は、電圧検出回路2Aで検出された逆起電圧を制御対象のモータ3の実回転数Nに比例する変量とする検出制御回路2Bを構成している。コンデンサC1の電圧は、比較回路5として機能するマイクロプロセッサのアナログ入力に接続されており、そこでAD変換され、ディジタル処理される。
【0036】
そして、駆動出力回路4Aの受光素子8bは、トランジスタTR1と抵抗R4と直列接続された発光素子8aからの光信号を受光するように光結合されている。なお、この発光素子8aと受光素子8bはフォトカプラ8を構成する。トランジスタTR1はプルアップ抵抗R5及びベース抵抗R6に接続されており、比較回路5として機能するマイクロプロセッサの比較出力が"L"になったとき、トランジスタTR1がオンし、発光素子8aを発光させ、また、比較回路5の比較出力が"H"になったとき、トランジスタTRがオフし、発光素子8aが発光を停止する。
【0037】
ここで、トランジスタTR1と抵抗R4と直列接続された発光素子8a、トランジスタTR1のプルアップ抵抗R5及びベース抵抗R6は、駆動制御回路4Bを構成する。
【0038】
因みに、比較回路5の比較出力が"L"になったとき、トランジスタTR1がオンし、発光素子8aが発光し、受光素子8bによって抵抗R1の電圧降下により、スイッチング素子MOSがオンとなる。同時に、比較回路5の比較出力が"L"になったとき、トランジスタTR2はオフし、発光素子7aの発光はコンデンサC1の充電に無関係となる。比較回路5の比較出力が“H”になったとき、トランジスタTR1がオフし、発光素子8aを消灯し、スイッチング素子MOSがオフとなる。同時に、比較回路5の比較出力が“H”になったとき、トランジスタTR2はオンし、発光素子7aの発光はコンデンサC1の充電に寄与される。
【0039】
回転数指示回路6は、ミシンの駆動源としてのモータ3の目標回転数を指示する機能を有するテンキーを入力手段として含む回路である。比較回路5は、アナログ入力端子を具備するマイコンからなり、コンデンサC1の電圧のディジタル値と回転数指示回路6から入力した目標回転数のディジタル値とをディジタル比較し、その比較結果が回転数指示回路6から入力した目標回転数よりも実回転数Nが低いとき、駆動回路4に実回転数Nを高めるべく比較回路5の比較出力の"H"、“L”の制御量をフィードバックし、また、その比較結果が回転数指示回路6から入力した目標回転数よりも実回転数Nが高いとき、駆動回路4に実回転数Nを抑えるべく比較回路5の比較出力の"H"、“L”の制御量をフィードバックする。
【0040】
比較回路5の入力となっている抵抗R0、コンデンサC0は、電源回路1の波形と駆動回路4の出力のタイミングを一致させるためのタイミング回路である。
【0041】
このタイミング回路は、比較回路5をマイコン等で構成する場合には、自己の電源電圧から検出することもできる。また、電源回路1の整流回路のリップル率を少なくすることにより、省略することもできる。
【0042】
次に、本実施の形態のミシンのモータ制御回路動作について、波形を用いて説明する。
【0043】
電源回路1からは、全波整流によって図3(a)に示す出力波形が得られる。回転数指示回路6により目標回転数を入力する。回転数指示回路6で入力された目標回転数は、比較回路5に入力される。また、モータ3には、図3(b)に示すモータ3の端子電圧が発生する。このモータ3の端子電圧は、制限抵抗R2を介してフォトカプラ7の発光素子7a側へ供給され、かつ、モータ3に電力が加えられていないときを選択することにより、モータ3の実回転数Nに応じた逆起電圧をフォトカプラ7の受光素子7b側に与えることができる。
【0044】
したがって、逆起電圧検出回路2により、モータ3の実回転数Nに応じたコンデンサC1のモータ逆起電圧信号eが比較回路5に入力される。このコンデンサC1のモータ逆起電圧信号eは、図4に示すように、ミシンのモータ3の実回転数Nに応じて、低速回転時は低い電圧、高速になるほど高い電圧となる。このモータ逆起電圧信号eはモータ3の実回転数Nとして与えられる。
【0045】
ここで、回転数指示信号として与えられる目標回転数と、モータ逆電圧起信号から求めた実回転数Nとの比較を比較回路5で行うことにより、ミシンのモータ3を目標回転数に引き込むために、比較回路5でその出力が決定され、駆動回路4から図3(c)に示すモータ駆動信号が出力される。このモータ駆動信号により、モータ3の回転数を制御して、一定の回転数(目標回転数)とすることができる。なお、図3(c)に示すモータ駆動信号は、タイミングT1が“H”でオフ出力、タイミングT2が“L”でオン出力となる。
【0046】
モータ逆起電圧信号eは、モータ3の端子間に発生する電圧を、フォトカプラ7の発光素子7aと受光素子7bを介して、トランジスタTR2がオンのタイミングのみ充電された並列接続されたコンデンサC1と放電抵抗R3のアナログ電圧として現れ、比較回路5のアナログ端子に入力されている。この並列接続されたコンデンサC1と放電抵抗R3のモータ逆起電圧信号eは、図4に示すように、モータ3の回転数に応じて、低速回転時は低い電圧、高速になるほど高い電圧となる。
【0047】
ここで、高速回転時は、逆起電圧は大きくなり、フォトカプラ7の発光素子7a側の電流は多くなり、フォトカプラ7の受光素子7b側の電流も大きくなり、並列接続されたコンデンサC1と放電抵抗R3の並列接続された電圧は高くなる。逆に、低速回転時は、逆起電圧は小さくなり、フォトカプラ7の発光素子7a側の電流は少なくなり、フォトカプラ7の受光素子7b側の電流も少なくなり、並列接続されたコンデンサC1と放電抵抗R3の電圧は低くなる。即ち、図3(d)に示すタイミングtの繰り返しの積分値によって、モータ3の実回転数Nが出力される。
【0048】
コンデンサC1のモータ逆起電圧信号eは、比較回路5に入力され、そこで回転数指示回路6で入力された目標回転数と比較され、比較回路5から駆動回路4を介して図3(c)に示すモータ3の実回転数Nを所望の目標回転数にすべくモータ駆動信号が出力される。即ち、モータ駆動信号は、駆動制御回路4BのトランジスタTR1、フォトカプラ8、スイッチング素子MOSと伝達され、スイッチング素子MOSを図3(c)に示すモータ駆動信号でオン・オフ制御し、モータ3への電力の供給を制御し、結果、モータ3の回転数を制御する。ここで、図3の(c)のT1期間中はスイッチング素子FETがオフであり、T2期間中はスイッチング素子MOSがオンとなる。したがって、モータ3の端子間の電圧は、図3(b)のようになる。
【0049】
前述の逆起電圧検出回路2は、スイッチング素子MOSがオフしている図3(c)のT1期間は、モータ3の回転維持状態によってモータ逆起電圧が発生し、図3(d)のt期間の積分値だけ、この電圧を読み取り、ミシンのモータ3の実回転数として回転速度が読み取られる。
【0050】
ここでフォトカプラ7,8は、電圧検出回路2A及び駆動出力回路4Aと検出制御回路2B及び駆動制御回路4Bとを絶縁する構造とすることにより、欧州のクラスIIの絶縁構
造への対応、検出制御回路2B及び駆動制御回路4Bの安全性の向上、安価なミシンの制御回路が実現できる。特に、フォトカプラ7,8を使用することによって、比較的低い電圧を使用する検出制御回路2B及び駆動制御回路4Bを絶縁しながら信号のみ伝達することが可能となる。
【0051】
上記実施の形態のミシンのモータ制御回路は、ミシンの駆動源となるモータ3の回転数を指示する回転数指示回路6と、モータ3に電力を供給する電源回路1と、電源回路1からの出力をオン・オフ制御によって回転数指示回路6からの指示に従った電力をモータ3に供給するように制御する駆動制御回路4B及び駆動出力回路4Aからなる駆動回路4と、電源回路1からの出力を駆動回路4によってオフ状態のときにモータの逆起電圧を検出する電圧検出回路2A及び検出制御回路2Bからなる逆起電圧検出回路2と、回転数指示回路6で指示した目標回転数と逆起電圧検出回路2から得た実回転数Nとを比較し、その比較結果を駆動回路4にフィードバックする比較回路5とを具備し、電源回路1からの出力をスイッチング素子MOSを介してモータ3に供給する駆動出力回路4Aとモータ3の逆起電圧を検出する電圧検出回路2Aは、駆動出力回路4Aのスイッチング素子MOSをオン・オフ制御する制御信号を生成する駆動制御回路4B及び電圧検出回路2Aで検出された逆起電圧を制御対象のモータ3の実回転数Nに比例する変量として用いる検出制御回路2Bとの間が、信号伝達が可能で、かつ、電気的に絶縁されているものである。
【0052】
上記実施の形態のミシンのモータ制御回路は、電源回路1からの出力をスイッチング素子MOSを介してモータ3に供給する駆動出力回路4Aとモータ3の逆起電圧を検出する電圧検出回路2Aと、駆動出力回路4Aのスイッチング素子MOSをオン・オフ制御する制御信号を生成する駆動制御回路4B及び電圧検出回路2Aで検出された逆起電圧を制御対象のモータ3の実回転数Nに比例する変量として用いる検出制御回路2Bとの間に、信号伝達が可能で、かつ、電気的に絶縁されているフォトカプラ7,8を接続したものである。したがって、信号伝達が可能で、かつ、電気的に絶縁されているフォトカプラ7,8によって、検出制御回路2B及び駆動制御回路4B、比較回路5等のマイコン等を絶縁する構造が維持でき、欧州のクラスIIの絶縁構造への対応、検出制御回路2B及び駆動制御
回路4Bの安全性の向上、安価なミシンの制御回路が実現できる。
【0053】
上記実施の形態においては、信号伝達が可能で、かつ、電気的に絶縁されている機能を、フォトカプラ7,8でなしているが、本発明を実施する場合には、電磁石とホール素子等の磁気センサの対とすることができる。勿論、分離した発光素子と受光素子として構成することもできる。
【0054】
上記実施の形態においては、スイッチング回路としてスイッチング素子MOSを使用しているが、本発明を実施する場合には、アナログゲート等のゲート回路及びトランジスタ等の半導体素子の使用が可能である。
【0055】
上記実施の形態のミシンのモータ制御回路は、比較回路5としてマイコン(マイクロプロセッサ)を使用しているが、積極的にAD変換回路、比較回路5、回転数指示回路6は、マイコン内の処理とすることができる。また、マイコン内処理とした場合には、自己でタイミングを得ている信号は外部から入力する必要がなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、ミシン用のモータの回転数制御を行うミシンの制御回路として説明したが、本発明はミシン用に限定されるものでなく、一般のモータについても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は本発明の実施の形態のミシンのモータ制御回路の構成を示す概念図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態のミシンのモータ制御回路の構成を示す具体的な回路構成図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態のミシンのモータ制御回路の各回路信号の波形図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態のミシンのモータ制御回路の逆起電圧検出回路のモータ回転数とモータ逆起電圧信号との特性図である。
【符号の説明】
【0058】
1 電源回路
2 逆起電圧検出回路
2A 電圧検出回路
2B 検出制御回路
3 モータ
4 駆動回路
4A 駆動出力回路
4B 駆動制御回路
5 比較回路
6 回転数指示回路
7,8 フォトカプラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンの駆動源となるモータの目標回転数を指示する回転数指示回路と、
前記モータに電力を供給する電源回路と、
前記電源回路からの出力をオン・オフ制御によって前記回転数指示回路からの指示に従った電力を前記モータに供給するように制御する駆動回路と、
前記電源回路からの出力を前記駆動回路によってオフ状態のときに前記モータの逆起電圧を検出する逆起電圧検出回路と、
前記回転数指示回路で指示した目標回転数と前記逆起電圧検出回路から得た実回転数とを比較し、その比較結果を前記駆動回路にフィードバックする比較回路とを具備するミシンのモータ制御回路において、
前記駆動回路は駆動制御回路及び駆動出力回路からなり、また、前記逆起電圧検出回路は電圧検出回路及び検出制御回路からなると共に、前記電源回路からの出力をスイッチング素子を介して前記モータに供給する前記駆動出力回路と前記モータの逆起電圧を検出する前記電圧検出回路は、前記駆動出力回路のスイッチング回路をオン・オフ制御する制御信号を生成する駆動制御回路及び前記電圧検出回路で検出された逆起電圧を制御対象の前記モータの実回転数に比例する変量として制御量を処理する検出制御回路との間が、信号伝達が可能で、かつ、電気的に絶縁されていることを特徴とするミシンのモータ制御回路。
【請求項2】
前記信号伝達が可能な電気的絶縁は、フォトカプラとしたことを特徴とする請求項1に記載のミシンのモータ制御回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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