説明

ミシンの生産管理装置

【課題】複数のグラフの各情報を相互に対応づけてどのグラフを表示していても他のグラフの情報と合わせて全ての情報を容易に知ること。
【解決手段】縫製終了数を所定の単位時間毎の縫製終了数の棒グラフとして表示部21に表示するか、回転速度情報を経過時間対回転速度の折れ線グラフとして表示するかを切り替える切り替え指令を入力する操作手段20と、縫製終了数及び回転速度情報をそれぞれ所定の区分単位毎に区分位置を設定する設定手段20と、棒グラフ又は折れ線グラフの表示箇所上の任意の箇所をタッチすることにより、そのタッチされた各グラフ部分に対応する区分位置を認識する認識手段11と、任意の箇所のタッチ後、表示部のグラフを切り替え表示すると共に、切り替え後のグラフの表示における区分位置に対応する部分を他部分と識別して表示部に表示させる表示制御手段11と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンの生産管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縫製開始からの経過時間によるミシンの主軸の回転速度の変化、一定の時間内における縫製終了枚数、終了したロット等を記録し、その情報をそれぞれグラフ表示するミシンの縫製記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
これらのグラフは操作パネル等に表示され、管理者は、表示されたグラフにより作業者のミシンの稼働状況を把握することができ、当該作業者に対して所定の指導を行うことでミシンの稼働率の向上を図ることができる。
【特許文献1】特公平3−10357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の情報を表示する各グラフは、それぞれ別個に表示され、操作パネル上で表示の切り替え入力を行うことにより、知りたい情報を表示するグラフに切り替えることができる。
しかし、表示されたグラフでの所定の時刻における情報を知りたい場合、時間軸をスクロールする等により表示されているグラフに関する情報は操作パネル上に容易に表示することができるが、表示されていないグラフでの同時刻における情報の対応関係を容易に知ることができなかった。
そのため、グラフ毎に知りたい情報を抽出して整理し直す必要があり、情報管理に手間がかかっていた。
【0004】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、複数のグラフの各情報を相互に対応づけてどのグラフを表示していても他のグラフの情報と合わせて全ての情報を容易に知ることができるミシンの生産管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ミシンの生産管理装置において、ユーザに報知する情報が表示される表示部と、この表示部に重ねて配置され、タッチにより入力が行われる入力部と、を有する表示入力手段と、縫製が開始又は終了するたびに検出されるタイミング信号に基づいて、前記タイミング信号の発生時刻を特定する時間データを記憶する時間情報記憶手段と、前記時間情報記憶手段に記憶された時間データに基づいて、所定の単位時間経過毎の縫製の終了数を算出する縫製終了数算出手段と、縫製を行う際のミシンの主軸モータの回転速度情報を検出する回転速度検出手段と、前記回転速度検出手段により検出された回転速度情報を前記時間データに対応させて記憶する速度情報記憶手段と、操作により、前記縫製終了数算出手段により算出された縫製終了数を前記所定の単位時間毎の縫製終了数の棒グラフとして前記表示部に表示するか、前記速度情報記憶手段に記憶された回転速度情報を経過時間対回転速度の折れ線グラフとして表示するかを切り替える切り替え指令を入力する操作手段と、前記縫製終了数算出手段により算出された縫製終了数及び前記回転速度情報に対しそれぞれ所定の区分単位毎に区分位置を設定する設定手段と、前記表示部に表示されている棒グラフ又は折れ線グラフの表示箇所上の任意の箇所をタッチすることにより、そのタッチされた箇所に対応する区分位置を認識する認識手段と、前記任意の箇所のタッチ後、前記操作手段の操作により、前記表示部のグラフを切り替え表示すると共に、切り替え後のグラフの表示における前記認識手段により認識された区分位置の対応部分を他の部分と識別して前記表示部に表示させる表示制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、表示部に表示されている棒グラフ又は折れ線グラフの表示箇所上の任意の箇所をタッチすることにより、認識手段はそのタッチされた箇所に対応する区分位置を認識する。任意の箇所がタッチされた後、操作手段の操作によりグラフの表示の切り替えが入力されると、表示制御手段は、表示部のグラフを切り替え表示すると共に、切り替え後のグラフの表示における認識手段により認識された区分位置に対応する部分を他の部分と識別して表示部に表示させる。
これにより、どのグラフに切り替えてもタッチした区分位置に対応する情報が識別可能に表示されるので、複数のグラフの各情報を相互に対応づけてどのグラフを表示していても他のグラフの情報と合わせて全ての情報を容易に知ることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のミシンの生産管理装置において、縫製におけるロット構成情報とオペレータ特定情報の少なくとも一方を入力する入力手段を有し、前記時間情報記憶手段には、前記ロット構成情報と前記オペレータ特定情報の少なくとも一方が、前記時間データとともに記憶され、前記設定手段は、前記区分を、縫製枚数単位とするか、ロット単位とするか、オペレータ単位とするのかの少なくとも何れか二つから一つを選択可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、設定手段による区分の設定の方法を選択することができるので、縫製の種類に適した区分に設定することができ、汎用性の高いミシンとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、どのグラフに切り替えてもタッチした区分位置に対応する情報が識別可能に表示されるので、複数のグラフの各情報を相互に対応づけてどのグラフを表示していても他のグラフの情報と合わせて全ての情報を容易に知ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、設定手段による区分位置の設定の方法を選択することができるので、縫製の種類に適した区分に設定することができ、汎用性の高いミシンとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係るミシンの生産管理装置の最良の形態について詳細に説明する。
<ミシンの生産管理装置の構成>
図1に示すように、ミシンの生産管理装置1(以下、生産管理装置1という。)は、ミシン10と操作パネル20とにわたって設けられている。
ミシン10は、電源スイッチ2のオンにより通電される主軸モータ3と、主軸モータ3の回転駆動がベルト4を介して伝達される主軸と、その主軸の回転駆動により上下動する針棒5と、針棒5に交換可能に備えられるミシン針6と、針棒5(ミシン針6)の下方において被縫製物としての布を送る布送り機構7と、ミシン10を操作するためのペダル8と、ミシンの各部を制御する制御装置11(図2参照)が内部に収容された制御ボックス9等を備えている。また、ミシン10には、有線又は無線の回線(信号線)により操作パネル20が接続されている。
【0012】
図2に示すように、ミシン10は、制御ボックス9に収容された制御装置11と、ミシン10の各部に対して操作指示の入力を行う各操作スイッチ13と、各部を動作させる際に用いられる各種アクチュエータ15、主軸モータ3の回転速度情報を検出する回転速度検出手段としての速度センサ16、ペダル8の操作位置を電気信号に変換してCPU11aに出力するペダルセンサ17等を備えている。
【0013】
制御装置11は、ミシン10や操作パネル20の動作を制御するためにプログラムの実行や演算処理を行うCPU11aと、CPU11aの作業エリアとなるRAM11bと、各プログラムが記憶されたROM11cと、書き換え可能なデータが記憶されるEEPROM11dと、を備えている。
制御装置11には、インターフェース11eが設けられて操作パネル20と接続され、操作パネル20との間でデータや検出信号等のやりとりができる。具体的には、制御装置11は、縫製が終了する毎に終了信号を、インターフェース11eを介して操作パネル20に送信する。また、制御装置11は、縫製が開始又は終了する毎に検出されるタイミング信号を、インターフェース11eを介して操作パネル20に送信する。
【0014】
ミシン10は、ペダル8の操作に基づきペダルセンサ17から速度指令信号が出力されると、主軸モータ3が回転駆動して、針棒5(ミシン針6)が上下動し、布送り機構7が所定の送りピッチで布送りすることにより、縫製が実行される。なお、縫製は、各種操作スイッチ13からの入力信号や、ROM11cやEEPROM11dに記憶された縫製データや、操作パネル20で設定されたデータに基づき、主軸モータ3や各種アクチュエータ15が制御されて、縫製が行われる。
【0015】
EEPROM11dには、縫製が開始または終了する毎に検出されるタイミング信号に基づいて、タイミング信号の発生時刻を特定する時間データとしてタイマー25により計時した時刻が記憶されている。すなわち、EEPROM11dは、時間情報記憶手段として機能する。
また、縫製時には速度センサ16により主軸モータ3の回転速度情報が検出され、検出された回転速度情報は回転速度データとしてEEPROM11dに記憶される。ここで、回転速度情報は、時間データに対応させて記憶される。すなわち、EEPROM11dは、速度情報記憶手段として機能する。
【0016】
EEPROM11dには、縫製に関する縫製条件が記憶される。ここで、縫製条件とは、縫製工程ごとに決められた縫製パターンの識別番号、各縫製パターン内における針数、縫製パターン、各縫製パターン内における返し縫の針数、各縫製パターン内における糸切りの回数、ミシンのオペレータの識別コード、縫製時間等である。すなわち、EEPROM11dは、縫製条件記憶手段として機能する。
【0017】
EEPROM11dには、ロット構成情報とオペレータ特定情報の少なくとも一方が、時間データとともに記憶されている。
【0018】
また、上述の縫製条件記憶手段及び時間情報記憶手段として機能するEEPROM11dにそれぞれ記憶される縫製条件及び時間データは、例えば、図4のように、縫製時間の経過と共に順に記憶される。この例では、縫製条件としては、ミシン固有のID、操作するオペレータのID、ロットの識別コード、回転速度情報が記憶されている。時間データとしては、糸切りソレノイド14を作動させるためにCPU11aにより出力される糸切り信号がタイミング信号として使用されその発生時刻が記憶されている。また、ミシンの起動開始時刻やミシンを停止させた時の時刻の情報が記憶されている。
【0019】
ROM11cには、EEPROM11dに記憶された回転速度情報を、縫製開始からの経過時間対回転速度の折れ線グラフとして表示部21に表示させる速度表示制御プログラムが記憶されている。
【0020】
ROM11cには、EEPROM11dに記憶された時間データに基づいて、所定の単位時間経過毎の所定の縫製の終了数を算出する縫製終了数算出プログラムが記憶されている。すなわち、CPU11aが縫製終了数算出プログラムを実行することにより、制御装置11は、縫製終了数算出手段として機能する。
なお、縫製終了数とは、所定の縫製が終了した毎に計数される数量であり、必ずしも所定の縫製が終了した被縫製物の縫製枚数とは一致せず、例えば、一つの被縫製物において同一パターンの複数の縫い目を形成する場合などは、各パターンの縫い目の形成の終了数毎に計数される数量である。
【0021】
ROM11cには、縫製開始から予め定められた所定の時間経過毎の縫製終了数(縫製終了数算出プログラムから算出される)を経過時間対縫製終了数の棒グラフとして表示部21に表示するピッチタイム表示制御プログラムが記憶されている。
【0022】
ROM11cには、縫製に関するロット情報が記憶されている。ここで、同一の縫製条件でまとめて同種の製品を生産する場合の生産単位をいい、縫製の種類毎にロット数が記憶されている。
表示部21に表示されている棒グラフ、折れ線グラフの表示箇所上の任意の箇所をタッチすることにより、そのタッチされた箇所に対応する区分位置を認識する認識プログラムが記憶されている。すなわち、CPU11aが認識プログラムを実行することにより制御装置11は認識手段として機能する。
【0023】
ROM11cには、操作パネル20の任意の箇所のタッチ後、表示部21のグラフを切り替え表示すると共に、切り替え後のグラフの表示における認識された区分位置の対応部分を他の部分と識別して表示部21に表示させる表示制御プログラムが記憶されている。すなわち、CPU11aが表示制御プログラムを実行することにより制御装置11は表示制御手段として機能する。
【0024】
ROM11cに上記のプログラムが記憶されていることにより、表示部21には、縫製終了数算出プログラムにより算出された終了数を縦軸にとり、事前に定められた単位時間毎の経過時間を横軸にとったピッチタイムモニタの棒グラフ(経過時間対縫製終了数の棒グラフ)と、EEPROM11dに記憶された回転速度情報を縦軸にとり、経過時間を横軸にとったソーイングレコーダの折れ線グラフ(経過時間対回転速度の折れ線グラフ)とを表示させることができる。
【0025】
図2に示すように、操作パネル20は、ユーザに報知する情報の液晶表示を行う表示部21と、表示部21に重ね合わされて配置され、タッチにより入力が行われる入力部としてのタッチスイッチ22と、を有する表示入力手段としてのタッチパネル23と、タイマー25等を備えている。
図4に示すように、タッチスイッチ22は、表示部21に表示されているグラフを切り替える切替スイッチ22aと、タッチされたグラフの区分縫製の詳細な内容を表示部21にポップアップ表示させるチェックスイッチ22bと、を備えている。
操作パネル20は、操作により、算出された縫製終了数を所定の単位時間毎の縫製終了数の棒グラフとして表示部21に表示するか、EEPROM11dに記憶された回転速度情報を経過時間対回転速度の折れ線グラフとして表示するかを切り替える切り替え指令を入力する操作手段として機能する。
操作パネル20は、算出された縫製終了数及び回転速度情報に対しそれぞれ所定の区分単位毎に区分する区分位置を設定する設定手段として機能する。ここで、操作パネル20は、区分単位を、縫製終了数単位とするか、ロット単位とするか、オペレータ単位とするのかの少なくとも何れか二つから一つを選択可能に構成されている。
操作パネル20は、縫製におけるロット構成情報とオペレータ特定情報の少なくとも一方を入力する入力手段として機能する。
【0026】
操作パネル20の表示部21への表示は、例えば、ソーイングレコーダ、ピッチタイムモニタ、進捗管理の三種類に分けられ、EEPROM11d内では、表示の種類毎にデータが整理されている。
ソーイングレコーダは、図4及び図5に示すように、縫製開始からの経過時間と各時間帯での主軸モータ3の回転数とを対応づけて表示するものであり、それを表示するためのデータは、図4に示すように、縫製条件となるミシンID、オペレータID等に加え、各時間帯での主軸モータ3の回転速度情報(1000rpm、1500rpmなど)により構成されている。なお、ここでは、前記設定手段が、区分位置を設定する際の区分単位は、縫製枚数単位となっており、糸切りが終了した時刻が区分位置となり、データは、糸切りの終了時刻で区分される。この糸切り情報としては、糸切りが行われた時刻が時間データが記憶されている。
ピッチタイムモニタは、図6,図7及び図8に示すように、単位時間毎の縫製終了枚数を棒グラフで表示したものであり、それを表示するためのデータは、図8に示すように、縫製条件となるミシンID、オペレータID等に加え、各縫製物の縫製が終了して糸切りが終了したときの時間データにより構成されている。なお、表示されるデータに関わらずデータを区分するための区分単位がは、共通に設定されるからここでも、糸切りの終了時刻が区分位置として設定され、縫製終了枚数のデータは、糸切りの終了時刻で区分される。
進捗管理は、図9及び図10に示すように、ロット毎の所要時間、縫製枚数等を表示するものであり、それを表示するためのデータは、図9に示すように、縫製条件となるミシンID、オペレータID等に加え、各縫製物の縫製が終了して糸切りが終了したときの時間データにより構成されている。なお、ここでも、データの区分単位は、糸切り終了時刻となる。
このように、ソーイングレコーダの折れ線グラフ、ピッチタイムモニタの棒グラフ及び進捗管理の各表示おいて、糸切り終了時の時刻である時間データによってデータが分割されているため、相互の情報管理が容易になる。
【0027】
ここで、ピッチタイムモニタの棒グラフの縦軸は、単に各所定時間内における縫製終了数の総数を表すのではなく、各所定時間内における縫製終了順に対応している。
また、ソーイングレコーダの折れ線グラフが表示部21に表示された際に、ユーザにより折れ線グラフ上がタッチされると、CPU11aは速度表示制御プログラムを実行することにより、タッチされた折れ線グラフの箇所に対応する縫製条件をタッチパネル23の表示部21上に表示する。
また、進捗管理画面zが表示部21に表示された際に、ユーザにより横バーグラフ21fのいずれかの位置にタッチされると、CPU11aは、そのタッチされた位置に対応する縫製終了数を表示窓22kに表示する(図9参照)。
【0028】
操作パネル20は、インターフェース26を介してミシン10と接続され、ミシン10との間でデータや検出信号等のやりとりができる。
操作パネル20は、インターフェース27を介してパソコン28と接続され、ユーザはパソコン28から操作パネル20のデータ管理をすることができる。
操作パネル20は、インターフェース29を介して操作パネル20に着脱自在の外部記録媒体30(例えば、メモリーカード等)と接続され、ユーザは外部記録媒体30に記録されたデータを制御装置11のEEPROM11dに記憶させたり、制御装置11から外部記録媒体30の内容を直接読み出すこともできる。さらに、必要なデータを外部記録媒体30に記録して持ち出すことができる。
【0029】
<各表示への切り替え処理>
次に、CPU11aにより実行される制御装置11の各表示画面の切り替え処理について説明する。なお、ここでは、操作パネル20の表示部21には、ソーイングレコーダ、ピッチタイムモニタ、進捗管理のうちの何れかが表示されていることを前提とする。
図3に示すように、CPU11aは、操作パネル20へのタッチがあったか否かを判断する(ステップS1)。ここで、CPU11aが、操作パネル20へのタッチがあったと判断した場合(ステップS1:YES)、画面の接触位置付近に現在表示中であるソーイングレコーダ、ピッチタイムモニタ、進捗管理の何れかのグラフを表示する画素があるか否かを判断する(ステップS2)。そして、CPU11aが、画面の接触位置付近にグラフを表示する画素があると判断した場合(ステップS2:YES)、CPU11aは、認識プログラムの実行により、現在表示されているグラフにおけるタッチされた箇所に対応するの表示部21上の位置情報を求(ステップS3)、C求めた位置情報をもとに、その位置を含んでいる区分位置を認識し、EEPROM11dに記憶させる(ステップS4)。次いで、CPU11aは、CPU11aが表示制御プログラムを実行することにより、EEPROM11dに記憶させた区分位置に対応する部分の表示部21の表示を周囲と異なる表示色に変えて識別して表示させる(ステップS5)。
例を挙げて説明すると、例えば、図4に示すように、表示部21にソーイングレコーダの折れ線グラフが表示されている場合に、ユーザが矢印で示す箇所Aにタッチした場合、CPU11aは、操作パネル20上のタッチした箇所Aと折れ線グラフを形成する画素との距離が所定の範囲内(事前に設定し、EEPROM11dに記憶しておく)にあるので、CPU11aは、EEPROM11d内に記憶された回転速度の計測データの中から対応する回転速度の計測データを特定し、抽出する。図4の場合、タッチした箇所に対応する回転速度の計測データ11kとしての主軸モータ3の回転速度(回転数)は5000rpmである。この場合、CPU11aは、回転速度(回転数)5000rpmの計測データからEEPROM11dへの格納順に回転速度の計測データを遡り、回転速度(回転数)3000rpm、回転速度(回転数)1000rpm、ミシン起動情報、ミシン停止情報、・・・のように区切り(区分位置)となる糸切り情報11jを発見するまで回転速度の計測データを遡って検索する。
【0030】
CPU11aは、糸切り情報11jが発見されると、次いで、糸切り情報11jからEEPROM11dに格納された順に計測データを検索していき、次に新しい、又は最新の区切り(区分位置)11mを発見するまで回転速度の計測データを検索する。
そして、糸切り情報11mの検索中、CPU11aは次の糸切り情報11mを発見したか否かを判断し、CPU11aが糸切り情報11mを発見したと判断した場合、CPU11aは、EEPROM11dに記憶されている糸切り情報11jから糸切り情報11mまでの回転速度の計測データに対応する表示部21の折れ線グラフの線色を他の線色と異なる色に変えて表示部21に表示する。また、このときCPU11aは、タッチされた部分に対応する糸切り情報11mに対応する時刻(2006年9月12日12時30分10秒)を計測データから求めて表示部21の時刻表示部21cに表示する。
【0031】
次いで、CPU11aは、再度、ステップS1の判断に戻る。また、ステップS1において、CPU11aが、操作パネル20へのタッチがないと判断した場合(ステップS1:NO)にも、CPU11aは、ステップS1の判断に戻る。
【0032】
一方、CPU11aが、ステップS2において、操作パネル20の画面の接触位置付近にグラフを表示する画素がないと判断した場合(ステップS2:NO)、CPU11aは、表示部21に表示するグラフを切り替える切替スイッチ22aがONであるか否かを判断する(ステップS6)。
ここで、CPU11aが、切替スイッチ22aがONであると判断した場合(ステップS6:YES)、CPU11aは、表示部21に表示されるグラフを切り替える(ステップS7)。なお、グラフが切り替えられる順序は事前に設定されており、ソーイングレコーダを最初の表示画面とすると、切替スイッチ22aを一度押すとピッチタイムモニタ(図6参照)、さらにもう一度押すと進捗管理画面(図9参照)が表示される。
一方、CPU11aが、切り替えスイッチ22aがONでないと判断した場合(ステップS6:NO)、ステップS1の判断に戻る。
【0033】
次いで、CPU11aは、ステップS1で表示部21へのタッチがあったグラフの箇所に相当する区分に関する情報がEEPROM11dに記憶されているか否かを判定し(ステップS8:YES)、記憶されている場合には、その情報を読み出し(ステップS9)、記憶されていない場合(ステップS8:NO)には、ステップS1の判断に戻る。
ステップS9の処理に続いて、CPU11aは、現在の表示がソーイングレコーダであるか否かを判断する(ステップS10)。ここで、CPU11aが、現在の表示がソーイングレコーダであると判断した場合(ステップS10:YES)、CPU11aは、選択された位置情報の表示を表示部21の中心とし、タッチしたグラフの区分位置に対応する折れ線の表示色を他の折れ線部分と異なる色に変える(ステップS11)。そして、CPU11aは、再度、ステップS1の判断に戻る。
なお、別のグラフ部分をタッチすると選択内容が変更され、今までの選択部分のグラフ部分の色を元の色にもどし、新たに選択された部分の色を変更する。そして、切替スイッチ22aが押されると、新たに選択された区分のデータ情報(オペレータID、ロット識別コード、プロセス識別コード、糸切り情報)をEEPROM11dから読み出す。
【0034】
ステップS10において、CPU11aが、現在の表示がソーイングレコーダではないと判断した場合(ステップS10:NO)、CPU11aは、現在の表示がピッチタイムモニタであるか否かを判断する(ステップS12)。ここで、CPU11aが、現在の表示がピッチタイムモニタであると判断した場合(ステップS12:YES)、CPU11aは、図6及び図7に示すように、選択された位置情報の表示を表示部21の中心とし、タッチしたグラフの区分に相当する棒グラフの表示色を他の棒グラフ部分と異なる色に変える(ステップS13)。例えば、図6に示すように、ピッチタイムモニタの棒グラフが表示されている際に、棒グラフの箇所Bにタッチしたとすると、CPU11aは、操作パネル20上のタッチした箇所Bと棒グラフを形成する画素との距離が所定の範囲内(事前に設定し、EEPROM11dに記憶しておく)にあるので、CPU11aは、EEPROM11d内に記憶された糸切り終了時刻の計測データの中から対応する時間データを特定し、抽出する。図8の場合、タッチした箇所Bに対応する時間データ11mとしての糸切り終了時刻は2006年9月12日12時30分10秒である。CPU11aが時間データ11mを検索し、発見すると、CPU11aは、タッチされた箇所Bに対応する糸切り終了時刻を表示部21の糸切り時刻表示部21cに表示する。
そして、CPU11aは、EEPROM11dに記憶されている時間データ11mに対応する表示部21の棒グラフの色(図8のMに対応)を他の色と異なる色に変えて表示部21に表示する。そして、CPU11aは、再度、ステップS1の判断に戻る。
【0035】
ステップS12において、CPU11aが、現在の表示がピッチタイムモニタではないと判断した場合(ステップS12:NO)、CPU11aは、現在の表示が進捗管理画面であるか否かを判断する(ステップS14)。ここで、CPU11aが、現在の表示が進捗管理画面であると判断した場合(ステップS14:YES)、CPU11aは、選択された位置情報を含む表示に切り替える(ステップS15)。そして、CPU11aは、再度、ステップS1の判断に戻る。また、CPU11aが進捗管理画面ではないと判断した場合(ステップS14:NO)、CPU11aは、再度、ステップS1の判断に戻る。
【0036】
ここで、図9に示すように、進捗管理画面には、横バーグラフ21fがあり、そのグラフ上で選択されている1ロット当たりの縫製位置を報知アイコン21gにより把握することができるようになっている。また、見たい縫製位置を変更する際には、この横バーグラフ21fの任意の位置でタッチするか、又は、縫製位置番号前進スイッチ22h、縫製位置番号後退スイッチ22iをタッチすることで見たい縫製位置を変更できる。なお、現在表示されている縫製位置に対応する番号が表示窓22kに表示されており、上記各操作に追随して表示窓22kの番号も変化する。図9においては、表示窓22kに表示されている番号は、縫製枚数に対応しており、現在選択されている縫製ロットにおける全縫製枚数1000枚中の100枚の縫製であることを表示しており、その糸切り終了時刻も表示部21に表示されている。なお、糸切り時刻の時間データは、各縫製位置毎にEEPROM11dに記憶されているため、CPU11aは、ピッチタイムモニタの表示の際に糸切り時刻が特定されているので、その糸切り時刻と同じ糸切り時刻に対応する縫製位置を表示する。図9に示すように、ピッチタイムモニタの棒グラフ上でタッチした箇所Bに対応する時間データ11mとしての糸切り終了時刻は2006年9月12日12時30分10秒であり、このデータに対応するデータを検索すると、100番目の縫製位置のデータあることがわかる。また、この糸切り終了時刻は、進捗管理画面においても他のソーイングレコーダやピッチタイムモニタの画面と同様に時刻表示部21cに表示される。
また、ソーイングレコーダ、ピッチタイムモニタ、進捗管理の何れかの画面の表示中に画面の接触位置付近にグラフを表示する画素があると判断した場合(ステップS2:YES)に、チェックスイッチ22bを押すと、図10に示すように、接触されたグラフの位置に対応する縫製の詳細な内容をポップアップ画面21dで確認できる。具体的には、ミシン固有のID、使用するオペレータのID、ロットの識別コード、プロセス識別コード、糸切り終了時間が、チェックスイッチ22bが押されている間だけ表示される。
【0037】
<作用・効果>
以上のようなミシンの生産管理装置1によれば、ユーザが表示部21に表示されている棒グラフ又は折れ線グラフの表示箇所上の任意の箇所をタッチすることにより、CPU11aは、そのタッチされた各グラフ部分に対応する区分位置を認識する。任意の箇所がタッチされた後、ユーザによる切替スイッチ22aの操作によりグラフの表示の切り替えが入力されると、CPU11aは、表示部21のグラフを切り替え表示すると共に、切り替え後のグラフの表示における認識された区分位置に対応する部分を他の部分と色を変えて表示部21に表示させる。
これにより、どのグラフに切り替えてもタッチした区分位置に対応する情報が識別可能に表示されるので、複数のグラフの各情報を相互に対応づけてどのグラフを表示していても他のグラフの情報と合わせて全ての情報を容易に知ることができる。
すなわち、表示されるデータが異なっていても、各データを糸切り時刻という共通の時間データで管理することができるので、縫製管理を容易にすることができる。
また、上述の実施形態では、各データを区分する際の区分単位が縫製終了数単位に選択されている例を示しているが、本願においては、この区分単位は、操作パネル20により縫製終了数単位、ロット単位及びオペレータ単位のうちの少なくとも何れか二つから一つを選択することができるので、縫製の種類に適した区分位置に設定することができ、汎用性の高いミシンとすることができる。
【0038】
<その他>
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。表示部への各グラフの表示方法、配置等は自由に変更可能である。また、各グラフを切り替える順序も任意であって、自由に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ミシンの概略を示す正面図。
【図2】ミシンの概略構成を示すブロック図。
【図3】表示の切り替え処理を示すフローチャート。
【図4】ソーイングレコーダを表示したときの表示部とEEPROMの関係を説明する図。
【図5】ソーイングレコーダを表示したときのチェックスイッチを押したときの状態を説明する図。
【図6】ピッチタイムモニタを表示したときの表示部を説明する図。
【図7】ピッチタイムモニタを表示したときの表示部を説明する図。
【図8】ピッチタイムモニタを表示したときの表示部とEEPROMの関係を説明する図。
【図9】進捗管理を表示したときの表示部とEEPROMの関係を説明する図。
【図10】進捗管理を表示したときのチェックスイッチを押したときの状態を説明する図。
【符号の説明】
【0040】
1 ミシンの生産管理装置
16 速度センサ(回転速度検出手段)
20 操作パネル(表示入力手段、操作手段、設定手段、入力手段)
21 表示部
22 入力部
11 制御装置(縫製終了数算出手段、認識手段、表示制御手段)
11d EEPROM(時間情報記憶手段、速度情報記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに報知する情報が表示される表示部と、この表示部に重ねて配置され、タッチにより入力が行われる入力部と、を有する表示入力手段と、
縫製が開始又は終了するたびに検出されるタイミング信号に基づいて、前記タイミング信号の発生時刻を特定する時間データを記憶する時間情報記憶手段と、
前記時間情報記憶手段に記憶された時間データに基づいて、所定の単位時間経過毎の縫製終了数を算出する縫製終了数算出手段と、
縫製を行う際のミシンの主軸モータの回転速度情報を検出する回転速度検出手段と、
前記回転速度検出手段により検出された回転速度情報を前記時間データに対応させて記憶する速度情報記憶手段と、
操作により、前記縫製終了数算出手段により算出された縫製終了数を前記所定の単位時間毎の縫製終了数の棒グラフとして前記表示部に表示するか、前記速度情報記憶手段に記憶された回転速度情報を経過時間対回転速度の折れ線グラフとして表示するかを切り替える切り替え指令を入力する操作手段と、
前記縫製終了数算出手段により算出された縫製終了数及び前記回転速度情報に対しそれぞれ所定の区分単位毎に区分位置を設定する設定手段と、
前記表示部に表示されている棒グラフ又は折れ線グラフの表示箇所上の任意の箇所をタッチすることにより、そのタッチされた箇所に対応する区分位置を認識する認識手段と、
前記任意の箇所のタッチ後、前記操作手段の操作により、前記表示部のグラフを切り替え表示すると共に、切り替え後のグラフの表示における前記認識手段により認識された区分位置の対応部分を他の部分と識別して前記表示部に表示させる表示制御手段と、
を備えたことを特徴とするミシンの生産管理装置。
【請求項2】
縫製におけるロット構成情報とオペレータ特定情報の少なくとも一方を入力する入力手段を有し、
前記時間情報記憶手段には、前記ロット構成情報と前記オペレータ特定情報の少なくとも一方が、前記時間データとともに記憶され、
前記設定手段は、前記区分単位を、縫製終了数単位とするか、ロット単位とするか、オペレータ単位とするのかの少なくとも何れか二つから一つを選択可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のミシンの生産管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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