ミシン
【課題】上糸張力を示す張力目盛りをきめ細かく設定させるのに有利であり、上糸張力の微調整に有利なミシンを提供する。
【解決手段】上糸張力調整装置の螺旋可動体16,17は、糸調子ダイヤルの回転操作に伴い回転するように軸11に保持されており、軸11の雄ねじ11aに対して螺進退可能に螺合する雌ねじ16dと、軸線P回りの螺旋方向において直列に並設され上糸張力の大きさを示す張力目盛り90とを有する。螺旋可動体16,17は、雄ねじ11aおよび雌ねじ16dの螺合により、軸線P回りで周方向に回転しつつ軸線Pの延びる軸長方向において軸11に沿って可動側糸調子皿13に対して前進または後退し、上糸に与えられる現在の張力目盛り90を表示窓3wから露出させて表示させる。
【解決手段】上糸張力調整装置の螺旋可動体16,17は、糸調子ダイヤルの回転操作に伴い回転するように軸11に保持されており、軸11の雄ねじ11aに対して螺進退可能に螺合する雌ねじ16dと、軸線P回りの螺旋方向において直列に並設され上糸張力の大きさを示す張力目盛り90とを有する。螺旋可動体16,17は、雄ねじ11aおよび雌ねじ16dの螺合により、軸線P回りで周方向に回転しつつ軸線Pの延びる軸長方向において軸11に沿って可動側糸調子皿13に対して前進または後退し、上糸に与えられる現在の張力目盛り90を表示窓3wから露出させて表示させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上糸張力を調整する上糸張力調整装置を備えたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンとして、図15に示すように、ミシン基枠101に糸調子器110(上糸張力調整装置)がねじ103により固定され、糸調子器110の操作ダイヤル117の一部が外カバー102の開口部102aから突出するように外ケース102を設けたミシン100(ミシンの部分図)が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
図16は、図15に示す従来の糸調子器110の説明図を示す。図16に示すように糸調子器110は、糸調子板111にリードねじ部112aを設けた糸調子軸112の一端が固定されている。そして、糸調子軸112の他端から上糸を挟持して張力を付与する一対の糸調子皿113、113と、糸調子ばね114と、リードねじ部112aに係合するばね押さえ115と、押さえばね116と、操作ダイヤル117とがこの順に挿入される。ストッパー118は、ミシン組付時において操作ダイヤル117の糸調子軸112からの離脱を阻止するため設けられている。糸調子ばね114は、一対の糸調子皿113、113にばね荷重を付与し、押さえばね116は操作ダイヤル117にばね荷重を付与している。操作ダイヤル117は同軸に配置された2つの筒部分を備え、中央側の円筒部には糸調子軸112に平行な溝117aが設けられている。溝117aにばね押さえ115の外周先端部分115aが係合する。そして、操作ダイヤル117の外側の外周面117pには、上糸張力設定レベルを示す数値が記載されており、ユーザが操作ダイヤルを一回転以内の範囲で回転させる。すると、ばね押さえ115は連動して回転すると共に、操作ダイヤル117に対し糸調子軸112の軸長方向にスライドする。これにより、糸調子皿113とばね押さえ115との距離が変化して、糸調子皿113の押付荷重が変化し、上糸張力が調整される。なお、この糸調子器付きミシン100では、外カバー102がミシン基枠101に取付けられた状態では、操作ダイヤル117の一部が外カバー102の開口部102aから突出すると共に、操作ダイヤル117の図16における右側の端面117bが外カバー102の開口部102aの右側の端面102bに当接している。
【0004】
また、従来、ダイヤルを固定した状態でリングを回動させるだけの操作で張力を変えないで目盛りの表示を変更させる糸調子器が開示されている(特許文献2参照)。このものでは、リング1回転以内の回転角度において全ての上糸張力目盛りを表示する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−309062号公報
【特許文献2】特開平07−284584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1によれば、上糸張力の設定レベルを示す数値は、操作ダイヤル117の外周面において螺旋方向でなく周方向に沿って表示されており、上糸張力を示す張力目盛りの表示は、操作ダイヤル117の軸線回りの1回転(360°)以内に制限される。従って、張力目盛りの始点から終点までの距離は360°以内に制限される。よって、張力目盛りの始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くできない。この場合、上糸張力を示す張力目盛りをきめ細かく設定させるには限界がある。更には、操作ダイヤル117の軸線回りの1回転(360°)以内に制限されるため、上糸張力の最大値を増加させるにも限界がある。この場合であっても、操作ダイヤル117の外径を増加させれば、操作ダイヤル117の外周部の周長が増加されるため、張力目盛りの始点から終点までの距離を増加できるものの、操作ダイヤル117の外径が過剰に大型化されるおそれがある。
【0007】
特許文献2に係る技術についても、前述したようにリング1回転以内の回転角度で全ての上糸張力目盛りを表示する必要があり、従って、張力目盛りの始点から終点までの距離は360°以内に制限され、従って、上糸張力を示す張力目盛りの始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くできず、上糸張力を示す張力目盛りをきめ細かく設定させるには限界がある。
【0008】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、上糸張力を示す張力目盛りの始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くできるミシンを提供することを課題する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、請求項1に係るミシンは、基体と基体に設けられた上糸張力調整装置とをもつミシンであって、上糸張力調整装置は、(i)基体に固定され上糸張力表示用の表示窓を有する固定部と、(ii)軸線をもつ雄ねじを有すると共に軸線回りの回転が抑えられた状態で固定部に固定された軸と、(iii)軸の軸線の延びる軸長方向の一端側に設けられ回転操作に伴い軸線回りで回転可能な糸調子ダイヤルと、(iv)軸の軸長方向の他端側に設けられた固定側糸調子皿と、(v)軸の軸長方向において移動可能に軸に設けられ固定側糸調子皿とで上糸を挟持させる可動側糸調子皿と、(vi)糸調子ダイヤルの回転操作に連動して回転するように糸調子ダイヤルに係合すると共に軸に螺進退可能に保持され、軸の雄ねじに対して螺進退可能に螺合する雌ねじと、軸線回りの螺旋方向において直列に並設され上糸張力の大きさを示す張力目盛りとを有し、雄ねじおよび雌ねじの螺合により軸線回りで周方向に回転しつつ軸線の延びる軸長方向において軸に沿って可動側糸調子皿に対して前進または後退して上糸張力を調整し、現在の上糸張力を示す張力目盛りを表示窓から露出させて表示させる螺旋可動体と、(vii)螺旋可動体と可動側糸調整皿との間に介装され、螺旋可動体と可動側糸調整皿とにそれぞれ反対方向の付勢力を付勢する糸調子ばねとを具備する。
【0010】
本発明に係るミシンによれば、糸調子ダイヤルの回転操作に伴い、螺旋可動体の雌ねじは、軸の雄ねじに対して螺進退するため、螺旋可動体は螺合移動し、すなわち、軸線回りで周方向に回転しつつ軸線の延びる軸長方向において軸に沿って移動する。これにより螺旋可動体は、可動側糸調子皿に対して軸に沿って前進したり後退したりする。螺合移動とは、雄ねじおよび雌ねじが螺合しつつ軸長方向に移動することをいう。螺旋可動体が一方向に螺合移動して可動側糸調子皿に対して前進すると、糸調子ばねが可動側糸調子皿を付勢させる付勢力が増加し、可動側糸調子皿が固定動側糸調子皿に向けて強く付勢される。よって可動側糸調子皿と固定動側糸調子皿とが上糸を挟持する挟持力は、増加し、上糸張力は増加する。これに対して螺旋委可動体が逆方向に螺合移動して可動側糸調子皿に対して後退すると、糸調子ばねが可動側糸調子皿を付勢させる付勢力が減少し、可動側糸調子皿が固定動側糸調子皿を付勢する付勢力が弱くなる。よって可動側糸調子皿と固定動側糸調子皿とが上糸を挟持する挟持力は減少し、上糸張力は減少する。
【0011】
上記したように糸調子ダイヤルの回転操作に連動して螺旋可動体が螺合移動するとき、螺旋可動体は、螺合移動し、軸線回りで周方向に回転しつつ軸線の延びる軸長方向において軸に沿って移動する。このとき、上糸張力の大きさを示す張力目盛りは、螺旋可動体の軸線回りの螺旋方向において直列に並設されているため、張力目盛りの始点から終点までの距離は360°以内に制限されず、360°以上とさせることができる。例えば、螺旋可動体が軸線回りで2回転する方式であれば、張力目盛りの始点から終点までの距離は、基本的には720°(360°×2=720°)にできる。螺旋可動体が軸線回りで3回転する方式であれば、基本的には1080°(360°×3=1080°)にできる。螺旋可動体が軸線回りで4回転する方式であれば、基本的には1080°(360°×4=1440°)にできる。このため360°以内に制限される従来技術(特許文献1)に比較して、張力目盛りの始点から終点までの距離を長くでき、張力目盛りを細かい刻み幅で表示させることができる。
【0012】
(2)請求項2に係るミシンによれば、上記様相1において、螺旋可動体は、軸に同軸的に保持され軸線の回りで回転すると共に軸長方向において前進および後退可能な張力設定作動部と、張力設定作動部に連動する張力表示部とを有しており、張力設定作動部は雌ねじをもち、張力表示部は表示窓に露出可能な張力目盛りをもつ。
【0013】
糸調子ダイヤルの回転操作に伴い、張力設定作動部の雌ねじは、軸の雄ねじに対して螺進退するため、張力設定作動部は、軸線回りで周方向に回転しつつ軸線の延びる軸長方向において軸に沿って移動する。これにより張力設定作動部は、可動側糸調子皿に対して前進したり、後退したりする。張力設定作動部が可動側糸調子皿に対して前進すると、糸調子ばねが可動側糸調子皿を付勢させる付勢力が増加し、可動側糸調子皿が固定動側糸調子皿に向けて強く付勢される。よって可動側糸調子皿と固定動側糸調子皿とが上糸を挟持する挟持力は、増加し、上糸張力は増加する。これに対して張力設定作動部が可動側糸調子皿に対して後退すると、糸調子ばねが可動側糸調子皿を付勢させる付勢力が減少し、可動側糸調子皿が固定動側糸調子皿を付勢する付勢力が弱くなる。よって可動側糸調子皿と固定動側糸調子皿とが上糸を挟持する挟持力は減少し、上糸張力は減少する。
【0014】
上記したように糸調子ダイヤルの回転操作に伴い張力設定作動部が動作するとき、張力設定作動部は、軸線回りで周方向に回転しつつ軸線の延びる軸長方向において軸に沿って移動する。このとき、上糸張力の大きさを示す張力目盛りは、張力表示部において、軸線回りの螺旋方向において直列に並設されているため、上糸張力を示す張力目盛りの始点から終点までの距離は360°以内に制限されず、張力目盛りの始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くでき、360°以上とさせることができる。
【0015】
(3)請求項3に係るミシンによれば、上記様相1において、張力設定作動部は複数または単数の第1係合部をもち、張力表示部は第1係合部と係合可能な複数または単数の第2係合部をもち、第1係合部および第2係合部の係合により、張力設定作動部および張力表示部の相対組付位置は、軸線と平行な方向において位置調整可能とされており、糸調子ばねのばね荷重が調整可能とされている。組付時やメンテナンス時等において、第1係合部および第2係合部の係合により、張力設定作動部および張力表示部の相対組付位置を、軸線と平行な方向において位置調整できる。この結果、糸調子ばねのばね荷重を調整できる。この場合、糸調子ばねのばね荷重がばらつく場合に対処できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上糸張力の大きさを示す張力目盛りは、螺旋可動体において、軸線回りの螺旋方向において直列に並設されているため、張力目盛りの始点から終点までの距離を長くでき、上糸張力を示す範囲を一回転(360°)以上とさせることができる。
【0017】
このため360°以内に制限される従来技術(特許文献1,2)に比較して、図12の特性線W2として例示されるように、上糸張力を示す張力目盛りの始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くできる。この場合、張力目盛りを細かい刻み幅で表示させることができる。上糸張力の微調整に有利である。また、糸調子ダイヤルおよび軸線の回りで一回転(360°)以上回転できるので、糸調子ダイヤルの回転操作量(回転量)に対する上糸張力の変化量は緩やかな特性になり、上糸張力を希望値に容易に調整できる利点が得られる。
【0018】
また、糸調子ダイヤルおよび螺旋可動体が軸線回りで一回転(360°)以上回転できるので、図13の特性線W4として例示されるように、糸調子ダイヤルの回転操作量に対する上糸張力の変化量α3を従来技術と同一に設定させつつ、糸調子ダイヤルおよび螺旋可動体の回転操作量を一回転(360°)以上に設定させることもできる。この場合、従来技術に比べて上糸張力の最大値を増大でき、張力調整範囲を拡大できる利点が得られる。このように上糸張力の最大値を増大できるため、厚い布や多数枚重ねた布を縫うときであっても、容易に縫製できる利点が得られる。
【0019】
さらに、糸調子ダイヤルおよび張力設定作動部は1回転以上回転できるので、上糸張力の最大値および最小値が従来技術と同じ場合には、従来技術のばね押さえに比べて張力設定作動部の雄ねじ部のリード角を減少できる。これにより、糸調子ダイヤルの回転操作量に対する上糸張力の変化量が緩やかで、上糸張力の最大値を所定値に確保しつつ、張力設定作動部を螺合移動させる回転力を従来技術に比べて減少できるので、本発明の上糸張力調整装置を備えたミシンは糸調子ダイヤルの回転トルクが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例に係る上糸張力調整装置を備えたミシンの糸調子ダイヤル付近の斜視図である。
【図2】上糸張力調整装置の分解斜視図である。
【図3】上糸張力調整装置の断面図である。
【図4】張力設定ナットと張力表示部との係合部の説明図である。
【図5】張力設定ナットの円筒部外周面の部分展開図である。
【図6】張力設定ナットと糸調子ダイヤルとの取付け説明のための斜視図である。
【図7】図3に示すAA断面図である。
【図8】張力表示部の円筒部の外周面の部分展開図である。
【図9】表示窓で表示されている張力目盛り付近を示す説明図である。
【図10】張力表示部の外周部に設けられている張力目盛りを展開した展開図である。
【図11】比較例に係り、張力表示部の外周部に設けられている張力目盛りを展開した展開図である。
【図12】実施例1に係る上糸張力の特性を示すグラフである。
【図13】実施例2に係る上糸張力の特性を示すグラフである。
【図14】実施例3に係るミシンを示す正面図である。
【図15】従来技術に係る上糸張力調整装置を示す側面図である。
【図16】従来技術に係る上糸張力調整装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ミシンは、針が取り付けられる昇降可能な針棒および針を昇降させる昇降機構をもつ基体と、基体に設けられた上糸張力調整装置とをもつ。基体は、一般的には、ベッド部と、縦アーム部、横アーム部とを有する。固定部は基体(例えば横アーム部)に固定されている部位であり、上糸張力表示用の表示窓を有する。螺旋可動体は、糸調子ダイヤルの回転操作に連動して回転するように軸に保持されている。螺旋可動体は、軸の雄ねじに対して螺進退可能に螺合する雌ねじと、軸線回りの螺旋方向において直列に並設され上糸張力の大きさを示す張力目盛りとを有する。雄ねじおよび雌ねじの螺合により、螺旋可動体は軸の雄ねじに対して螺合移動し、すなわち、軸線回りで周方向に回転しつつ軸線の延びる軸長方向において軸に沿って可動側糸調子皿に対して前進または後退する。これにより上糸に与えられる現在の張力目盛りを表示窓から露出させて表示させる。螺旋可動体は、軸に同軸的に保持され軸線回りで回転すると共に軸長方向において前進および後退可能な張力設定作動部と、張力設定作動部に連動する張力表示部とを有する構造とすることができる。この場合、張力設定作動部は雌ねじ部をもち、張力表示部は表示窓に露出可能な張力目盛りをもつ。螺旋可動体は、2部品等の複数部品で形成されていても良いし、単数部品で形成されていても良い。例えば、螺旋可動体は、軸の雄ねじと螺合する雌ねじをもつ第1部品と、張力目盛りをもつと共に第1部品と連動する第2部品とで形成されていても良い。
【0022】
[実施例1]
以下、請求項1に係る本発明の実施例1について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本実施例に係る上糸張力調整装置を備えたミシンのユーザ操作用の糸調子ダイヤル19付近の斜視図を示す。図2は図1に示す上糸張力調整装置の分解斜視図を示す。図1に示すように、本実施例のミシン1は横アーム1c(基体の一部)をもち、横アーム1cは機枠2(固定部の一部)を有する。機枠2は、ユーザが視認できるように外方に露出する表示窓3wをもつミシン外郭3(固定部の一部)を備える。ユーザが上糸張力を調整するための上糸張力調整装置5は、機枠2に設けられている。
【0023】
図2は上糸張力調整装置5の分解図を示す。図3(a)(b)は上糸張力調整装置5の作用状態を示す。図2に示すように、上糸張力調整装置5は、上糸張力を調整する張力調整部10と、上糸4を脱着させる糸緩め部30とを備える。図2,図3に示すように、張力調整部10は、軸線Pをもつ軸11と、糸調子ダイヤル19と、固定側糸調子皿12と、可動側糸調子皿13と、張力設定ナット16と、張力表示部17と、コイルばね状の糸調子ばね15とを備える。図3に示すように、軸11の軸線Pが延びる軸長方向の端部11b(他端)がミシン1の機枠2(固定部)に固定されている。従って、軸11は、軸線Pが延びる軸長方向(矢印X1,X2方向)において移動せず、且つ、非回転であり軸線Pまわりの回転は抑えられている。ユーザが糸調子ダイヤル19をこれの周方向に沿って軸線P回りで、図1における上方向(一方向)または下方向(他方向)へ回転させると、上糸張力調整装置5の張力表示部17が表示窓3wにおいて糸調子ダイヤル19の回転角度に比例して図1の図示左側(軸長方向の一方向)または図示右側(軸長方向の他方向)へ移動し、上糸張力が調整される。糸調子ダイヤル19は回転するものの、軸長方向(矢印X1,X2方向)において移動しない。なお、軸11,張力設定ナット16,糸調子ダイヤル19、張力表示部17は軸線Pに対して同軸的に配置されているため、軸線Pは、張力設定ナット16,糸調子ダイヤル19、張力表示部17の軸線に相当する。
【0024】
図2に示すように、糸緩め部30は上糸張力を開放するものであり、糸調子皿12に対し糸調子皿13を離間させて上糸4を脱着させるものであり、糸緩め作用板31と止め輪32とを備える。糸緩め作用板31の穴31aをミシン1の機枠2に設けた軸2aに挿入して、軸2aに止め輪32を装着し、糸緩め作用板31の軸2aからの離脱を阻止する。そして、糸緩め作用板31の溝31bに押さえレバー6(図1参照)の先端よりリンクしたレバーの先端部分(図示せず)を配置する。これにより押さえレバー6を上方に移動させると、押さえレバー6の先端よりリンクしたレバーの先端部分が糸緩め作用板31の爪部31bに当接して、糸緩め作用板31が軸2aを回転中心に回動する。糸緩め作用板31が回動すると、糸緩め作用板31の作用点31dが糸調子皿13の外周側から突出した作用部13aに当接して、糸調子皿13と糸調子皿12との間に間隙が生じる。これにより上糸張力は開放され、上糸4を取付および離脱できる。そして、押さえレバー6を元の位置に戻すと糸調子皿13は元の位置に戻り、上糸張力は復活する。
【0025】
図3は、図2に示す上糸張力調整装置5の断面図を示す。図3(a)は上糸張力の最大設定状態を示す。図3(b)は上糸張力の最小設定状態を示す。図2及び図3に示すように張力調整部10は、軸11と、糸調子皿12,13と、ばね受け14と、糸調子ばね15と、張力設定ナット16(張力設定作動部,螺旋可動体)と、張力設定ナット16と一体的に周方向および軸長方向(矢印X1,X2方向)に連動する張力表示部17(螺旋可動体)と、コイル状の操作安定ばね18と、糸調子ダイヤル19と、糸調子ダイヤル19の円筒部19cの両端に設けた平座金20,20と、軸11の端部11c(一端)側の溝11dに装着される止め輪21とを備える。
【0026】
糸調子皿12を装着した軸11の端部11b(他端)は、軸11が軸線P回りで回転しないように且つ軸長方向(矢印X1,X2方向)に移動しないように、機枠2に固定されている。これにより糸調子皿12は、機枠2と軸11とにより挟着される。そして、軸11の中央部分には雄ねじ部11aが設けられている。張力設定ナット16は軸線P回りに形成された雌ねじ16dを有する。雌ねじ16dは、雄ねじ部11aに螺進退可能に螺合している。張力設定ナット16は軸線P回りで回転可能とされており、回転しつつ軸長方向(矢印X1,X2方向)に沿って移動する。図3に示すように、軸11のうち、張力設定ナット16と糸調子皿12との間の軸部分には、順次糸調子皿13と、ばね受け14と、糸調子ばね15とが挿入されている。糸調子ばね15は、張力設定ナット16と糸調子皿12とにそれぞれ反対方向の付勢力を付勢する。この状態において、糸調子ばね15の両端は、ばね受け14の面14aと張力設定ナット16の面16baに当接する。糸調子皿13はばね受け14を介して糸調子ばね15の付勢力(以後、ばね荷重)が矢印X1方向に付与される。これにより糸調子皿13が糸調子皿12に当接または接近し、上糸4は糸調子皿12と糸調子皿13とに挟持される。そして、張力設定ナット16がこれの周方向に軸線Pまわりで回転されると、面14aと面16baとの間の距離L1が変化する。よって、糸調子皿13を押圧する糸調子ばね15のばね荷重(矢印X1方向)も変化し、上糸4と糸調子皿12、13との間の摩擦力が変化して上糸4の張力が変化する。このように摩擦力が増減すると、上糸4の張力が増減される。
【0027】
図4は、張力設定ナット16と張力表示部17との係合部の説明図で軸11を省略して示す。図4(b)は図4(a)のBB断面を示す。図4(b)の細線の×印はノッチ凹部16e(第1係合部)の谷部分を示す。尚、後述するノッチ凸部17c(第2係合部)に係合したノッチ凹部16eの谷部分は×印を削除している。図4(a)に示すように、張力設定ナット16(張力設定作動部)は筒形状をなしており、円筒部16aと、円筒部16aの内周部に設けられた雌ねじ16dを備えたボス部16bと、円筒部16aとボス部16bとを繋ぐ円板部16cとを有する。ボス部16bの窪み部分の面16baは糸調子ばね15の端面が当接する。張力設定ナット16の雌ねじ16dは軸11の雄ねじ部11aに螺進退可能に螺合する。なお、雌ねじ16dおよび雄ねじ部11aが螺合して螺進退するときであっても、軸11は非回転であり且つ軸長方向に移動しないため、張力設定ナット16が回転しつつ矢印X1,X2方向に移動する。
【0028】
図5は、張力設定ナット16の円筒部16aの外周面の部分展開図を示す。図4に示すように円筒部16aの図4(a)における右端面(一端面)には、C線(図4(b))を起線に右回りに中心角180°の範囲において、面16baからの距離Hが徐々に増加すると共に等ピッチ、複数個のノッチ凹部16eが設けられている。そして、これらの複数個のノッチ凹部16eにより一組のノッチ凹部の集合が形成される。図5に示すように、張力設定ナット16の円筒部16aの外周面を展開した状態では、(円周長さ)/2の範囲(中心角180°)において、複数個のノッチ凹部16eの谷および山を結ぶ線は、それぞれ同じ傾きの直線をなす。そして円筒部16aの外周面は、中心角180°の範囲のノッチ凹部16eの集合が、180°ずれて二組配置されている(図4(b))。これにより円周上に角度180°ずれて、一対のノッチ凹部16e、16eが、複数個、円筒部16aの図4(a)における右端面に設けられている。一対のノッチ凹部16e、16eの面16baからの各々の距離H、Hは等しい。
【0029】
図4(a)および(b)に示すように、筒状の張力表示部17は、円筒部16aにこれの外周側から嵌合する。張力表示部17は、円筒部17aと、円筒部17aの内周面の軸長方向の途中に環状円板部17bと、環状円板部17bの図4における左側(他方向)へ延在し円筒部17aの内周面から径内方向に僅か突起する複数個(一対)のノッチ凸部17c、17cとを備える。一対のノッチ凸部17c、17cは、円筒部17aの内周面において互に180°ずれた位置に設けられると共に、一対のノッチ凸部17c、17cの各々の先端から面17baまでの各々の距離は等しい。環状円板部17bの窪み部分の面17baには、操作安定ばね18の端面が当接する。
【0030】
そして、張力表示部17の円筒部17aの部位17ao(図4における左側)の内周面は、張力設定ナット16の円筒部16aの外周面に同軸的に嵌合している。張力設定ナット16の一対のノッチ凹部16e、16e(第1係合部)と、張力表示部17の一対のノッチ凸部17c、17c(第2係合部)とが互いに係合する。この結果、張力設定ナット16および張力表示部17と一体的に連動して動作できる。
【0031】
ここで、ノッチ凸部17cが係合ノッチ凸部17cが係合するノッチ凹部16eが異なると、張力設定ナット16の面16baと張力表示部17の面17baとの距離L3(図4(a)参照)の長さを調整できる。このように距離L3を調整できれば、張力設定ナット16および張力表示部17の相対組付位置を軸線Pと平行な方向において位置調整でき、組付時やメンテナンス時等において糸調子ばね15のばね荷重を微調整できる利点が挙げられる。これにより糸調子ばね15のばね荷重のばらつきに対処できる。
【0032】
ノッチ凹部16eとノッチ凸部17cとの係合は、係合部7を形成する。係合部7により張力設定ナット16の回転が張力表示部17に伝達され、張力設定ナット16および張力表示部17は一体的に連動する。更に、操作安定ばね18のばね荷重によりノッチ凸部17cを介してノッチ凹部16eが押圧されて、張力設定ナット16の軸長方向(矢印X1,X2方向)の移動が張力表示部17に伝達される。これにより張力設定ナット16が軸線P回りで螺進退すると、張力設定ナット16と一体となって張力表示部17も連動して同方向に軸線P回りで回転しつつ軸長方向(矢印X1,X2方向)へ移動する。すなわち、張力設定ナット16が軸線P回りで回転して軸長方向(矢印X1,X2方向)に移動すると、張力表示部17も軸線P回りで同方向に回転しつつ軸長方向(矢印X1,X2方向)に移動する。
【0033】
図3に示すように、軸11の雄ねじ部11aの端部11c(一端側)には、平座金20と、糸調子ダイヤル19と、平座金20とがこの順に挿入される。そして糸調子ダイヤル19は、軸11の溝11dに装着した止め輪21により軸11からの離脱が阻止されると共に、軸11の軸線Pを中心に自在に回転できる。なお、糸調子ダイヤル19は軸線P回りで回転できるものの、軸長方向(矢印X1,X2方向)に移動しない。
【0034】
図3に示すように、張力表示ナット16に備えた張力表示部17の面17baと糸調子ダイヤル19の内側の面19bとの間には、糸調子ダイヤル19の円筒部19cの外周面をガイドにして、操作安定ばね18が設けられている。操作安定ばね18の両端面は面17baと面19bに圧接する。そして、操作安定ばね18のばね荷重により糸調子ダイヤル19が押圧される。このばね荷重による摩擦力が糸調子ダイヤル19と平座金20との間に生じるが、平座金20を摺動材として使用することで摩擦力が大幅に低減される。
【0035】
図6は、張力設定ナット16と糸調子ダイヤル19との取付け構造を説明する斜視図を示す。図7は図3のAA断面図を示し、図中、操作安定ばね18を省略している。図2および図3に示すように、糸調子ダイヤル19には、円筒部19aと円筒部19cとの間にスライドレール19d(係合子)が設けられている。図7に示すように、スライドレール19dは、張力表示部17の環状円板部17bに設けた円弧形状の長穴17bb(図7参照,第1被係合子)と、張力設定ナット16の円板部16cに設けた穴16g(図4(b)参照,第2被係合子)とを貫通し、更に、円筒部16aの内周面に設けたスライドレール溝16f(図6参照,第3被係合子)に挿入される。そして、スライドレール19dとスライドレール溝16fとの嵌合により変換機構8が形成される(図6参照)。変換機構8より、糸調子ダイヤル19がこれの周方向に軸線P回りで回転すると、スライドレール溝16fがスライドレール19dをスライドしつつ、張力設定ナット16は連動して同方向に回転する。この場合、糸調子ダイヤル19の回転角度に比例して、張力設定ナット16は糸調子ダイヤル19に対して軸長方向(矢印X1,X2方向)に移動する。このようにスライドレール19dをスライドするため、張力設定ナット16が糸調子ダイヤル19に対して軸長方向に移動することは許容される。尚、スライドレール溝16fは、張力設定ナット16に備えた張力表示部17に設けても良い。また、スライドレール19dを張力設定ナット16あるいは張力表示部17に設け、スライドレール溝16fを糸調子ダイヤル19に設けても良い。
【0036】
次に、糸調子ダイヤル19の回転を停止させるストッパー機構について説明する。図2に示すように、機枠2には面2cから垂直に起立するストッパー2bが設けられている。ストッパー2bは糸調子皿12と、糸調子皿13およびばね受け14の各溝12a、13b、14bを通過してばね受け14の面14a(図3参照)から突出している。図8は、張力表示部17の円筒部17aの外周面の部分展開図である。図8に示すように、円筒部17aの一方の端面17eは、展開すると円筒部17aの他方の端面17i(図3、図4参照)に対して、傾斜した直線形状に形成されている。これにより図4に示すように、張力表示部17の円筒部17aの端面17eには、つる巻線形状の切り欠け部分17fが形成されている。切り欠け部分17fはストッパー2bに平行なストッパー面17g(図8の矢印間範囲W)を形成する。ここで、糸調子ばね15のばね荷重を増加させる方向へ、糸調子ダイヤル19を回転させていくと、図3(a)に示すように、張力表示部17のストッパー面17gは、ストッパー2bに当接して糸調子ダイヤル19の回転は停止され、上糸張力が最大状態になる。
【0037】
一方、糸調子ばね15のばね荷重を減少させる方向へ、糸調子ダイヤル19をこれの周方向に回転させていくと、図3(b)に示すように、張力表示部17の端面17iが、糸調子ダイヤル19の面19bに当接して糸調子ダイヤル19の回転は停止され、上糸張力が最小状態になる。そして、糸調子ダイヤル19の回転角度は、上糸張力の最小値から最大値までにおいて回転角度360°(1回転)以上を確保される。本実施例では、糸調子ダイヤル19の回転角度は、上糸張力の最小値から最大値までにおいて回転角度360°×n(n=2,720°)とされている。尚、ストッパー2bは、糸調子皿13とばね受け14の各溝13b、14b(図2参照)が当接することにより、糸調子皿13とばね受け14の回転を阻止する機能も兼ねている。
【0038】
なお、糸調子ばね15と操作安定ばね18のばね定数は同じに設定されることが好ましい。但しこれに限定されるものではない。また、上糸張力最大状態における糸調子ばね15のばね荷重F1 maxと、上糸張力最小状態における操作安定ばね18のばね荷重F2 maxは同じ値Fmaxに設定すると共に、上糸張力最小状態における糸調子ばね15のばね荷重F1 minと、上糸張力最大状態における操作安定ばね18のばね荷重F2 minも同じ値Fminに設定される。本実施例ではFmin=0に設定している。
【0039】
次に、本発明の実施例に係るミシン1の作動および効果について説明する。上糸張力を増加させる場合には、ユーザーは、押さえレバー6(図1参照)を図1における上方向(一方向)へ動かし、糸調子皿12と糸調子皿13との間に生じる間隙に上糸4を挿入する。更に、ユーザは、押さえレバー6を元の位置に戻して、糸調子皿12と糸調子皿13とで上糸4を挟持する。次に、希望する上糸張力に設定するため、例えば、ユーザは、糸調子ダイヤル19をこれの周方向において軸線P回りで図1における上方向(一方向)へ回転操作する。この回転操作により、変換機構8のスライドレール19dとスライドレール溝16fとを介して、張力設定ナット16は、糸調子ダイヤル19に連動して螺合移動し、すなわち、軸線Pの回りで回転しつつばね受け14方向へ軸長方向(矢印X1方向)へ移動する。即ち、張力設定ナット16は、ばね受け14へ接近するように螺合移動(矢印X1方向へ前進)する。上述の張力設定ナット16の螺合移動は、係合部7のノッチ凹部16eとノッチ凸部17cとを介して、張力表示部17へ伝達される。このため、張力表示部17も同様に、螺旋移動し、ばね受け14へ近づくよう、軸線P回りで回転しつつ軸長方向(矢印X1方向)へ前進する。これにより、糸調子ばね15の長さL1(図3(a)参照)が短縮される。よって、ばね受け14を介し糸調子皿13に作用する糸調子ばね15のばね荷重が増加する。従って、糸調子皿12と糸調子皿13とに挟持されている上糸4と糸調子皿12、13との間の摩擦力も増大して、上糸4の張力が増加される。一方、操作安定ばね18の長さL2は伸長され、操作安定ばね18のばね荷重が減少する。
【0040】
また、上糸張力を減少させる場合には、ユーザは、糸調子ダイヤル19をこれの周方向にそって軸線P回りで、図1における下方向(他方向)へ回転操作する。すると、張力設定ナット16と張力表示部17(螺旋可動体)は、前述と逆方向へ螺合移動する。これにより張力設定ナット16は、ばね受け14から離間するように軸長方向(矢印X2方向)へ後退する。これにより糸調子ばね15の長さL1(図3(a)参照)が伸長され、ばね受け14を介し糸調子皿13に作用する糸調子ばね15のばね荷重が減少する。このため、上糸4と糸調子皿12、13との間の摩擦力が減少し、上糸4の張力が減少する。このとき、操作安定ばね18の長さL2は短縮されて、ばね荷重が増大する。以上説明したように、ユーザは、糸調子ダイヤル19を軸線P回りで回転操作して、上糸4の張力を希望値に設定することができる。
【0041】
従来技術のミシン100では、前述したように、糸張力設定レベルを示す数値で表された張力目盛りが操作ダイヤル117(図15,図16参照)の外周部に周方向に沿って表示されているため、目盛りの重合を防止するため、上糸張力設定レベルの範囲は一回転(360°)以内に制限される。しかしながら本実施例によれば、糸調子ダイヤル19の回転操作に伴い、張力設定ナット16(螺旋可動体)の雌ねじ16は、軸11の雄ねじ11aに対して螺進退するため、張力設定ナット16(螺旋可動体)は軸線Pに対して螺旋方向に螺合移動し、すなわち、軸線P回りで周方向に回転しつつ軸線Pの延びる軸長方向(矢印X1,X2方向)において軸11に沿って移動する。これにより張力設定ナット16(螺旋可動体)が糸調子皿13に対して前進したり後退したりする。上記したように糸調子ダイヤル19の回転操作に伴い張力設定ナット16(螺旋可動体)が螺旋方向に螺合移動するとき、張力設定ナット16は、軸線P回りで周方向に回転しつつ軸線Pの延びる軸長方向(矢印X1,X2方向)において軸11に沿って移動するため、張力設定ナット16と一体となって回転する張力表示部17は、一回転(360°)以上の範囲を表示可能である。
【0042】
ところで、図9に示すように、ミシン外郭3のうち表示窓3w付近には、基準マーク150が形成されている。基準マーク150は、軸線Pと平行な方向に沿って延設されており、ユーザの肉眼視で水平方向に沿っている。図10は、張力表示部17の円筒部17aの外周部を展開させた展開図を示す。図10に示すように、張力表示部17の円筒部17aの外周部には、上糸張力の大きさを示す張力目盛り90が、軸線Pに対する螺旋方向(矢印S方向)に沿って設けられている。図10に示すように、張力目盛り90は、張力最小値を示す最小目盛り91から、張力標準値を示す標準目盛り92を経て、張力最大値を示す最大目盛り93にかけて段階的に数値目盛り94が直列に並設されて構成されている。このように張力目盛り90は、張力表示部17の円筒部17aの外周部において、軸線P回りの螺旋方向(矢印S方向)において直列に並設されて構成されている。
【0043】
図10に示すように、張力目盛り90は螺旋方向(矢印S方向)に直列に延設されているため、張力目盛り90が示す目盛りは、張力表示部17の円筒部17aの外周部の回りを複数回巻回されているものの、軸長方向(矢印X1,X2方向)においてΔM(図10参照)ぶん互いに離れており、各目盛りを互いに識別できる。従って、張力目盛り90の始点(最小目盛り91)から終点(最大目盛り93)までの距離は、360°以内に制限されず、360°×nとさせることができる。このような本実施例では張力表示部17の回転角度を360°以上できる。本実施例では、n=2とされており、張力表示部17の回転角度は360°×2=720°とされている。従って、張力表示部17と回転が連動する張力設定ナット16および糸調子ダイヤル19の回転角度も720°とされている。
【0044】
このように本実施例では、軸線P回りの張力表示部17(螺旋可動体)の回転角度は、720°である。このため360°以内に制限される従来技術(特許文献1,2)に比較して、張力目盛り90の始点(最小目盛り91,張力最小値)から終点(最大目盛り93,張力最大値)までの距離を長くできる。更に、糸調子ダイヤル19が720°(=360°×2)回転可能であるので、張力設定ナット16の軸長方向(矢印X1,X2方向)の移動範囲が増大する。従って、上糸張力の最大値が従来と同様の場合には、上糸張力の最大値から最小値まで従来技術に比べて上糸4の張力値をきめ細かく設定できる。故に、張力目盛り90を細かい刻み幅で表示させることができ、上糸張力の微調整に有利である。
【0045】
なお図10において、B1は、糸調子ダイヤル19の回転角度が0°(最小値)の場合において表示窓3wが示す表示範囲を示し、B2は、糸調子ダイヤル19の回転角度が720°(最大値)の場合において表示窓3wが示す表示範囲を示す。n=2であるため、張力表示部17において張力目盛り90が形成される距離は、基本的には、B3(図10参照)×2となる。ここで、ユーザが糸調子ダイヤル19を回転操作させるに伴い、表示窓3wが示す表示範囲はB1からB2へと変化する(図10参照)。但し、図10では表示窓3wが可動するようにもみえるが、表示窓3wは固定されており、表示窓3wに対して張力表示部17の張力目盛り90が螺旋方向(矢印S方向)に沿って回転するものである。
【0046】
図9,図10に示すように、ミシン外郭3のうち表示窓3w付近に形成されている基準マーク150が形成されている。張力目盛り90のうち基準マーク150と合致した目盛りが現在の上糸張力を示す。ユーザが糸調子ダイヤル19を回転操作させるに伴い、ユーザは、張力目盛り90が基準マーク150に対して垂直方向(図9および図10に示す矢印D方向)に回転しつつ水平方向(図9および図10に示す矢印H方向)に移動する姿を視認できる。このとき、張力目盛り90のうち任意の目盛りは表示窓3wの左上または右下から出現するが、その任意の目盛りが基準マーク150に合致する位置に移動したときには、その任意の目盛りは現在の上糸張力に相当し、表示窓3wのほぼ中央に位置することになる。
【0047】
ところで、張力表示部の外周部に張力目盛りを軸線回りの螺旋方向ではなく軸線回りの周方向に沿って設けることも比較例として考えられる。この場合には、図11に示すように、基準マーク150Xは表示窓3w付近において、ユーザの肉眼視で垂直方向に沿って形成されており、且つ、張力表示部17Xは軸線Pまわりで回転するものの、軸線Pに沿ってストロークA3ぶん矢印X1,X2方向に移動する。このような比較例では、筒形状の張力表示部17Xの外周部には張力目盛り90Xが螺旋状ではなく軸線P回りの周方向に沿って設けられている。このような比較例では、本実施例と同様にユーザが糸調子ダイヤル19を回転操作させるに伴い、張力表示部17Xは軸線Pまわりで回転しつつ軸線Pに沿ってストロークA3ぶん矢印X1,X2方向に移動する。基準マーク150Xに対して張力目盛り90Xが矢印X1,X2方向に沿って水平移動しているようにも見える。張力目盛り90Xの始点(最小目盛り,張力最小値)から終点(最大目盛り,張力最大値)までの距離は、ストロークA3(図11参照)ぶんに過ぎず、狭い範囲であり、上糸張力の最大値から最小値まで、上糸4の張力値をきめ細かく設定させるには、前記した従来技術1,2と同様に限界がある。
【0048】
さて、図12は本実施例の張力特性を示す。図12の特性線W1は、上糸張力をTに設定させつつ、糸調子ダイヤルの回転操作量に対する上糸張力の変化量をα1とし、糸調子ダイヤル19の回転操作量を360°とした従来技術に相当する。これに対して、図12の特性線W2は、上糸張力を従来技術と同様にTに設定させつつ、糸調子ダイヤル19の回転操作量を360°×n(n=2)、つまり720°に設定している本実施例に相当する。本実施例によれば、特性線W2に示すように、糸調子ダイヤル19の回転角度を720°にしているため、張力設定ナット16および張力設定部17(螺旋可動体)は720°回転できる。故に、特性線W2として示すように、糸調子ダイヤル19の回転操作量に対する上糸張力の変化量をα2(α2<α1)と緩やかな特性にでき、張力目盛り90を細かい刻み幅で表示させることができる。このように本実施例では、特性線W2に示すように、糸調子ダイヤル19の回転操作量に対する上糸張力の変化量を緩やかな特性にでき、張力目盛り90を細かい刻み幅で表示させることができる。このように本実施例の張力設定ナット16は前述したように1回転以上(360°×n,n=2)回転できるので、上糸張力の最大値から最小値まで従来技術と同じ範囲の場合には、従来技術のばね押さえ115に比べて張力設定ナット16の雄ねじ部11aのリード角を減少できる利点が得られる。これにより、糸調子ダイヤル19の回転操作量に対する上糸張力の変化量が緩やかで、上糸張力の最大値を所定値に確保しつつ、張力設定ナット16を螺合移動させる回転力を従来技術に比べて減少できるので、糸調子ダイヤル19の回転トルクが低減される。以上により、上糸張力の変化量が緩やかであると共に糸調子ダイヤル19の回転トルクが低減され、きめ細かな上糸張力の調整が容易となる。
【0049】
また本実施例によれば、張力設定ナット16の円筒部16aの端面には、糸調子ばね15が押圧する面16baからの距離が異なる複数のノッチ凹部16eから形成される一組のノッチ凹部16eの集合を同一円周上に角度180°ずらして設けている。これらの一対のノッチ凹部16e、16e(第1係合部)に係合する複数のノッチ凸部17c、17c(第2係合部)が、張力表示部17の円筒部17aの内周面に設けられている。そして工場組付時またはメンテナンス時において、設定された上糸張力の下で、この上糸張力を実現する糸調子ばね15の荷重に対応する表示溝17dが指示溝3aにくるように、張力表示部17に設けた微調整爪17jを摘んで、張力設定ナット16の一対のノッチ凹部16e、16eに張力表示部17の一対のノッチ凸部17c、17cを係合させる。従って、矢印X1,X2方向において張力設定ナット16および張力表示部17の相対位置を調整でき、ミシン1の組付時またはメンテナンス時において、調子ばね15の自由長、ばね定数と、張力設定ナット16と、張力表示部17と、ばね受け14と、糸調子皿12、13の寸法の製作のバラツキを吸収する微調整が可能となる利点が得られる。結果として、工場等のミシン1を組付けるときまたはメンテナンスにおいて、必要な上糸張力調整範囲の位置を決める微調整機能を具備した上糸張力調整装置5を備えたミシン1を提供できる。
【0050】
[実施例2]
本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図11を準用できる。本実施例においても、上糸張力を示す張力目盛り90の始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くできる。図13は本実施例に係る上糸張力特性を示す。図13の特性線W3は、上糸張力をTに設定させつつ、糸調子ダイヤル19の回転操作量が360°である従来技術に相当する。これに対して本実施例によれば、図13の特性線W4に示すように、糸調子ダイヤル19の回転操作量に対する上糸張力の変化量をα3を従来技術と同一に設定させつつ、糸調子ダイヤル19の回転操作量を360°×n(n=2)、つまり720°に設定させている。本実施例によれば、特性線W4に示すように、糸調子ダイヤル19の回転操作量に対する上糸張力の変化量α3が従来技術と同じであるため、上糸張力の最大値をT2(基本的にはT2=T1×2)にでき、従来技術(上糸張力の最大値:T1)に比べて、上糸張力の最大値がT2に増大できる利点が得られる。このような本実施例では、厚い布や多重に重ねた布を容易に縫製できる。更に張力調整範囲が0〜T2の範囲となり、広がる。なお本発明に係るミシンでは、特性線W2に示す形態、あるいは、特性線W4に示す形態のいずれかを選択できる。
【0051】
[実施例3]
図14は実施例3を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図13を準用できる。本実施例においても、上糸張力を示す張力目盛り90の始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くできる。ミシン200は、ベッド部201と、ベッド部201の端側から上向きに延びる縦アーム部202と、縦アーム部202の上部から横方向に延びる横アーム部203とを有する。これらは基体を構成する。横部アーム203は、針が取り付けられる針棒205と、針棒205を昇降降させる押さえレバー6と、上糸張力調整装置(図示せず)とを有する。
【0052】
[そのほか]
螺旋可動体は、雌ねじ16dを有する張力設定ナット16と、張力目盛り90を螺旋方向に設けた張力表示部17とで形成されているが、これに限らず、張力表示部17を廃止し、雌ねじ16dを有する張力設定ナット16の外周面に張力目盛り90を、これが表示窓3wから露出するように螺旋方向に沿って直列に並設させることもできる。本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0053】
1 ミシン
3 ミシン外郭(固定部)
3w 表示窓、
4 上糸
5 上糸張力調整装置
8 変換機構
11 軸
11a 雄ねじ部
11b 軸部(他端)
11c 軸部(一端)
12 糸調子皿(固定側糸調子皿)
13 糸調子皿(可動側糸調子皿)
15 糸調子ばね
16 張力設定ナット(張力設定作動部,螺旋可動体)
16e ノッチ凹部(第1係合部)
16d 雌ねじ
17 張力表示部(螺旋可動体)
17a 円筒部
17c ノッチ凸部(第2係合部)
18 操作安定ばね
19 糸調子ダイヤル
90 張力目盛り
P 軸線
【技術分野】
【0001】
本発明は、上糸張力を調整する上糸張力調整装置を備えたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンとして、図15に示すように、ミシン基枠101に糸調子器110(上糸張力調整装置)がねじ103により固定され、糸調子器110の操作ダイヤル117の一部が外カバー102の開口部102aから突出するように外ケース102を設けたミシン100(ミシンの部分図)が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
図16は、図15に示す従来の糸調子器110の説明図を示す。図16に示すように糸調子器110は、糸調子板111にリードねじ部112aを設けた糸調子軸112の一端が固定されている。そして、糸調子軸112の他端から上糸を挟持して張力を付与する一対の糸調子皿113、113と、糸調子ばね114と、リードねじ部112aに係合するばね押さえ115と、押さえばね116と、操作ダイヤル117とがこの順に挿入される。ストッパー118は、ミシン組付時において操作ダイヤル117の糸調子軸112からの離脱を阻止するため設けられている。糸調子ばね114は、一対の糸調子皿113、113にばね荷重を付与し、押さえばね116は操作ダイヤル117にばね荷重を付与している。操作ダイヤル117は同軸に配置された2つの筒部分を備え、中央側の円筒部には糸調子軸112に平行な溝117aが設けられている。溝117aにばね押さえ115の外周先端部分115aが係合する。そして、操作ダイヤル117の外側の外周面117pには、上糸張力設定レベルを示す数値が記載されており、ユーザが操作ダイヤルを一回転以内の範囲で回転させる。すると、ばね押さえ115は連動して回転すると共に、操作ダイヤル117に対し糸調子軸112の軸長方向にスライドする。これにより、糸調子皿113とばね押さえ115との距離が変化して、糸調子皿113の押付荷重が変化し、上糸張力が調整される。なお、この糸調子器付きミシン100では、外カバー102がミシン基枠101に取付けられた状態では、操作ダイヤル117の一部が外カバー102の開口部102aから突出すると共に、操作ダイヤル117の図16における右側の端面117bが外カバー102の開口部102aの右側の端面102bに当接している。
【0004】
また、従来、ダイヤルを固定した状態でリングを回動させるだけの操作で張力を変えないで目盛りの表示を変更させる糸調子器が開示されている(特許文献2参照)。このものでは、リング1回転以内の回転角度において全ての上糸張力目盛りを表示する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−309062号公報
【特許文献2】特開平07−284584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1によれば、上糸張力の設定レベルを示す数値は、操作ダイヤル117の外周面において螺旋方向でなく周方向に沿って表示されており、上糸張力を示す張力目盛りの表示は、操作ダイヤル117の軸線回りの1回転(360°)以内に制限される。従って、張力目盛りの始点から終点までの距離は360°以内に制限される。よって、張力目盛りの始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くできない。この場合、上糸張力を示す張力目盛りをきめ細かく設定させるには限界がある。更には、操作ダイヤル117の軸線回りの1回転(360°)以内に制限されるため、上糸張力の最大値を増加させるにも限界がある。この場合であっても、操作ダイヤル117の外径を増加させれば、操作ダイヤル117の外周部の周長が増加されるため、張力目盛りの始点から終点までの距離を増加できるものの、操作ダイヤル117の外径が過剰に大型化されるおそれがある。
【0007】
特許文献2に係る技術についても、前述したようにリング1回転以内の回転角度で全ての上糸張力目盛りを表示する必要があり、従って、張力目盛りの始点から終点までの距離は360°以内に制限され、従って、上糸張力を示す張力目盛りの始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くできず、上糸張力を示す張力目盛りをきめ細かく設定させるには限界がある。
【0008】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、上糸張力を示す張力目盛りの始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くできるミシンを提供することを課題する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、請求項1に係るミシンは、基体と基体に設けられた上糸張力調整装置とをもつミシンであって、上糸張力調整装置は、(i)基体に固定され上糸張力表示用の表示窓を有する固定部と、(ii)軸線をもつ雄ねじを有すると共に軸線回りの回転が抑えられた状態で固定部に固定された軸と、(iii)軸の軸線の延びる軸長方向の一端側に設けられ回転操作に伴い軸線回りで回転可能な糸調子ダイヤルと、(iv)軸の軸長方向の他端側に設けられた固定側糸調子皿と、(v)軸の軸長方向において移動可能に軸に設けられ固定側糸調子皿とで上糸を挟持させる可動側糸調子皿と、(vi)糸調子ダイヤルの回転操作に連動して回転するように糸調子ダイヤルに係合すると共に軸に螺進退可能に保持され、軸の雄ねじに対して螺進退可能に螺合する雌ねじと、軸線回りの螺旋方向において直列に並設され上糸張力の大きさを示す張力目盛りとを有し、雄ねじおよび雌ねじの螺合により軸線回りで周方向に回転しつつ軸線の延びる軸長方向において軸に沿って可動側糸調子皿に対して前進または後退して上糸張力を調整し、現在の上糸張力を示す張力目盛りを表示窓から露出させて表示させる螺旋可動体と、(vii)螺旋可動体と可動側糸調整皿との間に介装され、螺旋可動体と可動側糸調整皿とにそれぞれ反対方向の付勢力を付勢する糸調子ばねとを具備する。
【0010】
本発明に係るミシンによれば、糸調子ダイヤルの回転操作に伴い、螺旋可動体の雌ねじは、軸の雄ねじに対して螺進退するため、螺旋可動体は螺合移動し、すなわち、軸線回りで周方向に回転しつつ軸線の延びる軸長方向において軸に沿って移動する。これにより螺旋可動体は、可動側糸調子皿に対して軸に沿って前進したり後退したりする。螺合移動とは、雄ねじおよび雌ねじが螺合しつつ軸長方向に移動することをいう。螺旋可動体が一方向に螺合移動して可動側糸調子皿に対して前進すると、糸調子ばねが可動側糸調子皿を付勢させる付勢力が増加し、可動側糸調子皿が固定動側糸調子皿に向けて強く付勢される。よって可動側糸調子皿と固定動側糸調子皿とが上糸を挟持する挟持力は、増加し、上糸張力は増加する。これに対して螺旋委可動体が逆方向に螺合移動して可動側糸調子皿に対して後退すると、糸調子ばねが可動側糸調子皿を付勢させる付勢力が減少し、可動側糸調子皿が固定動側糸調子皿を付勢する付勢力が弱くなる。よって可動側糸調子皿と固定動側糸調子皿とが上糸を挟持する挟持力は減少し、上糸張力は減少する。
【0011】
上記したように糸調子ダイヤルの回転操作に連動して螺旋可動体が螺合移動するとき、螺旋可動体は、螺合移動し、軸線回りで周方向に回転しつつ軸線の延びる軸長方向において軸に沿って移動する。このとき、上糸張力の大きさを示す張力目盛りは、螺旋可動体の軸線回りの螺旋方向において直列に並設されているため、張力目盛りの始点から終点までの距離は360°以内に制限されず、360°以上とさせることができる。例えば、螺旋可動体が軸線回りで2回転する方式であれば、張力目盛りの始点から終点までの距離は、基本的には720°(360°×2=720°)にできる。螺旋可動体が軸線回りで3回転する方式であれば、基本的には1080°(360°×3=1080°)にできる。螺旋可動体が軸線回りで4回転する方式であれば、基本的には1080°(360°×4=1440°)にできる。このため360°以内に制限される従来技術(特許文献1)に比較して、張力目盛りの始点から終点までの距離を長くでき、張力目盛りを細かい刻み幅で表示させることができる。
【0012】
(2)請求項2に係るミシンによれば、上記様相1において、螺旋可動体は、軸に同軸的に保持され軸線の回りで回転すると共に軸長方向において前進および後退可能な張力設定作動部と、張力設定作動部に連動する張力表示部とを有しており、張力設定作動部は雌ねじをもち、張力表示部は表示窓に露出可能な張力目盛りをもつ。
【0013】
糸調子ダイヤルの回転操作に伴い、張力設定作動部の雌ねじは、軸の雄ねじに対して螺進退するため、張力設定作動部は、軸線回りで周方向に回転しつつ軸線の延びる軸長方向において軸に沿って移動する。これにより張力設定作動部は、可動側糸調子皿に対して前進したり、後退したりする。張力設定作動部が可動側糸調子皿に対して前進すると、糸調子ばねが可動側糸調子皿を付勢させる付勢力が増加し、可動側糸調子皿が固定動側糸調子皿に向けて強く付勢される。よって可動側糸調子皿と固定動側糸調子皿とが上糸を挟持する挟持力は、増加し、上糸張力は増加する。これに対して張力設定作動部が可動側糸調子皿に対して後退すると、糸調子ばねが可動側糸調子皿を付勢させる付勢力が減少し、可動側糸調子皿が固定動側糸調子皿を付勢する付勢力が弱くなる。よって可動側糸調子皿と固定動側糸調子皿とが上糸を挟持する挟持力は減少し、上糸張力は減少する。
【0014】
上記したように糸調子ダイヤルの回転操作に伴い張力設定作動部が動作するとき、張力設定作動部は、軸線回りで周方向に回転しつつ軸線の延びる軸長方向において軸に沿って移動する。このとき、上糸張力の大きさを示す張力目盛りは、張力表示部において、軸線回りの螺旋方向において直列に並設されているため、上糸張力を示す張力目盛りの始点から終点までの距離は360°以内に制限されず、張力目盛りの始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くでき、360°以上とさせることができる。
【0015】
(3)請求項3に係るミシンによれば、上記様相1において、張力設定作動部は複数または単数の第1係合部をもち、張力表示部は第1係合部と係合可能な複数または単数の第2係合部をもち、第1係合部および第2係合部の係合により、張力設定作動部および張力表示部の相対組付位置は、軸線と平行な方向において位置調整可能とされており、糸調子ばねのばね荷重が調整可能とされている。組付時やメンテナンス時等において、第1係合部および第2係合部の係合により、張力設定作動部および張力表示部の相対組付位置を、軸線と平行な方向において位置調整できる。この結果、糸調子ばねのばね荷重を調整できる。この場合、糸調子ばねのばね荷重がばらつく場合に対処できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上糸張力の大きさを示す張力目盛りは、螺旋可動体において、軸線回りの螺旋方向において直列に並設されているため、張力目盛りの始点から終点までの距離を長くでき、上糸張力を示す範囲を一回転(360°)以上とさせることができる。
【0017】
このため360°以内に制限される従来技術(特許文献1,2)に比較して、図12の特性線W2として例示されるように、上糸張力を示す張力目盛りの始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くできる。この場合、張力目盛りを細かい刻み幅で表示させることができる。上糸張力の微調整に有利である。また、糸調子ダイヤルおよび軸線の回りで一回転(360°)以上回転できるので、糸調子ダイヤルの回転操作量(回転量)に対する上糸張力の変化量は緩やかな特性になり、上糸張力を希望値に容易に調整できる利点が得られる。
【0018】
また、糸調子ダイヤルおよび螺旋可動体が軸線回りで一回転(360°)以上回転できるので、図13の特性線W4として例示されるように、糸調子ダイヤルの回転操作量に対する上糸張力の変化量α3を従来技術と同一に設定させつつ、糸調子ダイヤルおよび螺旋可動体の回転操作量を一回転(360°)以上に設定させることもできる。この場合、従来技術に比べて上糸張力の最大値を増大でき、張力調整範囲を拡大できる利点が得られる。このように上糸張力の最大値を増大できるため、厚い布や多数枚重ねた布を縫うときであっても、容易に縫製できる利点が得られる。
【0019】
さらに、糸調子ダイヤルおよび張力設定作動部は1回転以上回転できるので、上糸張力の最大値および最小値が従来技術と同じ場合には、従来技術のばね押さえに比べて張力設定作動部の雄ねじ部のリード角を減少できる。これにより、糸調子ダイヤルの回転操作量に対する上糸張力の変化量が緩やかで、上糸張力の最大値を所定値に確保しつつ、張力設定作動部を螺合移動させる回転力を従来技術に比べて減少できるので、本発明の上糸張力調整装置を備えたミシンは糸調子ダイヤルの回転トルクが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例に係る上糸張力調整装置を備えたミシンの糸調子ダイヤル付近の斜視図である。
【図2】上糸張力調整装置の分解斜視図である。
【図3】上糸張力調整装置の断面図である。
【図4】張力設定ナットと張力表示部との係合部の説明図である。
【図5】張力設定ナットの円筒部外周面の部分展開図である。
【図6】張力設定ナットと糸調子ダイヤルとの取付け説明のための斜視図である。
【図7】図3に示すAA断面図である。
【図8】張力表示部の円筒部の外周面の部分展開図である。
【図9】表示窓で表示されている張力目盛り付近を示す説明図である。
【図10】張力表示部の外周部に設けられている張力目盛りを展開した展開図である。
【図11】比較例に係り、張力表示部の外周部に設けられている張力目盛りを展開した展開図である。
【図12】実施例1に係る上糸張力の特性を示すグラフである。
【図13】実施例2に係る上糸張力の特性を示すグラフである。
【図14】実施例3に係るミシンを示す正面図である。
【図15】従来技術に係る上糸張力調整装置を示す側面図である。
【図16】従来技術に係る上糸張力調整装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ミシンは、針が取り付けられる昇降可能な針棒および針を昇降させる昇降機構をもつ基体と、基体に設けられた上糸張力調整装置とをもつ。基体は、一般的には、ベッド部と、縦アーム部、横アーム部とを有する。固定部は基体(例えば横アーム部)に固定されている部位であり、上糸張力表示用の表示窓を有する。螺旋可動体は、糸調子ダイヤルの回転操作に連動して回転するように軸に保持されている。螺旋可動体は、軸の雄ねじに対して螺進退可能に螺合する雌ねじと、軸線回りの螺旋方向において直列に並設され上糸張力の大きさを示す張力目盛りとを有する。雄ねじおよび雌ねじの螺合により、螺旋可動体は軸の雄ねじに対して螺合移動し、すなわち、軸線回りで周方向に回転しつつ軸線の延びる軸長方向において軸に沿って可動側糸調子皿に対して前進または後退する。これにより上糸に与えられる現在の張力目盛りを表示窓から露出させて表示させる。螺旋可動体は、軸に同軸的に保持され軸線回りで回転すると共に軸長方向において前進および後退可能な張力設定作動部と、張力設定作動部に連動する張力表示部とを有する構造とすることができる。この場合、張力設定作動部は雌ねじ部をもち、張力表示部は表示窓に露出可能な張力目盛りをもつ。螺旋可動体は、2部品等の複数部品で形成されていても良いし、単数部品で形成されていても良い。例えば、螺旋可動体は、軸の雄ねじと螺合する雌ねじをもつ第1部品と、張力目盛りをもつと共に第1部品と連動する第2部品とで形成されていても良い。
【0022】
[実施例1]
以下、請求項1に係る本発明の実施例1について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本実施例に係る上糸張力調整装置を備えたミシンのユーザ操作用の糸調子ダイヤル19付近の斜視図を示す。図2は図1に示す上糸張力調整装置の分解斜視図を示す。図1に示すように、本実施例のミシン1は横アーム1c(基体の一部)をもち、横アーム1cは機枠2(固定部の一部)を有する。機枠2は、ユーザが視認できるように外方に露出する表示窓3wをもつミシン外郭3(固定部の一部)を備える。ユーザが上糸張力を調整するための上糸張力調整装置5は、機枠2に設けられている。
【0023】
図2は上糸張力調整装置5の分解図を示す。図3(a)(b)は上糸張力調整装置5の作用状態を示す。図2に示すように、上糸張力調整装置5は、上糸張力を調整する張力調整部10と、上糸4を脱着させる糸緩め部30とを備える。図2,図3に示すように、張力調整部10は、軸線Pをもつ軸11と、糸調子ダイヤル19と、固定側糸調子皿12と、可動側糸調子皿13と、張力設定ナット16と、張力表示部17と、コイルばね状の糸調子ばね15とを備える。図3に示すように、軸11の軸線Pが延びる軸長方向の端部11b(他端)がミシン1の機枠2(固定部)に固定されている。従って、軸11は、軸線Pが延びる軸長方向(矢印X1,X2方向)において移動せず、且つ、非回転であり軸線Pまわりの回転は抑えられている。ユーザが糸調子ダイヤル19をこれの周方向に沿って軸線P回りで、図1における上方向(一方向)または下方向(他方向)へ回転させると、上糸張力調整装置5の張力表示部17が表示窓3wにおいて糸調子ダイヤル19の回転角度に比例して図1の図示左側(軸長方向の一方向)または図示右側(軸長方向の他方向)へ移動し、上糸張力が調整される。糸調子ダイヤル19は回転するものの、軸長方向(矢印X1,X2方向)において移動しない。なお、軸11,張力設定ナット16,糸調子ダイヤル19、張力表示部17は軸線Pに対して同軸的に配置されているため、軸線Pは、張力設定ナット16,糸調子ダイヤル19、張力表示部17の軸線に相当する。
【0024】
図2に示すように、糸緩め部30は上糸張力を開放するものであり、糸調子皿12に対し糸調子皿13を離間させて上糸4を脱着させるものであり、糸緩め作用板31と止め輪32とを備える。糸緩め作用板31の穴31aをミシン1の機枠2に設けた軸2aに挿入して、軸2aに止め輪32を装着し、糸緩め作用板31の軸2aからの離脱を阻止する。そして、糸緩め作用板31の溝31bに押さえレバー6(図1参照)の先端よりリンクしたレバーの先端部分(図示せず)を配置する。これにより押さえレバー6を上方に移動させると、押さえレバー6の先端よりリンクしたレバーの先端部分が糸緩め作用板31の爪部31bに当接して、糸緩め作用板31が軸2aを回転中心に回動する。糸緩め作用板31が回動すると、糸緩め作用板31の作用点31dが糸調子皿13の外周側から突出した作用部13aに当接して、糸調子皿13と糸調子皿12との間に間隙が生じる。これにより上糸張力は開放され、上糸4を取付および離脱できる。そして、押さえレバー6を元の位置に戻すと糸調子皿13は元の位置に戻り、上糸張力は復活する。
【0025】
図3は、図2に示す上糸張力調整装置5の断面図を示す。図3(a)は上糸張力の最大設定状態を示す。図3(b)は上糸張力の最小設定状態を示す。図2及び図3に示すように張力調整部10は、軸11と、糸調子皿12,13と、ばね受け14と、糸調子ばね15と、張力設定ナット16(張力設定作動部,螺旋可動体)と、張力設定ナット16と一体的に周方向および軸長方向(矢印X1,X2方向)に連動する張力表示部17(螺旋可動体)と、コイル状の操作安定ばね18と、糸調子ダイヤル19と、糸調子ダイヤル19の円筒部19cの両端に設けた平座金20,20と、軸11の端部11c(一端)側の溝11dに装着される止め輪21とを備える。
【0026】
糸調子皿12を装着した軸11の端部11b(他端)は、軸11が軸線P回りで回転しないように且つ軸長方向(矢印X1,X2方向)に移動しないように、機枠2に固定されている。これにより糸調子皿12は、機枠2と軸11とにより挟着される。そして、軸11の中央部分には雄ねじ部11aが設けられている。張力設定ナット16は軸線P回りに形成された雌ねじ16dを有する。雌ねじ16dは、雄ねじ部11aに螺進退可能に螺合している。張力設定ナット16は軸線P回りで回転可能とされており、回転しつつ軸長方向(矢印X1,X2方向)に沿って移動する。図3に示すように、軸11のうち、張力設定ナット16と糸調子皿12との間の軸部分には、順次糸調子皿13と、ばね受け14と、糸調子ばね15とが挿入されている。糸調子ばね15は、張力設定ナット16と糸調子皿12とにそれぞれ反対方向の付勢力を付勢する。この状態において、糸調子ばね15の両端は、ばね受け14の面14aと張力設定ナット16の面16baに当接する。糸調子皿13はばね受け14を介して糸調子ばね15の付勢力(以後、ばね荷重)が矢印X1方向に付与される。これにより糸調子皿13が糸調子皿12に当接または接近し、上糸4は糸調子皿12と糸調子皿13とに挟持される。そして、張力設定ナット16がこれの周方向に軸線Pまわりで回転されると、面14aと面16baとの間の距離L1が変化する。よって、糸調子皿13を押圧する糸調子ばね15のばね荷重(矢印X1方向)も変化し、上糸4と糸調子皿12、13との間の摩擦力が変化して上糸4の張力が変化する。このように摩擦力が増減すると、上糸4の張力が増減される。
【0027】
図4は、張力設定ナット16と張力表示部17との係合部の説明図で軸11を省略して示す。図4(b)は図4(a)のBB断面を示す。図4(b)の細線の×印はノッチ凹部16e(第1係合部)の谷部分を示す。尚、後述するノッチ凸部17c(第2係合部)に係合したノッチ凹部16eの谷部分は×印を削除している。図4(a)に示すように、張力設定ナット16(張力設定作動部)は筒形状をなしており、円筒部16aと、円筒部16aの内周部に設けられた雌ねじ16dを備えたボス部16bと、円筒部16aとボス部16bとを繋ぐ円板部16cとを有する。ボス部16bの窪み部分の面16baは糸調子ばね15の端面が当接する。張力設定ナット16の雌ねじ16dは軸11の雄ねじ部11aに螺進退可能に螺合する。なお、雌ねじ16dおよび雄ねじ部11aが螺合して螺進退するときであっても、軸11は非回転であり且つ軸長方向に移動しないため、張力設定ナット16が回転しつつ矢印X1,X2方向に移動する。
【0028】
図5は、張力設定ナット16の円筒部16aの外周面の部分展開図を示す。図4に示すように円筒部16aの図4(a)における右端面(一端面)には、C線(図4(b))を起線に右回りに中心角180°の範囲において、面16baからの距離Hが徐々に増加すると共に等ピッチ、複数個のノッチ凹部16eが設けられている。そして、これらの複数個のノッチ凹部16eにより一組のノッチ凹部の集合が形成される。図5に示すように、張力設定ナット16の円筒部16aの外周面を展開した状態では、(円周長さ)/2の範囲(中心角180°)において、複数個のノッチ凹部16eの谷および山を結ぶ線は、それぞれ同じ傾きの直線をなす。そして円筒部16aの外周面は、中心角180°の範囲のノッチ凹部16eの集合が、180°ずれて二組配置されている(図4(b))。これにより円周上に角度180°ずれて、一対のノッチ凹部16e、16eが、複数個、円筒部16aの図4(a)における右端面に設けられている。一対のノッチ凹部16e、16eの面16baからの各々の距離H、Hは等しい。
【0029】
図4(a)および(b)に示すように、筒状の張力表示部17は、円筒部16aにこれの外周側から嵌合する。張力表示部17は、円筒部17aと、円筒部17aの内周面の軸長方向の途中に環状円板部17bと、環状円板部17bの図4における左側(他方向)へ延在し円筒部17aの内周面から径内方向に僅か突起する複数個(一対)のノッチ凸部17c、17cとを備える。一対のノッチ凸部17c、17cは、円筒部17aの内周面において互に180°ずれた位置に設けられると共に、一対のノッチ凸部17c、17cの各々の先端から面17baまでの各々の距離は等しい。環状円板部17bの窪み部分の面17baには、操作安定ばね18の端面が当接する。
【0030】
そして、張力表示部17の円筒部17aの部位17ao(図4における左側)の内周面は、張力設定ナット16の円筒部16aの外周面に同軸的に嵌合している。張力設定ナット16の一対のノッチ凹部16e、16e(第1係合部)と、張力表示部17の一対のノッチ凸部17c、17c(第2係合部)とが互いに係合する。この結果、張力設定ナット16および張力表示部17と一体的に連動して動作できる。
【0031】
ここで、ノッチ凸部17cが係合ノッチ凸部17cが係合するノッチ凹部16eが異なると、張力設定ナット16の面16baと張力表示部17の面17baとの距離L3(図4(a)参照)の長さを調整できる。このように距離L3を調整できれば、張力設定ナット16および張力表示部17の相対組付位置を軸線Pと平行な方向において位置調整でき、組付時やメンテナンス時等において糸調子ばね15のばね荷重を微調整できる利点が挙げられる。これにより糸調子ばね15のばね荷重のばらつきに対処できる。
【0032】
ノッチ凹部16eとノッチ凸部17cとの係合は、係合部7を形成する。係合部7により張力設定ナット16の回転が張力表示部17に伝達され、張力設定ナット16および張力表示部17は一体的に連動する。更に、操作安定ばね18のばね荷重によりノッチ凸部17cを介してノッチ凹部16eが押圧されて、張力設定ナット16の軸長方向(矢印X1,X2方向)の移動が張力表示部17に伝達される。これにより張力設定ナット16が軸線P回りで螺進退すると、張力設定ナット16と一体となって張力表示部17も連動して同方向に軸線P回りで回転しつつ軸長方向(矢印X1,X2方向)へ移動する。すなわち、張力設定ナット16が軸線P回りで回転して軸長方向(矢印X1,X2方向)に移動すると、張力表示部17も軸線P回りで同方向に回転しつつ軸長方向(矢印X1,X2方向)に移動する。
【0033】
図3に示すように、軸11の雄ねじ部11aの端部11c(一端側)には、平座金20と、糸調子ダイヤル19と、平座金20とがこの順に挿入される。そして糸調子ダイヤル19は、軸11の溝11dに装着した止め輪21により軸11からの離脱が阻止されると共に、軸11の軸線Pを中心に自在に回転できる。なお、糸調子ダイヤル19は軸線P回りで回転できるものの、軸長方向(矢印X1,X2方向)に移動しない。
【0034】
図3に示すように、張力表示ナット16に備えた張力表示部17の面17baと糸調子ダイヤル19の内側の面19bとの間には、糸調子ダイヤル19の円筒部19cの外周面をガイドにして、操作安定ばね18が設けられている。操作安定ばね18の両端面は面17baと面19bに圧接する。そして、操作安定ばね18のばね荷重により糸調子ダイヤル19が押圧される。このばね荷重による摩擦力が糸調子ダイヤル19と平座金20との間に生じるが、平座金20を摺動材として使用することで摩擦力が大幅に低減される。
【0035】
図6は、張力設定ナット16と糸調子ダイヤル19との取付け構造を説明する斜視図を示す。図7は図3のAA断面図を示し、図中、操作安定ばね18を省略している。図2および図3に示すように、糸調子ダイヤル19には、円筒部19aと円筒部19cとの間にスライドレール19d(係合子)が設けられている。図7に示すように、スライドレール19dは、張力表示部17の環状円板部17bに設けた円弧形状の長穴17bb(図7参照,第1被係合子)と、張力設定ナット16の円板部16cに設けた穴16g(図4(b)参照,第2被係合子)とを貫通し、更に、円筒部16aの内周面に設けたスライドレール溝16f(図6参照,第3被係合子)に挿入される。そして、スライドレール19dとスライドレール溝16fとの嵌合により変換機構8が形成される(図6参照)。変換機構8より、糸調子ダイヤル19がこれの周方向に軸線P回りで回転すると、スライドレール溝16fがスライドレール19dをスライドしつつ、張力設定ナット16は連動して同方向に回転する。この場合、糸調子ダイヤル19の回転角度に比例して、張力設定ナット16は糸調子ダイヤル19に対して軸長方向(矢印X1,X2方向)に移動する。このようにスライドレール19dをスライドするため、張力設定ナット16が糸調子ダイヤル19に対して軸長方向に移動することは許容される。尚、スライドレール溝16fは、張力設定ナット16に備えた張力表示部17に設けても良い。また、スライドレール19dを張力設定ナット16あるいは張力表示部17に設け、スライドレール溝16fを糸調子ダイヤル19に設けても良い。
【0036】
次に、糸調子ダイヤル19の回転を停止させるストッパー機構について説明する。図2に示すように、機枠2には面2cから垂直に起立するストッパー2bが設けられている。ストッパー2bは糸調子皿12と、糸調子皿13およびばね受け14の各溝12a、13b、14bを通過してばね受け14の面14a(図3参照)から突出している。図8は、張力表示部17の円筒部17aの外周面の部分展開図である。図8に示すように、円筒部17aの一方の端面17eは、展開すると円筒部17aの他方の端面17i(図3、図4参照)に対して、傾斜した直線形状に形成されている。これにより図4に示すように、張力表示部17の円筒部17aの端面17eには、つる巻線形状の切り欠け部分17fが形成されている。切り欠け部分17fはストッパー2bに平行なストッパー面17g(図8の矢印間範囲W)を形成する。ここで、糸調子ばね15のばね荷重を増加させる方向へ、糸調子ダイヤル19を回転させていくと、図3(a)に示すように、張力表示部17のストッパー面17gは、ストッパー2bに当接して糸調子ダイヤル19の回転は停止され、上糸張力が最大状態になる。
【0037】
一方、糸調子ばね15のばね荷重を減少させる方向へ、糸調子ダイヤル19をこれの周方向に回転させていくと、図3(b)に示すように、張力表示部17の端面17iが、糸調子ダイヤル19の面19bに当接して糸調子ダイヤル19の回転は停止され、上糸張力が最小状態になる。そして、糸調子ダイヤル19の回転角度は、上糸張力の最小値から最大値までにおいて回転角度360°(1回転)以上を確保される。本実施例では、糸調子ダイヤル19の回転角度は、上糸張力の最小値から最大値までにおいて回転角度360°×n(n=2,720°)とされている。尚、ストッパー2bは、糸調子皿13とばね受け14の各溝13b、14b(図2参照)が当接することにより、糸調子皿13とばね受け14の回転を阻止する機能も兼ねている。
【0038】
なお、糸調子ばね15と操作安定ばね18のばね定数は同じに設定されることが好ましい。但しこれに限定されるものではない。また、上糸張力最大状態における糸調子ばね15のばね荷重F1 maxと、上糸張力最小状態における操作安定ばね18のばね荷重F2 maxは同じ値Fmaxに設定すると共に、上糸張力最小状態における糸調子ばね15のばね荷重F1 minと、上糸張力最大状態における操作安定ばね18のばね荷重F2 minも同じ値Fminに設定される。本実施例ではFmin=0に設定している。
【0039】
次に、本発明の実施例に係るミシン1の作動および効果について説明する。上糸張力を増加させる場合には、ユーザーは、押さえレバー6(図1参照)を図1における上方向(一方向)へ動かし、糸調子皿12と糸調子皿13との間に生じる間隙に上糸4を挿入する。更に、ユーザは、押さえレバー6を元の位置に戻して、糸調子皿12と糸調子皿13とで上糸4を挟持する。次に、希望する上糸張力に設定するため、例えば、ユーザは、糸調子ダイヤル19をこれの周方向において軸線P回りで図1における上方向(一方向)へ回転操作する。この回転操作により、変換機構8のスライドレール19dとスライドレール溝16fとを介して、張力設定ナット16は、糸調子ダイヤル19に連動して螺合移動し、すなわち、軸線Pの回りで回転しつつばね受け14方向へ軸長方向(矢印X1方向)へ移動する。即ち、張力設定ナット16は、ばね受け14へ接近するように螺合移動(矢印X1方向へ前進)する。上述の張力設定ナット16の螺合移動は、係合部7のノッチ凹部16eとノッチ凸部17cとを介して、張力表示部17へ伝達される。このため、張力表示部17も同様に、螺旋移動し、ばね受け14へ近づくよう、軸線P回りで回転しつつ軸長方向(矢印X1方向)へ前進する。これにより、糸調子ばね15の長さL1(図3(a)参照)が短縮される。よって、ばね受け14を介し糸調子皿13に作用する糸調子ばね15のばね荷重が増加する。従って、糸調子皿12と糸調子皿13とに挟持されている上糸4と糸調子皿12、13との間の摩擦力も増大して、上糸4の張力が増加される。一方、操作安定ばね18の長さL2は伸長され、操作安定ばね18のばね荷重が減少する。
【0040】
また、上糸張力を減少させる場合には、ユーザは、糸調子ダイヤル19をこれの周方向にそって軸線P回りで、図1における下方向(他方向)へ回転操作する。すると、張力設定ナット16と張力表示部17(螺旋可動体)は、前述と逆方向へ螺合移動する。これにより張力設定ナット16は、ばね受け14から離間するように軸長方向(矢印X2方向)へ後退する。これにより糸調子ばね15の長さL1(図3(a)参照)が伸長され、ばね受け14を介し糸調子皿13に作用する糸調子ばね15のばね荷重が減少する。このため、上糸4と糸調子皿12、13との間の摩擦力が減少し、上糸4の張力が減少する。このとき、操作安定ばね18の長さL2は短縮されて、ばね荷重が増大する。以上説明したように、ユーザは、糸調子ダイヤル19を軸線P回りで回転操作して、上糸4の張力を希望値に設定することができる。
【0041】
従来技術のミシン100では、前述したように、糸張力設定レベルを示す数値で表された張力目盛りが操作ダイヤル117(図15,図16参照)の外周部に周方向に沿って表示されているため、目盛りの重合を防止するため、上糸張力設定レベルの範囲は一回転(360°)以内に制限される。しかしながら本実施例によれば、糸調子ダイヤル19の回転操作に伴い、張力設定ナット16(螺旋可動体)の雌ねじ16は、軸11の雄ねじ11aに対して螺進退するため、張力設定ナット16(螺旋可動体)は軸線Pに対して螺旋方向に螺合移動し、すなわち、軸線P回りで周方向に回転しつつ軸線Pの延びる軸長方向(矢印X1,X2方向)において軸11に沿って移動する。これにより張力設定ナット16(螺旋可動体)が糸調子皿13に対して前進したり後退したりする。上記したように糸調子ダイヤル19の回転操作に伴い張力設定ナット16(螺旋可動体)が螺旋方向に螺合移動するとき、張力設定ナット16は、軸線P回りで周方向に回転しつつ軸線Pの延びる軸長方向(矢印X1,X2方向)において軸11に沿って移動するため、張力設定ナット16と一体となって回転する張力表示部17は、一回転(360°)以上の範囲を表示可能である。
【0042】
ところで、図9に示すように、ミシン外郭3のうち表示窓3w付近には、基準マーク150が形成されている。基準マーク150は、軸線Pと平行な方向に沿って延設されており、ユーザの肉眼視で水平方向に沿っている。図10は、張力表示部17の円筒部17aの外周部を展開させた展開図を示す。図10に示すように、張力表示部17の円筒部17aの外周部には、上糸張力の大きさを示す張力目盛り90が、軸線Pに対する螺旋方向(矢印S方向)に沿って設けられている。図10に示すように、張力目盛り90は、張力最小値を示す最小目盛り91から、張力標準値を示す標準目盛り92を経て、張力最大値を示す最大目盛り93にかけて段階的に数値目盛り94が直列に並設されて構成されている。このように張力目盛り90は、張力表示部17の円筒部17aの外周部において、軸線P回りの螺旋方向(矢印S方向)において直列に並設されて構成されている。
【0043】
図10に示すように、張力目盛り90は螺旋方向(矢印S方向)に直列に延設されているため、張力目盛り90が示す目盛りは、張力表示部17の円筒部17aの外周部の回りを複数回巻回されているものの、軸長方向(矢印X1,X2方向)においてΔM(図10参照)ぶん互いに離れており、各目盛りを互いに識別できる。従って、張力目盛り90の始点(最小目盛り91)から終点(最大目盛り93)までの距離は、360°以内に制限されず、360°×nとさせることができる。このような本実施例では張力表示部17の回転角度を360°以上できる。本実施例では、n=2とされており、張力表示部17の回転角度は360°×2=720°とされている。従って、張力表示部17と回転が連動する張力設定ナット16および糸調子ダイヤル19の回転角度も720°とされている。
【0044】
このように本実施例では、軸線P回りの張力表示部17(螺旋可動体)の回転角度は、720°である。このため360°以内に制限される従来技術(特許文献1,2)に比較して、張力目盛り90の始点(最小目盛り91,張力最小値)から終点(最大目盛り93,張力最大値)までの距離を長くできる。更に、糸調子ダイヤル19が720°(=360°×2)回転可能であるので、張力設定ナット16の軸長方向(矢印X1,X2方向)の移動範囲が増大する。従って、上糸張力の最大値が従来と同様の場合には、上糸張力の最大値から最小値まで従来技術に比べて上糸4の張力値をきめ細かく設定できる。故に、張力目盛り90を細かい刻み幅で表示させることができ、上糸張力の微調整に有利である。
【0045】
なお図10において、B1は、糸調子ダイヤル19の回転角度が0°(最小値)の場合において表示窓3wが示す表示範囲を示し、B2は、糸調子ダイヤル19の回転角度が720°(最大値)の場合において表示窓3wが示す表示範囲を示す。n=2であるため、張力表示部17において張力目盛り90が形成される距離は、基本的には、B3(図10参照)×2となる。ここで、ユーザが糸調子ダイヤル19を回転操作させるに伴い、表示窓3wが示す表示範囲はB1からB2へと変化する(図10参照)。但し、図10では表示窓3wが可動するようにもみえるが、表示窓3wは固定されており、表示窓3wに対して張力表示部17の張力目盛り90が螺旋方向(矢印S方向)に沿って回転するものである。
【0046】
図9,図10に示すように、ミシン外郭3のうち表示窓3w付近に形成されている基準マーク150が形成されている。張力目盛り90のうち基準マーク150と合致した目盛りが現在の上糸張力を示す。ユーザが糸調子ダイヤル19を回転操作させるに伴い、ユーザは、張力目盛り90が基準マーク150に対して垂直方向(図9および図10に示す矢印D方向)に回転しつつ水平方向(図9および図10に示す矢印H方向)に移動する姿を視認できる。このとき、張力目盛り90のうち任意の目盛りは表示窓3wの左上または右下から出現するが、その任意の目盛りが基準マーク150に合致する位置に移動したときには、その任意の目盛りは現在の上糸張力に相当し、表示窓3wのほぼ中央に位置することになる。
【0047】
ところで、張力表示部の外周部に張力目盛りを軸線回りの螺旋方向ではなく軸線回りの周方向に沿って設けることも比較例として考えられる。この場合には、図11に示すように、基準マーク150Xは表示窓3w付近において、ユーザの肉眼視で垂直方向に沿って形成されており、且つ、張力表示部17Xは軸線Pまわりで回転するものの、軸線Pに沿ってストロークA3ぶん矢印X1,X2方向に移動する。このような比較例では、筒形状の張力表示部17Xの外周部には張力目盛り90Xが螺旋状ではなく軸線P回りの周方向に沿って設けられている。このような比較例では、本実施例と同様にユーザが糸調子ダイヤル19を回転操作させるに伴い、張力表示部17Xは軸線Pまわりで回転しつつ軸線Pに沿ってストロークA3ぶん矢印X1,X2方向に移動する。基準マーク150Xに対して張力目盛り90Xが矢印X1,X2方向に沿って水平移動しているようにも見える。張力目盛り90Xの始点(最小目盛り,張力最小値)から終点(最大目盛り,張力最大値)までの距離は、ストロークA3(図11参照)ぶんに過ぎず、狭い範囲であり、上糸張力の最大値から最小値まで、上糸4の張力値をきめ細かく設定させるには、前記した従来技術1,2と同様に限界がある。
【0048】
さて、図12は本実施例の張力特性を示す。図12の特性線W1は、上糸張力をTに設定させつつ、糸調子ダイヤルの回転操作量に対する上糸張力の変化量をα1とし、糸調子ダイヤル19の回転操作量を360°とした従来技術に相当する。これに対して、図12の特性線W2は、上糸張力を従来技術と同様にTに設定させつつ、糸調子ダイヤル19の回転操作量を360°×n(n=2)、つまり720°に設定している本実施例に相当する。本実施例によれば、特性線W2に示すように、糸調子ダイヤル19の回転角度を720°にしているため、張力設定ナット16および張力設定部17(螺旋可動体)は720°回転できる。故に、特性線W2として示すように、糸調子ダイヤル19の回転操作量に対する上糸張力の変化量をα2(α2<α1)と緩やかな特性にでき、張力目盛り90を細かい刻み幅で表示させることができる。このように本実施例では、特性線W2に示すように、糸調子ダイヤル19の回転操作量に対する上糸張力の変化量を緩やかな特性にでき、張力目盛り90を細かい刻み幅で表示させることができる。このように本実施例の張力設定ナット16は前述したように1回転以上(360°×n,n=2)回転できるので、上糸張力の最大値から最小値まで従来技術と同じ範囲の場合には、従来技術のばね押さえ115に比べて張力設定ナット16の雄ねじ部11aのリード角を減少できる利点が得られる。これにより、糸調子ダイヤル19の回転操作量に対する上糸張力の変化量が緩やかで、上糸張力の最大値を所定値に確保しつつ、張力設定ナット16を螺合移動させる回転力を従来技術に比べて減少できるので、糸調子ダイヤル19の回転トルクが低減される。以上により、上糸張力の変化量が緩やかであると共に糸調子ダイヤル19の回転トルクが低減され、きめ細かな上糸張力の調整が容易となる。
【0049】
また本実施例によれば、張力設定ナット16の円筒部16aの端面には、糸調子ばね15が押圧する面16baからの距離が異なる複数のノッチ凹部16eから形成される一組のノッチ凹部16eの集合を同一円周上に角度180°ずらして設けている。これらの一対のノッチ凹部16e、16e(第1係合部)に係合する複数のノッチ凸部17c、17c(第2係合部)が、張力表示部17の円筒部17aの内周面に設けられている。そして工場組付時またはメンテナンス時において、設定された上糸張力の下で、この上糸張力を実現する糸調子ばね15の荷重に対応する表示溝17dが指示溝3aにくるように、張力表示部17に設けた微調整爪17jを摘んで、張力設定ナット16の一対のノッチ凹部16e、16eに張力表示部17の一対のノッチ凸部17c、17cを係合させる。従って、矢印X1,X2方向において張力設定ナット16および張力表示部17の相対位置を調整でき、ミシン1の組付時またはメンテナンス時において、調子ばね15の自由長、ばね定数と、張力設定ナット16と、張力表示部17と、ばね受け14と、糸調子皿12、13の寸法の製作のバラツキを吸収する微調整が可能となる利点が得られる。結果として、工場等のミシン1を組付けるときまたはメンテナンスにおいて、必要な上糸張力調整範囲の位置を決める微調整機能を具備した上糸張力調整装置5を備えたミシン1を提供できる。
【0050】
[実施例2]
本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図11を準用できる。本実施例においても、上糸張力を示す張力目盛り90の始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くできる。図13は本実施例に係る上糸張力特性を示す。図13の特性線W3は、上糸張力をTに設定させつつ、糸調子ダイヤル19の回転操作量が360°である従来技術に相当する。これに対して本実施例によれば、図13の特性線W4に示すように、糸調子ダイヤル19の回転操作量に対する上糸張力の変化量をα3を従来技術と同一に設定させつつ、糸調子ダイヤル19の回転操作量を360°×n(n=2)、つまり720°に設定させている。本実施例によれば、特性線W4に示すように、糸調子ダイヤル19の回転操作量に対する上糸張力の変化量α3が従来技術と同じであるため、上糸張力の最大値をT2(基本的にはT2=T1×2)にでき、従来技術(上糸張力の最大値:T1)に比べて、上糸張力の最大値がT2に増大できる利点が得られる。このような本実施例では、厚い布や多重に重ねた布を容易に縫製できる。更に張力調整範囲が0〜T2の範囲となり、広がる。なお本発明に係るミシンでは、特性線W2に示す形態、あるいは、特性線W4に示す形態のいずれかを選択できる。
【0051】
[実施例3]
図14は実施例3を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図13を準用できる。本実施例においても、上糸張力を示す張力目盛り90の始点(張力最小値)から終点(張力最大値)までの距離を長くできる。ミシン200は、ベッド部201と、ベッド部201の端側から上向きに延びる縦アーム部202と、縦アーム部202の上部から横方向に延びる横アーム部203とを有する。これらは基体を構成する。横部アーム203は、針が取り付けられる針棒205と、針棒205を昇降降させる押さえレバー6と、上糸張力調整装置(図示せず)とを有する。
【0052】
[そのほか]
螺旋可動体は、雌ねじ16dを有する張力設定ナット16と、張力目盛り90を螺旋方向に設けた張力表示部17とで形成されているが、これに限らず、張力表示部17を廃止し、雌ねじ16dを有する張力設定ナット16の外周面に張力目盛り90を、これが表示窓3wから露出するように螺旋方向に沿って直列に並設させることもできる。本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0053】
1 ミシン
3 ミシン外郭(固定部)
3w 表示窓、
4 上糸
5 上糸張力調整装置
8 変換機構
11 軸
11a 雄ねじ部
11b 軸部(他端)
11c 軸部(一端)
12 糸調子皿(固定側糸調子皿)
13 糸調子皿(可動側糸調子皿)
15 糸調子ばね
16 張力設定ナット(張力設定作動部,螺旋可動体)
16e ノッチ凹部(第1係合部)
16d 雌ねじ
17 張力表示部(螺旋可動体)
17a 円筒部
17c ノッチ凸部(第2係合部)
18 操作安定ばね
19 糸調子ダイヤル
90 張力目盛り
P 軸線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と前記基体に設けられた上糸張力調整装置とをもつミシンであって、
前記上糸張力調整装置は、前記基体に固定され上糸張力表示用の表示窓を有する固定部と、
軸線をもつ雄ねじを有すると共に軸線回りの回転が抑えられた状態で前記固定部に固定された軸と、
前記軸の軸線の延びる軸長方向の一端側に設けられ回転操作に伴い軸線回りで回転可能な糸調子ダイヤルと、
前記軸の軸長方向の他端側に設けられた固定側糸調子皿と、
前記軸の軸長方向において移動可能に前記軸に設けられ固定側糸調子皿とで上糸を挟持させる可動側糸調子皿と、
前記糸調子ダイヤルの回転操作に伴い回転するように前記糸調子ダイヤルに係合すると共に前記軸に保持され、前記軸の前記雄ねじに対して螺進退可能に螺合する雌ねじと、前記軸線回りの螺旋方向において直列に並設され上糸張力の大きさを示す張力目盛りとを有し、前記雄ねじおよび前記雌ねじの螺合により前記軸線回りで周方向に回転しつつ前記軸線の延びる軸長方向において前記軸に沿って前記可動側糸調子皿に対して前進または後退して上糸張力を調整し、現在の上糸張力を示す前記張力目盛りを前記表示窓から露出させて表示させる螺旋可動体と、
前記螺旋可動体と前記可動側糸調整皿との間に介装され、前記螺旋可動体と前記可動側糸調整皿とにそれぞれ反対方向の付勢力を付勢する糸調子ばねとを具備するミシン。
【請求項2】
請求項1において、前記螺旋可動体は、前記軸に同軸的に保持され軸線回りで回転すると共に軸長方向において前進および後退可能な張力設定作動部と、前記張力設定作動部に連動する張力表示部とを有しており、前記張力設定作動部は雌ねじ部をもち、前記張力表示部は表示窓に露出可能な張力目盛りをもつミシン。
【請求項3】
請求項2において、前記張力設定作動部は複数または単数の第1係合部をもち、前記張力表示部は第1係合部と係合可能な複数または単数の第2係合部をもち、前記第1係合部と前記第2係合部との係合により、前記張力設定作動部および前記張力表示部の相対組付位置は、軸線と平行な方向において位置調整可能とされており、前記糸調子ばねのばね荷重が調整可能とされているミシン。
【請求項1】
基体と前記基体に設けられた上糸張力調整装置とをもつミシンであって、
前記上糸張力調整装置は、前記基体に固定され上糸張力表示用の表示窓を有する固定部と、
軸線をもつ雄ねじを有すると共に軸線回りの回転が抑えられた状態で前記固定部に固定された軸と、
前記軸の軸線の延びる軸長方向の一端側に設けられ回転操作に伴い軸線回りで回転可能な糸調子ダイヤルと、
前記軸の軸長方向の他端側に設けられた固定側糸調子皿と、
前記軸の軸長方向において移動可能に前記軸に設けられ固定側糸調子皿とで上糸を挟持させる可動側糸調子皿と、
前記糸調子ダイヤルの回転操作に伴い回転するように前記糸調子ダイヤルに係合すると共に前記軸に保持され、前記軸の前記雄ねじに対して螺進退可能に螺合する雌ねじと、前記軸線回りの螺旋方向において直列に並設され上糸張力の大きさを示す張力目盛りとを有し、前記雄ねじおよび前記雌ねじの螺合により前記軸線回りで周方向に回転しつつ前記軸線の延びる軸長方向において前記軸に沿って前記可動側糸調子皿に対して前進または後退して上糸張力を調整し、現在の上糸張力を示す前記張力目盛りを前記表示窓から露出させて表示させる螺旋可動体と、
前記螺旋可動体と前記可動側糸調整皿との間に介装され、前記螺旋可動体と前記可動側糸調整皿とにそれぞれ反対方向の付勢力を付勢する糸調子ばねとを具備するミシン。
【請求項2】
請求項1において、前記螺旋可動体は、前記軸に同軸的に保持され軸線回りで回転すると共に軸長方向において前進および後退可能な張力設定作動部と、前記張力設定作動部に連動する張力表示部とを有しており、前記張力設定作動部は雌ねじ部をもち、前記張力表示部は表示窓に露出可能な張力目盛りをもつミシン。
【請求項3】
請求項2において、前記張力設定作動部は複数または単数の第1係合部をもち、前記張力表示部は第1係合部と係合可能な複数または単数の第2係合部をもち、前記第1係合部と前記第2係合部との係合により、前記張力設定作動部および前記張力表示部の相対組付位置は、軸線と平行な方向において位置調整可能とされており、前記糸調子ばねのばね荷重が調整可能とされているミシン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−170578(P2012−170578A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34457(P2011−34457)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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