説明

ミスト供給装置

【課題】 複数の外部ノズルやスピンドルスルーの工作機械に、簡易構成によって効率よくオイルミストを供給可能とする。
【解決手段】 気体と液体との混合によってミストを発生する複数のミスト発生部16、17と、気体供給源から前記各ミスト発生部毎にミスト用気体を供給する複数のミスト用気体供給路5、6と、液体供給源からミスト用液体を取り入れて圧送する液体ポンプ10aと、液体ポンプから圧送される液体を前記各ミスト発生部毎に供給する複数のミスト用液体供給路11、11a、11bと、前記各液体供給路にそれぞれ介設されてミスト1ショット用の定量液体を送出する複数の定量バルブ12、13を備える。定量バルブの増設によって供給先の増加に対応でき、ミストも安定して効率よく供給できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セミドライ加工などに用いられるミストを効率よく生成して複数箇所に供給するミスト供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セミドライ加工を行う場合には加工油剤をミスト化してエアと混合して加工点に供給する必要がある。従来は、ミストを加工液タンク内でミスト化する方法とミキシングブロックで混合する方法の2通りが主流である。
タンク内でミスト化する方法は、ベンチュリ効果を応用したものが多く、ノズルからポンプで微少量の加工油剤を供給してエアによりミスト化しそれを配管によって切削液ノズルに導いている。図5にその一例を示すと、エアをフィルタレギュレータ40で圧調整した後、ベンチュリ41に供給するとともに、油槽42からポンプ43、44によって油を同じくベンチュリ41に供給し、該ベンチュリ41においてベンチュリ効果によってミストを生成し、ミスト吐出口45から外部に供給する。
【0003】
また、ミキシングブロックによるものは、機械本体に設けたミキシングブロックまで油剤とエアを別々に配管してブロックで初めて混合ミスト化するものである(例えば特許文献1)。図6にその一例を示す。エアをフィルタレギュレータ50で圧調整した後、切換ソレノイド51によってエア供給をスピンドルスルーの主軸工具56側と外部のノズル68、69側とで切り替えする。主軸工具56側では、エア供給は、流量調整弁52側と、パルスジェネレータ53に分岐し、流量調整弁52の出力側はミストを生成するミキシングブロック55に接続され、パルスジェネレータ53の出力側は定量ポンプ54の駆動源側に接続されている。また定量ポンプ54の取り入れ側は潤滑油タンク65に接続され、定量ポンプ54の吐出側が前記ミキシングブロック55に接続されている。ミキシングブロック55の出力側(ミスト放出側)は主軸工具56に接続されている。
【0004】
一方、ノズル側では、エア供給は、流量調整弁60、61側と、パルスジェネレータ62側に分岐しており、パルスジェネレータ62の下流側は、定量ポンプ63、64の駆動源側が接続されている。流量調整弁60と定量ポンプ63の出力側はミキシングブロック66に接続され、流量調整弁61と定量ポンプ64の出力側はミキシングブロック67に接続されている。また定量ポンプ63、64の取り入れ側は潤滑油タンク65に接続されており、ミキシングブロック66はノズル68、ミキシングブロック67はノズル69に接続されている。
なお、上記したどちらの方法も専用の微少量対応ポンプにて間欠的に油剤を吐出するものである。
【特許文献1】特開2000−237652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実際の工場でのセミドライ化は、加工主軸数が多かったり、スピンドルスルー給油と外部ノズル給油とが混在していたりするため、ミストの供給部としては4本以上必要な場合が多い。しかし、前者の従来例のようにタンク内でミスト化する場合は、配管経路が非常に長くなり損失が大きく効率が悪い。また、後者の従来例のようにミキシンブロックを用いる方法では、ノズルを増設した場合に、定量ポンプをノズルおよびスピンドルスルーの軸数分だけ増やさなければならず、既設機械の改造には対応しづらかった。また、上記ミスト供給に対応するためには専用の設計が必要になり、改造費用の増大に直結するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、複数のノズルやスピンドルスルーへのミスト供給を簡易な装置構成によって行うことができ、また、装置の増設も容易に行うことができるミスト間欠供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明のミスト間欠供給装置のうち、請求項1記載の発明は、気体と液体との混合によってミストを発生させる複数のミスト発生部と、気体供給源から前記各ミスト発生部毎にミスト用気体を供給する複数のミスト用気体供給路と、液体供給源からミスト用液体を取り入れて圧送する液体ポンプと、前記液体ポンプから圧送される液体を前記各ミスト発生部毎に供給する複数のミスト用液体供給路と、前記各液体供給路にそれぞれ介設されてミスト1ショット用の定量液体を移送可能とする複数の定量バルブとを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載のミスト間欠供給装置の発明は、請求項1記載の発明において、前記定量バルブが、前記液体ポンプによって圧送される液体の圧力変動によって定量の液体の移送動作をするものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載のミスト間欠供給装置の発明は、請求項2記載の発明において、前記ミスト発生部におけるミストの噴射に対応して前記液体ポンプのオンオフ制御を行うポンプ制御部を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載のミスト間欠供給装置の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記ミスト用液体供給路の一部または全部には、主となる定量バルブと、増量用の定量バルブとが並列に接続されており、該増量用の定量バルブについて通常時閉、増量時の開の設定が可能になっていることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載のミスト間欠供給装置の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記液体ポンプは、前記気体供給源から供給される気体によって駆動されるものであることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載のミスト間欠供給装置の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記ミスト用液体供給路および前記ミスト用気体供給路には、それぞれ個別に開閉操作が可能な開閉手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載のミスト間欠供給装置の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記ミスト発生部は、セミドライ加工用の外部ノズルまたはセミドライ加工に用いられるスピンドルスルーの工作機械に接続されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載のミスト間欠供給装置の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記ミスト発生部は、前記ミスト用液体供給路に接続されるミスト用液体流路と、該ミスト液体流路に連結され該流路からミスト用液体が供給される多孔質体と、前記ミスト用気体供給路に接続され、前記多孔質体の液流出表面に気体流を接触させて流出液を液滴化して気体に混入させる気体流路と、前記気体と液滴の混合により生成されたミストを移送して外部に放出するミスト放出路とを有することを特徴とする。
【0015】
すなわち本発明によれば、各ミスト発生部では、ミスト用気体供給路を通して個別にミスト用の気体が供給され、また、液体ポンプによって圧送されるミスト用の液体は、各ミスト用液体供給路において定量バルブで定量化されて上記ミスト発生部に間欠的に供給される。ミスト発生部では、上記気体と液体との混合によってミストが生成され、該ミストがセミドライ加工用の外部ノズルやスピンドルスルーの工作機械などに間欠的に供給される。なお、ミスト用の気体は、ミストの供給時のみならず、ミスト停止時に単独で供給するようにしてもよい。
【0016】
上記構成では、ミスト発生部の数に応じてミスト用気体供給路やミスト用液体供給路および定量バルブが用いられる。ただし、液体ポンプは、その吐出容量と定量バルブの合計容量の関係から、通常は液体ポンプの吐出容量に余裕があるため液体ポンプを複数必要としない。また、液体ポンプの吐出容量が不足する場合にも、少ない数の液体ポンプによって装置全体を構築することが可能になる。例えば、セミドライ加工では、通常は、定量バルブの吐出量は0.01cc〜0.05cc/ショットあれば十分である。この定量バルブを用いることによって、液体ポンプの必要吐出量は大幅に低減される。例えば上記定量バルブにおいて、0.03cc/ショットのものを使用して4秒に1回エアポンプを駆動すると、1時間あたり27ccの吐出量となり、液体ポンプへの負担は小さい。なお、定量バルブによる液体の時間当たりの供給量は、間欠時間の調整により可変とすることができる。本発明の構成では、ノズルなどの軸数が増加しても定量バルブを増設するだけでノズルを増設できる。例えばエアポンプ容量(5cc程度)の70%を使うとすると、0.03cc/Shotの定量バルブを使用した場合は100本以上のノズルを使用できる。
【0017】
また、複数のミスト発生部において必要な動作時期が異なる場合には、前記ミスト用液体供給路および前記ミスト用気体供給路にそれぞれ設けられた開閉手段を操作することで個別に動作時期を設定することが可能になる。すなわち、ミストの供給対象毎に気体供給のON/OFFと定量バルブ手前での液体のON/OFFができれば、例えば複数の機械のセミドライ化も1台の供給装置で行うことが可能となる。ON/OFFのタイミングは、NC工作機械の場合はNC装置から信号を受け取ることが可能である。また、汎用機の場合やNC機でも信号が出せない場合などはタイマにより設定することで対応する。
【0018】
なお、本発明のミスト用の気体としては通常は空気が設けられるが、必要に応じて、窒素、酸素、二酸化炭素などの気体を用いることができ、本発明としては特定の気体に限定されない。気体源としては好適には工場エア等を用いる。該気体源に接続されるミスト用気体供給路は、各ミスト発生部に気体を供給できるように用意される。好適には、各ミスト発生部に個別に対応したミスト用気体供給路を設けるのが望ましい。該ミスト用気体供給路では、一括して、または特定の数毎に統括して、もしくは個別に、気体の供給をオンオフする。また、ミスト発生部に対し異なる圧力で気体を供給できるように、所望によりミスト用気体供給路に気体の減圧手段や増圧手段を設けることができる。該減圧手段や増圧手段には既知のものを用いることができる。
【0019】
前記ミスト用の液体としては、代表的には潤滑油が挙げられるが、本発明としてはこれに限定されるものではなく塗料、接着剤などをミスト化することができる。該ミスト用の液体は、液体ポンプによって各ミスト発生部に圧送されるが、該液体ポンプの構造は、本発明としては特に限定されるものではない。液体ポンプから圧送される液体は、ミスト用液体供給路を通して各ミスト発生部に個別に供給される。このミスト用液体供給路には、それぞれ定量バルブが備えられており、該定量バルブで定まる定量の液体がミスト1ショット毎に該定量バルブを通ってミスト発生部に移動する。該定量バルブの構成は本発明としては特に限定されるものではなく、所望の量の液体が移動するように規制できるものであればよい。該定量バルブの動作も特に限定されるものではなく、制御入力を受けて開閉動作を行うものでもよいが、好適には液体ポンプで圧送される液体の圧力変動によって定量の液体が移送されるものが好ましい。これにより、各定量バルブの動作を制御するために複雑な制御装置を用意する必要がなくなる。
【0020】
ミスト発生部は、上記したミスト用気体供給路から供給される気体と、ミスト用液体供給路から供給される液体とを混合してミストを発生するものであればよく、特定の構造に限定されない。ただし、本発明者が既に提案しているように、多孔質体からミスト用の液体を流出させて、この液体に気体流を接触させて流出液を液滴化して気体に混入させるものが好適である。
【0021】
上記流出液は、気体流に巻き込まれて、微小液滴のまま、またはさらに液滴が分割されて微小化されて気体に混入される。これにより粒径の大きな液滴が発生することなく安定したミストが得られる。また気体流への液滴への巻き込みを確実にするためには気体流の速度を大きくするのが望ましい。また液滴をより微小化するために、気体流の速度を大きくして液滴に対する剪断力を高めることも可能である。
【0022】
なお、多孔質液流出部と気体流が移動する気体流路とは同軸状に配置して、周面状の液流出表面に沿って気体流を移動させることでより安定したミスト発生が可能になる。多孔質液流出部と気体流路とはそれぞれ内周側、外周側のいずれに位置しても良く、外周側に位置するものを筒状に配置することができる。
【0023】
なお、本発明で用いられる多孔質体には、発泡金属、発泡セラミックス、焼結フィルタ、樹脂フィルタあるいは金属繊維によるフィルタなどを用いることができる。但し、本発明としては、上記した多孔質体材料に限定されるものではなく、その他材質の多孔質体であっても良い。ただし、多孔質体は、ミスト用液体供給路から供給される液体が該流出部の液流出表面に移動できることが必要であり、多孔に連続性を有することで液の移動が達成される。
【0024】
また、上記多孔質体に形成されている孔の大きさや密度は特定のものに限定されないが、液流出表面に均等に液滴用の液が流出して十分に微小な液滴や液膜を形成するように定めればよい。例えば孔の大きさとしては円相当径で0.05〜0.1mmを例示することができる。このような大きさの多孔から液滴用の液として油が流出して油膜を形成すると、0.01〜0.05mm程度の厚さになることが期待される。この厚さは、気体流の吹きつけによって維持されることが期待される厚さである。
【0025】
気体流の流速は本発明としては特に限定されるものではない。800〜1200m/sec程度の流速で問題はない。絞りは、これをさらに増速するものであり、例えば1倍超〜10倍に達するほどに速度を増大させることも可能である。
【0026】
上記多孔質体から吹き飛ばされて気体流中に混入する液滴は、上記の大きさ程度の多孔からは剥離時で0.05〜0.1mm径程度と考えられる。また、気体流中で剪断力を受けてさらに1/5程度の0.01〜0.02mm径程度になることが期待される。
但し、上記した数値は例示であって、本発明を特定の範囲に限定するものではないことは勿論である。
【0027】
本発明は、前記でミスト用液体およびミスト用気体の種別について言及したように、特定の用途に限定されるものではないが、特にセミドライ加工に際し、オイルミストを供給する装置として用いるのに好適である。セミドライ加工においては、必要に応じて、加工具の外側からノズルによって加工点に対しオイルミストを噴射したり、スピンドルスルーの工作機械の主軸を通して加工点に対しオイルミストを噴射したりしており、本発明の装置はいずれにおいても良好にオイルミストを供給することができる。特に少量のオイル使用によって確実に定量のオイル分を供給するのに適している。また、本発明は、1台の工作機械を対象にするだけでなく、複数の工作機械を対象にしてもオイルミストを正確に供給することができ、対象とする工作機械の増減にも容易に対応することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上、説明したように本発明のミスト間欠供給装置によれば、気体と液体との混合によってミストを発生する複数のミスト発生部と、気体供給源から前記各ミスト発生部毎にミスト用気体を供給する複数のミスト発生用気体供給路と、液体供給源からミスト用液体を取り入れて圧送する液体ポンプと、前記液体ポンプから圧送される液体を前記各ミスト発生部毎に供給する複数のミスト用液体供給路と、前記各液体供給路にそれぞれ介設されてミスト1ショット用の定量液体を移送可能とする複数の定量バルブとを備えるので、簡易な構成(定量バルブと液体ポンプをベースユニットとして、周辺部品を組み合わせることで構築できる)によって複数のミスト発生部でミストを生成して複数箇所に供給することができる。また、供給対象の増減に対しても、装置の一部変更によって容易に対応することができ、装置としての汎用性に優れており、工作機械の多軸化にも容易に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(実施形態1)
以下に、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。
この実施形態のミスト間欠供給装置は、セミドライ加工用オイルミスト間欠供給装置として用意される。
図示しない工場エアが気体供給源とされ、該気体供給源に気体供給主管1によってメインソレノイドバルブ2が接続されている。該ソレノイドバルブ2の下流側に分岐部3が設けられ、前記気体供給路1は、駆動用気体供給路4と、ミスト用気体供給路5、6とに分岐している。
【0030】
駆動用気体供給路4には、フィルタレギュレータ7が介設され、その下流にポンプ用ソレノイドバルブ8が介設されている。ポンプ用ソレノイドバルブ8には、該ソレノイドバルブ8のオンオフを制御するポンプ用タイマ9が制御部として接続されている。前記ポンプ用ソレノイドバルブ8の下流には、潤滑油ユニット10が設置されている。潤滑油ユニット10は、主構成として液体ポンプ10aと貯油槽10bとを備えており、前記ポンプ用ソレノイドバルブ8を介して供給されるエアが液体ポンプ10aの駆動源として用いられる。潤滑油ユニット10の潤滑油吐出側には、ミスト用液体供給主管11が接続されており、該ミスト用液体供給主管11には、定量バルブ12、13が並列に接続されている。定量バルブ12、13の放出側には、それぞれミスト用液体供給管11a、11bが接続されている。なお、定量バルブ12、13は既知の構成からなり、ミスト用液体供給主管11から液体が圧送される際に、定量の液体が蓄積されて待機し、前記圧送が解除されることで、下流側のミスト用液体供給管11a、11bに前記で蓄積した定量の液体が放出されるように構成されている。
【0031】
前記ミスト用液体供給管11a、11bは、下流側でミキシングブロック14、15にそれぞれ接続されている。また、前記したミスト用気体供給路5、6もこれらミキシングブロック14、15にそれぞれ接続されている。
次に、上記ミキシングブロック14の一例を図2に示す。
ミキシングブロック14は、筒状のブロック本体140を有し、その内部軸心に潤滑油管141がミスト用液体流路として配置されている。また、潤滑油管141の先端には多孔質体142が連結固定されている。潤滑油管141は、前記ミスト用液体供給管11aに接続されており、潤滑油管141によって多孔質体142への潤滑油の供給が可能になっている。
また、ブロック本体140内周面と潤滑油管141の外周面との隙間がミスト用気体流路144に割り当てられ、多孔質体142の下流側のブロック本体140内部がミスト放出路145に割り当てられている。なお、ミスト用気体流路144は、前記したミスト用気体供給管5に接続されている。該ミキシングブロック14は、上記したミスト放出路145を介してセミドライ加工用の外部ノズル16に接続されている。なお、本発明としては、上記ミキシングブロック14が外部ノズル16内に設けられているものであってもよい。
ミキシングブロック15は、上記ミキシングブロック14と同様の構成を有しており、その説明を省略する。ミキシングブロック15のミスト放出路は、ミキシングブロック14と同様に、セミドライ加工用の外部ノズル17に接続されている。
【0032】
次に、上記ミスト間欠供給装置の動作について説明する。
工場エアなどを気体供給源として気体供給主管1にエアを供給する。該エアの供給に際し、メインソレノイドバルブ2を開にしてエアを供給装置に導入する。エアは分岐部3に至り、ここで駆動用気体供給路4と、ミスト用気体供給路5、6とに分岐する。ミスト用気体供給路5、6に導入されたエアは、該供給路5、6を通ってミキシングブロック14、15に導入される。例えばミキシングブロック14では、エアは、ブロック本体140内において、ミスト用気体流路144、ミスト放出路145を通ってノズル16へと移動し、ノズル16から外部に放出される。また、ミキシングブロック15においても同様にしてミスト用気体供給路6からエアが導入されノズル17から放出される。該ミキシングブロック14、15では、ミスト用液体が供給されない状態では、エアはそのまま放出される。したがって、この実施形態1では、ミストの供給の如何にかかわらず、常時、エアがノズル16、17から放出されている。機械加工装置では、ミストを噴射しないときにもエアの噴射によって切り屑など加工屑の排除がなされる。
【0033】
一方、駆動用気体供給路4では、フィルタレギュレータ7でエアの圧調整がなされ、また、ミストの噴射時期などに対応したポンプ用タイマ9の制御によってポンプ用ソレノイドバルブ8が開とされることで、エアが潤滑油ユニット10に導入される。なお、ポンプ用タイマ9では、ミストの噴射時に一旦ポンプ用ソレノイドバルブ8を開とし、短時間で再びポンプ用ソレノイドバルブ8を閉にするようを制御する。
【0034】
ポンプ用ソレノイドバルブ8が開の場合、駆動用のエアが潤滑ユニット10に導入され、液体ポンプ10aが動作して、貯油槽10bからミスト用液体として潤滑油を取り入れてミスト用液体供給主管11に圧送する(例えば5cc程度)。圧送された潤滑油は、定量バルブ12、13にそれぞれ定量宛蓄積され、該定量バルブ12、13は待機状態になる。この状態では、ミスト用液体供給管11a、11bへの潤滑油の供給はなされない。前記したポンプ用タイマ9は、上記潤滑油の待機に合わせてポンプ用ソレノイドバルブ8を閉とする。これにより、液体ポンプ10aが停止し、ミスト用液体供給主管11では潤滑油の圧送が解除されて定量バルブ12、13に加わる潤滑油圧力が低下する。これら定量バルブ12、13では、導入側の圧力変動によって蓄積されていた潤滑油が定量宛、ミスト用液体供給管11a、11bに放出される(例えば0.01〜0.05cc程度/1ショット)。ポンプ用タイマ9では、次回のミスト供給時期になると、再度ポンプ用ソレノイドバルブ8を開にして、液体ポンプ10aからの潤滑油圧送によって定量バルブ12、13を定量の潤滑油を蓄積した待機状態にし、再度ポンプ用ソレノイドバルブ8を閉にして定量バルブ12、13から定量の潤滑油を移送する。これを繰り返すことにより、潤滑油を定量宛、間欠的に移送することができる。
【0035】
定量の潤滑油が移送されたミスト用液体供給管11a、11bでは、潤滑油がミキシングブロック14、15に送られて、前記したエアと混合される。
ミキシングブロック14での動作を説明すると、定量バルブ12から吐出された微少量の潤滑油は、ミスト用液体供給管11a、潤滑油管141を通して供給され、多孔質体142の多孔を通して表面に流出して微小液滴や液膜を形成する。また前記多孔が十分な密度で形成されていると、液流出表面に流出した微小液滴は隣接する穴から流出した微小液滴と結合し、これが液流出表面の広い範囲で起こることにより、液流出表面に薄い液膜が形成される。
【0036】
一方、ミスト用気体流出路144には、ミスト用気体供給管5を通して供給されたエアが流れて上記多孔質体142の周囲を通りながら前方に移動する。この際に、上記流出液は、気体流に巻き込まれて、微小液滴のまま、またはさらに液滴が分割・微小化されてエアに混入される。これにより粒径の大きな液滴が発生することなく安定したミストが得られる。ミストはミスト放出路145を通ってノズル16に移動し、ノズルの噴射口から加工面などに噴射される。ミキシングブロック15においても同様に作用し、ノズル17の先端から加工面などにミストが噴射される。上記により簡易な構成によってミストを確実に複数箇所に供給することができる。なお、上記実施形態では、ミストを噴射する以外の時期には、ミスト用の気体を常時ノズルから噴射するように構成しているが、ミストの噴射に同期させて、ミスト用気体供給路5、6の開閉を行うようにしてミスト噴射時にのみミスト用気体を供給するものとしてもよい。
また、上記実施形態で、ミストの噴射箇所を増やす場合には、ミスト用気体供給路、ミキシングブロック、ノズルを増やし、さらに定量バルブ、ミスト用液体供給路を増やすことで対応でき、装置の複雑化、高コスト化を招くことなく噴射箇所の数を変更することができる。
【0037】
(実施形態2)
次に、他の実施形態を図3に基づいて説明する。この実施形態は、ミストの供給対象としてノズルの他に、スピンドルスルーの工作機械29を対象としたものである。なお、前記実施形態1と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
工場エアに接続された気体供給主管1は、メインソレノイドバルブ2を介して、駆動用気体供給管4と、内部/外部給油切換ソレノイドバルブ20とに分岐している。内部/外部給油切換ソレノイドバルブ20は、出力側の接続を、分岐部3とミスト用気体供給路21とに切り替える動作をする。
【0038】
ミスト用気体供給路21は、エア増圧ユニット22を介してミキシングブロック28に接続されている。該ミキシングブロック28は、前記したミキシングブロック14、15と同様の構成を有しており、ミキシングブロック28のミスト放出路(図示しない)は、スピンドルスルーの工作機械29の主軸穴(図示しない)に接続されている。
また、分岐部3では、前記実施形態1と同様に、ミスト用気体供給路5、6が接続されており、該ミスト用供給路5、6にはミキシングブロック14、15が接続され、ミキシングブロック14、15には、ノズル16、17が接続されている。
【0039】
駆動用気体供給路4には、前記実施形態1と同様に、フィルタレギュレータ4、ポンプ用ソレノイドバルブ8、ポンプ用タイマ9、潤滑油ユニット10(液体ポンプ10a、貯油槽10bを含む)が接続されている。なお、潤滑油ユニット10の潤滑油吐出側には、ミスト用液体供給主管11とミスト用液体供給管24とが並列して接続されている。ミスト用液体供給管11には、外部給油用ソレノイドバルブ26が介設されて前記実施形態1と同様に、定量バルブ12、13が接続されている。さらに定量バルブ12、13にはミスト用液体供給管11a、11bが接続され、該ミスト用液体供給管11a、11bの他端はミキシングブロック14、15に接続されている。
ミスト用液体供給管24には、内部給油用ソレノイドバルブ25が介設されて定量バルブ27が接続されている。該定量バルブ27では、スピンドルスルーの工作機械29に給油することから適切な量の潤滑油を蓄積、放出できるものを選定する。定量バルブ27の放出側は、前記したミキシングブロック28が接続されている。
【0040】
以下に、この実施形態2のミスト間欠供給装置の動作について説明する。
この実施形態において、外部ノズル側にミストの供給を行う場合、内部/外部給油切換ソレノイドバルブ20を切り替えて、気体供給主管1と分岐部3側とを連通させ、ミスト用気体供給管21側を閉じる。また、外部給油用ソレノイドバルブ26を開き、内部給油用ソレノイドバルブ25を閉じる。この状態で、気体供給主管1からエアを供給すると、前記実施形態1と同様に、ノズル16、17からミストが噴出される。
【0041】
一方、工作機械29の内部側にミストの供給を行う場合、内部/外部給油切換ソレノイドバルブ20を切り替えて、気体供給主管1とミスト用気体供給管21側とを連通させ、分岐部3側を閉じる。また、内部給油用ソレノイドバルブ25を開き、外部給油用ソレノイドバルブ26を閉じる。この状態で、気体供給主管1からエアを供給すると、エアは、ミスト用気体供給管21に導入され、エア増圧ユニット22で所定圧に増圧された後、ミキシングノズル28のミスト用気体流路(図示しない)に供給される。
【0042】
また、気体供給主管1から供給されるエアは、駆動用気体供給管4に導入され、前記実施形態1と同様に、ポンプ用ソレノイドバルブ8が開とされて液体ポンプ10aが駆動して、潤滑油ユニット10から潤滑油を吐出する。潤滑油は、ミスト用液体供給管24を通り、定量バルブ27に供給される。定量バルブ27に所定量の潤滑油が蓄積された後、前記実施形態と同様に、ポンプ用タイマ9によってポンプ用ソレノイドバルブ8を閉じると、液体ポンプ10aが停止し、定量バルブ27に加わっている潤滑油の圧力が低下して、定量バルブ27に蓄積されていた定量の潤滑油がミスト用液体供給管24を通してミキシングブロック28に送出される。ミキシングブロック28では、前記ミキシングブロック14、15と同様に、微細な液滴を有するミストが生成されて、工作機械29の主軸穴に供給され、工具先端から加工面にミストが噴射される。このミストには、増圧されたエアが用いられており、主軸穴を通して加工面にまで確実にミストを噴射することができる。エアの増圧によってミストの搬送性能並びに切り屑等の排出性能が向上する。このときの圧力としては例えば1Mpa程度にすることができる。さらに難削材の深穴加工の場合には、高圧コンプレッサを使用してエア圧力を2〜4Mpaとして使用することができる。なお、本発明としては、通常の気体圧力や増圧時の気体圧力の数値が具体的に限定されるものではない。
【0043】
なお、工作機械29においても、ミストが噴射されていない時期には、ミキシングブロック28を通して増圧されたエアが供給されているが、ミストの噴射に同期させて、ミスト用気体供給路21の開閉を行うようにしてミスト噴射時にのみミスト用気体を供給するものとしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、外部ノズル16、17とスピンドルスルーの工作機械29において、時期を異にしてミストの供給を行うものとしているが、それぞれに対し同時期にミストを供給するようにしてもよい。その場合には、内部/外部給油切換ソレノイドバルブ20において、工場エア側と、ミスト用気体供給管21および分岐部3側を同時期に連通させ、さらに、内部給油用ソレノイドバルブ25と外部給油用ソレノイドバルブ26とを同時期に開とする。
【0045】
(実施形態3)
さらに、他の実施形態を図4に基づいて説明する。この実施形態3においても、供給装置は、外部のノズルとスピンドルスルーの工作機械とをミストの供給対象としており、前記実施形態1、2と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
実施形態3において、前記実施形態2と異なる点は、前記定量バルブ27と並列して前記したミスト用液体供給路24に、大容量定量バルブ30と大容量用ソレノイドバルブ31が介設されている点である。すなわち、定量バルブ27が主となる定容量バルブに位置付けられ、前記大容量定量バルブ30が増量用定量バルブに位置付けられている。定量バルブ27としては、例えば、1ショットあたり0.01cc〜0.03cc程度の容量のものを用いる。もう一方の大容量定量バルブ30には、1ショットあたり0.1cc程度以上の吐出量の大きいものを用いる。大容量定量バルブ30の回路には専用の大容量用ソレノイドバルブ31が接続されており、適宜の信号により大容量用ソレノイドバルブ31を断続して大容量の潤滑油を放出できるように構成されている。該信号は、後述するATCによって送出されるものであってもよい。
【0046】
なお、工具先端から潤滑油を吐出するスピンドルスルーの場合、マシニングセンタツールホルダ内部に空間があり、この空間にミストが遠心力で流れ込んでしまう。このため、ミストを供給した際に、加工具先端からのミスト吐出のタイムラグが大きくなってしまう。ツールホルダ内部に一定の油量を保持できれば、セミドライのオンオフに対してレスポンスよく噴射できる。
【0047】
したがってATC(Auto Tool Changer)による工具交換時など、新しい工具を取り付けた場合に、工具内部の空間の潤滑油が抜けている可能性がある。このため、大容量用ソレノイドバルブ31を開にして、定量バルブ27とともに大容量定量バルブ30からも潤滑油を放出するようにして、ミキシングブロック28で生成されるミストの量を一時的に多くして、工作機械29に供給することで加工液の噴射レスポンスを向上させる。
一方、工具交換時などにミスト量を一時的に多くして供給した後は、同じ工具で加工を行う限りは、工具内部の空間に潤滑油が入り込んでいるため、大容量用ソレノイドバルブ31を閉じて通常の低容量の定量バルブ27のみで潤滑油を供給してもミストの噴射はレスポンスよく良好になされる。上記構成により工具交換を行っても安定したセミドライ加工を行うことができる。
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲において変更したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態の供給装置の概略を示す図である。
【図2】同じく、ミスト発生部の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態の供給装置の概略を示す図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態の供給装置の概略を示す図である。
【図5】従来のミスト供給装置の概略を示す図である。
【図6】さらに従来の他のミスト供給装置の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 気体供給主管
4 駆動用気体供給管
5 ミスト用気体供給管
6 ミスト用気体供給管
8 ポンプ用ソレノイドバルブ
9 ポンプ用タイマ
10 潤滑油ユニット
10a 液体ポンプ
10b 貯油槽
11 ミスト用液体供給主管
11a ミスト用液体供給管
11b ミスト用液体供給管
12 定量バルブ
13 定量バルブ
14 ミキシングブロック
15 ミキシングブロック
16 ノズル
17 ノズル
20 内部/外部給油切換ソレノイドバルブ
21 ミスト用気体供給管
22 増圧ユニット
24 ミスト用液体供給管
25 内部給油用ソレノイドバルブ
26 外部給油用ソレノイドバルブ
27 定量バルブ
28 ミキシングブロック
29 工作機械
30 大容量定量バルブ
31 大容量用ソレノイドバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と液体との混合によってミストを発生させる複数のミスト発生部と、気体供給源から前記各ミスト発生部毎にミスト用気体を供給する複数のミスト用気体供給路と、液体供給源からミスト用液体を取り入れて圧送する液体ポンプと、前記液体ポンプから圧送される液体を前記各ミスト発生部毎に供給する複数のミスト用液体供給路と、前記各液体供給路にそれぞれ介設されてミスト1ショット用の定量液体を移送可能とする複数の定量バルブとを備えることを特徴とするミスト間欠供給装置。
【請求項2】
前記定量バルブは、前記液体ポンプによって圧送される液体の圧力変動によって定量の液体の移送動作をするものであることを特徴とする請求項1記載のミスト間欠供給装置。
【請求項3】
前記ミスト発生部におけるミストの噴射に対応して前記液体ポンプのオンオフ制御を行うポンプ制御部を備えることを特徴とする請求項2記載のミスト間欠供給装置。
【請求項4】
前記ミスト用液体供給路の一部または全部には、主となる定量バルブと、増量用の定量バルブとが並列に接続されており、該増量用の定量バルブについて通常時閉、増量時の開の設定が可能になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のミスト間欠供給装置。
【請求項5】
前記液体ポンプは、前記気体供給源から供給される気体によって駆動されるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のミスト間欠供給装置。
【請求項6】
前記ミスト用液体供給路および前記ミスト用気体供給路には、それぞれ個別に開閉操作が可能な開閉手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のミスト間欠供給装置。
【請求項7】
前記ミスト発生部は、セミドライ加工用の外部ノズルまたはセミドライ加工に用いられるスピンドルスルーの工作機械に接続されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のミスト間欠供給装置。
【請求項8】
前記ミスト発生部は、前記ミスト用液体供給路に接続されるミスト用液体流路と、該ミスト液体流路に連結され該流路からミスト用液体が供給される多孔質体と、前記ミスト用気体供給路に接続され、前記多孔質体の液流出表面に気体流を接触させて流出液を液滴化して気体に混入させる気体流路と、前記気体と液滴の混合により生成されたミストを移送して外部に放出するミスト放出路とを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のミスト間欠供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−289590(P2006−289590A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117105(P2005−117105)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】