説明

ミックスメタルの選別方法

【課題】
手作業によるミックスメタルの選別を最小限としたミックスメタルの選別方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
ミックスメタル1を金属種ごとに選別する方法であって、該方法は金属センサによりミックスメタル中の金属21を感知してミックスメタル1を金属21と非金属22とに選別する金属非金属選別工程2と、該金属非金属選別工程2で選別された金属21に渦電流を発生させて磁石との反発力によって金属21を飛側金属32と落下側金属31とに選別する渦電流選別工程3とからなり、該渦電流選別工程3で選別された飛側金属32については比重により選別する比重分離工程4で処理し、該渦電流選別工程3で選別された落下側金属31については色彩センサによって選別する色彩選別工程5で処理することを特徴とするミックスメタルの選別方法により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミックスメタルを金属種ごとに選別するミックスメタルの選別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコン、冷蔵庫、テレビ、洗濯機などの廃家電、産業機械廃棄物、廃車等は大型の破砕機に投入し破砕処理される。破砕物は磁力選別により鉄が回収され、その他の破砕物は、例えば風力選別等を利用して非金属が除去される。非金属除去後に残される雑多な金属(非鉄金属)と除去しきれなかったプラスチックを含む非金属との混合物はミックスメタルと呼ばれる。
【0003】
ミックスメタルは機械的な工程のみで金属種ごとに完全に選別することが難しく、国内での選別コストも高いことから、従来は、外国に売却されそこで手作業による選別が行われていた。
【0004】
ミックスメタルに含まれる非鉄金属を選別する方法としては例えば特許文献1がある。特許文献1は、非鉄金属屑を重液選別機、渦電流選別機、カラー識別選別機の順にかけてアルミニウム、銅、亜鉛、ステンレススチール(以下、単にステンレスと称する)を選別する方法である。
【0005】
特許文献1の方法は、最初の工程として重液(比重2.8〜3.0)による選別工程を経るものであるから、非鉄金属屑が濡れてしまい、乾燥工程が必要となり、あわせて水処理工程も必要となることから、コスト、エネルギーが余分に必要となる問題があった。さらに、プラスチック等の分離が考慮されておらず、重液による選別を経たアルミニウムにプラスチック等の軽量物が混ざり、再度の選別が必要になるという問題があった。
【0006】
また、特許文献1の渦電流選別では、ステンレスを含む落下側の金属については、何らの処理をすることなくリサイクルされるが、落下側の金属には渦電流の生じにくい細長い銅線が混入するという問題があった。さらに、飛側の金属(銅、鉛、亜鉛)について、カラー選別機による選別を行っているが、実際には銅、鉛、亜鉛はメッキされていることがあり、機械的に完全に選別することが難しいという問題があった。
【0007】
一方、本発明者は特許文献2の乾式分離方法を提案している。特許文献2の発明は、粉体を流動化させた固気流動層に処理対象物を入れて、比重に応じて処理対象物を選別する方法である。この方法によれば廃液処理や選別後の乾燥工程が不要になるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−106091
【特許文献2】特開平2008−246393
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
我が国は産出資源が乏しいことから、ミックスメタルを国内でリサイクルし金属資源を循環させ、金属資源の流出を防ぐことが望まれている。本発明は、手作業によるミックスメタルの選別を最小限としたミックスメタルの選別方法を提供することを目的とする。これによりミックスメタルの選別に要するコストを削減し、国内でのミックスメタルの循環を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ミックスメタルを金属種ごとに選別する方法であって、該方法は金属センサによりミックスメタル中の金属を感知してミックスメタルを金属と非金属とに選別する金属非金属選別工程と、該金属非金属選別工程で選別された金属に渦電流を発生させて磁石との反発力によって金属を飛側金属と落下側金属とに選別する渦電流選別工程とからなり、該渦電流選別工程で選別された飛側金属については比重により選別する比重分離工程で処理し、前記渦電流選別工程で選別された落下側金属については色彩センサによって選別する色彩選別工程で処理することを特徴とするミックスメタルの選別方法により、上記の課題を解決する。
【0011】
本発明の選別方法が適用できるミックスメタルとしては、例えば、銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮、ステンレス及びプラスチックを含む混合物が挙げられる。ここでいう銅は、渦電流の生じやすいものを指し、その点で銅線と区別される。
【0012】
金属非金属選別工程は、金属センサでミックスメタル中の金属を感知して、金属と非金属を選別する工程である。ここで言う非金属としては、除去しきれなかったプラスチックが含まれる。ミックスメタルが、銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮、ステンレス及びプラスチックを含む混合物である場合は、金属非金属選別工程により、銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮及びステンレスを含む金属と、プラスチックを含む非金属とに選別する。金属センサは非鉄金属とプラスチックを識別することができる公知の金属センサを使用すればよい。
【0013】
渦電流選別工程は、電磁誘導により生ずる渦電流の磁界と磁石の磁界の反発力を利用して金属非金属選別工程で選別された金属を飛側金属と、落下側金属とに選別する工程である。ミックスメタルが、銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮、ステンレス及びプラスチックを含む混合物である場合は、金属非金属選別工程に続く渦電流選別工程により、ステンレス及び銅線を含む落下側金属と、銅、アルミニウム、亜鉛及び真鍮を含む飛側金属とに選別する。
【0014】
比重分離工程は、渦電流選別工程において磁石との反発力で飛ばされた金属(飛側金属)について、その比重によって選別を行う工程である。ミックスメタルが、銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮、ステンレス及びプラスチックを含む混合物である場合は、金属非金属選別工程及び渦電流選別工程に続く比重分離工程により、飛側金属を、アルミニウムを含む浮上側金属と、銅、亜鉛及び真鍮を含む沈下側金属に選別する。比重分離は重液を使用した湿式装置を使用してもよいが、固気流動層を備えた乾式装置を使用すれば、乾燥が不要となり処理を効率化することができるので、好ましい。
【0015】
色彩選別工程は、渦電流選別工程において落下した金属(落下側金属)について、色彩の違いによって金属種ごとに選別を行う工程である。ミックスメタルが、銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮、ステンレス及びプラスチックを含む混合物である場合は、金属非金属選別工程及び渦電流選別工程に続く色彩選別工程により、落下側金属を、銅線を含む赤色金属と、ステンレスを含む非赤色金属に選別する。
【0016】
上記のミックスメタルが、さらに被覆銅線を含む場合、金属非金属選別工程後の非金属に被覆銅線が混入しやすい。この場合は、長穴フルイを用いて被覆銅線と非金属の混合物から被覆銅線を分離する被覆銅線選別工程を行うとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のミックスメタルの選別方法によれば、従来、手作業により選別していたミックスメタルの大半を機械的に選別することができる。本発明は、金属非金属選別工程を比重選別工程の前に行うので、アルミニウムを含む浮上側金属にプラスチックを含む非金属が混入することがない。また、渦電流選別工程の落下側金属について色彩選別工程を行うため、ステンレスを含む落下側金属に、銅線を含む赤色金属が混入することがない。これにより、選別に要するコストを低く抑えて、金属資源の国内循環を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のミックスメタルの選別方法の流れ図である。
【図2】図1の選別方法に加えて、さらに被覆銅線選別工程を行う選別方法の流れ図である。
【図3】実施例1の選別方法を示す流れ図である。
【図4】実施例2の選別方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
本発明は、ミックスメタル1を金属種ごとに選別する方法である。図1に示したように、本発明の選別方法は金属センサによりミックスメタル1中の金属を感知して金属21と非金属22とに選別する金属非金属選別工程2と、該金属非金属選別工程2で選別された金属21に渦電流を発生させて磁石との反発力によって金属21を落下側金属31と飛側金属32とに選別する渦電流選別工程3とからなる。前記渦電流選別工程3で選別された飛側金属32については比重分離工程4で比重に応じて沈下側金属41と浮上側金属42に選別する。一方、前記渦電流選別工程3で選別された落下側金属31については色彩選別工程5で色彩センサにより処理し、赤色金属51と非赤色金属52に選別する。
【0021】
比重分離工程4で処理した沈下側金属41については、特許文献1と同様に色彩選別機によりさらに選別を行ってもよいし、図1に示したように手作業6により個々の金属種ごと(手選別済金属61)に選別してもよい。しかしながら、沈下側金属41に含まれる銅、亜鉛、真鍮等の金属はメッキ処理されていることがあり、色彩センサによる選別が難しいことから、図1のように手作業による選別とすることが好ましい。手作業であれば、メッキされた金属であっても破砕時の傷から部分的な色が確認できるからである。
【0022】
また、ミックスメタル1に被覆銅線71が多く含まれる場合は、図1の選別方法に加えて、被覆銅線選別工程7を行うことが好ましい。図2に示したように、被覆銅線選別工程7は、金属非金属選別工程2後の非金属22に混入する被覆銅線71を選別する工程である。被覆銅線71は樹脂で被覆されていることから、プラスチック等を含む非金属側に比較的混入しやすい。本発明では、長穴フルイを使用することで、被覆銅線71を手作業によらず選別することが可能になる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により具体的に説明する。
【0024】
[実施例1]
図1及び図3の選別方法により、銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮、ステンレス及びプラスチックを含むミックスメタル1を選別した。ここで処理するミックスメタルは、磁力選別により鉄を事前に除去したものである。
【0025】
まず、上記のミックスメタル1を金属非金属選別工程2で処理した。本実施例では、ミックスメタル1を載置するエンドレスコンベアと、エンドレスコンベアの搬送経路の途中に配置した金属センサと、金属センサの信号に基づいて非金属にエアを噴射するエアノズルとを備えた金属非金属選別機を使用し、金属21と非金属22を選別した。この工程により100tのミックスメタルを約75tの金属21(銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮及びステンレスを含む混合物)と、約25tの非金属22(プラスチック)に選別することができた(図3)。
【0026】
次に、金属非金属選別工程2で分離できなかった銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮、ステンレスを含む金属21を渦電流選別工程3にかけた。渦電流選別機は、金属21を載置するエンドレスコンベアと、エンドレスコンベアの末端回転軸の一方に回転可能に取り付けられたマグネットと、マグネットの下方に配されエンドレスコンベアからの飛側金属32と落下側金属31を受け入れる独立した二つのホッパを備えた渦電流選別機を使用した。この工程により約75tの金属21を、約34tの落下側金属31(ステンレス及び銅線)と、約41tの飛側金属32(銅、アルミニウム、亜鉛及び真鍮)に選別することができた(図3)。
【0027】
渦電流選別工程3では分離できなかった銅線及びステンレスを含む落下側金属31については、色彩選別工程5にかけた。色彩選別機は落下側金属31を載置するエンドレスコンベアと、エンドレスコンベアの搬送経路に配されるCCDカメラと、CCDカメラの信号に基づいて赤色金属にエアを噴射するエアノズルを備えた色彩選別機を使用した。この色彩選別工程5により、約34tの落下側金属31を約5tの赤色金属51(銅線)と、約29tの非赤色金属52(ステンレス)に選別することができた。
【0028】
一方、渦電流選別工程3では分離できなかった銅、アルミニウム、亜鉛及び真鍮を含む飛側金属32については、比重分離工程4にかけた。本実施例では、特許文献2の固気流動層を有する乾式比重分離装置を使用した。粉体としては鉄粉を用いて、流動層の見かけ密度を4程度とした。この工程により、約41tの飛側金属32を約23tの浮上側金属(アルミニウム)と、約18tの沈下側金属41(銅、亜鉛及び真鍮)に選別することができた(図3)。
【0029】
本実施例のミックスメタルには、メッキ処理された金属が多く含まれていたため、比重分離工程4で選別できなかった銅、亜鉛、真鍮を含む沈下側金属41は、破砕時に金属表面にできた傷から色を確認する手作業6により選別した。これにより単体の銅、亜鉛、真鍮(手選別済金属61)を得ることができた。この際に予めプラスチック、アルミニウム、ステンレス及び銅線が除去されているため、手作業でも効率的に選別することができた。
【0030】
従来、渦電流による選別では銅線などの細長い形状を有するものは渦電流が生じにくいことから、ステンレスを含む落下側金属31から分離することが難しかったが、実施例1の方法によれば、ステンレスと銅線を機械的に選別することができた。また、従来は比重分離工程4で単離されたアルミニウムなどの浮上側金属42には、プラスチック等の軽量物が混入することがあったが、実施例1の方法によれば、プラスチック等の軽量物は金属非金属選別工程2で除去されているため、浮上側金属42にプラスチックが混入することがなくそのままアルミニウムをリサイクルに回すことができた。
【0031】
[実施例2]
本実施例では、実施例1の銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮、ステンレス及びプラスチックに加えて被覆銅線71を多量に含むミックスメタル1の選別を行った。具体的には、金属非金属選別工程2で選別された非金属22について、さらに被覆銅線選別工程7を行う方法である(図2及び図4)。被覆銅線選別工程7においては、幅5mm長さ25mmの長穴をパンチングしたスクリーンを備えた長穴トロンメルを使用し、長穴から被覆銅線71をふるいおとした。これにより、プラスチック(非金属22)に混入した被覆銅線71を効率的に取り除くことができた。
【符号の説明】
【0032】
1 ミックスメタル
2 金属非金属選別工程
21 金属
22 非金属
3 渦電流選別工程
31 落下側金属
32 飛側金属
4 比重分離工程
41 沈下側金属
42 浮上側金属
5 色彩選別工程
51 赤色金属
52 非赤色金属
6 手作業
61 手選別済金属
7 被覆銅線選別工程
71 被覆銅線
72 非金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミックスメタルを金属種ごとに選別する方法であって、
該方法は金属センサによりミックスメタル中の金属を感知してミックスメタルを金属と非金属とに選別する金属非金属選別工程と、該金属非金属選別工程で選別された金属に渦電流を発生させて磁石との反発力によって金属を飛側金属と落下側金属とに選別する渦電流選別工程とからなり、
該渦電流選別工程で選別された飛側金属については比重により選別する比重分離工程で処理し、
前記渦電流選別工程で選別された落下側金属については色彩センサによって選別する色彩選別工程で処理することを特徴とするミックスメタルの選別方法。
【請求項2】
ミックスメタルは、銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮、ステンレス及びプラスチックを含む混合物である請求項1に記載のミックスメタルの選別方法。
【請求項3】
金属非金属選別工程は、ミックスメタルを銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮及びステンレスを含む金属と、プラスチックを含む非金属とに選別する工程である請求項1又は2に記載のミックスメタルの選別方法。
【請求項4】
渦電流選別工程は、金属非金属選別工程で分離できなかった銅、銅線、アルミニウム、亜鉛、真鍮及びステンレスを含む金属を、ステンレス及び銅線を含む落下側金属と、銅、アルミ及び亜鉛を含む飛側金属とに選別する工程である請求項1又は2に記載のミックスメタルの選別方法。
【請求項5】
比重分離工程は、渦電流選別工程で選別できなかった銅、アルミニウム、亜鉛及び真鍮を含む飛側金属を、アルミニウムを含む浮上側金属と、銅、亜鉛及び真鍮を含む沈下側金属とに選別する工程である請求項1又は2に記載のミックスメタルの選別方法。
【請求項6】
色彩選別工程は、渦電流選別工程で選別できなかった銅線とステンレスを含む落下側金属を銅線を含む赤色金属と、ステンレスを含む非赤色金属とに選別する工程である請求項1又は2に記載のミックスメタルの選別方法。
【請求項7】
ミックスメタルは、さらに被覆銅線を含むものであって、
金属非金属選別工程で選別できなかった非金属と被覆銅線の混合物から長穴フルイで被覆銅線を分離する被覆銅線選別工程を行う請求項2に記載のミックスメタルの選別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−139609(P2012−139609A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291866(P2010−291866)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(501058593)平林金属株式会社 (2)
【Fターム(参考)】