説明

ミトコンドリアの脱共役剤としてのナノチューブ

被験者中のミトコンドリアを脱共役する方法であって、前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、前記ナノチューブは自己整流するものである方法を提供する。活性酸素種を減少しかつ被験者のミトコンドリア中への有害なCa2+の負荷を減少する方法であって、前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、前記ナノチューブは自己整流するものである方法を提供する。被験者の体重を減らす方法、被験者中の癌を治療する方法、被験者の外傷性脳損傷の影響を減少させる方法、被験者の老化の影響を減らす方法、または老化の影響を低減する方法であって、前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有する方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミトコンドリアの脱共役剤としてのナノチューブに関する。本発明は、ナノチューブを投与して疾病条件を治療し減量を増加する方法と同様に、ミトコンドリアの脱共役方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2005年5月6日に出願されたミトコンドリアの脱共役剤としてのナノチューブと題する米国仮特許出願第60/678,355号に基づく米国特許法第119条の優先権を主張し、それを引用することによってその内容をここに合体する。
【0003】
背景
ミトコンドリアが砂糖と脂肪を燃焼することによって、個々の細胞の代謝を制御することが知られている。ミトコンドリアは、ミトコンドリアのマトリクス(内側)から内側膜空間(図2に示されるような内部と外部の膜を有する)へのプロトンの能動転座によって、内側膜を横切る約200mVの膜電位を生成する。マトリクスからのプロトンの転座は、電子を高エネルギー状態から低エネルギー状態に移動させてその結果として酸素を水へ還元する、電子伝達系の活動によるものであり、このプロセスで酸素が消費されるので、ミトコンドリア呼吸という。電子が高エネルーギ状態から低エネルギー状態に移動するときに放出されるエネルギーは、この電子伝達系によって、マトリクスから内側の膜空間にプロトンを転座(すなわち、ポンプ)させ、プロトンの移動により内側膜を横切るpH勾配と同様に電荷の分離(すなわち、膜電位)をもたらすために使用される。
【0004】
ミトコンドリアの膜電位は、次に、ATPシンターゼを通して、マトリクスへの制御されたプロトンの逆流れに「共役」され、ATPシンターゼはこの流れを使用して、アデノシン2リン酸(「ADP」)をATPにリン酸化する。
【0005】
ミトコンドリアの化学的脱共役剤は、体の基礎代謝を増加させて減量を促進するために使用されてきた。しかしながら、化学的脱共役剤は、制御するのが難しいので、容易に毒性となる。制御されていないミトコンドリアの脱共役(すなわち、ミトコンドリア膜電位を約100mV未満低下させること)は、細胞ATPを生成することを無力にし結局は死に導く。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ミトコンドリア呼吸をATPの生成から分離し、その結果として個体に害を与えずに所望の効果を安全に発生させることができる、安全で制御可能なミトコンドリア脱共役剤に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、安全にミトコンドリアを脱共役するナノチューブを提供するものであり、ナノチューブは、不安定な電位差に到達した場合にプロトンチャンネルが自動的が停止するように調整されている。
【0008】
1つの実施例において、ナノチューブを形成するテンプレート法は、ナノチューブの寸法制御を可能にし、ナノチューブを具体的に明記された所望寸法を持つように設計することができる。サイズ、特にナノチューブの内径(上記で説明されるように)を巧みに加工することにより、これらのナノチューブは、ナノチューブ特有のコンダクタンス(すなわち、脱共役の閾値とプロトン流動に対する抵抗)を可能にする。テンプレート法は、更に所望材料でナノチューブの内側と外側をコーティングまたはライニングすることを可能にする。
【0009】
一般に、ナノチューブのテンプレート合成は、大量生産されたトラックエッチング膜(例えば、コーニング・コープのオスモニック)の円筒状細孔中に、材料(例えば、金、アルミナ、シリカなど)の堆積を含む。膜の細孔中にナノチューブが形成されると、次に膜を溶解しろ過を用いてナノチューブを捕集する。調製時の調製条件を変えることによって、ナノチューブの内径、長さ、および中身を指定されたように制御することができる(例えば、金のナノチューブを生成するために無電解メッキ法を使用するときに無電解めっき時間を減少させると、それに従ってナノチューブの内径は増加する)。
【0010】
別の実施例によると、金属および/またはポリマーで作られたナノチューブは、安全にミトコンドリアを脱共役し、代謝を増やし、減量を促進するために使用される。
【0011】
別の実施例によると、ナノチューブは、約8〜12nmの長さと約1〜3nmの直径とを持つので、実質的に容易に細胞膜を通過することができる。ここで、ミトコンドリアは、約1000〜5000nmの長さを持ち、ミトコンドリアのビルピッド膜は、約8〜10nmの厚さである。
【0012】
更なる実施例によると、ナノチューブは、ミトコンドリア中でのみ活性となり得る。これは、ナノチューブが、かなり高い電位(約130〜150mV)が印加される場合にプロトンチャンネルとして作用し、この電位は、ほ乳類細胞中のミトコンドリアの内側膜を横切るときのみに見いだされるという事実による。
【0013】
更なる実施例では、特別なpH値に達すると非カーボン基のナノチューブが閉じるような特別なpKaを持つ化合物で、非カーボン基のナノチューブの内側表面をドーピングすることができる。これは、電子伝達系によるマトリクスから内側の膜を横切るプロトンのポンピングの結果として、ミトコンドリアが内側の膜を横切るpH勾配を持っているという事実を我々が利用することを可能にする。
【0014】
1つの実施例では、ナノチューブは、特に、ミトコンドリア中でプロトンチャンネルとして作用する。プロトンチャンネルとして作用するナノチューブは、ミトコンドリア膜の電位を減少させ、続いて基礎代謝を増加させ、活性酸素種(「ROS」)を減少させ、Ca2+のミトコンドリア中への有害な負荷を減少させる。この理由は、これらすべてのパラメータが膜電位の関数であるということであり、高いミトコンドリア膜電位は、代謝を減速させて、活性酸素種形成とCa2+のミトコンドリア中への取り込みを増加させる。
【0015】
ナノチューブは、特別な電位(すなわち、ブレークオーバー電圧)に達したときだけ、プロトンを導く(すなわち、開いてミトコンドリアを脱共役する)。これは、ナノチューブのプロトンチャンネルを閉じるミトコンドリア膜電位の低下を引き起こし、事実上ナノチューブを自己整流(self-rectifying)させる。したがって、ナノチューブが毒性の可能性無しにかなりの代謝を増加する特定なミトコンドリア膜電位を維持するように、ナノチューブを設計することができる。これは、ナノチューブがATP生成のための閾値より小さいミトコンドリア膜電位で機能(プロトンチャンネルとして作用)しないからである。
【0016】
1つの実施例によると、安全なミトコンドリアの脱共役を達成するために、ナノチューブの寸法とナノチューブを作る材料とが巧みに処理される。例えば、ナノチューブの直径が減少すると、より小さい直径は、電圧が閾値(ミトコンドリアの膜電位)に達するときのみ抵抗およびナノチューブを通過するプロトンのコンダクタンスを増加させる(ATP生成からミトコンドリアの電子輸送を脱共役する)。これらのナノチューブは減量に対して非常に効果的であるとともに、実質的に使用に対しても安全である。なせならば、ナノチューブが自己整流するからである。
【0017】
1つの実施例では、ナノチューブは、ミトコンドリア呼吸を増加し、基礎代謝を増加させることによって、肥満と体重管理のための安全で有効な治療を提供することができる。
【0018】
別の実施例では、被験者中のミトコンドリアを脱共役する方法であって、前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、前記ナノチューブは自己整流するものである方法が開示される。
【0019】
ナノチューブは、pKaを低減する化合物でコーティングすることができる。被験者は、哺乳動物であり得る。ナノチューブは、ミトコンドリアを脱共役するために適切な内径を持つ。ナノチューブは、ナノチューブが自己整流することを可能にする内径を持つ。
【0020】
ナノチューブは、金属またはポリマーを含み、金属は、金または銀であり、ポリマーは、天然高分子または合成ポリマーである。ポリマーは、好ましくは、ポリビニル・アルコール、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、改質ポリ(サッカリド)、デンプン、セルロース、キトーサン、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択される。
【0021】
別の実施例では、活性酸素種を減少しかつ被験者のミトコンドリア中への有害なCa2+の負荷を減少する方法であって、前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、前記ナノチューブは自己整流するものである方法が開示される。
【0022】
被験者は、哺乳動物であり得る。ナノチューブは、ミトコンドリアを脱共役するために設計された内径を持つ。ナノチューブは、ナノチューブが自己整流することを可能にする内径を持つ。ナノチューブは、金属またはポリマーを含み、金属は金または銀であり、ポリマーは、天然高分子または合成ポリマーである。ポリマーは、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、改質ポリ(サッカリド)、デンプン、セルロース、およびキトーサンからなるグループから選択される。
【0023】
別の実施例では、被験者の体重を減らす方法であって、前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、前記ナノチューブは自己整流するものである方法が開示される。
【0024】
被験者は、哺乳動物であり得る。ナノチューブは、ミトコンドリアを脱共役するために設計された内径を持つ。ナノチューブは、ナノチューブが自己整流することを可能にする内径を持つ。ナノチューブは、金属またはポリマーを含み、金属は金または銀であり、ポリマーは、天然高分子または合成ポリマーである。ポリマーは、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、改質ポリ(サッカリド)、デンプン、セルロース、およびキトーサンからなるグループから選択される。
【0025】
別の実施例では、被験者中の癌を治療する方法であって、前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、前記ナノチューブは自己整流するものである方法が開示される。
【0026】
被験者は、哺乳動物であり得る。ナノチューブは、ミトコンドリアを脱共役するために設計された内径を持つ。ナノチューブは、ナノチューブが自己整流することを可能にする内径を持つ。ナノチューブは、金属またはポリマーを含み、金属は金または銀であり、ポリマーは、天然高分子または合成ポリマーである。ポリマーは、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、改質ポリ(サッカリド)、デンプン、セルロース、およびキトーサンからなるグループから選択される。
【0027】
別の実施例では、被験者の外傷性脳損傷の影響を減少させる方法であって、前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、前記ナノチューブは自己整流するものである方法が開示される。
【0028】
被験者は、哺乳動物であり得る。ナノチューブは、ミトコンドリアを脱共役するために設計された内径を持つ。ナノチューブは、ナノチューブが自己整流することを可能にする内径を持つ。ナノチューブは、金属またはポリマーを含み、金属は、金または銀であり、ポリマーは、天然高分子または合成ポリマーである。ポリマーは、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、改質ポリ(サッカリド)、デンプン、セルロース、およびキトーサンからなるグループから選択される。
【0029】
別の実施例では、被験者の老化の影響を減らす方法であって、前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、前記ナノチューブは自己整流するものである方法が開示される。
【0030】
被験者は、哺乳動物であり得る。ナノチューブは、ミトコンドリアを脱共役するために設計された内径を持つ。ナノチューブは、ナノチューブが自己整流することを可能にする内径を持つ。ナノチューブは、金属またはポリマーを含み、金属は、金または銀であり、ポリマーは、天然高分子または合成ポリマーである。ポリマーは、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、改質ポリ(サッカリド)、デンプン、セルロース、およびキトーサンからなるグループから選択される。
【0031】
別の実施例では、薬学的に許容可能な担体中にナノチューブを含む薬剤組成物であって、前記薬剤組成物は被験者に、(i)静脈内配送、(ii)摂食、(iii)遺伝子銃を経由した粒子衝撃、または(iv)真皮へのパッチあるいはゲルの適用によって投与されることを特徴とする方法が開示される。
【0032】
別の実施例では、被験者の脊髄損傷の影響を減少させる方法であって、前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、前記ナノチューブは自己整流するものである方法が開示される。
【0033】
別の実施例では、被被験者の脳卒中の影響を低減する方法であって、前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、前記ナノチューブは自己整流するものである方法が開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
定義
【0035】
この詳細な説明では、以下の略語と定義を適用する。文脈が別のやり方で明確に指示しない場合、単数の形態の「a」、「an」および「the」は、本明細書に使用された場合、複数の指示対象を含んでいることに注意しなければならない。したがって、例えば、「化合物」と言えば、複数のそのような化合物を含んでおり、「服用量」と言えば、この技術分野の当業者には1回またはそれ以上の服用量およびその同等物の引用を含んでいるなどである。
【0036】
本明細書で検討されている刊行物は、本出願の出願日に先行する開示に関して提供されているに過ぎない。本発明が、先行する発明によって、このような刊行物に先行する権利を有しないことを承認する解釈されるようなことは、何ら本明細書にはない。さらに、提供されている刊行物の日付は、実際の刊行日と異なることもある。これは、個々に確認される必要があるであろう。
【0037】
特に記載していない限り、明細書とクレームで使用される以下の用語は、以下で与えられる意味を有する。
【0038】
「薬学的に許容しうる担体」は、薬剤組成物を調製するために有用な担体を意味し、この担体は、一般に、安全で、無毒であり、生物学的に受け入れられるものであり、人間の製薬学的使用と同様に獣医学の使用において許容できる担体を含んでいる。明細書とクレームで使用される「薬学的に許容しうる担体」は、1つおよび2つ以上のそのような担体の両方を含んでいる。
【0039】
疾病の「処理」あるいは「治療」は、
(1)疾病を予防すること、すなわち、疾病に晒されるまたはかかりやすくされるがまだ疾病の症状を経験していないまたは示していない哺乳動物においてその疾病の臨床的症状を発生させないようにすること。
(2)疾病を抑制すること、すなわち、疾病あるいはその臨床的症状の発生を抑えるまたは軽減すること、または、
(3)疾病を軽減すること、すなわち、疾病またはその臨床的症状の後退を引き起こすこと。
【0040】
「治療に有効な量」あるいは「薬理学的に有効な量」は、哺乳動物に投与された場合、ミトコンドリアを脱共役させるのに十分である、および/または、活性酸素種を減少させて、ミトコンドリア中へのCa2+の有害な負荷を減少させるのに十分な化合物の量を意味する。「治療に有効な量」または「薬理学的に有効な量」はまた疾病を治療するために十分な量でその疾病に対するそのような治療に十分な効果のある十分な量を意味する。「治療に有効な量」は、化合物、疾病およびその激しさ、治療される哺乳動物の年齢、体重などに依存して変化し得る。「治療に有効な量」はまた、減量を引き起こすために充分な量を示し得る。
【0041】
「医薬的に許容できる塩」は、スコポラミンの医薬的に許容され得る塩に言及し、それらの塩は、当技術分野でよく知られているような様々な有機および無機対イオンに由来し、例に過ぎないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどを含み;分子が塩基性官能基、有機または無機塩を含むを含む場合には、塩酸塩、臭化水素酸塩酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩等を含む。
【0042】
「任意の」「任意に」は、それに続く記載されたイベントや状況が必要なく起こり得ることを意味し、その記載は、イベントや状況が起こる例とイベントや状況が起こらない例を含んでいることを意味する。
【0043】
用語「個体」は脊椎動物であり、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物は、限定無しに、人間、齧歯動物(すなわち、ラット、ネズミ、およびハムスター)、家畜、娯楽動物およびペットを含む。好適な実施例では、個体は、哺乳動物であり、より好ましくは、人間である。
【0044】
本明細書で使用されるとき、用語「導入」は、個体に提供するあるいは投与することを意味する。ナノチューブを個体に導入する方法は、当業者に周知であり、限定無しに、注射、静脈内あるいは非経口剤の投与を含む。1回、複数回、連続あるいは間欠の投与は、効果的であり得る。
【0045】
本明細書に使用されるとき、用語「ナノチューブ」は、一般的に知られているテンプレート法を使用して様々な材料から形成された構造を含んでいる。さらに、ナノチューブは、約1000nmより小さい寸法、好ましくは、約100nmより小さい寸法、より好ましくは、約50nmより小さい寸法、最も好ましくは、約20nmより小さい寸法を持つ様々な形の構造を含んでいる。好適な実施例では、これらのナノ組織は、中空チューブのような、および/または、堅いワイヤのような構造である。
【0046】
本明細書に使用されるとき、用語「自己整流」(self-rectifying)は、ミトコンドリア膜電位がいったんセットされた閾値にまで下げられると、プロトンチャンネルとして機能するのを止めるナノチューブの能力について言及する。
【0047】
ナノチューブ
本発明は、ミトコンドリア脱共役剤として身体で使用されるナノチューブに関する。2,4−DNPなどの従来のミトコンドリア脱共役剤は、身体でのATPの生成を減少、および/または、停止するので、しばしば毒性である。本発明のナノチューブは、ATPの生成に悪影響を与えず、かつ化学的な脱共役剤のメカニズムとは異なる脱共役メカニズムを利用するので安全である。
【0048】
本明細書中に開示されたナノチューブは、ミトコンドリア内膜を横切る自己整流プロトンチャンネルとして作用する。膜電位がある値に達すると、ナノチューブは、プロトンの流れを止める。このメカニズムは、ミトコンドリア膜を横切る流れがオームの法則の原理に従うので、電気回路のメカニズムと同様である。オームの法則によると、V(電圧)=I(電流)・R(抵抗)(すなわち、Rを減少させるとIは増加する)。ミトコンドリアの場合では、電圧はミトコンドリア呼吸(すなわち、電子輸送系の)による内側膜を横切るプロトンの分離であり、電流は、内側膜を逆に横切ってマトリクスに入るプロトンの逆流れである(すなわち、ATPシンターゼあるいはナノチューブを通るプロトンの流れ)。
【0049】
正常な状況では、抵抗「R」は、ATPがミトコンドリアによって作り出されるという要求によってセットされる。制御されていない化学的脱共役の場合では、抵抗は、存在する脱共役剤の量の関数である。したがって、投与量が高過ぎるなら、全抵抗は撤廃されて、最大電流が流れる。本開示されたナノチューブの場合では、抵抗はナノチューブの内径を変えることによって、および/または、特定のpKaの化合物でナノチューブの内側を「ドーピング」することによって、調整することができる。本ナノチューブは、プロトンチャンネルとして作用し、存在する電圧(すなわち、電荷の分離)により、プロトンがミトコンドリア膜を横切ってマトリクス中に逆に流れるのを可能にする。
【0050】
プロトンの流れは、閾値電圧に達しているときだけ、ナノチューブがプロトンの流れを可能にするように、ナノチューブの内径を増加するまたは減少することによって制御することができる。ナノチューブの内径を減少することによって、ナノチューブを通過するプロトンを「押す」のに必要な電圧量が増加し、要求された(より高い)電圧が印加されているときだけ、ナノチューブを逆に通過して、マトリックス中にプロトンが流れる。これは、効果において、ミトコンドリアの膜電位がいったんセットされた閾値にまで下げられると、ナノチューブがプロトンチャンネルとして機能しないように、ナノチューブを自己整流させる。このフェイルセイフ・メカニズムは、ナノチューブがどのように存在しているにかかわらず起動する。なぜならば、フェールセイフメカニズムは閾値電圧が存在すると、プロトンチャンネルとしてのみ作用するからである。
【0051】
したがって、本ナノチューブは、ナノチューブがミトコンドリアの脱共役に悪影響を及ぼす前に停止するので、ミトコンドリアの脱共役剤として投与することは安全である。
【0052】
プロトンチャンネルとして機能するナノチューブは、ミトコンドリア膜電位の減少を引き起こし、その結果、基礎代謝を増加させ、活性酸素種(「ROS」)を減少させ、ミトコンドリア中へのCa2+の有害な負荷を減少させる。
【0053】
本ナノチューブは、金属、ポリマー、半導体、炭素、および他の材料であり得る。好ましくは、ナノチューブは、使用されるテンプレートの壁をメッキするまたは被覆することができる、限定無しに、金、銅、白金、ニッケルおよび銀を含む元素金属から作られる。最も好ましくは、金は不活性であり身体中で全く炎症反応を引き起こさないので、ナノチューブは金で作られる。
【0054】
ナノチューブは、ポリマーから作ることができる。これらのポリマーは、天然または合成のポリマーであり、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、デンプンなどの改質ポリ(サッカリド)、セルロース、キトーサンを含み得る。
【0055】
実効半減期(すなわち、どれくらい長くナノチューブが身体中で安定しているか)などのナノチューブの異なる特性は、所望効果を達成するために異なるポリマーの百分率組成を変えることによって、変更することができる。Martin C.R.等、材料科学:モレキュラーエレクトロニクスのツールボックスを広げる,Science,2005 Ju1, 309(5731):67-8; Kohli、P.他、バイオテクノロジーのためのスマートなナノチューブ、Current Pharmaceutical Biotechnology,2005 Feb.,6(1):35-47;Martin C.R.、ナノ材料: 膜基の合成的アプローチ、Science (1994),266,1961-1966;Martin C.R.、ナノチューブバイオテクノロジーの新興分野、Nature Reviews Drug Discoveries (2003),2 29-37.が参照される。
【0056】
また、ナノチューブを作るために、ポリラクチド、ポリグリコリド、およびポリカプロラクトンに基づくポリ(エステル)のコポリマーを使用することもできる。また、ナノチューブを作るために、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(ブチレンテレフタレート)のマルチブロックコポリマーを使用することができる。ポリ(エステル)はポリラクチドに基づくことができる。
【0057】
ミトコンドリア中のプロトンチャンネルとしてのナノチューブの使用は、化学的脱共役剤の毒性の副作用を回避して、代謝を安全に増加(減量を促進)することができる。ナノチューブは、化学的脱共役剤をまねながら実質的に毒性とはならずに高いコンダクタンスのプロトンチャンネルとして作用する。これは、ミトコンドリア膜中で効果的なプロトンダイオードおよび整流器として作用する、電圧に依存するナノチューブの使用と製造によって達成することができる。ナノチューブは、特定電位(すなわち、ブレークオーバー電圧)に到達したときだけプロトンを通すことができ、特定電位は、ナノチューブを、ナノチューブのプロトンチャンネルを閉じるポイントまでミトコンドリア膜電位を減少させるプロトンチャンネルとして作用させる。
【0058】
上で議論したように、本ナノチューブが身体で使用するために安全である1つの理由は、特定電位(すなわち、ブレークオーバー電圧)に達したときだけ、プロトンを通すメカニズムである。このナノチューブの特性は、ナノチューブプロトンチャンネルを閉じ、事実上ナノチューブを自己整流させるミトコンドリア膜電位の低下を引き起こす。したがって、ナノチューブが実質的に毒性とならず、代謝をかなり増加させる特定のミトコンドリア膜電位を維持するように、設計することができる。なぜなら、ナノチューブは、ATP生成のための閾値より低いミトコンドリア膜電位で機能しないように設計されているからである。さらに、約120〜220mVのプロトン勾配は、ほ乳動物細胞中以外に存在していないので、ナノチューブ(すなわち、プロトンチャンネル)は、ミトコンドリア中でのみ機能する。
【0059】
ナノチューブは、ミトコンドリア膜電位をATP生成のための閾値より低く減少することに関連する毒性なしで代謝をかなり増加させる特定のミトコンドリア膜電位を維持するように設計することができる。ナノチューブプロトンチャンネルは、同様の大きさのプロトン勾配が個体の細胞中で他のどこにも存在しないので、個体中の細胞中のミトコンドリアだけで機能する。
【0060】
ナノチューブの内径(「i.d.」)は、所望のコンダクタンスが実現されるまで変更することができる。また、ナノチューブ内径を減少させるとオームの法則に基づいてプロトンを流すチャンネルのコンダクタンスが減少する(抵抗を増加させる)こともまた周知である。Nishizawa M.他、選択的に電気化学的に切り替え可能なイオン輸送選択性を持つ金属ナノチューブ膜、Science(1995),268,700-702;Miller S.A.他、テンプレートで調製された炭素ナノチューブ膜中での電気浸透流動、J.Am.Chem.Soc(2001).123,12335-1342;Martin,C.R.、ナノ材料:膜基の合成アプローチ、Science(1994),266,1961-1966.が参照される。
【0061】
さらに、ナノチューブのプロトンコンダクタンスと選択性は、特定の化学吸着したアミノ酸を含む特定のpKaの化合物を使用することによって、調整および/または増加することができる。これらのアミノ酸は、テンプレート合成の間にナノチューブの内壁に組み込むことができる。アミノ酸の化学的性質に依存してpHに選択的であるのに加えてプロトンに対して高選択性であるナノチューブを作製することができる。
【0062】
一般に、内部ミトコンドリア膜を横切る約0.5のpH差が存在する。ナノチューブの内面は、このpH勾配があるレベルに到達すると、ナノチューブが閉じるような特定のpKaの化合物でコーティングされる(すなわち、「ドーピングされる」)と、この化合物はもはやプロトンを加えられずかつプロトンを流さすのをやめる。これは、プロトンコンダクタンスを制御するとともに、2番目のフェイルセイフとして機能する。ミトコンドリア内膜を横切るpH勾配に基づく4〜5(37℃までの水中で)の範囲のpKaを持つ化合物であって、ナノチューブ中で適合することができる十分に小さな分子量を持つ化合物は、この応用に理想的であるだろう。イオン選択性は、選択されたイオンの反対の電荷の化合物でナノチューブの内部をドーピングすることによって調整することができる。
【0063】
ナノチューブの調製
一般に、ナノチューブを形成するテンプレート方法は、(a)テンプレート膜をメタノールに浸漬する工程と、(b)テンプレート膜をSnCl2とトリフルオロ酢酸を含む溶液に浸漬する工程と、(c)テンプレート膜を二度メタノールに浸漬する工程と、(d)テンプレート膜を硝酸銀の水溶性アンモニウム溶液あるいは膜のメッキに使用することを希望する材料を含む水溶液に浸漬する工程と、(e)テンプレート膜をメタノールに浸漬する工程と、(f)テンプレート膜を市販の金めっき液を有する金めっき浴に配置する工程と、(g)攪拌しながら硫酸の液滴添加により金めっき浴のpHを約10に調整する工程と、(h)異なる内径の中空管のような構造を得るためにテンプレート膜を異なる時間の間金めっき浴に配置する工程と、を含む。CH2Cl2がテンプレート膜を溶解するために加えられる。
【0064】
1つの実施例において、ナノチューブを形成するテンプレート方法は、(a)約2〜10分間、テンプレート膜をメタノールに浸漬する工程と、(b)約30〜60分間、テンプレート膜をSnCl2とトリフルオロ酢酸を含む溶液に浸漬する工程と、(c)約1〜5分間、テンプレート膜を二度メタノールに浸漬する工程と、(d)約2〜10分間、テンプレート膜を硝酸銀の水溶性アンモニウム溶液に浸漬する工程と、(e)約2〜10分間、テンプレート膜をメタノールに浸漬する工程と、(f)約2〜10℃の温度にテンプレート膜を、Na2SO3、ホルムアルデヒド、および炭酸水素ナトリウムを通常含んでいる市販の金めっき液を有する金めっき浴に配置する工程と、(g)攪拌しながら硫酸の液滴添加により金めっき浴のpHを約10に調整する工程と、(h)異なる内径の中空管のような構造を得るためにテンプレート膜を異なる時間の間、金めっき浴に配置する工程とを含む。CH2Cl2がテンプレート膜を溶解するために加えられる。
【0065】
好ましくは別の実施例において、ナノチューブを形成するテンプレート方法は、(a)約2〜10分間、好ましくは約5分間、テンプレート膜をメタノールに浸漬する工程と、(b)約30〜60分間、好ましくは45分間、テンプレート膜を0.025MのSnCl2と0.07Mのトリフルオロ酢酸を含む溶液に浸漬する工程と、(c)約1〜5分間、好ましくは約2.5分間、テンプレート膜を二度メタノールに浸漬する工程と、(d)約2〜10分間、好ましくは約5分間、テンプレート膜を0.029Mの硝酸銀の水溶性アンモニウム溶液に浸漬する工程と、(e)約2〜10分間、好ましくは約5分間、テンプレート膜をメタノールに浸漬する工程と、(f)約2〜10℃の温度、好ましくは約5℃の温度に、テンプレート膜を、0.127MのNa2SO3、0.625Mのホルムアルデヒド、および0.025Mの炭酸水素ナトリウムを通常含んでいる市販の金めっき液を有する金めっき浴に配置する工程と、(g)攪拌しながら0.5Mの硫酸の液滴添加により金めっき浴のpHを約10に調整する工程と、(h)異なる内径の中空管のような構造を得るためにテンプレート膜を異なる時間の間、金めっき浴に配置する工程とを含む。CH2Cl2がテンプレート膜を溶解するために加えられる。
【0066】
別の実施例において、ポリカーボネートトラックのエッチング膜(例えば、Sterlitech(登録商標)社製)は、5分間メタノールに浸漬される。実質的に、メタノールのすべてが排出され、膜は約0.025MのSnCl2と0.07Mのトリフルオロ酢酸を含む溶液に浸漬される。両方の化合物は等容積で加えられる。膜は、約30〜60分間、SnCl2とトリフルオロ酢酸溶液に保持される。次に、溶液が排出され、膜はメタノールに浸漬される。メタノールの膜の浸漬は、SnCl2とトリフルオロ酢酸を取り除くためである。膜は、次に硝酸銀の水溶性アンモニウム溶液に浸漬される。膜は、Na2SO3、炭酸水素ナトリウム、HCOOH、および市販の金めっき液を含む実質的に等容積を含む溶液中に配置される。溶液は、約5℃の温度で維持される。膜は、金めっき液に、3時間、6時間、9時間または24時間保持される。ナノチューブの内径は、めっき時間とともに変化する。それぞれの時間後に、溶液は排出され、CH2Cl2または他の同様の溶媒が膜を溶解するために加えられる。次に、溶液は、凝集したナノチューブを切り離すために遠心分離される。次に、凝集したナノチューブを残しながら、溶液が取り除かれる。PEGが凝集したナノチューブに加えられると、PEGが凝集したナノチューブを被覆して、凝集したナノチューブが分離し、PEG(ポリエチレングリコール)で被覆された実質的に個別のナノチューブが溶液として水か同様の溶媒中で利用可能となる。次に、混合物は、PEGでナノチューブを被覆するのを支援し、溶液中のナノチューブの利用率を増加させるために回転される(すなわち、ジニー回転器または他の同様のミキサーを使用して激しく混合される)。混合物は、次に、微粒子状物質を取り除くためにろ過される。次に、ろ過されたナノチューブは遠心分離法によってペレットにされ、上澄みが取り除かれ、余分なPEGを取り除くためにエタノール中で再懸濁される。次に、ナノチューブは再び遠心分離法によってペレットにされ、上澄みが取り除かれ、ペレットは、滅菌水で再懸濁されて、約4℃で貯蔵される。
【0067】
上記説明された方法で得られる金めっき膜は、ヒスチジン(または、ナノチューブの内部をドープしたい化合物)の溶液中に配置することができる。金めっき膜は、ナノチューブ形状の金めっき膜の内壁をヒスチジンで被覆するのを可能とするために、24時間ヒスチジン溶液中に放置される。被覆された膜は、除去され、CH2Cl2中に置かれ、超音波処理されて、膜を溶解する。結果とし得られる溶液にPEGを追加するとPEGは、ナノチューブの外側を被覆してナノチューブを可溶性にすることができる。PEG溶液は遠心分離され、ナノチューブは底に沈む。PEG溶液は取り除かれ、ナノチューブが集められる。エタノール(「EtOH」)は、ナノチューブが無菌媒質に懸濁されように加えられる。溶液は、遠心処理後に排出され、エタノールを加えてヒスチジンで被覆されたナノチューブを得る。
【0068】
PEGはナノチューブの外側に加えられ、ろ過前にナノチューブが溶液中で可溶性となるのを可能にする。PEG無しに製造されたナノチューブは、ろ過プロセスを通して作ることができない。
【0069】
さらに、ナノチューブのプロトンコンダクタンスは、特定の化学吸着したアミノ酸を含む特定のpKaの化合物を使用して調整することができる。これらのアミノ酸は、テンプレート合成の間にナノチューブの内壁に組み込むことができる。アミノ酸の化学的性質に依存しながら、pHに選択性がありかつプロトンに高選択性であるナノチューブを作製することができる。一般に、内部ミトコンドリア膜を横切る約0.5のpH差が存在する。ナノチューブの内側表面が特定pKaを有する化合物でコーティングされると、ナノチューブは特定pHに到達するとき閉じる。
【0070】
約37℃の水中でpKaが4〜5であり、ナノチューブの内径に浸透し得る分子の大きさを持つ弱酸は、プロトンコンダクタンスを調整する化合物として使用することができる。好適実施例では、これらのプロトンコンダクタンスを調整する化合物は、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択される。
【0071】
ナノチューブを形成するテンプレート法では、使用されるテンプレートを溶解する有機溶媒溶液を使用することができる。好適実施例では、有機溶媒溶液は、メタノール、メチレンクロリド、またはそれの組み合わせであり得る。
【0072】
ミトコンドリアの脱共役剤としてのナノチューブの使用
本ナノチューブはミトコンドリアの脱共役に関連する条件を処理または管理するために使用することができるし、本ナノチューブはミトコンドリア脱共役によって影響を受ける。更に、活性酸素種の増加および/またはCa2+の増加によって引き起こされる条件は、本発明のナノチューブを投与して処理される、および/または、その条件からの影響を本発明のナノチューブを投与して減少することができる。
【0073】
以下の疾病または条件は例示であり、ミトコンドリアの脱共役によって引き起こされたまたは悪化された条件に限定することを意味しない。
【0074】
肥満/体重制御
国立保健研究所(「NIH」)によると、疾病制御および予防センターからの最近の数字は、米国の大人の65%(すなわち約1億2960万人)が太りすぎであるか肥満体であることを示している。生活の質の低下と若死の危険の増加に加えて、個体の肥満と太りすぎのために、アメリカ合衆国(「米国」)は直接医療費と病気による失った賃金などの間接医療費として概算1170億ドルを支払っている。
【0075】
肥満は大流行しており、米国が直面する最も重要な健康問題の1つとして認識されている。多くの調査研究は、肥満は、2型糖尿病、高血圧、冠状動脈性心臓病、脳梗塞、腸がん、閉経後の乳癌、子宮内膜癌螺旋、胆嚢病、骨関節炎、および閉塞性睡眠時無呼吸を含む多くの体調条件を悪化させる危険を増加させるということを直接的に示している。肥満関連の疾病は、事実上、現在の米国における若死の原因として喫煙することに次ぐものである(疾病対策センター)。
【0076】
1930年代において、ミトコンドリア脱共役剤を使用することにより身体の基礎代謝を増加させると、安定してかつ急速な減量を直接的にもたらすことが認められた。化学的なミトコンドリアの脱共役剤は、ミトコンドリア呼吸を増加し膜電位を減少することによって、服用量に依存しながらかなり減量を増やすことが見出された。Harper,J.A.他、(2001)、肥満治療のための医薬品開発の目標としてのミトコンドリアの脱共役、Obesity Reviews 2(4),255-265およびKurt,T.L.他、減量における2,4−DNP:毒物センターと公衆衛生安全,Vet Hum Toxicol 28,574-5(1986)が参照される。このメカニズムは、効果的に電子輸送(すなわち、ミトコンドリア呼吸)からミトコンドリアのアデノシン三リン酸(「ATP」)生成を脱共役し、食品がエネルギー源として使用されるまたは脂肪として貯蔵される代わりに、熱に変換されるという結果となる。事実上、化学的脱共役剤は基礎代謝を増加させ続いて減量をもたす(図1参照)。
【0077】
化学的ミトコンドリアの脱共役剤2,4−ジニトロフェノール(「2,4−DNP」)は、減量サプリメントとして1930年代中頃に販売された。図1は、2,4−DNPが人間において服用量に依存する方法で代謝と減量を増加させることを示す2つの線グラフを示している。図1の右のパネルにおいて、代謝における線形増加が2,4−DNPの服用量の関数として示されている。図1の左パネルは、2,4−DNPの服用量が増加すると、代謝が増加しダイエットまたはライフスタイルの変化に関係なく体重減少が直線的に増加することを示している。Tainter M.L.他、(1935)、肥満の治療における2,4−DNP:最終報告書、J.Am.Med.Assoc 105, 332-337.が参照される。
【0078】
しかしながら、人々が減量速度を増加させるために2,4−DNPを定期的に過剰摂取するので、2,4−DNPは食品医薬品局(「FDA」)によって市場から撤去された。(Kurt,T.L.他、減量における2,4−DNP:毒物センターおよび公衆衛生安全,Vet Hum Toxicol 28,574-5(1986)においてレビューされた)。
【0079】
2,4−DNPの毒性は、利用された脱共役メカニズムに由来する。2,4−DNPなどの化学的脱共役剤は、化学的脱共役剤機能による脱共役剤メカニズムにより毒性である。これらの化学的脱共役剤は通常は弱酸であり、マトリクスよりもより酸性であるミトコンドリアの内側の膜空間中のpKaによってプロトン化される(すなわち、プロトンを持ち上げる)。プロトン化した化学的脱共役剤は内側の膜を横切り、ここでプロトン化した化学的脱共役剤はより塩基なマトリクス中にプロトンを戻すように放出し、次に、化学的脱共役剤は内側の膜空間を横切ってマトリクス中に戻るが、この一連のサイクルはpH勾配と膜電位が完全に消散するまで続く。
【0080】
化学的脱共役剤を過剰に摂取することが流行していた、なぜなら、完全なまたは過度のミトコンドリアの脱共役(すなわち、ミトコンドリア膜電位を約100mV未満に低下すること)が細胞のATPを生成することをできないようにさせるからであるが、細胞のATPは結局は死に至る。Sullivan,P.G.他(2004)、治療ターゲットとしてのミトコンドリアの脱共役とそれに続く神経細胞の損傷、Journal of Bioenergetics and Biomembranes,36(4),353-356およびMattiasson、G.他、(2006)、健康と疾病におけるUCP2の明らかになる役割、Antioxidants and Redox Signaling,8(1-2),1-38が参照される。
【0081】
ナノチューブは、基礎代謝を安全に増加させることによって、肥満と体重管理のための安全で有効な治療を提供することができる。本ナノチューブは、特定電位に到達したときにだけプロトンを導く。ナノチューブは、毒性の可能性無しにかなり代謝を増加させる特定のミトコンドリアの膜電位を維持するように設計することができる。脱共役剤としてのナノチューブの使用と対比すると、化学的脱共役剤は、膜電位を減少させかつミトコンドリア呼吸を増加させて、服用量に依存しながらかなり減量を増加させる。これは、電子輸送からのATP生成を脱共役し、カロリーの摂取がエネルギー源ではなく、熱に変換される。
【0082】
ナノチューブは、チャンネルを開閉する電位範囲を変更することによって代謝と減量を最大にする肥満患者の保持している電位を減少させながら代謝および/または減量を増加するように製造することができる。
【0083】
ナノチューブは、所望の効果を得るために変更し得る。デザイナーナノチューブは、プロトンチャンネルを開閉する電位範囲を変更することによって、代謝を増加または減少するように製造することができる。例えば、肥満患者の保持する電位を減少することによって、代謝と減量を最大にすることができる。
【0084】
中枢神経系損傷/TBI
一般に、2,4−DNPやカルボニル・シアニド4−トリフロロメトキシ・フェニルヒドラゾン(「FCCP」)などの化学的脱共役剤は、外傷性脳損傷、SCI、脳卒中、パーキンソン病などの中枢神経系(「CNS」)損傷に続いて神経保護的である。理論によって拘束されることを好まないが、その作用機構は、そのような損傷に続いてミトコンドリアのCa2+の負荷と活性酸素種の生成の低下を含むと思われる。両方はミトコンドリア膜電位と関連しており、高い膜電位はミトコンドリアのCa2+取り込みと活性酸素種の生成とを増加させる。例えば、約30mVミトコンドリア膜電位を増加させると、Ca2+の取り込みが約10倍増加するが、一方、分子酸素に電子ずれを増加させる減少した(失速した)電子輸送によって、活性酸素種の生成が最大になる。対照的に、ミトコンドリア膜電位が減少すると、Ca2+の負荷が減少し同時に活性酸素種の生成が減少する。化学的脱共役剤の毒性作用は、個体における治療での使用の可能性を限定し、この毒作用は中枢神経系損傷に続いて起こる薬物代謝での変えられた動的変化によって作られる。
【0085】
ナノチューブは、中枢神経系損傷に続いて脱共役して膜電位を減少させる利益を、化学的脱共役剤における毒性を伴わずに提供することができる。また、化学薬品を代謝する身体の能力に影響を与える中枢神経系損傷に続く代謝の変化はナノチューブの効力を変更しないだろう。
【0086】
ナノチューブは、いくつかの神経障害に対して効果的な療法を提供することができ、その治療において、ミトコンドリアが重要な役割を演じることが明確にされた。これらの神経障害には、限定無しに、外傷性脳損傷、SCI、脳卒中、アルツハイマー疾病、およびハンティングトン舞踏病が含まれる。
【0087】
外傷性脳損傷(「TBI」)は、米国において毎年40万人以上の人が入院し250億ドル以上のコストがかかると見積られる、深刻な健康管理上の問題である。神経保護の発見と進展、および/または、TBIに続く臨床的関連性を持つ再生剤の前駆物質(pro-regenerative agent)に多くの関心が集まっている。
【0088】
TBIに続く神経の変性は、最初の機械的損傷と進行性の2次的壊死とからなる2相で進展すると信じられている。興奮性アミノ酸(「EAA」)の変質、酸化ストレスの増加、Ca2+の妨害、ホメオスタシスは、続いて起こる神経病理学に寄与する重要な要因であると信じられている。Hall,E.D.他、重大な神経系損傷における維持機能:神経科学から神経学へ:神経科学、分子の薬剤、および神経学の治療的翻訳(S.Waxman,Ed),エルゼビア/アカデミックプレス社、アムステルダム、pp.35-59,2004.Sullivan,P.G.,他(2004)、神経損傷に続く治療ターゲットとしてのミトコンドリアの脱共役,36(4),353-356;Lipshitz,J.他(2005)、外傷性脳損傷におけるミトコンドリアの損傷と機能不全,Mitochondrion,4,705-713;Mattiasson,G.他(2005),健康と疾病におけるUCP2の新しい役割、Antioxidants and Redox Signaling,8,1-38.が参照される。
【0089】
ミトコンドリアは細胞の死のカスケードで重要な役割を果たし、ミトコンドリアの機能不全は、興奮性アミノ酸が媒介する神経毒作用に直接的に関係する。ミトコンドリアの機能不全はミトコンドリアの機能を変化させ、活性酸素種を増加するCa2+イオンに直接的に関係する。TBIに続いて、ミトコンドリアのホメオスタシスに重大な損失があり、その結果としてミトコンドリアの活性酸素種の生成増加およびシナプスホメオスタシスの妨害が得られるが、TBIに関連する神経病理学の後遺症におけるミトコンドリアの重要な役割が示唆される。
【0090】
過去においてミトコンドリアの機能不全は、脳障害の神経病理学的な後遺症に重要に関連することが明確にされた。Singh,I.N.他,(2006);局所的な外傷性脳損傷のマウスモデルにおいてミトコンドリアの後外傷の酸化損傷と機能不全の時間の経過:神経保護治療に対する影響、Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism (印刷中 Epub Mar 15, 2006);Hall,E.D.他、重大な神経系損傷における維持機能:神経科学から神経学へ:神経科学、分子の薬剤、神経学の治療の翻訳(S.Waxman,Ed),エルゼビア/アカデミックプレス社、アムステルダム、pp.35-59,2004; Sullivan,P.G.,他(2004)、神経損傷に続く治療ターゲットとしてのミトコンドリアの脱共役,36(4),353-356;Lipshitz,J.,他,(2005)、外傷性脳損傷におけるミトコンドリアの損傷と機能不全、Mitochondrion,4,705-713;Mattiasson,G.他(2005),健康と疾病におけるUCP2の新しい役割、Antioxidants and Redox Signaling,8,1-38.が参照される。
【0091】
TBIで誘発されたグルタミン酸の遊離は、ミトコンドリアのCa2+サイクリング/過負荷を増加させ、結局はミトコンドリア機能不全につながる。TBIに続いてシナプスホメオスタシスの妨害とともにミトコンドリアのホメオスタシスの損失とミトコンドリアの活性酸素種の生成の増加が起こる。
【0092】
外因性ミトコンドリア脱共役剤は、ミトコンドリアの内膜空間からミトコンドリアのマトリックスへのプロトン移動を容易にする化合物である。内因性脱共役は、遊離脂肪酸をプロトンに転座するのを利用する内因性ミトコンドリア脱共役蛋白質(「UCP」)の活性化を経由してなされる。この短絡は、プロトンの流れからATPシンターゼを通る電子伝達系(「ETS」)を経由する、マトリクスからのプロトンのポンピングを「脱共役」し、ミトコンドリア膜電位の偶然的な減少をもたらす。ミトコンドリアを完全に長期にわたって脱共役すると、ミトコンドリアによるATPレベルの維持能力の損失をもたらすので有害であるが、一時的なまたは「温和な脱共役」は神経保護をもたらす。TBIで誘発された興奮性毒性の急性期における温和な脱共役は、ミトコンドリアのCa2+の取り込み(サイクリング)と活性酸素種の生成とを低減するが、これは、Ca2+の取り込みと活性酸素種の生成とがΔΨに依存するからである。TBI損傷後(5分)にミトコンドリア脱共役剤を投与したラットは、上記の考えと調和して、組織損失の減少、改善された行動効果、TBI損傷に続くミトコンドリアの酸化損傷とCa2+負荷と機能不全の減少とを示した(図2参照)。
【0093】
虚血性神経退化に寄与するメカニズムは無数であるが、ミトコンドリアの機能不全は、現在では、壊死または枯死的な神経の死に通じる重大事件として認識されている。Korde,A.S.,ミトコンドリアの脱共役剤2,4−DNPは一時的な病巣大脳虚血に続く組織の損傷を弱めてミトコンドリアのホメオスタシスを改善する、(2005)J Neurochem,94(6):1676-84が参照される。さらに、2,4−DNPがラット脳における病巣の虚血性再灌流障害のモデルで梗塞容積を約40%減少させることが示されている。上記引用文献が参照される。
【0094】
しかしながら、上記議論したように2,4−DNPなどの化学的脱共役剤は、死を引き起こす点まで制御できずに脱共役する。したがって、ナノチューブは、TBIに関連する負傷後に化学的脱共役剤と同様の有益な効果を達成するために使用することができる。これらの効果とは、毒性の危険なしに、組織損失の減少、改善された行動効果、TBIに続くミトコンドリアの酸化損傷とCa2+負荷と機能不全の減少などである。
【0095】

ナノチューブは、様々な癌治療に非常に有効であり得る。現在の治療戦略は、癌細胞の増殖を抑制するように細胞の増殖に毒性がある医薬品あるいは放射線を利用している。そのような目標を定めない治療は高効率ではなく、他の増殖する癌でない細胞を損傷させるかなりの副作用の原因となる。
【0096】
最近の技術は、ナノ分野技術を使用して生体内で特別に癌細胞を標的化としてラベリングすることを可能にする。下記のものが参照される。Gao, X.,生体内で半導体量子ドットを用いた標的化と画像化、(2004) Nature Biotechnology, 22(8), 969-976;Han, M.,他、バイオ分子の多重送信された光学コード化のための量子ドットで標識されたミクロビーズ(2001) Nature Biotechnology, 19, 631-635;およびSavic、R.他、ミセル性ナノ容器を定められた細胞質の細胞器官に分布させる、(2003) Science, 300, 615-618。癌細胞をこのように標的化してラベリングすることが可能な場合、ナノチューブは標的化してラベリングされた癌細胞に特別に直接配送することができる。ナノチューブは内側から標的化してラベリングした癌細胞の死をもたらすレベルに膜電位を下げるように設計することができる。非特異性チャネルとして作用するナノチューブは、ミトコンドリア膜電位によって開いた場合、急速に膨張させることができ、ミトコンドリアの破裂もまた設計することができる。これは、ミトコンドリアから細胞消滅前の蛋白質を放出して、内部から癌細胞を殺すであろう。
【0097】
生物の寿命
内因性脱共役たんぱく質(UCP)は、最近、ハエの寿命を増加させることが示された。また、UCPの内因性の活性化と同様に、化学的脱共役剤が発作モデルにおいて神経保護であり発作を低減する役割を果たし得ることが示された。以下のものが参照される。Sullivan, P.G.,他, ミトコンドリアの脱共役蛋白−2が未熟な脳を興奮毒性による神経の死から保護する,(2003) Annals of Neurology, 53, 711-717;Sullivan, P.G.,他,ケトン誘発食がマウスの海馬中のミトコンドリア脱共役蛋白レベルと活性増加を高める,(2004) Annals of Neurology, 55, 576-580;Brown, M. B.,他,上昇したカルシウムに対するミトコンドリアの反応における脳の特別な領域の加齢性変質,(2004) Journal of Bioenergetics and Biomembranes, 36, 401-406;Jin, Y.,他, ミトコンドリアの脱共役剤2,4−DNPがミトコンドリアの機能を改善する,酸化損傷の軽減と損傷した脊髄中の白い物質の補充,(2004) Journal of Neurotrauma, 21 , 1396-1404;および、Korde, A.S.,他,脱共役剤2,4−DNPは線条キノリン酸注入に続くミトコンドリアのホメオスタシスを改善する,(2005) Journal of Neurotrauma, 22, 1142-1149.
【0098】
ナノチューブの投与
ナノチューブは、当技術分野で周知の種々の方法で個体に投与することができて、特定な技術に制限されるものではない。
【0099】
1つの実施例では、ナノチューブは、脂質ミクロスフェア/チューブ中にナノチューブを包むことによって個体に投与することができる。いったんナノチューブがリピド球によって取り囲まれると、ナノチューブは、リピド可溶性となって個体に投与するために注入(すなわち、静脈内配送)または摂取することができる。ナノチューブは140mVより大きいプロトン勾配が存在するところ(すなわち、ミトコンドリア膜で)のみ活性である。したがって、ナノチューブの配送は特にミトコンドリアに目標を定められる必要はない。
【0100】
別の実施例では、ナノチューブは、配送のためにナノチューブをウイルス性蛋白に取り付けて個体に投与することができる。例えば、転写性(「Tat」)ペプチドの転写活性化剤にナノチューブを取り付けると、細胞中へ入ることが可能となるばかりでなく、Tatペプチドの正電荷により特にナノチューブをミトコンドリアに目標を定めることが可能となる。
【0101】
別の実施例では、ナノチューブ、例えば、金のナノチューブを個体に粒子衝撃よって投与することができる。この技術は非常に簡単でありワクチンを接種するのに使用された。Lin,M.T.,他、遺伝子銃:皮膚の遺伝子治療における現代の応用、(2000)Int.J. Dermatol,39(3):161-70が参照される。粒子衝撃は、衝撃波を使用して金のナノチューブ配送するために「遺伝子銃」を使用する。これは、衝撃波を発生するために使用される圧力に依存して、皮膚か筋肉の様々な層中にナノチューブを実質的に正確に配置することができる。
【0102】
別の実施例では、ナノチューブは、真皮へのパッチまたはゲルの応用によって個体に投与することができる。ナノチューブのサイズを考れば、これは特定の期間にわたってナノチューブを配送するための簡易手法である。また、真皮へのパッチまたはゲルの応用は、パッチまたはゲルから真皮へのナノチューブの放出を変更することによってナノチューブの特別な服用量と配送とを可能にすることができる(例えば、ニコチンパッチ)。
【0103】
別の実施例では、ナノチューブの外部表面はポリエチレングリコール(「PEG」)でコーティングされる。PEGで被覆されたナノチューブは、投与経路にかかわらず個体に容易に投与することができる。ナノチューブのPEG被覆はナノチューブを水に可溶性とし、容易に哺乳動物の血液脳関門を越えることができる。これは、効果を引き起こすのに必要な投与量が小さいという事実と結びつけて、経口投与(例えば、カプセル、タブレット、ナノチューブのけん濁液)を介する効率的な摂取が可能となる。
【0104】
治療的に有効な量あるいは投与量が動物に投与される。齧歯動物での予備データに基づいて、この治療に有効な投与量は、少なくとも約0.1mg/kg、好ましくは約1〜100,000mg/kg、より好ましくは約2〜10,000mg/kg、および最も好ましくは約2.5〜5,000mg/kgの範囲である。ナノチューブは自己整流するので、一度、最低有効量(すなわち、代謝における所望あるいは目標投与量)に達すると、服用量を増やしても更なる効果は得られない。
【0105】
ナノチューブは、ミトコンドリアの脱共役剤としての作用および/または、治療、維持および/または疾病条件の防止に十分な量で、組成物中および薬剤製品中に存在する。ナノチューブは広い服用量の範囲で有効であり、一般に、製薬的にあるいは治療的に有効な量で投与される。ナノチューブの治療における投与量は、例えば、治療される特定の使用、ナノチューブ投与方法、患者の健康と状態、および処方する医師の判断に従って異なる。静脈内投与での投与量は、通常は、約1.0〜10.0mg/kgの範囲にあるだろう。胃腸管からナノチューブの服用量の吸収における必然的な減少により、ナノチューブが経口形態で投与される場合の服用量は、約5〜10倍に増加させなければならない。有効な服用量は、生体外あるいは動物モデル試験システムから得られる服用量−応答曲線から容易に推定することができる。
【0106】
投与されるナノチューブの実際の量は、疾病の厳しさ、被験者の年齢と相対的な健康、投与ルートと形態、および他の因子など多くの因子に依存するだろう。
【0107】
患者に投与される量は、投与対象、投与目的、例えば、予防と治療、患者の状態、投与方法などに依存して変化する。治療の応用において、ナノチューブは既に症状に苦しんでいる患者に投与される、および/または、症状および合併症を回復する、または少なくとも部分的に抑制するために充分な量の条件で投与される。これを達成するために十分な量は、「治療に有効な投与量」として定められる。この使用のための有効量は、被験者/患者などの年齢、体重、一般的な条件に依存する。
【0108】
これらのナノチューブは、従来の滅菌技術によって殺菌することができるし、ろ過により無菌とすることができる。製薬品として使われる場合、本発明のナノチューブは通常は製薬組成物の形態で投与される。また、本発明は、1つまたはそれ以上の薬学的に許容しうる担体あるいは賦形剤と関連づけられたナノチューブを含む薬剤組成物を含んでいる。賦形剤は、通常はヒト被験者あるいは他の哺乳動物への投与に適したものである。本発明の組成物の製造において、活性成分は、賦形剤と混合される、および/または、賦形剤によって希釈される。賦形剤が希釈剤として機能する場合には、賦形剤は、固体、半固体、または液体材料であり、賦形剤は活性成分のためのビヒクル、担体、または媒体として作用する。
【0109】
本発明のナノチューブは、当技術分野で知られている手順を使うことによって患者に投与した後で、活性成分を迅速に放出する、持続して放出する、または遅れて放出するように調合することができる。
【0110】
本発明で使用するための適切な方法と薬剤製品は、レミントンの製薬化学、マース出版会社(フィラデルフィア、PA)、17版)(1985)中に見出すことができる。
【0111】
本発明の1つの態様によると、ナノチューブは単独で、または、他の医薬品と組み合わせて投与され得る。したがって、薬剤製品は、ナノチューブと、医薬品などの他の活性成分との同じ調合による組み合わせを含む。組み合わせで投与される場合、ナノチューブは例示されたような他の化合物と同じ調合によってまたは別々の調合によって投与することができる。組み合わせで投与される場合、ナノチューブは他の化合物および/または組成物の前に、後に、または同時に投与される。
【実施例】
【0112】
実施例1
【0113】
テンプレート法によるナノチューブの調製
テンプレート法を使用してナノチューブを調製するために、ポリカーボネートトラックエッチング膜がメタノールに5分間、浸漬された。メタノールのすべてが排出され、次に膜は、0.025MのSnCl2と0.07Mのトリフルオロ酢酸を含む溶液に浸漬された。これらの化学物質の両方は等容積で加えられた。膜は、SnCl2およびトリフルオル酢酸溶液中に45分間保持された。溶液は排出され、膜はメタノール中に、連続した2回、それぞれ2.5分間、浸漬された。メタノール中への連続した2回の膜の浸漬は、残存するSnCl2またはトリフルオロ酢酸を取り除くために行われた。次に、膜は5分間の水溶性のアンモニアを含む硝酸銀溶液中に浸漬された。
【0114】
次に、膜は、以下の等容積を含む溶液中に置かれた:0.127MのNa2SO3、0.025Mの炭酸水素ナトリウム、0.625MのHCOOH、および市販の金めっき液Na3Au(SO3)2(オロマースパートBテクニックインクで希釈された)。溶液は、約5℃の温度に保持された。チューブの内径は、めっき時間で変化した。膜は、金めっき液中に3、6、9、または24時間保持された。各めっき時間の後で溶液は排出され、CH2Cl2が膜を溶解するために加えられた。次に、凝集したナノチューブを分離するために溶液を遠心分離した。
【0115】
次に、凝集したナノチューブを残して溶液を慎重に取り除いた。約2.5mLのPEGを凝集したナノチューブに加えた。PEGがナノチューブをコーティングし、凝集したナノチューブを分離し、PEGでコーティングされたナノチューブを溶液として水あるいは同様の溶媒で実質的に利用可能とするためである。次に、混合物を回転し、PEGがナノチューブを被覆するのを支援して溶液中のナノチューブの利用率を増加させた(すなわち、ジニー回転器または他の同様のミキサーを使用して激しく混合した)。
【0116】
次に、遠心分離法によるセントリコンを使用して混合物をろ過し、微粒子状物質を取り除いた。次に、ろ過したナノチューブは遠心分離法によってペレットにし、上澄みを取り除き、70%のエタノール中で再懸濁して余分なPEGを取り除いた。次に、ナノチューブは再び遠心分離法でペレットにされ、上澄みを取り除き、滅菌水で再懸濁されて約4℃で貯蔵された。
【0117】
0.025MのSnCl2が必要であった。100mL調製するのに0.948gのSnCl2を使用し、40mL調製するのに0.3792gのSnCl2を使用した。水溶性アンモニアを含む硝酸銀溶液は、0.0984gの硝酸銀に5NのNaOH滴状(沈殿する場合)を加えて調製した。
【0118】
得られた溶液は、すぐに使用した。0.07Mのトリフルオロ酢酸は0.15964gまたは0.104.33μlの量で使用した。0.127MのNa2SO3は0.32014gの量で使用した。0.025Mの炭酸水素ナトリウムは0.04205gの量で使用した。0.625Mのホルムアルデヒドは0.3752gの量で使用した。全容積は173.7mLである。
【0119】
膜を溶解するためにCH2Cl2を加えた。膜を十分に覆うために十分なCH2Cl2(約10mL)を加え、得られた混合物は、遠心分離および/または超音波処理した。次に、膜から得られたナノチューブを再び遠心分離して液体を分離した後に、約2〜5mLのPEGを加えた。PEGの代わりにアトモル(Attomol)を加えることができる。
【0120】
CH2Cl2で膜を溶解する前に、上記説明されたように、ナノチューブは、任意に、ヒスチジンでコーティングされるように、膜が実質的にヒスチジンで浸漬されるように約10mLのヒスチジン溶液を加えた。さらに、酢酸は、ヒスチジン溶液のpH調整のために加えられた。膜がナノチューブを実質的にコーティングするのに充分な時間だけヒスチジン/酢酸溶液に浸漬した。
【0121】
実施例2
ヒスチジンを使用するナノチューブの調製
【0122】
ナノチューブは、実施例1で詳しく説明された方法を使用して調製した。次に、めっき膜をヒスチジン溶液中に入れて24時間放置し、ヒスチジンが膜中でメッキされたナノチューブの内壁をコーティングするのを可能とした。被覆された膜を取り除き、CH2Cl2中に置かれ、膜を溶解するために超音波処理された。得られた溶液にPEGを加えナノチューブをPEG溶液中に放出させた。PEG溶液を超音波処理してナノチューブを底に沈めた。PEGを取り除いてナノチューブを集めた。ナノチューブが滅菌媒質中で懸濁するように、70Vのエタノールを加えた。溶液を遠心処理後に排出し、次に、70Vのエタノールを加えた。
【0123】
実施例3
テンプレート膜を使用する金ナノチューブの調製
【0124】
本実施例で使用する材料は、ポリカーボネートトラックエッチング膜(ステアィテック(登録商標)社から入手)、SnCl2、水酸化アンモニウム、シグマオルドリッチからの3フッ化酢酸、L−ヒスチジン、フルカからの無水塩化スズおよび窒化銀、無水硫化ナトリウム、Mallinckrodtからの重炭酸ナトリウム、オーマースSOパートB(登録商標)、市販の金溶液を含む。
【0125】
金ナノチューブの調製のための手順は、ポリカーボネートトラックエッチング膜を約5分間メタノール中に浸漬する工程を含む。実質的にすべてのメタノールが排出され、次に、0.025MのSnCl2(すなわち20mLの水に対して0.1896g)と、0.07Mのトリフルオロ酢酸(すなわち、20mLの水に対して104.33μL)とからなる溶液に膜を浸漬した。SnCl2とトリフルオロ酢酸の両方を等しい体積の割合で加えた。膜は約45分間、SnCl2とトリフルオロ酢酸溶液に浸漬した。次に、液体を排出し、前に加えられた化学物質から膜を清浄にするために膜を再びメタノール中に連続して2回、各回とも約2.5分間、浸漬した。水溶性アンモニアを含む硝酸銀溶液を膜に加えて、膜を約5分間、溶液中に置いた。膜を5℃の温度で溶液中に浸漬した。溶液は、以下ものをそれぞれ3mLずつ含んでいる:(i)0.127MのNa2SO3、すなわち、20mL溶液に対して0.32014g、(ii)0.025Mの炭酸水素ナトリウム、すなわち、20mL溶液に対して0.04205g;0.625MのHCOOH、すなわち、20mL溶液に対して347.4μL;市販の金めっき液。
【0126】
ナノチューブの内径はめっき時間で変化する。したがって、理想的なプロトンコンダクタンスレート(すなわち、ミトコンドリアの脱共役の量)を達成するために、上記の溶液中に膜を約24時間保持した。それぞれの時間後、溶液を排出し、膜を溶解するためにCH2Cl2を加えた。次に、溶液を遠心分離し、ナノチューブを底に沈めた。PEGが溶液に追加され、得られる溶液を4℃で貯蔵した。次に、0.08μmのフィルタでろ過し、残留物(微粒状物質)がない微細なナノチューブを集めた。
【0127】
実施例4
ヒスチジンによるナノチューブのコーティング
【0128】
実施例3で調製されたナノチューブを得た後で、ヒスチジンを水溶液としてナノチューブに加え、約5分間、非常に低い速度で遠心分離した。ヒスチジンがナノチューブをコーティングするのを確実にするために溶液を数回渦状に混合した。次に、実施例2の手順を続いて実施した。
【0129】
実施例3の0.08μmのフィルタを使用する代わりに0.001μmと0.1μmの間の範囲のサイズを持つ大きいフィルタを使用することができる。
【0130】
実施例5
ミトコンドリアとナノチューブの相互作用の試験管内(インビトロ)研究
【0131】
ミトコンドリアは大人のスプラグ−ドウリーラットから調製し、ナノチューブは上記実施例から(ヒスチジンを被覆したナノチューブと被覆していないナノチューブの両方)を得て、ミトコンドリアの状態3と状態4の呼吸速度を調べるために加えられ、ナノチューブの効果を測定した。
【0132】
【表1】

【0133】
ミトコンドリアをフィコール調製によって調製し、次に、呼吸、テトラメチルローダミン(TMRE)のエチルエステルに基づく膜電位推定、および、電子顕微鏡写真のためにミトコンドリアを集めた。
電子顕微鏡写真のためのサンプル
1.対照−ナノチューブ(エタノール75%)無しのミトコンドリアまたは電子顕微鏡写真対照のためのミトコンドリアは、ナノチューブを可溶にしないようにPEGの無存在下で作り、その溶液からろ過した。
2.ヒスチジン存在下であるいはヒスチジン無しで異なる回数メッキされたナノチューブを持つミトコンドリア。ミトコンドリアの呼吸の測定に続いて、サンプルは、遠心分離法によってペレット化され、電子顕微鏡写真用に処理された。
【0134】
実施例6
図2に示されるように、ミトコンドリアの脱共役は、外傷性脳損傷に続いて損傷を免れた組織が増加する。大人のスプラグ−ドウリーラットは、中程度の損傷(皮質の約1.5mmの圧縮)を受け、賦形剤(DMSO:ジメチルスルホキシド)、5mg/kgの2,4−DNP、2.5mg/kgのFCCPまたは6.2mg/kgTNPを損傷後5分に投与した。パネルAに、損傷後15日間の損傷して2,4−DNPおよび賦形剤で治療した動物からの代表的な断面を示す。ミトコンドリアの脱共役剤である2,4−DNPとFCCPは、賦形剤で治療した動物と比べて損傷を免れた組織がかなり増加した。対照的に、ミトコンドリアを脱共役しない2,4−DNPの類似物であるTNPを投与した場合には、組織の損傷を免れた効果は示さなかった。バーは群平均を示し、SD(n=6/グループ)と*は賦形剤で治療した動物と比べてp<0.01を示す。
【0135】
実施例7
図3に示されるように、5mg/kgの2,4−DNPの損傷後の投与(15分損傷後)は、SCIに続く組織の損傷を免れた量を増加させる。組織の損傷を免れた範囲を表す棒グラフは、中程度(150kydn)の打撲傷SCIの48時間後のT10セグメントの損傷中心の断面を測定したものである。2,4−DNPで治療したグループは、損傷中心で賦形剤(DMSO)で治療された動物と比べて、かなり大きな組織の損傷を免れた部分を示した。両方の治療(左のグラフ)による損傷を免れた組織がかなり大きい断面領域は、賦形剤の治療(右のグラフ)と比べて損傷中心で損傷を免れた組織がかなり大きい割合であることを反映している。損傷中心平均は、最少の損傷を免れた組織を示す各コードにおける断面から得られた。バーは群平均、標準誤差(n=5〜6/グループ)を示す。非対称t検定を使用して、*は賦形剤で治療されたグループと比較したp<0.05を示す。
【0136】
実施例8
図4は、大人のスプラグ−ドゥレイラット(未処置)から取り出した皮質ミトコンドリアにPEG存在下(右のパネル)とPEG無し(左のパネル)で作製したナノチューブ(24時間+ヒスチジン)を添加したものの電顕法顕微写真である。PEGはナノチューブの外部にコーティングされ、凝集したナノチューブを個別のPEGを被覆したナノチューブに分離し、溶液中でナノチューブが可溶性となるのを可能にする。PEGで被覆されたナノチューブは、ろ過して投与することができる。PEG無しで製造されたナノチューブは、ろ過プロセスを通して作ることができない。右のパネルにおいて、ナノチューブは、緻密で暗い粒子として、かつミトコンドリアのクリステ(すなわち、折られたた内側の膜)および外膜の両方に示す矢印で明白に識別できる。また、完全な外側および内側の膜の存在は、ナノチューブがミトコンドリアの超微細構造を変更させないことをまた示している。
【0137】
実施例9
図5は、大人のスプラグ−ドゥレイラット(未処置)から取り出した皮質ミトコンドリアにPEG存在下で作られたナノチューブ(24時間+ヒスチジン)の高倍率を示している。この図は、ミトコンドリア中のナノチューブの位置(暗くて、濃いスポット)を示し、矢先はクリステ(ミトコンドリアの内側膜)中に配置されたナノチューブを示している。
【0138】
実施例10
図6に示された棒グラフは、ミトコンドリア呼吸がナノチューブのめっき時間(すなわち、めっき時間が長くなるとナノチューブの内径は短くなる)および/または、特定のpKaの化合物を用いたナノチューブ内部の「ドーピング」の関数として増加することを示している。ナノチューブがミトコンドリアの呼吸と脱共役を増加させたかどうか決定するために、大人のスプラグ−ドウリーラットから取り出した皮質ミトコンドリアにおけるミトコンドリア呼吸を標準の酸素飽和度測定技術を使用して測定した。図6に示すように、短いめっき時間は、ミトコンドリア呼吸と酸素消費量を増加させる。すべての測定は、オリゴマイシンの存在下でなされた。オリゴマイシンは、状態IV呼吸を引き起こすためにミトコンドリアのATPシンターゼの阻害因子であり、状態IV呼吸は、ミトコンドリアが最小量の酸素量を利用し、プロトンがミトコンドリアの内側の膜を横切ることができない呼吸状態である。図6に示されたデータは、ミトコンドリアの蛋白質1mg当たり、1分当たりに消費される酸素のナノモルとして表現している。バーは群平均、標準誤差(N=4〜5/グループ)である。
【0139】
実施例11
図7は、24時間のナノチューブメッキおよび/またはヒスチジンの「ドーピング」によって製造されたナノチューブ(図6で「NT」として表示)がミトコンドリアのATP生成を低下しないことを示している。すべての分析評価が、大人のスプラグ−ドゥレイラット(未処置)から引き離された皮質ミトコンドリアにADPの添加によって引き起こされる状態IIIの呼吸の間に実行され、酸素消費は、ミトコンドリアがADPをATPに変換したとして測定された。図7に示すデータは、ミトコンドリア蛋白質1mg当たり、1分当たりに消費された酸素のナノモルとして表現している。図7に示すように、ナノチューブは、ミトコンドリアのATP生成を低減させずに呼吸/代謝を増加する。バーは群平均、標準誤差、(n=6/グループ)である。
【0140】
実施例12
図8は、24時間のナノチューブメッキおよび/またはヒスチジンで「ドーピング」によって製造されたナノチューブ(図6で「NT」として表示)が、短い時間で製造されたナノチューブより呼吸の増加が少ないことを示している。ミトコンドリアは大人のスプラグ−ドゥレイラット(未処置)から引き離され、ミトコンドリアの酸素消費量は、様々なナノチューブの添加に続いて測定されて、化学的なミトコンドリア脱共役剤FCCPの添加で引き起こされた最大酸素消費量と比較された。図8に示されたデータは、FCCPで誘発された最大酸素消費量(呼吸)の%として表現されている。バーは群平均、標準誤差(n=6/グループ)である。
【0141】
実施例13
図9は、ナノチューブを連続的に添加するとナノチューブの自己整流の性質によって飽和点に達することを示している。言い換えれば、一度、飽和点に達すると(すなわち、調製で存在する全てのミトコンドリアを脱共役するために十分なナノチューブが加えられる)、呼吸のそれ以上の増加は起こらない、なぜなら、膜電位が閾値より低く低下すると(上記説明されたように)、ナノチューブがプロトン流れを止めるからである。ミトコンドリア呼吸(酸素消費)は、オリゴマイシンを使用して状態IVの呼吸に固定された、大人のスプラグ−ドゥレイラット(未処置)から取り出した皮質ミトコンドリアで測定した。実験を始めるために、ナノチューブの賦形剤あるいは担体として機能する1μLのPEGを添加し、続いて5分毎にナノチューブ4〜1μLを追加した。図9に示されたデータは、状態IVの呼吸に比較された呼吸の%増加として表現している。ポイントは群平均、標準誤差(n=3個々の実験)である。
【0142】
実施例14
図10は、ナノチューブがミトコンドリアの膜電位を減少させるのを示しており、ミトコンドリアの膜電位は、呼吸、酸素消費、および代謝を増加するためのナノチューブの能力を説明する。大人のスプラグ−ドゥレイラット(未処置)から取り出された皮質ミトコンドリアは、図8にまとめられた実験に使用されたものであり、実験ではカチオン型膜電位蛍光指示薬TMREを利用した。TMREはその正電荷によりミトコンドリアマトリックスに配列され、続いてピルベートとリンゴ酸(P+M)が添加され、蛍光シグナルの減少をもたらした。対照試料と比較して(そこでは塩水の等容積がバッファーに加えられる)ナノチューブ(24時間メッキ+ヒスチジン)は、全ての条件で示されたTMRE信号の増加から、ミトコンドリアの膜電位を明白に減少しいる。これは、低い膜電位がナノチューブで処理されたミトコンドリアのマトリックス中でTMREの取り込みを促進するために利用可能であることによる。ナノチューブで処理されたミトコンドリアは、低い膜電位以外のすべての条件と実質的に同じように反応することに着目すべきである。さらに、ナノチューブの追加のボーラスが、ナノチューブが自己整流することを示す膜電位に影響を与えないことに着目すべきである。急な反屈は、チャンバーに付加するために分光蛍光計のドアを開けて光が部屋から分光蛍光計のチャンバーに入ることことによって起こされた人工的なものである。
【0143】
実施例15
図11は、ナノチューブが分離されたミトコンドリア中の活性酸素種の生成を減少させることを示している。ミトコンドリアは、電子が電子移動連鎖からスリップし、酸素を過酸素に還元するので、細胞中の活性酸素種の最初の源である。皮質ミトコンドリアは大人のスプラグ−ドゥレイラット(未処置)から分離され、活性酸素種の生成は蛍光指示薬DCFを使用して測定される。DCFは酸化されると蛍光を発して信号が増加する。ミトコンドリアの活性酸素種は、基本条件と、オリゴマイシンの存在下で膜電位と活性酸素種の生成を最大にすることの両方で評価された。ナノチューブはミトコンドリアによって生産された基準および最大活性酸素種の両方を減少させた。
【0144】
実施例16
図12は、ナノチューブを注入した動物が賦形剤制御と比べて体重増加を止めることを示している。大人のスプラグ−ドゥレイラット(未処置)は、0日目に腹腔内に食塩水あるいは2.7mg/kgナノチューブのどちらかを投与し計量した。次に、動物は、同時に毎日、7日間計量した。食物と水分の摂取は、グループ間で異ならず、どちらかのグループでも毒性の副作用は無かった(例えば、パンチング、毛の逆立ち、発声など)。グループのすべての動物は、健康であると考えられた。平均的に、食塩水で治療された動物は8日間で体重が5〜6%増加したが、一方、ナノチューブで治療された動物は、同じ期間の間、体重増加が1%未満であった。
【0145】
図13に示されたように、大人のスプラグ−ドゥレイラットは、0日目にナノチューブを注入し、次に再び23日目にナノチューブの生体内(インビボ)における有効な半減期を決定するため注入した。大人のスプラグ−ドゥレイラットは0日目に腹腔内に食塩水(すなわち対照)またはナノチューブ(2.7mg/kg)を投与し、計量した。次に、動物は同時に、毎日、31日間計量した。食物と水分の摂取は、グループ間で異ならず、どちらのグループでも毒性の副作用は無かった(例えば、パンチング、毛の逆立ち、発声など)。すべての動物は健康であると考えられた。
【0146】
また図13を参照すると、最初の注入後8日目で対照動物で測定したのと類似する体重の増加がはじまった。このことは、ナノチューブがもはやミトコンドリアを脱共役しないで代謝を上げることを示す。ナノチューブの最初の注入から23日後に、ナノチューブの同じ投与量を動物に投与し、または食塩水を対照動物に投与した。再度、ナノチューブで治療された動物は体重が減り、対照の動物と比較して体重増加を止めた。データ点は群平均(n=3/グループ)である。
【0147】
本発明は、特に好適な実施例を参照しながら図示され記載された。しかしながら、様々な形態および詳細における変更が本発明の趣旨と付随の請求項によって定められる範囲から逸脱せずになされることは当業者によって理解されるであろう。
【0148】
上記に引用されおよび/または議論された、すべての参考文献を引用することによって、その内容をここに合体する。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】2,4−DNPがヒトの服用量に依存して代謝と減量とを増加することを示す2つの線図である。
【図2】2,4−DNPを投与した結果とし外傷性脳損傷に続く損傷を免れた組織を増加するミトコンドリアの脱共役を示す棒グラフである。
【図3】2,4−DNPの損傷後の投与が脊髄損傷(「SCI」)に続く損傷を免れた組織を増加することを示す棒グラフである。
【図4】PEG有り(左のパネル)またはPEG無し(右のパネル)で作られたナノチューブ(24時間+ヒスチジン)を添加した分離された皮質ミトコンドリアの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図5】PEG有りで作られたナノチューブ(24時間+ヒスチジン)を添加した分離された皮質ミトコンドリアの高倍率の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】ミトコンドリア呼吸がナノチューブめっき時間(メッキ時間を長くするとナノチューブの直径が短くなる)、および/または、特定のpKaの化合物でナノチューブの内側を「ドープ処理」の関数として増加することを示す棒グラフである。
【図7】24時間メッキおよび/またはヒスチジンの「ドーピング」で製造したナノチューブがミトコンドリアのATP生成を損なわないことを示す図である。
【図8】24時間のナノチューブメッキおよび/またはヒスチジンでナノチューブをドーピングして製造したナノチューブが、より短い時間で製造したナノチューブよりも呼吸を増加しないことを示す図である。
【図9】ナノチューブの連続的な添加によって、ナノチューブの自己整流によって到達する飽和点をもたらすことを示す図である。
【図10】ナノチューブが、呼吸と酸素消費と代謝を増加するナノチューブの能力を説明するミトコンドリア膜電位を減少させることを示す図である。
【図11】ナノチューブが分離したミトコンドリアの活性酸素種の生成を減少することを示す図である。
【図12】7日間の期間にわたって、賦形剤対照の投与と比較したナノチューブの投与による増加した体重と日数の関係を示す線グラフである。
【図13】31日間の期間にわたって、賦形剤対照の投与と比較したナノチューブの投与による増加した体重と日数の関係を示す線グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者中のミトコンドリアを脱共役する方法であって、
前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、
前記ナノチューブは自己整流するものであることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ナノチューブはpKaが減少する化合物によってコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験者が哺乳動物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノチューブはミトコンドリアを脱共役するために適切な内径を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノチューブは前記ナノチューブに自己整流を可能にさせる内径を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノチューブは金属またはポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属は金または銀であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーは天然ポリマーまたは合成ポリマーであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーが、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、改質ポリ(サッカリド)、デンプン、セルロース、キトーサン、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
活性酸素種を減少しかつ被験者のミトコンドリア中への有害なCa2+の負荷を減少する方法であって、
前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、
前記ナノチューブは自己整流するものであることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記被験者が哺乳動物であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノチューブはミトコンドリアを脱共役するために適切な内径を有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノチューブは前記ナノチューブに自己整流を可能にさせる内径を有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノチューブは金属またはポリマーを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記金属は金または銀であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーは天然ポリマーまたは合成ポリマーであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーが、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、改質ポリ(サッカリド)、デンプン、セルロース、およびキトーサンからなるグループから選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
被験者の体重を減らす方法であって、
前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、
前記ナノチューブは自己整流するものであることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記被験者が哺乳動物であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ナノチューブはミトコンドリアを脱共役するために適切な内径を有することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノチューブは前記ナノチューブに自己整流を可能にさせる内径を有することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記ナノチューブは金属またはポリマーを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記金属は金または銀であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリマーは天然ポリマーまたは合成ポリマーであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリマーが、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、改質ポリ(サッカリド)、デンプン、セルロース、およびキトーサンからなるグループから選択されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
被験者中の癌を治療する方法であって、
前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、
前記ナノチューブは自己整流するものであることを特徴とする方法。
【請求項27】
前記被験者が哺乳動物であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ナノチューブはミトコンドリアを脱共役するために適切な内径を有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ナノチューブは前記ナノチューブに自己整流を可能にさせる内径を有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ナノチューブは金属またはポリマーを含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記金属は金または銀であることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマーは天然ポリマーまたは合成ポリマーであることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリマーが、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、改質ポリ(サッカリド)、デンプン、セルロース、およびキトーサンからなるグループから選択されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項34】
被験者の外傷性脳損傷の影響を減少させる方法であって、
前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、
前記ナノチューブは自己整流するものであることを特徴とする方法。
【請求項35】
前記被験者が哺乳動物であることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ナノチューブはミトコンドリアを結合解離するために適切な内径を有することを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記ナノチューブは前記ナノチューブに自己整流を可能にさせる内径を有することを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記ナノチューブは金属またはポリマーを含むことを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記金属は金または銀であることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ポリマーは天然ポリマーまたは合成ポリマーであることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記ポリマーが、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、改質ポリ(サッカリド)、デンプン、セルロース、キトーサン、およびキトーサンからなるグループから選択されることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項42】
被験者の老化の影響を減らす方法であって、
前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、
前記ナノチューブは自己整流するものであることを特徴とする方法。
【請求項43】
前記被験者が哺乳動物であることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ナノチューブはミトコンドリアを脱共役するために適切な内径を有することを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記ナノチューブは前記ナノチューブに自己整流を可能にさせる内径を有することを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記ナノチューブは金属またはポリマーを含むことを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記金属は金または銀であることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリマーは天然ポリマーまたは合成ポリマーであることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記ポリマーが、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(エステル)、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ヒドロゲル、改質ポリ(サッカリド)、デンプン、セルロース、キトーサン、およびキトーサンからなるグループから選択されることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項50】
薬学的に許容可能な担体中にナノチューブを含む薬剤組成物であって、
前記薬剤組成物は被験者に、(i)静脈内配送、(ii)摂食、(iii)遺伝子銃を経由した粒子衝撃、または(iv)真皮へのパッチあるいはゲルの適用によって投与されることを特徴とする薬剤組成物。
【請求項51】
被験者の脊髄損傷の影響を減少させる方法であって、
前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、
前記ナノチューブは自己整流するものであることを特徴とする方法。
【請求項52】
被験者の脳卒中の影響を低減する方法であって、
前記被験者に治療に有効な量のナノチューブを投与する工程を有し、
前記ナノチューブは自己整流するものであることを特徴とする方法。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−542204(P2008−542204A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510264(P2008−510264)
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/017427
【国際公開番号】WO2006/121868
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507365086)ユニバーシティ オブ ケンタッキー リサーチ ファウンデーション (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF KENTUCKY RESEARCH FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】A144  ASTeCC Building, Lexington, Kentucky 40506−0286, U.S.A.
【Fターム(参考)】