説明

メソ置換シアニン色素標識化試薬

複素環系を結合させるポリメチン鎖中にメソ置換基を有するシアニン色素が開示されている。その色素は、式(I)の色素である。式中、基R及びRはZ環構造に結合しており、基R及びRはZ環構造に結合しており、nは1、2又は3であり、Z及びZは独立に、1つの環又は2つの縮合環芳香族又は複素芳香族系を完成するのに必要な原子を表し、各環は、炭素原子並びに適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2個以下の原子から選択される5又は6個の原子を有し、X及びYは同一又は異なるもので、酸素、硫黄、−CH=CH−及び基(II)から選択され、基R、R、R、R、R、R(及び存在するときはR及びR)の少なくとも1つは基−E−F(式中、Eはスペーサー基であり、Fは標的結合基である)であり、基Rの1つは−CN、−Cl、−F、−CF及び−C(O)R10(式中、R10はH、C〜Cアルキル及びアリールから選択される)から選択される。好ましいRはメソ置換CNである。これにより、対応する置換されていない類似体と比較した場合、発光スペクトルにおいて約40nmの予期しない浅色シフトが生じる。この色素は様々な標的分子を標識化し検出するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標識化試薬の分野に関する。特に、本発明は、複素環系を結合するポリメチン鎖中にメソ置換基を有するシアニン色素に関する。本発明は、そのような色素を利用したアッセイ方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
生体分子の標識化及び検出に使用するための蛍光性レポーターに関心と要求が高まってきている。シアニン及び関連色素は、他の蛍光色素試薬に優る多くの利点をもたらしており、これらは、配列決定、ミクロアレイ、フローサイトメトリー及びプロテオミクスなどの多様な領域における、蛍光性標識としての広い範囲の用途を見出している。シアニン色素は、非常に高い吸光係数と好都合な量子収量を有する特徴がある。さらに、シアニン色素は、良好な光安定性を有し、光退色しない。この色素は生物学的研究における標識として広範に使用されている。
【0003】
米国特許第6048982号(Waggoner,A.S.)は以下の構造を有する発光性シアニン色素が開示されている。
【0004】
【化1】

式中、X及びYは独立に、O、S及びCH−C−CHからなる群から選択され、mは1〜4の整数であり、基R、R、R、R及びRの少なくとも1つは、アミノ、スルフヒドリル又はヒドロキシ求核試薬との反応性がある反応基である。
【0005】
国際公開第02/26891号(Molecular Probes Inc.)には同様の構造を組み入れたシアニン色素が開示されている。
【0006】
上記式のシアニン色素では、複素環系を結合するメチン基の数が色素の最大吸収極大を規定する。したがって、以下に示すように、吸収極大はCy(商標)3からCy5、Cy7へと約100nmごとの増分で増加する。Cy3、Cy5及びCy7の対応する発光ピークも、次の表1に示すように、約100nmごとの間隔である。
【0007】
【表1】

さらに、複素環のフェニル環に電子吸引か又は供与置換のどちらかを導入しても、最大吸収及び最大発光はそれほど影響を受けない。ナフチル環によるフェニル環の置換は、インドシアニン色素に最も大きい深色シフトを提供して、表2に示すスペクトル特性を有するCy3.5及びCy5.5色素をもたらすことがわかっている。
【0008】
【表2】

【特許文献1】米国特許第6048982号明細書
【特許文献2】国際公開第02/26891号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
蛍光色素を利用する多くの応用分野、特にハイスループットDNA配列決定において、550nm〜750nmの全スペクトル範囲で約25〜30nm間隔を有する吸収極大(したがって、最大発光)を備えた高度に蛍光性で機能化された色素を有することが望まれている。したがって、上述したものを補うスペクトル特性を有する他の色素の必要性がある。英国特許第620801号(Ilford Ltd)はメソ置換シアノ基を有するシアニン色素の調製に関する。しかし、この色素のスペクトル特性は開示されていない。Chibisov,A.K.ら(J.Chem.Soc.Faraday Trans.、(1996)、92(24)、4917−25)は、ポリメチン鎖のメソ位に置換基を有するインドカルボシアニンを用いた分光学的研究を記載している。これらの色素は、材料、特に生物分子の標識化及び検出用としては述べられていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、第1の態様では、式(1)の色素を提供する。
【0011】
【化2】

式中、基R及びRはZ環構造に結合しており、
基R及びRはZ環構造に結合しており、
nは1、2又は3であり、
及びZは独立に、1つの環又は2つの縮合環芳香族又は複素芳香族系を完成するのに必要な原子を表し、各環は、炭素原子並びに適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2個以下の原子から選択される5又は6個の原子を有し、
X及びYは同一又は異なるもので、酸素、硫黄、−CH=CH−及び次式の基から選択され、
【0012】
【化3】

基R、R、R、R、R、R(及び存在するときはR及びR)の少なくとも1つは基−E−F(式中、Eは炭素、窒素、酸素、硫黄及びリン原子からなる群から選択される1〜20原子の鎖を有するスペーサー基であり、Fは標的結合基である)であり、
基Rの1つは−CN、−Cl、−F、−CF及び−C(O)R10(式中、R10はH、C〜Cアルキル及びアリールから選択される)から選択され、
残りの基Rは水素であるか、又はRのうちの2つが次式の基と共に適宜−O−、−S−又は>NHから選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素環系を形成し、
【0013】
【化4】

nは上記で定義した通りであり、
基R、R、R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R、R、R及びRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、モノ又はジC〜Cアルキル置換アミノ、スルフヒドリル、ニトロ、モノ又はジニトロ置換ベンジル、カルボキシル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、スルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及び基−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは独立に、C〜Cアルキル及び−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは水素、C〜Cアルキル、ベンジル、モノ又はジニトロ置換ベンジル及び−(CH−Wから選択され、
Wはスルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及びカルボキシルから選択され、
kは1〜6の整数である。
【0014】
第1の態様による色素は、対イオン、例えばトリフルオロ酢酸(FCCO)、過塩素酸(ClO)、Br又はIイオンを含むことが適切である。これらは色素分子上の1以上の形式電荷に平衡性を持たせる働きをする。
【0015】
第1の態様による一実施形態では、標的材料の発光による検出用の試薬を提供する。ここで、試薬は式(I)の蛍光色素であり、基R、R、R、R、R及びRのいずれもニトロ、又はモノもしくはジニトロ置換ベンジル基を含まないことを条件として、基R、R、R、R、R、R、R、Z、Z、X及びYは上記で定義した通りである。
【0016】
第1の態様による第2の実施形態では、式(1)の色素は非蛍光性又は実質的に非蛍光色素であり、基R、R、R、R、R、R、R、Z、Z、X及びYは上記で定義した通りであり、基R、R、R、R、R及びRの少なくとも1つは1個以上のニトロ基を含む。この実施形態では、1個以上のニトロ基はZ及び/又はZ環構造に直接結合していることが適切である。或いは、モノ又はジニトロ置換ベンジル基はR、R、R、R、R又はR位に結合していてよく、色素は、Z及び/又はZ環構造に直接結合した1個又は複数のニトロ基でさらに置換されていてもよい。
【0017】
第1の態様による色素では、Rはメソ置換−CN、−Cl、−F、−CF及び−C(O)R10から選択されることが好ましい。ここで、R10はH、C〜Cのアルキル及びアリールから選択され、残りの基Rは水素である。
【0018】
「メソ置換」という用語は、X及びYを含む複素環構造を結合するポリメチン鎖の中心R基が、−CN、−Cl、−F、−CF及び−C(O)R10から選択される基で置換されていることを意味するものとする。ここでR10は上記で定義した通りである。ポリメチン鎖内で生じる残りのR基は水素である。式(1)の色素中の特に好ましい基Rはメソ置換CNであり、これは、対応する置換されていない類似体と比べて、発光スペクトルにおいて約40nmの予期しない浅色シフトをもたらす。
【0019】
X及びYはビス−C〜Cアルキル置換炭素、酸素及び硫黄から選択されることが好ましい。特に好ましい基X及びYは>C(CHである。
【0020】
標的結合基Fは、担体材料又は生物化合物などの標的材料に、色素の結合に適した任意の基でよく、そうしたものは当業者に周知である。例えば、標的結合基は、適切な条件下で、標的材料の官能基と反応できる反応基でよい。或いは、色素の官能基が適当な条件下で標的材料の反応基と反応するように、標的結合基Fは官能基であってよく、標的は反応性構成要素を含んでよい。どちらの場合も、標的分子は式(I)の色素で標識化される。好ましい反応基は、カルボキシル、スクシンイミジルエステル、スルホ−スクシンイミジルエステル、イソチオシアネート、マレイミド、ハロアセトアミド、酸ハライド、ヒドラジド、ビニルスルホン、ジクロロトリアジン及びホスホルアミダイトから選択することができる。好ましい官能基は、ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、イミダゾール、アルデヒド及びケトンを含めたカルボニル、リン酸並びにチオリン酸から選択することができる。
【0021】
及びZは独立に、フェニル、ピリジニル、ナフチル、インデニル、キノリニル、インドリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル及びベンズイミダゾリル部分からなる群から選択することが適切である。追加の1つの環又は2つの縮合環系は当業者に容易に明らかであろう。Z及びZは、フェニル、ピリジニル、ナフチル、キノリニル及びインドリル部分からなる群から選択することが好ましい。特に好ましいZ及びZはフェニル及びナフチル部分である。
【0022】
スペーサー基Eは、
−(CHR′)
−{(CHR′)−O−(CHR′)
−{(CHR′)−NR′−(CHR′)
−{(CHR′)−(CH=CH)−(CHR′)
−{(CHR′)−CO−NR′−(CHR′)
から選択されることが好ましく、
式中、R′は水素又はC〜Cアルキルであり、pは1〜20、好ましくは1〜10であり、qは0〜10、rは1〜10、sは1又は2である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
式(I)のシアニン色素であって、1つ又は2つの縮合環芳香族系を有する色素の例を構造(II)、(III)及び(IV)として表3に示す。
【0024】
【表3】

構造(II)〜(IV)において、基R、R、R、R、R、R、R、X、Y及びnは上記で定義した通りである。X及びYはビス−C〜Cアルキル置換炭素、酸素及び硫黄から選択されることが好ましい。特に好ましい基X及びYは>C(CHである。
【0025】
式(1)の色素の反応性基R、R、R、R、R、R(並びにR及びR(存在すれば))と、基R、R、R、R、R、R(並びにR及びR(存在すれば))がそれと反応できる基の具体的な例を表3に示す。或いは、R、R、R、R、R、R(並びにR及びR(存在すれば))は、標的分子の反応基と反応する表4の官能基であってよい。
【0026】
【表4】

利用できるアミノ及びヒドロキシル官能基を有する標的成分を標識化するのに特に有用である、特に適切な反応性基R、R、R、R、R、R(並びにR及びR(存在すれば))には、
【0027】
【化5】

が含まれる。
【0028】
利用できるチオール官能基を有する標的成分を標識化するのに特に有用である、特に適切な反応性基R、R、R、R、R、R(並びにR及びR(存在すれば))には、
【0029】
【化6】

が含まれる。
【0030】
上記例で、pは1〜20、好ましくは1〜10である。特に好ましい基−E−Fの例は、カルボキシペンチル基E、例えば、
【0031】
【化7】

を含むものである。
【0032】
アリールは6〜10個の炭素原子を含む1つ又は2つの縮合芳香族環、例えばフェニル又はナフチルを含む芳香族置換基であって、そのアリールは、1種又は複数の置換基、例えばハロゲン、1〜10個の炭素原子を含む直鎖又は分枝アルキル基、アラルキル及びC〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ及びn−ブトキシによって、任意選択でかつ独立に置換されている。
【0033】
ヘテロアリールは、N、O及びSから選択できる少なくとも1個でせいぜい3個のヘテロ原子を含む単環式又は二環式の5〜10員芳香族環系であり、かつ1種又は複数の置換基、例えばハロゲン、1〜10個の炭素原子を含む直鎖又は分枝アルキル基、アラルキル及びC〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ及びn−ブトキシによって、独立に置換されていてもよい。
【0034】
アラルキルはアリール又はヘテロアリール基で置換されたC〜Cアルキル基である。
【0035】
ハロゲン及びハロ基はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される。
【0036】
式(I)の色素中の基R、R、R、R、R、R(並びにR及びR(存在すれば))の少なくとも1つは、親水性の特徴を化合物に付与するために水可溶化基を含むことが好ましい。可溶化基、例えばスルホン酸塩、スルホン酸及び四級アンモニウムは、芳香族環構造Z及び/又はZに直接結合していてよい。或いは、可溶化基は、C〜Cアルキルリンカー鎖によって芳香族環構造に結合していてよく、基−(CH−Wから選択することができる。ここで、Wはスルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及びカルボキシルから選択され、kは1〜6の整数である。代替の可溶化基は炭水化物残基、例えば単糖類であってよい。水可溶化構成要素の例には、−(CH−SO及び−(CH−SOなどのC〜Cアルキルスルホン酸塩が含まれる。しかし、式(1)の色素の芳香族環構造に直接結合した1個又は複数のスルホン酸塩又はスルホン酸基が特に好ましい。生物標的分子、例えばタンパク質及び核酸誘導体を標識化する場合、水溶性であることは有利である。
【0037】
第1の態様の第1の実施形態による例示的な色素は2−{5−[1−(5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウム(メソ−シアノCy5)である。
【0038】
共有結合的に標識化し、それによって蛍光性特性を標的材料に付与するために、本発明の蛍光色素を使用することができ、特にこれらの色素を、生物分子を標識化し検出するために使用することができる。したがって、第2の態様では、標的材料を標識化する方法であって、その方法が、
i)式(I)の蛍光色素を、標的材料を含む液体に加えるステップと、
ii)標的材料に結合させるのに適した条件下で、蛍光色素を標的材料とインキュベートし、それによってその標的材料を標識化するステップと
を含む方法を提供する。
【0039】
【化8】

式中、基R及びRはZ環構造に結合しており、
基R及びRはZ環構造に結合しており、
nは1、2又は3であり、
及びZは独立に、1つの環又は2つの縮合環芳香族又は複素芳香族系を完成するのに必要な原子を表し、各環は、炭素原子並びに適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2個以下の原子から選択される5又は6個の原子を有し、
X及びYは同一又は異なるもので、酸素、硫黄、−CH=CH−及び次式の基から選択され、
【0040】
【化9】

基R、R、R、R、R、R(及び存在すればR及びR)の少なくとも1つは基−E−F(式中、Eは炭素、窒素、酸素、硫黄及びリン原子からなる群から選択される1〜20原子の鎖を有するスペーサー基であり、Fは標的結合基である)であり、
基Rの1つは−CN、−Cl、−F、−CF及び−C(O)R10(式中、R10はH、C〜Cアルキル及びアリールから選択される)から選択され、
残りの基Rは水素であるか、又はRのうちの2つが次式の基と共に適宜−O−、−S−又は>NHから選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素環系を形成し、
【0041】
【化10】

nは上記で定義した通りであり、
基R、R、R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R、R、R及びRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、モノ又はジC〜Cアルキル置換アミノ、スルフヒドリル、カルボキシル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、スルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及び基−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは独立に、C〜Cアルキル及び−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは水素、C〜Cアルキル、ベンジル及び−(CH−Wから選択され、
Wはスルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及びカルボキシルから選択され、
kは1〜6の整数である。
【0042】
標的結合基Fは標的材料の官能基との反応のための反応基であってよい。或いは、標的結合基は標的生物材料上の反応基との反応のための官能基であってよい。その方法は、標的と色素との間に共有結合を形成するような条件下で、標的材料をある量の本発明の色素とインキュベートすることを含む。標的材料を、標的生物材料の官能基又は反応基と共有結合的に結合可能な先に定義の反応性基又は官能基を含む基R、R、R、R、R、R(並びにR及びR(存在すれば))の少なくとも1つを有するある量の本発明の化合物とインキュベートすることができる。
【0043】
適切な標的生物材料には、特に限定されないが、抗体;脂質;タンパク質;ペプチド;炭水化物;アミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル及びカルボキシル、リン酸及びチオリン酸基の1以上を含む或いは含むように誘導化されたヌクレオチド;アミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル及びカルボキシル、リン酸及びチオリン酸基の1以上を含む或いは含むように誘導化されたオキシポリ核酸又はデオキシポリ核酸;微生物材料;薬物;ホルモン;細胞;細胞膜並びに毒素からなる群が含まれる。
【0044】
X及びYはビス−C〜Cアルキル置換炭素、酸素及び硫黄から選択されることが好ましい。特に好ましい基X及びYは>C(CHである。
【0045】
がメソ置換CNであり、残りの基Rが水素であることが好ましい。
【0046】
基R、R、R、R、R、R(並びにR及びR(存在すれば))の1つに標的結合基Fを有する本発明の蛍光色素は、試料中での検体の存在、量又はその活性を測定するためのアッセイ方法で使用することができる。したがって、本発明による第3の態様では、
試料中の検体のアッセイ方法であって、
i)検体の少なくとも一部と特異的結合パートナーを結合させるのに適した条件下で、検体を、検体のための特異的結合パートナーと接触させて、複合体を形成させるステップであって、検体と特異的結合パートナーの1つを式(I)の蛍光色素で標識化するステップと、
ii)標識化された複合体の発光蛍光を測定するステップと、
iii)発光蛍光と、試料中での検体の存在又は量とを相関させるステップと
を含む方法を提供する。
【0047】
【化11】

式中、基R及びRはZ環構造に結合しており、
基R及びRはZ環構造に結合しており、
nは1、2又は3であり、
及びZは独立に、1つの環又は2つの縮合環芳香族又は複素芳香族系を完成するのに必要な原子を表し、各環は、炭素原子並びに適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2個以下の原子から選択される5又は6個の原子を有し、
X及びYは同一又は異なるもので、酸素、硫黄、−CH=CH−及び次式の基から選択され、
【0048】
【化12】

基R、R、R、R、R、R(及び存在するときはR及びR)の少なくとも1つは基−E−F(式中、Eは炭素、窒素、酸素、硫黄及びリン原子からなる群から選択される1〜20原子の鎖を有するスペーサー基であり、Fは標的結合基である)であり、
基Rの1つは−CN、−Cl、−F、−CF及び−C(O)R10(式中、R10はH、C〜Cアルキル及びアリールから選択される)から選択され、
残りの基Rは水素であるか、又はRのうちの2つが次式の基と共に適宜−O−、−S−又は>NHから選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素環系を形成し、
【0049】
【化13】

nは上記で定義した通りであり、
基R、R、R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R、R、R及びRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、モノ又はジC〜Cアルキル置換アミノ、スルフヒドリル、カルボキシル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、スルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及び基−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは独立に、C〜Cアルキル及び−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは水素、C〜Cアルキル、ベンジル及び−(CH−Wから選択され、
Wはスルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及びカルボキシルから選択され、
kは1〜6の整数である。
【0050】
一実施形態では、アッセイ方法は試料中の検体の測定のための直接的アッセイである。既知又は推定上の阻害剤化合物をアッセイ混合物に任意選択で含めることができる。その場合測定を、既知又は推定上の阻害剤の生物活性と相関させることができる。
【0051】
第2又は他の実施形態では、アッセイは競争的アッセイであってよい。そこでは、検体を含むサンプルは、検体及びトレーサーと特異的に結合することができる結合パートナー上の限られた数の結合部位を求めて蛍光性トレーサーと競争する。トレーサーは、標識が式(I)の蛍光色素である、標識化された検体又は標識化された検体アナログであることが好ましい。試料中の検体の量(又は濃度)が増大すると、特異的結合パートナーと結合した、蛍光標識化された検体又は蛍光標識化された検体アナログの量が減少することになる。蛍光シグナルを測定し、標準曲線からの内挿によって検体の濃度を得ることができる。
【0052】
他の実施形態では、結合アッセイでは、二段階の型式を用いることができる。ここで、不溶性の支持体と任意選択で結合していてよい第1成分は第2成分と結合して特異的結合複合体を生成し、これは次に第3成分と結合する。この型式では、第3成分は第2成分か、又は特異的結合複合体のどちらかに特異的に結合できる。第2成分又は第3成分のどちらかを本発明による蛍光色素で標識化することができる。例としては、第1の抗体などの特異的結合対の1成分が多穴プレートのウェルなどの表面上にコーティングされる「サンドイッチ」アッセイが含まれる。抗原を第1の抗体に結合させるのに続いて、抗原−第1の抗体複合体と結合するように、蛍光標識化された第2の抗体をアッセイ混合物に加える。蛍光シグナルを測定し、抗原の濃度を、標準曲線からの内挿によって得ることができる。
【0053】
検体−特異的結合パートナー対の例には、特に限定されないが、抗体/抗原、レクチン/糖タンパク質、ビオチン/ストレプトアビジン、ホルモン/受容体、酵素/基質又は共同因子、DNA/DNA、DNA/RNA及びDNA/結合タンパク質が含まれる。本発明の蛍光色素を特異的結合対の一方の成分を標識化するのに使用し、次いで他方の成分との結合の検出に使用できるように、互いに特異的結合親和性を有する任意の分子を用いることができることを理解されたい。
【0054】
第1の態様の第1の実施形態による蛍光色素は、混合物中の様々な成分を検出し、かつ識別することを含む用途に使用することができる。したがって、第4の態様では、本発明は、2つ以上の異なる蛍光色素のセットであって、セットの少なくとも1つの色素が式(I)の蛍光色素であり、セットの各色素がセットの残りの色素の発光波長と比べて、著しく異なる蛍光発光波長を有するセットを提供する。
【0055】
【化14】

式中、基R及びRはZ環構造に結合しており、
基R及びRはZ環構造に結合しており、
nは1、2又は3であり、
及びZは独立に、1つの環又は2つの縮合環芳香族又は複素芳香族系を完成するのに必要な原子を表し、各環は、炭素原子並びに適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2個以下の原子から選択される5又は6個の原子を有し、
X及びYは同一又は異なるもので、酸素、硫黄、−CH=CH−及び次式の基から選択され、
【0056】
【化15】

基R、R、R、R、R、R(及び存在すればR及びR)の少なくとも1つは基−E−F(式中、Eは炭素、窒素、酸素、硫黄及びリン原子からなる群から選択される1〜20原子の鎖を有するスペーサー基であり、Fは標的結合基である)であり、
基Rの1つは−CN、−Cl、−F、−CF及び−C(O)R10(式中、R10はH、C〜Cアルキル及びアリールから選択される)から選択され、
残りの基Rは水素であるか、又はRのうちの2つが次式の基と共に適宜−O−、−S−又は>NHから選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素環系を形成し、
【0057】
【化16】

nは上記で定義した通りであり、
基R、R、R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R、R、R及びRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、モノ又はジC〜Cアルキル置換アミノ、スルフヒドリル、カルボキシル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、スルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及び基−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは独立に、C〜Cアルキル及び−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは水素、C〜Cアルキル、ベンジル及び−(CH−Wから選択され、
Wはスルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及びカルボキシルから選択され、
kは1〜6の整数である。
【0058】
第4の態様による蛍光色素のセットは、セットの各色素が異なる蛍光発光波長を有する4つの異なる色素を含むことが好ましい。
【0059】
X及びYはビス−C〜Cアルキル置換炭素、酸素及び硫黄から選択されることが好ましい。特に好ましい基X及びYは>C(CHである。
【0060】
はメソ置換CNであり、残りの基Rは水素であることが好ましい。
【0061】
色素のセットを、2次(secondary)成分の混合物中の複数の2次成分のそれぞれを特定するために、色素のセットの異なる蛍光色素が、複数の異なる1次(primary)成分と共有結合的に結合しており、各1次成分が異なる2次成分について特異的である検出方法に用いることができる。その方法は、本発明の第4の態様による蛍光色素のセットの異なる色素を、多成分混合物中の異なる1次成分に共有結合的に結合するステップであって、そのセットの各色素が、セットの残りの色素の蛍光波長と比べて異なる蛍光波長を有するステップと、色素−標識化1次成分のそれぞれの少なくとも一部を、そのそれぞれの2次成分に結合可能な条件下で、色素−標識化1次成分を、2次成分を含む調製物に加えるステップと、標識化1次成分−2次成分複合体の蛍光強度をそれぞれの蛍光波長で測定することによって、結合した2次成分の存在又はその量を決定するステップとを含む。
【0062】
必要なら、例えば洗浄によって調製物から未反応1次成分を除去するか分離して、分析の妨害を防止することができる。
【0063】
本発明による蛍光色素のセットは、蛍光性1次成分を生み出すことが可能な任意のシステムで使用することができる。例えば本発明のほぼ反応性の蛍光色素はDNA又はRNA断片に抱合され、次いで、得られた抱合体に、DNA又はRNAの相補性標的ストランドとの結合をもたらすことができる。検出できる1次成分−2次成分複合体の他の例には、抗体/抗原及びビオチン/ストレプトアビジンが含まれる。
【0064】
本発明による色素のセットはDNA断片の蛍光波長識別による蛍光性DNA配列決定においても有利に使用することができる。つまり、色素のセットのそれぞれをプライマーと結合することができる。pUC/M13、λgt10、λgt11等からのプライマーなどの種々のプライマーを利用することができる(Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual 2nd Edition、Cold Spring Harbour Laboratory Press 1989を参照されたい)。DNA配列は、配列されるDNA断片に結合したプライマー配列を有する適当なベクターにクローン化される。DNAテンプレートへのハイブリッド形成の後、相補鎖のポリメラーゼ酵素誘導合成が起こる。鎖伸長反応の塩基特異的終結が得られるように、各異なる配列決定反応では、異なる2′,3′−ジデオキシヌクレオチドターミネーターを用いる。得られたDNA断片のセットを電気泳動法で分離し、標識化された断片の蛍光発光を検出することによって、終結ヌクレオチド(したがって、DNA配列)を測定する。本発明の蛍光色素で共有結合的に標識化されたジデオキシヌクレオチドターミネーターを用いてDNA配列決定を実施することもできる。
【0065】
第1の態様の第2の実施形態による非蛍光性又は実質的に非蛍光色素は、生物分子の関与する反応における、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)による、結合及び/又は切断現象の検出を用いたアッセイのための蛍光性供与体/受容体対の1成分として使用することができる。そうした方法は、欧州特許出願公開第1086179A1に記載されている。
【0066】
したがって、第5の態様では、本発明は:
i)エネルギー移動関係にある2つの成分を分離するステップであって、その第1成分が蛍光性供与体色素で標識化されており、第2成分が式(I)による非蛍光性又は実質的に非蛍光性の受容体色素で標識化されており、基R、R、R、R、R、R、R、Z、Z、X及びYが上記で定義した通りであり、R、R、R、R、R及びRの少なくとも1つが1個以上のニトロ基を含むステップと、
ii)発光した蛍光を測定することによって第1成分の存在を検出するステップと
を含むアッセイ方法に関する。
【0067】
第6の態様では、本発明は、
i)特異的結合対の1成分を対の第2成分と結合させるステップであって、第1成分が蛍光性供与体色素で標識化されており、第2成分が式(I)におる非蛍光性又は実質的に非蛍光性の受容体色素で標識化されており、基R、R、R、R、R、R、R、Z、Z、X及びYが上記で定義した通りであり、基R、R、R、R、R及びRの少なくとも1つが1個以上のニトロ基を含み、それによって、第1成分と第2成分との間にエネルギー移動関係をもたらすステップと、
ii)発光蛍光を測定することによって第1成分と第2成分の結合を検出するステップ
を含むアッセイ方法に関する。
【0068】
この方法によれば、非蛍光性又は実質的に非蛍光性の受容体色素が蛍光性供与体色素とエネルギー移動関係にある場合、供与体の蛍光発光は、受容体を消光することによって低減される。蛍光性供与体色素と受容体色素の分離によって共鳴エネルギー移動が無くなった場合、供与体色素に起因する蛍光発光が回復される。効果的な非蛍光性消光色素は、吸収された入射光線の蛍光への変換については低い効率を有し、そうしたことは蛍光性標識として適していない。本発明による非蛍光性又は実質的に非蛍光性のシアニン色素の固有蛍光は、エネルギー受容体として用いられる場合、供与体励起波長で励起させ、供与体発光波長で発光を検出して、供与体色素の蛍光発光の好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満である。さらに、色素は、蛍光性シアニン供与体色素とのそのスペクトルの重複が最大となり、それによって消光の効率が増大するように設計される。
【0069】
生物材料は、2つの成分部分に分割される生物分子であってよく、或いは、生物材料は、共有結合的会合か又は非共有結合的会合のどちらかで結合された上記に定義の2つの成分を含むことができる。
【0070】
第5及び第6の態様によるアッセイ方法において、非蛍光性シアニン受容体色素と合体してエネルギー移動対を生成できる適切な蛍光性供与体色素には、フルオレセイン、ローダミン及びシアニン色素の周知の反応性アナログが含まれる。他の低分子量の蛍光色素は、Molecular Probes Inc.からBODIPYの商標で販売されている3,3′,5,5′−テトラメチル−2,2′−ピロメチン−1,1′−ボロンジフルオリドなどのビス−ピロメチンボロンジフルオリド色素の誘導体から選択することができる。特に好ましいものはシアニン色素である。
【0071】
適切なフルオレセイン供与体色素には、5−及び6−カルボキシフルオレセイン及び6−カルボキシ−4′,5′−ジクロロ−2′,7′−ジメトキシフルオレセインが含まれる。適切なローダミン色素には、5−及び6−カルボキシローダミン(ローダミン110)、5−カルボキシローダミン−6G(R6G−5又はREG−5)、6−カルボキシローダミン−6G(R6G−6又はREG−6)、N、N,N′,N′−テトラメチル−5−及び6−カルボキシローダミン(TAMRA又はTMR)、5−及び6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)が含まれる。
【0072】
適切なシアニン供与体色素には、CyDyes(商標):Cy3、Cy3.5、Cy5及びCy5.5が含まれる。本発明のアッセイにおける供与体成分として使用するのに適したシアニン色素は米国特許第5268486号及び同6048982号(Waggoner,A.S.)に開示されているものか、又は米国特許第6133445号(Waggonerら)に開示されているものなどのリジッド化した(rigidised)トリメチンシアニン色素である。
【0073】
検討中の反応に対するその阻害効果、増強効果、作用性効果又は拮抗性効果について化合物のスクリーニングを行う用途などを含む、ハイスループットスクリーニングの用途で、本発明によるアッセイを実施することができる。そうしたアッセイの例には、特に限定されないが、プロテアーゼによるペプチド又はタンパク質の切断、及びヌクレアーゼによるDNA又はRNA分子の切断が含まれる。このアッセイ型式では、酵素基質(ペプチド又は核酸)は、その構造が、蛍光性供与体色素分子と、切断される基質結合のどちらかの側で基質と結合している非蛍光性シアニン受容体色素とを合体させる配列を含むことになる。基質は、蛍光性供与体と受容体部分とを極めて近接して結合させる。供与体の固有蛍光は、色素の対の間の共鳴エネルギー移動に起因する受容体による消光によって低下する。供与体分と受容体部分との間の距離が約100オングストロームより大きくなると、共鳴エネルギー移動はわずかなものになる。基質の切断によって、供与体色素と受容体色素との間の分離と、付随する共鳴エネルギー移動の損失がもたらされる。供与体蛍光色素の蛍光シグナルは増大し、それによって、開裂反応の正確な測定が可能になる。
【0074】
簡単に述べると、タンパク分解酵素活性の検出のためのアッセイは以下のように設定することができる。プロテアーゼ酵素と、蛍光性供与体色素分子を、切断される基質結合のどちらかの側で基質に結合された式(I)の非蛍光性受容体色素に合体する蛍光発生基質とを合体することによって反応混合物を調製する。既知又は推定のプロテアーゼ阻害剤化合物を任意選択で反応混合物に含めることができる。一般に反応は緩衝化した溶液中で行い、反応は完結するまで進行させる。反応の進行は、蛍光性供与体色素に起因する定常状態の蛍光発光を観察することによって監視することができる。分光蛍光計を用いてそれを記録する。
【0075】
或いは、本発明は、配位子/反応物対の1成分と対の第2成分との共有結合又は非共有結合会合による結合を検出及び測定するためのアッセイ方法であって、第1成分を蛍光性供与体色素で標識化し、第2成分を本発明による非蛍光性シアニン受容体色素で標識化する方法に関する。そうしたアッセイは2つのタイプの1つとして好都合にカテゴリに分けることができる。
【0076】
i).第1のカテゴリは、特異的結合対の1成分を非共有結合的に特異的結合対の第2成分と結合させる平衡結合アッセイを含む。そうした平衡結合アッセイはアッセイスクリーニングに適用することができる。そのアッセイでは、スクリーニングされる化合物を含む試料を、特異的結合対(拮抗性か又は作用性の)の第1成分と第2成分との結合に対するその効果について試験する。どちらの成分も供与体色素又は受容体色素で標識化することができる。結合が存在しない場合、標識化された成分が互いに離れ過ぎていて、共鳴エネルギー移動は起こらない。標識化された1つの成分がその標識化された特異的結合パートナーと結合すると、標識部分は供与体と受容体種との間でエネルギー移動が起こるのに十分に極めて近接し、その結果供与体蛍光の消光がもたらされ、供与体蛍光性シグナルが減少する。
【0077】
例えば、完全なDNA分子又は核酸断片の混合物中の独特のDNA配列又は特異的遺伝子の検出及び同定に用いるために、本発明で使用する色素を、Tyagi及びKramer(Nature Biotechnology、(1996)、14、303−8)に記載されているものなどのプローブを標識化するのに使用することができる。核酸プローブの一方の端は蛍光色素で標識化されており、他方の端は本発明による非蛍光性シアニン受容体色素で標識化されている。特異的標的配列が存在しない場合、蛍光性種及び消光性種は、エネルギー移動が起こるのに十分近接して保持されることになる。その結果、励起光によるフルオフォアの照射は蛍光性シグナルを低下させることになる。プローブの特異的標的核酸配列との相互作用はプローブ中での構造変化を引き起こし、したがって、蛍光性供与体と受容体は距離をおいて隔てられる。フルオフォアの励起は、分光蛍光計を用いて記録できる蛍光性シグナルをもたらすことになる。
【0078】
或いは、平衡結合アッセイではサンドイッチアッセイ型式を用いることができる。この型式では、第1の抗体などの特異的結合対の1成分は、マイクロタイターウェルプレートのウェル上にコーティングされる。抗原の第1の抗体との結合に続いて、第2の抗原−特異的抗体をアッセイ混合物に加え、それによって抗原−第1の抗体複合体と結合させる。この型式では、第1の抗体又は抗原のどちらかが、供与体色素で標識化され、第2の抗体が受容体色素で標識化されるか、或いはその逆でよい。第1の抗体−抗原−第2の抗体複合体の結合が存在しない場合、標識化された成分が互いに離れ過ぎていて、共鳴エネルギー移動は起こらない。第2の抗体が第1の抗体−抗原複合体と結合すると、標識部分は、供与体種と受容体種との間でエネルギー移動が起こるのに十分に極めて近接し、その結果供与体蛍光の消光がもたらされ、供与体蛍光性シグナルは減少する。蛍光シグナルを測定し、抗原の濃度を標準曲線からの内挿によって測定する。特異的結合対の例は上述した通りである。
【0079】
ii).第2のカテゴリでは、アッセイは、酵素活性が介在する共有結合によるアッセイ媒体の溶液中での、蛍光性供与体色素標識化部分(反応物)の非蛍光性受容体色素−標識化部分(基質)への付加、又はその逆の検出及び測定を含むことができる。そうしたアッセイの例には、特に限定されないが、リガーゼによるDNA分子又はRNA分子と他の核酸分子の結合、ポリメラーゼによるヌクレオチドのDNA分子又はRNA分子への付加、及びアセチルトランスフェラーゼなどのトランスフェラーゼによる1つの分子から他の分子への標識化されたケミカル部分の移動が含まれる。既知又は推定の酵素阻害剤を、反応混合物に任意選択で含めることができる。適切な任意の2つの反応物及び基質部分を用いることができることを理解されたい。本発明の供与体又は受容体色素のどちらでも、1つの部分標識化するのに使用することができる。次にそれを基質との反応の検出及び測定に使用することができる。
【0080】
例えば、DNA結合アッセイでは、結合されるDNA分子を、DNAリガーゼの存在下で、ATPを含む水性バッファー中で一緒に混合する。インキュベーションに続いて、二重鎖の両方のストランドでの標準リン酸ジエステル結合の生成によって、DNAストランドを正しい配置で共有結合的に結合させる。結合させると、標識部分は、供与体種と受容体種との間でエネルギー移動が起こるのに十分に極めて近接し、その結果、供与体蛍光の消光と生成した結合生成物の量に比例するシグナルの減少がもたらされる。
【0081】
本発明は、式(1)の色素がR〜R位に、標的材上のアミノ、ヒドロキシル、アルデヒド、ホスホリル、カルボキシル、スルフヒドリル又は他の反応基と共有結合的に反応する1個以上の反応性又は官能基を含む標識化方法にも関する。そうした標的材料には、特に限定されないが、抗原、抗体、脂質、タンパク質、ペプチド、炭水化物、アミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル及びカルボキシル、リン酸及びチオリン酸基の1以上を含むか又はそれを含むように誘導化されたヌクレオチド、アミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル及びカルボキシル、リン酸及びチオリン酸基の1以上を含むか又はそれを含むように誘導化されたオキシポリ核酸又はデオキシポリ核酸、微生物材料、薬物並びに毒素が含まれる。
【0082】
式(I)の色素は、
a)式(A)を有する第1の化合物と、
【0083】
【化17】

(式中、X、Z、R、R及びRは上記で定義した通りである)
b)式(B)を有する第1の化合物と同じか異なる第2の化合物と、
【0084】
【化18】

(式中、Y、Z、R、R、Rは上記で定義した通りである)
c)第1と第2の化合物との結合の形成に適した第3の化合物(C)とを反応させる方法であって、(A)、(C)及び(B)を一段法か、又は多段法で反応して、式(I)の化合物を生成する方法で調製することができる。
【0085】
構造(A)と(B)が同一である対称性の式(I)の化合物は、2モルの割合の式(A)(又は(B))の化合物を、1,3又は5個の炭素原子を含む適切な二官能性メチン断片と反応させることによって適切に調製することができる。ここで中心炭素原子又はメソ炭素原子は置換されていることが適切である。Cy3及び誘導体を調製するための第3の化合物(C)として、例えば置換N,N′−ジフェニルホルムアミジン又はオルトエステルが用いられよう。対応する形で、Cy5アナログを調製するために適切に置換されたマロンジアルデヒドジアニルを用いることができ、Cy7アナログを調製するためにグルタコン酸アルデヒドを用いることができる。反応は通常ピリジンなどの有機溶媒中で実施し、加熱して還流させる。続いて、混合物を冷却し、エーテルなどの有機溶媒に注加する。得られた固形物又は半固形物は、クロマトグラフィーによって、一連のメタノール/クロロホルム溶媒を用いてシリカゲルカラムで精製することができる。
【0086】
構造(A)と(B)が異なる非対称性の式(I)の化合物は、二段階の方法で好都合に調製することができる。この方法では、無水酢酸の存在下で、式(A)のインドレニン化合物を、結合の形成に適した化合物、例えば適切に置換されたN,N′−ジフェニルホルムアミジン又はマロンアルデヒドジアニルと反応させて、2−アニリノビニル又は4−アニリノ−1,3−ブタジエニル四級塩を生成させることによって、中間体色素化合物をまず生成させる。その中間体四級塩を、第2の2−メチルインドレニン四級塩と反応させて、式(I)の化合物を得ることができる。複素環系を結合するポリメチン結合を形成するための他の中間体は周知であり、例えばHamer,F.M.、“The Cyanine Dyes and Related Compounds”、Interscience(1964)に記載されている。メソ位がシアノ基で置換されている、本発明の好ましい化合物において結合の形成に適した試薬には、シアノ酢酸が含まれる。
【0087】
本発明の幾つかの色素は、当業者に周知の方法で他の色素に転換するための中間体として有用であることは容易に理解されよう。本発明の色素は本明細書で開示した方法で合成することができる。特別な有用性を有する化合物の誘導体は、適当な前駆体を選択するか、或いは、得られた化合物を既知の方法で改変して官能基を様々な位置に導入することによって調製する。例として、本発明の色素を調製するためにある種の反応基を含有させるように本発明の色素を改変させるか、或いは荷電した基又は極性基を加えて極性又は非極性の溶媒又は材料中での化合物の溶解度を高めることができる。転換の例として、エステルをカルボキン酸に転換するか、又はアミド誘導体に転換することができる。基R、R、R、R、R、R、Z、Z、X及びYは、本発明の色素が異なる波長特徴を有し、それによって、複数の検出した蛍光発光の波長をもとに単一の試料中の異なる化合物の存在及びその量を識別できる、マルチパラメータ分析で使用可能な複数の関連色素を提供するように選択することができる。本発明の色素は、R−基の適切な選択によって、標識化される材料を含む水性又は他の極性又は非極性媒体中で溶解であるようにすることができる。
【0088】
Cy(商標)はAmersham Biosciences UK Limited.の商標である。
【実施例】
【0089】
以下の実施例は本発明の幾つかの好ましい実施形態の例示であるが、しかしすべての実施形態の例示しようとするものではない。
【0090】
1. 2−{[3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウムの調製
【0091】
【化19】

1.1 N−[2−シアノ−3−(ジメチルアミノ)−2−プロペニリデン]−N−メチルメタナミニウム
15mlの乾燥ジメチルホルムアミド中のシアノ酢酸25ミリモルに50ミリモルのクロロメチレンジメチルアンモニウムクロリド(Aldrich、Catalogue #28,090−9)を加えた。直ちに、溶液は黄色に変色し、発熱反応が認められた。反応物を室温で終夜置いた。生成物を乾燥するまで蒸発させ、それ以上精製せずに次のステップで用いた。
【0092】
1.2 2−{5−[1,3,3−トリメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウム
無水酢酸(40ml)及び若干過剰の酢酸ナトリウム(2.2g)の中のフィッシャー塩基(2−メチレン−1,3,3−トリメチルインドレニン;Aldrich社カタログ番号M4620−9)50ミリモルに、無水酢酸(10ml)中に溶解した上記ステップ(1.1項)の生成物を加えた。反応を室温で4時間進行させた。所望のシアノ−トリメチンシアニンを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(×2)及び酢酸エチル中の30%MeOHを用いて溶出させ単離した。
【0093】
2. 2−{5−[1−(5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウム(メソ−シアノCy5)の調製
2.1 2−{N−アセチル−N−フェニル}アミノエテニル−1,3,3−トリメチルインドレニン
【0094】
【化20】

無水酢酸(20ml)中の1,2,3,3−テトラメチル−3H−インドリウムアイオダイド(5ミリモル)とN,N′−ジフェニルホルムアミジン(5ミリモル)をアルゴン雰囲気下で4時間還流させた。終夜室温で保持して結晶性沈殿物を得た。沈殿物をろ過し、エーテルで洗浄して乾燥した。NMR分析はこれが所望の生成物であることを示した。
【0095】
2.2 2−{N−アセチル−N−フェニル}アミノエテニル−1−{6−カルボキシペンチル}−3,3−トリメチルインドレニン
【0096】
【化21】

2,3,3−トリメチルインドレニン(1当量)を6−ブロモヘキサン酸(2当量)と1,2−ジクロロベンゼン中、100℃で24時間反応させた。生成物を、フラッシュクロマトグラフィーを用いてシリカゲルで精製し、所望の部分を乾燥するまで乾燥して、1−(6−カルボキシペンチル)−2,3,3−トリメチルインドレニンを得た。
【0097】
2.1項に記載の方法により、1−(6−カルボキシペンチル)−2,3,3−トリメチルインドレニンをジフェニルホルムアミジンと反応させて、2−{N−アセチル−N−フェニル}アミノエテニル−1−{6−カルボキシペンチル}−3,3−トリメチルインドレニンを得た。
【0098】
2.3 2−{5−[1−(5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウム(メソ−シアノCy5)
【0099】
【化22】

2−{N−アセチル−N−フェニル}アミノエテニル−1,3,3−トリメチルインドレニンと、2−{N−アセチル−N−フェニル}アミノエテニル−1−{6−カルボキシペンチル}−3,3−トリメチルインドレニン(それぞれ20ミリモル)と、10当量のシアノ酢酸とを、ピリジン(100ml)中で還流下アルゴン雰囲気で4時間加熱した。反応の最後に、ピリジンを蒸発させ、生成物のHPLC精製を繰り返し、続いてこれシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、溶離液として酢酸エチル中のMeOHの量を増大させて精製して高純度の生成物、2−{5−[1(5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウム(メソ−シアノCy5)を得た。最大吸収(MeOH):610nm:最大発光(MeOH):628nm;量子収量:Cy5の0.65。
【0100】
生成物は以下の基準によってCy5より安定であることがわかった。
a)光安定性:(室内照明下に置いたエタノール溶液)。色素の退色の半減期(t1/2):メソ−シアノCy5、t1/2>>75時間(Cy5、=22時間)、
b)加水分解安定性:(脱塩水中、pH=6.85で)色素の退色の半減期(t1/2):メソ−シアノCy5、t1/2>>150時間(Cy5、t1/2=56時間)。
【0101】
3. 2−{5−[1−(5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウムとジデオキシウリジン−5′−三リン酸の結合(図2)
3.1 2−{5−[1−(5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウム,N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルの調製
2−{5−[1−(5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウム(20mg;45マイクロモル)を20mlのジクロロメタン中に溶解した。その溶液に7μlのピリジンを加え、続いて19mgのトリフルオロ酢酸スクシンイミジルエステル(TFA−NHS)を加えて、アルゴン雰囲気下室温で30分間攪拌した。その時点で、粗生成物の薄層クロマトグラフィー(TLC)によって定量的な転換率が観察された。反応物をジクロロメタンで10mlに希釈し、3×10ml部の水で抽出した。有機相を乾燥するまで蒸発させ、アセトニトリルで3回共蒸発させた。それによって24mgの生成物を得た。
【0102】
3.2 2−{5−[1−5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウム,N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルと11−ジデオキシUTPの結合
2.1)と同様にして得た2−{5−[1−(5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウム,N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(2mg、約2.8マイクロモル)を200μlのジメチルホルムアミド(DMF)中で溶解し、pH8.5で200μlの0.1M NaHCO中の2マイクロモルの11−ddUTPと混合した。混合物を終夜室温に放置した。反応の進行をHPLCで監視し、所望の生成物をC18カラムで精製して0.46マイクロモルの2−{5−[1−(5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウム−11ddUTPコンジュゲートを得た。
【0103】
本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく、上記した本発明の多くの修正と変更を行うことができることは明らかである。説明してきた個別の実施形態は例としてのみ提示したものであり、本発明は添付の特許請求の範囲の条項によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】2−{5−[1−(5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウム(メソ−シアノCy5)の吸収及び発光スペクトルを示す図である。
【図2】2−{5−[l−(5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]−3−シアノ−1,3−ペンタジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリニウムとジデオキシウリジン−5′−三リン酸の結合を例示する反応スキームを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)の色素。
【化1】

式中、基R及びRはZ環構造に結合しており、
基R及びRはZ環構造に結合しており、
nは1、2又は3であり、
及びZは独立に、1つの環又は2つの縮合環芳香族又は複素芳香族系を完成するのに必要な原子を表し、各環は、炭素原子並びに適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2個以下の原子から選択される5又は6個の原子を有し、
X及びYは同一又は異なるもので、酸素、硫黄、−CH=CH−及び次式の基から選択され、
【化2】

基R、R、R、R、R、R(及び存在するときはR及びR)の少なくとも1つは基−E−F(式中、Eは炭素、窒素、酸素、硫黄及びリン原子からなる群から選択される1〜20原子の鎖を有するスペーサー基であり、Fは標的結合基である)であり、
基Rの1つは−CN、−Cl、−F、−CF及び−C(O)R10(式中、R10はH、C〜Cアルキル及びアリールから選択される)から選択され、
残りの基Rは水素であるか、又はRのうちの2つが次式の基と共に適宜−O−、−S−又は>NHから選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素環系を形成し、
【化3】

nは上記で定義した通りであり、
基R、R、R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R、R、R及びRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、モノ又はジC〜Cアルキル置換アミノ、スルフヒドリル、ニトロ、モノ又はジニトロ置換ベンジル、カルボキシル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、スルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及び基−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは独立に、C〜Cアルキル及び(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは水素、C〜Cアルキル、ベンジル、モノ又はジニトロ置換ベンジル及び−(CH−Wから選択され、
Wはスルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及びカルボキシルから選択され、
kは1〜6の整数である。
【請求項2】
標的材料の発光検出用試薬であって、当該試薬が、基R、R、R、R、R及びRのいずれもニトロ、又はモノもしくはジニトロ置換ベンジル基を含まない請求項1記載の色素を含む試薬。
【請求項3】
基R、R、R、R、R及びRの少なくとも1つが1個以上のニトロ基を含む、請求項1記載の色素。
【請求項4】
がH、メソ置換−CN、−Cl、−F、−CF及び−C(O)R10からなる群から選択され、R10がH、C〜Cアルキル及びアリールから選択される、請求項1記載の色素。
【請求項5】
X及びYがビス−C〜Cアルキル置換炭素、酸素及び硫黄からなる群から選択される、請求項1記載の色素。
【請求項6】
標的結合F基が、標的材料上の官能基との反応のための反応基、又は標的材料上の反応基との反応のための官能基を含む、請求項1記載の色素。
【請求項7】
前記反応基が、カルボキシル、スクシンイミジルエステル、スルホ−スクシンイミジルエステル、イソチオシアネート、マレイミド、ハロアセトアミド、酸ハライド、ヒドラジド、ビニルスルホン、ジクロロトリアジン及びホスホルアミダイトからなる群から選択される、請求項6記載の色素。
【請求項8】
前記官能基が、ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、イミダゾール、アルデヒド及びケトンを含めたカルボニル、リン酸並びにチオリン酸からなる群から選択される、請求項6記載の色素。
【請求項9】
及びZがフェニル、ピリジニル、ナフチル、キノリニル及びインドリル部分からなる群から選択される、請求項1記載の色素。
【請求項10】
スペーサー基Eが、
−(CHR′)−、
−{(CHR′)−O−(CHR′)−、
−{(CHR′)−NR′−(CHR′)−、
−{(CHR′)−(CH=CH)−(CHR′)−、及び
−{(CHR′)−CO−NR′−(CHR′)
からなる群から選択され、
R′が水素又はC〜Cアルキルであり、
pが1〜20、好ましくは1〜10であり、
qが0〜10であり、
rが1〜10であり、
sが1又は2である、請求項1記載の色素。
【請求項11】
基R、R、R、R、R、R、R及びRの少なくとも1つが水可溶化基を含む、請求項1記載の色素。
【請求項12】
水可溶化基が芳香族環構造Z及び/又はZに直接結合したスルホン酸塩、スルホン酸及び四級アンモニウムからなる群から選択される、請求項11記載の色素。
【請求項13】
基R、R、R、R、R、R、R及びRの少なくとも1つが基−(CH−Wを含み、Wがスルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及びカルボキシルからなる群から選択され、kが1〜6の整数である、請求項11記載の色素。
【請求項14】
がメソ置換−CNである、請求項1記載の色素。
【請求項15】
i)標的材料を含む液体に式(I)の蛍光色素を加えるステップと、
ii)標的材料と結合してその標識化に適した条件下で蛍光色素を標的材料とインキュベートするステップと
を含む標的生物材料の標識化法。
【化4】

式中、基R及びRはZ環構造に結合しており、
基R及びRはZ環構造に結合しており、
nは1、2又は3であり、
及びZは独立に、1つの環又は2つの縮合環芳香族又は複素芳香族系を完成するのに必要な原子を表し、各環は、炭素原子並びに適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2個以下の原子から選択される5又は6個の原子を有し、
X及びYは同一又は異なるもので、酸素、硫黄、−CH=CH−及び次式の基から選択され、
【化5】

基R、R、R、R、R、R(及び存在するときはR及びR)の少なくとも1つは基−E−F(式中、Eは炭素、窒素、酸素、硫黄及びリン原子からなる群から選択される1〜20原子の鎖を有するスペーサー基であり、Fは標的結合基である)であり、
基Rの1つは−CN、−Cl、−F、−CF及び−C(O)R10(式中、R10はH、C〜Cアルキル及びアリールから選択される)から選択され、
残りの基Rは水素であるか、又はRのうちの2つが次式の基と共に適宜−O−、−S−又は>NHから選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素環系を形成し、
【化6】

nは上記で定義した通りであり、
基R、R、R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R、R、R及びRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、モノ又はジC〜Cアルキル置換アミノ、スルフヒドリル、カルボキシル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、スルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及び基−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは独立に、C〜Cアルキル及び−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは水素、C〜Cアルキル、ベンジル及び−(CH−Wから選択され、
Wはスルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及びカルボキシルから選択され、
kは1〜6の整数である。
【請求項16】
標的生物材料が、抗体;脂質;タンパク質;ペプチド;炭水化物;アミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル及びカルボキシル、リン酸及びチオリン酸基の1以上を含む或いは含むように誘導化されたヌクレオチド;アミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル及びカルボキシル、リン酸及びチオリン酸基の1以上を含む或いは含むように誘導化されたオキシポリ核酸又はデオキシポリ核酸;微生物材料;薬物;ホルモン;細胞;細胞膜並びに毒素からなる群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
試料中の検体のアッセイ方法であって、
i)検体の少なくとも一部と特異的結合パートナーを結合させるのに適した条件下で、検体を、検体のための特異的結合パートナーと接触させて、複合体を形成させるステップであって、検体と特異的結合パートナーの1つを式(I)の蛍光色素で標識化するステップと、
ii)標識化された複合体の発光蛍光を測定するステップと、
iii)発光蛍光と、試料中での検体の存在又は量とを相関させるステップと
を含む方法。
【化7】

式中、基R及びRはZ環構造に結合しており、
基R及びRはZ環構造に結合しており、
nは1、2又は3であり、
及びZは独立に、1つの環又は2つの縮合環芳香族又は複素芳香族系を完成するのに必要な原子を表し、各環は、炭素原子並びに適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2個以下の原子から選択される5又は6個の原子を有し、
X及びYは同一又は異なるもので、酸素、硫黄、−CH=CH−及び次式の基から選択され、
【化8】

基R、R、R、R、R、R(及び存在するときはR及びR)の少なくとも1つは基−E−F(式中、Eは炭素、窒素、酸素、硫黄及びリン原子からなる群から選択される1〜20原子の鎖を有するスペーサー基であり、Fは標的結合基である)であり、
基Rの1つは−CN、−Cl、−F、−CF及び−C(O)R10(式中、R10はH、C〜Cアルキル及びアリールから選択される)から選択され、
残りの基Rは水素であるか、又はRのうちの2つが次式の基と共に適宜−O−、−S−又は>NHから選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素環系を形成し、
【化9】

nは上記で定義した通りであり、
基R、R、R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R、R、R及びRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、モノ又はジC〜Cアルキル置換アミノ、スルフヒドリル、カルボキシル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、スルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及び基−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは独立に、C〜Cアルキル及び−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは水素、C〜Cアルキル、ベンジル及び−(CH−Wから選択され、
Wはスルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及びカルボキシルから選択され、
kは1〜6の整数である。
【請求項18】
検体−特異的結合パートナー対が、抗体/抗原、レクチン/糖タンパク質、ビオチン/ストレプトアビジン、ホルモン/受容体、酵素/基質及び共同因子、DNA/DNA、DNA/RNA並びにDNA/結合タンパク質からなる群から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
1種以上の式(I)の色素を含む、2種以上の異なる蛍光色素のセットであって、セットの各色素がセットの残りの色素の発光波長と比べて、著しく異なる蛍光発光波長を有するセット。
【化10】

式中、基R及びRはZ環構造に結合しており、
基R及びRはZ環構造に結合しており、
nは1、2又は3であり、
及びZは独立に、1つの環又は2つの縮合環芳香族又は複素芳香族系を完成するのに必要な原子を表し、各環は、炭素原子並びに適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2個以下の原子から選択される5又は6個の原子を有し、
X及びYは同一又は異なるもので、酸素、硫黄、−CH=CH−及び次式の基から選択され、
【化11】

基R、R、R、R、R、R(及び存在するときはR及びR)の少なくとも1つは基−E−F(式中、Eは炭素、窒素、酸素、硫黄及びリン原子からなる群から選択される1〜20原子の鎖を有するスペーサー基であり、Fは標的結合基である)であり、
基Rの1つは−CN、−Cl、−F、−CF及び−C(O)R10(式中、R10はH、C〜Cアルキル及びアリールから選択される)から選択され、
残りの基Rは水素であるか、又はRのうちの2つが次式の基と共に適宜−O−、−S−又は>NHから選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素環系を形成し、
【化12】

nは上記で定義した通りであり、
基R、R、R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R、R、R及びRは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、モノ又はジC〜Cアルキル置換アミノ、スルフヒドリル、カルボキシル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、スルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及び基−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは独立に、C〜Cアルキル及び−(CH−Wから選択され、
基R及びRのいずれかが基−E−Fでない場合、その基R又はRは水素、C〜Cアルキル、ベンジル及び−(CH−Wから選択され、
Wはスルホン酸塩、スルホン酸、四級アンモニウム及びカルボキシルから選択され、
kは1〜6の整数である。
【請求項20】
4つの異なる色素を含み、各色素が異なる蛍光発光波長を有する、請求項19記載のセット。
【請求項21】
i)エネルギー移動関係にある2つの成分を分離するステップであって、
第1成分が請求項1記載の色素で標識化されており、その基R、R、R、R、R及びRのいずれもニトロ、又はモノもしくはジニトロ置換ベンジル基を含まず、第2成分が請求項1記載の受容体色素で標識化されており、その基R、R、R、R、R及びRの少なくとも1つが1個以上のニトロ基を含むステップと、
ii)発光蛍光を測定することによって第1成分の存在を検出するステップと
を含むアッセイ方法。
【請求項22】
i)特異的結合対の1成分を、対の第2成分と結合させるステップであって、第1成分が請求項1記載の色素で標識化されており、その基R、R、R、R、R及びRのいずれもニトロ、又はモノもしくはジニトロ置換ベンジル基を含まず、第2成分が請求項1記載の受容体色素で標識化されており、その基R、R、R、R、R及びRの少なくとも1つが1個以上のニトロ基を含み、それによって第1成分と第2成分の間にエネルギー移動関係をもたらすステップと、
ii)発光蛍光を測定することによって第1成分と第2成分の結合を検出するステップと
を含むアッセイ方法。
【請求項23】
蛍光性供与体色素がフルオレセイン、ローダミン、シアニン色素及びビス−ピロメチンボロンジフルオリド色素の誘導体からなる群から選択される、請求項21記載のアッセイ方法。
【請求項24】
蛍光性供与体色素がフルオレセイン、ローダミン、シアニン色素及びビス−ピロメチンボロンジフルオリド色素の誘導体からなる群から選択される、請求項22記載のアッセイ方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−523257(P2006−523257A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507193(P2006−507193)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/007833
【国際公開番号】WO2004/085539
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(598041463)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【住所又は居所原語表記】800 Centennial Avenue, P.O.Box 1327,Piscataway,New Jersey 08855−1327,United States of America
【Fターム(参考)】