メタノール改質用の金属間化合物Ni3Al触媒とこれを用いたメタノール改質方法
主成分としてNi3Al金属間化合物を含有している触媒とし、耐熱性、耐摩耗性に優れ、高温でも、高活性、高選択性を持つメタノール改質用触媒とす
る。
る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この出願の発明は、水素を製造するのに有用なメタノール改質用触媒とこれを用いたメタノール改質方法に関するものである。
【背景技術】
近年、水素は燃焼すると水しか発生せず、地球環境の保全という観点からクリーンなエネルギー媒体として期待されており、最近では、特に燃料電池の燃料として注目されている。このような燃料としての水素の製造方法としてはこれまでに様々なものが知られており、このうちの一つの方法として、メタノールの改質反応より製造する方法がある。メタノールは、そのものがバイオマス燃料等として利用可能とされているが、このメタノールの改質による水素生成がエネルギー効率の観点からも注目されているところである。
メタノールの改質による水素製造の反応方法は、吸熱反応であり、たとえば、燃料電池自動車のメタノール改質ガスエンジンでは、メタノールの改質反応に排気熱を利用して、エネルギーの利用効率を上げており、この場合の総合効率は、メタノールを直接燃焼させる場合に比べて、31−48%向上するとされている。
しかしながら、実際にメタノールの改質反応に排ガスを利用しようとすると、排ガス温度は200℃から700℃まで変化するため、耐熱性、高活性、耐摩耗性に優れ、長寿命、低コストな触媒の使用が必要となる。従来、メタノール改質用触媒としては、銅、クロム、亜鉛などの卑金属元素や、その酸化物などが一般的に用いられているが、これら従来の触媒は、メタノールの水蒸気改質反応において低温活性を示すものの、耐熱性に乏しいという問題点がある。また、アルミナなどの担体に白金などの貴金属元素やその酸化物などを担持した触媒も知られているが、これらの触媒はコストが高いという問題がある。
以上のような従来技術の状況において、この出願の発明者らは、メタノール改質用触媒として、降伏強度が正の温度依存性を示し(強度の逆温度依存性と呼ばれている)、優れた高温特性、耐摩耗性を持っている金属間化合物Ni3Alに着目した。金属間化合物Ni3Alは触媒用成形体として提案されているが(特許文献1)、メタノール改質用触媒としての高温下での適用については、未だほとんど検討されておらず、具体的に報告されていない。
【特許文献1】特開昭55−88856号公報
【発明の開示】
この出願の発明は以上のとおりの背景よりなされたものであって、メタノールまたはメタノールと水の混合液を原料として水素含有ガスを製造するメタノール改質用の触媒として有用であって、酎熱性、耐摩耗性に優れ、高温でも、高活性、高選択性を持つ低コストの新しいメタノール改質用触媒と、これを用いた新しいメタノールの改質方法を提供することを課題としている。
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、金属間化合物Ni3Alを含有することを特徴とするメタノール改質用触媒を提供する。
また、この出願の発明は、第2には、共存成分とともに金属間化合物Ni3Alを含有し、共存成分を含めた全体の元素組成(重量%)がNi77−95%、Al5−23%であることを特徴とするメタノール改質用触媒を提供し、第3には、インゴット溶製後の切削と機械研磨もしくはアトマイズ法により作製された粉末または粉粒であることを特徴とするメタノール改質用触媒を提供する。また、第4には、上記の第1,第2のメタノール改質用触媒は、一方向凝固法で作製したNi3Alの合金を用いて冷間圧延法により作製された冷間圧延箔であることを特徴とするメタノール改質用触媒を提供する。
また、この出願の発明は、第5には、上記のいずれかの触媒の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバーが形成されていることを特徴とするメタノール改質用触媒を提供し、第6には、金属微粒子は、NiおよびNi3Alのうち少なくともいずれかの金属からなる微粒子であることを特徴とするメタノール改質用触媒を提供する。
さらに、この出願の発明は、第7には、上記いずれかの触媒において、アルカリまたは酸処理されていることを特徴とするメタノール改質用触媒を提供する。
そして、この出願の発明は、第8には、上記いずれかの触媒を用いるメタノールの改質方法であって、メタノールまたはメタノールと水との混合液を前記触媒と接触させて水素を製造することを特徴とするメタノール改質方法を提供し、第9には、触媒をあらかじめ水素還元処理した後にメタノールまたはメタノールと水との混合液と接触させることを特徴とするメタノール改質方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
図1は、Ni3Alとラネーニッケルを用いてメタノール改質反応させる際、測定した水素発生速度(ml/min/g)を反応温度の関数として示した図である。
図2は、Ni3Alとラネーニッケルを用いてメタノール改質反応させる際、測定したCO発生速度(ml/min/g)を反応温度の関数として示した図である。
図3は、Ni3Alとラネーニッケルを用いてメタノール改質反応させる際、測定したCO2発生速度(ml/min/g)を反応温度の関数として示した図である。
図4は、実施例4で作製した各種組成のNi3Al箔と市販の純Ni箔を用いてメタノール分解反応させた時、測定した水素発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した図である。
図5は、実施例4で作製した各種組成のNi3Al箔と市販の純Ni箔を用いてメタノール分解反応させた時、測定したCO発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した図である。
図6は、実施例4で作製した各種組成のNi3Al箔と市販の純Ni箔を用いてメタノール分解反応させた時、測定したCO2発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した図である。
図7は、実施例4で作製した各種組成のNi3Al箔と市販の純Ni箔を用いてメタノール分解反応させた時、測定したCH4発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した図である。
図8は、アルカリ表面処理したNi3Al箔(組成Ni−24at%Al)とアルカリ表面処理前のNi3Al箔(組成Ni−24at%Al)を用いてメタノール分解反応させた時、測定した各反応温度でのH2、CO、CO2、CH4(アルカリ表面処理前のNi3Al箔についてはH2とCOのみ)の発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した図である。
図9は、実施例4で作製したNi3Al箔(組成Ni−24at%Al)を用いて520℃でメタノール分解反応させた時、測定したH2、CO、CO2、CH4の発生速度(ml・m−2・min−1)を反応時間の関数として示した図である。
図10は、実施例4で作製したNi3Al箔(組成Ni−24at%Al)を用いて、360℃、440℃、520℃でメタノール分解反応させた時のメタノールの転化率を測定した結果である。
図11は、520℃でメタノール分解反応したときの箔の表面形態のSEM観察結果で、(a)は反応前、(b)は1時間反応後、(c)は2時間反応後、(d)は7時間反応後のものである。
図12は、520℃で7時間反応した後、表面に生成した金属粒子を内包するカーボンナノファイバー組織のTEM観察結果である。
図13は、520℃で65時間反応した後の表面形態のSEM観察結果である。
図14は、実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を用い、440℃で65時間メタノール分解反応させた後の表面形態のSEM観察結果である。
図15は、360℃で65時間反応させた後の表面形態のSEM観察結果である。
図16は、実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を520℃で7時間メタノール分解反応して触媒活性化処理(pre−activation)した後、360℃でメタノール分解反応をおこなった時のメタノールの転化率を測定した結果である。
図17は、Ni3Al箔のX線回折(XRD)の分析結果である。(a)は触媒活性化処理前(as cold rolled)と触媒活性化処理後(after pre−activation)の箔全体のXRD結果で、(b)は触媒活性化処理後(after pre−activation)の箔表面に生成したポーラス組織のXRD結果である。
図18は、市販の純Ni箔(厚さ50μm)を実施例7と同じ方法で520℃での触媒活性の経時変化試験を行い、メタノールの転化率を測定した結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
この出願の発明においては、金属間化合物Ni3Alを活性成分とするものであるが、単独相としての組成範囲はNi85−88重量%、Al12−15重量%である。このNi3Al金属間化合物を含有する触媒では、他種のものを共存させていてもよく、たとえばNiAl、Ni5Al3、Ni等が共存されていてもよい。これらの成分の存在が許容されることは、触媒の製造、調製が容易とされるだけでなく、触媒の組成や形状調節、そして活性化処理にとっても好適でもある。これらの他種成分を共存する場合には、全体としての組成範囲はNi77−95重量%、Al15−23重量%とすることが好適に考慮される。
また、この出願の発明では、金属間化合物Ni3Alの表面の酸化物膜などを取り除くと共に、Al、Niが溶け出すことによって表面形状、組成を制御し、触媒活性を高めるために、アルカリや酸で処理してもよい。アルカリ処理は、一般的には、無機または有機の塩基の水溶液もしくは有機溶媒の溶液を用いることができ、処理温度が室温〜100℃程度の範囲で処理することができる。また酸処理には、無機酸または有機酸、それらの水溶液や有機溶媒溶液を用いることができる。処理温度としては、室温〜50℃程度までとすることが一般的に考慮される。上記のアルカリ処理の場合には、Alだけが溶出し、Niが殆んど溶出しない。たとえばNaOH水溶液を用いる場合には、その濃度は10%以上、望ましくは20〜30%であり、また処理温度60−100℃、処理時間1時間以上が望ましい。酸処理の場合、AlとNiとも溶出するので、高濃度、長時間処理すると、金属間化合物Ni3Alの損失が増えることに注意する必要がある。たとえば、HCl溶液の場合には、濃度20%以下、処理温度20℃付近、処理時間1時間以下が望ましい。HNO3溶液の場合には、濃度5%以下、処理温度20℃付近、処理時間1時間以下が望ましい。
また、この出願の発明のメタノール改質用触媒は、様々な方法によって製造、調製することができる。たとえば粉末または粉粒体として製造、調製する場合には、原料金属元素をインゴットに製造し、これを切削したものや、さらに機械的研磨を施したもの、あるいは溶解した金属のアトマイズ法による方法等を採用することができる。もちろん所要の形状に成形したものとすることもできる。さらには、セラミックスや他の金属、それらの複合体との組合わせとして触媒を構成してもよいことは言うまでもない。Ni3Alの活性を阻害しない限り、公知のものをはじめとする他のメタノール改質用触媒を併用してもよい。
以上のようなこの出願の発明の触媒を粉末、もしくは粉粒体として用いる場合には、たとえばその平均粒径としては150μm以下程度の範囲のものが例示される。より好ましくは32μm以下のものが好適に考慮される。その比表面積については、たとえば、アルカリまたは酸処理前の場合に2.5m2/g以下の範囲のものが、処理後の場合には、2.5〜6m2/gの範囲のものが例示される。
さらに、この出願の発明のメタノール改質用触媒は、一方向凝固法で作製したNi3Alの合金を用いて冷間圧延法により作製された冷間圧延箔であってもよい。この冷間圧延箔は、たとえば特許第3374173号に記載された方法で製造される。すなわち、Niを主成分とし、Alを含む化学組成の合金をアーク溶解して原料棒を作製し、この原料棒を溶融凝固で柱状晶に育成して一方向凝固材を作製し、次いでこの一方向凝固材を切り出して、板状体を作製し、この板状体を室温で冷間圧延加工して冷間圧延箔とするものである。さらに必要に応じて、10−3Paよりも高い真空度において、800℃以上の温度で、20分以上焼鈍し、冷間圧延加工してもよい。この冷間圧延箔の厚さとしては、製造上及び触媒活性の効果の点から500μm以下であることが好ましい。このようにして作製されたメタノール改質用触媒は、優れた高温特性を持つものであり、400℃以上の温度で高い触媒活性、高選択性を有し、高温長時間でも触媒活性が劣化しないものである。また、上記のアルカリ処理をこの冷間圧延箔に施してもよい。この場合には、より低い温度でも触媒活性を発現させることができる。したがって、このメタノール改質用触媒は、高温化学反応容器材料と触媒材料の2役を果たすことが可能で、小型、高効率の新型高温リアクターとしての適用が期待できる。
なお、メタノール改質反応の上限温度については特に限定的ではないが、プロセスの実際面、触媒能等の点から、一般的には600℃程度までとすることが考慮される。
また、この出願の発明のメタノール改質用触媒は、その触媒の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバーのポーラス構造が形成されていてもよい。このポーラス構造はメタノール改質触媒反応の進行に伴って形成され、例えば、触媒反応温度が400℃以上のとき、より好適には400℃〜580℃のときに形成される。触媒反応温度が400℃未満であってもポーラス構造が形成され、後述する触媒活性化処理において効果的な場合がある。なお、ポーラス構造形成のための反応時間としては一般的には1〜70時間程度である。そして、上記のポーラス構造はより高い触媒活性を実現することができるため、このような構造を有する触媒はその触媒特性を飛躍的に向上させることができる。したがって、触媒を用いてメタノールを改質する際に、あらかじめ触媒の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバーのポーラス構造を形成させておく、すなわち触媒活性化処理を行うことによって、効率よくメタノールを改質することができる。金属微粒子としては、NiおよびNi3Alのうち少なくともいずれかの金属からなる微粒子であってもよい。また、金属微粒子の形状としては球状もしくは不定形であってもよく、その大きさは粒径が10nm〜10μm、好ましくは10nm〜200nmのものが考慮される。カーボンナノファイバーは、例えばその直径が10nm〜200nm、長さが100nm〜1mmのものが考慮される。
この出願の発明の触媒を用いてのメタノール改質反応による水素の製造においては、メタノールまたはメタノールと水との混合液を用いることができる。メタノールと触媒との使用割合については、一般的にはたとえば空間速度(LHSV)は15〜35h−1の範囲とすることが、メタノールと水を用いる場合には、両者の割合は、モル比として、メタノール:水=1:0.1〜5程度とすることが好適に考慮される。また、改質反応は、固定床方式や流動床方式が考慮される。
反応温度としては、240℃〜520℃の範囲がより好適である。
そこで、以下の実施例により、この出願の発明の実施の形態についてさらに説明する。
もちろん、以下の例により、この出願の発明が限定されることはない。
【実施例】
[実施例1]
以下の二種類のNi3Al粉末試料を作製した。
(a)回転ディスクアトマイズ法で組成86.91重量%Ni−13.09重量%AlのNi3Al粉末試料を作製した。BET法を用いて比表面積を測定した結果、粒子直径32μm以下の粉末の比表面積は1.3m2/g;粒子直径32−75μmの粉末の比表面積は0.4m2/g;粒子直径75−150μmの粉末の比表面積は0.1m2/gである。
(b)組成87.32重量%Ni−12.67重量%AlのNi3Al合金インゴットを溶解炉で作製した。インゴットから機械加工で切屑を作り、これらの切屑を機械研磨で150μm以下の粉末にした。BET法を用いて比表面積を測定した結果、このように作製したNi3Al粉末の比表面積は2.3m2/gであることが分かった。
次に、ここで作製した粉末に対して以下の各アルカリ処理と酸処理を行った。
(1)機械研磨で作製したNi3Al粉末3gを120gの20%NaOH水溶液に加え、65−70℃の温度で攪拌しながら5時間放置した。その後アルカリ水溶液をデカンテーションにより除去した。沈殿物を適量な蒸留水で洗浄し、洗液をデカンテーションにより除去した。この操作を洗液が中性になるまで繰返した。得られた沈殿生成物を脱水した。脱水後50℃で一晩乾燥して、Ni3Al触媒を調製した。ICP発光分光分析の結果、このNaHO水溶液により調製したNi3Al中のAl量の約14%(重量比)溶出し除去されたことが分かった。BET法による比表面積測定の結果、以上の処理で調製した触媒の比表面積が5.1m2/gであったことが分かった。
(2)機械研磨で作製したNi3Al粉末1.3gを80gの30%NaOH水溶液に加え、60−65℃の温度で攪拌しながら3.5時間放置した。ICP発光分光分析の結果、このNaHO水溶液により調製したNi3Al中のAl量の約10%(重量比)を溶出し除去されたことが分かった。BET法による測定した結果、調製した粉末の比表面積は4.3m2/gである。
(3)回転ディスクアトマイズ法で作製した粒子直径32−75μm以下のNi3Al粉末3gを120gの20%HClの溶液に加え、室温で攪拌しながら3時間放置した。BET法で測定した結果、調製した粉末の比表面積は1.1m2/gであることが分かった。
(4)回転ディスクアトマイズ法で作製した粒子直径32−75μmのNi3Al粉末3gを120gの5%HNO3溶液に加え、室温で攪拌しながら3時間放置した。BET法で測定した結果、調製した粉末の比表面積は3.6m2/gであることが分かった。
以上の表面処理によりBET法にて測定した比表面積(m2/g)の結果を表1に示す。(“−”は測定していないことを表す)
表1より、アルカリ処理と酸処理ともNi3Alの比表面積が増加する効果があること
がわかる。
[実施例2]
上記の実施例1において(b)の機械研磨で作製した粉末試料0.2gを触媒として、触媒反応装置(固定床流通式反応装置)で240℃1時間水素還元処理を行った後、メタノールと水の混合液(CH3OH:H2O=1mol:1.5mol)を原料に、常圧、240℃、260℃、280℃、300℃、320℃、340℃、360℃の各反応温度で活性評価試験を行った。その結果を図1−図3中の黒丸印に示した。図1に示したように、反応の水素発生速度(ml/min/g)は温度の上昇に伴い増大するが、全体的に低い。図2と図3はそれぞれ測定した各反応温度でのCOとCO2発生速度(ml/min/g)を反応温度の関数として示した結果である。Ni3Al触媒の場合、主にCOが生成していることが分かった。これによって、Ni3Al触媒はメタノールの分解反応(CH3OH→CO+2H2)、すなわち水素発生反応に活性があることがわかる。
[実施例3]
上記実施例1での(b)の機械研磨で作製した粉末試料を(1)の方法により20%NaOH水溶液で処理調製した触媒0.2gを240℃で1時間水素還元処理を行った後、活性評価試験を行った。その結果を図1−図3中の黒四角印に示した。図1よりアルカリ処理したNi3Alは352℃で351ml/min/gの大きな水素発生速度が得られることが分かった。しかもアルカリ処理したNi3Al触媒はさらに温度の上昇に伴いこの水素発生速度は増加するという優れた高温活性を示す。また、図2と図3より、主にCOが生成していることが分かった。これによって、アルカリ処理によりNi3Alの触媒活性が向上することがわかる。
[実施例4]
各組成(Ni−24at%Al,Ni−22at%Al,Ni−18at%Al)の合金を特許第3374173号に記載された方法に従って一方向凝固法により作製し、冷間圧延法で厚さ30−35μmの箔を作製した。
作製した各組成の箔をアルカリ表面処理せず、そのまま幅4mm、長さ220mmに切出し、直径6−7mmの渦巻状円筒に成形する。これらの円筒試料を触媒反応装置(固定床流通式装置)で240℃、1時間水素還元処理を行った後、メタノールを原料に、常圧、240℃、260℃、280℃、300℃、320℃、340℃、360℃、400℃、440℃、480℃、520℃の各反応温度で触媒活性評価試験を行った。その結果を図4−図7の黒三角印(Ni−18at%Al)、黒四角印(Ni−22at%Al)、黒丸印(Ni−24at%Al)に示した。図4に示したように、すべての組成の箔に対し、水素発生速度(ml・m−2・min−1)(毎平方メートル箔触媒表面の上で、毎分間生成した水素の体積)は400℃以上の温度になると、温度の上昇に伴い、増大する。その中、組成Ni−22at%Alの箔が最も水素発生速度が大きく、最も優れた触媒活性を示すことが分かった。図5−図7は水素以外のガス、CO、CO2、CH4の発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した結果である。各組成の箔とも、主にCOが生成していることが分かった。この結果、Ni3Al箔はアルカリ表面処理しなくても、400℃以上の温度で、メタノールの分解反応(CH3OH→CO+2H2)、即ち水素発生反応に触媒活性があることが分かった。
[実施例5]
実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を20%のNaOH水溶液で、処理温度90−95℃、1時間のアルカリ表面処理した後、前項と同じ条件で触媒活性評価試験を行った。図8は測定した各反応温度でのH2、CO、CO2、CH4の発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した結果である。比較のため、アルカリ表面処理前の同じ組成の箔のH2とCO発生速度の結果も一緒に示した。アルカリ表面処理した箔は320℃からH2とCOの発生速度が増加し始め、メタノールの分解反応に触媒活性があることが分かった。この結果、アルカリ表面処理は水素発生反応温度を低下させる効果があることが分かった。
[実施例6]
実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を用い、常圧、520℃で65時間、メタノール分解反応を続け、箔状のNi3Alの触媒活性の経時変化を調べた。図9は測定したH2、CO、CO2、CH4の発生速度(ml・m−2・min−1)を反応時間の関数として示した結果である。65時間まで反応しても、H2の生成速度は減少することなく、触媒活性が劣化しないことが分かった。
[実施例7]
実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を用いてメタノール分解反応に対しての触媒活性の経時変化を調べた。図10は360℃、440℃、520℃で反応させたときのメタノールの転化率を測定した結果である。反応温度および反応時間の上昇に伴い、転化率が増加しているのが分かる。特に520℃の場合、反応初期段階で反応時間の増加に伴い、メタノールの転化率が急に増加しており、一定の反応時間後、転化率が95%以上になり安定している。
図11は、520℃でメタノール分解反応したときの箔の表面形態のSEM観察結果で、(a)は反応前、(b)は1時間反応後、(c)は2時間反応後、(d)は7時間反応後のものである。この図によれば、2時間反応すると、金属微粒子を内包するカーボンナノファイバーが形成しはじめる。7時間反応すると、金属微粒子を内包するカーボンナノファイバー組織が発達する。
図12は、520℃で7時間反応した後、表面に生成した金属粒子を内包するカーボンナノファイバー組織のTEM観察結果である。
図13は、520℃で65時間反応した後の表面形態のSEM観察結果で、金属微粒子を内包するカーボンナノファイバー組織が粗大化することが分かる。
[実施例8]
実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を用い、440℃で65時間メタノール分解反応させた後の表面形態のSEM観察結果を図14に示す。箔の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバー組織が生成しているのが分かる。一方、360℃で65時間反応させた場合、箔の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバー組織が生成していないことが観察された。図15はこのSEM観察結果である。
[実施例9]
実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を520℃で7時間メタノール分解反応させて触媒活性化処理(pre−activation)した後、360℃でメタノール分解反応をおこないメタノールの転化率を測定した。この結果を図16中の黒丸印で示した。白丸印は触媒活性化処理していないNi3Al箔で、この箔よりも触媒活性化処理した箔の方が高い触媒活性が得られた。
また、X線回折(XRD)、X線光電子分光分析(XPS)、EDSなどの解析により、カーボンナノファイバーに内包する金属粒子はNiあるいはNi3Alであることが確認された。
図17は、Ni3Al箔のX線回折(XRD)の分析結果である。(a)は触媒活性化処理前(as cold rolled)と触媒活性化処理後(after pre−activation)の箔全体のXRD結果で、Ni3Alが確認された。(b)は触媒活性化処理後(after pre−activation)の箔表面に生成したポーラス組織のXRD結果で、NiとCが確認された。
<比較例1>
市販のラネーニッケル(50重量%Ni−50重量%Al)を上記実施例1,2と同じ方法で調製して、活性評価試験を行った。その結果を図1−図3中の黒三角印に示した。図1より、ラネーニッケル触媒の場合、300℃以下の温度では水素発生速度は温度の上昇に伴い増加するが、300℃以上の温度になると、水素発生速度は増加しなくなる。
<比較例2>
市販の純Ni箔(厚さ50μm)を上記の実施例4と同じ方法で触媒活性評価試験を行った。その結果を図4−図7中の白四角印に示した。図4に示すように、520℃までの反応温度では、純Ni箔の水素発生速度はNi3Al箔より著しく低いことが分かった。また、図5−図7においても、水素以外のガス、CO、CO2、CH4の発生速度がNi3Al箔より著しく低いことが分かった。Ni3Al箔の触媒活性が非常に優れていることは明らかである。
<比較例3>
市販の純Ni箔(厚さ50μm)を上記の実施例7と同じ方法で520℃での触媒活性の経時変化試験を行った。その結果を図18中の白丸印に示した。図中の黒丸印は実施例7におけるNi3Al箔の520℃での触媒活性の経時変化である。この結果から、純Ni箔の転化率はNi3Al箔より著しく低いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
この出願の発明によって、メタノールまたはメタノールと水の混合液を原料として水素含有ガスを製造する反応において、350℃以上の温度でも高活性、高選択性を持つ優れた金属間化合物Ni3Alからなるメタノール改質用触媒が提供され、自動車の燃料電池や小型、高効率の新型高温リアクター等への適用が期待でき、産業上においても有効に活用することができる。
上記のとおりのこの出願の第1の発明によって、メタノールまたはメタノールと水の混合液を原料として水素含有ガスを製造する反応において、350℃以上の高温度でも高活性、高選択性を有する、金属間化合物Ni3Al含有のメタノール改質用触媒が提供される。
第2の発明によれば、触媒は、金属間化合物のNi3Al以外の共存成分を特有の元素組成の範囲において含有してよく、このことによって、触媒の製造、調製が簡便かつ低コストで可能とされる。
また、第3の発明によれば、簡便な手段の採用によって粉末または粉粒状の触媒が得られ、メタノール改質反応への適用も容易となる。
第4の発明によれば、優れた高温特性を持つとともに、400℃以上の高温度でも高い触媒活性、高選択性を有し、高温長時間でも触媒活性が劣化しないメタノール改質用触媒が提供される。
また、第5および第6の発明によれば、触媒の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバーが形成されていることにより、より高い触媒活性を有するメタノール改質用触媒が提供される。
そして、第7の発明によれば、活性成分としての金属間化合物の表面活性化をはじめ、表面の形状、組成の改変が可能とされ、蝕媒活性が向上するとともに、より低い温度においても触媒活性を発現させることができる。
さらに、この出願の第8および第9の発明によれば、実際に350℃以上の高温度においても高い反応性でのメタノール改質反応によって効率的な水素製造が可能とされる。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【技術分野】
この出願の発明は、水素を製造するのに有用なメタノール改質用触媒とこれを用いたメタノール改質方法に関するものである。
【背景技術】
近年、水素は燃焼すると水しか発生せず、地球環境の保全という観点からクリーンなエネルギー媒体として期待されており、最近では、特に燃料電池の燃料として注目されている。このような燃料としての水素の製造方法としてはこれまでに様々なものが知られており、このうちの一つの方法として、メタノールの改質反応より製造する方法がある。メタノールは、そのものがバイオマス燃料等として利用可能とされているが、このメタノールの改質による水素生成がエネルギー効率の観点からも注目されているところである。
メタノールの改質による水素製造の反応方法は、吸熱反応であり、たとえば、燃料電池自動車のメタノール改質ガスエンジンでは、メタノールの改質反応に排気熱を利用して、エネルギーの利用効率を上げており、この場合の総合効率は、メタノールを直接燃焼させる場合に比べて、31−48%向上するとされている。
しかしながら、実際にメタノールの改質反応に排ガスを利用しようとすると、排ガス温度は200℃から700℃まで変化するため、耐熱性、高活性、耐摩耗性に優れ、長寿命、低コストな触媒の使用が必要となる。従来、メタノール改質用触媒としては、銅、クロム、亜鉛などの卑金属元素や、その酸化物などが一般的に用いられているが、これら従来の触媒は、メタノールの水蒸気改質反応において低温活性を示すものの、耐熱性に乏しいという問題点がある。また、アルミナなどの担体に白金などの貴金属元素やその酸化物などを担持した触媒も知られているが、これらの触媒はコストが高いという問題がある。
以上のような従来技術の状況において、この出願の発明者らは、メタノール改質用触媒として、降伏強度が正の温度依存性を示し(強度の逆温度依存性と呼ばれている)、優れた高温特性、耐摩耗性を持っている金属間化合物Ni3Alに着目した。金属間化合物Ni3Alは触媒用成形体として提案されているが(特許文献1)、メタノール改質用触媒としての高温下での適用については、未だほとんど検討されておらず、具体的に報告されていない。
【特許文献1】特開昭55−88856号公報
【発明の開示】
この出願の発明は以上のとおりの背景よりなされたものであって、メタノールまたはメタノールと水の混合液を原料として水素含有ガスを製造するメタノール改質用の触媒として有用であって、酎熱性、耐摩耗性に優れ、高温でも、高活性、高選択性を持つ低コストの新しいメタノール改質用触媒と、これを用いた新しいメタノールの改質方法を提供することを課題としている。
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、金属間化合物Ni3Alを含有することを特徴とするメタノール改質用触媒を提供する。
また、この出願の発明は、第2には、共存成分とともに金属間化合物Ni3Alを含有し、共存成分を含めた全体の元素組成(重量%)がNi77−95%、Al5−23%であることを特徴とするメタノール改質用触媒を提供し、第3には、インゴット溶製後の切削と機械研磨もしくはアトマイズ法により作製された粉末または粉粒であることを特徴とするメタノール改質用触媒を提供する。また、第4には、上記の第1,第2のメタノール改質用触媒は、一方向凝固法で作製したNi3Alの合金を用いて冷間圧延法により作製された冷間圧延箔であることを特徴とするメタノール改質用触媒を提供する。
また、この出願の発明は、第5には、上記のいずれかの触媒の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバーが形成されていることを特徴とするメタノール改質用触媒を提供し、第6には、金属微粒子は、NiおよびNi3Alのうち少なくともいずれかの金属からなる微粒子であることを特徴とするメタノール改質用触媒を提供する。
さらに、この出願の発明は、第7には、上記いずれかの触媒において、アルカリまたは酸処理されていることを特徴とするメタノール改質用触媒を提供する。
そして、この出願の発明は、第8には、上記いずれかの触媒を用いるメタノールの改質方法であって、メタノールまたはメタノールと水との混合液を前記触媒と接触させて水素を製造することを特徴とするメタノール改質方法を提供し、第9には、触媒をあらかじめ水素還元処理した後にメタノールまたはメタノールと水との混合液と接触させることを特徴とするメタノール改質方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
図1は、Ni3Alとラネーニッケルを用いてメタノール改質反応させる際、測定した水素発生速度(ml/min/g)を反応温度の関数として示した図である。
図2は、Ni3Alとラネーニッケルを用いてメタノール改質反応させる際、測定したCO発生速度(ml/min/g)を反応温度の関数として示した図である。
図3は、Ni3Alとラネーニッケルを用いてメタノール改質反応させる際、測定したCO2発生速度(ml/min/g)を反応温度の関数として示した図である。
図4は、実施例4で作製した各種組成のNi3Al箔と市販の純Ni箔を用いてメタノール分解反応させた時、測定した水素発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した図である。
図5は、実施例4で作製した各種組成のNi3Al箔と市販の純Ni箔を用いてメタノール分解反応させた時、測定したCO発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した図である。
図6は、実施例4で作製した各種組成のNi3Al箔と市販の純Ni箔を用いてメタノール分解反応させた時、測定したCO2発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した図である。
図7は、実施例4で作製した各種組成のNi3Al箔と市販の純Ni箔を用いてメタノール分解反応させた時、測定したCH4発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した図である。
図8は、アルカリ表面処理したNi3Al箔(組成Ni−24at%Al)とアルカリ表面処理前のNi3Al箔(組成Ni−24at%Al)を用いてメタノール分解反応させた時、測定した各反応温度でのH2、CO、CO2、CH4(アルカリ表面処理前のNi3Al箔についてはH2とCOのみ)の発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した図である。
図9は、実施例4で作製したNi3Al箔(組成Ni−24at%Al)を用いて520℃でメタノール分解反応させた時、測定したH2、CO、CO2、CH4の発生速度(ml・m−2・min−1)を反応時間の関数として示した図である。
図10は、実施例4で作製したNi3Al箔(組成Ni−24at%Al)を用いて、360℃、440℃、520℃でメタノール分解反応させた時のメタノールの転化率を測定した結果である。
図11は、520℃でメタノール分解反応したときの箔の表面形態のSEM観察結果で、(a)は反応前、(b)は1時間反応後、(c)は2時間反応後、(d)は7時間反応後のものである。
図12は、520℃で7時間反応した後、表面に生成した金属粒子を内包するカーボンナノファイバー組織のTEM観察結果である。
図13は、520℃で65時間反応した後の表面形態のSEM観察結果である。
図14は、実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を用い、440℃で65時間メタノール分解反応させた後の表面形態のSEM観察結果である。
図15は、360℃で65時間反応させた後の表面形態のSEM観察結果である。
図16は、実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を520℃で7時間メタノール分解反応して触媒活性化処理(pre−activation)した後、360℃でメタノール分解反応をおこなった時のメタノールの転化率を測定した結果である。
図17は、Ni3Al箔のX線回折(XRD)の分析結果である。(a)は触媒活性化処理前(as cold rolled)と触媒活性化処理後(after pre−activation)の箔全体のXRD結果で、(b)は触媒活性化処理後(after pre−activation)の箔表面に生成したポーラス組織のXRD結果である。
図18は、市販の純Ni箔(厚さ50μm)を実施例7と同じ方法で520℃での触媒活性の経時変化試験を行い、メタノールの転化率を測定した結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
この出願の発明においては、金属間化合物Ni3Alを活性成分とするものであるが、単独相としての組成範囲はNi85−88重量%、Al12−15重量%である。このNi3Al金属間化合物を含有する触媒では、他種のものを共存させていてもよく、たとえばNiAl、Ni5Al3、Ni等が共存されていてもよい。これらの成分の存在が許容されることは、触媒の製造、調製が容易とされるだけでなく、触媒の組成や形状調節、そして活性化処理にとっても好適でもある。これらの他種成分を共存する場合には、全体としての組成範囲はNi77−95重量%、Al15−23重量%とすることが好適に考慮される。
また、この出願の発明では、金属間化合物Ni3Alの表面の酸化物膜などを取り除くと共に、Al、Niが溶け出すことによって表面形状、組成を制御し、触媒活性を高めるために、アルカリや酸で処理してもよい。アルカリ処理は、一般的には、無機または有機の塩基の水溶液もしくは有機溶媒の溶液を用いることができ、処理温度が室温〜100℃程度の範囲で処理することができる。また酸処理には、無機酸または有機酸、それらの水溶液や有機溶媒溶液を用いることができる。処理温度としては、室温〜50℃程度までとすることが一般的に考慮される。上記のアルカリ処理の場合には、Alだけが溶出し、Niが殆んど溶出しない。たとえばNaOH水溶液を用いる場合には、その濃度は10%以上、望ましくは20〜30%であり、また処理温度60−100℃、処理時間1時間以上が望ましい。酸処理の場合、AlとNiとも溶出するので、高濃度、長時間処理すると、金属間化合物Ni3Alの損失が増えることに注意する必要がある。たとえば、HCl溶液の場合には、濃度20%以下、処理温度20℃付近、処理時間1時間以下が望ましい。HNO3溶液の場合には、濃度5%以下、処理温度20℃付近、処理時間1時間以下が望ましい。
また、この出願の発明のメタノール改質用触媒は、様々な方法によって製造、調製することができる。たとえば粉末または粉粒体として製造、調製する場合には、原料金属元素をインゴットに製造し、これを切削したものや、さらに機械的研磨を施したもの、あるいは溶解した金属のアトマイズ法による方法等を採用することができる。もちろん所要の形状に成形したものとすることもできる。さらには、セラミックスや他の金属、それらの複合体との組合わせとして触媒を構成してもよいことは言うまでもない。Ni3Alの活性を阻害しない限り、公知のものをはじめとする他のメタノール改質用触媒を併用してもよい。
以上のようなこの出願の発明の触媒を粉末、もしくは粉粒体として用いる場合には、たとえばその平均粒径としては150μm以下程度の範囲のものが例示される。より好ましくは32μm以下のものが好適に考慮される。その比表面積については、たとえば、アルカリまたは酸処理前の場合に2.5m2/g以下の範囲のものが、処理後の場合には、2.5〜6m2/gの範囲のものが例示される。
さらに、この出願の発明のメタノール改質用触媒は、一方向凝固法で作製したNi3Alの合金を用いて冷間圧延法により作製された冷間圧延箔であってもよい。この冷間圧延箔は、たとえば特許第3374173号に記載された方法で製造される。すなわち、Niを主成分とし、Alを含む化学組成の合金をアーク溶解して原料棒を作製し、この原料棒を溶融凝固で柱状晶に育成して一方向凝固材を作製し、次いでこの一方向凝固材を切り出して、板状体を作製し、この板状体を室温で冷間圧延加工して冷間圧延箔とするものである。さらに必要に応じて、10−3Paよりも高い真空度において、800℃以上の温度で、20分以上焼鈍し、冷間圧延加工してもよい。この冷間圧延箔の厚さとしては、製造上及び触媒活性の効果の点から500μm以下であることが好ましい。このようにして作製されたメタノール改質用触媒は、優れた高温特性を持つものであり、400℃以上の温度で高い触媒活性、高選択性を有し、高温長時間でも触媒活性が劣化しないものである。また、上記のアルカリ処理をこの冷間圧延箔に施してもよい。この場合には、より低い温度でも触媒活性を発現させることができる。したがって、このメタノール改質用触媒は、高温化学反応容器材料と触媒材料の2役を果たすことが可能で、小型、高効率の新型高温リアクターとしての適用が期待できる。
なお、メタノール改質反応の上限温度については特に限定的ではないが、プロセスの実際面、触媒能等の点から、一般的には600℃程度までとすることが考慮される。
また、この出願の発明のメタノール改質用触媒は、その触媒の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバーのポーラス構造が形成されていてもよい。このポーラス構造はメタノール改質触媒反応の進行に伴って形成され、例えば、触媒反応温度が400℃以上のとき、より好適には400℃〜580℃のときに形成される。触媒反応温度が400℃未満であってもポーラス構造が形成され、後述する触媒活性化処理において効果的な場合がある。なお、ポーラス構造形成のための反応時間としては一般的には1〜70時間程度である。そして、上記のポーラス構造はより高い触媒活性を実現することができるため、このような構造を有する触媒はその触媒特性を飛躍的に向上させることができる。したがって、触媒を用いてメタノールを改質する際に、あらかじめ触媒の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバーのポーラス構造を形成させておく、すなわち触媒活性化処理を行うことによって、効率よくメタノールを改質することができる。金属微粒子としては、NiおよびNi3Alのうち少なくともいずれかの金属からなる微粒子であってもよい。また、金属微粒子の形状としては球状もしくは不定形であってもよく、その大きさは粒径が10nm〜10μm、好ましくは10nm〜200nmのものが考慮される。カーボンナノファイバーは、例えばその直径が10nm〜200nm、長さが100nm〜1mmのものが考慮される。
この出願の発明の触媒を用いてのメタノール改質反応による水素の製造においては、メタノールまたはメタノールと水との混合液を用いることができる。メタノールと触媒との使用割合については、一般的にはたとえば空間速度(LHSV)は15〜35h−1の範囲とすることが、メタノールと水を用いる場合には、両者の割合は、モル比として、メタノール:水=1:0.1〜5程度とすることが好適に考慮される。また、改質反応は、固定床方式や流動床方式が考慮される。
反応温度としては、240℃〜520℃の範囲がより好適である。
そこで、以下の実施例により、この出願の発明の実施の形態についてさらに説明する。
もちろん、以下の例により、この出願の発明が限定されることはない。
【実施例】
[実施例1]
以下の二種類のNi3Al粉末試料を作製した。
(a)回転ディスクアトマイズ法で組成86.91重量%Ni−13.09重量%AlのNi3Al粉末試料を作製した。BET法を用いて比表面積を測定した結果、粒子直径32μm以下の粉末の比表面積は1.3m2/g;粒子直径32−75μmの粉末の比表面積は0.4m2/g;粒子直径75−150μmの粉末の比表面積は0.1m2/gである。
(b)組成87.32重量%Ni−12.67重量%AlのNi3Al合金インゴットを溶解炉で作製した。インゴットから機械加工で切屑を作り、これらの切屑を機械研磨で150μm以下の粉末にした。BET法を用いて比表面積を測定した結果、このように作製したNi3Al粉末の比表面積は2.3m2/gであることが分かった。
次に、ここで作製した粉末に対して以下の各アルカリ処理と酸処理を行った。
(1)機械研磨で作製したNi3Al粉末3gを120gの20%NaOH水溶液に加え、65−70℃の温度で攪拌しながら5時間放置した。その後アルカリ水溶液をデカンテーションにより除去した。沈殿物を適量な蒸留水で洗浄し、洗液をデカンテーションにより除去した。この操作を洗液が中性になるまで繰返した。得られた沈殿生成物を脱水した。脱水後50℃で一晩乾燥して、Ni3Al触媒を調製した。ICP発光分光分析の結果、このNaHO水溶液により調製したNi3Al中のAl量の約14%(重量比)溶出し除去されたことが分かった。BET法による比表面積測定の結果、以上の処理で調製した触媒の比表面積が5.1m2/gであったことが分かった。
(2)機械研磨で作製したNi3Al粉末1.3gを80gの30%NaOH水溶液に加え、60−65℃の温度で攪拌しながら3.5時間放置した。ICP発光分光分析の結果、このNaHO水溶液により調製したNi3Al中のAl量の約10%(重量比)を溶出し除去されたことが分かった。BET法による測定した結果、調製した粉末の比表面積は4.3m2/gである。
(3)回転ディスクアトマイズ法で作製した粒子直径32−75μm以下のNi3Al粉末3gを120gの20%HClの溶液に加え、室温で攪拌しながら3時間放置した。BET法で測定した結果、調製した粉末の比表面積は1.1m2/gであることが分かった。
(4)回転ディスクアトマイズ法で作製した粒子直径32−75μmのNi3Al粉末3gを120gの5%HNO3溶液に加え、室温で攪拌しながら3時間放置した。BET法で測定した結果、調製した粉末の比表面積は3.6m2/gであることが分かった。
以上の表面処理によりBET法にて測定した比表面積(m2/g)の結果を表1に示す。(“−”は測定していないことを表す)
表1より、アルカリ処理と酸処理ともNi3Alの比表面積が増加する効果があること
がわかる。
[実施例2]
上記の実施例1において(b)の機械研磨で作製した粉末試料0.2gを触媒として、触媒反応装置(固定床流通式反応装置)で240℃1時間水素還元処理を行った後、メタノールと水の混合液(CH3OH:H2O=1mol:1.5mol)を原料に、常圧、240℃、260℃、280℃、300℃、320℃、340℃、360℃の各反応温度で活性評価試験を行った。その結果を図1−図3中の黒丸印に示した。図1に示したように、反応の水素発生速度(ml/min/g)は温度の上昇に伴い増大するが、全体的に低い。図2と図3はそれぞれ測定した各反応温度でのCOとCO2発生速度(ml/min/g)を反応温度の関数として示した結果である。Ni3Al触媒の場合、主にCOが生成していることが分かった。これによって、Ni3Al触媒はメタノールの分解反応(CH3OH→CO+2H2)、すなわち水素発生反応に活性があることがわかる。
[実施例3]
上記実施例1での(b)の機械研磨で作製した粉末試料を(1)の方法により20%NaOH水溶液で処理調製した触媒0.2gを240℃で1時間水素還元処理を行った後、活性評価試験を行った。その結果を図1−図3中の黒四角印に示した。図1よりアルカリ処理したNi3Alは352℃で351ml/min/gの大きな水素発生速度が得られることが分かった。しかもアルカリ処理したNi3Al触媒はさらに温度の上昇に伴いこの水素発生速度は増加するという優れた高温活性を示す。また、図2と図3より、主にCOが生成していることが分かった。これによって、アルカリ処理によりNi3Alの触媒活性が向上することがわかる。
[実施例4]
各組成(Ni−24at%Al,Ni−22at%Al,Ni−18at%Al)の合金を特許第3374173号に記載された方法に従って一方向凝固法により作製し、冷間圧延法で厚さ30−35μmの箔を作製した。
作製した各組成の箔をアルカリ表面処理せず、そのまま幅4mm、長さ220mmに切出し、直径6−7mmの渦巻状円筒に成形する。これらの円筒試料を触媒反応装置(固定床流通式装置)で240℃、1時間水素還元処理を行った後、メタノールを原料に、常圧、240℃、260℃、280℃、300℃、320℃、340℃、360℃、400℃、440℃、480℃、520℃の各反応温度で触媒活性評価試験を行った。その結果を図4−図7の黒三角印(Ni−18at%Al)、黒四角印(Ni−22at%Al)、黒丸印(Ni−24at%Al)に示した。図4に示したように、すべての組成の箔に対し、水素発生速度(ml・m−2・min−1)(毎平方メートル箔触媒表面の上で、毎分間生成した水素の体積)は400℃以上の温度になると、温度の上昇に伴い、増大する。その中、組成Ni−22at%Alの箔が最も水素発生速度が大きく、最も優れた触媒活性を示すことが分かった。図5−図7は水素以外のガス、CO、CO2、CH4の発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した結果である。各組成の箔とも、主にCOが生成していることが分かった。この結果、Ni3Al箔はアルカリ表面処理しなくても、400℃以上の温度で、メタノールの分解反応(CH3OH→CO+2H2)、即ち水素発生反応に触媒活性があることが分かった。
[実施例5]
実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を20%のNaOH水溶液で、処理温度90−95℃、1時間のアルカリ表面処理した後、前項と同じ条件で触媒活性評価試験を行った。図8は測定した各反応温度でのH2、CO、CO2、CH4の発生速度(ml・m−2・min−1)を反応温度の関数として示した結果である。比較のため、アルカリ表面処理前の同じ組成の箔のH2とCO発生速度の結果も一緒に示した。アルカリ表面処理した箔は320℃からH2とCOの発生速度が増加し始め、メタノールの分解反応に触媒活性があることが分かった。この結果、アルカリ表面処理は水素発生反応温度を低下させる効果があることが分かった。
[実施例6]
実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を用い、常圧、520℃で65時間、メタノール分解反応を続け、箔状のNi3Alの触媒活性の経時変化を調べた。図9は測定したH2、CO、CO2、CH4の発生速度(ml・m−2・min−1)を反応時間の関数として示した結果である。65時間まで反応しても、H2の生成速度は減少することなく、触媒活性が劣化しないことが分かった。
[実施例7]
実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を用いてメタノール分解反応に対しての触媒活性の経時変化を調べた。図10は360℃、440℃、520℃で反応させたときのメタノールの転化率を測定した結果である。反応温度および反応時間の上昇に伴い、転化率が増加しているのが分かる。特に520℃の場合、反応初期段階で反応時間の増加に伴い、メタノールの転化率が急に増加しており、一定の反応時間後、転化率が95%以上になり安定している。
図11は、520℃でメタノール分解反応したときの箔の表面形態のSEM観察結果で、(a)は反応前、(b)は1時間反応後、(c)は2時間反応後、(d)は7時間反応後のものである。この図によれば、2時間反応すると、金属微粒子を内包するカーボンナノファイバーが形成しはじめる。7時間反応すると、金属微粒子を内包するカーボンナノファイバー組織が発達する。
図12は、520℃で7時間反応した後、表面に生成した金属粒子を内包するカーボンナノファイバー組織のTEM観察結果である。
図13は、520℃で65時間反応した後の表面形態のSEM観察結果で、金属微粒子を内包するカーボンナノファイバー組織が粗大化することが分かる。
[実施例8]
実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を用い、440℃で65時間メタノール分解反応させた後の表面形態のSEM観察結果を図14に示す。箔の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバー組織が生成しているのが分かる。一方、360℃で65時間反応させた場合、箔の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバー組織が生成していないことが観察された。図15はこのSEM観察結果である。
[実施例9]
実施例4で作製した箔(組成Ni−24at%Al)を520℃で7時間メタノール分解反応させて触媒活性化処理(pre−activation)した後、360℃でメタノール分解反応をおこないメタノールの転化率を測定した。この結果を図16中の黒丸印で示した。白丸印は触媒活性化処理していないNi3Al箔で、この箔よりも触媒活性化処理した箔の方が高い触媒活性が得られた。
また、X線回折(XRD)、X線光電子分光分析(XPS)、EDSなどの解析により、カーボンナノファイバーに内包する金属粒子はNiあるいはNi3Alであることが確認された。
図17は、Ni3Al箔のX線回折(XRD)の分析結果である。(a)は触媒活性化処理前(as cold rolled)と触媒活性化処理後(after pre−activation)の箔全体のXRD結果で、Ni3Alが確認された。(b)は触媒活性化処理後(after pre−activation)の箔表面に生成したポーラス組織のXRD結果で、NiとCが確認された。
<比較例1>
市販のラネーニッケル(50重量%Ni−50重量%Al)を上記実施例1,2と同じ方法で調製して、活性評価試験を行った。その結果を図1−図3中の黒三角印に示した。図1より、ラネーニッケル触媒の場合、300℃以下の温度では水素発生速度は温度の上昇に伴い増加するが、300℃以上の温度になると、水素発生速度は増加しなくなる。
<比較例2>
市販の純Ni箔(厚さ50μm)を上記の実施例4と同じ方法で触媒活性評価試験を行った。その結果を図4−図7中の白四角印に示した。図4に示すように、520℃までの反応温度では、純Ni箔の水素発生速度はNi3Al箔より著しく低いことが分かった。また、図5−図7においても、水素以外のガス、CO、CO2、CH4の発生速度がNi3Al箔より著しく低いことが分かった。Ni3Al箔の触媒活性が非常に優れていることは明らかである。
<比較例3>
市販の純Ni箔(厚さ50μm)を上記の実施例7と同じ方法で520℃での触媒活性の経時変化試験を行った。その結果を図18中の白丸印に示した。図中の黒丸印は実施例7におけるNi3Al箔の520℃での触媒活性の経時変化である。この結果から、純Ni箔の転化率はNi3Al箔より著しく低いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
この出願の発明によって、メタノールまたはメタノールと水の混合液を原料として水素含有ガスを製造する反応において、350℃以上の温度でも高活性、高選択性を持つ優れた金属間化合物Ni3Alからなるメタノール改質用触媒が提供され、自動車の燃料電池や小型、高効率の新型高温リアクター等への適用が期待でき、産業上においても有効に活用することができる。
上記のとおりのこの出願の第1の発明によって、メタノールまたはメタノールと水の混合液を原料として水素含有ガスを製造する反応において、350℃以上の高温度でも高活性、高選択性を有する、金属間化合物Ni3Al含有のメタノール改質用触媒が提供される。
第2の発明によれば、触媒は、金属間化合物のNi3Al以外の共存成分を特有の元素組成の範囲において含有してよく、このことによって、触媒の製造、調製が簡便かつ低コストで可能とされる。
また、第3の発明によれば、簡便な手段の採用によって粉末または粉粒状の触媒が得られ、メタノール改質反応への適用も容易となる。
第4の発明によれば、優れた高温特性を持つとともに、400℃以上の高温度でも高い触媒活性、高選択性を有し、高温長時間でも触媒活性が劣化しないメタノール改質用触媒が提供される。
また、第5および第6の発明によれば、触媒の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバーが形成されていることにより、より高い触媒活性を有するメタノール改質用触媒が提供される。
そして、第7の発明によれば、活性成分としての金属間化合物の表面活性化をはじめ、表面の形状、組成の改変が可能とされ、蝕媒活性が向上するとともに、より低い温度においても触媒活性を発現させることができる。
さらに、この出願の第8および第9の発明によれば、実際に350℃以上の高温度においても高い反応性でのメタノール改質反応によって効率的な水素製造が可能とされる。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属間化合物Ni3Alを含有することを特徴とするメタノール改質用触媒。
【請求項2】
共存成分とともに金属間化合物Ni3Alを含有し、共存成分を含めた全体の元素組成(重量%)がNi77−95%、Al5−23%であることを特徴とする請求項1のメタノール改質用触媒。
【請求項3】
インゴット溶製後の切削と機械研磨もしくはアトマイズ法により作製された粉末または粉粒であることを特徴とする請求項1または2のメタノール改質用触媒。
【請求項4】
請求項1または2に記載のメタノール改質用触媒は、一方向凝固法で作製したNi3Alの合金を用いて冷間圧延法により作製された冷間圧延箔であることを特徴とするメタノール改質用触媒。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの触媒の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバーが形成されていることを特徴とするメタノール改質用触媒。
【請求項6】
金属微粒子は、NiおよびNi3Alのうち少なくともいずれかの金属からなる微粒子であることを特徴とする請求項5のメタノール改質用触媒。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかの触媒において、アルカリまたは酸処理されていることを特徴とするメタノール改質用触媒。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの触媒を用いるメタノールの改質方法であって、メタノールまたはメタノールと水との混合液を前記触媒と接触させて水素を製造することを特徴とするメタノール改質方法。
【請求項9】
触媒をあらかじめ水素還元処理した後にメタノールまたはメタノールと水との混合液と接触させることを特徴とする請求項8のメタノール改質方法。
【請求項1】
金属間化合物Ni3Alを含有することを特徴とするメタノール改質用触媒。
【請求項2】
共存成分とともに金属間化合物Ni3Alを含有し、共存成分を含めた全体の元素組成(重量%)がNi77−95%、Al5−23%であることを特徴とする請求項1のメタノール改質用触媒。
【請求項3】
インゴット溶製後の切削と機械研磨もしくはアトマイズ法により作製された粉末または粉粒であることを特徴とする請求項1または2のメタノール改質用触媒。
【請求項4】
請求項1または2に記載のメタノール改質用触媒は、一方向凝固法で作製したNi3Alの合金を用いて冷間圧延法により作製された冷間圧延箔であることを特徴とするメタノール改質用触媒。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの触媒の表面に金属微粒子を内包するカーボンナノファイバーが形成されていることを特徴とするメタノール改質用触媒。
【請求項6】
金属微粒子は、NiおよびNi3Alのうち少なくともいずれかの金属からなる微粒子であることを特徴とする請求項5のメタノール改質用触媒。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかの触媒において、アルカリまたは酸処理されていることを特徴とするメタノール改質用触媒。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの触媒を用いるメタノールの改質方法であって、メタノールまたはメタノールと水との混合液を前記触媒と接触させて水素を製造することを特徴とするメタノール改質方法。
【請求項9】
触媒をあらかじめ水素還元処理した後にメタノールまたはメタノールと水との混合液と接触させることを特徴とする請求項8のメタノール改質方法。
【国際公開番号】WO2005/072865
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517584(P2005−517584)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001861
【国際出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2005/001861
【国際出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
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