説明

メタノール透過性が低下したカチオン交換膜の製造方法

本発明は、ポリアミン、ポリビニルアミンおよびそれらの誘導体よりなる群から選択されるポリマーが内部に吸収されたイオノマーを有する固体ポリマー電解質膜の製造方法であって、含浸後に膜が照射される方法を提供する。また本発明は、この固体ポリマー電解質膜を有する触媒コーティング膜および燃料電池を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体ポリマー電解質膜を利用する直接メタノール燃料電池に関し、特に特定の固体ポリマー電解質膜組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
直接メタノール燃料電池(DMFC)、すなわち、アノードに液体または蒸気メタノールが直接供給される燃料電池は、かなりの長期にわたって開発中であり、そして当該技術分野でよく知られている。例えば、非特許文献1を参照のこと。直接メタノールまたは他の燃料電池において1つの本質的な構成部分は、膜セパレーターである。
【0003】
イオンペンダント基、特にデラウェア州、ウィルミントン(Wilmington DE)のイーアイ デュポン ドゥ ヌムール アンド カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)から入手可能なナフィオン(Nafion)(登録商標)ペルフルオロイオノマー膜のようなフッ素化イオノマーを含有する有機ポリマーからイオン伝導ポリマー電解質膜およびゲルを形成することは、長い間、当該技術分野で知られていた。
【0004】
セパレーターとしてイオノマーポリマー電解質膜を利用するDMFCは高いメタノールクロスオーバー、すなわち、膜を通しての拡散および電気浸透抗力によるアノードからカソードへのメタノールの輸送を示すことが知られている。このようなメタノールクロスオーバーは、本質的に燃料漏れを表しており、これによって燃料電池の効率が著しく低下する。加えて、カソードでのメタノールの存在は、カソード反応動力学を干渉し、メタノール自体の酸化を妨害し、また十分な容積でカソードを浸し、そして燃料電池を完全に停止させる。メタノールクロスオーバーは、主に当該技術分野のイオノマー膜におけるメタノールの高い溶解性の結果として生じる。
【0005】
リー(Li)らの特許文献1には、バッテリー中のポリマー電解質が開示されている。約1:1の濃度比でのポリベンゾイミダゾールとナフィオン(Nafion)(登録商標)および他のポリマーとのブレンドが開示されている。ポリベンゾイミダゾールとポリアクリルアミドとのブレンドが好ましい。ポリビニルピロリドンおよびポリエチレンイミンも開示されている。
【0006】
ハワード(Howard)らの特許文献2は、ポリアミン、ポリビニルアミンおよびそれらの誘導体よりなる群から選択される非フッ素化、非イオノマーポリマーがその内部に吸収されたフッ素化イオノマーを含んでなる固体ポリマー電解質膜を提供する。しかしながら、ポリアミンが親膜構造において強固に固定されていない場合、場合によってはポリアミンが膜から浸出することがある。
【0007】
非特許文献2は、過酸化水素または鉄(Fe3+)酸化剤を使用するその場重合によるポリピロールが含浸されたペルフルオロスルホン酸膜を開示する。膜は直接メタノール燃料電池でのメタノールクロスオーバーを低下させるが、またイオン抵抗も増加させた。
【0008】
導電性に関して可能な限り少ない犠牲を伴って、イオノマー膜におけるメタノールクロスオーバーを低下させる方法を確認することは、当該技術分野において著しく関心が持たれている。
【0009】
【特許文献1】国際公開第98/42037号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/034529号パンフレット
【非特許文献1】バルドフ(Baldauf)ら、ジャーナル オブ パワー ソースズ(J.Power Sources)、第84巻、(1999)、第161〜166ページ
【非特許文献2】ピックアップ(Pickup)ら、ジャーナル オブ ジ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of the Electrochemical Society)(2003)、150(10)、C735〜C739
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリアミン用溶媒を含んでなる溶液によってイオノマーのフィルムを含浸させ、そして前記フィルムを照射することを含んでなる固体ポリマー電解質膜の製造方法に関する。
【0011】
本発明の一態様において、イオノマーはフッ素化イオノマーである。
【0012】
本発明のもう1つの態様は、上記方法によって製造された膜である。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、上記方法によって製造された膜の表面上に形成された導電性で触媒作用的に活性の粒子を含有する層を含んでなる膜および電極アセンブリ、上記方法によって製造された膜を含んでなる電気化学的電池、ならびに上記方法によって製造された膜を含んでなる燃料電池を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、適切な溶媒中に溶解されたポリアミンを含んでなる溶液によってイオノマーのフィルムを含浸させ、そして前記フィルムを照射することを含んでなる固体ポリマー電解質膜の製造方法に関する。典型的に全体の照射線量は1〜150KGyの範囲である。含浸の前ではなく後に膜の内部に、可能な限り架橋によってポリアミンは固定化され、それによってポリアミンのイオノマーへの保持が改善される。この方法によって製造された膜は、電気化学的電池、特に燃料電池で有用であり、またあるとすれば伝導性において、従って出力密度において犠牲が比較的大きくない状態で直接メタノール燃料電池においてメタノール透過性の低下をもたらすことが見出されている。
【0015】
いかなる直接メタノール燃料電池も当該技術分野で既知であり、本発明ではイオノマーポリマー電解質膜を備えた種類のものが利用されてよい。当該技術分野のイオノマー膜を、本発明の教示によって製造されたイオノマーを含んでなる膜で置換することによって、本発明の利点が認められる。
【0016】
非電気化学的膜の応用で、多層フィルムまたはシート構造における接着性または他の機能性層として、また電気化学の領域外であるポリマーフィルムおよびシートに関する他の古典的な応用において、フィルムまたはシート構造が包装時に実用性を有することを当業者は理解するであろう。本発明の目的に関して、「膜」という用語は、燃料電池の分野での一般的に使用される専門用語であり、より一般的に使用されるが同一物品を指す専門用語である「フィルム」または「シート」という用語と同義である。
【0017】
ポリアミン
本発明の目的に関して、「ポリアミン」という用語は、ポリアルキレンイミンのように主鎖中に組み込まれたか、またはポリビニルアミンのようにペンダント基に組み込まれたモノマー単位にアミン官能性を有するポリマーを指す。アミン官能性を有するペンダント基は、直鎖であっても環状であってもよく、また他の官能基によって置換されてもよい。「ポリアミン」という用語は、ポリアミン、ポリアミド、ポリイミン、ポリイミドおよびそれらの誘導体、ならびにポリビニルアミン、アミド、イミンおよびイミドおよびそれらの誘導体として様々に知られるポリマーを包含するために利用されてよい。「それらの誘導体」とは、C−N(−R)C[式中、Rは、R'−C(=O)−;R'SO−;であり、そしてRまたはR’は、1〜16個の炭素原子、特に1〜5個の炭素原子のアルキル、および6〜20個の炭素原子、特に6〜8個の炭素原子のアリールである]を意味する。本発明の一実施形態において、ポリアミンは、ポリビニルピロリドン(PVP)またはポリエチレンイミン(PEI)である。いかなるポリマー分子量も本発明で使用され得、低分子量オリゴマーも含まれる。一実施形態において、ポリマーは少なくとも2000の分子量を有する。
【0018】
イオノマー
当該技術分野の慣例に従って、本発明では、「イオノマー」という用語は、末端にイオン基を有するペンダント基を有するポリマー材料を指すために使用される。末端イオンの基は、燃料電池の製作または製造の中間段階で生じ得るような酸またはその塩であってよい。電気化学的電池の適切な操作では、イオノマーが酸型であることが要求され得る。従って、照射の前または後にポリマーは加水分解され、そして酸型へと酸交換されてよい。
【0019】
本発明の実施に関して適切なイオノマーは、膜を横切ってプロトンを輸送することが可能なカチオン交換基を有する。カチオン交換基は、スルホン酸、カルボン酸、ボロン酸、ホスホン酸、イミド、メチド、スルホンイミドおよびスルホンアミド基よりなる群から選択可能な酸である。典型的に、イオノマーはスルホン酸および/またはカルボン酸基を有する。カチオン交換基が導入されたトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、スチレン−ジビニルベンゼン、アルファ、ベータ、ベータ−トリフルオロスチレン等のイオノマー誘導体を含む様々な既知のカチオン交換イオノマーを使用することができる。本発明の実施に関して有用なアルファ、ベータ、ベータ−トリフルオロスチレンポリマーは、米国特許第5,422,411号明細書に開示される。
【0020】
一実施形態において、イオノマーはフッ素化されている。「フッ素化イオノマー」という用語は、末端イオン基、好ましくはスルホン酸またはスルホン酸塩を有するフッ素化ペンダント基を有するモノマー単位を少なくとも8モル%、特に少なくとも14モル%有するイオノマーを意味する。本発明での使用に適切なイオノマーへの「ポリマー前駆体」は、好ましくはフッ化スルホニル末端基を含んでなり、これは当該技術分野で周知の方法に従ってアルカリ条件下で加水分解を受けた時、スルホン酸塩へと変換され、そしてさらにスルホン酸へと酸交換される。
【0021】
本発明に関して適切であり、また広範囲に商業的に使用されている周知のいわゆるフッ素化イオノマー膜は、デラウェア州、ウィルミントン(Wilmington DE)のイーアイ デュポン ドゥ ヌムール アンド カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)から入手可能なナフィオン(Nafion)(登録商標)ペルフルオロイオノマー膜である。ナフィオン(Nafion)(登録商標)は、米国特許第3,282,875号明細書に開示されるように、テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)との共重合によって形成される。他の周知のペルフルオロイオノマー膜は、米国特許第4,358,545号明細書に開示されるようなTFEとペルフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド)とのコポリマーである。そのように形成されたコポリマーは、米国特許第3,282,875号明細書に開示されるように加水分解によって、典型的に適切な水性塩基に暴露することによってイオノマー型へと変換する。リチウム、ナトリウムおよびカリウムは、上記イオノマーのための適切なカチオンとして当該技術分野で全て周知である。
【0022】
本発明のために適切である当該技術分野で既知の他のフッ素化イオノマー膜は、国際公開第99/52954号パンフレット、国際公開第00/24709号パンフレット、国際公開第00/77057号パンフレットおよび米国特許第6,025,092号明細書に記載されるものである。
【0023】
本発明の一実施形態において、フッ素化イオノマーは、高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマーである。「高度にフッ素化された」という用語は、ハロゲン原子と水素原子の総数の少なくとも90%がフッ素原子であることを意味する。もう1つの実施形態において、ポリマーは過フッ素化されている。これは、主鎖のハロゲン原子と水素原子の総数の100%がフッ素原子であることを意味する。
【0024】
本発明のもう1つの実施形態において、高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマーは、ポリマー主鎖と、主鎖に結合し、フッ化スルホニル基(−SOF)を有する繰り返し側鎖とを含んでなる。例えば、第1のフッ素化ビニルモノマーと、フッ化スルホニル基を有する第2のフッ素化ビニルモノマーとのコポリマーを使用することが好ましい。可能な第1のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)およびそれらの混合物が挙げられる。可能な第2のモノマーとしては、フッ化スルホニル基を有する様々なフッ素化ビニルエーテルが挙げられる。
【0025】
本発明で使用するためのもう1つの実施形態としては、式−(OCFCFR−OCFCFR'SOF(式中、RおよびR'は、独立して、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、そしてa=0、1または2である)によって表される高度にフッ素化された炭素主鎖および側鎖を有する高度にフッ素化されたポリマーが挙げられる。他の実施形態としては、例えば、米国特許第4,358,545号明細書および米国特許第4,940,525号明細書に開示されるポリマーが挙げられる。このポリマーは、式−O−CFCF(CF)−O−CFCFSOFによって表されるペルフルオロ炭素主鎖および側鎖も含み得る。この種類のポリマーは、米国特許第3,282,875号明細書に開示される。
【0026】
フッ化スルホニル型の高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマーは熱可塑性であり、そして従来の溶融押出技術による方法で使用される膜またはフィルムを製造することが有利である。適切な溶媒を使用する溶液フィルムキャスティング技術も使用可能である。
【0027】
所望であれば、膜は、異なるイオン交換容量を有する2種の高度にフッ素化されたポリマーのような2種のポリマーのラミネートであり得る。かかるフィルムは、2枚の膜を積層することによって、または2枚のポリマー層とフィルムを共押出することによって製造することができる。あるいは、ラミネート成分の一方または両方を溶液または分散体からキャスティングすることができる。膜がラミネートである場合、追加のカチオン交換ポリマーのモノマー単位の化学的アイデンティティは、独立して第1のカチオン交換ポリマーの同様のモノマー単位のアイデンティティと同一であるか、または異なってもよい。
【0028】
膜の厚さは、特定の電気化学的電池の用途のために望ましいように変更可能である。典型的に、膜の厚さは、約250μm未満、より典型的に約25μm〜約175μmの範囲である。
【0029】
機械特性を改善する目的のため、コストを減少するため、および/または他のため、膜は場合により多孔性支持体を含んでもよい。膜の多孔性支持体は、広範囲にわたる成分から製造されてもよい。本発明の多孔性支持体は、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、それらの材料のコポリマー等のような炭化水素から製造されてもよい。ポリクロロトリフルオロエチレンのような過ハロゲン化されたポリマーも使用されてよい。
【0030】
熱的および化学的分解に対する耐性のため、支持体は、好ましくは高度にフッ素化されたポリマー、最も好ましくは過フッ素化ポリマーから製造される。例えば、多孔性支持体のためのポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはテトラフルオロエチレンとCF=CFC2n+1(n=1〜5)もしくは(CF=CFO−(CFC(CF)FO)2n+1(m=0〜15、n=1〜15)とのコポリマーの微孔性フィルムであり得る。
【0031】
支持層としての使用に適切な微孔性PTFEフィルムおよびシートは既知である。例えば、米国特許第3,664,915号明細書は、少なくとも40%の空隙率を有する一軸伸長フィルムを開示する。米国特許第3,953,566号明細書、米国特許第3,962,153号明細書および米国特許第4,187,390号明細書は、少なくとも70%の空隙率を有する多孔性PTFEフィルムを開示する。
【0032】
あるいは多孔性支持体は、平織り、斜子織り、もじり織り等のような様々な織り方を使用して織られた上記ポリマーの繊維から製造された布であってもよい。
【0033】
多孔性支持体を使用して、コーティングが支持体の内部細孔を通して分散されながら、外側表面上にあるようにカチオン交換ポリマーを支持体上にコーティングすることによってフィルムを製造することができる。これは、含浸条件下で支持体ポリマーに対して有害ではない溶媒を使用して、フッ化スルホニル型のカチオン交換ポリマーによって多孔性支持体溶液を含浸させることによって達成され得る。これによって、カチオン交換ポリマーのコーティングが支持体上に存在する場合でさえ、薄いフィルムが形成され得る。含浸の代わりに、または含浸に加えて、イオン交換ポリマーの薄フィルムを多孔性支持体の一方または両方の側に積層することができる。多孔性支持体の含浸によって製造されたフィルムに関して、薄フィルムを積層することは、膜を通してのバルク流動を防止するために好都合である。フィルム中に大きな細孔が残っている場合、バルク流動が生じ得る。
【0034】
プロセスの説明
適切な溶媒または溶媒混合物に溶解されたポリアミンの溶液によるイオノマーフィルムの含浸によって膜を製造する。「ポリアミン」とは、1種もしくはそれ以上のポリアミンの混合物も意味する。ポリアミン用の溶媒は、ポリアミンまたはそれらの誘導体の十分量が溶解するいずれかの溶媒であり、またポリアミン、ポリビニルアミンもしくは誘導体またはフッ素化イオノマーに有害でない溶媒である。溶媒は単一溶媒であっても、溶媒の混合物であってもよい。一実施形態において、溶媒または混合物中の1種の溶媒がイオノマーの膨張剤としても機能する。溶媒は、典型的に1種もしくはそれ以上の水、アルコールまたはエーテルを含んでなる。
【0035】
膨潤または吸収としても知られる含浸は、ポリアミンの一部がイオノマーフィルムによって吸収されるか、またはイオノマーフィルム中に取り込まれることを意味する。含浸は、フィルム内で所望の濃度のポリアミンを蓄積するために十分な期間でポリアミンの溶液にフィルムを浸すことによって実行される。含浸後、ポリアミンは、フィルムの重量に基づき、典型的に約0.1〜約25重量%の量で、より典型的には約0.1〜約10%または約0.1〜約5%の量で存在し得る。
【0036】
もう1つの実施形態において、相当するモノマーまたは低分子量オリゴマーの溶液によってイオノマーフィルムを含浸することによってポリマーがその場で形成されてもよい。重合は照射工程の前またはその間に生じ得る。
【0037】
一実施形態において、溶媒は、水、またはテトラヒドロフラン(THF)と水との混合物である。ポリアミン、ポリビニルアミンまたは誘導体をTHF/HO混合物に溶解し、次いでイオノマー中のポリアミンポリマーの所望の濃度を達成するために数時間までの期間、イオノマーの予形成膜を溶液に浸漬する。
【0038】
含浸が実行される温度は、イオノマー膜の厚さ、上記溶液混合物中の非イオノマーポリマーの所望の濃度、溶媒の選択および膜中の非イオノマーポリマーの目標量のような多くの要因次第で変更可能である。このプロセスを溶媒の氷点より高いいかなる温度でも実行可能であり、典型的に100℃まで、より典型的には70℃まで、または室温で実行する。
【0039】
フィルムの含浸の後、フィルムを乾燥し、そして照射する。「照射する」とは、限定されないが、ガンマ放射線、電子ビーム放射線としても知られるベータ放射線およびX線のような電離放射線をフィルムに暴露させることを意味する。
【0040】
好ましくは火花を生じない電離放射線供給源が利用される。この種類の放射線供給源としては、限定されないが、(1)Co−60およびCs−137のようなガンマ線供給源、(2)ベータ線供給源(電子ビーム加速器または線形加速器と呼ばれることが多い)、および(3)X線が挙げられる。電離放射線によって、照射されている材料にフリーラジカルが生じる。生じるフリーラジカルの性質は、吸収媒体の性質によって決定される。これらの3つの供給源の主な差異は、照射されている材料中を放射線が進行する様式である。
【0041】
ガンマ放射線の最も一般的な供給源は、Co−60およびCs−137である。Co−60は、非放射性Coをロッド状またはバー状に予形成し、次いでそれらを原子力発電所で製造される中性子のような中性子供給源に暴露させることによって製造される。
【0042】
ガンマ放射線は完全な球形で放射されるため、全ての照射を利用する場合、標的材料が完全に供給源を包囲する必要がある。ガンマ放射線は、材料中を進行するに従って対数的に吸収される。材料中でより均一な照射線量を得るために両面暴露が使用されてもよいが、クロロアルカリ膜のような比較的薄い膜では必要ではない。ガンマ線は、より良好な透過性を有するため優れた利点を有するが、このような利点は薄膜での照射に関してはあまり重要ではない。
【0043】
放射性供給源の主な不利点は、(1)高い維持費(原料物質の交換)、(2)極端な安全対策の必要、(3)比較的低い線量率、ならびに(4)高放射性物質の輸送、貯蔵および配置に関係する問題である。加えて、放射性崩壊を制御(開始および停止)することができないので、高い効率を実現させるためには施設を連続的に作動しなければならない。
【0044】
金属に衝突させるために高エネルギー電子が使用される場合、X線が生じる。X線供給源の効率は、標的の分子量または原子量によって、また電子のエネルギー(加速電圧)によって決定される。標的材料の分子量が高いほど、効率がより高い。また効率は、加速電圧にも比例する。X線の透過性は、ガンマ線の透過性より5〜20%高い。
【0045】
ベータ放射線の供給源は、電子ビーム加速器である。電子は、(1)高い直流電圧、(2)電気パルス、(3)磁気パルス、または(4)これら3つの組み合わせによって加速することが可能である。コッククロフト−ウォルトン(COCKCROFT−WALTON)、単離コア、共振変圧器、ダイナミトロン(DYNAMITRON)(発振器に連結された一組のカスケード整流器によって生じる高電圧)、クライストロン(KLYSTRON)(真空電子ビーム発生器)および線形加速器は、高電圧を生じる技術に与えられたいくつかの名称である。材料中の高エネルギー電子の吸収は、ビームエネルギーの90%が使用されてもよく、ビーム下のシングルパスを使用して最大線量対最小線量の比が1.4であるようなものである。
【0046】
電子ビーム加速器の主な利点は、(1)ハイパワーおよびハイスループット、(2)比較的低い単価、(3)高い線量率、および(4)本質的安全である。加えて、電子加速器を停止することができるため、施設を連続的に作動する必要はない。電子ビーム加速器の主な不利点は、電子透過性が比較的低いことであり、5メガラド供給源に関して水中約2.1cmである。これは薄い膜の照射に関しては著しく不利ではない。従って、電子ビーム加速器は、本発明の電離放射線の好ましい供給源である。
【0047】
照射プロセスでは、膜は、典型的に約1〜150KGy、より典型的に約20〜80KGy、そしてなおより典型的に約40〜80KGyの全照射線量で典型的に照射暴露される。放射線の全線量は、各暴露時間、線量率および暴露数の関数である。好ましくは暴露数は低いべきであり、最も好ましくは1である。線量率は、使用される放射線の種類、放射線を生じさせるデバイス、および放射線供給源へのエネルギー入力に依存する。所与の線量率に関して、好ましい全線量をもたらすために暴露時間を変更することができる。暴露時間の好ましい制御方法は、照射領域を通して膜を運搬するコンベヤ系の速度を変更することである。
【0048】
真空下または大気下で照射を実行してよい。雰囲気は窒素のように不活性であってもよいが、より典型的には周囲空気であってよい。
【0049】
また膜は、いわゆる「シールドパック」で、または放射線によって影響されないパッケージもしくは容器で照射されてよい。かかるパッケージまたは容器は、過度の取り扱いから生じる膜への損傷を防止する。放射線レベルで加工可能であるが、放射線を妨害しない材料のいずれによってもパッケージを製造することができる。典型的にパッケージは金属、例えば、限定されないがアルミニウムから製造される。
【0050】
当業者は、膜がポリアミンを含んでなる本発明のポリマー電解質膜組成物は、改良された水素燃料電池を含む水素燃料電池、ならびに直接メタノール燃料電池で実用性を有することを認識するであろう。水素燃料電池は当該技術分野で周知である。本発明のイオノマーポリマー膜の使用について、いずれか、または全ての水素燃料電池のデザインで考察される。主に直接メタノール燃料電池に向けられた以下の検討によって、水素燃料電池の具体的なデザインおよび適切な材料は主に包含される。すなわち、水素燃料電池は、アノード、カソード、セパレーター、電解質、水素供給、酸素供給、外部接続手段、およびメタノールが水素で置換された図1に示されるような他の構成部分を有するべきである。当業者は、本発明の目的に関して、水素燃料電池は改良された水素燃料電池を含むことを認識するであろう。
【0051】
膜電極アセンブリ(MEA)および電気化学的電池
本発明の実施のために適切な燃料電池の一実施形態を図1に示す。描写された電池は、ここでの結果のいくつかの決定に利用されるような単一電池アセンブリであるが、当業者は、直接メタノール燃料電池の全ての必要素子が図式的な形式でその中に示されることを認識するであろう。
【0052】
本発明のイオノマーポリマー電解質膜11を使用して、それを、炭素粒子上に支持されていないか、または支持された触媒、例えば白金、ナフィオン(Nafion)(登録商標)のようなバインダーおよび気体拡散バッキング13を含んでなる触媒層12と組み合わせることによって膜電極アセンブリ30(MEA)を形成する。本発明のイオノマーポリマー電解質膜11は、触媒層12と一緒に触媒コーティング膜10(CCM)を形成する。膜電極アセンブリ(MEA)を形成するために、気体拡散バッキングは、フルオロポリマーで処理されてもよく、そして/または炭素粒子およびポリマーバインダーを含んでなる気体拡散層でコーティングされてもよい炭素紙を含んでなってもよい。燃料電池には、液体状または気体状アルコール、例えばメタノールおよびエタノールまたはジエチルエーテルのようなエーテル等のような燃料のインレット14、アノードアウトレット15、カソード気体インレット16、カソード気体アウトレット17、結合ロッド(図示せず)に一緒に結合されたアルミニウムエンドブロック18、シーリング用ガスケット19、電気絶縁層20、および気体分配用のフローフィールドを有するグラファイト集電器ブロック21、および金メッキ集電器22がさらに備えられる。
【0053】
燃料電池は、液体相であっても気体相であってもよく、そしてアルコールまたはエーテルを含んでなり得る燃料供給源を利用する。典型的にメタノール/水溶液はアノード区画に供給され、そして空気または酸素はカソード区画に供給される。イオノマーポリマー電解質膜はプロトン交換のための電解質として機能し、そしてアノード区画をカソード区画から分離する。多孔性アノード集電器および多孔性カソード集電器は、電池から電流を伝導するために提供される。カソードとして機能する触媒層は、膜のカソードに面する表面とカソード集電器との間でそれらに接触して存在する。アノードとして機能する触媒層は、膜のアノードに面する表面とアノード集電器との間に配置され、それらに接触している。カソード集電器は正端子に電気接続され、そしてアノード集電器は負端子に電気接続される。
【0054】
触媒層は、周知の導電性で触媒作用的に活性の粒子または材料から製造されてよく、そして当該技術分野で周知の方法によって製造されてよい。触媒層は、触媒粒子のバインダーとして機能するポリマーのフィルムとして形成されてもよい。バインダーポリマーは、疎水性ポリマー、親水性ポリマーまたはかかるポリマーの混合物であり得る。好ましくは、バインダーポリマーはイオノマーであり、そして最も好ましくは膜と同一のイオノマーである。
【0055】
例えば、過フッ素化スルホン酸ポリマー膜および白金触媒を使用する触媒層において、バインダーポリマーは過フッ素化スルホン酸ポリマーでもあり得、そして触媒は炭素粒子上に支持された白金触媒であり得る。触媒層中、粒子は典型的にポリマー中に均一に分散し、触媒の均一で制御された深さが、好ましくは高い容積密度で維持されることが確実となる。典型的には粒子が隣接粒子と接触して存在し、触媒層を通して抵抗の低い導電性経路を形成する。触媒粒子の連結性によって電子伝導の経路が提供され、そしてバインダーイオノマーによって形成されたネットワークによってプロトン伝導の経路が提供される。
【0056】
膜上に形成される触媒層は、それらが電池中で消費および生成される気体/液体に対してに容易に透過性であるように多孔性でなければならない。平均細孔径は、好ましくは約0.01〜約50μm、最も好ましくは約0.1〜約30μmの範囲である。多孔性は、一般的に約10〜約99%、好ましくは約10〜約60%の範囲である。
【0057】
触媒層は、好ましくは、「インク」、すなわち、コーティングを膜に適用するために使用されるバインダーポリマーおよび触媒粒子の溶液を使用して形成される。バインダーポリマーは、イオノマー(プロトン)型であってもフッ化スルホニル(前駆体)型であってもよい。バインダーポリマーがプロトン型である場合、好ましい溶媒は水とアルコールとの混合物である。バインダーポリマーが前駆体型である場合、好ましい溶媒は過フッ素化溶媒(例えば3M製のFC−40)である。
【0058】
インクの粘度は(バインダーがプロトン型である場合)、好ましくは印刷前に1〜102ポイズの範囲、特に約102ポイズに制御される。粘度は以下によって制御され得る。
(i)粒度選択、
(ii)触媒作用的に活性な粒子およびバインダーの組成、
(iii)水含有量(存在する場合)の調節、または
(iv)好ましくは、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ならびにセルロースおよびポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ナトリウムポリアクリレートおよびポリメチルビニルエーテルのような粘度調節剤を組み入れることである。
【0059】
インクでコーティングされる膜の領域は、全領域であっても膜表面の選択部分のみであってよい。ナイフまたはブレードによる延展、刷毛引き、注ぎ、メータリングバー、噴霧等を含む適切ないずれかの技術によって、触媒インクを膜表面に付着させてもよい。また転写、スクリーン印刷、パッド印刷によって、またはフレキソ印刷版のような印刷版からの適用によって触媒層を適用してもよい。
【0060】
所望であれば、反復的な適用によってコーティングを所望の厚さまで作製する。過剰量の触媒が適用されられないように、膜への触媒の所望の装填を予め決めることができ、そして触媒材料の具体的な量を膜表面に付着させることができる。触媒粒子は、好ましくは約0.2mg/cm〜約20mg/cmの範囲で膜表面に付着される。
【0061】
典型的にスクリーン印刷プロセスは、約10〜約2400のメッシュ数、より典型的に約50〜約1000のメッシュ数および約1〜約500マイクロメーターの範囲の厚さを有するスクリーンを使用して触媒層を膜に適用するために使用される。スクリーンのメッシュおよび厚さ、ならびにインクの粘度は、約1ミクロン〜約50ミクロン、特に約5ミクロン〜約15ミクロンの範囲の電極の厚さを与えるように選択される。所望の厚さを適用するために必要に応じて、スクリーン印刷プロセスを繰り返すことができる。2〜4回の通過、通常3回の通過によって最適な作業成績が得られることが観測されている。インクをそれぞれ適用した後、好ましくは、電極層を約50℃〜約140℃、好ましくは約75℃まで加温することによって溶媒を除去する。イオン交換膜の表面上に所望の大きさおよび形状を有する電極層を形成するために、スクリーンマスクを使用する。形状は、好ましくは電極の形状に適合する印刷パターンである。スクリーンおよびスクリーンマスクのための材料は、スクリーン用にステンレス鋼、ポリ(エチレンテレフタレート)およびナイロン、ならびにスクリーンマスク用にエポキシ樹脂のような十分な強度を有するいずれかの材料であり得る。
【0062】
触媒コーティングを形成した後、電極層とカチオン交換膜との強力に接着された構造が得られるように、膜表面上にインクを固定することが好ましい。圧力、熱、接着、バインダー、溶媒、静電気等のいずれか1つもしくは組み合わせによってインクを膜表面上に固定することができる。典型的に、圧力、熱または圧力と熱の組み合わせを使用して、インクを膜表面上に固定化する。電極層は、好ましくは約100℃〜約300℃、最も典型的に約150℃〜約280℃で、約510〜約51,000kPa(約5〜約500ATM)、最も典型的に約1,015〜約10,500kPa(約10〜約100ATM)の圧力下で膜表面上へプレスされる。
【0063】
膜上へ直接的に触媒層を適用する方法の別法は、いわゆる「デカル(転写)」プロセスである。このプロセスでは、触媒インクを基材上にコーティングするか、塗布するか、噴霧するか、またはスクリーン印刷し、そして溶媒を除去する。次いで得られた「デカル」をその後、基材から膜表面へと移動させ、そして典型的に熱および圧力の適用によって結合させる。
【0064】
インク中バインダーポリマーが前駆体(フッ化スルホニル)型である場合、触媒コーティングを直接コーティングまたは転写によって膜へと固定した後、触媒コーティングに化学処理(加水分解および酸交換)を受けさせる。この時、バインダーはプロトン(または酸)型へと変換される。
【実施例】
【0065】
以下の実施例で本発明をさらに定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、実例としてのみ与えられていることを理解するべきである。上記検討およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的な特徴を確認することができ、そして本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更および修正を行い、これを様々な用途および条件に適応させることができる。
【0066】
実施例1
酸型の7ミルの市販のナフィオン(Nafion)(登録商標)膜(N117、H型、デラウェア州、ウィルミントンのイーアイ デュポン ドゥ ヌムール(E.I.DuPont de Nemours,Wilmington,DE))の8インチ×8インチ試料をジップロックバッグに入れた。水87.7gおよびテトラヒドロフラン(THF)87.7g(アルドリッチ ケミカルズ(Aldrich Chemicals))中に溶解された分子量1,300,000gのポリビニルピロリドン(PVP)1.39g(アルドリッチ ケミカルズ(Aldrich Chemicals))を含有する混合物を製造し、上記ナフィオン(Nafion)(登録商標)膜を含有するジップロック中に注ぎ入れた。バッグをジッパーで閉じ、平らな表面に配置し、そして混合物を膜上に均一に広げた。膜を室温で2時間、混合物と接触して保持した。バッグを30分毎に逆に回転し、平らにし、確実に膜を混合物と接触させた。2時間後、膜を取り出し、15分間空気乾燥させ、次いで一晩吊るして乾燥させ、残りの溶媒を除去した。翌日、Nパージングしながら約1時間70℃の真空オーブン中でさらに乾燥させた。乾燥させた試料を4片に切断し、試料1、2、3および4とした。2つの試料をそれぞれ、2つの別々のアルミニウムシールドパック中に入れ、そして乾燥ボックス中に置いた。シールドパックを乾燥ボックス中で数時間、さらにNでパージングし、そして最後にバッグシーラー(インパルスシーラー(Impulse Sealer)、AIE−300C型、アメリカン インターナショナル エレクトリック(American International Electric))で密封した。
【0067】
その翌日、密封されたパックを乾燥ボックスから取り出し、そしてドライアイスで充填された容器に保管した。試料をeビーム供給源(4.5MV、25mAビーム電流)へ運んだ。試料1および2を含有するパックを合計20Kgy(10KGyを2回通過)で処理し、そして試料3および4を含有するパックを合計40Kgy(20KGyを2回通過)で処理した。装置ベンダーでフィルム線量測定技術によって線量を確認した(コネチカット州、クランベリーのEビームサービス インコーポレイテッド(E−beam Services,Inc.Cranbury,CT))。eビーム適用の間、試料をドライアイス上で保持し、熱を制御した。Alパック中の処理された試料を一晩、ドライアイスで充填された容器中に保管し、そして翌日、少なくとも1時間70℃のオーブン中で加熱した。次いでAlパックを開放し、試料を取り出した。それらをさらに約45分間70℃で15%KOH/水混合物中で処理し、水で2回すすぎ、次いで約45分間10%HNO混合物中に浸した。この工程を2回繰り返し、確実に膜内の全てのKイオンをHイオンに置換した。それらをさらに2回、脱イオン水ですすぎ、そして水のpHが中性に近づいたことが示されるまで、それぞれ約45分間、水と接触させて保持した。最終的な膜に触媒を結合させ、次いで燃料電池で試験した。
【0068】
2つの対照試料を上記の通り製造した。対照試料Aはeビーム処理をしない、そのままのN117膜(PVPなし)であった。対照試料Bは、eビーム処理をせずに上記の通り製造された、PVPを有するN117膜であった。
【0069】
最終的な膜を下記のCCM(触媒コーティング膜)製造で全て使用し、そして燃料電池で試験した。
【0070】
触媒コーティング膜(CCM)製造手順:
照射後、米国特許第5,330,860号明細書に記載の方法を使用して、触媒層をフィルムおよび加水分解されたフィルムの両側に適用した。これらの膜電極アセンブリは、カソードおよびアノード側でそれぞれ約4.0mg Pt/cmの最終的な触媒装填を有した。アノード触媒はPt−Ruブラックであり、そしてカソード触媒はPtブラックであった。両方とも英国、ロンドンのジョンソン マッティ(Johnson Matthey,London,England)から購入した。
【0071】
1.0〜1.25ミクロンのジルコニア粉砕媒体80mlを含有するイリノイ州60030、グレイスレークのエイガー マシンリー インコーポレイテッド(Eiger Machinery Inc.,Grayslake,IL 60030)製のエイガー(Eiger)(登録商標)ビーズミルでカソード触媒分散体を製造した。白金ブラック触媒粉末105グラムおよび3.5重量%ナフィオン(Nafion)(登録商標)溶液336グラム(溶液中に使用されるポリマー樹脂は典型的に930EWポリマーであり、フッ化スルホニル型である)を混合し、ミルに充填し、そして2時間分散させた。材料をミルから出し、そして粒径を測定した。インクを試験し、粒径が1〜2ミクロン未満であり、そして固体%が26%の範囲であることを確認した。デラウェア州、ウィルミントンのイーアイ デュポン ドゥ ヌムール アンド カンパニー(E.I.duPont de Nemours & Co.,Wilmington,DE)製の厚さ3ミルのカプトン(Kapton)(登録商標)ポリイミドフィルムの10cm×10cm片に5cm×5cmの寸法(25cmの全面積が得られる)まで触媒インクを引き落とすことによって、触媒デカルを製造した。5ミル(125ミクロン)の湿潤コーティング厚によって、典型的に、最終的なCCMで4〜5mg Pt/cmの触媒装填が得られた。触媒分散系中、白金ブラック触媒が1:1原子比の白金/ルテニウムブラック触媒粉末に置換されたことを除き、上記と同様の手順を使用してアノードデカルを製造した。転写方法によってCCMを製造した。CCM製造に関して、H型の膜(4インチ×4インチ)(10.16cm×10.16cm)を使用した。アノード触媒コーティングデカルとカソード触媒コーティングデカルとの間に膜を挟んだ。2つのデカル上のコーティングが互いに一致し、そして膜に面して位置することを確実にするように注意した。全アセンブリを水圧プレスの2つの予熱(160℃)された8インチ×8インチ(20.32cm×20.32cm)板の間に導入し、そして6000lbs(41MPa)の圧力に達するまでプレスの板を迅速に組み合わせた。サンドイッチアセンブリを圧力下に約2分間維持し、次いで同圧力下でプレスを約2〜3分間冷却した(すなわち、60℃未満の温度に達するまで)。次いで圧力を周囲条件下で開放し、そしてアセンブリをプレスから取り出し、カプトン(Kapton)(登録商標)フィルムを膜の上面からゆっくり剥がすと、触媒コーティングが膜に転写していることが示された。CCMを水のトレイに浸し(確実に膜を完全に湿潤させる)、そして保管やさらなる使用のために注意深くジッパーバッグに移した。
【0072】
CCMの化学処理
触媒層中のイオノマーを−SOF型からプロトン−SOH型へと変換するためにCCMを化学処理した。これは加水分解処理と、それに続く酸交換を必要とする。CCMの加水分解を30分間80℃で20重量%NaOH溶液中で実行した。CCMをデュポン(DuPont)製テフロン(Teflon)(登録商標)メッシュの間に置き、そして溶液中に入れた。溶液を撹拌し、確実に均一な加水分解をもたらした。浴中30分後、CCMを取り出し、新しい脱イオン水(DI)で完全にすすぎ、全てのNaOHを除去した。
【0073】
前工程で加水分解されたCCMの酸交換を15重量%硝酸溶液中、65℃の浴温で45分間実行した。溶液を撹拌し、確実に均一な酸交換をもたらした。15重量%硝酸溶液を含有する第2の浴中で、65℃でさらに45分間、この手順を繰り返した。
【0074】
次いでCCMを流れるDI水によって室温で15分間すすぎ、全ての残留酸を確実に除去し、そして最終的に30分間65℃で水浴中に保持した。次いでそれらを湿潤パッケージし、そしてラベルを付けた。CCMは、未処置のナフィオン(Nafion)(登録商標)117、または処理されたナフィオン(Nafion)(登録商標)過フッ素化イオン交換膜;および電極を含んでなった。これはアノード側で白金/ルテニウムブラック触媒およびナフィオン(Nafion)(登録商標)バインダー、そしてカソード側で白金ブラック触媒およびナフィオン(Nafion)(登録商標)バインダーから製造された。
【0075】
表1に記載の処理された、および未処理の7ミルのナフィオン(Nafion)(登録商標)膜を、図1に記載の種類の膜電極アセンブリ30(MEA)を利用する電池で燃料電池の性能に関して評価した。上記の通り製造された触媒コーティング膜10(CCM)をGDB炭素布13によって単一電極ハードウェア(ニューメキシコ州、フュール セル テクノロジーズ インコーポレイテッド(Fuel Cell Technologies Inc.,NM)から購入した)に緩やかに取り付けた。微孔性層を使用して炭素布を両側でコーティングし、片側は他の側より厚くコーティングされ、そして厚くコーティングされた側をPtブラック電極に向けた。単一電池ハードウェアの活性面積は25cmであった。確実にGDBがCCM上の触媒コーティング領域を被覆するように注意した。
【0076】
CCMの膜の暴露部分を被覆する形状に切断されたガラス繊維強化シリコーンゴムガスケット(19)(フラン型1007、ストックウェル ラバー カンパニー(Stockwell Rubber Company)から得た)を、GDBおよびガスケット材料の重なりを避けるように注意しながら、CCM/GDBアセンブリの片側に置いた。25cm標準単一電池アセンブリ(ニューメキシコ州、ロス アラモスのフュール セル テクノロジーズ インコーポレイテッド(Fuel Cell Technologies Inc.,Los Alamos,NM)から得た)のアノードおよびカソードフローフィールドグラファイトプレート(21)の間に全サンドイッチアセンブリを組み立てた。図1に示される単一電池アセンブリは、アノードインレット(14)、アノードアウトレット(15)、カソード気体インレット(16)、カソード気体アウトレット(17)、結合ロッド(図示せず)に一緒に結合されたアルミニウムエンドブロック(18)、電気絶縁層(20)、および金メッキ集電器(22)も備えた。単一電池アセンブリの外側プレート(図示せず)のボルトは、1.5ft.lb.のトルクまでトルクレンチで締められた。
【0077】
次いで単一電池アセンブリ(図2中40と示される)を燃料電池試験ステーションに連結した。この略図は図2に示される。試験ステーションの構成要素には、カソード気体として使用するための空気の供給(41);燃料電池からの動力アウトプットを調節するためのロードボックス(42);陽極液供給を保持するためのMeOH溶液タンク(43);MeOH溶液が燃料電池に入る前に予熱するためのヒーター(44);所望の流速で陽極液を燃料電池に供給するための液体ポンプ(45);電池から出た陽極液を室温まで冷却するための凝縮器(46)、使用された陽極液を回収するための回収ボトル(47)、および排気ガスおよび水を除去するためのベント(48)が含まれる。組み立てられた単一電池をアルビン インストルメンツ(Arbin Instruments)から購入したバッテリーサイクラー(アルビン インストルメンツ(Arbin Instruments)、BT2000型、テキサス州、カレッジステーション(College Station,TX 77845))に取り付けた。
【0078】
それぞれ4および3メタノール化学量論比で、1Mメタノール水溶液をアノード側上に通過させ、そして室温で周囲圧力の乾燥空気をカソード側上に通過させた。電池を70℃まで加熱した。0〜315mA/cmで電池を放出する(電池から引き出された電流)ことによって燃料電池性能を測定し、そして電池電圧を記録した。出力密度=電池電流密度×電池電圧という等式から、もう1つの性能の尺度である電池出力密度(W/cm)を計算した。
【0079】
X.レン(X.Ren)ら(メタノール クロスオーバー イン ダイレクト メタノール フュール セルズ,ザ ファースト インターナショナル シンポジウム オン プロトン コンダクティング メンブレン フュール セルズ,1995;ジ エレクトロケミカル ソサイエティ(Methanol Cross−over in Direct Methanol Fuel Cells,The First International Symposium on Proton Conducting Membrane Fuel Cells,1995:The Electrochemical Society)95〜23:284〜298ページ)によって記載された方法を使用して、40℃および60℃で、電池のアノードで1.55cc/分 1M MeOH/水混合物を、カソード側で255cc/分 乾燥窒素を供給することによってメタノールクロスオーバーを測定した。
【0080】
上記試験手順を使用して得られた結果の概要を表1に詳細に示す。本発明のeビーム処理された膜の平均出力密度は、両方の対照膜に対して、0.4Vで6.7%減少し、そして0.45Vで16.6%増加していることがわかる。本発明の膜の平均メタノールクロスオーバーは、未処理のN117膜に対して40℃で67%減少し、そして60℃で66%減少し、また未処理のN117/PVP膜に対して40℃で40%減少し、そして60℃で41%減少していることもわかる。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例2
上記と同様の電池を使用して、試料1、2および3、ならびに対照餌料AおよびBを使用してもう1組の燃料電池データを作成した。この時、電池を60℃まで加熱し、アノードに1.55cc/分の1M MeOH/水混合物を供給し、そしてカソードに255cc/分乾燥空気を供給した。電池から3.75Aの電池電流を引き出し、そして電池電圧を監視した。対照Aおよび対照B試料と比較してメタノールクロスオーバーはそれぞれ41%および25%減少したが、出力密度は10%および8.2%減少した。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】単一電池アセンブリの略図。
【図2】燃料電池試験ステーションの略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリアミン用溶媒中に溶解されたポリアミンを含んでなる溶液によってイオノマーのフィルムを含浸させ、そして
b)前記フィルムを照射すること
を含んでなる固体ポリマー電解質膜の製造方法。
【請求項2】
イオノマーがフッ素化イオノマーである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリアミンが、ポリビニルアミン、アミド、イミンおよびイミドまたはそれらの誘導体である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ポリアミンがポリビニルピロリドンまたはポリエチレンイミンである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
イオノマーが高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマーである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマーが、式−(OCFCFR−OCFCFR’SOF(式中、RおよびR’は、独立して、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、そしてa=0、1または2である)によって表される高度にフッ素化された炭素主鎖および側鎖を含んでなる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマーが、式−O−CFCF(CF)−O−CFCFSOFによって表されるペルフルオロ炭素主鎖および側鎖を含んでなる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程a)の含浸の前にイオノマーがイオン型または酸型である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
照射線量が約1〜150kGyである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程a)の後、フィルムの重量を基準としてポリアミンが約0.1%〜25重量%の量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程a)が約100℃の温度で実行される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程a)が室温で実行される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
溶媒が水、または水とテトラヒドロフランとの混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって製造された膜。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によって製造された膜の表面上に形成された導電性で触媒作用的に活性の粒子を含有する層を含んでなる膜および電極アセンブリ。
【請求項16】
ポリアミンが、ポリビニルアミン、アミド、イミンもしくはイミドまたはそれらの誘導体である請求項14に記載の膜。
【請求項17】
ポリアミンがポリビニルピロリドンまたはポリエチレンイミンである請求項16に記載の膜。
【請求項18】
イオノマーが高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマーである請求項14に記載の膜。
【請求項19】
高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマーが、式−(OCFCFR−OCFCFR’SOF(式中、RおよびR’は、独立して、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、そしてa=0、1または2である)によって表される高度にフッ素化された炭素主鎖および側鎖を含んでなる請求項18に記載の膜。
【請求項20】
高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマーが、式−O−CFCF(CF)−O−CFCFSOFによって表されるペルフルオロ炭素主鎖および側鎖を含んでなる請求項18に記載の膜。
【請求項21】
イオノマーが加水分解され、そして酸交換される請求項14に記載の膜。
【請求項22】
請求項1に記載の方法によって製造された膜を含んでなる電気化学的電池。
【請求項23】
燃料電池である請求項22に記載の電気化学的電池。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−503802(P2009−503802A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525138(P2008−525138)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/030031
【国際公開番号】WO2007/019157
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】