説明

メタリック顔料、インク組成物およびインクジェット記録方法

【課題】金属光沢を有する印刷物の作成が可能であり、ノズル径が30μm以下のインクジェットノズルを用いたプリンタでも安定な印刷が可能であり、熱処理等も不要なため印刷メディア(記録媒体)の限定もされないインクジェット記録を可能にする、メタリック顔料、インク組成物およびインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】平均厚み30〜100nm、かつ50%平均粒子径が0.5μm以上、4.0μm以下の金属箔片であり、粒度分布における最大粒子径が12μm以下であるメタリック顔料であり、これを含有するインク組成物と、ノズル径が30μm以下のインクジェットヘッドとを用い、メタリック顔料の平均粒子径とインクジェットヘッドのノズル径との比(平均粒子径/ノズル径)が0.15以下とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリック顔料、インク組成物およびインクジェット記録方法に関する。より詳しくは、金属光沢を有する印刷物の作成が可能であり、ノズル径が30μm以下のインクジェットノズルを用いたプリンタでも安定な印刷が可能であり、熱処理等も不要なため印刷メディア(記録媒体)の限定もされないインクジェット記録を可能にする、メタリック顔料、インク組成物およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物上で金属光沢を再現する為には、アルミニウム、金、銀、黄銅等の金属または合金からなる顔料、パール顔料からなる印刷インキや接着剤や熱融着による転写箔が用いられてきた。
また、近年のインクジェット印刷技術の発達によって、インクジェット印刷でも金属光沢を有する印刷物を得たいと言う要望が高まっている。
一方、現在メタリック顔料用として市販されているアルミニウム顔料では、平均粒子径が10μm以上であり(例えば、特許文献1〜2参照。)、インクジェットプリンタの微細な(直径30μm以下)ノズル、ろ過フィルタを通過させる事が非常に困難である。また、これらアルミニウム顔料は、粒子径が大きすぎる為に鏡面光沢を得る事が難しいという欠点があった。加えてアルミニウム顔料は粒子径を低下させると、周囲の水分と反応するようになる為、従来の粉砕法やアトマイズ法で1μm以下の粒子径にする事は非常に困難であり、通常インクジェットインクで用いられる顔料の平均粒子径である200nm以下というものは作成できない。
【0003】
他方では、金・銀等の貴金属コロイドを用いて基材上に金属薄膜を作成する方法があるが、平均粒子径数十nmである金属コロイド粒子は金属光沢を再現出来ない。例えば、安定な金のコロイド粒子は粒子径が10〜20nm程度であり、この状態ではコロイド分散液の色は紫色である。この場合、金の薄膜を得る為には150℃以上で加熱する必要がある。また、保護コロイドを添加する事で、より大きな粒子径の金コロイドを安定分散する事も可能であるが、この場合には保護コロイドを分解除去する処理をしない限り、金属薄膜は得られない。これらの理由から、金属コロイドを用いた方法では印刷後に何らかの後処理が必要となる。特に熱処理をする場合には、印刷メディアが非常に限定されてしまうという欠点がある。加圧処理する場合にも印刷メディアが限定されるといった欠点、加圧設備を必要とする設備負担が当然生じる(例えば、特許文献3参照。)。また、金属コロイドは通常、貴金属(Au、Ag、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)が用いられるが、コスト面から装飾、加飾、広告印刷などには使う事が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4233195号明細書
【特許文献2】米国特許第5662738号明細書
【特許文献3】特開2004−175832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は前記従来の技術の問題点を解消し、金属光沢を有する印刷物の作成が可能であり、ノズル径が30μm以下のインクジェットノズルを用いたプリンタでも安定な印刷が可能であり、熱処理等も不要なため印刷メディア(記録媒体)の限定もされないインクジェット記録を可能にする、メタリック顔料、インク組成物およびインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、インク組成物中に含有させる金属箔片を用いたメタリック顔料の平均粒径に関与する因子および粒度分布における最大粒子径を特定の範囲とすることにより、インクジェット記録における印字安定性及び記録物の光沢性が向上することを見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記構成により達成される。
(1)平均厚み30〜100nm、かつ50%平均粒子径が1.0μm以上、4.0μm以下の金属箔片であり、粒度分布における最大粒子径が12μm以下であるメタリック顔料。
(2)前記金属箔片が、シート状基材面に剥離用樹脂層と金属または金属化合物層とが順次積層された構造からなる顔料原体の該金属または金属化合物層と該剥離用樹脂層の界面を境界として該シート状基材より剥離し粉砕したものである前記(1)のメタリック顔料。
(3)前記金属または金属化合物層が真空蒸着法で作製されたものである前記(2)のメタリック顔料。
(4)前記剥離および粉砕が、前記顔料原体の液中での超音波処理によりなされた前記(2)のメタリック顔料。
【0008】
(5)前記(1)〜(4)のいずれか記載のメタリック顔料を含有するインク組成物。
(6)シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレン系界面活性剤またはアセチレンジオール系界面活性剤を含有する前記(5)のインク組成物。
(7)バインダー樹脂を含有する前記(5)または(6)のインク組成物。
(8)バインダー樹脂がポリビニルブチラールまたはセルロースアセテートブチレートである前記(7)のインク組成物。
(9)前記(5)〜(8)のいずれか記載のインク組成物と、ノズル径が30μm以下のインクジェットヘッドとを用いるインクジェット記録方法。
(10)メタリック顔料の50%平均粒子径とインクジェットヘッドのノズル径との比(平均粒子径/ノズル径)が0.15以下である前記(9)のインクジェット記録方法。
【0009】
本発明のメタリック顔料、インク組成物およびインクジェット記録方法は、金属光沢を有する印刷物の作成が可能であり、ノズル径が30μm以下のインクジェットノズルを用いたプリンタでも安定な印刷が可能であり、熱処理等も不要なため印刷メディア(記録媒体)の限定もされないインクジェット記録を可能にした。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のメタリック顔料、インク組成物およびインクジェット記録方法について詳細に説明する。
本発明のメタリック顔料は、平均厚み30〜100nm、かつ50%平均粒子径が1.0μm以上、4.0μm以下の金属箔片であり、粒度分布における最大粒子径が12μm以下である。
本発明のメタリック顔料は、上記の平均粒径および粒度分布に関与する因子を有することにより、金属光沢を有する印刷物の作成が可能であり、ノズル径が30μm以下のインクジェットノズルを用いたプリンタでも安定な印刷が可能である。
従来型のメタリック顔料で金属光沢を得るためには、アルミニウム顔料では10μm以上の平均粒子径が必要であり、一般的には平均粒子径が20μm以上、粒度分布における最大粒子径は30μmを超えてしまう。この場合にはノズル径が30μm以下のインクジェットノズルを用いたインクジェットプリンタには使用できない。
【0011】
また、本発明のメタリック顔料は、粒度分布における最大粒子径が10μm以下であることがこのましい。特に、直径20μmのインクジェットノズルを用いる場合には、粒度分布における最大粒子径を10μm以下にする必要がある。また、直径20μmのインクジェットノズルを用いて安定な印字を行う場合には、粒度分布の平均粒子径を4.0μm以下にする必要がある。
【0012】
本発明のメタリック顔料は、金属箔片を用い、上記の平均粒径および粒度分布に関与する規定を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、シート状基材面に剥離用樹脂層と金属又は金属化合物層とが順次積層された構造からなる複合化顔料原体の前記金属又は金属化合物層と前記剥離用樹脂層の界面を境界として前記シート状基材より剥離し粉砕したものが挙げられる。
【0013】
本発明のメタリック顔料を製造するための複合化顔料原体の金属又は金属化合物層に用いられる金属又は金属化合物は、金属光沢を有する等の機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等が使用され、これらの単体金属、金属化合物又はこれらの合金およびそれら混合物の少なくとも一種が使用される。
前記金属又は金属化合物層は、真空蒸着、イオンプレーティング又はスパッタリング法による形成が好ましい。これらの金属又は金属化合物層の厚さは、特に限定されないが、30〜100nmの範囲が好ましい。30nm未満では反射性、光輝性に劣り、金属顔料としての性能が低くなり、100nmを超えると見かけ比重が増加し、メタリック顔料の分散安定性が低下する。金属又は金属化合物層の不必要な増大は、粒子の重量増加による沈降を招くだけであり、これより厚い膜厚であっても、反射性、光輝性はあまり変化しない。
【0014】
本発明のメタリック顔料を製造するための複合化顔料原体における剥離用樹脂層は、前記金属又は金属化合物層のアンダーコート層であるが、シート状基材面との剥離性を向上させるための剥離性層である。この剥離用樹脂層に用いる樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、ポリビニルブチラール、アクリル酸共重合体又は変性ナイロン樹脂が好ましい。
上記樹脂の一種または二種以上の混合物の溶液を塗布し、乾燥等を施して層が形成される。塗布液には粘度調節剤等の添加剤を含有させることができる。
【0015】
剥離用樹脂層の塗布は、一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート法等により形成される。塗布・乾燥後、必要であれば、カレンダー処理により、表面の平滑化を行う。
剥離用樹脂層の厚さは、特に限定されないが、0.5〜50μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。0.5μm未満では分散樹脂としての量が不足し、50μmを超えるとロール化した場合、顔料層との界面で剥離し易いものとなってしまう。
【0016】
本発明のメタリック顔料を製造するための複合化顔料原体におけるシート状基材としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフイルム、66ナイロン、6ナイロン等のポリアミドフイルム、ポリカーボネートフイルム、トリアセテートフイルム、ポリイミドフイルム等の離型性フイルムが挙げられる。
好ましいシート状基材としては、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体である。
これらのシート状基材の厚さは、特に限定されないが、10〜150μmが好ましい。10μm以上であれば、工程等で取り扱い性に問題がなく、150μm以下であれば、柔軟性に富み、ロール化、剥離等に問題がない。
【0017】
また、前記金属又は金属化合物層は、保護層で挟まれていてもよい。該保護層としては、酸化ケイ素層、保護用樹脂層が挙げられる。
酸化ケイ素層は、酸化ケイ素を含有する層であれば特に限定されるものではないが、ゾル−ゲル法によって、テトラアルコキシシラン等のシリコンアルコキシド又はその重合体から形成されることが好ましい。
上記シリコンアルコキシド又はその重合体を溶解したアルコール溶液を塗布し、加熱焼成することにより、酸化ケイ素層の塗膜形成する。
【0018】
保護用樹脂層としては、分散媒に溶解しない樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドまたはセルロース誘導体等挙げられるが、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体から形成されることが好ましい。
上記樹脂一種または二種以上の混合物の水溶液を塗布し、乾燥等を施した層が形成される。塗布液には粘度調節剤等の添加剤を含有させることができる。
上記酸化ケイ素および樹脂の塗布は、上記剥離用樹脂層の塗布と同様の手法により行われる。
【0019】
上記保護層の厚さは、特に限定されないが、50〜150nmの範囲が好ましい。50nm未満では機械的強度が不足であり、150nmを超えると強度が高くなり過ぎるため粉砕・分散が困難となり、また金属又は金属化合物層との界面で剥離してしまう場合がある。
【0020】
また、前記「保護層」と「金属又は金属化合物層」との間に色材層を有していてもよい。
色材層は、任意の着色複合顔料を得るために導入するものであり、本発明に使用するメタリック顔料の金属光沢、光輝性に加え、任意の色調、色相を付与できる色材を含有できるものであれば特に限定されるものではない。この色材層に用いる色材としては、染料、顔料のいずれでも良い。また、染料、顔料としては、公知のものを適宜使用することができる。
この場合、色材層に用いられる“顔料”とは一般的な顔料化学の分野で定義される、天然顔料、合成有機顔料、合成無機顔料等を意味し、本発明の“複合化顔料”等の、積層構造に加工されたものとは異なるものである。
【0021】
この色材層の形成方法としては、特に限定されないが、コーティングにより形成することが好ましい。
また、色材層に用いられる色材が顔料の場合は、色材分散用樹脂をさらに含むことが好ましく、該色材分散用樹脂としては、ポリビニルブチラール、アクリル酸共重合体等が好ましい。この場合、色材層は、顔料と色材分散用樹脂と必要に応じてその他の添加剤等を溶媒に分散または溶解させ、溶液としてスピンコートで均一な液膜を形成した後、乾燥させて樹脂薄膜として作成されることが好ましい。
なお、本発明のメタリック顔料を製造するための複合化顔料原体の製造において、上記の色材層と保護層の形成がともにコーティングにより行われることが、作業効率上好ましい。
【0022】
本発明のメタリック顔料を製造するための複合化顔料原体としては、前記剥離用樹脂層と金属又は金属化合物層との順次積層構造を複数有する層構成も可能である。その際、複数の金属又は金属化合物層からなる積層構造の全体の厚み、即ち、シート状基材とその直上の剥離用樹脂層を除いた、金属又は金属化合物層−剥離用樹脂層−金属又は金属化合物層・・・剥離用樹脂層−金属又は金属化合物層の厚みは5000nm以下であることが好ましい。5000nm以下であると、複合化顔料原体をロール状に丸めた場合でも、ひび割れ、剥離を生じ難く、保存性に優れる。また、顔料化した場合も、光輝性に優れており好ましいものである。
また、シート状基材面の両面に、剥離用樹脂層と金属又は金属化合物層とが順次積層された構造も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本発明のメタリック顔料は、前記複合化顔料原体の金属又は金属化合物層を、剥離用樹脂層を境界として前記シート状基材より剥離し、粉砕し微細化して得ることができる。
剥離処理法としては、特に限定されないが、前記複合化顔料原体を液体中に浸漬することによりなされる方法、また液体中に浸漬すると同時に超音波処理を行い、剥離処理と剥離した複合化顔料の粉砕処理を行う方法が好ましい。
上記のようにして得られるメタリック顔料は、剥離用樹脂層が保護コロイドの役割を有し、溶剤中での分散処理を行うだけで安定な分散液を得ることが可能である。また該メタリック顔料を用いたインク組成物においては、前記剥離用樹脂層由来の樹脂は紙等の記録媒体に対する接着性を付与する機能も担う。
【0024】
本発明のメタリック顔料を、適切な液媒に分散・含有させてインク組成物とする。
本発明のメタリック顔料を用いるインク組成物(以下、本発明のインク組成物とも称する)に用いられる液媒は、水系のものであっても有機系のものであってもよい。
有機系の液媒としては、好ましくは極性有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、又はフッ化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、又はプロピオン酸エチル等)、又はエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、又はジオキサン等)等を用いることができる。
その他、好ましい有機溶媒として、国際公開第2002/055619号パンフレットに記載されているような、常温常圧下で液体のジエチレングリコール化合物と常温常圧下で液体のジプロピレングリコール化合物との混合物等を挙げることができる。
【0025】
有機系液媒を用いる場合は、他に、非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレン誘導体またはシリコーン系界面活性剤を含むことが好ましい。
前記のポリオキシエチレン誘導体としてアセチレンジオール系界面活性剤を用いることができる。アセチレンジオール系界面活性剤はポリオキシアルキレン構造を有していても良い。アセチレンジオール系界面活性剤の具体例としてはサーフイノール(登録商標)104、82、465、485、又はTG(いずれもAir Products and Chemicals.Inc.より入手可能)、オルフイン(登録商標)STG、オルフインE1010(いずれも日信化学社製の商品名)を挙げることができる。
また、前記のポリオキシエチレン誘導体として、その他の市販品を利用することも可能であり、その具体例としては、ニッサンノニオンA−10R,A−13R(日本油脂株式会社)、フローレンTG−740W,D−90(共栄社化学株式会社)、エマルゲンA−90,A−60(花王株式会社)、又はノイゲンCX−100(第一工業製薬株式会社)を挙げることができる。
【0026】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、メチルスチレン変性ポリジメチルシロキサン、オレフィン変性ポリジメチルシロキサン、アルコール変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、メタクリル変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサンを挙げることができる。
また、BYK−307、331、333、347、348、UV−3500、UV−3510、UV−3530、UV−3570(ビックケミー・ジャパン(株)製)、KF−860、8005、6004、351、353、354L、355A、615A、618、6011、6015、X−22−2426、164C、2404(信越化学工業(株)製)の商品名で入手可能なものも使用することができる。
【0027】
有機系液媒を用いる場合は、本発明のインク組成物において、非イオン系界面活性剤の含有量は、適宜選択することができるが、インク組成物中の顔料の含有量に対して、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜3.0重量%である。
有機系液媒を用いる場合は、本発明のインク組成物は、バインダー樹脂を含むことが好ましい。
バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、繊維素系樹脂(例えば、セルロースアセテートブチレート)、又はビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体を用いることができる。なお、バインダー樹脂は、その添加量により、記録媒体への顔料の定着性を更に良好にすることもできる。更に、バインダー樹脂によって本発明のインク組成物の粘度を調整することができる。本発明のインク組成物の粘度(温度20℃における粘度)は、例えば、10mPa・s、より好ましくは5mPa・sである。
【0028】
また、本発明のインク組成物は、その他に、通常のインク組成物に含まれているその他の添加剤を含むことができる。こうした添加剤としては、例えば、安定剤(例えば、酸化防止剤、又は紫外線吸収剤)を挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、BHA(2,3−ブチル−4−オキシアニソール)又はBHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)を用いることができ、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、又はベンゾトリアゾール系化合物を用いることができる。また、界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、両性、又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができる。
【0029】
本発明のメタリック顔料を含むインク組成物にはグリコールエーテルが含有されていてもよい。
本発明のインク組成物に含有されるグリコールエーテルとは、メチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、ヘキシル、そして2−エチルヘキシルの脂肪族、二重結合を有するアリル並びにフェニルの各基をベースとするエチレングリコール系エーテルとプロピレングリコール系エーテルがあり、無色で臭いも少なく、分子内にエーテル基と水酸基を有しているので、アルコール類とエーテル類の両方の特性を備えた、常温で液体のものである。
例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0030】
本発明のインク組成物は、公知の慣用方法によって調製することができる。例えば、最初に、メタリック顔料、分散剤、及び前記液媒を混合した後、ボールミル、ビーズミル、超音波、又はジェットミル等で顔料分散液を調製し、所望のインク特性を有するように調整する。続いて、前記液媒、非イオン性界面活性剤、バインダー樹脂、及びその他の添加剤(例えば、分散助剤や粘度調整剤)を撹拌下に加えて顔料インク組成物を得ることができる。
その他、複合化顔料原体を、一旦液媒中で超音波処理して複合化顔料分散液とした後、必要なインク用液媒と混合しても良く、また、複合化顔料原体を直接インク用液媒中で超音波処理してそのままインク組成物とすることもできる。
【0031】
本発明のインク組成物の物性は特に限定されるものではないが、例えば、その表面張力は好ましくは20〜50mN/mである。表面張力が20mN/m未満になると、インク組成物がインクジェット記録用プリンタヘッドの表面に濡れ広がるか、又は滲み出してしまい、インク滴の吐出が困難になることがあり、表面張力が50mN/mを越えると、記録媒体の表面において濡れ広がらず、良好な印刷ができないことがある。
本発明に係るインク組成物においては、メタリック顔料としては、インク組成物全体の2重量%(wt%)以下であることが、より安定な印刷結果を得ることができるため、好ましい。
【0032】
本発明のインク組成物は、各種インクジェット記録方式に適用することができる。すなわち、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電界制御方式、ピエゾ素子の駆動圧力を利用してインクを吐出させるドロップ・オン・デマンド方式(又は圧力パルス方式)、さらには高熱によって気泡を形成し、成長させることによって生じる圧力を利用してインクを吐出させるバブル又はサーマルジェット方式等の各種インクジェット記録方式に適用することができる。
【0033】
また、本発明のインク組成物を用いるインクジェット記録方法では、ノズル径が30μm以下のインクジェットヘッドを用いることが好ましい。
また、本発明のメタリック顔料の平均粒子径とインクジェットヘッドのノズル径との比(平均粒子径/ノズル径)が0.15以下であることが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.アルミニウム顔料分散液の製造
(1)膜厚100μmのPETフイルム上に、下記組成の樹脂層塗工液をスピンコート法によって均一な液膜を形成した後、乾燥させて樹脂薄膜層を作成した。
【0035】
(樹脂層塗工液)
ポリビニルブチラール樹脂(エスレツクBL−10、
積水化学工業(株)製) 3.0重量%
グリセリン 2.0重量%
IPA(イソプロピルアルコール) 残量
【0036】
(2)下記の装置を用いて、上記の樹脂層上に、膜厚70nmのアルミニウム蒸着層を形成した。
装置:(株)真空デバイス、VE−1010形真空蒸着装置
【0037】
(3)上記方法にて形成した樹脂層とアルミニウム蒸着層の積層体を有するPETフイルムをIPA中で超音波分散機を用いて剥離・微細化・分散処理を同時に12時間行い、分散処理積算時間12時間のアルミニウム顔料(メタリック顔料とも称する)分散液を作製した。
この方法にて得られたアルミニウム顔料分散液の顔料含有量は5.0wt%であった。
分散機:(株)アズワン製、超音波洗浄機 VS−150
【0038】
2.粒子径及び粒度分布評価
上記のアルミニウム顔料分散液を下記の装置を用いて、粒子径、粒度分布測定を行った。評価結果を下記表1に示す。
粒子径、粒度分布測定:(株)セイシン企業製 LMS−30
【0039】
3.平均厚みの測定
インク組成物中のメタリック顔料の平均厚みの測定は、電子顕微鏡像より無作為に選んだ10個の平均厚みを測定し、その平均値を採ることにより評価した。
【0040】
4.メタリック顔料含有インク組成物の作製
上記方法にて作成したアルミニウム顔料分散液を用いて、下記組成になるようにメタリック顔料含有インク組成物1を調製した。溶媒および添加剤を混合かつ溶解し、インク溶媒とした後に、顔料分散液をインク溶媒中に添加して、更に常温で30分間混合攪拌した。
【0041】
(メタリック顔料含有インク組成物)
アルミニウム顔料(固型分) 1 wt%
グリセリン 20 wt%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 40 wt%
BYK−UV3500 0.1wt%
IPA(イソプロピルアルコール) 残量
【0042】
5.ろ過性評価
この混合攪拌後のメタリック顔料含有インク組成物について、ろ過精度10μmのステンレスメッシュフィルターを用いてろ過性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0043】
6.記録・印刷安定性、光沢性評価
セイコーエプソン(株)製インクジェットプリンタEM−930C(ノズルφ:25μ
m)を用いて、同社製写真用紙<光沢>(型番KA450PSK)上に印刷を行い、金属光沢を有する印刷面が得られることを確認した。
7.総合評価
上記6の結果より以下のように判定した。
A:インクジェット方式の記録装置で問題なく使用できる。
B:インクジェット方式の記録装置では、使用が困難である。
C:インクジェット方式の記録装置では、使用が不可能と判断される。
【0044】
〔実施例2〕
実施例1と同じ操作を行った。但し、分散処理積算時間12時間を18時間に延長しメタリック顔料含有インク組成物2を調製した。実施例1と同様の各評価結果を表1に示す。
〔実施例3〕
実施例1と同じ操作を行った。但し、分散処理積算時間12時間を24時間に延長しメタリック顔料含有インク組成物3を調製した。実施例1と同様の各評価結果を表1に示す。
〔実施例4〕
実施例1と同じ操作を行った。但し、分散処理積算時間12時間を72時間に延長しメタリック顔料含有インク組成物4を調製した。実施例1と同様の各評価結果を表1に示す。
【0045】
〔実施例5〕
実施例1と同じ操作を行った。但し、分散処理時間を18時間に延長するとともに、蒸着条件を変更して、厚さ32nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、メタリック顔料含有インク組成物5を調製した。実施例1と同様の各評価結果を表1に示す。
〔実施例6〕
実施例1と同じ操作を行った。但し、分散処理時間を18時間に延長するとともに、蒸着条件を変更して、厚さ92nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、メタリック顔料含有インク組成物6を調製した。実施例1と同様の各評価結果を表1に示す。
【0046】
〔比較例1〕
実施例1と同じ操作を行った。但し、分散処理積算時間12時間を1時間に短縮しメタリック顔料含有インク組成物7を調製した。実施例1と同様の各評価結果を表1に示す。
〔比較例2〕
実施例1と同じ操作を行った。但し、分散処理積算時間12時間を10時間に短縮しメタリック顔料含有インク組成物8を調製した。実施例1と同様の各評価結果を表1に示す。
【0047】
〔比較例3〕
実施例1と同じ操作を行った。但し、分散処理時間を18時間に延長するとともに、蒸着条件を変更して、厚さ25nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、メタリック顔料含有インク組成物9を調製した。実施例1と同様の各評価結果を表1に示す。
〔比較例4〕
実施例1と同じ操作を行った。但し、分散処理時間を18時間に延長するとともに、蒸着条件を変更して、厚さ110nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、メタリック顔料含有インク組成物10を調製した。実施例1と同様の各評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
なお、表中のX10、X50、X90は、粒度分布における小粒径側からの累積値がそれぞれ、10%、50%、90%での粒子径を示すものでありここで述べる平均粒子径とはX50の数値である、XMAXは、粒度分布における最大粒子径を示すものである。
【0050】
表1から明らかなように、本発明に係る各実施例のメタリック顔料は、それぞれ満足すべき印刷安定性及び光沢性が共に優れた結果を得たが、平均粒子径に関与する因子が規定外である各比較例のメタリック顔料は、インクジェット用インク組成物として不満足なものであった。
【0051】
〔実施例7〕
組成を下記の通りとした以外は、実施例3と同じ操作でインク組成物11を調製した。
【0052】
アルミニウム顔料(固型分) 1 wt%
ポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製、 3 wt%
エスレックBL−10)
ジエチレングリコールジエチルエーテル 40 wt%
(日本乳化剤株式会社製)
オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製) 0.5wt%
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 残量
(日本乳化剤株式会社製)
【0053】
〔実施例8〕
組成を下記の通りとした以外は、実施例7と同じ操作でインク組成物12を調製した。
【0054】
アルミニウム顔料(固型分) 1 wt%
セルロースアセテートブチレート(関東化学株式会社製、 4 wt%
平均分子量16,000、ブチル化率50〜54%)
ジエチレングリコールジエチルエーテル 40 wt%
(日本乳化剤株式会社製)
オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製) 0.5wt%
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 残量
(日本乳化剤株式会社製)
【0055】
〔実施例9〕
組成を下記の通りとした以外は、実施例7と同じ操作でインク組成物13を調製した。
【0056】
アルミニウム顔料(固型分) 1 wt%
セルロースアセテートブチレート(関東化学株式会社製、 4 wt%
平均分子量16,000、ブチル化率50〜54%)
ジエチレングリコールジエチルエーテル 40 wt%
(日本乳化剤株式会社製)
BYK−UV3500 0.2wt%
(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 残量
(日本乳化剤株式会社製)
【0057】
〔日本工業規格に基づく鏡面光沢度の測定〕
インク組成物3(実施例3)、インク組成物11(実施例7)、インク組成物12(実施例8)、インク組成物13(実施例9)およびインク組成物10(比較例4)を、セイコーエプソン(株)製EM−930C(ノズル直径:φ25μm)を用いて、同社製写真用紙(光沢;KA450PSK)上に記録(ベタ印刷)した。該記録物を、コニカミノルタ株式会社製 光沢度計 MULTIGLOSS 268を用い、JIS Z 8741(1997)に基づく方法で、20°、60°の光沢度評価を実施した。その結果を以下に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
表2から明らかなように、本発明に係る各実施例のインク組成物は、比較例のインク組成物に比べて、優れた金属光沢を有する記録面が得られることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均厚みが30nm以上100nm以下であり、50%平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下であり、最大粒子径が12μm以下である、インクジェットメタリック顔料。
【請求項2】
請求項1に記載のメタリック顔料を含有するインク組成物。
【請求項3】
シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレン系界面活性剤またはアセチレンジオール系界面活性剤を含有する請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
バインダー樹脂がポリビニルブチラールまたはセルロースアセテートブチレートである請求項2又は3に記載のインク組成物。
【請求項5】
ノズル径が30μm以下のヘッドから吐出可能な、請求項2〜4のいずれか1項に記載のインク組成物。

【公開番号】特開2011−140660(P2011−140660A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60437(P2011−60437)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【分割の表示】特願2005−368863(P2005−368863)の分割
【原出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】