説明

メタルマスク及び有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法

【課題】フォトレジストとして同じパターン精度のものを用いて製造しても、開口幅を従来に比べて狭くすることができるメタルマスクを提供する。
【解決手段】メタルマスク11は、3層の金属層12,13,14で構成され、中央の金属層13はメッシュ状に形成されている。金属層13を挟んで両側に設けられた金属層12,14は、それぞれ幅Wが同じに形成されたストライプ状の開口12a,14aを有する。3層の金属層12,13,14は、各開口12a,14aの一部が重なる状態に積層され、かつ重なり部分が目的の幅Wpの貫通孔15になるように積層されている。メタルマスク11は、熱膨張係数が小さい金属、例えば、インバーで形成されている。また、メタルマスク11は耐エッチング性を向上させる表面処理が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシブマトリックス型の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造に好適なメタルマスク及び有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(以下、エレクトロルミネッセンスを適宜ELと記載する。)として、ストライプ状に形成された第1電極(陽極)と、第1電極と直交するストライプ状の第2電極(陰極)とを備え、第1電極及び第2電極との間に有機EL層が形成された所謂パッシブマトリックス型のものがある。この有機ELディスプレイを製造する場合、有機EL層を形成した後に、第2電極を第1電極と直交する平行なストライプ状に形成する必要がある。しかし、有機EL材料は水分に弱いため、ウエットプロセスのフォトリソグラフィ法により第2電極を形成することは難しい。そこで、隣接する第2電極同士の絶縁性を確保するため、第2電極と平行に延びる複数の隔壁を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、有機EL層上に形成された陰極層に対してドライエッチングを行って陰極を形成することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の方法では、透明ガラス基板上に陽極を形成し、陽極上に有機EL層及び陰極層を形成する。そして、陰極層上にシャドウマスクを載置して、ドライエッチングを行うことにより、陰極層及び有機層を分割して陰極を形成する。
【0004】
また、複数の有機EL素子が所定のパターンで基板上に形成された有機EL表示パネルの製造方法における蒸着工程に用いるメタルマスク及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。図8に示すように、特許文献3のメタルマスク50は、蒸着源からの蒸着物質が通過するための複数の貫通開口51を有している。このメタルマスク50は、ニッケル等の金属からなり、貫通開口51の存在密度の高いマスク本体部50aと、マスク本体部50aの周囲に位置するとともにマスク本体部50aの厚さより大きな厚さを有する周縁部50bとからなる。貫通開口51はエッチングにより形成され、マスク本体部50aは機械的研磨により周縁部50bより薄く形成される。また、メタルマスク50全体を電鋳法(析出法)で製造することも提案されている。
【特許文献1】特開平8−315981号公報
【特許文献2】特開平11−74084号公報
【特許文献3】特開2001−237071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機ELディスプレイの利点の1つとして薄型化が可能な点がある。しかし、特許文献1のように隔壁を用いて第2電極を分割する構成では、第2電極を確実に分割するには隔壁を高くする必要があり、特許文献1には隔壁の高さ(厚さ)は1〜10μmが好ましいとされている。この値は第1電極、第2電極あるいは有機EL層の厚さの数倍から10倍以上になる。従って、有機ELディスプレイの薄型化に取ってマイナスとなる。
【0006】
また、有機EL材料は水分や酸素に弱いため、有機EL素子を封止する必要がある。従来、封止手段としてガラス製又はステンレス製の封止缶(カバーケース)が使用されているが、封止缶を使用した構成では有機ELディスプレイの厚みが非常に増大して薄型化に支障を来す。そのため、薄型化を追求する場合は、無機膜による封止が行われている。しかし、隔壁の高さが高くなると、隔壁の陰になっている部分に封止膜が蒸着され難くなり、封止性が低下するという問題もある。
【0007】
一方、特許文献2のようにドライエッチングで陰極を形成する方法では、隔壁を使用する方法に比較して薄型化が可能であり、膜封止を行う場合の封止性に関しても有利となる。しかし、ドライエッチングの際に使用するマスクは、フォトレジストによって製造する場合、一般に板厚より細い(狭い)幅の開口を形成するのが難しい。
【0008】
また、特許文献3に提案された蒸着用のメタルマスクは、メタルマスクの強度(剛性)を確保するため、貫通開口51の存在密度の高いマスク本体部50aの周囲に、マスク本体部50aの厚さより厚い周縁部50bを設けている。しかし、貫通開口51の幅を細くすることに関しては特に記載されていない。
【0009】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、フォトレジストとして同じパターン精度のものを用いて製造しても、開口幅を従来に比べて狭くすることができるメタルマスクを提供することにある。また、第2の目的は、隔壁を用いずに第2電極をドライエッチングで形成する際、第2電極の間隔を従来のメタルマスクを用いた場合に比べて狭くすることができる有機ELディスプレイ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記第1の目的を達成するため請求項1に記載の発明は、ストライプ状の開口を有する複数の金属層が、各開口の一部が重なる状態で、かつ重なり部分が目的の幅の貫通孔になるように積層されている。ここで、「複数の金属層が、各開口の一部が重なる状態で」とは、開口を有する金属層同士が隣接して積層される場合に限らず、メッシュ状の金属層を間に挟むように積層される場合も意味する。また、「重なり部分が目的の幅の貫通孔になる」とは、メタルマスクを構成する複数の金属層のうちの一部の金属層がメッシュ状に形成されている場合は、メッシュ状の金属層以外の金属層の開口が重なっている部分の幅が目的の幅になっていることを意味する。
【0011】
この発明では、複数の金属層に形成された個々の開口の幅が広くても、メタルマスクを、例えば、ドライエッチングの際の保護マスクとして使用する場合、各開口の重なり部分がメタルマスクの貫通孔として機能する。従って、メタルマスクの製造の際に、フォトレジストとして同じパターン精度のものを用いても、メタルマスクの実質的な開口の幅を従来に比べて狭くすることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記メタルマスクは耐エッチング性を向上させる表面処理が施されている。この発明では、エッチング条件が厳しくても、即ち、エッチングガスのメタルマスクの素材金属に対するエッチング性が強くても、メタルマスクの耐久性が向上する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記複数の金属層に形成された各開口は幅が同じである。この発明では、メタルマスクを製造する際に、各金属層に開口を形成するための作業が殆ど同じになり、作業に必要な部品数が少なくなるとともに作業が簡単になる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記金属層は3層設けられ、中央の金属層はメッシュ状に形成されている。この発明では、メッシュ状の金属層を挟んで設けられた両金属層がそれぞれ開口において完全に分断された状態であっても、メタルマスクとして形態を保持することができ、メタルマスクの小型化を図ることができる。
【0015】
前記第2の目的を達成するため請求項5に記載の発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子がマトリックス状に配置された有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法である。そして、基板上に複数の第1電極をストライプ状に形成する第1電極形成工程と、前記第1電極形成工程後に行われ、前記第1電極を覆うように有機エレクトロルミネッセンス層を形成する有機エレクトロルミネッセンス層形成工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス層形成工程後に行われ、前記有機エレクトロルミネッセンス層上に前記第1電極と交差する方向に延びるストライプ状の第2電極を形成する第2電極形成工程とを備えている。前記第2電極形成工程は、前記有機エレクトロルミネッセンス層上に形成した第2電極形成層に対して、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のメタルマスクを用いてドライエッチングを行うことによりストライプ状の第2電極を形成する。
【0016】
この発明では、有機EL層上にストライプ状に第2電極を形成する際に隔壁で第2電極を分割するのではなく、第2電極形成層をドライエッチングすることにより第2電極を形成する。従って、隔壁を使用して第2電極を分割する構成に比較して、薄型化が可能になる。また、第2電極形成層をドライエッチングする際に使用するメタルマスクに請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のメタルマスクを用いるため、第2電極の間隔を従来のメタルマスクを用いた場合に比べて狭くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜請求項4に記載の発明によれば、フォトレジストとして同じパターン精度のものを用いて製造しても、開口幅を従来に比べて狭くすることができる。また、請求項5に記載の発明によれば、隔壁を用いずに第2電極をドライエッチングで形成する際、第2電極の間隔を従来のメタルマスクを用いた場合に比べて狭くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をパッシブマトリックス型の有機ELディスプレイの製造に好適なメタルマスクに具体化した一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。なお、図1〜図6は、メタルマスクあるいは有機ELディスプレイの構成を模式的に示したものであり、図示の都合上、一部の寸法を誇張して分かり易くするために、それぞれの部分の幅、長さ、厚さ等の寸法の比は実際の比と異なっている。
【0019】
図1(a),(b)に示すように、メタルマスク11は、3層の金属層12,13,14で構成され、中央の金属層13はメッシュ状に形成されている。金属層13を挟んで両側に設けられた金属層12,14は、それぞれ幅Wが同じに形成されたストライプ状の開口12a,14aを有する。3層の金属層12,13,14は、各開口12a,14aの一部が重なる状態に積層されている。即ち、メタルマスク11は、ストライプ状の開口12a,14aを有する複数の金属層12,14が、各開口12a,14aの一部が重なる状態で、かつ重なり部分が目的の幅Wpの貫通孔15になるように積層されている。
【0020】
メタルマスク11は、熱膨張係数が小さい金属、例えば、インバー(Invar)で形成されている。インバーとは、ニッケル(Ni)が36重量%で残りが実質的に鉄(Fe)の合金である。また、メタルマスク11は耐エッチング性を向上させる表面処理が施され、表面が図示しない被膜により覆われている。被膜は、例えば、Y、Al、Crで形成されている。
【0021】
次に前記のように構成されたメタルマスク11の製造方法を図2及び図3を用いて説明する。先ず金属層12,13,14が3層に積層された積層金属板16を準備する。積層金属板16は、所定の厚さの2枚の金属板と、メッシュ状の金属板を積層した状態で圧延・接合することにより形成される。具体的には2枚の金属板の間にメッシュ状の金属板を配置した状態で圧延ロールにより、加熱、圧延して一体化することで積層金属板16が形成される。
【0022】
次に図2(a)に示すように、積層金属板16の片面(金属層12側)にフォトレジストにより、所定の幅W1の開口17aを有するメタル加工用マスク17を形成する。次に開口17aを介してエッチング処理を行い、図2(b)に示すように、金属層12に開口12aを形成する。エッチング処理は、金属層12の厚さに相当する深さの開口12aが確実に形成される所定時間行われる。なお、エッチング処理は、開口12aが貫通した後も短時間継続されるため、金属層13及び金属層14も多少エッチングされるが支障はない。
【0023】
次にメタル加工用マスク17を除去した後、図3(a)に示すように、積層金属板16の他方の面(金属層14側)にフォトレジストにより、所定の幅W1の開口18aを有するメタル加工用マスク18を形成する。開口18aの幅W1は、メタル加工用マスク17の開口17aと同じであるが、位置がずれた状態で形成される。開口18aのズレ量は、開口17aと開口18aとの重なり部分が所定の幅W2となるように設定される。所定の幅W2は、後工程の表面処理で形成される耐エッチング性を高める被膜の厚さ分、貫通孔15の幅Wpより広く(大きく)形成される。
【0024】
次に開口18aを介してエッチング処理を行い、図3(b)に示すように、金属層14に開口14aを形成する。エッチング処理は、開口14aが貫通した後も短時間継続されるため、金属層13及び金属層12も多少エッチングされるが支障はない。次にメタル加工用マスク18を除去した後、耐エッチング性を向上させる表面処理が施されて、図1(a)に示すメタルマスク11が完成する。
【0025】
次に有機ELディスプレイの製造方法を説明する。
先ず第1電極形成工程において、図4(a)に示すように、基板20上に複数の第1電極21をストライプ状に形成する。具体的には、先ず基板20の上に透明電極を構成するITO膜を形成する。ITO膜はスパッタリング法、真空蒸着法、イオン化蒸着法等の公知の薄膜形成方法によって形成される。次に、このITO膜に対してエッチングを行い、第1電極21をストライプ状に形成する。
【0026】
次に図4(a)に示すように、第1電極21の間を埋めるように絶縁膜22を形成する。絶縁膜22は、ポジ型レジストを使用したフォトリソグラフィ法により形成される。
次に有機エレクトロルミネッセンス層形成工程において第1電極21及び絶縁膜22を覆うように有機EL層23が積層形成される。有機EL層23は、例えば、蒸着法で形成され、有機EL層23を構成する各層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層)が蒸着により順次積層されることで形成される。
【0027】
次に、第2電極形成工程にて第2電極24が形成される。第2電極形成工程においては、図4(b)に示すように、有機エレクトロルミネッセンス層形成工程にて形成された有機EL層23上に、第2電極形成層25を形成する。第2電極形成層25は、例えば、アルミニウム(Al)を蒸着することにより形成される。次に第2電極形成層25上に幅Wpの複数の貫通孔15を有したメタルマスク11を載置し、貫通孔15を介して第2電極形成層25をドライエッチングしてストライプ状の第2電極24を形成する。ドライエッチングは、エッチングガスとして、塩素系のガス(例えば、Cl、BCl、CCl)を用いて行う。その結果、図5(a)及び図6に示すように、第2電極24が間隔S(幅Wp)をおいてストライプ状に形成された状態になる。即ち、図6に示すように、第1電極21及び第2電極24の間に有機EL層23が形成された有機エレクトロルミネッセンス素子がマトリックス状に配置された状態になる。なお、図示の都合上、図4(b)及び図5(a)においては、メタルマスク11の各金属層12,13,14の図示を省略している。
【0028】
次に封止膜形成工程で封止膜が形成される。封止膜26は、公知のプラズマCVD法で、例えば、窒化ケイ素を蒸着することにより形成される。そして、図5(b)に示すように、有機ELディスプレイ27が完成する。封止膜26は、第1電極21、有機EL層23、第2電極24の露出部分を覆うように形成される。
【0029】
この実施形態では以下の効果を有する。
(1)メタルマスク11は、ストライプ状の開口12a,14aを有する複数の金属層12,14が、各開口12a,14aの一部が重なる状態で、かつ重なり部分が目的の幅Wpの貫通孔15になるように積層されている。そして、メタルマスク11を、ドライエッチングの際の保護マスクとして使用する場合、各開口12a,14aの重なり部分がメタルマスク11の貫通孔15として機能する。従って、メタルマスク11の製造の際に、フォトレジストとして同じパターン精度のものを用いても、メタルマスク11の実質的な開口の幅Wpを従来に比べて狭くすることができる。
【0030】
(2)メタルマスク11の貫通孔15の幅Wpは、メタルマスク11を形成(製造)する際に、メタル加工用マスク18の開口18aの位置のずれ量を変更することにより、メタル加工用マスク18を形成する際の位置精度の範囲で自由に設定することができる。
【0031】
(3)金属層12,13,14が3層設けられ、中央の金属層13はメッシュ状に形成されている。従って、メッシュ状の金属層13を挟んで設けられた両金属層12,14がそれぞれ開口12a,14aにおいて完全に分断された状態であっても、メタルマスク11として形態を保持することができ、メタルマスク11の小型化を図ることができる。
【0032】
(4)複数の金属層12,14に形成された各開口12a,14aは幅W1が同じである。従って、メタルマスク11を製造する際に、各金属層12,14に開口12a,14aを形成するための作業が殆ど同じになり、作業に必要な部品数が少なくなるとともに作業が簡単になる。
【0033】
(5)メタルマスク11は耐エッチング性を向上させる表面処理が施されているため、エッチング条件が厳しくても、即ち、エッチングガスのメタルマスク11の素材金属に対するエッチング性が強くても、メタルマスク11の耐久性が向上する。
【0034】
(6)メタルマスク11を構成する各金属層12,13,14は、熱膨張係数が小さな金属であるインバーで形成されている。従って、メタルマスク11と基板20との熱膨張係数の差が小さくなり、メタルマスク11を用いてドライエッチングで第2電極24を形成する際に、熱によりメタルマスク11が膨張しても、メタルマスク11が基板20に対して相対移動するのが抑制され、第2電極24を傷つけ難くなる。
【0035】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ メタルマスク11は、メッシュ状の金属層13を挟んで両側に金属層12,14が設けられた3層構造に限らない。例えば、図7(a)に示すように、開口12a,14aを有する2層の金属層12,14が積層された構成でもよい。各開口12a,14aの重なり部分が目的の幅Wpの貫通孔15になる。この場合、開口12a,14aがメタルマスク11の全長にわたって延びた構成を採用することはできず、図7(b)に示すように、開口12a,14aは長孔として形成され、メタルマスク11は、長孔の両端に沿って延びる枠部(連結部)を備えている。
【0036】
○ 開口12a,14aの幅Wは同じである必要はなく、異なる幅に形成してもよい。
○ メタルマスク11は3層以上の金属層で構成されてもよい。
○ 金属層12,13,14を熱膨張係数の小さな材料で形成する場合、材料はインバーに限らず、例えば、42アロイやコバールを使用してもよい。42アロイは、ニッケルが42重量%で残りが実質的に鉄の合金であり、コバールは、ニッケルが29重量%、コバルトが17重量%で残りが実質的に鉄の合金である。
【0037】
○ 金属層12,13,14の材料は熱膨張係数の小さな金属(熱膨張係数がガラスに近い金属)に限らず、例えば、ステンレス鋼やアルミニウムでもよい。
○ 金属層12,13,14をそれぞれ異なる材料で形成してもよい。
【0038】
○ メタルマスク11を製造する際における、開口12a,14aを形成するためのエッチングは、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれであってもよい。しかし、ウェットエッチングの方が、短時間でエッチングを行うことができ、生産性が高くなる。
【0039】
○ メタルマスク11を製造する際における、開口12a,14aを形成するためのエッチングの完了は、予め試験で定めた時間によって管理する方法に限らず、メタルマスクの色を観察して管理してもよい。
【0040】
○ メタルマスク11に対して、必ずしも耐エッチング性向上のための表面処理を施さなくてもよい。
○ 第1電極21の間に形成した絶縁膜22を省略してもよい。しかし、絶縁膜22を設けた方が、隣接する第1電極21同士の絶縁が確実になるだけでなく、第1電極21上に順次積層される有機EL層23及び第2電極形成層25が平坦な状態で積層され、絶縁膜22を形成しない場合に比較して、メタルマスク11を使用したドライエッチングによる第2電極24の形成が円滑に行われる。
【0041】
○ 有機EL層23を酸素や水分から保護するための封止手段として封止膜26を設ける代わりに缶封止を行ってもよい。
○ 第1電極21と第2電極24とは交差していればよく、必ずしも直交でなくてもよい。
【0042】
○ 有機EL層23の構成は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層の構成に限らず、少なくとも発光層を含む構成であればよい。例えば、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層の3層構成や、発光層を挟んで正孔注入輸送層と電子注入輸送層とを設けた3層構成としてもよい。また、発光層の材料によっては、有機EL層23を発光層のみから構成してもよい。
【0043】
○ 基板20はガラスに限らず、透明な樹脂基板やフィルムであってもよい。
○ 第1電極21が陽極で第2電極24が陰極に限らず、第1電極21が陰極、第2電極24が陽極としてもよい。
【0044】
○ 有機ELディスプレイ27は、所謂ボトムエミッション型に限らず、基板20と反対側から光が出射するトップエミッション型の構成としてもよい。トップエミッション型の場合、基板20及び基板20側に配置される第1電極21は透明でなくてもよい。
【0045】
○ 第1電極21を構成する透明電極は、ITOに限らず、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化錫)等を用いることができる。
○ 第2電極24は、アルミニウムに限らず、従来用いられている公知の陰極材料等が使用でき、例えば、金、銀、銅、クロム等の金属やこれらの合金等を用いてもよい。
【0046】
○ 第2電極24は光反射機能を備えていなくてもよい。
○ 第1電極形成工程では、あらかじめ第1電極21が設けられた基板20を用意してもよい。
【0047】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)2層に積層された金属板の一方の金属層にエッチング処理を施してストライプ状でかつ他方の金属層に達する第1開口を形成した後、他方の金属層にエッチング処理を施してストライプ状でかつ他方の金属層に達する第2開口を、前記第1開口と一部が重なるとともに、重なり部分が目的の幅の貫通孔になるように形成するメタルマスクの製造方法。
【0048】
(2)2枚の金属板をメッシュ状の金属板を挟んで積層した3層の金属板を使用し、前記メッシュ状の金属板の一方の面に積層された金属層にエッチング処理を施してストライプ状でかつメッシュ状の金属板に達する第1開口を形成した後、他方の面に積層された金属層にエッチング処理を施してストライプ状でかつメッシュ状の金属板に達する第2開口を形成するメタルマスクの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)は一実施形態のメタルマスクの部分概略斜視図、(b)は部分断面図。
【図2】(a),(b)はメタルマスクの製造工程を示す模式断面図。
【図3】(a),(b)はメタルマスクの製造工程を示す模式断面図。
【図4】(a)は有機ELディスプレイの製造工程を示す模式斜視図、(b)は模式断面図。
【図5】(a),(b)は有機ELディスプレイの製造工程を示す模式断面図。
【図6】第2電極が形成された状態の有機ELディスプレイの模式平面図。
【図7】(a)は別の実施形態におけるメタルマスクの模式断面図、(b)は模式斜視図。
【図8】従来技術のメタルマスクの模式断面図。
【符号の説明】
【0050】
W,W1,W2,Wp…幅、11…メタルマスク、12,13,14…金属層、12a,14a,17a,18a…開口、15…貫通孔、20…基板、21…第1電極、23…有機EL層、24…第2電極、25…第2電極形成層、27…有機ELディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライプ状の開口を有する複数の金属層が、各開口の一部が重なる状態で、かつ重なり部分が目的の幅の貫通孔になるように積層されたメタルマスク。
【請求項2】
前記メタルマスクは耐エッチング性を向上させる表面処理が施されている請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項3】
前記複数の金属層に形成された各開口は幅が同じである請求項1又は請求項2に記載のメタルマスク。
【請求項4】
前記金属層は3層設けられ、中央の金属層はメッシュ状に形成されている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のメタルマスク。
【請求項5】
有機エレクトロルミネッセンス素子がマトリックス状に配置された有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法であって、
基板上に複数の第1電極をストライプ状に形成する第1電極形成工程と、
前記第1電極形成工程後に行われ、前記第1電極を覆うように有機エレクトロルミネッセンス層を形成する有機エレクトロルミネッセンス層形成工程と、
前記有機エレクトロルミネッセンス層形成工程後に行われ、前記有機エレクトロルミネッセンス層上に前記第1電極と交差する方向に延びるストライプ状の第2電極を形成する第2電極形成工程とを備え、
前記第2電極形成工程は、前記有機エレクトロルミネッセンス層上に形成した第2電極形成層に対して、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のメタルマスクを用いてドライエッチングを行うことによりストライプ状の第2電極を形成する有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−10268(P2008−10268A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178381(P2006−178381)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】