説明

メタル化粧板

【課題】 金属の光沢、意匠性を保ち、かつメラミン樹脂の優れた物性を有する化粧板を得る。
【解決手段】 コア基材に、裏面にポリビニルアセタール樹脂が塗布されるとともに表面にはメラミン系樹脂が塗布された樹脂塗布金属箔を積層し、さらに表面にはシート状基材を積層して、熱圧一体化し、成形後には該シート状基材を除去する。該メラミン系樹脂には水溶性メラミン樹脂とポリビニルアセタール樹脂からなる樹脂を用いる。コア基材は、MDF、樹脂含浸コア紙などを用いる。金属箔とコア基材の密着性を向上させる為、シランカップリング剤を接着剤に添加するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔を用いたメタル化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでより表面に金属箔を貼着した化粧板が知られており、その高い意匠性から住宅機器、内装材などに幅広く使用されている。この化粧板は表面層としてアルミ箔、銅箔等の金属箔の表面に保護塗装したものが用いられ、コア層にはクラフト紙にフェノール樹脂を含浸した樹脂含浸紙が用いられている。その他、メタル調の化粧材としてメタル調の印刷が施された抄造紙にメラミン樹脂を含浸した紙を用いるメタル調メラミン化粧板が知られている。
【特許文献1】特開平2−116544号公報
【特許文献2】特開昭62−5846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら表面に金属箔を貼着した化粧板の場合には塗装金属箔であることから天板等の用途では傷がすぐに付いてしまい水平面用途で使用するには十分に耐えうる物性を持ち合わせていなかった。また、メタル調メラミン化粧板の場合にはメラミンの優れた物性により天板等の水平面用途においても十分耐え得る物性を有するが、本物の金属箔を使用した化粧板と比較し光沢、質感、奥行きなどの面において意匠性が劣っていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる状況に鑑み検討されたもので、コア基材に、裏面にポリビニルアセタール樹脂が塗布され、表面にはメラミン系樹脂が塗布された樹脂塗布金属箔が積層され、さらに表面がシート状基材で被覆され、熱圧成形後には該シート状基材が除去されてなることを特徴とするメタル化粧板である。
【発明の効果】
【0005】
金属箔の表裏に樹脂が塗布され表面をシート状基材で被覆して熱圧成形し、成形後にシート状基材を除去することにより、金属の光沢、意匠性を保ち、かつメラミン樹脂の優れた物性を有する化粧板を得ることができる。しかも樹脂含浸オーバーレイ紙を用いていないので鮮明性が向上する。
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明に係わるコア材は、MDF、樹脂含浸コア紙などが挙げられる。コア紙としては、繊維質基材、例えば、未晒しクラフト紙、晒しクラフト紙などの他、リンター紙、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等やこれらの変成物およびエチレン−酢酸ビニル共重合体などに代表される各種共重合体からなる有機繊維およびこれらの混合物か、さらにはこれらの重合体からなる複合繊維などが挙げられる。
【0007】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、或いはこれらの混合物などが挙げられる。とりわけ耐衝撃性、強度、耐熱性に優れるフェノール樹脂が好適である。含浸率は数1で示される算出方法で30〜100%とすればよい。
【0008】
【数1】

【0009】
フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とをフェノール性水酸基1モルに対してアルデヒド類を1〜3モルの割合で塩基性触媒下或いは酸性触媒下にて反応させて得られるもので、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが挙げられ、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキザール、トリオキザールなどが挙げられる。
【0010】
また、必要に応じてパラトルエンスルフォンアミド、桐油、燐酸エステル類、グリコール類などの可塑化を促す変性剤で変性されたものも適用でき、塩基性触媒としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、及びトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類、アンモニアが挙げられ、酸性触媒としては、パラトルエンスルフォン酸、塩酸などが挙げられる。
【0011】
本発明に係わる金属箔は厚み10〜50μm程度で、着色加工、エンボス型、もしくはエンボスロールを用いて、凹凸を施してもよい。凹凸としては、砂目状、もしくは梨地状等のほか、ヘアライン仕上げが挙げられる。金属箔としては金箔、銀箔、銅箔、亜鉛箔、インジウム箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などが挙げられる。厚みが薄いと取り扱い中に破損しやすく、厚いと仕上がった製品が反りやすくなる。とりわけ取り扱いのし易さ、防湿効果、光沢色がメタリック調に視認できる点からはアルミニウム箔が好ましい。
【0012】
金属箔のコア基材に接する面にはコア基材と金属箔との密着性を向上させるために接着剤が塗布される。接着剤の種類は特に限定されないが、耐熱性に優れた接着剤を使用することが好ましく、例えばエポキシ系、フェノール系、クロロプレンゴム系、ポリビニルアセタール系、変性ポリビニルアセタール系、シリコーン系、ポリイミド系、ポリベンツイミダゾール系の接着剤が挙げられる。とりわけフェノール樹脂含浸コア紙を用いる場合は、変性ポリビニルアセタール系、具体的にはフェノール−ブチラール系の接着剤を用いると密着性が良い。
【0013】
シート状基材としては、主にプラスチックフィルムや金属箔が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等を使用する塗布ができる。金属箔としては前述のものが適用できる。更に基材は光沢に変化をもたせた艶有りタイプ、艶消しタイプであってもよく、エンボス加工を施したものであってもよい。
【0014】
メラミン樹脂としてはアミノ化合物、例えばメラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどとホルムアルデヒドを反応させた初期縮合物のほか、メチルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコ−ルによるエ−テル化、パラトルエンスルホンアミドなどの可塑化を促す反応性変性剤で変性されたものが適用でき、中でもメラミンとホルムアルデヒドを採択したものが耐久性に優れ好ましい。
【0015】
本発明では金属箔シート基材に接する面に塗布される樹脂として、前記メラミン樹脂に、ポリビニルアセタール樹脂を配合したメラミン系樹脂が使用される。ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルアルコールとアルデヒドの縮合反応させ、アセタール化することによって得られる。アルデヒドとしては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなど等が挙げられ、これらのアルデヒドは単独で或いは二種以上を組み合わせて用いられる。芳香族アルデヒド、例えばベンズアルデヒドを用いたポリビニルアセタール樹脂を用いると耐水性がよく好ましい。
【0016】
市販品を例示すれば、エスレックBM−1、同BM−2、同BM−5、同BX−1、同BX−2、同BX−5、同BL−10、同BL−1、同BX−L、同KS−1、同KS−3、同KS−5、同KS−10、同KX−1、同KX−5(以上 積水化学工業株式会社 製品名)、デンカブチラール#5000D、同6000C、同6000EP(以上 電気化学工業株式会社 製品名)などがある。これらは単独使用若しくは併用のいずれでも構わない。
【0017】
メラミン樹脂とポリビニルアセタール樹脂の配合割合は固形分比で1:0.1〜0.8とするのが好ましく、下限に満たないとフィルムへのレベリング、馴染みが悪いほか金属箔との密着性が悪く、一方上限を超えるとメラミン樹脂の優れた性質、具体的には耐摩耗性、耐熱性、耐衝撃性などが劣りやすくなる。
【0018】
更に、金属箔とコア基材の密着性を向上させる為、シランカップリング剤を接着剤に添加するのが好ましく、各種シランカップリング剤の中でもエポキシ系シランカップリング剤が密着性の面からとりわけ好ましく、具体的には、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。添加量はメラミン系の樹脂の固形分100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましく効果がある。
【0019】
基材に前記のメラミン系樹脂を塗布する場合は公知の方法、例えば、スプレーコート、グラビアコート、バーコート、ナイフコート、ロールコート、ブレードコート、ダイコート、カーテンコート、リバースコート、コンマコートなどを用いることができる。
【0020】
本発明のメタル化粧板は、コア基材に、裏面にポリビニルアセタール樹脂が塗布されるとともに表面にはメラミン系樹脂が塗布された樹脂塗布金属箔を積層し、さらに表面にはシート状基材を積層した後、加熱加圧プレスを用いて熱圧一体化し、成形後には該シート状基材を除去することにより得ることができる。熱圧成形条件は、加熱温度110〜180℃、加圧条件5〜10MPaであればよい。
【実施例1】
【0021】
フェノール樹脂含浸紙の作成
フェノールに対するホルムアルデヒドのモル比が1.3のレゾールタイプのフェノール樹脂を、水酸化ナトリウム触媒で反応し、メタノールを添加して樹脂分50重量%の未変性のフェノール樹脂液を得、次いで、フェノール含浸樹脂液に、坪量200g/mのクラフト紙に数1で示す含浸率が50%となるように含浸、乾燥して、フェノール樹脂含浸紙を作製した。
【0022】
樹脂塗布アルミ箔の製造
厚さ40μmの硬質アルミ箔の裏面側に、固形分10%のフェノール−ブチラール樹脂(ブチラール樹脂、デンカブチラール#5000−D 商品名 電気化学工業株式会社製)を塗工し、乾燥後の重量が5g/mとなるよう得た。次いで、表面側に水溶性のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂部とベンズアルデヒドを用いて得られたポリビニルアセタール樹脂(エスレックK「KX−5」積水化学工業株式会社)を固形分比にして1:0.6配合したメラミン系樹脂に、グリシドキシプロピルトリメトキシシシラン(SH−6040:東レ・ダウコーニング株式会社製)を樹脂固形分100重量部に対して1重量部添加した樹脂液を塗工し、乾燥後の重量が10g/mとなるよう得た。
【0023】
メタル化粧板の製造
下から順に、フェノール樹脂含浸紙を5枚、樹脂塗布アルミ箔を1枚と、シート状基材として、厚み25μmの片面艶消しポリプロピレンフィルムを1枚積層し、温度140℃、圧力6MPa、時間60分の条件で熱圧成形し、フィルムを剥離し、実施例1のメタル化粧板を得た。
【実施例2】
【0024】
実施例1において、シート状基材として、エンボス加工されたポリプロピレンフィルムを用いた以外は同様に実施した。
【実施例3】
【0025】
実施例1において、金属箔に厚さ40μmの銅箔を用いた以外は同様に実施した。
【0026】
比較例1
実施例1において、メラミン樹脂とポリビニルアセタール樹脂の配合割合を1:0.01とした以外は同様に実施した。
【0027】
比較例2
実施例1において、メラミン樹脂とポリビニルアセタール樹脂の配合割合を1:1とした以外は同様に実施した。
【0028】
評価結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
評価方法は以下の通りとした。
密着性(表面側);化粧層にカッターナイフにて碁盤目(2mm×2mmで100マス)の切り込みをアルミニウム箔に達するまで入れ、セロハンテープを貼り付け、急激に剥がし、剥離箇所の有無を確認し残存の桝目を数えた。
スクラッチ性;1kgの荷重をかけた市販の一般金ダワシを化粧材表面に置き、
該金ダワシを化粧板表面で15往復、横移動させスクラッチ試験を行い、試験後表面に傷が付かないものを○、傷が付くものを×とした。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1のメタル化粧板の分解構成断面図。
【符号の説明】
【0032】
1 シート状基材
2 メラミン系樹脂
3 フェノール−ブチラール樹脂
4 金属箔
5 樹脂塗布金属箔
6 フェノール樹脂含浸コア紙
9 メタル化粧板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基材に、裏面にポリビニルアセタール樹脂が塗布され、表面にはメラミン系樹脂が塗布された樹脂塗布金属箔が積層され、さらに表面がシート状基材で被覆され、熱圧成形後には該シート状基材が除去されてなることを特徴とするメタル化粧板。
【請求項2】
該メラミン系樹脂が水溶性メラミン樹脂とポリビニルアセタール樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のメタル化粧板。


【図1】
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【公開番号】特開2009−23244(P2009−23244A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189462(P2007−189462)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】