説明

メタン醗酵処理プラント

【課題】メタン醗酵槽の底に砂が沈積せず、しかも、簡易低コスト型で処理効率が高いメタン醗酵処理プラントを提供する。
【解決手段】電動切替弁10を切替えることにより、最小限一台のポンプ9で、搾汁液槽3からメタン醗酵槽6への搾汁液Bの導入、メタン醗酵槽から抜き出した液Dのメタン醗酵槽への返還、メタン醗酵槽から抜き出した液Dの砂分離器7への供給および砂を分離した液のメタン醗酵槽への返還、メタン醗酵槽から抜き出した液Dのガス吸入器8への供給およびガスを吸入した液のメタン醗酵槽への返還、メタン醗酵槽から抜き出した消化液Eの消化液槽11への移送を行うメタン醗酵処理プラントとする。砂分離器7で砂を除去し、風船型のガスホルダ4、簡易建屋5、既製コンクリート擁壁3a,6aと水密性シート3b,3aで形成した搾汁液槽3及びメタン醗酵槽6を採用して、簡易化、低コスト化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易低コスト型で、処理効率の高い、メタン醗酵処理プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境に優しいエネルギーとして、家畜糞尿や食品残渣などの高濃度の有機性排水をメタン醗酵させて得られるバイオガスが注目されている。
【0003】
このようなメタン醗酵を行わせる装置として、例えば、導入した家畜の糞尿等をメタン醗酵させる醗酵槽と、この醗酵槽内で発生したガスを導入してこのガスに含まれる水分を除去する水抜き槽と、この水分を除去したガスから更に硫化水素を除去する脱硫槽と、この脱硫槽から導出されたガスをガスタンクに導くと共に醗酵槽内に攪拌用ガスとして供給するブロアとを備えて成るメタン醗酵装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、本出願人のうちの一人も、水産加工工程で排出される血汁や煮汁を除蛋白処理した液を効率良くメタン醗酵させる方法(特許文献2)や、酵母菌でアルコール醗酵させた後の廃液を効率良くメタン醗酵させる方法(特許文献3)や、豆腐粕を水で希釈した液を効率良くメタン醗酵させる方法(特許文献4)を既に出願し、特許を受けている。
【特許文献1】実開昭60−24396号公報
【特許文献2】特開昭63−185499号公報
【特許文献3】特開昭64−474498号公報
【特許文献4】特開平2−187199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2,3,4のメタン醗酵方法は、これといった不都合もなく実施され、水産加工業者、酒造業者、豆腐製造業者等から排出される廃物のエネルギー源としての再利用に大きく貢献している。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のメタン醗酵方法のように家畜の糞尿等を原料とするものは、かなり多量の砂が原料中に含まれるため、この砂がメタン醗酵槽の底に大量に堆積することになる。従って、この砂を除去することが必要になるが、この砂の除去作業はかなり面倒な作業で時間を要するため、大型のメタン醗酵槽では砂の除去作業に1〜3カ月程度かかる場合があり、その間、装置を停止しなければならないので、稼働率が大幅に低下するという問題があった。
【0007】
また、メタン醗酵に必要な設備費用や維持費用よりも、メタン醗酵で得られるバイオガスの収入を多くして利益を上げるためには、できる限り簡易低コスト型で処理効率の高い設備とすることが必要になるが、これまでのメタン醗酵処理設備は簡易低コスト型のものでもなければ処理効率の高いものでもないため、経済的な収支がとりにくいという問題もあった。
【0008】
本発明は上記事情の下になされたもので、メタン醗酵槽の底に砂が沈積せず、しかも、簡易低コスト型で処理効率が高いメタン醗酵処理プラントを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るメタン醗酵処理プラントは、家畜糞尿などの有機性廃棄物から分離した搾汁液を一時的に貯溜する搾汁液槽と、搾汁液槽から搾汁液を導入してメタン醗酵させるメタン醗酵槽と、メタン醗酵槽内で発生したガスを一時的に貯溜するガスホルダと、メタン醗酵槽から抜き出した液をメタン醗酵槽に返還する前にこの液に含まれている砂を分離する砂分離器と、メタン醗酵槽から抜き出した液をメタン醗酵槽に返還する前にこの液にメタン醗酵槽から供給されたガスを吸入させるガス吸入器と、メタン醗酵槽から抜き出した消化液を一時的に貯溜する消化液槽と、これらを連結する管路に設置された最小限一台のポンプおよび電動切替弁を少なくとも備え、電動切替弁を切替えることによって、最小限一台のポンプで、搾汁液槽からメタン醗酵槽への搾汁液の導入、メタン醗酵槽から抜き出した液のメタン醗酵槽への返還、メタン醗酵槽から抜き出した液の砂分離器への供給および砂を分離した液のメタン醗酵槽への返還、メタン醗酵槽から抜き出した液のガス吸入器への供給およびガスを吸入した液のメタン醗酵槽への返還、メタン醗酵槽から抜き出した消化液の消化液槽への移送を行うことを特徴とするものである。
【0010】
本発明のメタン醗酵処理プラントにおいては、上記ガスホルダが気密性シートからなる風船型のガスホルダであり、この風船型のガスホルダをメタン醗酵槽の天板の上に設置すると共に、この天板に形成された通気口を介して風船型のガスホルダとメタン醗酵槽を連通させることが好ましい。そして、この通気口に除水器を取付けることが好ましい。また、骨材とテント用布とで構築した簡易建屋の内部に上記のガスホルダを収容し、この簡易建屋の上部にガスホルダの上端を取付けることが好ましい。
【0011】
また、本発明のメタン醗酵処理プラントにおいては、メタン醗酵槽の内部に、嫌気性汚泥を担持させた不織布を取付け、メタン醗酵槽内の液に対する嫌気性汚泥の濃度を4±1質量%に維持させることが好ましい。そして、メタン醗酵槽、搾汁液槽、消化液槽のそれぞれの槽底を水密性シートで形成すること、メタン醗酵槽、搾汁液槽のそれぞれの側壁を既製のコンクリート擁壁で形成すること、メタン醗酵槽、搾汁液槽の側壁外面に保温材を添設することが好ましい。更に、メタン醗酵槽、搾汁液槽のそれぞれの内部に熱交換器を取付け、ガスホルダから抜き出して除湿、精製したガスを燃焼させて加熱した温水をそれぞれの熱交換器に供給して、メタン醗酵槽の液温を36±5℃、搾汁液槽の液温を50±5℃に保温することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のメタン醗酵処理プラントは、電動切替弁を切替えることによって、最小限一台のポンプで、搾汁液槽からメタン醗酵槽への搾汁液の導入、メタン醗酵槽から抜き出した液のメタン醗酵槽への返還、メタン醗酵槽から抜き出した液の砂分離器への供給および砂を分離した液のメタン醗酵槽への返還、メタン醗酵槽から抜き出した液のガス吸入器への供給およびガスを吸入した液のメタン醗酵槽への返還、メタン醗酵槽から抜き出した消化液の消化液槽への移送を行うので、従来のように数台のポンプを使用するメタン醗酵装置に比べると、備品数(ポンプの台数)が減少し、コストの低減を図ることができる。そして、この最小限一台のポンプでメタン醗酵槽から抜き出した液を砂分離器へ供給して砂を分離し、この砂を分離除去した液をメタン醗酵槽へ返還するので、メタン醗酵槽の底に砂が沈積する心配はない。従って、従来のメタン醗酵装置のように砂を除去するためにかなり長い期間、装置を停止することが不要となるので、稼働率を大幅に向上させることができる。
【0013】
また、本発明のメタン醗酵処理プラントは、最小限一台のポンプでメタン醗酵槽から抜き出した液をガス吸入器へ供給し、この液にメタン醗酵槽から供給されたガスを吸入させてメタン醗酵槽へ返還させることにより、メタン醗酵槽内の液をガス攪拌することができる。そして、最小限一台のポンプでメタン醗酵槽から抜き出した液をガス吸入器へ供給しないでメタン醗酵槽へ返還すると、この返還された液によってメタン醗酵槽内の液を攪拌することもできる。
【0014】
更に、気密性シートからなる風船型のガスホルダをメタン醗酵槽の天板の上に設置し、この天板に形成された通気口を介して風船型のガスホルダとメタン醗酵槽を連通させたものは、従来のように金属製のガスタンクをメタン醗酵槽と異なる場所に設置したものに比べると、設備内容が遥かに簡易でコストの低減および設置スペースの削減を図ることができる。そして、上記の通気口に除水器を取付けたものは、水分の大半を除去したガスをガスホルダに溜めることができるので、ガスホルダの内壁に水滴が付着するのを防止することができる。また、骨材とテント用布とで構築した簡易建屋の内部にガスホルダを収容して、この簡易建屋の上部にガスホルダの上端を取付けたものは、骨材とテント用布からなる簡易建屋を安価に構築でき、しかも、この簡易家屋によってガスホルダを保護できる利点がある。
【0015】
また、メタン醗酵槽の内部に、嫌気性汚泥を付着させた汚泥付着布を取付け、メタン醗酵槽内の液に対する嫌気性汚泥の濃度を4±1質量%に維持させるようにしたものは、嫌気性汚泥濃度が従来のメタン醗酵槽における嫌気性汚泥濃度よりも遥かに高濃度であるため、後述するようにメタン醗酵槽の液温が36±5℃に保温されることと相俟って、メタン醗酵が極めて活発になり、メタンガスが70〜80%を占めるガスを得ることが可能となる。
【0016】
そして、メタン醗酵槽、搾汁液槽、消化液槽のそれぞれの槽底を水密性シートで形成したものや、メタン醗酵槽、搾汁液槽のそれぞれの側壁を既製のコンクリート擁壁で形成したものは、各槽の構築が簡易で材料費が安価であるため設備コストの低減を図ることができ、また、メタン醗酵槽、搾汁液槽の側壁外面に保温材を添設したものは、放熱が少ないため、保温に要する熱量を大幅に節約できる利点があり、経済的である。更に、メタン醗酵槽、搾汁液槽のそれぞれの内部に熱交換器を取付け、ガスホルダから抜き出して除湿、精製したガスを燃焼させて加熱した温水をそれぞれの熱交換器に供給して、メタン醗酵槽の液温を36±5℃、搾汁液槽の液温を50±5℃に保温するようにしたものは、ガスホルダから抜き出して除湿、精製したガスを燃料としてメタン醗酵槽や搾汁液槽を保温するので、外部から燃料を購入する必要がなく、しかも、メタン醗酵槽を36±5℃に保温することによって、前述のようにメタンガス濃度の高いガスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るメタン醗酵処理プラントの主要部分の概略説明図、図2は同メタン醗酵処理プラントのガス精製部分の概略説明図、図3及び図4は風船型のガスホルダと簡易建屋を天板の上に設けたメタン醗酵槽の概略断面図及び概略平面図、図5は汚泥付着布の斜視図である。
【0019】
このメタン醗酵処理プラントの主要部分は、図1に示すように、受入槽1、固液分離器2を天板の上に設置した搾汁液槽3、風船型のガスホルダ4と簡易建屋5を天板の上に設置したメタン醗酵槽6、砂分離器7、ガス吸入器8、ポンプ9、電動切替弁10、消化液槽11などを備えている。
【0020】
受入槽1には、運搬されてきた家畜糞尿などの有機性廃棄物Aが一時的に貯溜される。有機性廃棄物Aとしては、豚の糞尿、牛の糞尿、これらの混合物など、家畜糞尿が使用されるが、これらの家畜糞尿に焼酎廃液等を混合したものも使用される。
【0021】
受入槽1内の有機性廃棄物Aは、受入槽内のポンプで管路L1を通って固液分離器2へ供給され、過剰の有機性廃棄物Aは、管路L2,L3を通って受入槽1に戻される。固液分離器2に供給された有機性廃棄物Aは圧搾され、その搾汁液Bが搾汁液槽3に一時的に貯溜される。そして、固液分離器2から排出された固形残渣Cは堆肥化処理され、堆肥として有効利用される。
【0022】
搾汁液槽3の内部には熱交換器12が取付られており、後述の貯湯タンク25から管路L4,L5を通じて供給、循環される温水によって、搾汁液Bの温度が50±5℃に保温されている。この搾汁液槽3は、メタン醗酵槽6への搾汁液の供給を容易にするため地上に設置されている。そして、槽の簡易化及び低コスト化を図るため、側壁がボックスカルバート等の既製のコンクリート擁壁3aで形成されると共に、槽底がメーンブレン等の丈夫な水密性シート3bで形成されており、また、保温効率を高めるために、側壁の外面には保温材(不図示)が添設されている。
【0023】
搾汁液槽3から管路L6,L7を通って搾汁液Bが導入されるメタン醗酵槽6は、その内部の液面が搾汁液槽3の底面より低くなるように地面に埋設されており、その内部には、嫌気性汚泥を付着させた汚泥付着布13と、熱交換器14が取付けられている。そして、このメタン醗酵槽6の熱交換器14には、前記搾汁液槽3の熱交換器12を通過して少し温度の下がった温水が管路L8を通って供給、循環され、メタン醗酵槽6の液温が36±5℃に保温されている。
【0024】
メタン醗酵槽6の内部に取付けられた汚泥付着布13は、図5に示すように、縦長の長円環状の不織布にメタン菌を含む嫌気性汚泥を付着させたものであり、取付基板13aから突設された複数組の上下2本の支持棒13b,13bに複数の汚泥付着布13がそれぞれ掛止されて並列に取付られている。この汚泥付着布13の嫌気性汚泥は、後述するようにメタン醗酵槽6内の液Dをガス攪拌する時間等を調節することにより、メタン醗酵槽6内の液Dに対して4±1質量%の濃度に維持されている。4±1質量%という嫌気性汚泥濃度は、従来のメタン醗酵槽における嫌気性汚泥濃度に比べると極めて高濃度であり、上記のようにメタン醗酵槽6内の液温が36±5℃に保温されることと相俟って、メタン醗酵が極めて活発に行われるようになる。そのため、このメタン醗酵槽6はメタンガスが70〜80%を占める消化ガスを発生し、従来のメタン醗酵槽のようにメタンガスが50〜65%を占める消化ガスを発生するものに比べると、遥かに高エネルギーの消化ガスを得ることができる。
【0025】
このメタン醗酵槽6も、槽の簡易化及び低コスト化を図るため、図3に示すように、その側壁がボックスカルバート等の既製のコンクリート擁壁6aで形成されると共に、槽底がメーンブレン等の水密性シート6bで形成されている。そして保温効率を高めるために、保温材6cがコンクリート擁壁6aの外面に添設されている。また、このメタン醗酵槽6の天板6dはレジンコンクリート製であって、図3、図4に示すように、メタン醗酵槽6の開口面積よりも一回り大きい正方形板状に形成されており、その四周縁には布基礎部分6eが一体に形成されている。この天板6dはメタン醗酵槽6の側壁6a上端に載置されて地面に露出しているが、天板6dの四周縁の布基礎部分6eを地面に埋設して荷重を支えるようにしているため、メタン醗酵槽6の側壁6aの上端に大きい荷重が加わる心配はない。
【0026】
このメタン醗酵槽6の天板6dの上には、風船型のガスホルダ4と、このガスホルダ4を収容する簡易建屋5が設置されている。風船型のガスホルダ4は気密性シートで製作されたもので、その開口下端がメタン醗酵槽6の天板6dに気密的に固定されており、この天板6dに形成された通気口6fを介してメタン醗酵槽6と連通している。そして、この通気口6fには、除水器としてSUS金網製のデミスタ15が取付けられており、このデミスタ15によって消化ガスに含まれる水分の大半が水滴として除去されるため、水分含量の少ない消化ガスがガスホルダ4に貯溜されるようになる。従って、結露現象等によって風船型のガスホルダ4の内面に水滴が付着することはない。また、この風船型のガスホルダ4は、その上端を簡易建屋5の上部の梁に固定して吊り下げているため、図3に鎖線で示すようにガスホルダ4が萎んだ状態でも、メタン醗酵槽6の天板6dの上に落ちることはない。
【0027】
メタン醗酵槽6の天板6dの上に設置される上記の簡易建屋5は、柱や梁となる金属製パイプ等の骨材5aを用いて骨格を組み立て、この骨格をフッ素加工したテント用布5bで被覆することにより、安価に構築されたものであって、この簡易建屋5には、図4に示す出入口のドア5cや図3に示す通気用のガラリ5dが設けられている。このような簡易建屋5を構築して風船型のガスホルダ4を収容すると、風船型のガスホルダ4が飛来物等によって破損しないように保護できる利点がある。尚、この簡易建屋5の内側には、図3、図4に示すように、メタン醗酵槽6の内部を透視できる透明蓋の付いたマンホール型の点検口5eを天板6dに設けることが望ましい。
【0028】
上記のように風船型ガスホルダ4と簡易建屋5をメタン醗酵槽6の天板6dの上に設置し、ガスホルダ4とメタン醗酵槽6を通気口6fで連通させると、従来のように金属製のガスタンクをメタン醗酵槽と異なる場所に設置する必要がなくなるので、設備が簡易になってコストの低減および設置スペースの削減を図ることが可能となる。
【0029】
図1に示すように、搾汁液槽3の底部から搾汁液Bをメタン醗酵槽6の底部へ導入する管路L6,L7の間には、一台のポンプ9と電動切替弁10が設置されている。この電動切替弁10は4つの吐出口を備えたもので、この4つの吐出口には、メタン醗酵槽6の底部に通じる上記の管路L7と、砂分離器7を経て上記のメタン醗酵槽に通じる管路L7に合流する管路L9と、ガス吸入器8を経て上記のメタン醗酵槽に通じる管路L7に合流する管路L10と、消化液槽11に通じる管路L11がそれぞれ接続されている。そして、メタン醗酵槽6の底部から上記ポンプ9の上流側の管路L6に合流する管路L12が設けられると共に、メタン醗酵槽6の上部から上記のガス吸入器8に通じるガス供給用の管路L13が設けられている。
【0030】
砂分離器7としては、分離効率の高いサイクロン方式のものが好ましく用いられ、また、ガス吸入器8としては、吸入効率の高いエゼクタ方式のものが好ましく用いられる。そして、消化液槽11としては、側壁を防水ブロック11aで形成すると共に、槽底を水密性シート11bで形成した簡易な槽が好ましく採用される。
【0031】
次に、メタン醗酵の一連の処理操作について説明する。
【0032】
図1に示す状態からメタン醗酵処理を続行するには、まず、電動切替弁10を切り替えて管路L6と管路L11を接続すると共に、ポンプ9を作動させて、メタン醗酵槽6内の液D(消化液)を所定量抜き出し、管路L12、管路L6、管路L11を通じて消化液槽11へ移送する。この消化液槽11への移送は毎日1回行えばよい。消化液槽11に移送された消化液Eは、液肥として利用される。
【0033】
消化液槽11への移送が終わると、電動切替弁10を切り替えて搾汁液導入用の管路L6と管路L7を接続すると共に、ポンプ9を作動させて、搾汁液槽3の底部から搾汁液Bを管路L6、管路L7を通じてメタン醗酵槽6に導入し、メタン醗酵槽6内の液Dの不足分を補充する。このメタン醗酵槽6への搾汁液Bの導入も、毎日一回行えばよい。
【0034】
メタン醗酵槽6に導入された搾汁液には、前記の固液分離器2で除去できなかった細かい砂が含まれている。そこで、電動切替弁10を切り替えて管路L6と管路L9を接続すると共に、ポンプ9を作動させて、メタン醗酵槽6の底部の砂を含んだ液Dを管路L12、管路L6、管路L9を通じて砂分離器7に供給し、このサイクロン方式の砂分離器7で効率良く砂を分離除去した液を管路L9、管路L7を通じてメタン醗酵槽6の底部に返還する。この砂の分離除去は、毎日1回、数分程度行えばよい。このように砂を分離除去すると、メタン醗酵槽6の底に砂が沈積する問題は解決できる。
【0035】
また、メタン醗酵を活発に行わせるためには、メタン醗酵槽6内の液Dを攪拌し、汚泥付着布13に付着した嫌気性汚泥との接触頻度を高めると共に、嫌気性汚泥の濃度を前述したように4±1%に維持することが重要である。そこで、電動切替弁10を切り替えて管路L6と管路L10を接続すると共に、ポンプ9を作動させて、メタン醗酵槽6内の液Dを管路L12、管路L6、管路L10を通じてエゼクタ方式のガス吸入器8へ供給し、メタン醗酵槽6の上部空間から管路L13を通じて供給されたガスを吸入させて、このガスと液を管路L7を通じてメタン醗酵槽6の底部へ返還し、管路L7の先端から放出させる。これにより、メタン醗酵槽6内の液Dは、管路L7から放出されるガスでガス攪拌が行われると共に、管路L7から放出される液で液体攪拌が行われる。この攪拌は、2時間ごとに15分程度行うことが好ましい。また、電動切替弁10を切り替えて管路L6と管路L7を接続し、ポンプ9を作動させて、メタン醗酵槽6から抜き出した液Dを管路L12、管路L6、管路L7を通じてメタン醗酵槽6へ返還することにより、メタン醗酵槽6内の液Dを液体攪拌のみ行うようにしてもよい。
【0036】
尚、以上の電動切替弁10の切替操作は、全て自動制御で行われるようになっている。
【0037】
上記のように、電動切替弁10を切替えることによって、一台のポンプ9で、搾汁液槽3からメタン醗酵槽6への搾汁液Bの導入、メタン醗酵槽6から抜き出した液Dのメタン醗酵槽6への返還による液体攪拌、メタン醗酵槽6から抜き出した液Dの砂分離器7への供給および砂を分離した液のメタン醗酵槽6への返還、メタン醗酵槽6から抜き出した液Dのガス吸入器8への供給およびガスを吸入した液Dのメタン醗酵槽6への返還によるガス攪拌と液体攪拌、メタン醗酵槽6から抜き出した消化液Eの消化液槽11への移送を全て行うので、従来のように数台のポンプを使用するメタン醗酵装置に比べると、備品数(ポンプの台数)が減少し、コストの低減を図ることができる。しかも、メタン醗酵槽6内の液Dに含まれる砂は、砂分離器7により分離除去されて槽底に沈積することがないため、従来のメタン醗酵装置のようにメタン醗酵槽の底に沈積した砂を除去する作業が不要となり、その分、メンテナンスが容易になると共に、稼働率の大幅な向上が可能となる。そして、一台のポンプ9でメタン醗酵槽6内の液Dのガス攪拌や液体攪拌を行い、既述したように嫌気性汚泥の濃度を4±1%に維持すると共に、熱交換器13によって液温を36±5℃に保つため、メタン醗酵が極めて活発になり、メタンガスの占める割合が70〜80%と高い消化ガスを発生させることが可能となる。
【0038】
メタン醗酵槽6内で発生した消化ガスは、天板6dの通気口6fに取付けられたデミスタ15によって水分の大半が除去され、風船型のガスホルダ4に一時的に貯溜される。ガスホルダ4に貯溜された消化ガスは、管路L14を通って、図2に示すガス洗浄器16へ送られ、洗浄器内部の温かい洗浄水Fで洗浄される。洗浄されたガスは、洗浄器上部のミストキャッチャー16aによって、水分がある程度除去され、管路L15を通ってガスセパレータ18に送られる。また、使用後の洗浄水Fは貯水槽17に溜められ、プラント施設の洗浄用水として利用される。
【0039】
上記のガスセパレータ18は、内部に数本のパイプを備えたもので、水源19から管路L19を通って供給される冷水をパイプに流し、このパイプとパイプの間にガスを通すことによって、ガスに含まれる水分の大半を液化して除去するものである。パイプ内を流れる冷水はガスとの熱交換で昇温し、この昇温した水は管路L20を通って上記のガス洗浄器16に送られ、洗浄水として利用される。
【0040】
ガスセパレータ18で水分の大半が除去されたガスは、管路L16を通ってガスドライヤ20へ送られ、このガスドライヤ20に充填された吸着材で濾過されて、水分の殆ど全てが除去された乾燥ガスとなる。そして、この乾燥ガスは、管路L17を通って脱硫カラム21に送られ、この脱硫カラム21で硫化水素などの硫化物が除去されたのち、管路L18を通ってクロスディストリビュータ22(分配器)に送られる。また、ガスセパレータ18、ガスドライヤ20、脱硫カラム21、クロスディストリビュータ22から排出されるドレンは、管路L21を通って受入槽1に戻される。
【0041】
上記のように精製されたガスは、クロスディストリビュータ22からガスメータ23を取付けた管路L22を通って、その一部が燃料として温水ボイラ24に供給され、残りのガスは燃料その他の用途に利用される。そして、温水ボイラ24で加熱された温水は貯湯タンク25に貯溜され、既述したように、搾汁液槽3とメタン醗酵槽6のそれぞれの液温を所定温度に維持するために、管路L4、管路L5、管路L8を通って、搾汁液槽3とメタン醗酵槽6のそれぞれの熱交換器12、13に供給、循環される。
【0042】
以上の説明から理解できるように、本発明のメタン醗酵処理プラントは、簡易低コスト型で処理効率が高く、しかも、メタン醗酵槽の底に砂が沈積しないのでメンテナンスもし易い優れた処理プラントである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るメタン醗酵処理プラントの主要部分の概略説明図である。
【図2】同メタン醗酵処理プラントのガス精製部分の概略説明図である。
【図3】風船型のガスホルダと簡易建屋を天板の上に設けたメタン醗酵槽の概略断面図である。
【図4】風船型のガスホルダと簡易建屋を天板の上に設けたメタン醗酵槽の概略平面図である。
【図5】汚泥付着布の斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 受入槽
2 固液分離器
3 搾汁液槽
3a,6a, 既製のコンクリート擁壁
3b,6b,11b 水密性シート
4 風船型のガスホルダ
5 簡易建屋
5a 骨材
5b テント用布
6 メタン醗酵槽
6c 保温材
6d 天板
6f 通気口
7 砂分離器
8 ガス吸入器
9 ポンプ
10 電動切替弁
11 消化液槽
12,14 熱交換器
13 汚泥付着布
15 除水器(デミスタ)
16 ガス洗浄器
18 ガスセパレータ
20 ガスドライヤ
21 脱硫カラム
22 クロスディストリビュータ
A 有機性廃棄物
B 搾汁液
D メタン醗酵槽内の液
E 消化液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物から分離した搾汁液を一時的に貯溜する搾汁液槽と、搾汁液槽から搾汁液を導入してメタン醗酵させるメタン醗酵槽と、メタン醗酵槽内で発生したガスを一時的に貯溜するガスホルダと、メタン醗酵槽から抜き出した液をメタン醗酵槽に返還する前にこの液に含まれている砂を分離する砂分離器と、メタン醗酵槽から抜き出した液をメタン醗酵槽に返還する前にこの液にメタン醗酵槽から供給されたガスを吸入させるガス吸入器と、メタン醗酵槽から抜き出した消化液を一時的に貯溜する消化液槽と、これらを連結する管路に設置された最小限一台のポンプおよび電動切替弁を少なくとも備え、電動切替弁を切替えることによって、最小限一台のポンプで、搾汁液槽からメタン醗酵槽への搾汁液の導入、メタン醗酵槽から抜き出した液のメタン醗酵槽への返還、メタン醗酵槽から抜き出した液の砂分離器への供給および砂を分離した液のメタン醗酵槽への返還、メタン醗酵槽から抜き出した液のガス吸入器への供給およびガスを吸入した液のメタン醗酵槽への返還、メタン醗酵槽から抜き出した消化液の消化液槽への移送を行うことを特徴とするメタン醗酵処理プラント。
【請求項2】
上記ガスホルダが気密性シートからなる風船型のガスホルダであり、この風船型のガスホルダをメタン醗酵槽の天板の上に設置すると共に、この天板に形成された通気口を介して風船型のガスホルダとメタン醗酵槽を連通させたことを特徴とする請求項1に記載のメタン醗酵処理プラント。
【請求項3】
上記通気口に除水器を取付けたことを特徴とする請求項2に記載のメタン醗酵処理プラント。
【請求項4】
上記ガスホルダを、骨材とテント用布とで構築した簡易建屋の内部に収容し、この簡易建屋の上部にガスホルダの上端を取付けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のメタン醗酵処理プラント。
【請求項5】
上記メタン醗酵槽の内部に、嫌気性汚泥を付着させた汚泥付着布を取付け、メタン醗酵槽内の液に対する嫌気性汚泥の濃度を4±1質量%に維持させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のメタン醗酵処理プラント。
【請求項6】
上記メタン醗酵槽、上記搾汁液槽、上記消化液槽のそれぞれの槽底を、水密性シートで形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のメタン醗酵処理プラント。
【請求項7】
上記メタン醗酵槽、上記搾汁液槽のそれぞれの側壁を、既製のコンクリート擁壁で形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のメタン醗酵処理プラント。
【請求項8】
上記メタン醗酵槽、上記搾汁液槽の側壁外面に保温材を添設したことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のメタン醗酵処理プラント。
【請求項9】
上記メタン醗酵槽、上記搾汁液槽のそれぞれの内部に熱交換器を取付け、上記ガスホルダから抜き出して除湿、精製したガスを燃焼させて加熱した温水をそれぞれの熱交換器に供給して、メタン醗酵槽の液温を36±5℃、搾汁液槽の液温を50±5℃に保温することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のメタン醗酵処理プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−319725(P2007−319725A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149151(P2006−149151)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000247535)株式会社モリプラント (8)
【出願人】(506184288)特定非営利活動法人バイオガスシステム研究会 (2)
【Fターム(参考)】