説明

メチルアミン類の製造方法

【課題】メタノールとアンモニアの気相接触反応によりメチルアミンを製造する方法、より詳しくはメチルアミンを安定的にかつ安価に連続合成する方法を提供する。
【解決手段】メタノール、アンモニアおよびメチルアミン混合物を気相接触反応に付してメチルアミンを製造する方法において、第一蒸留塔の還流比を式(1)においてAが8〜12の範囲内で成立する条件とすることを特徴とするメチルアミン類の製造方法。
c=−0.13×(a+b)+A (1)
a:第一蒸留塔に供給されるアンモニア濃度(重量%)
b:第一蒸留塔に供給されるトリメチルアミン濃度(重量%)
c:蒸留塔還流比

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノールとアンモニアの気相接触反応によりメチルアミンを製造する方法に関する。より詳しくは、メチルアミンを安定的にかつ安価に連続合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルアミンは一般には固体酸触媒の存在下、メタノールとアンモニアを気相中300〜400℃で反応させることにより製造される。通常この反応ではモノメチルアミン(以下MMAと記す)、ジメチルアミン(以下DMAと記す)、トリメチルアミン(以下TMAと記す)の混合物が生成する(以下MMA、DMA、TMA混合物をメチルアミン混合物と記す)。反応で得られたメチルアミン混合物はその後の分離精製工程で精製され、それぞれ、化学薬品や農薬、医薬、試料等の原料として広く利用されている。しかし、これらのメチルアミンの需要は一様ではなく、その市場の95%以上をMMAとDMAが占め、TMAは5%程度にすぎない。また、メチルアミン混合物の分離精製は一般に蒸留により行われるがMMAおよびDMAとTMAとの沸点差が小さいこと、およびTMAがMMA、DMAと共沸するという理由から3種類のメチルアミンを効率的に分離することは容易でないため、合理的なメチルアミンの製造プロセスを確立するためにはこれらの点を考慮する必要がある。
【0003】
従来の一般的なメチルアミンの製造法によれば、主反応工程において固体酸触媒の存在下に生成したメチルアミン混合物と過剰に供給したアンモニア、未反応のメタノール、および副生成物の水を含む混合物は、第一蒸留操作(アンモニア分離塔)においてアンモニアまたは、アンモニアとメチルアミン混合物の一部が留出し、その留出物は主反応工程またはメチルアミン混合物とアンモニアとの不均化反応によりTMA量を減少させる不均化工程に循環される。第二蒸留塔(TMA分離塔)では先に述べたようにMMA、DMAとの沸点差が小さいTMAがMMA、DMAと共沸するという理由から水による抽出蒸留でTMAを留出させ、缶出液を第三蒸留塔(脱水塔)に供給しMMAとDMAの混合物を留出させ、この留出物を第四蒸留塔(MMA・DMA分離塔)に供給し、塔頂からMMAを塔底からDMAを分離するプロセスをたどる。
【0004】
従来の製造方法における問題点はTMA分離塔で行う抽出蒸留はMMAとDMAに対して数倍量の抽出水を必要とするため排水量の増大を招き、また脱水塔においてその多量の抽出水を含む液の蒸留を行うことから莫大な回収エネルギーを必要とする点である。従来の製造法におけるコスト削減方法として特開昭57−108041(特許文献1)に記載のアンモニア分離塔留出物の凝縮液の一部を脱水塔の留出物の冷却媒体に、TMA分離塔の留出蒸気をMMA・DMA分離塔の塔底液の加熱媒体に用いる方法、特開昭60−45550(特許文献2)に記載の反応器出口ガスと反応器入口ガスとを熱交換する方法。特開2002−363140(特許文献3)に記載のTMAを分離する水抽出蒸留を二塔で行い、かつ二塔目を小型化する方法を用いることでTMA分離塔における消費エネルギーコストを削減する方法がある。しかし、いずれの場合においてもTMAを水抽出蒸留により分離しており、脱水塔において抽出水の除去に莫大なエネルギーを必要としており本質的なコスト削減には至っていない。
【0005】
これらの方法に対し特開平7−233125(特許文献4)、特開平8−169864(特許文献5)、特開平8−311000(特許文献6)に記載されている方法は、アンモニアとメチルアミン混合物を平均細孔径15Å以下の固体酸触媒の存在下において接触反応に付しトリメチルアミン量を減少させる不均化工程、および不均化工程より得られる含メチルアミン混合物とメタノールおよびアンモニアとをシリル化処理した固体酸触媒の存在下において接触反応に付しメチルアミン混合物を合成し、この主反応工程で生成したメチルアミン混合物、または主反応工程で生成したメチルアミン混合物と不均化工程から得られる含メチルアミン混合物の一部と過剰に供給したアンモニア、未反応のメタノール、および副生成物の水を含む混合物からTMAとアンモニアを操作圧力を10〜25Kg/cm2Gとした第一蒸留工程の共沸蒸留で実質的に全量塔頂より共沸混合物として留出させ、その全量を反応系にリサイクル方法である。この方法ではTMAをアンモニアの共沸混合物として全量除去可能であり、水抽出蒸留を行うTMA分離塔を必要とせず一塔蒸留塔を削減可能である。さらに莫大なエネルギーを必要とする脱水塔における抽出水の分離も必要とせず、大幅なコスト削減が可能となっている。しかし、該特許において第一蒸留塔で分離可能なTMAは第一蒸留塔に供給する原料のTMAのアンモニアに対する重量比率(ここでTMAのアンモニアに対する重量比率とは、混合物中のTMA重量/アンモニア重量×100で定義し、以下TMA/NH比と記す)が13重量%以下の場合のみであり、TMA/NH比が13重量%を超える場合にはTMA全量を塔頂から留出物として回収することができない。そのため第一蒸留塔に供給されるメチルアミン混合物・アンモニア・メタノール・水の混合物のTMA/NH比が13重量%を超える場合にはさらに過剰のアンモニアを加えることでTMA/NH比を13重量%以下とする必要がある。そのため過剰に供給したアンモニアの除去のため第一蒸留塔では莫大なエネルギーを必要とすることになる。TMA/NH比が13重量%を超えた場合においても、TMAを全量第一蒸留塔の留出部から分離するためには、分離能力向上のため留出液の一部を蒸留塔内に循環させる還流操作を行う必要がある。特開平8−157427(特許文献7)では第一蒸留塔塔頂から得られる蒸気の一部は気相のまま反応器に循環させ、残部を凝縮器で凝縮して蒸留塔に還流を行う、もしくは蒸留塔の塔頂から得られる蒸気の一部を凝縮器で凝縮した後、その気相部を反応器に循環し液相部を蒸留塔に還流する方法が記載されている。しかし、特許記載内容は塔頂から得られる蒸気を直接反応器に供給することにより凝縮液を気化させて反応器に供給する場合に用いる気化器により生成する触媒被毒物質を削減することによる触媒寿命の延長についてのみの記載であり、操作圧力、蒸留塔供給液成分、還流条件等の蒸留塔操作条件についての記載は行われていない。本発明者らは還流操作を行うのみでは蒸留塔の操作条件によっては缶出液中にTMAが混入するという問題が解消されないことを実験的に確認している。例えばTMA/NH比が25重量%を超えて大きい場合や、操作圧力が25Kg/cm2Gを超えて大きい場合還流を行った場合でもTMAが缶出液に混入するため製品品質の低下につながることを確認している。また、還流条件においても還流比が小さい場合TMAが缶出液に混入するため製品品質の悪化につながり、還流比が大きい場合には塔内に循環するメチルアミン混合物・アンモニア量が増加するためエネルギーコストが不必要に大きくなるという欠点を有している。
【0006】
【特許文献1】特開昭57−108041号公報
【特許文献2】特開昭60−45550号公報
【特許文献3】特開2002−363140号公報
【特許文献4】特開平7−233125号公報
【特許文献5】特開平8−169864号公報
【特許文献6】特開平8−311000号公報
【特許文献7】特開平8−157427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、トリメチルアミンは、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミンと複雑な共沸系を形成することから、これを分離することは非常に煩雑な蒸留条件の設定が必要であり、蒸留条件によっては製品品質の悪化、または消費エネルギーコストの増加につながってしまうという問題点がある。本発明はTMAの共沸蒸留工程での蒸留条件の最適化法を提供することにより、実質的に全量TMAを塔頂より除去することで製品品質を維持したまま、消費エネルギーコストを削減する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記課題を解決するために鋭意検討した結果、メタノール、アンモニアおよびメチルアミン混合物を気相接触反応に付してメチルアミンを製造する方法において、アンモニアとメタノールの混合物とを固体酸触媒の存在下において接触反応に付し、トリメチルアミン量を減少させる不均化工程、および不均化工程から得られる含メチル混合物の全量または一部とメタノールおよびアンモニアとを固体酸触媒の存在下において接触反応に付し反応を行う主反応工程および、主反応工程から得られる含メチルアミン混合物、または主反応工程から得られる含メチルアミン混合物と不均化工程から得られる含メチルアミン混合物の一部を10〜25Kg/cm2Gで蒸留し、蒸留塔の塔頂から得られる蒸気の一部は気相のまま不均化工程に循環させ残部を凝縮器で凝縮させる蒸留塔に還流を行うことで該混合物中のトリメチルアミンを実質的に全量塔頂よりアンモニアとの共沸混合物として留出させる第一蒸留塔の操作の結合を特徴とするメチルアミンの製造方法において、第一蒸留塔の還流比を式(1)においてAが8〜12の範囲内で成立する条件とすることにより、第一蒸留塔運転条件の最適化を図り製品品質を悪化させることなく消費エネルギーコストを削減可能なことを見いだした。
【0009】
c=−0.13×(a+b)+A (1)
a:第一蒸留塔に供給されるアンモニア濃度(wt%)
b:第一蒸留塔に供給されるトリメチルアミン濃度(wt%)
c:蒸留塔還流比
【発明の効果】
【0010】
本発明により、メチルアミンの製造方法において、第一蒸留塔の操作圧力を10〜25kg/cmGとし、還流比を式(1)においてAが8〜12の範囲内で成立する条件とすることにより、製品中へのTMAの混入を防ぎMMA、DMA製品純度を維持することが可能であり、さらに最適な運転条件の設定により消費エネルギーコストを削減することができる。これにより工業上重要であるメチルアミン製造をプロセス上および経済上著しく優位に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明でメチルアミン類を製造する方法は特開平8−157427に記載のアンモニアとメタノールの混合物とを固体酸触媒の存在下において接触反応に付し得られる含メチルアミン混合物を蒸留し、蒸留塔の塔頂から得られる蒸気の一部は気相のまま不均化工程に循環させ残部を凝縮器で凝縮させる蒸留塔に還流を行う、または塔頂から得られる蒸気の一部を凝縮器で凝縮した後その気相部を反応器に循環し液相部を蒸留塔に還流を行う方法である。
【0012】
主反応器に充填する固体酸触媒としては、例えばゼオライト、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ等が挙げられるが、触媒活性および低TMA選択率の面から好ましくは特開平7−233125に記載のシリル化処理した固体酸触媒が挙げられる。この際の触媒層の入口温度は250〜400℃、入口原料の窒素/炭素モル比(以下N/C比と略記する)は1.5〜5.0が好ましい。入口温度が250℃未満では触媒活性が低いためメタノールの転化が不十分で効率が悪くなる。また、400℃を超えるとTMAの生成量が増加するため、第一蒸留塔の塔頂からTMAを実質的に全量回収できなくなること、メチルアミン以外の副生成物が生成するため純度の高いメチルアミンが得られなくなること、および触媒の経時劣化が早く進行するため好ましくない。また、主反応器入口原料のN/C比が1.5未満では、アンモニアの不足により第一蒸留塔でTMAの全量をアンモニアとの共沸混合物として回収することができなくなる。また、5.0を超えるとアンモニアの循環量が不要に高くなりアンモニアを回収するエネルギーが増大し、効率的でないので好ましくない。
【0013】
不均化反応器に充填する固体酸触媒としては、例えばゼオライト、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ等が挙げられるが、触媒活性およびTMAからMMAへの選択率の面から好ましくは特開平7−233125に記載の平均細孔径15Å未満のゼオライトが特に好ましい。平均細孔径が15Åを超えるとエチルアミンやアセトニトリルといった副生成物が生成しやすく、メチルアミンの純度が低下する為である。この際の触媒層の入口温度は280〜450℃の範囲が好ましい。入口温度が280℃未満では触媒活性が不十分であり、450℃を超えると副反応は著しくなること、触媒の経時劣化が早く進行するため好ましくない。
【0014】
また、主反応工程から得られる含メチルアミン混合物および、必要に応じて不均化工程から得られる含メチルアミン混合物の一部と混合したメチルアミン混合物中のTMAをアンモニアとの共沸蒸留により留出させる第一蒸留塔において実質的に全量のTMAを留出液として回収するために、第一蒸留塔に供給する原料のTMA/NH比が25重量%以下とすることが必要である。第一蒸留塔で行う蒸留はアンモニア、MMA、DMA、TMA、メタノール、水の成分系の蒸留であり、この系でTMAを実質的に全量塔頂よりアンモニアとの共沸混合物として留出させるためには、原料中TMA/NH比が25重量%以下としなければならいことは本発明者らが実験的に確認した点である。
【0015】
本発明において重要な点はTMAを実質的に全量塔頂より分離する共沸蒸留において、製品品質の維持および消費エネルギーコストの削減のために次の条件により蒸留塔条件の最適化が図れることを見いだした点である。
【0016】
一つめの条件として、第一蒸留塔に供給されるアンモニア濃度:a(重量%)とTMA濃度:b(重量%)と還流比:cの関係がc=−0.13×(a+b)+Aの関係にありAが8〜12の範囲内で成立するように還流比を設定することである。すなわちTMAを全量塔頂より分離するためには、第一蒸留塔に供給されるTMAとアンモニアの濃度が増加するにつれ還流比を下げることが可能であることを本発明者らは見いだした。ここで用いられるアンモニア濃度:a(重量%)、TMA濃度:b(重量%)の測定方法は定量的に測定することが可能であればいかなる分析方法をもちいてもよく特に限定されることはないが、本発明においてはガスクロマトグラフィーにより測定を行った。また、還流比:cは蒸留塔塔頂から得られる蒸気のうち凝縮され蒸留塔に還流される量(kg)を蒸留塔塔頂から得られる蒸気のうち気相のまま不均化工程に供給される量(kg)で除した値である。通常、蒸留操作においては蒸留塔に供給される供給液中の留出成分濃度が増加した際には、それにともなう留出成分の缶出液への混入を抑制するため還流比を一定もしくは、大きくすることで分離能力を維持させるのが一般的である。しかし、TMAがアンモニア、MMA、DMAと複雑な共沸系を作るような、本プロセスにおいては通常の操作と異なり供給物中の留出成分濃度が増加した際、実質的に全量のTMAを留出成分として取り出す状態を維持したまま、還流比を下げることが可能となる。このため、通常の蒸留では供給液中の留出成分が増加した場合、還流比を一定もしくは大きくするため、蒸留塔リボイラーに用いられるエネルギー量が大きくなるのに対し、本発明では、還流比を下げることが可能であり、それにより消費エネルギー量を下げることができ製造コスト削減が可能となる。
【0017】
また、式(1)におけるAの値を8未満とした場合、還流比が小さくなりTMAを実質的に全量塔頂から留出させることができなくなり、Aを12より大きくした場合、蒸留塔内に還流される塔頂成分量が増大するため、蒸留塔リボイラーに多大な負荷がかかりエネルギーコストの増大につながるため運転上好ましくない。
【0018】
二つめの条件として第一蒸留塔の操作圧力を10〜25Kg/cm2Gの間とする点である。一般にアンモニアのように沸点の低い成分の蒸留を行う場合、圧力が高い条件の方が高い温度で凝縮できるため操業上は有利になる。しかし、本プロセスにおいては特開平7−233125記載のように操作圧力が25Kg/cm2Gを超えるとTMAが実質的にアンモニアと共沸組成を形成しなくなるため、第一蒸留塔の塔頂からTMAの全量を留出させることができなくなる。また、10Kg/cm2G以下では塔頂の沸点が30℃以下となり効率的でなくなる。
【0019】
以上の条件を満たした上で主反応器、不均化反応器、第一蒸留工程が連結した操作を行えば、実質的に全量TMAをアンモニアとの共沸混合物として塔頂から留出させることが可能であり、製品品質が維持可能となる。さらに、最適な還流比も容易に設定することができコスト削減も可能となる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例、および比較例により具体的に説明する。
【0021】
[実施例1]
本発明における装置は図1に示すように主反応器(イ)、不均化反応器(ア)、第一蒸留塔(ウ)及び凝縮器(エ)を接続し、第一蒸留塔(ウ)の塔頂蒸気の一部は気相のまま取り出し圧縮機で昇圧して不均化反応器(ア)に循環し、残部は凝縮器(エ)で凝縮し第一蒸留塔(ウ)へ還流する方式である。主反応器(イ)には平均細孔径10Åのモルデナイトを2Nの塩酸で酸処理後、水分を10%含有するように調湿し、1.5mol%テトラエトキシシリケートのトルエン溶剤中でテトラエトキシシリケートとモルデナイトの割合が0.33mol/kg−モルデナイトとなる量でシリル化処理を行ったものを充填した。また、不均化反応器(ア)には上述の天然産モルデナイトを2Nの塩酸で酸処理洗浄を行ったのみの触媒を充填した。系内の圧力を19Kg/cm2G、主反応器温度を270〜300℃、不均化反応器温度を300〜330℃とし、メタノール(1)を844kg/hrの速度で供給、アンモニア(2)を330kg/hrの速度で供給し、連続で反応を実施した。この際、主反応器入口におけるN/C比は2.01、不均化反応器入口におけるN/C比は6.97である。このとき還流比c=4.3であり、蒸留塔に供給されるアンモニア濃度a=39.2重量%、TMA濃度b=8.6重量%であり、式(1)は c=−0.13×(a+b)+10.5で記述可能である。また、TMA/NH3比は22重量%である。
【0022】
定常状態到達後の各ライン流体流量を測定したところ表1に示す結果が得られた。また、第一蒸留塔缶出液(6)からはTMAを含有しないメチルアミン混合物を安定的に回収することができた。ガスクロマトグラフィーで缶出液の組成成分分析を行ったところ、TMAの含有量は150ppm以下であった。
【0023】
[実施例2]
系内の圧力を19Kg/cm2G、主反応器温度を270〜300℃、不均化反応器温度を300〜330℃とし、メタノール(1)を1023kg/hrの速度で供給、アンモニア(2)を349kg/hrの速度で供給し、実施例1と同様の方法により連続反応を実施した。この際、主反応器入口におけるN/C比は3.22、不均化反応器入口におけるN/C比は9.07であり、還流比c=2.0、蒸留塔に供給されるアンモニア濃度a=56.5重量%、TMA濃度b=6.4重量%であった。式(1)はc=−0.13×(a+b)+10.2で記述可能である。また、TMA/NH3比は11重量%である。
定常状態到達後の各ライン流体流量を測定したところ表2に示す結果が得られた。第一蒸留塔缶出液(6)からはTMAを含有しないメチルアミン混合物を安定的に回収することができた。ガスクロマトグラフィーで缶出液の組成成分分析を行ったところ、TMAの含有量は150ppm以下であった。
【0024】
[比較例1]
系内の圧力を19Kg/cm2G、主反応器温度を270〜300℃、不均化反応器温度を300〜330℃とし、メタノール(1)を988kg/hrの速度で供給、アンモニア(2)を296kg/hrの速度で供給し、実施例1と同様の方法により連続反応を実施した。この際、主反応器入口におけるN/C比は1.72、不均化反応器入口におけるN/C比は7.03であり、還流比c=1.5、蒸留塔に供給されるアンモニア濃度a=36.9重量%、TMA濃度b=8.5重量%であった。式(1)はc=−0.13×(a+b)+7.4で記述可能である。また、TMA/NH3比は23重量%である。
定常状態到達後の各ライン流体流量を測定したところ表3に示す結果が得られた。第一蒸留塔缶出液(6)からはTMAを2.3重量%含有するメチルアミン混合物を回収し、TMAを全量第一蒸留塔塔頂から回収することができなかった。このように式(1)におけるAの値が7.4と8以下となる還流比で第一蒸留塔の運転を行った場合、第一蒸留塔塔頂よりTMAを全量回収することができなくなる。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるメチルアミン類の製造工程図
【符号の説明】
【0029】
ア 不均化反応器
イ 主反応器
ウ 第一蒸留塔
エ 凝縮器
1 メタノール
2 アンモニア
3 主反応原料
4 メチルアミン混合物
5 第一蒸留塔塔頂蒸気
6 第一蒸留塔缶出液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノール、アンモニアおよびメチルアミン混合物を気相接触反応に付してメチルアミンを製造する方法において、アンモニアとメタノールおよびメチルアミン混合物とを固体酸触媒の存在下において接触反応に付し、トリメチルアミン量を減少させる不均化工程、および不均化工程から得られる含メチルアミン混合物の全量または一部とメタノールおよびアンモニアとを固体酸触媒の存在下において接触反応に付し反応を行う主反応工程および、主反応工程から得られる含メチルアミン混合物、または主反応工程から得られる含メチルアミン混合物と不均化工程から得られる含メチルアミン混合物の一部を10〜25Kg/cm2Gで蒸留し、蒸留塔の塔頂から得られる蒸気の一部は気相のまま不均化工程に循環させ残部を凝縮器で凝縮させ蒸留塔に還流を行うことで該混合物中のトリメチルアミンを実質的に全量塔頂よりアンモニアとの共沸混合物として留出させる第一蒸留塔の操作の結合を特徴とするメチルアミンの製造方法において、第一蒸留塔の還流比を式(1)においてAが8〜12の範囲内で成立する条件とすることを特徴とするメチルアミン類の製造方法。
c=−0.13×(a+b)+A (1)
a:第一蒸留塔に供給されるアンモニア濃度(重量%)
b:第一蒸留塔に供給されるトリメチルアミン濃度(重量%)
c:蒸留塔還流比
【請求項2】
第一蒸留工程に供給される、主反応工程から得られる含メチルアミン混合物、または主反応工程から得られる含メチルアミン混合物と不均化工程から得られる含メチルアミン混合物の一部との混合液中のアンモニアに対するトリメチルアミンの重量比が25重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のメチルアミン類の製造方法。
【請求項3】
主反応工程の入口における原料の窒素/炭素モル比が1.5〜5.0、触媒層の入口温度が250〜400℃の範囲内である請求項1記載のメチルアミン類の製造方法。
【請求項4】
不均化工程における入口原料の窒素/炭素モル比が5.0以上、触媒層の入口温度が280〜450℃の範囲内である請求項1記載のメチルアミン類の製造方法。
【請求項5】
不均化工程に用いられる固体酸触媒が平均細孔径15Å以下の固体酸触媒であることを特徴とする請求項1記載のメチルアミン類の製造方法。
【請求項6】
主反応工程に用いられる固体酸触媒がシリル化処理した固体酸触媒であることを特徴とする請求項1記載のメチルアミン類の製造方法。
【請求項7】
シリル化処理した固体酸触媒が、液相中でシリル化剤で処理したゼオライトである請求項6記載の固体酸触媒。
【請求項8】
シリル化処理した固体酸触媒が、液相中でシリル化剤で処理したモルデナイトである請求項6記載の固体酸触媒。

【図1】
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【公開番号】特開2006−298809(P2006−298809A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121766(P2005−121766)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】