説明

メチルセルロースをSPF上昇剤として組入れるサンスクリーン組成物および方法

無機金属酸化物サンスクリーン粒子およびメチルセルロースを含むサンスクリーン組成物、ならびに、無機金属酸化物サンスクリーン粒子を有するサンスクリーン組成物のSPF(サンプロテクションファクター)を上昇させる方法であって、メチルセルロースをサンスクリーン組成物中に含ませることを含む方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件は、米国仮出願第61/107,482号(2008年10月22日出願)の利益を主張する。
【0002】
分野
本発明は、サンスクリーン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
サンケア市場における有機サンスクリーンと無機サンスクリーンとのバランスは、規制の変化および消費者の要求に対応して無機サンスクリーンに向かって傾いている。多くの国は、現在、定量化できるUVAプロテクションをサンスクリーンラベルに要求しており、酸化亜鉛および二酸化チタンはUVAプロテクションを与える数少ないフィルターの2つである。しかし、無機サンスクリーンのみで今日のUVAおよびUVBのラベル要求を実現することは課題である可能性がある。高濃度の無機サンスクリーンは高価である可能性があり、および/または皮膚に塗布した際に不所望の白色外観の原因となる可能性があるからである。
【0004】
従って、高SPF(サンプロテクションファクター)および高UVAプロテクションを、より低い無機物濃度で、そして追加の有機サンスクリーンを必要とすることなく、実現する助けとなるサンスクリーン上昇剤に対する要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要約
一態様において、本発明は、無機金属酸化物サンスクリーン粒子およびメチルセルロースを含むサンスクリーン組成物を提供する。
【0006】
別の態様において、本発明は、無機金属酸化物サンスクリーン粒子を有するサンスクリーン組成物のSPFを上昇させる方法であって、メチルセルロースをサンスクリーン組成物中に含ませることを含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
一態様において、本発明は、無機金属酸化物サンスクリーン粒子およびメチルセルロースを含むサンスクリーン組成物を提供する。好ましくは、無機金属酸化物サンスクリーン粒子は、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO2)またはこれらの混合物から選択される。
【0008】
一態様において、無機金属酸化物サンスクリーン粒子は、顔料グレードの酸化亜鉛または顔料グレードの二酸化チタンである。
【0009】
一態様において、無機金属酸化物サンスクリーン粒子は、透明酸化亜鉛または透明二酸化チタンである。サンスクリーンにおいて使用される殆どの無機金属酸化物サンスクリーン粒子は、光散乱に起因する化粧上不所望の白色外観を与える。よって、本明細書で用いる用語「透明無機金属酸化物サンスクリーン粒子」は特別な意味を有し、多様な加工条件によって製造される無機金属酸化物サンスクリーン粒子であって、適用時に明澄または透明なものとしての無機金属酸化物組成物を与えるものを意味する。言い換えると、これらの特別に加工された無機金属酸化物組成物は、適用時点で白色の外観ではなく、よって透明と称される。
【0010】
透明酸化亜鉛の例は、例えば、米国特許第5,223,250号、第5,372,805号、第5,573,753号、第5,587,148号および第5,876,688号に開示されている。透明酸化亜鉛の1例は、商標名Z−COTEにてBASF Corporation(ドイツ)から市販で入手可能である。透明酸化亜鉛の別の例は、商標名ZINCLEAR IMにてAntaria Limited(オーストラリア)から市販で入手可能である。透明酸化亜鉛の別の例は、商標名Z−CLEARにてActifirm(米国)から市販で入手可能である。
【0011】
透明二酸化チタンの例は、例えば、米国特許第5,573,753号、第5,733,895号、および第7,390,355号に開示されている。透明二酸化チタンの例は、商標名TIPAQUEおよびTTO−51(A)にてIshihara Sangyo Kaisha,Ltd.(日本)から市販で入手可能である。透明二酸化チタンの別の例は、商標名T−COTEにてBASF Corporation(ドイツ)から市販で入手可能である。透明二酸化チタンの別の例は、商標名UFTRにてMiyoshi Kasei(日本)から市販で入手可能である。透明二酸化チタンの別の例は、商標名SOLAVEIL CLARUSにてUniqema(英国)から市販で入手可能である。
【0012】
一態様において、透明無機金属酸化物サンスクリーン粒子は、透明の酸化亜鉛、二酸化チタンまたはこれらの混合物から選択される。一態様において、透明な酸化亜鉛サンスクリーン粒子は、組成物の約0.01質量%〜約99質量%、好ましくは約0.1質量%〜約50質量%、およびより好ましくは1質量%〜約25質量%の量で存在する。一態様において、透明二酸化チタンサンスクリーン粒子は、組成物の質量の約0.01質量%〜約99質量%、好ましくは約0.1質量%〜約50質量%、およびより好ましくは1質量%〜約25質量%の量で存在する。
【0013】
メチルセルロースは、一般的には、商標名METHOCEL A(The Dow Chemical Company)にて入手可能である。セルロースのポリマー骨格は、無水グルコース単位の繰返し構造である。苛性溶液、続いて塩化メチルでのセルロース繊維の処理は、メトキシ基で置換されたセルロースエーテルを与える。用語「DS」は、無水グルコース単位当たりのメトキシル置換度を意味する。好ましくは、メチルセルロースは、DSメトキシル約1.47〜約3.08を有する。
【0014】
一態様において、メチルセルロースは、20℃にて水中2%濃度での粘度約1cps〜約100,000cps、好ましくは約5cps〜約30cps、最も好ましくは約15cpsを有する。
【0015】
一態様において、メチルセルロースは、組成物の約0.01質量%〜約30質量%、好ましくは約0.05質量%〜約15質量%、およびより好ましくは0.1質量%〜約5質量%の量で存在する。
【0016】
一態様において、サンスクリーン組成物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを実質的に含まない。
【0017】
本発明の組成物は、サンスクリーン配合物の分野で公知の他の含有成分(有機サンケア活性物質、化粧用に許容可能なエモリエント剤、モイスチャライザー、コンディショナー、オイル、懸濁剤、不透明化剤/真珠色化剤、界面活性剤、乳化剤、保存料、レオロジー調整剤、着色剤、pH調整剤、推進剤、還元剤、酸化防止剤、香料、発泡剤または消泡剤、タンニング剤、虫除け剤、または殺生剤の少なくとも1種が挙げられる)を更に組入れることができる。好ましくは、本発明のサンスクリーン組成物は、保湿剤、界面活性剤、エモリエント剤、および保存料の少なくとも1種を含む。
【0018】
別の態様において、本発明は、無機金属酸化物サンスクリーン粒子を有するサンスクリーン組成物のSPFを上昇させる方法であって、メチルセルロースをサンスクリーン組成物中に含ませることを含む方法を提供する。
【0019】

以下の例は、例示の目的のみであり、本発明の範囲の限定を意図しない。全てのパーセントは特記がない限り質量基準である。
【0020】
例1
例示のサンスクリーン組成物は、表1に列挙する成分を含有する。
【0021】
【表1】

【0022】
METHOCELを約75℃の水にゆっくり添加することによって、4%の原液を調製する。Methocelが均一に混合された時点で、分散液を室温まで冷やす。追加の水、プロピレングリコール、メチルグルセス、およびOPTIMAを室温で組合せ、次いで4%METHOCEL原液を添加して第1の混合物を形成する。
【0023】
この混合物を次いで約75℃に加熱して全ての固体含有成分を溶解させる。PEG40ステアレート、グリセリルステアレート、セルアリルアルコールおよびセテアレス−20、ジメチコーン、および透明酸化亜鉛を組合せて、第2の混合物を形成し、そしてこの混合物を次いで約75℃に加熱して全ての固体含有成分を溶解させる。
【0024】
第1の混合物および第2の混合物を、両者がまだ比較的高温,すなわち約75℃である間に組合せ、そしてSilverson IKA Homogenizerを用いて混合する。クエン酸を、pHが約7.5〜約8に達するまで滴下添加する。
【0025】
例2(比較)
比較サンスクリーン組成物は、表2に列挙される成分を含有する。
【0026】
【表2】

【0027】
組成物は、実質的に例1に関して上記したように調製する。
【0028】
例3
例1および2のプロトコルに実質的に従って調製されるサンスクリーン組成物を調製した。そしてこれらのSPF値を評価して表3に示した。
【0029】
【表3】

【0030】
SPFは、以下のプロトコルに実質的に従ってin vitro法を用いて評価した。
【0031】
まず、粗化PMMA基材(SCHOENBERG GmbH&Co.KG,Hamburg/Germanyより購入)の質量を測定する。次いで、試験するバッチを基材上に堆積させ、次いで迅速に7ミクロンドローダウンバーでならして、薄い均一な層を実現する。層を約20分間乾燥させ、そして基材に乾燥均一層を加えた質量を評価する。
【0032】
乾燥均一層のUV吸収は、LABSPHERE 1000S分光計を用いて、層上の複数の点で測定する。
【0033】
層の固形分パーセントは、METTLER LP 16固体分析器を用いて測定する。乾燥フィルムの質量、および層の固形分量を用い、元の湿潤層の堆積直後の質量、およびひいては密度を算出できる。この情報を用い、SPFは、以下の等式によって算出できる:
【0034】
【数1】

【0035】
式中、E(λ)=Standard Sun Spectrumの分光放射照度;S(λ)=波長λでの紅斑作用スペクトル;およびA(λ)=波長λでの較正後スペクトル吸収(較正係数を算出して、データを推定して、どの吸収が湿潤層密度2.0mg/cm2となるかを定める(堆積直後の元の湿潤層を用いて))。
【0036】
表3中の結果は、各バッチについての少なくとも27測定の平均である。本発明は、SPF上昇33%、86%、および77%(標準セルロース増粘剤(METHOCEL E4M−比較バッチA)を有する組成物との比較で)をもたらす。
【0037】
例4
例示のサンスクリーン組成物は、表4に列挙する成分を含有する。
【0038】
【表4】

【0039】
組成物は、実質的に例1に関して上記したように調製する。
【0040】
例5
例4のプロトコルに実質的に従って調製されるサンスクリーン組成物を調製した。そしてそのSPF値を測定して、メチルセルロースルロースを有さない組成物からのSPF改善パーセントとして表5に列挙した。
【0041】
【表5】

【0042】
SPFは、以下のプロトコルに実質的に従ってin vivo法を用いて評価した。
【0043】
被験者の背中の一部(サンスクリーンなし)を漸増時間間隔でソーラーシミュレーター(通常150ワットのキセノンアークBerger Solar Ultraviolet Simulator(Solar Light Co.,Philadelphia,PA),フィルター付,日光様のスペクトル(UVB:290〜320ナノメートルおよびUVA:320〜400ナノメートル)を模擬する)に曝露する。被験者を、訓練した観察者の目視で皮膚がぎりぎりピンク色となるまで曝露する。次いで、被験者の背中の曝露しなかった隣接領域に、2mg/cm2の試験サンスクリーンを一様に塗布し、そして約15分間乾燥させる。この領域を次いでソーラーシミュレーターに漸増時間間隔で、前記の観察者の目視で皮膚がぎりぎりピンク色となるまで、曝露する。次いで、プロテクトおよび非プロテクトの皮膚についてのピンク色を得るための曝露持続時間(最小紅斑用量(Minimal Erythemal Dose)(MED))の割合を求め、以下の等式を用いてin vivoSPFを得る:
【0044】
【数2】

【0045】
本発明は本明細書において具体的に開示および例示した態様に限定されないことが理解される。発明の種々の改変が当業者に明らかとなろう。このような変化および改変は特許請求の範囲の範囲から逸脱することなくなすことができる。更に、各々の列挙した範囲は、範囲の全ての組合せおよび下位組合せ、更にこれに含有される具体的な数値、を包含する。更に、本件で引用または記載される各々の特許、特許出願および公開公報の開示はその全部を参照により本明細書に組入れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機金属酸化物サンスクリーン粒子;および
メチルセルロース;
を含む、サンスクリーン組成物。
【請求項2】
無機金属酸化物サンスクリーン粒子が、酸化亜鉛、二酸化チタンまたはこれらの混合物から選択される、請求項1に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項3】
無機金属酸化物サンスクリーン粒子が、透明酸化亜鉛または透明二酸化チタンである、請求項1に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項4】
透明酸化亜鉛サンスクリーン粒子が、組成物の約0.01質量%〜約99質量%、好ましくは約0.1質量%〜約50質量%、およびより好ましくは1質量%〜約25質量%の量で存在する、請求項3に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項5】
透明二酸化チタンサンスクリーン粒子が、組成物の約0.01質量%〜約99質量%、好ましくは約0.1質量%〜約50質量%、およびより好ましくは1質量%〜約25質量%の量で存在する、請求項3に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項6】
メチルセルロースが、組成物の約0.01質量%〜約30質量%、好ましくは約0.05質量%〜約15質量%、およびより好ましくは0.1質量%〜約5質量%の量で存在する、請求項1に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項7】
メチルセルロースが、DSメトキシル約1.47〜約3.08を有する、請求項1に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項8】
メチルセルロースが、水中2%での粘度約1cps〜約100,000cps、好ましくは約15cpを有する、請求項1に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項9】
サンスクリーン組成物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを実質的に含まない、請求項1に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項10】
保湿剤を更に含む、請求項1に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項11】
界面活性剤を更に含む、請求項1に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項12】
エモリエント剤を更に含む、請求項1に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項13】
保存料を更に含む、請求項1に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の有機サンケア活性物質を更に含む、請求項1に記載のサンスクリーン組成物。
【請求項15】
無機金属酸化物サンスクリーン粒子を含むサンスクリーン組成物のSPFを上昇させる方法であって:
メチルセルロースをサンスクリーン組成物中に含ませることを含む、方法。
【請求項16】
サンスクリーンが、メチルセルロースが存在しないサンスクリーンよりも少なくとも25%高いSPFを有する、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2012−506437(P2012−506437A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533262(P2011−533262)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/061245
【国際公開番号】WO2010/048124
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】