説明

メチルメルカプタンをジアルキルスルフィドおよびジアルキルポリスルフィドから製造する方法

本発明は、ジアルキルスルフィドおよび/またはジアルキルポリスルフィドを含有する反応体混合物を硫化水素の少なくともモル過剰量で高められた温度で気相中でアルカリ金属酸化物少なくとも1質量%を含有する担体触媒の存在下に少なくとも2つの別々の触媒帯域を含む反応器中で反応させることによって、アルキルメルカプタンを連続的に製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアルキルスルフィドおよび/またはジアルキルポリスルフィドおよび場合によってはジアルキルエーテルを含有する反応体混合物を硫化水素と不均一触媒上で反応させることによって、アルキルメルカプタンを製造する方法に関する。
【0002】
メチルメルカプタンは、メチオニンの合成のために、ならびにジメチルスルホキシドおよびジメチルスルホンの製造のために、工業的に重要な中間生成物である。メチルメルカプタンは、酸化アルミニウム担体および遷移金属酸化物および塩基性促進剤からなる触媒上での反応によって、主にメタノールおよび硫化水素から製造される。
【0003】
メタノールと硫化水素との反応の場合には、典型的な反応温度で経済的な硫化水素過剰量を使用しながら常にジメチルスルフィドがメチルメルカプタンと共に形成されるように反応平衡が存在する。また、チオエーテル形成と共に、ポリスルフィド(例えば、ジメチルスルフィド)への反応が観察される。この化合物は、生成物ガス流の後処理の経過中に分離される。更に、前記成分の経済的な使用が不可能である場合には、副生成物は、通常、例えば燃焼またはアルカリ液との反応によって廃棄される。この方法は、メチルメルカプタンのための製造法の全選択性、ひいては方法の経済性を低下させる。1つの他の選択可能な方法は、これに関連してプロセスへの硫化物またはポリスルフィドの返送である。スルフィド濃度を米国特許第2816146号明細書の記載により再循環によって十分に高く維持する場合には、アルコールまたはエーテルからのメルカプタンの新しい形成は、抑制される。この方法は、大量のスルフィドを分離し、凝縮し、循環路への返送の際に再び蒸発されなければならないという重大な欠点を有する。そのために、大量の熱および冷却エネルギーが必要とされる。
【0004】
工業的方法でメタノールおよび硫化水素からのメチルメルカプタンの製造に使用される典型的な触媒は、メチルメルカプタンの形成に対して高い選択性を示し、ジメチルスルフィドおよびジメチルジスルフィドの比較的僅かな発生を生じる。これに関連して、前記化合物がプロセスへの前記化合物の返送の際に循環路内で含量が増加するという問題を生じる。それというのも、公知技術水準で使用される触媒によって、メチルメルカプタンとジメチルスルフィドとの平衡が劣悪に調節されるからである。これは、それぞれ不所望にも新たに形成されたスルフィドの最大四分の一が循環路への返送の際に反応されることを意味する。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許第1193038号明細書Cに示されているように、スルフィドを分離し、1つの特殊な反応工程で別の触媒によりメチルメルカプタンに変換することも可能である。しかし、この場合には、ジメチルスルフィドの工業的に該当する変換率を達成するために、高い過剰量の硫化水素を選択しなければならない。ドイツ連邦共和国特許第1193038号明細書Cには、形成されたスルフィドを前接続された反応器中で必要とされる硫化水素の全体量と共に触媒上に導き、この場合この触媒は、スルフィドとメルカプタンとの反応平衡を良好に調節する方法が記載されている(前触媒、例えばMoO3/Al23)。その際に得られる反応生成物は、引続きメタノールまたはジメチルエーテルの混入後に主要な触媒(K2WO4/Al23)上に導かれ、この触媒上でアルコールまたはエーテルは、なお未反応の硫化水素と反応し、メチルメルカプタンに変わる。
しかし、上記のドイツ連邦共和国特許明細書に記載されているように、大量の硫化水素過剰量を使用した場合には、反応生成物と硫化水素との分離は、困難であることが証明された。特開昭58−159456号公報は、メチルメルカプタンのプロセスに関し、この場合循環路内に導かれる硫化水素は、新しい硫化水素と混合され、引続き全部のH2S流は、メチルメルカプタン反応器とDMS分解反応器との間に分配される。メチルメルカプタンの反応器の前方で、H2S部分流は、メタノールと混合され、他方、第2の部分流は、DMSと一緒に分解反応器中に到達する。引続き、2つの反応器の生成物流は、共通して生成物後処理部に供給される。米国特許第2831031号明細書の記載から、二酸化チタン上のピロ燐酸を基礎とする触媒は、公知であり、この触媒上でジメチルスルフィドは、97%の最大の選択性で42%の変換率でメチルメルカプタンに変換される。米国特許第4005149号明細書および特開昭52−46203号公報には、モリブデン酸コバルトまたは硫化タングステンでドープされたアルミニウム酸化物が記載されており、このアルミニウム酸化物を用いると、41%または88%の硫化ジメチル変換率およびメチルメルカプタンに対する92%または93%の選択性を達成することができる。更に、触媒として、米国特許第4313006号明細書には、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンでドープされたゼオライト(X、Y、L)の特許保護が請求されており、このゼオライトを用いると、70%の硫化ジメチル変換率の際に65%の最大のメチルメルカプタン選択性を達成することができる。特開昭58−159456号公報は、酸化燐および酸化タングステンで変性された酸化アルミニウムに関し、この酸化アルミニウムを用いると、40%の最大のDMS分解変換率を達成することができる。反応体ガス中でのH2S/DMS比は、上記の特許出願において、2〜28である。特に、十分に高いDMS分解変換率を達成するために、高いHS/DMS比を達成しようと努力される。米国特許第4005149号明細書には、有機硫化物を硫化水素で硫黄活性触媒(sulfaktiven Katalysatoren)の存在下に接触分解する方法が記載されている。二硫化炭素を反応混合物に添加することによって、メルカプタンに対する硫化物の全変換率は、上昇させることができる。この方法の欠点は、費用を掛けて再び反応生成物から分離しなければならない、毒性の二硫化炭素をプロセスに使用することである。一般に、硫化水素を用いてのメルカプタンへのジアルキルスルフィドの分解の際に、メルカプタンに対する高い選択性および副生成物の可能な限りの抑制を達成しようと努力される。これとは異なり、メルカプタンへの(ポリ)スルフィドの分解は、例えば酸化アルミニウム上で硫化水素の添加なしに、メチルメルカプタンに対する比較的低い選択性および副生成物の幅広のスペクトルによって特性決定される。Mashkina他は、例えばReact. Kinet. Catal. Lett., Vol. 70, No. 1, 183-189, 2000中で、87%の最大のメチルメルカプタン選択性で酸性触媒上でのH2S添加剤なしでメチルメルカプタンへのジメチルジスルフィドの分解を記載している。Koshelev他[React. Kinet. Catal. Lett., Vol. 27, No. 2, 387-391 (1985)]によれば、触媒が数多くの非プロトン性ルイス酸中心および塩基中心を調節剤の澱粉と一緒に有する場合には、γ−酸化アルミニウム上での硫化水素によるジメチルスルフィドの分解のためには、最大の活性が達成される。しかし、Koshelew他によって記載された、Na2O/Al23を基礎とする触媒は、9.5%のDMS変換率の際に82%にすぎない最大のメチルメルカプタン選択性を示し、一方で、純粋なγ−Al23上で38%の変換率の際に97%のメチルメルカプタン選択性を達成する。
【0006】
本発明の課題は、経済的方法、ジアルキルスルフィドおよび/またはジアルキルポリスルフィドおよび硫化水素からメチルメルカプタンを製造するための装置および特殊な触媒を提供することである。
【0007】
本発明の対象は、ジアルキルスルフィドおよび/またはジアルキルポリスルフィドを含有する反応体ガスを少なくともモル過剰量の硫化水素と、高められた温度で気相中で、
a)アルカリ金属酸化物少なくとも1質量%を含有する、Al23、SiO2、TiO2、アルミナ珪酸塩、ゼオライト、ベントナイトまたは粘土を基礎とするかまたはAl23、SiO2、TiO2、アルミナ珪酸塩、ゼオライト、ベントナイトまたは粘土からなる触媒の存在下で
b)少なくともn=2の別々の触媒体域を有する反応器中で反応させ、この場合
c)記載されたジアルキルスルフィドおよび/またはジアルキルポリスルフィドの主要な部分または全体量を、反応器中で使用される硫化水素の全体量の少なくとも一部分と一緒に第1の触媒帯域中に導入し、
d)硫化水素およびジアルキルスルフィドおよび/またはジアルキルポリスルフィドの残存量を触媒帯域間に供給することによって、アルキメルカプタンを連続的に製造する方法である。
【0008】
アルキルは、C1〜C5−アルキル、殊にメチルを意味する。ポリスルフィドは、一般に2〜6個の硫黄原子を有する。
【0009】
本方法は、有利に連続的に実施される。
【0010】
本発明により硫化水素と反応され、アルキルメルカプタンに変換される、ジアルキルスルフィドおよびジアルキルポリスルフィドのための好ましい例は、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジメチルテトラスルフィドおよびジチアペンタンである。この(ポリ)スルフィドは、単独でかまたはジメチルスルフィドとの混合物でプロセスに供給されることができる。反応体ガスには、例えばジメチルエーテルのようなアルキルエーテル化合物が供給されてもよく、アルキルエーテル化合物は、硫化水素と反応され、メチルメルカプタンに変わる。
【0011】
等式(1)は、ジメチルスルフィドの分解の例につき、反応を副生成物の形成なしに実施することができることを示す。本発明の目的は、98%を上廻る反応生成物のための選択性を有する、メチルメルカプタンへの変換を実施することである。更に、副生成物、例えば二硫化炭素の形成は、できるだけ完全に抑制される。
CH3−S−CH3 + H2S → 2CH3SH (1)
分解反応の僅かな熱の変化に応じて、硫化水素およびジアルキル(ポリ)スルフィドを含有する、予熱された反応体ガス混合物は、断熱反応器中で反応され、メチルメルカプタンに変わる。反応体ガス混合物は、ジアルキルエーテルまたはジアリールエーテル、殊にジメチルエーテルを含有していてもよい。
【0012】
硫化水素とジアルキルスルフィドおよびジアルキルポリスルフィドの全体量とのモル比は、3:1〜25:1、有利に5:1〜25:1、殊に10:1〜25:1に達する。
【0013】
特に、反応は、少なくとも2個、殊に2〜25個の触媒帯域が順次に接続されている反応器中で実施される。触媒帯域は、例えば固定床として形成されていてもよいし、触媒が充填された管束として形成されていてもよい。場合によっては、このタイプの多数の個々の装置は、順次に接続されていてもよい。ガス状または液状のジアルキルスルフィドおよび/またはジアルキルポリスルフィド、硫化水素および場合によっては他の成分を含有する反応体混合物は、有利にジアルキル(ポリ)スルフィドの全体量が硫化水素の全体量の少なくともn部に相当する一部分と一緒に第1の触媒帯域の前方で添加され、一方で硫化水素の残存量が触媒帯域の間に供給されるように反応器中に計量供給される。場合によっては、硫化水素の全体量が第1の触媒帯域の前方で添加されてもよい。
【0014】
生成物ガス混合物は、種々の公知の方法により分離することができる。特に好ましい分離は、欧州特許第0850923号明細書B1(米国特許第5866721号明細書)中に記載されている。未反応のジアルキルスルフィドまたはジアルキルポリスルフィドは、反応器中に返送される。
【0015】
図1は、請求項1に記載された、ジアルキル(ポリ)スルフィドをメルカプタンに分解するための反応装置の好ましい実施態様を示す。前記化合物を含有するガスは、反応体ガスまたは反応体混合物として示され、有利に硫化水素およびメタノールからメチルメルカプタンを製造するための方法に由来する。反応器1中には、分配空間と触媒床からなるn個(n=2〜25)の触媒帯域が設けられている。特に、3〜10個の触媒帯域が使用される。記載されたアルキル−(ポリ)−スルフィドを含有する反応体混合物2は、分配空間7を介して第1の触媒床8中に侵入する。この第1の触媒床は、場合によっては反応体ガスの流動方向に最初に不活性材料からなる堆積物で被覆されている。例えば、酸化アルミニウム球体またはセラミック−ラシヒリングは、不活性材料として使用される。不活性層に引き続いて、触媒堆積物が存在する。第1の工程を離れた後、ガス混合物は、分配空間9内で硫化水素10または場合によっては反応体混合物2の含量が増加される。引続き、ガス混合物は、分配空間9から第2の触媒床11中に流入し、この場合分配空間9内の装置は、反応体の攪乱流および完全な混合のために用意され、この反応体は、第2の触媒床の全面上に均一に分配される。硫化水素または場合によっては反応体ガス混合物は、同様にn−1個、有利にn−2個の噴入位置で装置の次の触媒床の間に供給される。場合によっては、最後の触媒床の前方で噴入位置12での硫化水素または反応体ガス混合物の供給は、省略することができ、反応における完全な変換を得ることができる。最後の触媒帯域は、場合によっては別の帯域よりも長く形成されていてもよく、完全な変換が可能である。
【0016】
また、本方法は、反応体ガスが場合によっては全体量に対して水素を少なくとも0.1体積%、有利に0.1〜10体積%、殊に1〜10体積%含有することを示す。この方法によって、オリゴマーおよびポリマーの形成は、抑制される。更に、反応体ガス中には、他の副成分、例えば窒素、水、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化カルボニルまたはジアルキルエーテルが含有されていてよい。
【0017】
メルカプタンへのジアルキル(ポリ)スルフィドの反応は、有利にアルカリ金属酸化物を含有する触媒上で100〜600℃、特に150〜450℃、殊に300℃〜430℃の温度および1.5〜50バール、特に8〜40バールの圧力で行なわれる。触媒担体としては、珪酸塩、酸化チタン、ゼオライト、粘土、酸化アルミニウム、有利にγ−酸化アルミニウムを使用することができる。特に、担体は、ルイス酸度が同時にルイス塩基度を上昇させた際に未変性の触媒担体と比較して減少されるようにアルカリ金属酸化物で変性される。特に、アルカリ金属酸化物1〜50質量%、有利に2〜20質量%を含有するγ−酸化アルミニウムは、触媒として使用される。
好ましくは、Cs酸化物またはRb酸化物を含有するγ−酸化アルミニウムは、本発明による方法で触媒として使用される。触媒は、例えば熱分解によって相応する酸化物に変換される適当なアルカリ金属塩で触媒担体を含浸することにより製出される。特に、アルカリ金属硝酸塩、炭酸塩またはカルボン酸のアルカリ金属塩が使用される。引続き、触媒は、乾燥され、場合によっては50〜600℃の温度でか焼される。
【0018】
1つの特殊な実施態様において、触媒は、原子番号21〜80の1つ以上の遷移金属、殊にV、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、MoまたはWの酸化物化合物を含有する。
【0019】
この金属は、燐酸塩またはピロ燐酸塩の形で存在していてもよい。
【0020】
初回の使用の前に、触媒は、好ましくは少なくとも1時間、少なくとも100℃の温度で硫化水素流中で硫化される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】請求項1記載の反応器の1つの実施態様を示す略図。
【図2】硫化水素の存在下でRb2O−γ−Al23を基礎とする触媒上でp=9バールおよびH2S/DMS=14/1の条件下でメチルメルカプタンへのジメチルスルフィドの分解の測定結果を示す略図。
【図3】硫化水素の存在下で2つの触媒帯域および2つの触媒帯域の前方のH2S供給部を備えた反応器中で種々の触媒の存在下でメチルメルカプタンへのジメチルスルフィドの分解の測定結果を示す略図。
【実施例】
【0022】
実施例1は、例示的に触媒の合成を示し、他方、実施例2には、メチルメルカプタンへのジメチルスルフィドの接触分解が記載されている。
実施例1:
2O−Al23(M=Li、Na、K、Rb、Cs)の調製
LiNO349.66gを蒸留水300ml中に溶解した。この溶液を約60℃へ昇温させ、その結果、塩は完全に溶解した。この溶液に撹拌下にγ−酸化アルミニウム50gを添加した。引続き、この溶液を約60分間攪拌した。この触媒を少なくとも60℃の温度で、場合によっては減少された圧力で、液体の全体量が担体中に吸収されるまで攪拌した。この触媒を約120℃で一晩中、空気中で乾燥させ、引続き500℃で3時間、空気流中でか焼した。
【0023】
実施例2
DMS分解を100〜500℃の温度範囲および1.5〜25バールの圧力で試験した。反応体ガス中での硫化水素とジメチルスルフィド(DMS)との比を1:1〜25:1の範囲内で変動させた。
【0024】
反応の開始前に、新しい触媒を最初に反応器中で350℃で2.5時間、硫化水素流中で硫化した。図2は、Rb2O−Al23について古典的な"塔頂部を介しての供給"(触媒帯域を有する固定床反応器)および"2帯域での運転形式"で、即ちH2S流をH2S中間供給部を備えた段階反応器と同様に2つの触媒帯域の前方で供給することによる、温度の機能としてのジメチルスルフィド分解変換率とメチルメルカプタンとの比較を示す。双方の場合、H2SとDMSとの全体比は、14:1であった。空間速度またはガス負荷量は、双方の場合に同一であった。図2は、本発明による装置中で本明細書中で特許保護が請求された、アルカリ金属酸化物で変性された触媒上で、常用の"1帯域の運転形式"の場合よりも明らかに高いDMS分解変換率を、例えば常用の固定床反応器中で達成することができることを明示する。
【0025】
図3は、"2帯域の運転形式"での本発明による装置中で触媒の造塊するルイス塩基度のプラスの影響を示す。CS2O−Al23触媒を用いると、例えば"1帯域の運転形式"および"2帯域の運転形式"でLi2O−Al23を基礎とする触媒を用いた場合よりも明らかに高い分解変換率を達成した。メチルメルカプタンの全選択性は、全ての場合に100%であり、即ち副生成物は全く検出されなかった。特に、異なるCs2O負荷量を有するCs2O−Al23触媒を合成した(5〜10質量%)。当業者にとって明らかであるように、γ−Al23源に関連する変性、含浸の実施、アルカリ金属酸化物の分散、担体の多孔度およびBET表面積および触媒状態調節または硫化の実施によってなおよりいっそう高いDMS分解変換率を達成することができた。
【0026】
全プロセスの経済性は、使用された炭素源(例えば、メタノール)に対するメチルメルカプタンの生成物選択性に決定的に依存する。前記の記載から、硫化物、例えばジメチルスルフィドが高い収率でメチルメルカプタンに変換されることができ、それによってメチルメルカプタンの製造に対する全選択性が上昇することは、明らかである。本発明の特殊な利点は、とにかく副生成物として燃焼されなければならないかまたは費用を掛けて廃棄しなければならないジアルキル(ポリ)スルフィドを工業的に簡単で安価な変換でメチルメルカプタンのための原料として利用することができることである。更に、本発明による方法の場合には、毒性の硫化水素または別の副生成物は形成されない。
【0027】
生成物ガス混合物から、形成されたメチルメルカプタンは、ドイツ連邦共和国特許第1768826号明細書(英国特許第1268842号明細書)に説明されているように、第1の処理工程(例えば、メタノールと硫化水素との反応)から多数の蒸留塔および洗浄塔中に10〜140℃の温度で分離される。
【符号の説明】
【0028】
1 反応器、 2 アルキル−(ポリ)−スルフィドを含有する反応体混合物、 7、9 分配空間、 8 第1の触媒床、 10 硫化水素、 11 触媒床、 12 噴入位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアルキルスルフィドおよび/またはジアルキルポリスルフィドを含有する反応体ガスを少なくともモル過剰量の硫化水素と、高められた温度で気相中で、
a)アルカリ金属酸化物少なくとも1質量%を含有する、Al23、SiO2、TiO2、アルミナ珪酸塩、ゼオライト、ベントナイトまたは粘土を基礎とするかまたはAl23、SiO2、TiO2、アルミナ珪酸塩、ゼオライト、ベントナイトまたは粘土からなる触媒の存在下で、
b)少なくともn=2の別々の触媒体域を有する反応器中で反応させ、この場合
c)記載されたジアルキルスルフィドおよび/またはジアルキルポリスルフィドの主要な部分または全体量を、反応器中で使用される硫化水素の全体量の少なくとも一部分と一緒に第1の触媒帯域の前方に導入し、
d)硫化水素およびジアルキルスルフィドおよび/またはジアルキルポリスルフィドの残存量を触媒帯域間に供給し、
e)この場合、反応体ガス混合物中にはジアルキルエーテルも含有されていてよく、このジアルキルエーテルは、硫化水素と反応し、アルキルメルカプタンに変わり、それによってプロセスの全選択性は、上昇することを特徴とする、アルキメルカプタンを連続的に製造する方法。
【請求項2】
反応体ガスは、付加的にジアルキルエーテルを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ジアルキルスルフィドおよび/またはジアルキルポリスルフィドの全体量を、使用される硫化水素の少なくともn部と一緒に第1の触媒帯域中に反応器中に導入する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
アルカリ金属酸化物を少なくとも1質量%含有する、γ−Al23からなる触媒を使用する、請求項1、2または3記載の方法。
【請求項5】
CsまたはRbから選択される、アルカリ金属酸化物を少なくとも1質量%含有する触媒を使用する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
触媒を遷移金属の化合物で変性する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
反応器の触媒帯域を固定床、管束または渦動床として形成する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
多数の反応器を順次に接続する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
硫化水素とジアルキルスルフィドおよびジアルキルポリスルフィドの全体量とのモル比は、3:1〜25:1の範囲内にある、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
アルキルメルカプタンの製造の際に副生成物として生じる、ジアルキルスルフィドおよび/またはジアルキルポリスルフィドを含有する反応体ガスを使用する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
反応体ガスは、水素を少なくとも0.1%含有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
初回の使用の前に、触媒を、少なくとも1時間、少なくとも100℃の温度で硫化水素流中で硫化する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
反応を100〜600℃、特に300〜430℃の温度および1.5〜50バール、特に8〜40バールの圧力で行なう、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−518176(P2010−518176A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549807(P2009−549807)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050464
【国際公開番号】WO2008/098810
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】