説明

メチレンジアニリン誘導体の製造方法

【課題】MDA誘導体の製造方法の提供。
【解決手段】式(I)


を、ゼオライトで反応させる、式(II)


メチレンジアニリン誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチレンジアニリン誘導体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メチレンジアニリン誘導体(以下、「MDA誘導体」と称する場合がある。)は、ジフェニルメタンジイソシアネート誘導体(以下、「MDI誘導体」と称する場合がある。)を製造する際の原料として知られている。
【0003】
従来、MDA誘導体の製造方法としては、例えば、塩酸等の鉱酸を触媒として用い、アニリン又はその誘導体とホルムアルデヒドとを反応させる方法が用いられてきた。しかしながら、この方法では、装置の腐食、反応後に得られた反応液を中和するために鉱酸と等モル以上のアルカリを必要とし、塩として廃棄物が発生することが問題となっていた。
【0004】
このような問題点を解決する方法として、種々のゼオライトを触媒としたMDA誘導体の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、これらの方法は、ゼオライトの細孔径(ゼオライト構造)やその酸性質(Si/Al比、イオン交換等)に着目したMDA誘導体の製造法であり、収率の点では満足できるものではなかった。
【0006】
また、ゼオライトを触媒として使用した場合、ゼオライト結晶構造の崩壊に伴い触媒性能が低下することがあり、耐久性(触媒寿命)が問題となることが多いことが知られている。耐久性を向上させるためには、ゼオライトの結晶径を大きくすることが知られているが(例えば、特許文献4〜特許文献6参照)。
【0007】
しかしながら、ゼオライトを大結晶化した場合には、触媒性能をさらに向上させること、特に低温での触媒性能を向上させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−26571号公報
【特許文献2】特表2003−529577号公報
【特許文献3】特表2005−521722号公報
【特許文献4】特開平11−228128号公報
【特許文献5】特公昭63−6487号公報
【特許文献6】特開2001−58816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゼオライトの存在下、高収率でMDA誘導体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のゼオライトの存在下に反応させることで、高収率でMDA誘導体を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのメチレンジアニリン誘導体の製造方法である。
【0012】
[1]一般式(I)
【0013】
【化1】

(式中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を表す。)
で示される中間体を、平均結晶径が2nm〜0.5μmの範囲であり、かつ12員環又は10員環を有するゼオライトの存在下で反応させることを特徴とする下記一般式(II)
【0014】
【化2】

(式中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
で示されるメチレンジアニリン誘導体の製造方法。
【0015】
[2]12員環又は10員環を有するゼオライトが、プロトン型ゼオライトであることを特徴とする上記[1]に記載のメチレンジアニリン誘導体の製造方法。
【0016】
[3]12員環又は10員環を有するゼオライトが、FAU構造、EMT構造、MOR構造、BEA構造、及びMFI構造からなる群より選ばれる構造を有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のメチレンジアニリン誘導体の製造方法。
【0017】
[4]12員環又は10員環を有するゼオライトの平均結晶径が、2nm〜0.1μmの範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のメチレンジアニリン誘導体の製造方法。
【0018】
[5]一般式(I)及び一般式(II)において、Rが水素原子であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のメチレンジアニリン誘導体の製造方法。
【0019】
[6]一般式(II)において、nがn=1であることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のメチレンジアニリン誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ゼオライト触媒を用いてMDA誘導体を製造する方法において、MDA誘導体、特にメチレンジアニリン(MDA)を高収率で製造することができるため、本発明は産業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、上記一般式(II)で示されるメチレンジアニリン誘導体(MDA誘導体)の製造方法であって、上記一般式(I)で示される中間体を、平均結晶径が2nm〜0.5μmの範囲であり、かつ12員環又は10員環を有するゼオライトの存在下で反応させることをその特徴とする。
【0022】
上記一般式(II)において、置換基Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を表し、nは1〜5の整数を表す。Rが水素原子であり、かつn=1の場合はメチレンジアニリン(MDA)となる。
【0023】
これらMDA異性体のうち、工業的にはMDAが選択的に得られることが好ましい。また、MDAにはアミノ基の位置によりいくつかの異性体が存在し、例えば、2,2’―MDA、2,4’―MDA、4,4’―MDA等が製造されているが、工業的には4,4’―MDAが選択的に得られることが好ましい。
【0024】
また、上記一般式(I)において、置換基Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を表す。Rが水素原子の場合は、N,N’−ジフェニルメチレンジアミンとなる。
【0025】
本発明において、上記一般式(I)で示される中間体を製造する方法は特に限定されない。例えば、アニリン誘導体とホルムアルデヒド誘導体とを反応させて製造することができる。上記一般式(I)で示される中間体がN,N’−ジフェニルメチレンジアミンの場合、例えば、アニリンとホルムアルデヒドを反応させることで製造できる。
【0026】
この反応において、アニリンとしては特に限定するものではないが、市販品、合成品、本発明で用いられて後に回収されたもの、又はこれらの混合品を用いることができる。また、ホルムアルデヒドは、通常20〜50重量%のホルムアルデヒドを含有する水溶液の形で用いられる。このホルムアルデヒド水溶液はメタノール等の通常の安定剤を含有していても問題ない。
【0027】
アニリンとホルムアルデヒドの比は特に限定されないが、アニリン/ホルムアルデヒドのモル比で2〜50の範囲が好ましい。2より小さい場合、ホルムアルデヒドが過剰に存在するため、効率が低下するおそれがある。また50より大きい場合、大過剰のアニリンが存在するため、後のゼオライト触媒存在下でMDA誘導体を製造する際の効率が低下するおそれがある。
【0028】
アニリンとホルムアルデヒドとを反応させる場合、触媒存在下で反応させても、無触媒下で反応させてもよい。また、アニリンとホルムアルデヒドが十分に混合されればよく、回分式、半回分式、連続式のいずれの方法を用いてもよい。
【0029】
反応器は、例えば、槽型、管型等のいずれの形状でもよい。また、アニリンとホルムアルデヒドを混合する場合、アニリンにホルムアルデヒドを加えても、ホルムアルデヒドにアニリンを加えても、いかなる方法でもよい。
【0030】
アニリンとホルムアルデヒドとを反応させる温度は特に限定するものではないが、例えば、0℃〜80℃の範囲で反応を実施することが好ましい。0℃より低温の場合、反応効率は問題ないが冷却のためのエネルギーが必要となり、経済的ではない。また、80℃より高温の場合、反応効率は問題ないが加熱のためのエネルギーが必要となり、経済的ではない。
【0031】
アニリンとホルムアルデヒドとを反応させる反応時間は特に限定するものではないが、例えば、0.5時間〜5時間の範囲で反応を実施すればよい。0.5時間より短い場合、アニリンとホルムアルデヒドの反応が十分に進行しないおそれがある。また、反応時間を5時間より長くしても、それ以上の反応の進行は望めない場合がある。
【0032】
アニリンとホルムアルデヒドとを反応させる場合、溶媒を用いずに合成しても、溶媒を用いて合成してもよい。溶媒を使用する場合は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロゲン系炭化水素を用いることができる。
【0033】
アニリンとホルムアルデヒドとの反応終了後、反応液は通常2相に分離する。水相にはホルムアルデヒド水溶液とメタノール等の水溶性のホルムアルデヒド安定剤が含まれる。有機相にはN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリン、及び若干の水が含まれる。
【0034】
このような2相からなる反応液から、アニリンとN,N’−ジフェニルメチレンジアミンの混合物を分離する方法としては特に限定するものではないが、分液等の物理的な分離や、蒸留等の公知の方法を用いることができる。分液により水層を除去した場合、減圧乾燥や、脱水剤により水分を更に除去してもよい。溶媒を用いて反応させた場合、溶媒を除去してもしなくてもよい。
【0035】
上記一般式(I)で示される中間体が、N,N’−ジフェニルメチレンジアミン以外の場合も同様に、アニリン誘導体とホルムアルデヒド誘導体とを上記したような条件で反応させ、製造することができる。
【0036】
本発明において、ゼオライトとは、一般式:M2/nO・Al・ySiO・zHO(式中、MはNa、K、Ca、Ba等の金属を表し、nは陽イオンMの原子価を表す。また、yは2以上の数を表し、zは0以上の数を表す。)で示される結晶性アルミノシリケートをいい、天然品及び合成品として多くの種類が知られている。
【0037】
本発明において触媒として用いられるゼオライトは、平均結晶径が2nm〜0.5μmの範囲であり、かつ12員環又は10員環を有するものである。平均結晶径が2nm以下では、ゼオライトの周期構造が保持されにくく、十分な触媒性能が得られない。一方、平均結晶径を0.5μm以下にすることにより、十分な触媒性能を得ることができるが、触媒の耐久性(触媒寿命)の点では、平均結晶径が小さい方が好ましく、0.1μm以下にすることがさらに好ましい。
【0038】
本発明において平均結晶径とは、SEM写真においてランダムに選択した少なくとも10個のゼオライトの結晶粒子を測った結晶径(長軸)を加重平均することによって得られる平均結晶径をいう。
【0039】
本発明において触媒として用いられるゼオライトとしては粒子径が揃っているものが好ましい。その目安としては、特に限定するものではないが、例えば、ゼオライトの粒子径が、平均粒子径×(1±0.3)の範囲にある粒子の割合が80重量%以上のものが好ましく、90重量%以上のものがさらに好ましい。
【0040】
12員環又は10員環を有するゼオライトは多種多様なものが知られており、例えば、12員環を有するゼオライトとしては、AFI構造、ATO構造、BEA構造、CON構造、FAU構造、EMT構造、GME構造、LTL構造、MOR構造、MTW構造、OFF構造等のものが挙げられ、10員環を有するゼオライトとしては、AEL構造、EUO構造、FER構造、HEU構造、MEL構造、MFI構造、NES構造、TON構造、WEI構造等のものが挙げられる。これらのうち、高い触媒性能を得るためには、FAU構造、EMT構造、MOR構造、BEA構造、MFI構造等が好ましい。
【0041】
本発明においては、ゼオライトに従来公知の方法で前処理を実施してもよい。例えば、高い触媒性能を得るためには、ゼオライトがプロトンでイオン交換されていること、すなわち、プロトン型ゼオライトが好ましい。
【0042】
本発明において、ゼオライトのSiO/Al(モル比)は特に限定されないが、高い耐久性を得るためには、SiO/Al(モル比)が5以上であることが好ましい。
【0043】
本発明において、ゼオライトの形状は特に限定されず、例えば、粉末、ペレット、ビーズ等公知の形状のものを用いることができる。
【0044】
本発明において、上記一般式(1)で示される中間体を、上記のゼオライトの存在下で反応させる場合、ゼオライトの濃度は、十分な触媒性能が得られるよう適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、上記一般式(I)で示される中間体を含有する反応液を用いる場合には、その反応液に対して、0.1〜500重量%の範囲が好ましく、1.0〜100重量%の範囲がさらに好ましい。ゼオライトの濃度が0.1重量%より少ないと十分な触媒性能が得られなくなるおそれがある。500重量%より多いと触媒が大量に必要となるため、経済的ではない。
【0045】
また、本発明において、上記一般式(1)で示される中間体を反応させる温度としては特に限定するものではないが、例えば、50〜300℃の範囲で反応させることが好ましい。反応温度が50℃より低い場合、触媒作用が弱くなって、高い触媒性能を得られなくなるおそれがある。また、反応温度が300℃より高い温度の場合、反応温度を維持するために多量のエネルギーが必要となるため、経済的ではない。
【0046】
また、本発明において、上記一般式(1)で示される中間体を反応させる時間としては特に限定するものではないが、例えば、0.5〜50時間の範囲で反応させることが好ましい。反応時間が0.5時間より短い場合、触媒が十分に機能せず、高い触媒性能を得られなくなるおそれがある。また、反応時間を50時間より長くしても、それ以上の反応の進行は望めない場合がある。
【0047】
本発明の反応は、回分式、半回分式、又は固定床のいずれの方法によって実施してもよい。反応器は、例えば、槽型、管型等のいずれの形状でもよい。
【0048】
また、本発明の反応は、溶媒を用いずに実施しても、溶媒を用いて実施してもよい。溶媒を使用する場合は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロゲン系炭化水素等の溶媒を用いることができる。この場合、上記一般式(1)で示される中間体を調製する際に使用した溶媒をそのまま用いてもよい。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0050】
(MDA誘導体の測定)
ガスクロマトグラフ分析には、ガスクロマトグラフGC−17A(島津製作所製)を用い、生成したMDA誘導体を測定した。カラムにはDB−5(アジレント・テクノロジー社製)、検出器にはFIDを用いた。反応に用いた中間体の量に対して、ガスクロマト分析により求められたMDA及びMDA誘導体の量からMDA収率及びMDA誘導体収率を算出した。
【0051】
実施例1.
アニリンとホルムアルデヒドのモル比が4となるように、アニリンと、37重量%ホルムアルデヒドを常温にて混合し、50℃で2時間撹拌した。放冷後、水相を分液し中間体であるN,N’−ジフェニルメチレンジアミンのアニリン溶液を得た。
【0052】
このようにして得られた中間体のアニリン溶液10gに対して、あらかじめ600℃で活性化したMFI型ゼオライト(東ソー社製、製品名:HSZ830HOA)0.5gを窒素雰囲気の室温にて加えた。ゼオライトのSiO/Al(モル比)は28で、イオン交換されているカチオンの種類はプロトンであった。SEM写真においてランダムに選択した10個のゼオライトの結晶粒子より求めた平均結晶径は0.4μmであった。また、実施例1で使用したゼオライトの粒子径は、この平均粒子径×(1±0.05)の範囲内であった。
【0053】
この混合物を窒素雰囲気下、140℃で24時間撹拌した。室温まで放冷し、触媒を除去した反応液をガスクロマトグラフ分析した結果、MDAの収率は77%、MDA誘導体収率は84%であった。
【0054】
実施例2.
ゼオライトをMFI型ゼオライト(東ソー社製、製品名:HSZ860HOA)とした以外は実施例1と同様にした。ゼオライトのSiO/Al(モル比)は70で、イオン交換されているカチオンの種類はプロトンであった。SEM写真においてランダムに選択した10個のゼオライトの結晶粒子より求めた平均結晶径は0.05μmであった。また、実施例2で使用したゼオライトの粒子径は、この平均粒子径×(1±0.05)の範囲内であった。
【0055】
ガスクロマトグラフ分析の結果、MDAの収率は82%で、MDA誘導体収率は92%あった。
【0056】
実施例3.
ゼオライトをFAU型ゼオライト(東ソー社製、製品名:HSZ320HOA)とした以外は実施例1と同様にした。ゼオライトのSiO/Al(モル比)は5.5で、イオン交換されているカチオンの種類はプロトンであった。SEM写真においてランダムに選択した10個のゼオライトの結晶粒子より求めた平均結晶径は0.3μmであった。また、実施例3で使用したゼオライトの粒子径は、この平均粒子径×(1±0.05)の範囲内であった。
【0057】
ガスクロマトグラフ分析の結果、MDAの収率は81%、MDA誘導体収率は89%であった。
【0058】
実施例4.
ゼオライトをBEA型ゼオライト(東ソー社製、製品名:HSZ930NHA)とした以外は実施例1と同様にした。ゼオライトのSiO/Al(モル比)は27で、イオン交換されているカチオンの種類はプロトンであった。SEM写真においてランダムに選択した10個のゼオライトの結晶粒子より求めた平均結晶径は0.04μmであった。また、実施例4で使用したゼオライトの粒子径は、この平均粒子径×(1±0.05)の範囲内であった。
【0059】
ガスクロマトグラフ分析の結果、MDAの収率は87%、MDA誘導体収率は93%であった。
【0060】
実施例5
ゼオライトをBEA型ゼオライト(東ソー社製、製品名:HSZ931NHA)とした以外は実施例1と同様にした。ゼオライトのSiO/Al(モル比)は27で、イオン交換されているカチオンの種類はプロトンであった。SEM写真においてランダムに選択した10個のゼオライトの結晶粒子より求めた平均結晶径は0.5μmであった。また、実施例5で使用したゼオライトの粒子径は、この平均粒子径×(1±0.05)の範囲内であった。
【0061】
ガスクロマトグラフ分析の結果、MDAの収率は82%、MDA誘導体収率は89%であった。
【0062】
実施例6.
テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)、アルミニウム、水酸化リチウムを以下の組成で混合し、混合スラリー300gを得た。
【0063】
SiO:0.29Al:1.76TMAOH:101HO:0.31Li。
【0064】
混合スラリーをテフロン(登録商標)の内筒を装填したオートクレーブに入れ、100℃で30時間結晶化させた。結晶化後のスラリーは、濾過、洗浄後110℃で乾燥した。更に空気流通下、600℃で焼成することにより、TMAOHを除去した。粉末X線回折によりEMT構造のゼオライトとFAU構造のゼオライトに対応するX線ピークが観測され、EMT構造とFAU構造の比は6:4であった。
【0065】
このようにして調製したゼオライトを用いた以外は実施例1と同様にした。ゼオライトのSiO/Al(モル比)は4.1で、イオン交換されているカチオンの種類はプロトンであった。SEM写真においてランダムに選択した10個のゼオライトの結晶粒子より求めた平均結晶径は0.1μmであった。また、実施例6で使用したゼオライトの粒子径は、この平均粒子径×(1±0.05)の範囲内であった。
【0066】
ガスクロマトグラフ分析の結果、MDAの収率は80%、MDA誘導体収率は91%であった。
【0067】
比較例1.
ゼオライトをMFI型ゼオライト(東ソー社製、製品名:HSZ840HOA)とした以外は実施例1と同様にした。ゼオライトのSiO/Al(モル比)は40で、イオン交換されているカチオンの種類はプロトンであった。SEM写真においてランダムに選択した10個のゼオライトの結晶粒子より求めた平均結晶径は4μmであった。また、比較例1で使用したゼオライトの粒子径は、この平均粒子径×(1±0.05)の範囲内であった。
【0068】
ガスクロマトグラフ分析の結果、MDAの収率は14%、MDA誘導体収率は14%であった。
【0069】
比較例2.
テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)、アルミニウム、フッ化水素を以下の組成で混合し、混合スラリー100gを得た。
SiO:0.04Al:0.62TEAOH:7.08HO:0.62HF
混合スラリーをテフロン(登録商標)の内筒を装填したオートクレーブに入れ、140℃で62時間撹拌し、結晶化させた。結晶化後のスラリーは、濾過、洗浄後110℃で乾燥した。更に空気流通下、600℃で焼成することにより、TEAOHを除去した。粉末X線回折によりBEA構造のゼオライトに対応するX線ピークのみが観測され、BEA構造のゼオライトが得られたことを確認した。
【0070】
このようにして調製したゼオライトを用いた以外は実施例1と同様にした。ゼオライトのSiO/Al(モル比)は25で、イオン交換されているカチオンの種類はプロトンであった。SEM写真においてランダムに選択した10個のゼオライトの結晶粒子より求めた平均結晶径は1μmであった。また、比較例2で使用したゼオライトの粒子径は、この平均粒子径×(1±0.05)の範囲内であった。
【0071】
ガスクロマトグラフ分析の結果、MDAの収率は34%、MDA誘導体収率は36%であった。
【0072】
実施例1〜6及び比較例1〜2の結果を表1にあわせて示す。
【0073】
【表1】

この表によれば、平均結晶径が2nm〜0.5μmの範囲であり、かつ12員環又は10員環を有するゼオライトの存在下に上記一般式(I)で示される中間体を反応させることで、高効率でMDA誘導体を製造できることは明らかである。
【0074】
実施例7.
実施例1で得られたN,N’−ジフェニルメチレンジアミンのアニリン溶液10gに、あらかじめ600℃で活性化したBEA型ゼオライト(東ソー社製、製品名:HSZ930NHA)0.5gを窒素雰囲気の室温にて加えた。ゼオライトのSiO/Al(モル比)は27で、イオン交換されているカチオンの種類はプロトンであった。SEM写真においてランダムに選択した10個のゼオライトの結晶粒子より求めた求めた平均結晶径は0.04μmであった。また、実施例7で使用したゼオライトの粒子径は、この平均粒子径×(1±0.05)の範囲内であった。
【0075】
この混合物を窒素雰囲気下、140℃で2時間撹拌した。室温まで放冷し、触媒を除去・回収した。
【0076】
回収した触媒を、実施例1で得られたN,N’−ジフェニルメチレンジアミンのアニリン溶液10gに窒素雰囲気の室温にて加え、この混合物を窒素雰囲気下、140℃で2時間撹拌し、室温まで放冷し、触媒を除去・回収した。この操作を4回繰り返した。
【0077】
触媒を除去した反応液をガスクロマトグラフ分析した結果、4回目のMDA収率は84%、MDA誘導体収率は90%であった。
【0078】
実施例8.
ゼオライトを実施例6で得られたEMT構造とFAU構造の比が6:4のゼオライトとした以外は、実施例7と同様にした。
【0079】
ゼオライトのSiO/Al(モル比)は5.0で、イオン交換されているカチオンの種類はプロトンであった。SEM写真においてランダムに選択した10個のゼオライトの結晶粒子より求めた平均結晶径は0.1μmであった。また、実施例8で使用したゼオライトの粒子径は、この平均粒子径×(1±0.05)の範囲内であった。
【0080】
ガスクロマトグラフ分析の結果、4回目のMDA収率は58%、MDA誘導体収率は61%であった。
【0081】
参考例
ゼオライトをBEA型ゼオライト(東ソー社製、製品名:HSZ931NHA)とした以外は実施例6と同様にした。ゼオライトのSiO/Al(モル比)は27で、イオン交換されているカチオンの種類はプロトンであった。SEM写真においてランダムに選択した10個の平均結晶径は0.5μmであった。また、参考例で使用したゼオライトの粒子径は、この平均粒子径×(1±0.05)の範囲内であった。
【0082】
ガスクロマトグラフ分析の結果、4回目のMDA収率は5%、MDA誘導体収率は6%であった。
【0083】
実施例7、8及び参考例の結果を表2にあわせて示す。
【0084】
【表2】

この表によれば、触媒寿命の点で、ゼオライトの平均結晶径は小さい方が有利であり、具体的には0.1μm以下にすることが有利であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の方法により製造されたメチレンジアニリン誘導体は、例えば、ポリウレタンの原料として用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を表す。)
で示される中間体を、平均結晶径が2nm〜0.5μmの範囲であり、かつ12員環又は10員環を有するゼオライトの存在下で反応させることを特徴とする下記一般式(II)
【化2】

(式中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
で示されるメチレンジアニリン誘導体の製造方法。
【請求項2】
12員環又は10員環を有するゼオライトが、プロトン型ゼオライトであることを特徴とする請求項1記載のメチレンジアニリン誘導体の製造方法。
【請求項3】
12員環又は10員環を有するゼオライトが、FAU構造、EMT構造、MOR構造、BEA構造、及びMFI構造からなる群より選ばれる構造を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメチレンジアニリン誘導体の製造方法。
【請求項4】
12員環又は10員環を有するゼオライトの平均結晶径が、2nm〜0.1μmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のメチレンジアニリン誘導体の製造方法。
【請求項5】
一般式(I)及び一般式(II)において、Rが水素原子であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のメチレンジアニリン誘導体の製造方法。
【請求項6】
一般式(II)において、nがn=1であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のメチレンジアニリン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2012−77062(P2012−77062A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283794(P2010−283794)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】