説明

メチレンブルーに基づいた、ファイバーによる蛍光顕微鏡法

【課題】費用がかからず且つ組織の画像の迅速な獲得を可能にする生体内イメージングのための簡略化された方法を提案することを課題とする。
【解決手段】本発明は、光ビームの走査によって組織を励起する少なくとも一つの光ファイバーを有する獲得システムを使用して、組織から生体内蛍光画像を獲得するための方法に関するものである。本発明に依れば、システムは、組織中に存在するメチレンブルーによって放出される蛍光信号を検知するために使用される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームによって組織を励起する少なくとも一つの光ファイバーを含む獲得システム(acquistion system)を使用して、組織の蛍光画像を生体内捕捉する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の特に有用な適用分野は、生体内医療イメージングの分野である。この目的を達成するために、データ処理により、リアルタイムで一点一点構成される画像の獲得を可能にするファイバーシステムが使用される。このようなシステムは、特に、内視鏡の操作チャネル又は内視鏡に一体化された操作チャネルを介してアクセス可能で、リアルタイムで生体内の部位の生体組織の観察と分析を可能にする。
【0003】
一般に、このようなシステムには、光検知器から発生される電気信号から画像を生成することが可能な処理ユニットを含めることができる。その光検知器は、組織から発生して少なくとも一つの光ファイバーによって伝送される蛍光信号を受信する。また、このシステムは、励起ビームが撮像される組織部分の点ごとの走査を実行できるようにするために、走査手段を有している。
【0004】
蛍光イメージングでは、光子が分子を励起する。分子の下方遷移により、蛍光光子が放出される。励起光子のエネルギーは、分子を一定の励起状態にするのに必要とされるエネルギーの量に正確に対応する。
【0005】
一般に、観察される蛍光は、外因性化合物(通常は投与される染料)から発生し、又は生体組織の細胞によって生成される(トランスジェニックタイプの染料)或いは細胞内に自然に存在している(自己蛍光)内因性化合物のいずれかから発生し得る。特に、投与される外因性化合物を使用する場合には、強い蛍光特性の染料を使用することが一般的に受け入れられ、推奨されている。こうして、高画質な画像を生成するのに明らかに充分な蛍光光子量で、低パワー(励起エネルギー)のレーザーを有効に使用することができる。
【0006】
一般に、蛍光特性を有していることで知られているローダミン,フルオレスセイン,シアニン等の染料が使用されている。
【0007】
然しながら、これらの染料の難点は、それらが高価であり、且つ、その最たる難点は有害である点にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、費用がかからず且つ組織の画像の迅速な獲得を可能にする生体内イメージングのための簡略化された方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、光ビームの走査によって組織を励起する少なくとも一つの光ファイバーを含む獲得システムを使用して、組織の蛍光画像を生体内獲得する方法によって達成される。本発明に依れば、前記システムは、組織内に存在するメチレンブルーによって放出される蛍光信号を検知するために使用される。
【0010】
本発明の特筆すべき点は、メチレンブルーが、生体内イメージング用のファイバーシステムにおける蛍光特性のために使用されるという事実である。このシステムは、具体的には共焦点タイプのものである。共焦点の性質は、組織の励起されたポイントのみから発生し且つ励起信号と同じ経路を辿る戻り信号を検出することを可能にする空間フィルタリングを用いることにより得られる。
【0011】
メチレンブルー即ちメチルチオニン塩化物を使用することは、染料は極めて高い蛍光能力を有していなければならないという大方の偏見に反する。然しながら、本発明による方法では、メチレンブルーの扱い易さの方に、染料の蛍光効率よりも優位性が付与されている。この方法は、医療分野において一般的に使用されてはいるが別の目的でも使用されている物質を使用することにより、蛍光画像を獲得するためのプロセスを簡略化させることを可能にする。一般に用いられるメチレンブルーの薬理学的特性は、解毒,染色,消毒、又は更に診断上のものである。
【0012】
更により詳しくは、メチレンブルーは、内視鏡検査では「生体染色剤(vital stain)」として使用される。これは、「色素内視鏡検査(chromoendoscopy)」又は「色素検査(chromoscopy)」と呼ばれている。メチレンブルーは、「生体内細胞検査(endocytoscopy)」と呼ばれる新しい技術分野において造影剤としても使用される。この場合、メチレンブルーは染料としてのみ使用される。また、メチレンブルーは、光診断(photodiagnosis)のための造影剤としても使用される。生体染色剤、染料又は造影剤としても使用される何れの場合においても、メチレンブルーの蛍光特性は利用されていない。
【0013】
従って、メチレンブルーは一般に特に消毒剤として使用されている。それ故、消毒処置の前段階中にメチレンブルーを組織に使用することができ、その組織に存在するそのメチレンブルーの助けを借りて、組織の蛍光画像を獲得することができる。他の蛍光色素分子(fluorophore)を施す必要がなくなるため、本発明に係る方法によって齎される、コスト及び時間に関する利点については明白である。
【0014】
本発明の有益な実施形態に依れば、使用する獲得システムは、共焦点・生体内顕微鏡検査システム(confocal endomicroscopy system)(内視鏡検査中の顕微鏡検査)である。
【0015】
本発明の有益な態様によれば、励起光ビームはレーザービームである。更に、励起光ビームの波長を600nm〜680nmにできる。好適な波長で共焦点・生体内顕微鏡システムを使用すれば、顕微鏡レベルでの画像の獲得が可能となる。
【0016】
メチレンブルーを特に人体の組織に使用する時は、その濃度を、実質的に0.5%と等しくすることが有益である。この値は、特にメチレンブルーの有害性に対処するために推奨される。それでも、この場合、特にレーザー照射によってメチレンブルーの蛍光特性を最良に活用することにより、光毒症が生じてしまう。これを克服するために、最大濃度で0.5%に等しいメチレンブルーの使用を提案することができ。この場合に、獲得システムが画像を生成することを許容するため、充分に高いレベルの蛍光信号を検知できるように、励起レーザービームのパワー及び獲得システムの感度を適合させる。一例として、励起レーザービームのパワーを、1マイクロ秒の照射について10mWより低い又は等しいパワーとする。より詳しくは、レーザーのパワーをメチレンブルーの光毒症の閾値に達しないように適合させ、典型的には、組織に対して1〜5mWに適合させる。
【0017】
また、本発明に依れば、レーザーパワーが10〜15mWで、0.1%〜0.01%の濃度のメチレンブルーを有効に使用することが可能である。これは、特に、高画質の画像を獲得することも可能にする。
【0018】
本発明の有益な態様に依れば、獲得システムは、順々に照射される複数の光ファイバーによって構成されるファイバー束を備えており、各ファイバーは、励起信号及び逆放出される蛍光信号を伝送するように構成されている。本発明によるシステムは、リモートの生体内部位の蛍光画像(remote in vivo in situ fluorescence image)を顕微鏡解像度で生成することを可能にする。ファイバー束は、内視鏡検査で操作チャネルに挿入できる可撓性とサイズを有している。撮像する組織の領域は、励起信号によって点ごとに、又は線ごとに走査することができる。
【0019】
好ましくは、光ビームは、リアルタイムで毎秒、少なくとも12の画像を獲得するように組織を走査する。
【0020】
本発明の別の態様に依れば、上述した方法を共焦点・生体内顕微鏡検査で、細胞節(cell node)の画像を獲得するために適用することが提案される。
【0021】
本発明は、添付の図面を参照しながら以下に詳述する実施形態により、より明確に理解され、その他の利点も明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、メチレンブルーに基づく共焦点顕微鏡蛍光イメージングシステムについて詳述するが、本発明は、何らこれに限定されるものではない。その画像獲得システムは、国際公開WO2004/008952号に記載されている(光学ヘッド付きの、または、光学ヘッドの付いていない)装置の一つから構成することができる。然しながら、何らかのその他の好適な装置を用いることができる。
【0023】
図1中で、参照符号13は、細胞核を着色するためにメチレンブルーが注入された生体組織である。例えば人体の組織を扱う場合には、0.5%の濃度を超えないように注意が払われる。
【0024】
図1及び図2に示した実施形態によれば、本装置は、
光源1と、
励起ビーム形成手段2と、
波長分離手段3と、
走査手段4と、
ビーム注入手段5と、
複数の可撓性光ファイバーにより構成されるファイバー束6と、
フォーカシング光学ヘッド7と、
励起ビーム拒絶手段8と、
蛍光信号のフォーカシング手段9と、
蛍光信号の空間フィルタリング手段10と、
蛍光信号の検知手段11と、
検知された蛍光信号を電子的にデータ処理し表示する手段12を有している。
【0025】
これらの異なる構成要素について以下に詳述する。
【0026】
光源1は、メチレンブルーを励起させることの可能な600nm〜680nm、例えば、635nmの励起波長で放射するレーザーである。ファイバー束6の一つのファイバーへの注入を最適化するために、励起ビームは、円形の断面を有するファイバーに注入されることができ且つ注入レート(injection rate)を最適化することができるように、円形であり、レーザーは、好ましくは、弱いマルチモード光学ファイバーへの注入のための最良な波面を有するように、縦シングルモードである。レーザーは、連続し且つ安定した態様で放射する(可能性のある最低ノイズ、<1%)。利用可能な出力パワーは、約20mWである。一例として、量子井戸レーザー(VCSEL),ダイオードレーザー又はヘリウム−ネオン(He−Ne)の如きガスレーザーも使用することが可能である。
【0027】
励起レーザービームを形成する手段2は、光源1からの出口に配置されている。これらは、レーザービームの直径を変えることの可能な二つのレンズL1,L2を有する、光源1とは異なるアフォーカル光学拡大システム(afocal optical magnification system)によって構成されている。倍率は、ビームの直径がファイバー内の注入手段5に適合するように計算されている。
【0028】
形成された励起レーザービームは、その後、励起波長と蛍光波長を分離するために設けられた波長分離手段3に誘導される。この波長分離手段3は、例えば、励起波長の98〜99%の透過効率を有する、従って他の波長を実質的に反射するダイクロイックフィルターである。蛍光信号は、(共焦点性)励起信号と同じ経路に沿って戻り、こうしてほぼ全体的に検知経路(8〜11)へ送られる。検知経路上に配置された拒絶手段8は、検知経路の方へ走行する、635nmの励起波長での1〜2%の望ましくない反射を全面的に排除する機能を果たす(例えば、635nmの拒絶フィルター、または、例えば、640〜800nmのみの透過を許可するバンドパスフィルター)。
【0029】
その後、走査手段4が励起ビームをピックアップする。図1に示す実施例に依れば、これらの手段は、4KHzで共振し、ビームを水平に偏向させて画像の線を作り出すように機能するミラーM1と、ビームを縦方向に偏向させて画像のフレームを作り出す15Hzの検流計ミラーM2と、単一倍率を有する二つのアフォーカルシステムとを有する。一方のアフォーカルシステムAF1は二つのミラーM1,M2の間に配置され、他方のアフォーカルシステムAF2はミラーM2の後に配置されている。これらのアフォーカルシステムは、二つのミラーM1,M2の回転面を複数のファイバーの中の一つへの注入の面に共役させるために使用される。本発明に依れば、走査速度は、生体内部位の組織の観察をリアルタイムで行えるように一定にされている。この目的のために、走査の速度は、最低速のモードに対応する640×640ピクセルの表示モード用の画面上に毎秒少なくとも12画像が表示される程度に充分速くなければならない。従って、より少ないピクセルを有する表示モードについては、毎秒獲得される画像の数は、毎秒12画像よりも常に多い。変形例として、走査手段は、特に、回転ミラー,MEMsタイプの集積部品(X及びY走査ミラー),又は音響光学システムを含んでいてもよい。
【0030】
走査手段を離れる時に偏向される励起ビームは、ファイバー束6の一つのファイバーに注入されるために光学手段5に誘導される。この実施形態においては、光学手段5は、二つの光学組立て体E1,E2によって構成されている。第一の光学組立て体E1は、走査手段4の光場の縁で光学収差を部分的に修正することを可能にし、こうして、光場の全体に亘って注入が最適化される(注入は、光場の中心及び縁で最適化される)。第二の光学組立て体E2は、実際の注入を実施するためのものである。その焦点距離及び開口数は、導波路6の光ファイバーへの注入レートを最適化するために選択されている。収色性(achromaticity)の基準を獲得することを可能にする本発明の一実施形態によれば、第一の組立て体E1は、ダブルレンズによって構成され、第二の組立て体E2は、画像ガイドの近くに位置するレンズが後に続く二つのダブルレンズによって構成されている。変形例として、この注入光学素子は、例えば、(より高価であるが)二つの三枚レンズ,勾配屈折率レンズ又は顕微鏡レンズの如き何らかのその他の標準的な光学素子によって構成してもよい。
【0031】
ファイバー束6は、非常に多くの可撓性光ファイバー(数万本)、例えば、互いに3.3μm離間された直径2μmの30,000本の可撓性光ファイバーによって構成されている。実際には、画像ガイドの全てのファイバーと、または、これらのファイバーの中心に位置する選択されたサブアセンブリとのいずれかを使用することもできる。
【0032】
光ファイバーを離れた時に、励起レーザービームは、光学ヘッド7が接触して配置される試料の表面15との関係で数十μm〜約100μmの一定深さで位置する試料13のポイント14に、光学ヘッド7によって焦点合わせさせられる。この深さは、例えば40μmにできる。こうして、光学ヘッドは、ファイバー束を離れたフラックスを試料にフォーカスさせることを可能にすると共に、試料から返される蛍光フラックスを収光することをも可能にする。光学ヘッドは、2.4の倍率と0.5の試料に関する開口数を有している。これら二つのパラメータは、戻り信号が、励起信号を伝送した光ファイバーにおいてのみ発生し、隣接するファイバーにおいては発生せず、こうして、一つのファイバーを使用する共焦点フィルタリングが維持されるように、選択されている。これら倍率及び開口数の値によって、軸方向の分解能(axial resolution)が約10μmで、側方の分解能(lateral resolution)が、約1.4μmとなる。また、開口数も、最大限でなければならない回復された光子を最適化させるように選択されている。光学ヘッドは、標準的な(ダブル,トリプレット,非球面)光学素子、及び/又は共焦点に適合された光学品質/光学収差(chromatism)を有する、即ち、特にフィールド深度に関するデグラデーションを引き起こして、その結果、装置の軸方向の分解能に関するデグラデーションを引き起こす光学収差を最小限にさせる勾配屈折率レンズ(GRIN)によって構成することができる。使用中に、光学ヘッドは、試料13に接触させて配置される。その試料13は、生体組織又は培養された細胞である。蛍光の発現は、数十ナノメートルから100ナノメートル程度を超えるスペクトラルバンドに亘って光子を再放出するメチレンブルーによって実現される。
【0033】
検知経路では、蛍光信号は、拒絶フィルター8を離れた時に、例えば検知レンズによって構成された手段9によって、空間フィルタリング手段10のフィルタリングホール(filtering hole)へフォーカスされる。検知レンズの焦点距離は、ファイバーからの蛍光信号がフィルタリングホールのサイズと同じか又は僅かに小さくなるように計算されている。フィルタリングホールは、入射ビームによって照射されたファイバーからの蛍光のみを保持することを可能にする。フィルタリングホールは、照射されたファイバーに隣接するファイバーに結合している可能性のある光を拒絶することを可能にする。そのホールのサイズは、ファイバーの画像が完全にフィットするように計算されている。この実施形態においては、ホールのサイズは、20μmである。更に、フィルタリングホールを通過する光子の量、従って、検知されるフラックスを最適化するために、走査手段4,注入手段5,光学ヘッド7のフォーカシング手段及び検知手段8,9,10は、検知される蛍光色素分子(fluorophore)に適合され、これらの手段は、メチレンブルーである蛍光色素分子の最大の放射帯域に亘る光子を集めるために、充分アクロマティックとなるように選択されている。
【0034】
検知手段11は、メチレンブルーの蛍光波長に対する最大の感度を有している。例えば、アバランシェフォトダイオード(APD)又は光倍増管(photo−multiplier)を使用できる。一般に、一連の獲得システム要素の全て(光学ヘッド,導波路,検知器,画像処理及び電子ソフトウェア)は、約80ナノ秒の間隔に亘って数百ピコワットの蛍光色素分子を検知するように最適化されている。こうして、メチレンブルーの僅かな光子だけが、リアルタイムで作動するシステムで検知される。
【0035】
更に、リアルタイムで画像を獲得するために、パスバンドは、好ましくは、蛍光信号の集積時間を最適化するように選択されている。それは、2MHzであり、これは、各ピクセルについて最適化された集積時間で、ファイバー束の最少サンプリング周波数に対応する。
【0036】
検知された信号の制御、分析及びデジタル処理を行い、表示するための電子データ処理手段12は、以下のカードを含んでいる。
走査を同期した態様で制御、即ち、画像の線を作り出すミラーM1と画像のフレームを作り出すミラーM2の移動を制御し、この態様で捜査されたレーザーポイントの位置を常に把握し、且つ自己制御可能なマイクロコントローラーを介して全てのその他のカードを管理する機能を備えた同期カード20と、
特にインピーダンス整合(impedance adaptation)を実行するアナログ回路、アナログ・デジタル変換器、及び信号を形成するプログラマブルロジック部品(例えばFPGA回路)を含む検知カード21と、
可変周波数でデジタルデータの流れを処理して、それを画面23上に表示することを可能にするデジタル獲得カード22と、
グラフィックカード24。
【0037】
変形例に依れば、これらの異なるカードの機能を兼ね備えた単一のカードを使用することができる。
【0038】
画像処理は以下のように実施される。
【0039】
ファイバー束を装置に配置してから、最初に実行される処理は、画像ガイドにおけるファイバーのパターンを認識すること、従って、使用する各ファイバーの実際の位置を把握することである。
【0040】
また、装置を使用する前に実施する作業は、
均質な試料を使用して、各ファイバーに適合された、ファイバーごとに変化し得る注入レートを決定すること、
試料を使用せずに、バックグラウンド画像を測定することである。
【0041】
これらの二つの作業は、装置の使用頻度に応じて定期的に実施することができる。その得られた結果は、作動中の検知カードを離れた時のデジタル信号を調整するために使用される。
【0042】
本発明に依ると、検知カードの作動中に、検知カードを離れた時のデジタル信号に対して二つのグループの処理が実施される。
【0043】
第一のグループは、先ず、特に、デジタル信号が出たファイバーの実際の注入レートを考慮して、バックグランド画像に対応するフラックスの部分から実際の注入レートを差し引くために、デジタル信号を調整する処理から成る。これは、観察する試料に実際に対応する信号のみを処理することを可能にする。この処理グループについては、適切ならばリアルタイムの制約に適合するように最適化させることの可能な標準的な計算アルゴリズムが使用される。
【0044】
第二のグループは、調整された信号から、プラクティショナー(practitioner)によって表示されるデジタル画像を再構成する処理から成る。この処理を実施する目的は、決して画像要素のモザイクではないが、ファイバーを最早表示しない、表示用の再構成されたデジタル画像を提供することであり、それら画像要素の各々は、並んで配置されたファイバーの調整済みデジタル信号に対応するものである。この目的を達成するために、各ピクセルに対して一定回数の処理を実行するためのアルゴリズムが使用される。このアルゴリズムは、リアルタイムの制約に従うために選択され、即ち、必要とされる処理の複雑さと、獲得される結果の質と、計算時間との間における良好な均衡を示すものでなければならない。一例として、ガウスローパスフィルタリングアルゴリズム(Gaussian low−pass filtering algorithm)を使用できる。
【0045】
装置は、以下のように作動する。光源1は、λ=635nmで円形且つ平行な励起ビームを発生し、そして、このビームは、ファイバーのコアへの最良注入のための適切なサイズにさせるために、アフォーカルシステム2において形作られる。そして、このビームは、励起波長を反射するダイクロイック分離システム3に送られる。入射ビームは、その後、オプトメトリック走査ミラーシステム4によって、順次二つの空間方向に一時的に角偏向され、光学注入手段5を使用して、ファイバー束6の中の一つのファイバーへ注入される。電子データ処理手段12は、ミラーを使用してビームを角偏光させることによりファーバー束の一つの光ファイバーの注入を一定の時点で、画像を構成する一定の線の点ごとに、及び線ごとにコントロールするように機能する。画像ガイドを離れた時に、注入されたファイバーから出現する光は、光学ヘッド7を使用して、試料の中の約数十μm〜約百μmの一定の深さに位置するポイントにフォーカスされる。走査により、試料は、点ごとに照射される。各瞬間に、組織を照射しているポイントは、より長い波長へシフトされる特徴を有する蛍光信号を放出する。この蛍光信号は、光学ヘッド7によって捉えられ、蛍光信号を検知経路へ透過させるダイクロイックフィルター3に達するまで、励起ビームの経路を逆に辿る。励起波長で発生する望ましくない反射光は、拒絶フィルター8によって排除される。最後に、蛍光信号は、励起されたファイバーからの光だけを選択するために、フィルタリングホール10にフォーカスされ、光子がアバランシェフォトダイオード11によって検知される。検知された信号は、その後デジタル化され、補正される。その検知された信号は、上述の画像処理を使用して、リアルタイムで順次処理されて、画像のリアルタイムな構成と、画面上の表示を可能にする。
【0046】
本発明による方法は、特に、人体の組織の観察に使用できるものであり、組織におけるメチレンブルーの濃度を約0.5%の低濃度に制限し、レーザービームのパワーを約10mW/μsの低パワーに制限することにより、最大限の蛍光色素分子を検知するように、システムの検知感度を向上させるものである。
【0047】
もちろん、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない範囲で、多くの変更を加えることができる。特に、蛍光又は倍率に関連して、単一の光ファイバー又は複数の光ファイバーの「束の」と、点ごとの走査又は線ごとの走査と、遠位走査(distal scan)又は近位走査(proximal scan)とを含み、更に光学ヘッドを含み又は含んでいないシステムを使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による一実施形態を図式的に示した図である。
【図2】本発明による装置のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光ビームの走査によって組織を励起する少なくとも一つの光ファイバーを有する獲得システムを使用して、組織の蛍光画像を生体内獲得するための方法であって、前記システムが、組織に存在するメチレンブルーによって放出される蛍光信号を検知するために使用されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記システムが、共焦点・生体内顕微鏡検査システム(内視鏡検査中の顕微鏡検査)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記励起光ビームがレーザービームであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記励起光ビームの波長が600nm〜680nmであることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記メチレンブルーの濃度が約0.5%に等しいことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記メチレンブルーの最大濃度が0.5%に等しく、前記励起光ビームのパワーと前記システムの感度が、前記システムによる画像の生成を可能にするために充分に高いレベルで蛍光信号を検知するために適合されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記励起レーザービームのパワーが、1マイクロ秒の照射に関して、10mWより低いか又は等しいことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記メチレンブルーの濃度が0.1〜0.01%であり、前記光ビームが10〜15mWのパワーを有するレーザービームであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記システムが、順々に照射される複数の光ファイバーによって構成されるファイバー束を備え、その各ファイバーが、前記励起信号及び逆放出される蛍光信号を伝送するように適合されていることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
リアルタイムで毎秒少なくとも12の画像を獲得するように、前記光ビームが前記組織を走査することを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の前記方法を、共焦点・生体内顕微鏡検査で細胞核の画像を獲得するために使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−531105(P2009−531105A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502140(P2009−502140)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000490
【国際公開番号】WO2007/118954
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(506250745)マウナ キア テクノロジーズ (6)
【Fターム(参考)】