説明

メディアアクセス制御アドレスを変換するためのネットワーク装置及び方法

イーサネットを介したポイント・ツーポイント・プロトコル(PPPoE)により、複数のクライアント装置(2)をネットワーク・サービス・プロバイダ・ルータ(5)にリンクするためのネットワーク装置(4)であって、該ネットワーク装置が使用され、前記クライアント装置から前記ネットワーク・サービス・プロバイダ・ルータへデータを送信する場合に、各クライアント装置のメディア・アクセス制御(MAC)アドレスが、当該装置のインタフェースカードのMACアドレスと交換されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネットワーク装置に関する。特に、複数のクライアントと1以上のサービス・プロバイダ・ルータとの間でリンクを提供するアクセスノードに非排他的に関連する。
【背景技術】
【0002】
IP(インターネット・プロトコル)サービスの提供において、ネットワーク・アクセス・プロバイダ(NAP)のアクセス・ノード(AN)やインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)が、DSL(Distance Subscriber Line)モデムのような加入者宅内機器CPEと、インターネットへ接続するためのISPのアクセスルータ(AR)との間のリンクを提供するために利用される。CPEはインターネットに直接に接続できず、まず、中間のANを経由しなければならない。ANはCPEに、CPEの選択するARへのトランスポート・チャネルを提供する。CPEが、そのようなチャネルを介して要求ARと一旦リンクされると、加入者はISPに対して要求するサービスを要求することができる。本質的に、ANは2つの機能を実行する。第1の機能は流入制御であり、これはホストエンド(即ち、CPE)で要求されたリソースの利用可能性をチェックするためのものである。第2の機能は分類であり、これは、パケットフレームを特定の通信セッションと関連づけるためのものである。典型的に、CPEとARとの間で採用されるサービス・アクセス・プロトコルは、ポイント・ツー・ポイント・プロトコル(PPP)と呼ばれる。特に好ましい実施形態では、われわれはイーサネット(登録商標)プロトコルを介したPPP(PPPoE)を利用する場合のネットワーク構成の改良を模索する。
【発明の概要】
【0003】
発明の第1の側面によれば、複数のクライアント装置(CE)をネットワーク・サービス・プロバイダ・ルータ(NSPR)にリンクするためのネットワーク装置が提供される。当該装置が使用され、CEからNSPRへデータを送信する場合に、各CEの識別子が交換されるように構成される。
【0004】
本発明の第2の側面によれば、ネットワーク装置の作動方法が提供される。当該方法は、複数の加入者装置(CE)からデータを受信する工程と、ネットワーク・サービス・プロバイダ(NSP)のアクセス・ルータ(AR)へのデータ転送前に、各識別子を交換する工程とを含み、各CEからのデータは、特定のCEと関連づけられた識別子を含んでいる。
【0005】
本発明の第3の側面によれば、複数のクライアント装置(CE)、アクセス・ノード(AN)、及び、ネットワーク接続を提供するアクセス・ルータ(AR)を含むネットワークが提供される。アクセスノードが使用され、データをCEからARへ送信する場合、各CEの識別子は交換される。
【0006】
本発明のある実施形態を、以下の図面を参照して一例として記述する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】インターネットへのアクセスを許可するネットワーク構成を示すブロック図である。
【図2】PPPoEセッションのためのディスカバリ・ステージの工程を示す不r−図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照すると、複数の加入者装置(CE)2(例えば、ネットワーク端点、及び、パーソナル・コンピュータの少なくともいずれか)、アクセスノード(AN)4及び、さまざまなインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)の複数のアクセス・ルータ(AR)5を含む、PPPoEベースのネットワーク構成1が示されている。動作時は、AN4はCE2とAR5との間にリンクを提供する。AR5は、インターネット60へのアクセスを提供する。AN4とAR5との間を通るデータは、網型L2(イーサネット)ネットワーク(EN)7を介してやりとりされる。EN7は、複数のイーサネット・スイッチを備えており、各スイッチは、転送データベースを含んでいる。AN4は、好適にはマルチ・サービス・アクセス・ノード(MSAN)であり、ARは好適にはブロードバンド・アクセス・サーバ(BRAS)である。AN4は、エリクソン(登録商標)のEDA2500により提供されてもよい。
【0009】
良く練られたシナリオでは、ネットワーク構成1のユーザサイドとネットワークサイドとの両方においてPPPoE(イーサネットを介したポイント・ツー・ポイント・プロトコル)が利用される。特に、レイヤー2ネットワーク・アドレス変換“L2 NAT”のタイプがAN4により採用される。AN内の各ADSL(非同期デジタル加入者回線)2インタフェースカードのために、メディア・アクセス制御(MAC)アドレスが利用される。各ADSL2カードは、複数のユーザ回線を扱うことができる。従って、異なるソースMACアドレスの数を減らして、イーサネット・フレームがネットワークサイドに送信される。
【0010】
ANは、複数のスロット(不図示)を含むエンクロージャ(不図示)を有する。各スロットは、インタフェースカードを受け入れるように構成されている。各インターフェイス・カードは、AN4シェルフの1つのスロットにホストされ、ADSL/ADSL2/2+ブロードバンド・ユーザ回線を60個まで提供する。AN4は、典型的には複数のインタフェース・カードにホストできることは理解されよう。
【0011】
(RFC2516で規定されているように)PPPoEは、2つの相異なるステージを有する。ここでは、ディスカバリ・ステージとセッション・ステージとが存在する。ホストがPPPoEセッションを開始したい場合、ピアのイーサネットMACアドレスを識別し、PPPoEのセッションIDを確立するために、最初にディスカバリ(これは、初期化手続と見なされてもよい)を実行しなければならない。
【0012】
ディスカバリ処理では、ホスト2(クライアント)は、アクセス・コンセントレータAC(AR5、これはサーバである。)を発見する。ネットワーク・トポロジに基づき、ホストと通信可能な2以上のACが存在していても良い。ディスカバリ・ステージでは、ホストは全てのACを発見し、そのうちの1つを選択することができる。ディスカバリが成功すると、ホストと選択されたアクセス・コンセントレータの両方は、両者の間でイーサネットを介したピア・ツー・ピア接続を構築するために利用する情報を有する。
【0013】
本実施形態では、ネットワークサイドのPPPoEセッション(“L2 NAT”MACアドレスと呼ばれる、唯一のイーサネットMACアドレスを有する)を、ユーザサイドのPPPoEセッション(異なるユーザ・イーサネットMACアドレスを有する)にリンクするために、ADSL回線カード毎に異なる基準が利用される。
【0014】
ディスカバリ・ステージには4つのステップがある。これらのステップが完了すると、両方のピアは、PPPoEセッションIDと他のピアのイーサネットアドレスとを知ることとなり、これらを合わせてPPPoEセッションが一意に特定される。
【0015】
図2を参照すると、ディスカバリ・ステージのステップは、ホストが開始パケット(PADI)をブロードキャストすること、1以上のAR52が、オファーパケット(PADO)を送信すること、CEがユニキャストのセッション要求パケット(PADR)を送信すること、選択されたARが確認パケット(PADS)を送信することからなる。
【0016】
CE2は確認パケットを受信すると、PPPoEセッションステージ(ETHER_TYPEフィールドが0x8864の値に設定される)に移行してもよい。
【0017】
AR5は、確認パケットを送信すると、PPPoEセッションステージに移行しても良い。
【0018】
全てのディスカバリ・イーサネット・フレームは、0x8863の値に設定されたETHER_TYPEフィールドを有する。
【0019】
AN4内に実装された(そして、DSLフォーラムのTR−101文書“イーサネットベースのDSL集合体への移行(2006年4月)”に記載された)PPPoE中間エージェント30は、イーサネット・フレームで運ばれるETHER_TYPEフィールドに基づいて(クライアントからサーバへの、また、その逆方向の)全てのPPPoEディスカバリ・パケットを傍受する。
【0020】
クライアントからサーバへ向かう(アップストリーム)場合、(PPPoEクライアントにより送信された)全てのPADI、PADR及びPADTパケットは、中間エージェント30がPPPoEベンダー特有のTAGを追加することにより修正され、ネットワーク上のPPPoEサーバへ送信される。
【0021】
当該TAGは、DSL回線の識別情報を含み、中間エージェントが存在するAN4は、PADIやPADRパケットを当該DSL回線上で受信する(“Agent Circuit ID”フォーマットにおけるサブオプションは1)。
【0022】
<Access-Node-Identifier>atm<slot>/<DSL-Line>:<VPI>.<VCI>).
アップストリーム方向では、PPPoEディスカバリステージの間に、“L2NAT”は、
・PPPoE中間エージェント30が追加した“Agent Circuit ID”と、ユーザ・イーサネットMACアドレスとの間の関係を構築しなければならず、
・送信されるイーサネット・フレームについて、ユーザ・イーサネットMACアドレス(ソースMACアドレス)を、“L2 NAT”MACアドレス(即ち、ADSLカードのMACアドレス)と交換しなければならない。
【0023】
ダウンストリーム方向では、PPPoEディスカバリステージの間に、“L2 NAT”は、
・PPPoEセッションのセッションIDと、ユーザ・イーサネットMACアドレスとの間の古い関係を解消しなければならず、
・PPPoEサーバが送信したPADO、PADS或いはPADTパケットのベンダ特有のTAG内に存在する“Agent Circuit ID”とユーザ・イーサネットMACアドレスとの関係を読み出さなければならず、
・到来する宛先イーサネットMACアドレス(“L2 NAT”MACアドレス)を、関連するユーザ・イーサネットMACアドレスと交換しなければならない。
【0024】
そして、PPPoE中間エージェント30は、ダウンストリームのパケットをユーザ回線を通じてCE2へ送信する前にTAGを削除しなければならない。
【0025】
AN4“L2 NAT”が正しいPADSを受信した場合、PPPoEディスカバリステージが完了し、
・新しい関係をPPPoEセッションのセッションIDと、ユーザ・イーサネットMACアドレスとの間で構築しなければならず、
・PPPoE中間エージェント30が追加した“Agent Circuit ID”とユーザ・イーサネットMACアドレスとの間の古い関係を解消し無ければならない。
【0026】
ここでPPPoEセッション・ステージが開始され、トラヒックのETHER_TYPEは0x8864となるであろう。このセッションにおいてAN4は、以下のように振る舞いうことが要求とされる。
【0027】
アップストリーム方向では、AN4は、
・PPPoEユーザ・フレームのイーサネットMACソース・アドレスを、“L2 NAT”MACアドレスと交換しなければならない。
【0028】
ダウンストリーム方向では、AN4“L2 NAT”は、
・受信したPPPoEフレーム内のセッションIDと、ユーザ・イーサネットMACアドレスとの間の関係を読み出さなければならず、
・到来するPPPoEフレームの宛先イーサネットMACアドレス(“L2 NAT”MACアドレス)を、関連するユーザ・イーサネットMACアドレスと交換しなければならない。
【0029】
追加のネットワーク機器(従来的なイーサネット・スイッチ)をCE2とAN4との間に設けても良いことは理解されよう。
【0030】
有利なことに上記の構成によれば、ネットワークサイドに提供されるユーザMACアドレスの数を大きく削減することができる。EDA2500システムでは、発明の構成は、各インタフェース・カードが60個のユーザ回線を提供するので、ユーザMACアドレスの数を60分の1にすることができる。この構成は、L2スイッチを、転送データベースのサイズが制限されたネットワークで使用するネットワーク管理者にとって特に有益である。ネットワーク7における各L2スイッチの転送データベースは、受信したイーサネット・フレームMACアドレスを格納するために使用される。扱うべき異なるMACアドレスの数が少なくなるので、要求されるメモリスペースはこれに合わせて減少することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクライアント装置(2)をネットワーク・サービス・プロバイダ・ルータ(5)にリンクするためのネットワーク装置(4)であって、
該ネットワーク装置が使用され、前記クライアント装置から前記ネットワーク・サービス・プロバイダ・ルータへデータを送信する場合に、各クライアント装置の識別子が交換されるように構成されていることを特徴とするネットワーク装置(4)。
【請求項2】
複数の通信回線からデータを受信して処理するように構成されたデータ処理インタフェースを備え、
各通信回線は、各クライアント装置と前記データ処理インタフェースとの間の接続を提供することを特徴とする請求項1に記載のネットワーク装置(4)。
【請求項3】
通信回線は、デジタル加入者回線を含むことを特徴とする請求項2に記載のネットワーク装置(4)。
【請求項4】
クライアント装置の識別子を、前記データ処理インタフェースの識別子と交換するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のネットワーク装置(4)。
【請求項5】
特定のクライアント装置(2)と関連づけられた通信回線をそれぞれ表す識別子が、ネットワーク・サービス・プロバイダ・ルータ(5)へ送信されるデータに組み込まれるように構成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のネットワーク装置(4)。
【請求項6】
前記クライアント装置(2)の識別子と、前記クライアント装置及び前記ネットワーク装置を結ぶ前記通信回線の識別子との間の関係を格納するように構成されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のネットワーク装置(4)。
【請求項7】
セッション識別子と前記クライアント装置の識別子との間の関係を格納するように動作可能な請求項2乃至6のいずれか1項に記載のネットワーク装置(4)。
【請求項8】
前記ネットワーク装置の識別子を、前記クライアント装置(2)の識別子と交換するように構成された請求項1乃至7のいずれか1項に記載のネットワーク装置(4)。
【請求項9】
各クライアント装置(2)の識別子は、イーサネット・メディア・アクセス制御アドレスを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のネットワーク装置(4)。
【請求項10】
前記データ処理インタフェースの識別子は、イーサネット・メディア・アクセス制御アドレスを含むことを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載のネットワーク装置(4)。
【請求項11】
前記クライアント装置と前記ネットワーク・サービス・プロバイダ・ルータ(5)との間の通信は、イーサネットを介してポイント・ツー・ポイント・プロトコルに従うことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のネットワーク装置(4)。
【請求項12】
ネットワーク装置(4)の作動方法であって、
複数のクライアント装置(2)からデータを受信する工程であって、各クライアント装置からのデータは、特定のクライアント装置に関連する識別子を含む工程と、
ネットワーク・サービス・プロバイダのアクセス・ルータへ前記データを送信する前に、各識別子を交換する工程と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
各識別子の交換は、通信リンクを各クライアント装置と前記アクセスルータとの間で確立するための初期セットアップ手順の間に行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各識別子の交換はセッション手続及びネットワークからのデータを要求するセッション手続の間に行われ、前記ネットワークからのデータは、クライアント装置との間で搬送されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数のクライアント装置(2)と、アクセス・ノード(4)と、ネットワークアクセスを提供するアクセスルータ(5)とを含むネットワーク(1)であって、
前記アクセス・ノードは、使用され、データを前記クライアント装置から前記アクセス・ルータへ送信する場合に、各クライアント装置の識別子を交換するように構成されていることを特徴とするネットワーク(1)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−514290(P2010−514290A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541779(P2009−541779)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/070114
【国際公開番号】WO2008/074369
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】