説明

メモリカードソケット

【課題】メモリカードの装着時におけるコンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を各種のメモリカードの性能を発揮するのに適した状態とする。
【解決手段】高速型メモリカードMC2の装着時においては、高速モード用のコンタクトC10〜C13は、高速型メモリカードMC2のリブ106に設けた逃し部111によって、当接片13の当接部16がリブ106と接触することはない。このとき、接触片12の接触部10はパッド用凹所110の底面に形成されているコンタクトパッドP10〜P13に接触する。一方、従来型メモリカードの装着時においては、当接片13の当接部16下面がリブ106上面に当接し、当接部16が押し上げられるため、当接片13と基端部が連結されている接触片12も上方に押し上げられることとなり、接触片12の接触部10がコンタクトパッドから離間する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SDメモリカード(登録商標)やマルチメディアカード(MMC)などのメモリカードや、SDメモリカードと同様の大きさ及び端子配列を有するSDIOカード(登録商標)を挿抜自在に接続するためのメモリカードソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、小型で大容量のメモリカードとしてSDメモリカードが提供されており、このようなSDメモリカードは、それを使用する電気機器に搭載されたメモリカードソケットに装着されて使用される(たとえば特許文献1,2参照)。
【0003】
一般的には、図21に示す構成のSDメモリカードMC1が普及しており、このSDメモリカードMC1は、矩形板状のカード体100の内部にフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶素子を収納している。以下、カード挿入方向(カード体100の長手方向)の前後を前後として説明する。
【0004】
カード体100の一表面においては、前端部に9個のコンタクトパッドP1〜P9が幅方向に並べて配設されている。ここに、カード体100の前記一表面の前端部には、前方に開放された略矩形状のパッド用凹所110が幅方向に並べて8箇所凹設されており、隣接するパッド用凹所110間はそれぞれカード挿入方向に延設されたリブ106によって仕切られている。ここでは、コンタクトパッドP1〜P7はそれぞれ個別のパッド用凹所110の底面に形成され、コンタクトパッドP8,P9は1つのパッド用凹所110の底面に形成されている。これにより、隣接するパッド用凹所110間に設けられたリブ106によって、各コンタクトパッドP1〜P9に接触する後述のメモリカードソケットのコンタクト間が絶縁されることとなる。
【0005】
また、カード体100の挿入方向に沿う両側縁には、突部101が形成されるとともに、前端部の片方の角部に斜めに傾斜する切欠部102を形成してある。また、カード体100の挿入方向に沿った一側縁には、後述するメモリカードソケットの係合爪2cが係合する係合凹所103が形成されるとともに、他側縁にはライトプロテクトスイッチの摘み105がスライド自在に配置される凹部104が設けられている。
【0006】
SDメモリカードMC1は、動作モードを切り替えて使用することが可能であって、動作モードに応じて各コンタクトパッドP1〜P9の機能が切り替えられるようになっている。上記構成のSDメモリカードMC1において、データの高速転送が可能なモードでは、4個のコンタクトパッドを介してデータ転送を行っており、1クロックサイクルで4ビットのデータ転送が可能となっている。
【0007】
ところで、このようなSDメモリカードMC1は、たとえばデジタルカメラやデジタルビデオカメラのような映像記録機器(電気機器)の記憶媒体として使用されるのであるが、近年の映像記録機器の高精細度化に伴い、記憶媒体に記憶されるコンテンツが大容量化しており、そのため、大容量のデータをリアルタイムで記録したり、あるいはコンピュータ等の外部機器に転送する場合に、上述した従来のSDメモリカードMC1ではデータの転送速度が十分速いとはいえず、比較的長い時間がかかっていた。
【0008】
そこで、データの転送速度を高速化した次世代のSDメモリカード(以下、高速型メモリカードという)が提案されている。高速型メモリカードMC2は、図22に示すように、上述した従来のSDメモリカード(以下、従来型メモリカードという)MC1と同じ位置にコンタクトパッドP1〜P9が形成されている。ここに、一部のコンタクトパッドP3,P6は、前後方向の寸法が他のコンタクトパッドに比べて短くされ、前端位置を後方(図22(a)の下方)にずらして配置される。さらに、コンタクトパッドP3の前方(図22(a)の上方)には、2個のコンタクトパッドP10,P11が左右に並べて配置され、コンタクトパッドP6の前方には2個のコンタクトパッドP12,P13が左右に並べて配置されている。
【0009】
上記高速型メモリカードMC2の動作モードは、従来型メモリカードMC1と同様の動作を行うSDモードと、より高速のデータ転送が可能な高速モードとで切替可能となっており、SDモードと高速モードとで各コンタクトパッドP1〜P13の機能が切り替えられる。
【0010】
そして、高速モードでは、コンタクトパッドP10,P11を対とするとともにコンタクトパッドP12,P13を対として、各一対のコンタクトパッドP10〜P13にてそれぞれ1ビットの差動データ信号を送受信する。すなわち、上述のSDモードでは、4個のコンタクトパッドを用いて4ビットのデータを送受信するのに対し、高速モードでは、一対のコンタクトパッドP10,P11と、一対のコンタクトパッドP12,P13とを用いて2ビットのデータを送受信している。ここで、高速モードの方がSDモードよりも1クロックサイクルで伝送可能なビット数は少ないが、差動データを送受信することで動作クロックの周波数を飛躍的に高くできるため、高速モードではSDモードに比べて高速なデータ伝送を実現することができる。
【0011】
このように、高速型メモリカードMC2では、従来型メモリカードMC1に比べて高速のデータ転送が可能になるが、現在では、従来型メモリカードMC1に対応した電気機器が既に多く生産されている。これらの電気機器は、従来型メモリカードMC1に対応したメモリカードソケット(以下、従来型ソケットという)を採用しているから、高速型メモリカードMC2には、従来型ソケットに装着した状態でもデータ伝送が可能となることが要求されている。
【0012】
そこで、高速型メモリカードMC2は、カード体100の前端角部に設けた切欠部107の形状以外は、従来型メモリカードMC1と同様の外形形状および寸法に形成されている。
【0013】
高速型メモリカードMC2の切欠部107は、従来型メモリカードMC1と同じ位置でカード体100の前面に隣接する第1切欠部108と、第1切欠部108に連続して設けられ、カード体100の側面に隣接する第2切欠部109とで構成される。第2切欠部109は第1切欠部108より後方にずらして設けられ、第1切欠部108と第2切欠部109との間には段差が形成される。
【0014】
このように、高速型メモリカードMC2は、カード体100の前端部に、カード挿入方向における深さの異なる第1切欠部108と第2切欠部109とが設けられているのであって、メモリカードソケットにカード体100を挿入した際に、従来型ソケットではカード体100の第1切欠部108をスライダと衝合させるのに対し、高速型メモリカードMC2に対応したメモリカードソケット(以下、高速対応型ソケットという)では、カード体100の第2切欠部109をスライダと衝合させることによって、より深い位置まで差し込むことが可能となる。すなわち、高速型メモリカードMC2を従来型ソケットに挿入した場合には、高速対応型ソケットに同じ高速型メモリカードMC2を挿入した場合に比べてカード体100の挿入位置が浅くなっており、両ソケット間で、ソケット内部に配置されたコンタクトが接触する位置をカード挿入方向に異ならせることができる。
【0015】
したがって、高速対応型ソケットへの高速型メモリカードMC2の装着時には、コンタクトパッドP3,P6の前方位置に設けたコンタクトパッドP10〜P13に対し、ソケット内部に配置したコンタクトを接触させるようにしながらも、従来型ソケットへの高速型メモリカードMC2の装着時には、コンタクトパッドP10〜P13にソケット内部のコンタクトを接触させることなく、従来型メモリカードMC1と同様に9個のコンタクトパッドP1〜P9のみをソケット側のコンタクトに接触させることができる。その結果、高速型メモリカードMC2と従来型メモリカードMC1との間に互換性を持たせることが可能となる。
【特許文献1】特開2004−71175号公報
【特許文献2】特開2003−249290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、メモリカードソケットには、スライダを具備しないものも存在し、このようにスライダを具備しない種類のメモリカードソケットでは、従来型メモリカードMC1と高速型メモリカードMC2とで挿入位置を異ならせることができない。つまり、この種のメモリカードソケットでは、2種類のメモリカードMC1,MC2の挿入位置が同一となる。
【0017】
そのため、高速対応型ソケットへの従来型メモリカードMC1の装着時に、高速対応型ソケットに設けられ高速モード用の各一対のコンタクトパッドP10,P11およびコンタクトパッドP12,P13に対応した4本のコンタクトが、従来型メモリカードMC1のコンタクトパッドP3,P6に接触することがある。この場合に、SDモードの信号伝送特性が変化して十分な性能を発揮できず、規定の転送速度に達しないおそれがある。
【0018】
したがって、高速対応型ソケットにおいては、高速型メモリカードMC2の装着時には上述の高速モード用のコンタクトをコンタクトパッドP10〜P13に接触させながらも、従来型メモリカードMC1の装着時にはこれら高速モード用のコンタクトをコンタクトパッドP3,P6に接触させないようにする必要がある。
【0019】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、複数種類のメモリカードに共用でき、且つメモリカードの装着時におけるコンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を各種のメモリカードの性能を発揮するのに適した状態とすることができるメモリカードソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1の発明は、矩形板状のカード体を備え、当該カード体の一表面の一端部において、複数のコンタクトパッドが並設されるとともに、コンタクトパッド間を仕切るリブが立設されてなり、少なくともリブの一部を切り欠く形の逃し部の有無によって複数種類に分類されるメモリカードが、挿抜自在に前記一端部側から装着されるメモリカードソケットであって、メモリカードが導入されるカード挿入口が開口し、カード挿入口から挿入されたメモリカードを収容するソケット本体と、ソケット本体に保持され、メモリカードの各コンタクトパッドとそれぞれ接触し導通する複数のコンタクトとを備え、一部のコンタクトが、コンタクトパッドと対向する位置に配置される接触部と、リブと対向する位置に配置される当接部とを有し、逃し部を有するメモリカードの装着時には、逃し部により当接部とリブとの接触が回避され接触部がコンタクトパッドに接触し、逃し部の無いメモリカードの装着時には、当接部がリブに当接し接触部をコンタクトパッドから離間させる形に変形することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、一部のコンタクトが、逃し部を有するメモリカードの装着時には、逃し部により当接部とリブとの接触が回避され接触部がコンタクトパッドに接触し、逃し部の無いメモリカードの装着時には、当接部がリブに当接し接触部をコンタクトパッドから離間させる形に変形するので、装着されるメモリカードの逃し部の有無によって、コンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を切り替えることができる。したがって、複数種類のメモリカードに共用しながらも、メモリカードの装着時におけるコンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を各種のメモリカードの性能を発揮するのに適した状態とすることが可能となる。
【0022】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記逃し部が前記メモリカードにおいて前記一部のコンタクトが接触する前記コンタクトパッドに隣接する前記リブに形成されており、前記一部のコンタクトが、前記ソケット本体の内側面からメモリカードの挿入方向に突出する突出片を具備し、当該突出片が、前記接触部を含む接触片と前記当接部を含む当接片とに分岐されており、接触片と当接片とが、突出片の基端部で一体に連結されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、突出片が、接触部を含む接触片と当接部を含む当接片とに分岐され、接触片と当接片とが、突出片の基端部で一体に連結されているから、接触部の接圧を決定する接触片のばね性を当接片のばね性とは個別に設計することができ、接圧の設計が容易になる。
【0024】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記逃し部が前記メモリカードにおいて前記一部のコンタクトが接触する前記コンタクトパッドに隣接する前記リブに形成されており、前記一部のコンタクトが、前記ソケット本体の内側面からメモリカードの挿入方向に突出する突出片を具備し、当該突出片が、前記接触部を含む接触片と前記当接部を含む当接片とに分岐されており、接触片と当接片とが、突出片の先端部で一体に連結されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、突出片が、接触部を含む接触片と当接部を含む当接片とに分岐され、接触片と当接片とが、突出片の先端部で一体に連結されているから、当接部と接触部との間の剛性を高めて、逃し部の無いメモリカードの装着時において、当接部がリブに当接することで接触部をコンタクトパッドから確実に離間させることができる。
【0026】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記逃し部がは前記メモリカードにおいて前記一部のコンタクトが接触する前記コンタクトパッドに隣接する前記リブに形成されており、前記一部のコンタクトが、前記ソケット本体の内側面からメモリカードの挿入方向に突出する突出片を具備し、当該突出片が、前記カード体の前記一表面に沿う面内で先端部がメモリカードの挿入方向と交差する方向に延設された主片と、主片の先端部からメモリカードの挿入方向に延設された延設片とを備え、延設片の先端部を前記接触部とし、主片の先端部を前記当接部とすることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、主片の先端部から突出する延設片の先端部を接触部とし、主片の先端部を当接部としているから、逃し部の無いメモリカードの装着時において、当接部がリブに当接することで接触部をコンタクトパッドから確実に離間させることができる。
【0028】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記逃し部が前記メモリカードにおいて前記一部のコンタクトが接触する前記コンタクトパッドに隣接する前記リブに形成されており、前記一部のコンタクトが、前記ソケット本体の内側面からメモリカードの挿入方向に突出する突出片を具備し、当該突出片が、メモリカードの挿入方向に沿って延長された主片と、主片の先端部から前記カード体の前記一表面に沿う面内でメモリカードの挿入方向と交差する方向に延設された延設片とを備え、延設片の先端部を前記接触部とし、延設片の中間部を前記当接部とすることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、延設片の先端部を接触部とし中間部を当接部としているから、逃し部の無いメモリカードの装着時において、当接部がリブに当接することで接触部をコンタクトパッドから確実に離間させることができる。また、メモリカードの挿入方向におけるソケット本体の内側面からの距離を、延設片に設けた当接部と接触部とで揃えることができるので、突出片の基端部から当接部までの長さ寸法を比較的大きくすることができ、逃し部の無いメモリカードの装着時における突出片の塑性変形を防止することができる。
【0030】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、前記逃し部が前記メモリカードにおいて前記一部のコンタクトが接触する前記コンタクトパッドとメモリカードの挿入方向に沿う前記カード体の各側縁との間に位置する前記リブに形成されており、前記一部のコンタクトが、前記ソケット本体の内側面からカード体の前記一表面に沿う面内でメモリカードの挿入方向と交差する方向に突出する突出片を具備し、当該突出片が、先端部を前記接触片とし、中間部を前記当接部とすることを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、突出片の先端部を接触部とし中間部を当接部としているから、逃し部の無いメモリカードの装着時において、当接部がリブに当接することで接触部をコンタクトパッドから確実に離間させることができる。また、メモリカードの挿入方向におけるソケット本体の内側面とメモリカードとの間の距離に関係なく、突出片の基端部から当接部までの長さ寸法を設計することができるから、メモリカードの挿入方向におけるソケット本体の内側面とメモリカードとの間の距離を小さくしながらも、突出片の基端部から当接部までの長さ寸法を大きくして、逃し部の無いメモリカードの装着時における突出片の塑性変形を防止することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、一部のコンタクトが、逃し部を有するメモリカードの装着時には、逃し部により当接部とリブとの接触が回避され接触部がコンタクトパッドに接触し、逃し部の無いメモリカードの装着時には、当接部がリブに当接し接触部をコンタクトパッドから離間させる形に変形するので、複数種類のメモリカードに共用しながらも、メモリカードの装着時におけるコンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を各種のメモリカードの性能を発揮するのに適した状態とすることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下の各実施形態では、背景技術の欄で説明した従来型メモリカードMC1と高速型メモリカードMC2との両方に対応可能としたメモリカードソケットを例示するが、本発明は、SDメモリカード(登録商標)以外のメモリカード用のメモリカードソケットにも適用することができるものである。
【0034】
(実施形態1)
本実施形態のメモリカードソケットAは、図2に示すようにベースシェル1およびカバーシェル2を有する扁平な矩形箱状のソケット本体3を備え、ソケット本体3に複数本のコンタクトC1〜C13を保持するコンタクトブロック4を具備している。なお、以下では、図2に示す前後、上下、左右の各方向を用いて説明するが、メモリカードソケットの取付方向を限定する趣旨ではない。
【0035】
ベースシェル1は、たとえば厚さ極薄い矩形板状のステンレス金属板に打ち抜き加工且つ曲げ加工を施すことにより形成され、左右両端部を上方に折り曲げて側片1bを形成したものであり(左側の側片は図示せず)、上側および前後両側が開放されている。
【0036】
ベースシェル1の前部および右端部には、下方に突出する複数個の突片1cが折り曲げ形成されており、これらの突片1cをコンタクトブロック4下面に開口した圧入溝(図示せず)に圧入することで、ベースシェル1の下面にコンタクトブロック4が固定されるようになっている。なお、ベースシェル1の前端よりもやや後方の位置には、コンタクトブロック4に保持されるコンタクトC1〜C13を逃がすための貫通孔1dが複数形成されている。
【0037】
また、ベースシェル1の後端縁の左側には、メモリカードMC1,MC2の通過位置よりも外側位置から下方に突出し、その先端部が前方に突出するL字状の支持片1eが折り曲げ形成されている。
【0038】
カバーシェル2は、厚さが極薄い矩形板状のステンレス金属板に打ち抜き加工且つ曲げ加工を施すことにより形成され、その前端縁からは上方に突出する曲げ片(図示せず)が折り曲げ形成されている。また、カバーシェル2には、曲げ片よりもやや後端寄りの位置に、上方に突出する複数個の突出片(図示せず)が切り起こしによって形成されている。しかして、下面にコンタクトブロック4が固定されたベースシェル1の下面側にカバーシェル2を配置して、カバーシェル2の突出片をコンタクトブロック4に設けた圧入溝(図示せず)に圧入するとともに、カバーシェル2の周縁部とベースシェル1との当接部位をレーザ溶接などの方法で固着することにより、カバーシェル2がベースシェル1およびコンタクトブロック4に対して固定され、前面にカード挿入口3aが開口するソケット本体3が構成される。なお、図2以外の図面ではベースシェル1を外した状態を図示するものとする。
【0039】
さらに、カバーシェル2には、メモリカードMC1,MC2の装着時にカード体100の下面に弾接することでカード体100のがたつきを抑える弾性片2aと、メモリカードMC1,MC2の装着時にカード体100の係合凹所103に係合する係合爪2b(図1(a)参照)を有する係合片2cとが切り起こしおよび曲げ加工によって形成されている。係合片2cは、カバーシェル2における左前角部から後方に突出する形に形成されており、先端部が右側に湾曲されることにより係合爪2bを構成する。
【0040】
ここで、図1(a)に示すように、コンタクトブロック4は、ベースシェル1およびカバーシェル2の前端縁に沿って配置されソケット本体3の前面を閉塞する保持部5と、保持部5の右端部から後方に突出しベースシェル1の側片1bに沿って配置される脚部6とで、平面視が略L字状に形成された樹脂成型品からなる基体7を備えている。
【0041】
さらに、基体7の保持部5には、高速型メモリカードMC2の前端部の裏面(上面)に形成された複数のコンタクトパッド(I/O接触面)P1〜P13とそれぞれ個別に接触する複数本(ここでは13本)のコンタクトC1〜C13が圧入(あるいは同時成形)により一体に保持されている。各コンタクトC1〜C13は、導電性に優れた金属板に打ち抜き加工且つ曲げ加工を施すことにより形成され、メモリカードMC1,MC2のコンタクトパッドP1〜P13に接触するための突出片8を保持部5の後面側(カード挿入口3a側)に突出させるとともに、保持部5の前面側に半田付け用の端子片9を突出させている。なお、端子片9は、保持部5の前面からの突出部分が上方に屈曲され、その先端部が前方に延長された形に形成されており、当該先端部の上面をベースシェル1の上面と略同一高さに揃えている。
【0042】
ところで、本実施形態では、メモリカードソケットAに装着される高速型メモリカードMC2の形状を背景技術の欄で説明したものから一部変更している。具体的には、図3に示すようにパッド用凹所110間に設けたリブ106の一部を切り欠くことによって、後述する当接片を逃すための逃し部111を形成している。逃し部111は、高速モード用のコンタクトパッドP10,P11およびコンタクトパッドP12,P13を設けた各パッド用凹所110の両側に位置するリブ106に形成されている。ここでは、逃し部111はリブ106の前端から長手方向(前後方向)の中央部にかけて形成され、リブ106の高さを略2分の1とする深さに設定されているが、この構成に限らず、逃し部111の前後方向の寸法、深さ寸法は適宜設定される。
【0043】
次に、本実施形態の特徴となるコンタクトC1〜C13の形状について詳しく説明する。
【0044】
複数本(ここでは13本)のコンタクトC1〜C13は、図1(a)に示すように基体7の保持部5によって高速型メモリカードMC2のコンタクトパッドP1〜P13に対応する各位置に保持されている。ここで、高速モード用のコンタクトC10〜C13以外のコンタクトC1〜C9は、高速モード用のコンタクトC10〜C13に比べて保持部5の後面側に突出した突出片8の突出長さが長く設定され、特に、メモリカードMC1,MC2の切欠部107に対応する位置に設けられたコンタクトC1は、他のコンタクトC1〜C8よりもさらに長く設定される。すなわち、各コンタクトC1〜C13の突出片8の長さ寸法は、対応するコンタクトパッドP1〜P13のカード体100の前端縁からの距離に合わせて設定されているのであって、これにより、高速型メモリカードMC2の装着時には、各突出片8の先端部に形成された接触部10を、それぞれ対応するコンタクトパッドP1〜P13と弾接させることができる。ここに、高速モード用のコンタクトC10〜C13と、その他のコンタクトC1〜C9とは、左右方向において互いに近接するので、コンタクトC1〜C13同士の接触を避けるために、高速モード用のコンタクトC10〜C13が下方(カバーシェル2側)となるよう、保持部5による保持位置を両コンタクトC1〜C9,C10〜C13間で上下方向にずらしてある(図1(b)参照)。
【0045】
接触部10は、下方(カバーシェル2側)に凸となるく字状に屈曲されており、メモリカードソケットAへのメモリカードMC1,MC2装着時には、突出片8のうち基端部と接触部10とを連結するばね部11のばね性によってコンタクトパッドP1〜P13との接圧が確保される。なお、高速モード用のコンタクトC10〜C13を除くコンタクトC1〜C9においては、ばね部11が先端側ほど幅寸法(左右方向の寸法)を小さくする先細り形状に形成されている。
【0046】
ここにおいて、高速モード用のコンタクトC10〜C13は、他のコンタクトC1〜C9とは異なり、保持部5の後面側に突出した部分(突出片8)が、左右方向において接触片12と当接片13とに分岐された二股形状を成している。接触片12は、他のコンタクトC1〜C9における突出片8に相当するものであって、ばね部11の先端に接触部10が形成されて成る。当接片13はメモリカードソケットAへの高速型メモリカードMC2装着時に逃し部111に対応する各位置にそれぞれ配置されており、これにより、各一対のコンタクトC10,C11(あるいはコンタクトC12,C13)において、両当接片13の内側に両接触片12が配置されることとなる。すなわち、同一のパッド用凹所110に設けられたコンタクトパッドP3,P10,P11に対応するコンタクトC3,C10,C11に着目すると、高速モード用のコンタクトC10,C11はコンタクトC3に対して対称となる形に形成されており、高速モード用のコンタクトC10,C11の両当接片13の間に両接触片12が配置され、これら両接触片12の間にコンタクトC3の突出片8が位置する。
【0047】
接触片12と当接片13とは、突出片8の基端部に設けた連結部14によって一体に形成されている。本実施形態では、保持部5の後面において連結部14の周囲に開口し上下方向に延長されたガイド溝15を形成しており、ガイド溝15内で連結部14を移動可能とすることにより、接触片12および当接片13の上下方向への変位幅(ストローク)を比較的大きく確保している。
【0048】
ここで、当接片13は、接触片12に比べて幅寸法(左右方向の寸法)が大きく設定されており、先端部が上方に屈曲され略く字状の当接部16を構成する。さらに、当接片13は、長手方向の中央部よりも基端部(連結部14)寄りの位置に、クランク形状に屈曲された段差部17が形成されることにより、当接部16を基端部よりも上方に位置させている。すなわち、当接片13の先端部(当接部16)下面と接触片12の先端部(接触部10)下面との間には、上下方向に高低差が付与されており、当該高低差は、メモリカードMC1,MC2のリブ106の高さ寸法未満であって、当該リブ106の高さ寸法の2分の1よりもやや大きく設定される。
【0049】
なお、ここでは当接片13は接触片12とともに金属板から形成されているが、当接片13を合成樹脂製として金属製の接触片12と同時一体成形することにより、当接片13と接触片12とを連続一体に形成してもよい。
【0050】
次に、上記構成のメモリカードソケットAに高速型メモリカードMC2と従来型メモリカードMC1との各々が装着された場合における高速モード用のコンタクトC10〜C13の状態について説明する。
【0051】
高速型メモリカードMC2の装着時には、図1(b)に示すようにリブ106に設けた逃し部111によって、当接片13の当接部16下面とリブ106上面との間に隙間が生じるから、当接部16がリブ106と接触することはない。このとき、図4に示すように接触片12の接触部10はパッド用凹所110の底面に形成されているコンタクトパッドP10〜P13に接触し、その結果、高速モード用のコンタクトC10〜C13とこれに対応するコンタクトパッドP10〜P13との間が電気的に導通する。
【0052】
一方、図5(a)に示すように従来型メモリカードMC1が挿入されると、図5(b)に示すように当接片13の当接部16下面がリブ106上面に当接し、当接部16がリブ106からの反力によって上方に押し上げられる。当接部16が押し上げられると、コンタクトC10〜C13が弾性変形して当接片13と基端部が連結されている接触片12も上方に押し上げられることとなり、接触片12の接触部10下面がパッド用凹所110の底面から浮き上がる。その結果、接触部10とコンタクトパッドP3,P6とが上下方向に重なる場合でも、図6に示すように接触部10とパッド用凹所110の底面に形成されているコンタクトパッドP3,P6との間には隙間が生じ、高速モード用のコンタクトC10〜C13とコンタクトパッドP3,P6との間は電気的に絶縁される。
【0053】
すなわち、本実施形態のメモリカードソケットAでは、装着されるメモリカードMC1,MC2が高速型メモリカードMC2であるか従来型メモリカードMC1であるかによって、高速モード用のコンタクトC10〜C13をコンタクトパッドに接触させる状態と接触させない状態とを切り替えることができる。言い換えれば、メモリカードMC1,MC2の装着時におけるコンタクトC10〜C13とコンタクトパッドとの接触状態を、装着されるメモリカードMC1,MC2の種類に応じて、各メモリカードMC1,MC2の性能を発揮するのに適した状態とすることができる。そのため、高速型メモリカードMC2の装着時においては、高速モード用のコンタクトC10〜C13をコンタクトパッドP10〜P13に接触させながらも、従来型メモリカードMC1の装着時においては、高速モード用のコンタクトC10〜C13がコンタクトパッドP3,P6に接触することでSDモードの信号伝送特性が変化して既定の転送速度に達しない、という不具合を回避することができる。
【0054】
また、メモリカードソケットAにメモリカードMC1,MC2の種類を識別する機能を付加し、当該メモリカードソケットAが搭載される電気機器に識別結果に応じて高速モード用のコンタクトC10〜C13を電気的に切り離す切替手段を設けることも考えられるが、この場合、メモリカードソケットAの使用に当たり電気機器に上記切替手段を付加する必要がある。これに対し、本実施形態の構成では、高速モード用のコンタクトC10〜C13をコンタクトパッドに接触させる状態と接触させない状態とを切り替える機能がメモリカードソケットA自体に備わっているから、メモリカードソケットAが搭載される電気機器に対しては何ら変更を加える必要がなく、メモリカードソケットAの搭載が容易になるという利点がある。
【0055】
なお、本実施形態の他の構成例として、図7に示すように当接片13と接触片12との連結部14を接触片12寄りに設け、接触片12の基端部から側方に引き出される形に当接片13を形成したコンタクトC10〜C13を採用することも考えられる。
【0056】
また、従来型メモリカードMC1の装着時に接触部10をコンタクトパッドP3,P6から離間させる形にコンタクトC10〜C13を弾性変形させる構成に限らず、たとえばリンク機構などを用いてコンタクトC10〜C13を変形させる構成とすることも考えられる。
【0057】
(実施形態2)
本実施形態のメモリカードソケットAは、図8(a)に示すように高速モード用のコンタクトC10〜C13の形状が実施形態1のメモリカードソケットAと相違する。その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0058】
すなわち、実施形態1では接触片12と当接片13とが接触片12の基端部側で連結されていたのに対し、本実施形態では、接触片12の先端部側で接触片12と当接片13とを連結している。ここで、当接片13はリブ106に当接する当接部16のみからなり、接触部10の後部と当接部16の後部とが連結部14にて一体に連結される。
【0059】
次に、上記構成のメモリカードソケットAに高速型メモリカードMC2と従来型メモリカードMC1との各々が装着された場合における高速モード用のコンタクトC10〜C13の状態について説明する。
【0060】
高速型メモリカードMC2の装着時には、図8(b)に示すようにリブ106に設けた逃し部111によって、当接部16下面とリブ106上面との間に隙間が生じるから、当接部16がリブ106と接触することはない。このとき、図9に示すように接触片12の接触部10はコンタクトパッドP10〜P13に接触し、高速モード用のコンタクトC10〜C13とこれに対応するコンタクトパッドP10〜P13との間が電気的に導通する。
【0061】
一方、図10(a)に示すように従来型メモリカードMC1が挿入されると、図10(b)に示すように当接部16下面がリブ106上面に当接し、当接部16がリブ106からの反力によって上方に押し上げられる。当接部16が押し上げられると、当接部16と一体に連結されている接触部10も上方に押し上げられ、接触部10下面がパッド用凹所110の底面から浮き上がる。その結果、接触部10とコンタクトパッドP3,P6とが上下方向に重なる場合でも、図11に示すように接触部10とコンタクトパッドP3,P6との間には隙間が生じ、高速モード用のコンタクトC10〜C13とコンタクトパッドP3,P6との間が電気的に絶縁される。
【0062】
この構成では、接触片12の先端側で当接部16と接触部10とが一体に連結されているから、当接部16と接触部10との間の剛性を高めることができ、従来型メモリカードMC1の装着時に当接部16が押し上げられた際には、確実に接触部10をパッド用凹所110の底面から浮き上がらせることができる。しかも、当接部16は接触片12のばね部11を弾性変形させながら押し上げられることになるので、ばね部11によって十分なばね長を確保することができ、従来型メモリカードMC1の装着時におけるコンタクトC10〜C13の塑性変形を回避することができる。
【0063】
なお、上記構成のメモリカードソケットAでは、従来型メモリカードMC1を挿入する際に、図12のように接触片12よりも先に当接片13がカード体100に接触するので、図13のように当接片13よりも先に接触片12がカード体100に接触する実施形態1の構成と比較すると、当接片13の当接部16の曲げ量(屈曲部位より先端側の長さ)を大きくする必要がある。したがって、従来メモリカードMC1が装着された状態でのリブ106上面からの当接部16の高さ寸法は、実施形態1の構成に比べて大きくなる(図10(b)、図5(b)参照)。
【0064】
ところで、本実施形態の他の構成例として、図14に示すように接触片12の先端を厚み方向に折り返す形で連結部14を形成し、当該連結部14によって接触部10と当接部16とを一体に連結した構成のコンタクトC10〜C13を採用してもよい。この構成では、従来型メモリカードMC1を挿入する際に、当接片13よりも先に接触片12がカード体100に接触するので、当接部16の曲げ量を小さく抑えることができる。
【0065】
(実施形態3)
本実施形態のメモリカードソケットAは、図15(a)および図16(a)に示すように高速モード用のコンタクトC10〜C13の形状が実施形態1のメモリカードソケットAと相違する。その他の構成および機能は実施形態1と同様である。なお、図15および図16では一部の構成要素(たとえばコンタクトC1〜C9、係合片2c)の図示を適宜省略する。
【0066】
本実施形態では、高速モード用のコンタクトC10〜C13において、突出片8が接触片と当接片とに分岐されてはおらず、突出片8の先端部に接触部10、突出片8の中間部に当接部16をそれぞれ設けている。すなわち、突出片8は、先端部が左右方向の一方に延設された主片18と、主片18の先端部から後方に延設された延設片19とを備えたクランク形状とされ、延設片19の先端部を接触部10とし、主片18の先端部を当接部16とすることで、一本の突出片8上に当接部16と接触部10とを配置してある。ここで、当接部16は実施形態1のように屈曲されて成るものではなく、平板状に形成されている。また、ここでは、逃し部111はリブ106を高さ方向(上下方向)の全長に亘って切り欠くことにより形成されている。
【0067】
次に、上記構成のメモリカードソケットAに高速型メモリカードMC2と従来型メモリカードMC1との各々が装着された場合における高速モード用のコンタクトC10〜C13の状態について説明する。
【0068】
高速型メモリカードMC2の装着時には、図15(b)に示すようにリブ106に設けた逃し部111によって、当接部16下面とカード体100上面との間に隙間が生じるから、当接部16がカード体100と接触することはない。このとき、図15(c)に示すように突出片8先端の接触部10はコンタクトパッドP10〜P13に接触し、高速モード用のコンタクトC10〜C13とこれに対応するコンタクトパッドP10〜P13との間が電気的に導通する。
【0069】
一方、従来型メモリカードMC1の装着時には、図16(b)に示すように当接部16下面がリブ106上面に当接し、当接部16がリブ106からの反力によって上方に押し上げられる。当接部16が押し上げられると、突出片8の先端に形成されている接触部10も上方に押し上げられ、接触部10下面がパッド用凹所110の底面から浮き上がる。その結果、図16(a)のように接触部10とコンタクトパッドP3,P6とが上下方向に重なる場合でも、図16(c)に示すように接触部10とパッド用凹所110底面との間には隙間が生じ、高速モード用のコンタクトC10〜C13とコンタクトパッドP3,P6との間が電気的に絶縁される。
【0070】
この構成では、突出片8において当接部16よりも先端側に接触部10が形成されているから、従来型メモリカードMC1の装着時に当接部16が押し上げられた際には、確実に接触部10をパッド用凹所110の底面から浮き上がらせることができる。
【0071】
なお、上述の構成では、当接部16は突出片8のばね部11(基端部と当接部16との間の部分)を弾性変形させながら押し上げられることになるので、十分な長さのばね部11の長さ寸法を確保して従来型メモリカードMC1の装着時におけるコンタクトC10〜C13の塑性変形を回避するために、メモリカードMC1,MC2の装着時における保持部5の後端からカード体100の前端までの距離を適宜設計することが望ましい。
【0072】
(実施形態4)
本実施形態のメモリカードソケットAは、図17(a)および図18(a)に示すように高速モード用のコンタクトC10〜C13の形状が実施形態3のメモリカードソケットAと相違する。その他の構成および機能は実施形態3と同様である。なお、図17および図18では一部の構成要素(たとえばコンタクトC1〜C9、係合片2c)の図示を適宜省略する。
【0073】
本実施形態では、高速モード用のコンタクトC10〜C13は、突出片8が前後方向に延長された主片18と、主片18の先端部から左右方向の一方に延設された延設片19とを備えたL字状に形成され、延設片19の下方に曲げ起こされた先端部を接触部10とし、延設片19の中間部を当接部16としている。当接部16は、高速モード用のコンタクトパッドP10,P11およびコンタクトパッドP12,P13を設けた各パッド用凹所110とそれに隣接するパッド用凹所110とに跨るように位置決めされる。なお、ここでは接触部10の先端縁(下端縁)は弧状とする。
【0074】
次に、上記構成のメモリカードソケットAに高速型メモリカードMC2と従来型メモリカードMC1との各々が装着された場合における高速モード用のコンタクトC10〜C13の状態について説明する。
【0075】
高速型メモリカードMC2の装着時には、図17(b)に示すようにリブ106に設けた逃し部111によって、当接部16下面とカード体100上面との間に隙間が生じるから、当接部16がカード体100と接触することはない。このとき、図17(c)に示すように突出片8先端の接触部10はコンタクトパッドP10〜P13に接触し、高速モード用のコンタクトC10〜C13とこれに対応するコンタクトパッドP10〜P13との間が電気的に導通する。
【0076】
一方、従来型メモリカードMC1の装着時には、図18(b)に示すように当接部16下面がリブ106上面に当接し、当接部16がリブ106からの反力によって上方に押し上げられる。当接部16が押し上げられると、突出片8の先端に形成されている接触部10も上方に押し上げられ、接触部10下面がパッド用凹所110の底面から浮き上がる。その結果、図18(a)のように接触部10とコンタクトパッドP3,P6とが上下方向に重なる場合でも、図18(c)に示すように接触部10とパッド用凹所110底面との間には隙間が生じ、高速モード用のコンタクトC10〜C13とコンタクトパッドP3,P6との間が電気的に絶縁される。
【0077】
この構成によれば、接触部10と同じ位置まで当接部16を保持部5から後方(図17(a)の下方)に離して設けることができるので、実施形態3の構成に比べて、突出片8のばね部11(基端部と当接部16との間の部分)の長さ寸法を長く確保することができ、従来型メモリカードMC1の装着時におけるコンタクトC10〜C13の塑性変形を回避できるという利点がある。
【0078】
なお、本実施形態では、高速型メモリカードMC2において、コンタクトC10〜C13の当接部16にリブ106が接触することがないように、リブ106の長手方向(前後方向)における逃し部111の寸法を、実施形態3の例よりも長く設定してある。たとえば、リブの長さ寸法が6.0mmの場合に、前後方向における逃し部111の寸法を実施形態3では2.5mm、本実施形態では3.0mmとする。
【0079】
(実施形態5)
本実施形態のメモリカードソケットAは、図19(a)および図20(a)に示すように高速モード用のコンタクトC10〜C13の形状が実施形態4のメモリカードソケットAと相違する。その他の構成および機能は実施形態4と同様である。なお、図19および図20では一部の構成要素(たとえばコンタクトC1〜C9、係合片2c)の図示を適宜省略する。
【0080】
本実施形態では、コンタクトブロック4の基体7は、保持部5の左右両端部からそれぞれ後方に突出する一対の脚部6を有しており、平面視が略コ字状に形成されている。高速モード用のコンタクトC10〜C13は、コンタクトパッドP10,P11に対応するコンタクトC10,C11が左側の脚部6に保持され、コンタクトパッドP12,P13に対応する一対のコンタクトC12,C13が右側の脚部6に保持される形で基体7によって保持される。各脚部6の側面から突出する突出片8は、保持部5の後面に沿って延長され、その先端部を接触部10とするとともに、中間部を当接部16としている。ここで、同一の脚部6に保持される各一対のコンタクトC10〜C13は、前後方向に並ぶように配置されており、前方(図19(a)の上方)に位置するコンタクトC11,C12においては、突出片8の先端部(接触部10)が当接部16から後方に突出する形に形成されている。なお、高速モード用のコンタクトC10〜C13は、その他のコンタクトC1〜C9の下方に配置されるので、両コンタクトC1〜C9,C10〜C13が交差する箇所でも、両コンタクトC1〜C9,C10〜C13が互いに接触することはない。
【0081】
また、本実施形態では、高速型メモリカードMC2において、図19(a)のようにメモリカードソケットAへの装着時にコンタクトC10〜C13の突出片8と干渉することになる複数のリブ106に対して、逃し部111を形成してある。すなわち、高速モード用のコンタクトパッドP10,P11を設けたパッド用凹所110と第1切欠部108との間に位置するリブ106、並びに高速モード用のコンタクトパッドP12,P13を設けたパッド用凹所110とカード体100の右側縁との間に位置するリブ106の全てに逃し部111が形成される。
【0082】
次に、上記構成のメモリカードソケットAに高速型メモリカードMC2と従来型メモリカードMC1との各々が装着された場合における高速モード用のコンタクトC10〜C13の状態について説明する。
【0083】
高速型メモリカードMC2の装着時には、図19(b)に示すようにリブ106に設けた逃し部111によって、当接部16下面とカード体100上面との間に隙間が生じるから、当接部16がカード体100と接触することはない。このとき、図19(c)に示すように突出片8先端の接触部10はコンタクトパッドP10〜P13に接触し、高速モード用のコンタクトC10〜C13とこれに対応するコンタクトパッドP10〜P13との間が電気的に導通する。
【0084】
一方、従来型メモリカードMC1の装着時には、図20(b)に示すように当接部16下面がリブ106上面に当接し、当接部16がリブ106からの反力によって上方に押し上げられる。当接部16が押し上げられると、突出片8の先端に形成されている接触部10も上方に押し上げられ、接触部10下面がパッド用凹所110の底面から浮き上がる。その結果、図20(a)のように接触部10とコンタクトパッドP3,P6とが上下方向に重なる場合でも、図20(c)に示すように接触部10とパッド用凹所110底面との間には隙間が生じ、高速モード用のコンタクトC10〜C13とコンタクトパッドP3,P6との間が電気的に絶縁される。
【0085】
この構成によれば、メモリカードMC1,MC2の装着時における保持部5の後端からカード体100の前端までの距離に関係なく、突出片8のばね部11(基端部と当接部16との間の部分)の長さ寸法を設計することができる。したがって、メモリカードMC1,MC2の装着時における保持部5の後端からカード体100の前端までの距離を短くしながらも、突出片8のばね部11の長さ寸法を十分に確保することができ、従来型メモリカードMC1の装着時におけるコンタクトC10〜C13の塑性変形を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態1の高速型メモリカード装着状態を示し、(a)は要部の上面図、(b)は要部の断面図である。
【図2】同上の構成を示す斜視図である。
【図3】同上に用いる高速型メモリカードを示し、(a)は上面図、(b)は斜視図である。
【図4】同上の高速型メモリカード装着状態を示す要部の斜視図である。
【図5】同上の従来型メモリカード装着状態を示し、(a)は要部の上面図、(b)は要部の断面図である。
【図6】同上の従来型メモリカード装着状態を示す要部の斜視図である。
【図7】同上の他の構成例を示す要部の斜視図である。
【図8】本発明の実施形態2の高速型メモリカード装着状態を示し、(a)は要部の上面図、(b)は要部の断面図である。
【図9】同上の高速型メモリカード装着状態を示す要部の斜視図である。
【図10】同上の従来型メモリカード装着状態を示し、(a)は要部の上面図、(b)は要部の断面図である。
【図11】同上の従来型メモリカード装着状態を示す要部の斜視図である。
【図12】同上の従来型メモリカードが挿入されるときの状態を示す要部の断面図である。
【図13】同上の比較例において従来型メモリカードが挿入されるときの状態を示す要部の断面図である。
【図14】同上の他の構成例におけるコンタクトを示し、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図15】本発明の実施形態3の高速型メモリカード装着状態を示し、(a)は要部の上面図、(b)は要部の縦断面図、(c)は要部の横断面図である。
【図16】同上の従来型メモリカード装着状態を示し、(a)は要部の上面図、(b)は要部の縦断面図、(c)は要部の横断面図である。
【図17】本発明の実施形態4の高速型メモリカード装着状態を示し、(a)は要部の上面図、(b)は要部の縦断面図、(c)は要部の横断面図である。
【図18】同上の従来型メモリカード装着状態を示し、(a)は要部の上面図、(b)は要部の縦断面図、(c)は要部の横断面図である。
【図19】本発明の実施形態5の高速型メモリカード装着状態を示し、(a)は要部の上面図、(b)は要部の縦断面図、(c)は要部の横断面図である。
【図20】同上の従来型メモリカード装着状態を示し、(a)は要部の上面図、(b)は要部の縦断面図、(c)は要部の横断面図である。
【図21】従来型メモリカードを示し、(a)は裏側から見た平面図、(b)は左側面図、(b)は右側面図である。
【図22】高速型メモリカードを示し、(a)は裏側から見た平面図、(b)は表側から見た平面図、(b)はカード挿入方向の前方から見た側面図である。
【符号の説明】
【0087】
3 ソケット本体
3a カード挿入口
10 接触部
12 接触片
13 当接片
16 当接部
18 主片
19 延設片
100 カード体
106 リブ
111 逃し部
A メモリカードソケット
C1〜C13 コンタクト
MC1 従来型メモリカード
MC2 高速型メモリカード
P1〜P13 コンタクトパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状のカード体を備え、当該カード体の一表面の一端部において、複数のコンタクトパッドが並設されるとともに、コンタクトパッド間を仕切るリブが立設されてなり、少なくともリブの一部を切り欠く形の逃し部の有無によって複数種類に分類されるメモリカードが、挿抜自在に前記一端部側から装着されるメモリカードソケットであって、メモリカードが導入されるカード挿入口が開口し、カード挿入口から挿入されたメモリカードを収容するソケット本体と、ソケット本体に保持され、メモリカードの各コンタクトパッドとそれぞれ接触し導通する複数のコンタクトとを備え、一部のコンタクトは、コンタクトパッドと対向する位置に配置される接触部と、リブと対向する位置に配置される当接部とを有し、逃し部を有するメモリカードの装着時には、逃し部により当接部とリブとの接触が回避され接触部がコンタクトパッドに接触し、逃し部の無いメモリカードの装着時には、当接部がリブに当接し接触部をコンタクトパッドから離間させる形に変形することを特徴とするメモリカードソケット。
【請求項2】
前記逃し部は前記メモリカードにおいて前記一部のコンタクトが接触する前記コンタクトパッドに隣接する前記リブに形成されており、前記一部のコンタクトは、前記ソケット本体の内側面からメモリカードの挿入方向に突出する突出片を具備し、当該突出片は、前記接触部を含む接触片と前記当接部を含む当接片とに分岐されており、接触片と当接片とは、突出片の基端部で一体に連結されていることを特徴とする請求項1記載のメモリカードソケット。
【請求項3】
前記逃し部は前記メモリカードにおいて前記一部のコンタクトが接触する前記コンタクトパッドに隣接する前記リブに形成されており、前記一部のコンタクトは、前記ソケット本体の内側面からメモリカードの挿入方向に突出する突出片を具備し、当該突出片は、前記接触部を含む接触片と前記当接部を含む当接片とに分岐されており、接触片と当接片とは、突出片の先端部で一体に連結されていることを特徴とする請求項1記載のメモリカードソケット。
【請求項4】
前記逃し部は前記メモリカードにおいて前記一部のコンタクトが接触する前記コンタクトパッドに隣接する前記リブに形成されており、前記一部のコンタクトは、前記ソケット本体の内側面からメモリカードの挿入方向に突出する突出片を具備し、当該突出片は、前記カード体の前記一表面に沿う面内で先端部がメモリカードの挿入方向と交差する方向に延設された主片と、主片の先端部からメモリカードの挿入方向に延設された延設片とを備え、延設片の先端部を前記接触部とし、主片の先端部を前記当接部とすることを特徴とする請求項1記載のメモリカードソケット。
【請求項5】
前記逃し部は前記メモリカードにおいて前記一部のコンタクトが接触する前記コンタクトパッドに隣接する前記リブに形成されており、前記一部のコンタクトは、前記ソケット本体の内側面からメモリカードの挿入方向に突出する突出片を具備し、当該突出片は、メモリカードの挿入方向に沿って延長された主片と、主片の先端部から前記カード体の前記一表面に沿う面内でメモリカードの挿入方向と交差する方向に延設された延設片とを備え、延設片の先端部を前記接触部とし、延設片の中間部を前記当接部とすることを特徴とする請求項1記載のメモリカードソケット。
【請求項6】
前記逃し部は前記メモリカードにおいて前記一部のコンタクトが接触する前記コンタクトパッドとメモリカードの挿入方向に沿う前記カード体の各側縁との間に位置する前記リブに形成されており、前記一部のコンタクトは、前記ソケット本体の内側面からカード体の前記一表面に沿う面内でメモリカードの挿入方向と交差する方向に突出する突出片を具備し、当該突出片は、先端部を前記接触片とし、中間部を前記当接部とすることを特徴とする請求項1記載のメモリカードソケット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−44948(P2010−44948A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208134(P2008−208134)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】