説明

メモリカード及びホスト機器

【課題】高いクロック周波数による動作においても安定したデータ転送が可能なメモリカード及びホスト機器を提供する。
【解決手段】ホスト機器20からアクセスされるメモリカード1において、クロック入力回路69は、ホスト機器20からクロックラインを介して第1クロック信号を受け取る。データ入出力回路65は、ライトタイミング調整モードにてホスト機器20からデータラインを介して第2クロック信号を受け取り、リードタイミング調整モードにて第3クロック信号を出力する。ディレイ素子66は、ライトタイミング調整モードにて、データを第1クロックで受け取れるように、第1クロック信号に対する第2クロック信号の位相を調整する。調整値保持回路62は、第2クロック信号の位相の調整値を保持する。ディレイ素子66は、データ転送モードにて、保持された調整値に応じてデータ入出力回路65から出力されたデータのディレイ値を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホスト機器からのアクセスによりデータの書き込み、読み出し、及び消去を行う、記憶素子を有するメモリカード及びホスト機器に関するものであり、例えば、メモリカードとホスト機器を接続するバスインタフェースにおけるタイミング調整に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、PDA、カメラ、携帯電話等の様々な携帯用電子機器においては、リムーバブル記憶デバイスの1つであるSDメモリカードなどのメモリカードが多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。SDメモリカードは、ハイスピードモードの拡張により、最大25MB/secの転送が可能であるが、次世代のメモリカードでは50MB/sec以上の転送能力が望まれている。
【0003】
しかし、メモリカードに用いられている現状の方式のバスインタフェースでは、ディレイのばらつきを考慮すると、動作タイミングがきびしくなるため、動作の同期をとるために使用するクロック信号の周波数を上げることが難しい。タイミングや素子特性はメモリカードやホストシステムのインプリメンテーション、組み合わせに依存するため、事前に決まったディレイ値を計算しておくことはできない。この点はオンボードで実装されるDRAM(dynamic random access memory)などは異なる点である。
【特許文献1】特開2003−196613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、高いクロック周波数による動作においても安定したデータ転送が可能なメモリカード及びホスト機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の第1の実施態様のメモリカードは、ホスト機器に装着され、前記ホスト機器からアクセスされるメモリカードにおいて、前記ホスト機器からクロックラインを介して第1クロック信号を受け取るクロック入力回路と、データ転送モードにおいて、前記ホスト機器との間でデータラインを介してデータを送受信し、前記メモリカードで行われるカードタイミング調整モードにおいて、前記ホスト機器から前記データラインを介して第2クロック信号を受け取り、前記ホスト機器で行われるホストタイミング調整モードにおいて、第3クロック信号を出力するデータ入出力回路と、前記カードタイミング調整モードにおいて、前記データを前記第1クロックで受け取れるように、前記クロック入力回路から出力された前記第1クロック信号に対する、前記データ入出力回路から出力された前記第2クロック信号の位相を調整するディレイ素子と、前記ディレイ素子により調整された前記第2クロック信号の位相の調整値を保持する調整値保持回路とを具備し、前記ディレイ素子は、前記データ転送モードにおいて、前記調整値保持回路により保持された前記調整値に応じて前記データ入出力回路から出力された前記データのディレイ値を調整し、前記データを前記第1クロック信号で受け取ることを特徴とする。
【0006】
この発明の第2の実施態様のホスト機器は、メモリカードに対してアクセスするホスト機器において、クロックラインを介して前記メモリカードに第1クロックを供給するクロック出力回路と、データ転送モードにおいて、データラインを介して前記メモリカードとの間でデータを送受信し、前記メモリカードで行われるカードタイミング調整モードにおいて、前記データラインを介して前記メモリカードに第2クロック信号を供給し、前記ホスト機器で行われるホストタイミング調整モードにおいて、前記メモリカードから前記データラインを介して第3クロック信号を受け取るデータ入出力回路と、前記ホストタイミング調整モードにおいて、前記データを前記第1クロックで受け取れるように、前記クロック出力回路から出力された前記第1クロック信号に対する、前記データ入出力回路から出力された前記第3クロック信号の位相を調整するディレイ素子と、前記ディレイ素子により調整された前記第3クロック信号の位相の調整値を保持する調整値保持回路とを具備し、前記ディレイ素子は、前記データ転送モードにおいて、前記調整値保持回路により保持された前記調整値に応じて前記データ入出力回路から出力された前記データのディレイ値を調整し、前記データを前記第1クロック信号で受け取ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、高いクロック周波数による動作においても安定したデータ転送が可能なメモリカード及びホスト機器を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0009】
[第1実施形態]
まず、この発明の第1実施形態のメモリカード及びホスト機器について説明する。
【0010】
図1は、この発明の第1実施形態のメモリカード及びホスト機器の構成を示すブロック図である。
【0011】
メモリカード1は、図1に示すように、半導体記憶装置、例えばNAND型フラッシュメモリ3などの不揮発性半導体記憶装置、及びコントローラ4を含む。コントローラ4には、CPU(Central Processing Unit)8やROM(Read-Only Memory)9などの機能ブロックが搭載されている。各機能ブロックの詳細については後で述べる。なお、NAND型フラッシュメモリ3は、1つのメモリセルに1ビットの情報を記憶する2値メモリであっても良いし、1つのメモリセルに1ビットより多い情報(例えば2ビット)を記憶する多値メモリであっても良い。またここでは、NAND型フラッシュメモリを用いた例を説明するが、これに限るわけではなく、NOR型メモリなど、その他の不揮発性半導体メモリにも適用できる。
【0012】
また、図示しないが、NAND型フラッシュメモリ3及びコントローラ4は、PCB(Printed Circuit Board)基板上に配置されていても良いし、同一のLSI(Large-scale Integration)内に形成されていても良い。
【0013】
メモリカード1は、ホスト機器20に接続されたときに電源供給を受けて動作し、ホスト機器20からのアクセスに応じた処理を行う。このメモリカード1は、前述したようにNAND型フラッシュメモリ3及びコントローラ4を有する。
【0014】
NAND型フラッシュメモリ3は、消去時の消去ブロックサイズ(消去単位のブロックサイズ)が例えば256kByteに定められている不揮発性メモリであり、さらに例えば2kByte単位でデータの書き込み・読み出しを行うようになっている。このNAND型フラッシュメモリ3は、例えば0.09μmプロセス技術を用いて製作される。即ち、NAND型フラッシュメモリ3のデザインルールは、0.1μm未満となっている。
【0015】
コントローラ4は、前述したCPU8及びROM9のほかに、メモリインタフェース5、ホストインタフェース6、バッファ7、及びRAM(Random Access Memory)10を搭載している。メモリインタフェース5は、コントローラ4とNAND型フラッシュメモリ3との間のインタフェース処理を行うものである。ホストインタフェース6は、コントローラ4とホスト機器20との間のインタフェース処理を行うものであり、ホスト機器20内のカードインタフェース30は、ホスト機器20とコントローラ4との間のインタフェース処理を行うものである。
【0016】
以下に、カードインタフェース30とホストインタフェース6とを示し、これらインタフェース間のデータ転送について説明する。
【0017】
図2は、通常のデータ転送モード(通常動作モード)時における、ホスト機器20内のカードインタフェース30とメモリカード1内のホストインタフェース6の構成を示す図である。ホスト機器20がライトデータをメモリカード1に転送する場合の一例であり、送信用フリップフロップ33に保持され出力されたデータが入出力(I/O)回路34,65を介して受信用フリップフロップ67に保持されるまでの接続関係を示している。
【0018】
クロック生成回路32,70は、クロック発生回路31で発生したクロック信号の2以上の整数倍(ここでは2倍)の周波数を持つクロック信号を出力する回路である。クロック生成回路32,70はこの実施形態では必ずしも必須ではないが、図3,図4に示すように同じ信号数のバスインタフェース上で2倍のデータ転送レートを実現することを可能にしている。ダブルデータレート(DDR)方式ではバスクロックSDCLKの半周期毎にデータDATが転送される。そのデータを内部ではクロック信号の一方のエッジで制御するために、クロック周波数を倍にするクロック生成回路32,70が使用されている。
【0019】
SDメモリカードの場合、バスクロックはホスト機器20内のクロック発生回路31で発生して、入出力回路38、バスインタフェース、及び入出力回路69を介してメモリカード1に供給される。したがって、ライトデータとクロック信号は、同方向、つまりホスト機器20(カードインタフェース30)からメモリカード1(ホストインタフェース6)に転送される。ホスト機器20でデータを受ける場合、クロック信号との各データビットの位相関係が重要となる。データが伝達されるデータラインとクロック信号が伝達されるクロックラインの配線の長さや、同じ特性を持つトランジスタを使用することにより、ある程度は受信タイミングが調整可能である。しかし、メモリカード1とホスト機器20の接続は特定できないため、実装に左右され、データビット間のディレイのばらつきは存在すると考えられる。入出力回路セル34、65は双方向性を持つが、図2にはホスト機器20からメモリカード1に向かう部分のみが描かれている。なお、バッファ回路41はホスト機器20内の他の回路にクロック信号を供給し、バッファ回路71はメモリカード1内の他の回路にクロック信号を供給する。
【0020】
前述した図2は、通常のデータ転送モード時の構成を示したものであるが、本発明の実施形態によるメモリカード1やホスト機器20は、さらにライトタイミング調整モード、及びリードタイミング調整モードを含む初期化モードを有するという特徴がある。初期化モードは、電源投入時あるいは所定期間ごとに実行される。ライトタイミング調整モードはメモリカードにおいて行われるタイミング調整モード(カードタイミング調整モード)であり、リードタイミング調整モードはホスト機器において行われるタイミング調整モード(ホストタイミング調整モード)である。
【0021】
図5は、この発明の第1実施形態のメモリカード及びホスト機器の構成を示す回路図である。第1実施形態では、ライトタイミング調整モードを有するメモリカード及びホスト機器について述べる。
【0022】
図2に示した構成と比べて異なる点を以下に記す。ホスト機器20のカードインタフェース30内のフリップフロップ33の入力端子Dに、ディレイ素子42と出力選択回路35を接続し、出力選択回路35にモード選択回路36を接続する。モード選択回路36は、ライトタイミング調整モードあるいは通常動作モードを設定するための信号を出力選択回路35に出力する。出力選択回路35は、モード選択回路36からライトタイミング調整モードを設定する信号を受け取った場合、クロック発生回路31で発生したクロック信号をディレイ素子42に出力し、また通常動作モードを設定する信号を受け取った場合、ライトデータをディレイ素子42に出力する。すなわち、ライトタイミング調整モード時には、クロック信号を、ディレイ素子42を介してデータ送信用フリップフロップ33の入力端子Dに供給して、データバス上にクロックパターンが出力されるようにする。
【0023】
さらに、メモリカード1のホストインタフェース6内のディレイ素子66に、モード選択回路61と調整値保持回路62を接続する。ディレイ素子66は、モード選択回路61からライトタイミング調整モードを設定する信号を受け取った場合、クロック生成回路70により生成されたクロック信号のエッジと入出力回路65から出力されたクロックパターンのエッジが一致するように、ディレイ素子66の入力部に入力されたクロックパターンのディレイ値(調整値)を調整する。このとき、求められた調整値は調整値保持回路62に保持される。ディレイ素子66は、モード選択回路61から通常動作モードを設定する信号を受け取った場合、調整値保持回路62に保持された調整値を用いてディレイ素子66の入力部に入力されたライトデータのディレイ値を調整する。すなわち、ライトタイミング調整モード時には、受信用フリップフロップ67のクロック端子に供給されるクロック信号を位相調整可能なディレイ素子66に供給し、このクロック信号に基づいてディレイ素子66によりクロックパターンの位相調整を行ってこのときの調整値を求める。さらに、求めた調整値を調整値保持回路62に保持する。そして、通常動作モード時には、調整値保持回路62に保持された調整値に従って、ディレイ素子によりライトデータのディレイ値を調整する。以上により、受信用フリップフロップ67におけるセットアップ・ホールドタイムを確保することができる。
【0024】
ライトタイミング調整モードにおいては、送信用フリップフロップ33に2倍の周波数のクロック信号がクロック生成回路32から供給されているので、データバス上には図5に示すような波形が出力される。位相調整可能なディレイ素子66は、ホスト機器20がデータバス上に出力するクロックパターンと受信用フリップフロップ67に入力されるクロック信号との間の位相を特定の値に調整する機能を持っている。
【0025】
図6は、ディレイ素子66においてクロックパターンをクロック信号(CLK×2)に対して180度の位相になるように調整した場合のタイミング図を示す。調整前のクロックパターンが信号DATであり、調整後のクロックパターンが信号DAT Delayedである。DDR方式では、信号CLK Delayedの立ち上がり、立ち下がりは、データ転送モード時のデータバス上のデータ変化点に同期している。このため、信号CLK Delayedは、受信用フリップフロップ67に供給されるクロック信号の立ち上がりがこれらデータ変化点の中間点になるように調整されている。言い換えると、ディレイ素子66は、受信用フリップフロップ67に供給されるクロック信号のエッジに対するセットアップ・ホールド時間が、信号CLK Delayedの立ち上がりから立ち下がりまでの期間(または、立ち下がりから立ち上がりまでの期間)に含まれるように、信号CLK Delayedの位相を調整する。このため、フリップフロップ67における十分なセットアップ・ホールド時間が確保される。また、ライトデータは複数ビットのデータからなり、これら複数ビットのデータを伝達する複数のデータラインには位相調整可能なディレイ素子66がそれぞれ挿入されている。この場合でも、ディレイ素子を個々に調整することによって、データライン、各ビットにおけるディレイのばらつきを調整することができる。これにより、個々のフリップフロップ67における十分なセットアップ・ホールド時間を確保することができる。なお、データバスにおけるデータ、及びクロックバスにおけるクロック信号のディレイ値は、温度などの環境変化の影響を受けるため、ライトタイミング調整モード、及びリードタイミング調整モードを含む初期化モードを定期的に実行することにより、ライトタイミング、リードタイミングを再調整することで、環境変化などに対応することができる。
【0026】
[第2実施形態]
次に、この発明の第2実施形態のメモリカード及びホスト機器について説明する。第1実施形態における構成と同様の部分には同じ符号を付してその説明は省略する。図1に示したメモリカード及びホスト機器の構成は、この第2実施形態においても同様に適用される。
【0027】
図7は、通常のデータ転送モード時における、ホスト機器20内のカードインタフェース30とメモリカード1内のホストインタフェース6の構成を示す図である。メモリカード1がリードデータをホスト機器20に転送する場合の一例であり、送信用フリップフロップ22から出力したデータが入出力(I/O)回路65,34を介して受信用フリップフロップ24に取り込まれるまでの接続関係を示している。図2および図5と異なり、左がメモリカード(ホストインタフェース6)1、右がホスト機器(カードインタフェース30)20として描かれている。
【0028】
ホスト機器20のカードインタフェース30内のクロック発生回路31で生成されたクロック信号は、入出力(I/O)回路38,69を介してメモリカード1のホストインタフェース6に供給される。ホストインタフェース6に供給されたクロック信号は、クロック生成回路21により周波数が2倍となり、送信用フリップフロップ22のクロック端子に供給される。送信用フリップフロップ22は、DDRモードにより入力端子Dに入力されたリードデータを保持し、出力端子Qからデータバスに出力する。図7からわかるように、リードデータとクロック信号の伝達方向は逆方向になっている。入出力(I/O)回路34,65は双方向性を持つが、図7にはメモリカード1からホスト機器20に向かう部分のみが描かれている。
【0029】
送信用フリップフロップ22から入出力回路65を介して出力されたリードデータは、データバス、及びホスト機器20内の入出力回路34を介してディレイ素子23に供給される。ディレイ値が調整可能なディレイ素子23に供給されたリードデータは、ディレイ素子23によりデータビット間のばらつきが解消され、受信用フリップフロップ24に供給され保持される。ここで、ホスト機器20で発生したクロック信号をフリップフロップ22の入力端子Dに入力して、ホスト機器20に出力されるクロックパターンを用いてリードタイミングを調整する場合、ホスト機器20で生成したクロック信号を起点としてメモリカード1の送信用フリップフロップ22を通って、再びホスト機器20の受信用フリップフロップ24に到達する。このように経路が長いためにこのパスのディレイのばらつきは、非常に大きなものになってしまう。DDRを用いたDRAMなどを使用する場合、コントローラとメモリ回路はオンボードに配置され、その間の配線を固定化することができるが、SDメモリカードの場合、SDバスラインの長さや素子特性は各ホストシステムやカードの実装によって異なるため、ディレイ値をあらかじめ計算しておくことはできない。正しくデータを受けとるためには、フリップフロップ24に供給されるクロック信号とデータ入力の位相を調整してフリップフロップ24のセットアップ・ホールド時間を満足させる必要がある。そこで、クロック信号の周波数を倍にするクロック生成回路26の前段に位相調整可能なディレイ素子25を挿入して、フリップフロップ24に供給されるクロック信号のディレイ値を調整することが必要となる。
【0030】
図8は、この発明の第2実施形態のメモリカード及びホスト機器の構成を示す回路図である。第2実施形態では、リードタイミング調整モードを有するメモリカード及びホスト機器について述べる。
【0031】
図7に示した構成と比べて異なる点を以下に記す。メモリカード1のホストインタフェース6内のフリップフロップ22の入力端子Dに、ディレイ素子27と出力選択回路35を接続し、出力選択回路35にモード選択回路36を接続する。モード選択回路36は、リードタイミング調整モードあるいは通常動作モードを設定するための信号を出力選択回路35に出力する。出力選択回路35は、モード選択回路36からリードタイミング調整モードを設定する信号を受け取った場合、クロック発生回路31により生成され、入出力回路69に供給されたクロック信号をディレイ素子27に出力し、また通常動作モードを設定する信号を受け取った場合、リードデータをディレイ素子27に出力する。すなわち、リードタイミング調整モード時には、クロック信号を、ディレイ素子27を介して送信用フリップフロップ22の入力端子Dに供給して、データバス上にクロックパターンが出力されるようにする。
【0032】
さらに、ホスト機器20のカードインタフェース30内のデータバスに挿入されているディレイ素子23に、ディレイ値を決定する位相検出回路28を接続する。さらに、ディレイ素子25に、モード選択回路61及び調整値保持回路62を接続する。また、ディレイ素子23の出力をディレイ素子25に供給する。ディレイ素子25は、モード選択回路61からリードタイミング調整モードを設定する信号を受け取った場合、クロック発生回路31により生成されたクロック信号のエッジとディレイ素子23から出力されたクロックパターンのエッジが一致するように、ディレイ素子25の入力部に入力されたクロック信号のディレイ値(調整値)を調整する。このとき、求められた調整値は調整値保持回路62に保持される。ディレイ素子25は、モード選択回路61から通常動作モードを設定する信号を受け取った場合、調整値保持回路62に保持された調整値を用いてディレイ素子25の入力部に入力されたクロック信号のディレイ値を調整する。すなわち、リードタイミング調整モード時には、受信用フリップフロップ24のセットアップ・ホールドタイムを調整するために位相調整可能なディレイ素子25に、ディレイ素子23から出力されるクロックパターンを供給し、このクロックパターンに基づいてディレイ素子25によりクロック信号の位相調整を行ってこのときの調整値を求める。さらに、求めた調整値を調整値保持回路62に保持する。そして、通常動作モード時には、調整値保持回路62に保持された調整値に従って、ディレイ素子25によりクロック信号のディレイ値を調整する以上により、受信用フリップフロップ24におけるセットアップ・ホールドタイムを確保することができる。
【0033】
リードタイミング調整モードにおいては、送信用フリップフロップ22には2倍の周波数のクロック信号が供給されているので、データバス上には図8に示すような波形が出力される。位相検出回路28は、複数のデータビット間の位相差を検出し、ディレイ素子23を調整して一番遅いデータビットのディレイ値に他のビットを揃えて、データビット間のディレイのばらつきを抑える機能を持つ。位相調整可能なディレイ素子25は、メモリカード1がデータバス上に出力するクロックパターンと受信用フリップフロップ24に入力されるクロック信号との間の位相を特定の値に調整する機能を持っている。
【0034】
図9は、ディレイ素子25においてクロック信号をクロックパターンに対して180度の位相になるように調整した場合のタイミング図を示す。信号CLK Delayedは調整後の波形を示す。信号CLK Delayedの立ち上がり、立ち下がりは、データバス上のクロックパターンDATの立ち上がり、立ち下がりに同期していて、これらはデータバス上のデータ変化点を示している。フリップフロップ24に供給されるクロック信号(CLK×2)の立ち上がりは、これらデータ変化点の中間点に調整されているため、十分なセットアップ・ホールド時間が確保される。
【0035】
前述した第1,第2実施形態のライトタイミング調整モード、及びリードタイミング調整モードは1度実行されると、以降、その結果は調整値保持回路62に保持される。また例えば、温度変化などによりディレイが変化してしまう可能性がある場合は、定期的または特定の条件で再度、調整モードを実行して、調整値(ディレイ値)の再調整を行うことができる。
【0036】
また、前述した各実施形態はそれぞれ、単独で実施できるばかりでなく、適宜組み合わせて実施することも可能である。さらに、前述した各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、各実施形態において開示した複数の構成要件の適宜な組み合わせにより、種々の段階の発明を抽出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1実施形態のメモリカード及びホスト機器の構成を示すブロック図である。
【図2】通常のデータ転送モード時における、ホスト機器内のカードインタフェースとメモリカード内のホストインタフェースの構成を示す図である(ホスト機器からメモリカードへのデータ転送)。
【図3】シングルデータレート(SDR)方式のデータ転送を示すタイミング図である。
【図4】ダブルデータレート(DDR)方式のデータ転送を示すタイミング図である。
【図5】第1実施形態のメモリカード及びホスト機器の構成を示す回路図である。
【図6】第1実施形態のディレイ素子においてクロックパターンをクロック信号に対して180度の位相になるように調整した場合のタイミング図を示す。
【図7】通常のデータ転送モード時における、ホスト機器内のカードインタフェースとメモリカード内のホストインタフェースの構成を示す図である(メモリカードからホスト機器へのデータ転送)。
【図8】この発明の第2実施形態のメモリカード及びホスト機器の構成を示す回路図である。
【図9】第2実施形態のディレイ素子においてクロック信号をクロックパターンに対して180度の位相になるように調整した場合のタイミング図を示す。
【符号の説明】
【0038】
1…メモリカード、3…NAND型フラッシュメモリ、4…コントローラ、5…メモリインタフェース、6…ホストインタフェース、7…バッファ、8…CPU(Central Processing Unit)、9…ROM(Read-Only Memory)、10…RAM(Random Access Memory)、20…ホスト機器、21…クロック生成回路、22…送信用フリップフロップ、23…ディレイ素子、24…受信用フリップフロップ、25…ディレイ素子、26…クロック生成回路、27…ディレイ素子、28…位相検出回路、30…カードインタフェース、31…クロック発生回路、32…クロック生成回路、33…送信用フリップフロップ、34…入出力(I/O)回路、35…出力選択回路、36…モード選択回路、38…入出力(I/O)回路、41…バッファ回路、42…ディレイ素子、61…モード選択回路、62…調整値保持回路、65…入出力(I/O)回路、66…ディレイ素子、67…受信用フリップフロップ、69…入出力(I/O)回路、70…クロック生成回路、71…バッファ回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト機器に装着され、前記ホスト機器からアクセスされるメモリカードにおいて、
前記ホスト機器からクロックラインを介して第1クロック信号を受け取るクロック入力回路と、
データ転送モードにおいて、前記ホスト機器との間でデータラインを介してデータを送受信し、前記メモリカードで行われるカードタイミング調整モードにおいて、前記ホスト機器から前記データラインを介して第2クロック信号を受け取り、前記ホスト機器で行われるホストタイミング調整モードにおいて、第3クロック信号を出力するデータ入出力回路と、
前記カードタイミング調整モードにおいて、前記データを前記第1クロックで受け取れるように、前記クロック入力回路から出力された前記第1クロック信号に対する、前記データ入出力回路から出力された前記第2クロック信号の位相を調整するディレイ素子と、
前記ディレイ素子により調整された前記第2クロック信号の位相の調整値を保持する調整値保持回路とを具備し、
前記ディレイ素子は、前記データ転送モードにおいて、前記調整値保持回路により保持された前記調整値に応じて前記データ入出力回路から出力された前記データのディレイ値を調整し、前記データを前記第1クロック信号で受け取ることを特徴とするメモリカード。
【請求項2】
前記第1クロック信号の整数倍の周波数の第4クロック信号を生成するクロック生成回路と、
前記第4クロック信号に同期してデータを保持するフリップフロップと、
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のメモリカード。
【請求項3】
前記ディレイ素子は、前記第4クロック信号のエッジに対するセットアップタイム及びホールドタイムが、前記第2クロック信号の立ち上がりから立ち下がりまでの期間に含まれるように、前記第2クロック信号の位相を調整することを特徴とする請求項2に記載のメモリカード。
【請求項4】
メモリカードに対してアクセスするホスト機器において、
クロックラインを介して前記メモリカードに第1クロックを供給するクロック出力回路と、
データ転送モードにおいて、データラインを介して前記メモリカードとの間でデータを送受信し、前記メモリカードで行われるカードタイミング調整モードにおいて、前記データラインを介して前記メモリカードに第2クロック信号を供給し、前記ホスト機器で行われるホストタイミング調整モードにおいて、前記メモリカードから前記データラインを介して第3クロック信号を受け取るデータ入出力回路と、
前記ホストタイミング調整モードにおいて、前記データを前記第1クロックで受け取れるように、前記クロック出力回路から出力された前記第1クロック信号に対する、前記データ入出力回路から出力された前記第3クロック信号の位相を調整するディレイ素子と、
前記ディレイ素子により調整された前記第3クロック信号の位相の調整値を保持する調整値保持回路とを具備し、
前記ディレイ素子は、前記データ転送モードにおいて、前記調整値保持回路により保持された前記調整値に応じて前記データ入出力回路から出力された前記データのディレイ値を調整し、前記データを前記第1クロック信号で受け取ることを特徴とするホスト機器。
【請求項5】
前記カードタイミング調整モードにおいて、メモリカード側のタイミング調整を実行し、前記ホストタイミング調整モードにおいて、ホスト機器側のタイミング調整を実行し、前記タイミング調整の完了後に前記データ転送モードに設定し、前記メモリカードに対してデータの読み出し及び書き込みを行うことを特徴とする請求項4に記載のホスト機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−90556(P2008−90556A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269967(P2006−269967)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】