説明

メモリデバイス試験装置

【課題】演算対象となるデータを限定的にすることで、試験時間全体の短縮化を図ることを目的とする。
【解決手段】複数のピンを有するメモリデバイスのフェイルデータを複数記憶するフェイルメモリ3とこのフェイルメモリ5に対応して設けたバッファメモリとを備えるメモリデバイス試験装置であって、各フェイルデータのピンごとにフェイルが存在するか否かを示すフェイルフラグを生成するフェイルフラグ生成部22と、フェイルフラグに基づいてフェイルデータからフェイルが存在しないピンの部分を削除した削除データを生成するデータ削除部42と、複数の削除データを結合してフェイルデータのビット数以下とした結合データを生成してバッファメモリ5に記憶させるデータ結合部47と、フェイルフラグに基づいてバッファメモリ5に記憶された結合データに対して演算を行う演算部6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメモリデバイスの試験を行うメモリデバイス試験装置に関し、特にフェイルメモリとバッファメモリとを備えるメモリデバイス試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DRAM、SRAM等のメモリデバイスは、メモリセルに1つでも欠陥が生じている場合には全体として不良になる。このため、メモリデバイスの試験を行い、不良セルの検出を行う。メモリデバイスには予備のメモリセルが設けられており、不良セルが検出された場合には、信号線の接続を予備のメモリセルに切り替えてメモリデバイスの救済を行う。この救済を行うための演算は一般にリダンダンシ演算と呼ばれる。リダンダンシ演算は専用の演算手段により行われ、その結果に基づいてレーザ手段等により不良のメモリセルから予備のメモリセルに切り替えが行なわれる。
【0003】
リダンダンシ演算を行う従来のメモリデバイス試験装置を図6に示す。このメモリデバイス試験装置は、コンパレータ部101とインターフェイス部102とフェイルメモリ103とメモリ制御部104とバッファメモリ105と演算部106とを備えて概略構成している。
【0004】
コンパレータ部101は図示しないメモリデバイスから出力信号を入力し、自身が保持する基準値と比較することによりパス(正常)またはフェイル(異常)からなる1ビットのパスフェイル信号を生成する。これがメモリデバイスのパスフェイル判定になる。メモリデバイスは複数の入出力ピン(以下、単にぴんとする)を備えており、複数ピンから同時に出力されるパスフェイル信号を1つのフェイルデータとして生成する。ピン数がM(Mは整数)の場合にはフェイルデータはMビットの情報量を有する。以下、M=8として説明する。
【0005】
インターフェイス部102はコンパレータ部101から出力されるフェイルメモリ103に入力するためのインターフェイスになる。フェイルメモリ103はフェイルデータを蓄積する記憶手段である。メモリ制御部104はフェイルメモリ103に所定量のフェイルデータが蓄積されたときに、当該フェイルデータをバッファメモリ105に複写(デッドコピー)する。演算部106は前記のリダンダンシ演算を行うための手段であり、バッファメモリ105に記憶されているフェイルデータを読み込んでリダンダンシ演算を行う。
【0006】
コンパレータ部101は順次フェイルデータを生成しており、フェイルメモリ103にフェイルデータが蓄積されていく。フェイルメモリ103にはアドレスAdd1〜AddNまでN(Nは整数)個のアドレスが付されており、コンパレータ部101から出力されるフェイルデータを先頭アドレスから順番に蓄積していく。
【0007】
所定量(N個)のフェイルデータがフェイルメモリ103に蓄積されたときに、メモリ制御部104によりフェイルメモリ103の内容がバッファメモリ105に複写される。図7に示すように、バッファメモリ105にもアドレスAdd1〜AddNまでのアドレスが付されており、フェイルメモリ103と同じ内容を同じアドレスに記憶する。なお、図7においてP1〜P8はメモリデバイスの各ピンを示している。
【0008】
そして、バッファメモリ105のフェイルデータに対して演算部106によりリダンダンシ演算が行われる。図8はバッファメモリ105のフェイルデータに対してリダンダンシ演算を行っている状態を示している。バッファメモリ105の先頭アドレスAdd1のフェイルデータから順番にN番目のアドレスAddNまでのフェイルデータに対してリダンダンシ演算を行う。このリダンダンシ演算を行うことを走査とする。従って、先頭アドレスからN番目のアドレスまでのフェイルデータに対して走査を行うことで、リダンダンシ演算が完了する。
【0009】
なお、以上のリダンダンシ演算を行うためにフェイルメモリとバッファメモリとを備えた半導体メモリ試験装置が例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−59688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年のメモリデバイスは大容量化の傾向が顕著であり、フェイルデータの情報量も膨大なものになる。フェイルデータの情報量の増大化に伴って、バッファメモリ105も大容量化の傾向にある。演算部106はバッファメモリ105の先頭アドレスから順番に走査を行っており、バッファメモリ105に記憶されている情報量が膨大なために、リダンダンシ演算に大幅な演算時間を要するようになる。
【0012】
一方で、近年のメモリデバイスは高精度に製造されており、それほど多くのフェイルが生じなくなっている。このため、救済対象となるフェイルは大容量のフェイルデータの中でごく一部であり、フェイルデータが存在していないデータを走査することは大幅なタイムロスを生じる。メモリデバイスの試験時間の短縮化は必須の命題であり、このタイムロスにより試験時間に大きな影響を与えるようになる。
【0013】
そこで、本発明は、演算対象となるデータを限定的にすることで、試験時間全体の短縮化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するため、本発明の請求項1のメモリデバイス試験装置は、複数の入出力ピンを有するメモリデバイスのフェイルデータを複数記憶するフェイルメモリとこのフェイルメモリに対応して設けたバッファメモリとを備えるメモリデバイス試験装置であって、各フェイルデータの入出力ピンごとにフェイルが存在するか否かを示すフェイルフラグを生成するフェイルフラグ生成部と、前記フェイルフラグに基づいて前記フェイルデータから前記フェイルが存在しない入出力ピンの部分を削除した削除データを生成するデータ削除部と、複数の削除データを結合して前記フェイルデータのビット数以下とした結合データを生成して前記バッファメモリに記憶させるデータ結合部と、前記フェイルフラグに基づいて前記バッファメモリに記憶された前記結合データに対して演算を行う演算部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
このメモリデバイス試験装置によれば、バッファメモリの1つのアドレスには複数の削除データが記憶されるようになる。削除データはフェイルデータから必要のない情報を削除したデータであり、演算に必要な情報は全て備えているものである。これにより、複数の削除データを結合した結合データに基づいて演算を行うことはでき、しかもバッファメモリの1つのアドレスには複数の削除データが記憶されることから、バッファメモリに記憶される情報量を大幅に低減でき、演算時間の短縮化を図ることができる。演算部ではフェイルフラグに基づいて結合データに対して演算を行っているため、削除した入出力ピンの情報を得ていることから、演算を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、複数の削除データを結合した結合データをバッファメモリに記憶させていることで、演算対象となる情報量を大幅に低減できるようになる。これにより、演算時間を短くできるため、試験時間の短縮化を達成できる。削除データはフェイルのない入出力ピンの情報を削除して生成しているため、フェイルデータから必要な情報は失われない。演算部は結合データの削除データとフェイルフラグとに基づいて正常に演算を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のメモリデバイス試験装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】フェイルデータおよびフェイルフラグを示す図である。
【図3】バッファおよびセレクタを説明する図である。
【図4】削除データおよび結合データを説明する図である。
【図5】フェイルメモリおよびバッファメモリを説明する図である。
【図6】従来のメモリデバイス試験装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】従来のバッファメモリの構成を示す図である。
【図8】従来のフェイルデータを示すである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1はメモリデバイス試験装置の概略構成を示している。このメモリデバイス試験装置は、コンパレータ部1とインターフェイス部2とフェイルメモリ3とメモリ制御部4とバッファメモリ5と演算部6とを備えて概略構成している。コンパレータ部1は図示しないメモリデバイスに接続されており、自身が保持する基準値とメモリデバイスからの出力データとを比較して、良否判定(パスフェイル判定)を行う。パスフェイル判定の結果はパス(正常)またはフェイル(異常)の1ビットで表現されるパスフェイル情報となる。以下においては、パスは「0」で表現し、フェイルは「1」で表現するものとする。
【0019】
メモリデバイスにはM(Mは整数)個の入出力ピン(以下、単にピンとする)が備えられており、コンパレータ部1では各ピンから転送された出力データに対して同時にパスフェイル判定を行い、M個のパスフェイル情報を同時に生成する。M個のパスフェイル情報から構成されるデータをフェイルデータとする。従って、フェイルデータはMビットの情報量を持つ。メモリデバイスからは連続的に出力データが転送されており、コンパレータ部1は順次フェイルデータを生成する。
【0020】
インターフェイス部2はI/F21とフェイルフラグ生成部22とを備えている。I/F21はコンパレータ部1から入力するフェイルデータをフェイルメモリ3に出力するインターフェイスである。フェイルフラグ生成部22はフェイルデータに基づいてピンごとにフェイルが存在しているか否かを示すフェイルフラグを生成する。フェイルが存在する場合には「1」を、存在しない場合には「0」としたフェイルフラグを生成する。フェイルフラグ生成部22には順次フェイルデータが入力され、各フェイルデータのピンごとに論理和をとっている。これにより、全てのフェイルデータについてピンごとに1つでもフェイルが存在しているか否かを認識可能なフェイルフラグを生成している。
【0021】
フェイルメモリ3はインターフェイス部2のI/F21から出力されるフェイルデータを順次蓄積する記憶手段である。フェイルメモリ3にはN(Nは整数)個のフェイルデータが蓄積可能になっており、アドレスAdd1〜AddNまでN個のアドレスが付されている。I/F21から順次出力されるフェイルデータは先頭アドレスから順番に蓄積される。1つのアドレスにはMビットのデータが記憶されるようになっており、従ってフェイルメモリ3はM×Nビットの情報を記憶できる容量を持つ。
【0022】
メモリ制御部4はデータ取込部41とデータ削除部42とバッファ43とセレクタ44とピン数記憶部45とセレクタ制御部46とを備えて概略構成している。データ取込部41は、フェイルメモリ3にN個のフェイルデータが蓄積されたときに全てのフェイルデータを取り出す。取り出した各フェイルデータはデータ削除部42とセレクタ44とに出力する。
【0023】
データ削除部42はデータ取込部41からフェイルデータを入力し、またフェイルフラグ生成部22からフェイルフラグを入力している。データ削除部42はフェイルフラグを参照して、各フェイルデータからフェイルが存在していないピン(フェイルフラグが「1」になっているピン)の部分を削除する。この削除したデータを削除データとする。
【0024】
バッファ43はデータ削除部42が生成した削除データを蓄積するバッファである。このバッファには少なくともN個の削除データを蓄積可能な容量を持たせておく。ただし、削除データはフェイルデータの一部を削除したデータであるため、フェイルメモリ3に比較して少ない容量を有している。セレクタ44はデータ取込部41から出力されるフェイルデータとバッファ43に蓄積されている削除データとのうち何れか一方を選択する。このとき、セレクタ44はデータ取込部41から1つのフェイルデータを選択するが、バッファ43からは複数の削除データを選択する。
【0025】
ピン数記憶部45はメモリデバイスのピン数Mを記憶している。このピン数はユーザ等により予め規定値として設定されている。セレクタ制御部46はピン数記憶部45からメモリデバイスのピン数を入力し、フェイルフラグ生成部22からフェイルフラグを入力する。セレクタ制御部46はフェイルフラグを参照して、フェイス数(フェイルフラグの各ビットのうち「1」となっているピン数)をカウントする。このカウントした値をフェイル数Cとし、メモリデバイスのピン数Mと比較する。そして、MをCで除算する。この除算した値を除算値Dとする。
【0026】
セレクタ制御部46は除算値Dが2以上であるか否かを判定し、通常モードと削除モードとの何れであるかを示す選択信号をセレクタ44に出力する。除算値Dが2未満である場合には通常モードを選択し、2以上の場合には削除モードを選択する。通常モードとはデータ取込部41から1つのフェイルデータをそのまま選択してバッファメモリ5に出力するモードである。削除モードとはバッファ43から複数の削除データを選択して、選択した削除データを結合してバッファメモリ5に出力するモードである。削除モードを選択した場合には、セレクタ制御部46は除算値Dの小数点以下を切り捨てた値を最大整数値Vとし、このVの値をセレクタ44に出力する。なお、フェイルフラグのビット数がメモリデバイスのピン数Mとなっているため、ピン数記憶部45を設けずに、フェイルフラグのビット数からMを認識するようにしてもよい。
【0027】
セレクタ44は、削除モードの場合に複数の削除データを選択する。選択される削除データの個数は前記の最大整数値Vになる。バッファ43には先頭から順番にN個の削除データが蓄積され、このうちV個分の削除データを取り出して、先頭から順番に結合して1つの結合データを生成する。この結合データのビット数はフェイルデータのビット数以下となるようにする。削除データはN個であるが、結合データはV個の削除データを結合したものになる。このため、結合データの個数はN/Vになる。以上のバッファ43とセレクタ44とにより結合データを生成するデータ結合部47が構成される。
【0028】
バッファメモリ5はセレクタ44からフェイルデータと結合データとのうち何れか一方を入力して蓄積を行う。バッファメモリ5はフェイルメモリ3と同じくAdd1〜AddNまでのN個のアドレスを有しており、各アドレスにはフェイルデータまたは結合データが記憶されるようになっている。通常モードと削除モードとの何れのモードが選択されるかはフェイルデータによって変わるため、予めバッファメモリ5にはM×Nビットの情報量を持たせておく
【0029】
通常モードが選択された場合には、セレクタ44はフェイルデータを1つずつ選択する。このため、バッファメモリ5にはN個のフェイルデータがアドレス順に記憶される。一方、削除モードが選択された場合にはN/V個の結合データがバッファメモリ5に記憶される。従って、バッファメモリ5には通常モードの場合にはM×Nビットの情報量が記憶され、削除モードの場合にはM×(N/V)ビットの情報量が記憶される。
【0030】
演算部6はバッファメモリ5に記憶されているデータに対して先頭アドレスから順番にリダンダンシ演算を行う。アドレス順(Add1からAddNまで)にリダンダンシ演算を行うことを走査とする。また、演算部6はフェイルフラグ生成部22からフェイルフラグを入力しており、セレクタ制御部46から選択信号および最大整数値Vを入力している。選択信号が通常モードを示している場合には、演算部6はバッファメモリ5の全て(Add1〜AddNまで)のフェイルデータに対してリダンダンシ演算を行う。選択信号が削除モードを示している場合には、演算部6はAdd1〜Add(N/V)までのアドレスのフェイルデータに対してリダンダンシ演算を行う。また、フェイルフラグを参照して演算を行う対象となるピンを特定して演算を行う。なお、演算部6が行う演算としてはリダンダンシ演算以外にも任意の演算を適用することができる。
【0031】
以上の構成における動作について説明する。なお、以下においては、説明のためメモリデバイスのピン数MはM=8として説明する。
【0032】
コンパレータ部1は図示しないメモリデバイスからの出力データのパスフェイル判定を行い、1ビットのパスフェイル情報を生成する。そして、ピン数は8であるため、8ビットのパスフェイル情報からなるフェイルデータを生成する。フェイルデータはI/F21を介してフェイルメモリ3に順次蓄積されていくと共に、フェイルフラグ生成部22に出力される。
【0033】
フェイルフラグ生成部22では、図2に示すようなフェイルフラグを生成する。図2はフェイルデータおよびフェイルフラグの一例を示しており、フェイルフラグ生成部22は順次入力するフェイルデータについてピンごとに論理和を演算している。図2の場合は、P3、P4、P5、P7にはフェイルがないため、論理和を演算しても結果は「0」になる(図2においてフェイルフラグが「1」となる部分に枠表示をしている)。一方、P1、P2、P6、P8には少なくとも1つのフェイルデータにフェイルが存在しているため、論理和を演算すると結果は「1」になる。以上の論理和の演算をアドレス順に行っていくことで、図2に示す8ビットのフェイルフラグが生成される。この8ビットのうち1ビット目〜8ビット目までがピンP1〜P8にそれぞれ対応している。
【0034】
データ削除部42ではフェイルデータからフェイルが存在していないピンのパスフェイル情報を削除する。このために、データ削除部42はフェイルフラグ生成部22からフェイルフラグを読み込む。フェイルフラグは3、4、5、7ビット目が「0」になっており、フェイルが存在していないピンがP3、P4、P5、P7であることを認識できる。そして、データ削除部42は全て(N個)のフェイルデータから前記4つのピンのパスフェイル情報、つまり3、4、5、7ビット目の部分を削除して削除データを生成する。これにより、削除データはフェイルデータのうち、ピンP1、P2、P6、P8、つまり1、2、6、8ビット目の情報だけを有する4ビットの情報になる。
【0035】
生成された削除データはアドレス順にバッファ43に蓄積される。削除データはフェイルデータから4つのピンの情報が削除されており、半分の情報量になっている。バッファ43に蓄積される削除データを図3に示している。この図に示すように、バッファ43にはAdd1〜AddNまでのN個の削除データを蓄積可能になっており、各削除データはP1、P2、P6、P8の合計4つのパスフェイル情報が含まれている。ただし、各削除データは4ビットの情報になっている。
【0036】
ここで、セレクタ制御部46は、ピン数記憶部45に記憶されているピン数Mを取得する。また、8ビットのフェイルデータを参照して「1」となっているビット数をカウントすることで、フェイル数Cを求めている。そして、ピン数Mをフェイル数Cで除算して除算値Dを得て、小数点以下を切り捨てて最大整数値Vを得る。ここでは、M=8、C=4になるため、除算値Dおよび最大整数値VはV=2となる。セレクタ制御部46はVが2以上であることを認識するため、セレクタ44に削除モードを示す選択信号を出力し、同時に最大整数値V(V=2)をセレクタ44に出力する。
【0037】
セレクタ44は前記の選択信号および最大整数値Vを入力することにより、削除モードであることを認識する。このため、バッファ43から複数の削除データを選択する。最大整数値V=2であることから、バッファ43は先頭から順番に2個分のデータを選択して、これらの削除データを結合する。例えば、最初に選択されたAdd1の削除データに次に選択されたAdd2の削除データを結合する。これにより、図4に示す結合データが生成される。この結合データは4ビットの削除データが2つ結合したものであり、合計8ビットになることから、フェイルデータの情報量と等しい。以降、順次前後2つのアドレスの削除データを選択して結合を行い、結合データを生成していく。なお、図3において、選択された削除データを「*」で示している。
【0038】
セレクタ44により生成された結合データはバッファメモリ5に出力される。バッファメモリ5は順次アドレス順に結合データを蓄積していく。図5はフェイルメモリ3とバッファメモリ5とを示している。バッファメモリ5は結合データだけではなくフェイルデータの蓄積も可能にするために、1アドレスあたり8ビットの情報の記憶が可能になっている。結合データも8ビットの情報であるため、記憶は可能である。
【0039】
バッファメモリ5の1つのアドレスには1つの結合データ、つまり2つの削除データが記憶される。図5において、バッファメモリ5の1つのアドレスの8ビットを1ビット目から4ビット目までの下位ビット群と5ビット目から8ビット目までの上位ビット群とに分けている。下位ビット群はアドレスAdd2の削減データであり、上位ビット群はアドレスAdd1の削減データである。これらを結合した結合データがバッファメモリ5の1つのアドレスAdd1を占有している。このとき、削除データの個数はN個であるが、結合データは2つの削除データを結合したものであることから、結合データの個数はN/2個になる。つまり、アドレスAdd(N/2)までが使用され、それ以降のアドレスは使用されない。このため、実質的にバッファメモリ5に記憶されるデータ量は半分になる。
【0040】
演算部6はバッファメモリ5のアドレスAdd1からAdd(N/2)の内容を読み出してリダンダンシ演算を行う。ただし、バッファメモリ5にはフェイルデータではなく結合データが記憶されており、演算対象となるピンの特定ができない。リダンダンシ演算はメモリデバイスのピンが特定されなければ、不良が生じているメモリセルの特定を行うことができないため、演算部6はフェイルフラグ生成部22からフェイルフラグを入力して、メモリデバイスのピンの特定を行う。
【0041】
演算部6はセレクタ制御部46から削除モードを示す選択信号を入力しているため、バッファメモリ5に記憶されているデータが結合データであることを認識する。そして、フェイルフラグを読み込んでフェイルが存在するビットを確認する。これは、フェイルフラグの「1」となっているビットを認識することにより行なわれる。ここでは、1、2、6、8ビット目が「1」になっている。これにより、これらのピンに対してリダンダンシ演算を行う必要があることを認識する。換言すれば、3、4、5、7ビット目が「0」になっているため、これらのビットは演算を行う必要がないことを認識する。
【0042】
つまり、フェイルデータから一部の情報を削除した削除データを結合した結合データであっても、フェイルフラグを参照することで、救済を行う対象となるピンを特定できるため、演算部6はリダンダンシ演算を行うことが可能になる。
【0043】
ところで、バッファメモリ5にはフェイルメモリも記憶可能になっているため、フェイルメモリ3と同じ容量(M×Nビット)を持たせている。しかし、削除モードの場合に、バッファメモリ5にはAdd1〜Add(N/2)までに結合データが記憶される。このため、全てのアドレスに対してリダンダンシ演算の走査を行う必要はない。このとき、演算部6はセレクタ制御部46から最大整数値V=2の情報を得ているため、先頭から半分(N/2)までのアドレスを走査すればよいことを認識できる。これにより、バッファメモリ5の半分だけを走査するようになるため、演算時間を実質的に半分にすることができる。
【0044】
以上説明したように、本発明は、各フェイルデータのピンごとにフェイルが存在しているか否かを示すフェイルフラグを生成し、フェイルが存在していないピンのパスフェイル情報を削除している。これにより、バッファメモリ5に記憶されるデータ量を非常に少ないものとすることができ、演算量を低減できるようになる。これにより、試験時間の短縮化を達成できるようになる。なお、削除されたフェイルデータの情報はフェイルが存在していない情報であり、削除したとしても格別の問題はない。
【0045】
以上において、最大整数値V=2として説明したが、Vは3以上であってもよい。前述したように、削除モードが選択された場合には、バッファメモリ5に記憶される情報量はM×(N/V)ビットになり、Vの値が大きくなるほど演算量が少なくなり、より高い試験時間の短縮効果を図れる。例えば、メモリデバイスがM=8、このうちフェイルが存在するピン数、つまりフェイルフラグのフェイル数CがC=2のとき、除算値DはD=M/C=4になり、最大整数値VもV=4になる。これにより、実質的に演算時間を1/4に低減することができるようになる。
【0046】
また、除算値Dが整数の場合について説明したが、Dが小数を含むものであってもよい。例えば、ピン数M=8、フェイル数C=3の場合には、D=2.66・・・になり、小数を含むようになる。この場合には、最大整数値VはDの小数点以下を切り捨てた値になり、V=2になる。つまり、結合データは2つの削除データから構成される。フェイル数CはC=3であるため、削除データも3ビットになり、結合データは3ビットの削除データが2つにより構成される。このため、結合データは6ビットになる。一方で、フェイルデータおよびバッファメモリ5は8ビット構成になっているため、ビット数が異なるようになる。この場合には、上位2ビット(7ビット目および8ビット目)或いは下位2ビット(1ビット目および2ビット目)にダミービットを挿入することにより、ビット数の整合性をとるようにする。
【0047】
勿論、フェイル数Cが3であっても、ピン数Mが9であるような場合には、D=3になり、演算時間を約1/3にすることができるようになる。ただし、何れの場合であっても、Dは2以上でなくてはならない。これは、メモリのアクセスは通常1つのアドレスの全てのビットに対して行われるためであり、このうちの一部のビットに対してのみアクセスすることができないためである。Dが2未満のときにはバッファメモリ5の1アドレスに複数の削除データを記憶させることができないため、演算時間の短縮効果は得られない。
【0048】
一方で、バッファメモリ5のN個のアドレスのうち一部のアドレスにアクセスすることは可能であり、Dが2以上の場合には、アクセスするアドレス数が半分以下になる。このため、演算時間の大幅な短縮効果を得られるようになる。
【符号の説明】
【0049】
3 フェイルメモリ 4 メモリ制御部
5 バッファメモリ 6 演算部
22 フェイルフラグ生成部 41 データ取込部
42 データ削除部 43 バッファ
44 セレクタ 45 ピン数記憶部
46 セレクタ制御部 47 データ結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入出力ピンを有するメモリデバイスのフェイルデータを複数記憶するフェイルメモリとこのフェイルメモリに対応して設けたバッファメモリとを備えるメモリデバイス試験装置であって、
各フェイルデータの入出力ピンごとにフェイルが存在するか否かを示すフェイルフラグを生成するフェイルフラグ生成部と、
前記フェイルフラグに基づいて前記フェイルデータから前記フェイルが存在しない入出力ピンの部分を削除した削除データを生成するデータ削除部と、
複数の削除データを結合して前記フェイルデータのビット数以下とした結合データを生成して前記バッファメモリに記憶させるデータ結合部と、
前記フェイルフラグに基づいて前記バッファメモリに記憶された前記結合データに対して演算を行う演算部と、
を備えたことを特徴とするメモリデバイス試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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