説明

メモリ性液晶表示装置

【課題】 黒/白表示の反転を防止するすることができるメモリ性液晶を用いた半透過反射型の液晶表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 第1及び第2の基板間(11a、11b)に挟持され、第1の安定状態と第2の安定状態とを有するメモリ性液晶層(10)と、第1の基板上に配置され、それぞれ直交する第1透過軸と第1反射軸とを有し、及び第1透過軸に平行な振動面を有する直線偏光を透過し且つ第1反射軸に平行な振動面を有する直線偏光を反射する特性を有する反射型偏光板(16)と、第2の基板上に配置され、第2透過軸を有し、及び第2透過軸に平行な振動面を有する直線偏光を透過する偏光板(15)、反射型偏光板側に設けられた補助光源(60)と、補助光源の点灯に同期してメモリ性液晶の安定状態を一方から他方へ転移させるように制御する反転制御部(21)とを有するメモリ性液晶表示装置(100)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリ性液晶を用いた液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メモリ性液晶は、複数の光学的な状態を有し、電圧を印加しなくても特定の状態を保持し続ける特性(メモリ特性)を有する。したがって、メモリ性液晶を液晶表示装置に用いた場合、電圧を印加しなくても所定の表示を保持し続けるように制御することが可能である。このような特性を利用し、強誘電性液晶等のメモリ性液晶を用いた表示パネルにおいて、表示を変更する必要がある部分にのみ走査電極の駆動を行い、表示を変更する必要が無い部分については走査電極の駆動を行わないように制御することが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、透過する光を90度旋光するツイストネマティック液晶(TN液晶)を挟持する基盤の一方に偏光板を配置し、他方に反射軸と透過軸とを備える反射型偏光板を配置し、反射型偏光板の外側に半透過吸収層を配置し、半透過吸収層の外側に補助光源を配置して、反射表示と透過表示を行う半透過反射型液晶表示装置が知られている(例えば、特許文献2)。
【0004】
半透過反射型液晶表示装置では、補助光源をOFFした反射表示時に、TN液晶へHレベルの電圧を印加したON状態(TN液晶が透過状態)で黒表示となるように偏光板を配置すると、補助光源をONした透過表示時には、TN液晶へHレベルの電圧を印加したON状態(TN液晶が透過状態)で白表示となってしまう。これは、補助光源をOFFしてTN液晶を透過状態とすると、OFFされた補助光源の表面色が外部から観察されて黒表示となり、補助光源をONしてTN液晶を透過状態とすると、補助光源からの光が外部から観察されて白表示となるからである。即ち、TN液晶へ同じレベルの電圧を印加していても、補助光源のON/OFFによって、黒/白表示が反転してしまうという問題がある。そこで、補助光源のON/OFFに応じて、TN液晶に印加する電圧を(例えば、HレベルからLレベルに)切換えて、黒/白表示の反転を防止していた。
【0005】
【特許文献1】特開平2−131286号公報(第11、12頁、第12図)
【特許文献2】特許第3485541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、メモリ性液晶を用いた半透過反射型の液晶表示装置における、黒/白表示の反転を防止に関する提案はなされていなかった。
【0007】
そこで、本発明は、黒/白表示の反転を防止するすることができるメモリ性液晶を用いた半透過反射型の液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るメモリ性液晶表示装置は、第1及び第2の基板間に挟持され第1の安定状態と第2の安定状態とを有するメモリ性液晶層と、第1の基板上に配置され、それぞれ直交する第1透過軸と第1反射軸とを有し、及び第1透過軸に平行な振動面を有する直線偏光を透過し且つ第1反射軸に平行な振動面を有する直線偏光を反射する特性を有する反射型偏光板と、第2の基板上に配置され、第2透過軸を有し、及び第2透過軸に平行な振動面を有する直線偏光を透過する偏光板と、反射型偏光板側に設けられた補助光源と、補助光源の点灯に同期してメモリ性液晶の安定状態を一方から他方へ転移させるように制御する反転制御部とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るメモリ性液晶表示装置では、反射型偏光板と補助光源との間に配置され、一部領域の光を吸収する光吸収層をさらに有することが好ましい。これにより、補助光源がOFFし、メモリ性液晶が透過状態となった場合にメモリ性液晶表示装置上で観測される補助光源の表面色をより黒く表示することが可能となった。
【0010】
また、本発明に係るメモリ性液晶表示装置では、反射型偏光板と補助光源との間に配置され、可視光領域の一部の光を吸収する光吸収層をさらに有することが好ましい。これにより、補助光源がOFFし、メモリ性液晶が透過状態となった場合にメモリ性液晶表示装置上で観測される補助光源の表面色をより黒く表示することが可能となった。
【0011】
さらに、本発明に係るメモリ性液晶表示装置では、補助光源の表面には、可視光領域の一部の光を反射する反射層が備えられていることが好ましい。これにより、補助光源がOFFし、メモリ性液晶が透過状態となった場合にメモリ性液晶表示装置上で観測される補助光源の表面色を制御することが可能となった。
【0012】
さらに、本発明に係るメモリ性液晶表示装置では、第1及び第2の基板の一方の基板上に配置され、メモリ性液晶層に電圧を印加するための走査電極と、第1及び第2の基板の他方の基板上に配置され、メモリ性液晶層に電圧を印加するための信号電極とをさらに有し、反転制御部は、走査電極又は信号電極に印加される駆動波形の極性を反転するように制御することが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係るメモリ性液晶表示装置では、メモリ性液晶表示装置に電力を供給するための電源部を有し、反転制御部は、電源部で発生した電圧の極性を反転させて、メモリ性液晶の安定状態を一方から他方へ転移させるように制御することが好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係るメモリ性液晶表示装置では、演算回路を有し、反転制御部は、演算回路によって通常表示データを反転表示データに変換することによって、メモリ性液晶の安定状態を一方から他方へ転移させるように制御することが好ましい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るメモリ性液晶表示装置は、第1及び第2の基板間に挟持され第1の安定状態と第2の安定状態とを有するメモリ性液晶層と、第1の基板上に配置され、それぞれ直交する第1透過軸と第1反射軸とを有し、及び第1透過軸に平行な振動面を有する直線偏光を透過し且つ第1反射軸に平行な振動面を有する直線偏光を反射する特性を有する反射型偏光板と、第2の基板上に配置され、第2透過軸を有し、及び第2透過軸に平行な振動面を有する直線偏光を透過する偏光板と、反射型偏光板側に設けられた補助光源と、補助光源の点灯に同期してメモリ性液晶の安定状態を一方から他方へ転移させるように制御する第1の反転制御部と、メモリ性液晶の安定状態を一方から他方へ転移させるように制御する第2の反転制御部とを有し、第2の反転制御部が動作している期間は第1の反転制御部の動作を停止させることを特徴とするを特徴とする。メモリ性液晶表示装置の所謂焼き付け防止のために所定のタイミングで反転表示を行う第2の反転制御部が動作している場合に、補助光源がONされた場合には、第1の反転制御部は、極性反転を行わずに、そのままの状態に維持するように制御したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、メモリ性液晶を用いた半透過反射型の液晶表示装置において、補助光源の点灯に伴う、黒/白表示の反転を適切に防止することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面を参照して、本発明に係る液晶表示装置100について説明する。
【0018】
最初に、強誘電性液晶を例にして、メモリ性液晶について説明する。メモリ性液晶とは、複数の光学的な状態を有し、電圧を印加しなくても特定の状態を保持し続ける特性を有する液晶を言い、例えば強誘電性液晶やコレステリック液晶が該当する。
【0019】
強誘電性液晶分子は、電界等の外部からの影響に応じ、円錐(液晶コーン)の側面に沿って安定した2ヶ所の位置の何れかの位置を取る。強誘電性液晶を一対の基板間に挟持し、液晶表示装置として用いる際には、強誘電性液晶に印加する電圧の極性に応じて、強誘電性液晶分子が前述した安定した2ヶ所のいずれか一方に位置するように制御する。2ヶ所の安定した位置の一方を第1の強誘電状態、他方を第2の強誘電状態と言う。
【0020】
図1に、強誘電性液晶10を用いた液晶パネル20の構成例を示す。
図1に示すように、偏光板15(透過軸の方向をa)及び反射型偏光板16(透過軸の方向をb)を配置した。
【0021】
また、第2の強誘電状態における強誘電性液晶10の分子の長軸方向を透過軸a及び透過軸bと一致させるように配置した。さらに、第1の強誘電状態の場合の液晶分子の長軸方向を、図1に示されるように、液晶コーンに沿った他の位置とした。
【0022】
反射型偏光板16は、ポリエステル樹脂等の多層フィルムから構成され、それぞれ直交する透過軸bと反射軸を有し、透過軸に平行な振動面を有する直線偏光を透過し且つ反射軸に平行な振動面を有する直線偏光を反射する機能を有する。
【0023】
図2に、本発明に係る液晶パネル20の断面図と補助光源60とを示す。
【0024】
図2に示されるように、液晶パネル20は、第1の透明ガラス基板11a、第2の透明ガラス基板11b、第1の透明ガラス基板11a上に設けられた走査電極13a、第2の透明ガラス基板11b上に設けられた信号電極13b、走査電極13a上に塗布され且つラビング処理された高分子配向膜14a、信号電極13b上に塗布され且つラビング処理された高分子配向膜14b、シール部材12、第1及び第2の透明ガラス基板11a及び11bの間に挟持されシール部材12によって封入された強誘電性液晶10、第1の透明ガラス基板11aの外側に設けられた反射型偏光板16、及び第2の透明ガラス基板11bの外側に設けられた偏光板15等から構成した。
【0025】
液晶パネル20の反射型偏光板16の下部には、低消費電力と薄さを考慮して、有機ELセルを発光素子として用いたバックライトを補助光源60として配置した。なお、他の発光素子を用いた補助光源を用いることもできる。
【0026】
図2では、便宜上5本の走査電極13aを示したが、本実施形態では、透明導電膜パターンにより構成した40本の走査電極13aを液晶パネル20の全体に渡って配置した。また。図2には明記されていないが、本実施形態では、透明導電膜パターンにより構成した50本の信号電極13bを、走査電極13aと直行するように液晶パネル20の全体に渡って配置した。走査電極13aと信号電極13bが交差する各ポイントが、液晶パネル20の各画素(2000画素)となるように構成した。
【0027】
強誘電性液晶10としては、クラリアント社製の「Felix 501」を用い、第1及び第2の透明ガラス基板11a及び11bの間に約1.7μmの厚さで挟持した。
【0028】
図3に、液晶パネル20における強誘電性液晶10のスイッチング、即ち一方の強誘電状態から他方の強誘電状態への極性転移の一例を示す。
【0029】
図3(a)は補助光源60がOFFしている状態を示し、図3(b)は補助光源60がONしている状態を示している。また、それぞれのグラフの横軸は液晶パネル20の走査電極13aを基準として、走査電極13aと信号電極13bとの間に印加される印加電圧(V)(即ち、強誘電液晶10に印加される印加電圧)を示し、縦軸は液晶パネル20の光透過率を示している。
【0030】
補助光源60をOFFした状態(図3(a)参照)では、印加電圧の極性を変化させて、強誘電性液晶10を第1の強誘電状態に転移させた場合(強誘電性液晶10の分子の長軸方向が、偏光板15の透過軸a及び反射型偏光板16の透過軸bの何れとも一致しない場合)、液晶分子の長軸方向が透過軸aに対してある角度を持って傾くため、液晶パネル20に入射した偏光板15の透過軸aと平行な振動面を有する光は、強誘電性液晶10の複屈折性によって、反射型偏光板16の透過軸bとほぼ垂直な振動面を有するようになり、反射型偏光板16によって反射される(反射状態)。したがって、補助光源60をOFFした場合、第1の強誘電状態では、液晶パネル20に入射した光が、反射型偏光板16で反射されて、液晶パネル20上では白表示(光透過率大)となる。
【0031】
また、補助光源60をOFFした状態では、印加電圧の極性を変化させて、強誘電性液晶10を第2の強誘電状態に転移させた場合、強誘電性液晶10の分子の長軸方向が偏光板15の透過軸a及び反射型偏光板16の透過軸bと平行となるため、液晶パネル20に入射した透過軸aと平行な振動面を有する光は、液晶パネル20を透過して(透過状態)、補助光源60の表面から反射される。補助光源60の表面は通常暗い青色等であるので、したがって、補助光源60をOFFした場合、第2の強誘電状態では、液晶パネル20に入射した光が、補助光源60の表面で反射されて、液晶パネル20上では黒表示(光透過率小)となる。
【0032】
このように、補助光源60をOFFした状態(図3(a)参照)では、強誘電性液晶10に印加される電圧を(光透過率が増加し始める電圧値をV1を越えて)増加させて、光透過率の増加が飽和する電圧値をV2(正の閾値)以上とすると、その後電圧を印加せずとも(即ち、0V印加)強誘電液晶は第1の強誘電性状態を保持し、白表示をし続けることとなる。同様に、強誘電性液晶10に印加される電圧を(光透過率が減少し始める電圧値をV3を越えて)減少させて、光透過率の減少が飽和する電圧値をV4(負の閾値)以下とすると、その後電圧を印加せずとも(即ち、0V印加)強誘電液晶は第2の強誘電性状態を保持し、黒表示をし続けることとなる。なお、一方の強誘電状態から他方の強誘電状態に転移することを極性反転と言う。
【0033】
補助光源60をONした状態(図3(b)参照)では、印加電圧の極性を変化させて、強誘電性液晶10を第1の強誘電状態に転移させた場合(強誘電性液晶10の分子の長軸方向が、偏光板15の透過軸a及び反射型偏光板16の透過軸bの何れとも一致しない場合)、液晶分子の長軸方向が透過軸aに対してある角度を持って傾くため、補助光源60から液晶パネル20に入射した反射型偏光板16の透過軸bと平行な振動面を有する光は、強誘電性液晶10の複屈折性によって、偏光板15の透過軸aとほぼ垂直な振動面を有するようになり、偏光板15によって吸収される。したがって、補助光源60をONした場合、第1の強誘電状態では、補助光源60からの光は、偏光板15で吸収されて、液晶パネル20上では黒表示(光透過率小)となる。
【0034】
また、補助光源60をONした状態では、印加電圧の極性を変化させて、強誘電性液晶10を第2の強誘電状態に転移させた場合、強誘電性液晶10の分子の長軸方向が偏光板15の透過軸a及び反射型偏光板16の透過軸bと平行となるため、補助光源60から液晶パネル20に入射した透過軸bと平行な振動面を有する光は、液晶パネル20を透過する(透過状態)。したがって、補助光源60をONした場合、第2の強誘電状態では、補助光源60から液晶パネル20に入射した光が、液晶パネル20上で観測されて、液晶パネル20上では白表示(光透過率大)となる。
【0035】
このように、補助光源60をONした状態(図3(b)参照)では、強誘電性液晶10に印加される電圧を(光透過率が増加し始める電圧値をV1を越えて)増加させて、光透過率の増加が飽和する電圧値をV2(正の閾値)以上とすると、その後電圧を印加せずとも(即ち、0V印加)強誘電液晶は第1の強誘電性状態を保持し、黒表示をし続けることとなる。同様に、強誘電性液晶10に印加される電圧を(光透過率が減少し始める電圧値をV3を越えて)減少させて、光透過率の減少が飽和する電圧値をV4(負の閾値)以下とすると、その後電圧を印加せずとも(即ち、0V印加)強誘電液晶は第2の強誘電性状態を保持し、白表示をし続けることとなる。
【0036】
このように、強誘電性液晶を用いた液晶パネル20では、補助光源60をON/OFFすることによって、強誘電性液晶10が同じ強誘電状態であっても、黒/白が反転されてしまう。そこで、後述するように、本実施形態では、補助光源60のONとOFFとの切換えに応じて、強誘電性液晶10の強誘電状態を転移させるように制御して、液晶パネル20の黒/白表示が変化しないように制御を行う。
【0037】
図4に、本実施形態における液晶表示装置100の概略ブロック構成図を示す。液晶表示装置100は、液晶パネル20、制御部21、駆動電圧波形制御回路22、各走査電極13aに電圧波形を印加するための走査駆動電圧波形発生回路23、各信号電極13bに電圧波形を印加するための信号駆動電圧波形発生回路24、2次電池及び光発電素子26(太陽電池等)を有する電源部25、表示データ記憶部27、RAM30、ROM31、受信アンテナ50及び電波時計部51等を有するように構成した。また、液晶表示装置100は、液晶パネル20の周囲の照度を検出するための照度センサ41、液晶パネル20水深を検出するための水深センサ42、電源部25の充電量を検出するための充電量検出センサ43、電源部25の光発電素子26の発電量を検出するための発電量検出センサ44、及び電波時計部51が時刻情報を受信中か否かを検出するための受信状態検出センサ45を含むように構成した。さらに、液晶表示装置100は、液晶パネルの反射型偏光板16側に配置された補助光源60、補助光源のON/OFFを制御するための補助光源制御回路61、ユーザが補助光源のON/OFFを設定するための補助光源スイッチ62を有するように構成した。
【0038】
制御部21は、RAM30又はROM31に予め記憶されたプログラムに従い、電波時計部51から受信した時刻情報等を用いて表示データを作成し、表示データ記憶部27に記憶し、さらに時刻情報等が液晶パネル20に表示されるように、駆動電圧波形制御回路22に制御信号を出力するように構成した。また、電波時計部51は、所定時間(例えば1日2回)に受信アンテナ50を介して時刻情報を取得し、時刻合わせを自動的に行うように構成した。さらに、図4には明記されないが、液晶表示装置100の各構成は電源部25から電力供給を受け、制御部21は、充電量検出センサ43によって電源部25の充電量を常に把握できるように、また発電量検出センサ44によって光発電素子26の発電量を常に把握できるように構成した。さらに、制御部21は、液晶パネル20の近傍に配置された照度センサ41からの出力によって、液晶パネル20の周囲が明状態(昼間又は照明に照らされている状態)に置かれているか又は暗状態(夜に照明の無い場所等)に置かれているかを判断できるように構成した。さらに、制御部21は、液晶パネル20の近傍に設けられた水深センサ42からの出力によって、液晶パネル20が、水深何メートルに存在しているのかを判断することができるように構成した。
【0039】
また、ユーザが、液晶表示装置100の周囲が暗い場合等に、補助光源スイッチ62をONすると、制御部21は、補助光源61を制御して補助光源60をONさせるように制御を行うことができるように構成した。
【0040】
図5に、液晶パネル20の各画素の駆動電圧波形の一例等を示す。図5(a)は1本の走査電極13aに印加される走査電圧波形の一例を示し、図5(b)は1本の信号電極13bに印加される信号電圧波形の一例を示し、図5(c)は(a)及び(b)の合成電圧波形を示し、図5(d)は合成電圧波形(c)が印加された画素の補助光源60がOFFした時の光透過率の一例を示す。
【0041】
図5には2フレーム分の駆動電圧波形が示されており、図中「ON」は白表示、「OFF」は黒表示を示している。ここでは、1回の表示データに基づく表示を実行するために1つの走査期間を利用している。1フレームはリセット期間(Rs)及び走査期間から成り、1走査期間は選択期間(Se)及び非選択期間(NSe)から成る。
【0042】
リセット期間(Rs)において、強誘電性液晶10は、直前の表示状態に拘らず、前半は白表示(透過状態)となる第1の強誘電状態に、後半は黒表示(非透過状態)となる第2の強誘電状態に、強制的にリセットされる。リセット期間(Rs)において、走査電圧波形(a)は前半では+20Vが、後半では−20Vが印加されている。また、信号電圧波形(b)は所定間隔で+5Vと−5Vの電圧が繰り返し印加されることとした。この結果、強誘電性液晶10の画素には、合成電圧波形(c)に応じた電圧、即ちリセット期間(Rs)の前半に正の閾値V2(図2参照)以上の電圧が、後半に負の閾値V4(図2参照)以下の電圧が印加されて、それぞれの強誘電状態にリセットされることとなる。リセット期間を設けることによって、強誘電性液晶を用いた液晶パネルにおいて、良好な表示を持続することが可能となる。
【0043】
図6に、本実施形態における液晶パネル20の表示例を示す。図6(a)は、補助光源60がONで背景部分の画素の表示データをON(白表示)とした場合、又は補助光源OFFで背景部分の画素データをON(白表示)とした場合に、時刻表示を行っている例を示している。図中601側が走査電極13a側とし、602が信号電極13b側とした。
【0044】
図6(b)は、補助光源60がOFFで背景部分の表示データがOFF(黒表示)の場合、補助光源60がONで背景部分の表示データがOFF(黒(グレー)表示)の場合、又は液晶パネル20の焼き付け防止のためにネガポジ反転した表示、即ち、液晶パネル20の全ての画素の表示状態を図6(a)の状態から反転した表示を行っている場合をの例を示している。
【0045】
図7に、制御部21が、液晶パネル20を液晶パネル20の焼き付け防止のために反転表示させるための制御フローの一例を示す。強誘電性液晶10を所定の表示状態のまま放置しておくと、その後表示状態を書き換ようとした時に、前の表示状態が消えずに残ってしまうという焼きつき現象が発生してしまう。そこで、図7のフローに従って、液晶パネル20を所定のタイミングで反転表示(ネガポジ反転表示)を行い、焼き付け現象を適切に防止するように制御した。
最初に、制御部21は、照度センサ41からの出力によって、液晶パネル20が、暗状態にあるか否かを判断する(ステップ701)。液晶パネル20が、暗状態にある場合、液晶表示装置100が頻繁に利用されていない状態であると判断し、その期間に後述する反転表示動作を行うように構成した。
【0046】
ステップ701で暗状態であると判断された場合、次に、制御部21は、受信状態検出センサ45の出力に基づいて、電波時計部51が時刻情報を受信中か否かの判断を行う(ステップ702)。電波時計部51が時刻情報を受信している最中は電力を消費しており、反転表示動作によってさらに電力を消費することから、両者を同時期に行わないように構成した。さらに、駆動電圧を印加すると受信時にノイズが発生するため、受信状態中には反転表示を行わないことが好ましい。
【0047】
ステップ702で、さらに時刻情報の受信中では無いと判断された場合には、次に、制御部21は、充電量検出デンサ43の出力に基づいて、電源部25の充電量が十分か否か(例えば、2次電池の出力電圧が1.27V以上あるか否か)の判断を行う(ステップ703)。反転表示動作は、電力を消費することから、液晶表示装置100が暗状態にあり且つ充電量が十分ある場合にのみ、反転表示動作を行うように構成した。
【0048】
ここで制御部21は、通常の表示を行うための通常表示データとともに、ネガポジ反転表示を行うためのネガポジ反転表示データをあらかじめ表示データ記憶部27に作成して記憶させておき、通常表示データからネガポジ反転表示データに切り換えるようにしてネガポジ反転表示を行う。また、表示データ記憶部27を配置する代わりに、制御部21に演算回路を設け、RAM30又はROM30で作成された表示データを、この演算回路によって反転表示データに変換して出力するようにしても構わない。
【0049】
次に、制御部21は、ネガポジ反転表示(図6(b)参照)を1時間継続させ(ステップ704)、その後通常表示(図6(a)参照)を1時間継続させ(ステップ705)、さらにネガポジ反転表示を1時間継続させ(ステップ706)、その後さらに通常表示に復帰させる(ステップ707)という反転表示動作が行われるように制御する。このように、ネガポジ反転表示と通常表示を所定時間毎に繰り返すという反転表示動作を行うことによって、強誘電性液晶10の焼き付け現象を防止することができた。
【0050】
図7のフローにおいて、制御部21は、太陽電池等の光発電素子26の発電量を検出する発電量検出センサ44からの出力を利用して、発電量が規定位以下となった場合に、反転表示するように制御しても良い。光発電素子26の発電量が低下するということは光発電素子26に光が当らないということであって、発電量検出センサ44は、照度センサ41と同様に機能するからである。
【0051】
図8に、制御部21が、補助光源60のON/OFFに応じて、液晶パネル20の強誘電性液晶10の極性反転を行うための制御フローの一例を示す。
最初に、制御部21は、補助光源スイッチ62がONされたか否かの判断を行う(ステップ801)。補助光源スイッチ62がONされた場合には、制御部21は、次に、液晶パネル20が焼き付け防止のための反転表示(図7のフロー参照)を行っているか否かの判断を行う(ステップ802)。
【0052】
焼き付け防止用の反転表示を行っていない場合には、極性反転を行う(ステップ803)。極性反転を行うことによって、補助光源60がONしても、液晶パネル20の表示は、通常表示(図6(a)参照)の状態を維持する。
【0053】
焼き付け防止用の反転表示を行っている場合には、強誘電性液晶10の極性反転を行わず、ステップ804へ進む。したがって、この場合、補助光源スイッチ62がONすることによって、液晶パネル20の表示は、反転表示(図6(b)参照)から通常表示(図6(a)参照)に変化する。
【0054】
次に、制御部21は、補助光源スイッチ62がOFFされたか否かの判断を行う(ステップ804)。補助光源スイッチ62がOFFされた場合には、制御部21は、次に、液晶パネル20が焼き付け防止のための反転表示(図7のフロー参照)を行っているか否かの判断を行う(ステップ805)。
【0055】
焼き付け防止用の反転表示を行っていない場合には、極性反転を行い(ステップ806)、一連のフローを終了する。極性反転を行うことによって、補助光源60がOFFしても、液晶パネル20の表示は、通常表示(図6(a)参照)の状態を維持する。
【0056】
焼き付け防止用の反転表示を行っている場合には、強誘電性液晶10の極性反転を行わず、一連のフローを終了する。したがって、この場合、補助光源スイッチ62がOFFすることによって、液晶パネル20の表示は、通常表示(図6(a)参照)から反転表示(図6(b)参照)に変化する。
【0057】
このように図8のフローに従って制御されれば、補助光源60がONされてもて、通常表示が反転表示に変化することなく、液晶パネル20は、通常の表示状態(例えば、図6(a)参照)を維持することができる。
【0058】
なお、強誘電性液晶10の極性反転は、前述したように、一方の強誘電状態から他方の強誘電状態に転移させることを言う。具体的に通常表示から反転表示への極性反転は、制御部21が、駆動電圧波形制御回路22、走査駆動電圧波形発生回路23及び信号駆動電圧波形発生回路24を用い、ネガポジ反転表示用のネガポジ反転表示データを利用して、前記走査電極又は前記信号電極に印加される駆動波形の極性をそれ以前の駆動波形と反転するように制御した。また、反転表示から通常表示への極性反転は、制御部21が、駆動電圧波形制御回路22、走査駆動電圧波形発生回路23及び信号駆動電圧波形発生回路24を用い、通常表示用の表示データを利用して、前記走査電極又は前記信号電極に印加される駆動波形の極性をそれ以前の駆動波形と反転するように制御した。
【0059】
また、表示データを利用する他に、電源部25から表示パネル20に供給される電圧の極性を反転させるようにして、強誘電性影響10の極性反転を行うことも可能である。その場合、制御部21は、極性を反転させるための任意の電子回路を用いることができる。
【0060】
図9に、本発明に係る液晶表示装置100に利用することができる他の液晶パネル200を示す。図3に示す前述した液晶パネル20と図10に示す液晶パネル200との差異は、液晶パネル200において、反射型偏光板16と補助光源60との間に、光吸収層17を配置した点のみである。
【0061】
補助光源60をOFFして、液晶パネル20を透過状態とした場合、補助光源60の表面の色(例えば、暗い青色等)が液晶パネル20上で観測されるが、その際、光吸収層17が液晶パネル20に入射する光を吸収するので、この場合に液晶パネル20上で観測される補助光源60の表面の色をより黒く表示することが可能となる。
【0062】
光吸収層17は、可視光領域の一部の波長を吸収するものである。なお、光吸収層17は、可視光領域の全域にわたって、光量の一部を吸収し、他を透過するような吸収層であっても良い。
【0063】
図10に、本発明に係る液晶表示装置100に利用することができる他の液晶パネル300を示す。図3に示す前述した液晶パネル20と図10に示す液晶パネル300との差異は、液晶パネル300において、反射型偏光板16と補助光源60との間に、微細な開口部19を多数有する光吸収層18を配置した点のみである。
【0064】
補助光源60をOFFして、液晶パネル20を透過状態とした場合、補助光源60の表面の色(例えば、暗い青色等)が液晶パネル20上で観測されるが、その際、光吸収層18が液晶パネル20に入射する光を吸収するので、この場合に液晶パネル20上で観測される補助光源60の表面の色をより黒く表示することが可能となる。なお、補助光源60をONして、液晶パネル20を透過状態とした場合には、光吸収層18の多数の微細な開口部19を通して補助光源60からの光が透過するので、液晶パネル20上で観測される光量に大きな影響を与えることはない。
【0065】
光吸収層18における微小な開口部19による開口率は、30%〜70%の範囲内から好ましい値を選択することができる。また微細な開口部19は微小な丸孔状であっても良いし、格子状に形成されても良い、また開口部は規則的に形成される必要はなく、ランダムに形成されていても良い。
【0066】
さらに、本実施形態において、補助光源60の発光側表面に、可視光領域の一部を反射する反射層を設けることもできる。反射層は、可視光領域の一部の波長を反射し、特定の色を反射光として反射する層であっても良いし、可視光領域の全域にわたって、光量の一部を反射し、他を透過するような半透過反射膜であっても良い。例えば、青色光を反射する反射層を設ければ、補助光源60をOFFして、液晶パネル20を透過状態とした場合、液晶パネル20上で観測される補助光源60からの反射光を青色とすることができる。即ち、補助光源60をOFFして、液晶パネル20を透過状態とした場合の表示色を変化させることが可能である。
【0067】
本実施形態における液晶パネル20は、図1に示すように、偏光板15透過軸の方向a、反射偏光板16の透過軸の方向b、及び強誘電性液晶10の第1及び第2の強誘電状態の液晶分子の長軸の方向を設定した。さらに、図3(a)及び(b)に示すように、印加電圧と強誘電性液晶10の第1及び第2の強誘電状態との関係を設定した。しかしながら、このような設定は一例であって、偏光板15の透過軸の方向a、反射型偏光板16の透過軸の方向b、強誘電性液晶10の第1及び第2の強誘電状態の液晶分子の長軸の方向、及び印加電圧等によって、どのような場合に液晶パネル20上で白表示を行い、どのような場合に黒表示を行うかを様々に設定することが可能である。本願発明は、補助光源60のON/OFFに応じて、表示が反転してしまうことを防止することを1つの大きな目的とするものであるので、本実施形態における偏光板15、反射型偏光板16及び強誘電性液晶10の第1及び第2の強誘電状態の液晶分子の長軸の方向の設定のみならず、様々な設定においても適用することが可能であり、同様な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係わる液晶パネルの構成例を示す図である。
【図2】液晶パネル及び補助光源の断面を示す概念図である。
【図3】(a)は補助光源がOFFの場合の液晶パネル20における光透過率を示す図であり、(b)は補助光源がONの場合の液晶パネル20における光透過率を示す図である。
【図4】本発明に係る液晶表示装置のブロック構成図である。
【図5】液晶パネルに印加される駆動電圧波形の一例を示す図である。
【図6】(a)は通常表示の例を示し、(b)は反転表示の一例を示す図である。
【図7】液晶表示装置の表示制御の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る液晶表示装置の表示制御の手順を示すフローチャートである。
【図9】他の液晶パネルの断面を示す概念図である。
【図10】更に他の液晶パネルの断面を示す概念図である。
【符号の説明】
【0069】
10 強誘電性液晶
11a、11b 透明ガラス基板
13a 走査電極
13b 信号電極
15 偏光板
16 反射型偏光板
17 光吸収層
20、200、300 液晶パネル
21 表示制御回路
23 走査駆動電圧波形発生回路
24 信号駆動電圧波形発生回路
25 電源部
30 全画像データ用メモリ
31 部分画像用メモリ
41 照度センサ
42 水深センサ
43 充電量検出センサ
44 発電量検出センサ
45 受信状態検出センサ
51 電波時計部
60 補助光源
62 補助光源スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリ性液晶表示装置であって、
第1及び第2の基板間に挟持され、第1の安定状態と第2の安定状態とを有するメモリ性液晶層と、
前記第1の基板上に配置され、それぞれ直交する第1透過軸と第1反射軸とを有し、及び前記第1透過軸に平行な振動面を有する直線偏光を透過し且つ前記第1反射軸に平行な振動面を有する直線偏光を反射する特性を有する反射型偏光板と、
前記第2の基板上に配置され、第2透過軸を有し、及び前記第2透過軸に平行な振動面を有する直線偏光を透過する偏光板と、
前記反射型偏光板側に設けられた補助光源と、
前記補助光源の点灯に同期して、前記メモリ性液晶の安定状態を一方から他方へ転移させるように制御する反転制御部と、
を有することを特徴とするメモリ性液晶表示装置。
【請求項2】
前記反射型偏光板と前記補助光源との間に配置され、一部領域の光を吸収する光吸収層を、さらに有する請求項1に記載のメモリ性液晶表示装置。
【請求項3】
前記反射型偏光板と前記補助光源との間に配置され、可視光領域の一部の光を吸収する光吸収層を、さらに有する請求項1に記載のメモリ性液晶表示装置。
【請求項4】
前記補助光源の表面には、可視光領域の一部の光を反射する反射層が備えられている、請求項1に記載のメモリ性液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の基板の一方の基板上に配置され、前記メモリ性液晶層に電圧を印加するための走査電極と、前記第1及び第2の基板の他方の基板上に配置され、前記メモリ性液晶層に電圧を印加するための信号電極とをさらに有し、
前記反転制御部は、前記走査電極又は前記信号電極に印加される駆動波形の極性を反転するように制御する、請求項1〜4の何れか一項に記載のメモリ性液晶表示装置。
【請求項6】
さらに、少なくとも前記メモリ性液晶表示装置に電力を供給するための電源部を有し、
前記反転制御部は、前記電源部で発生した電圧の極性を反転させて、前記メモリ性液晶の安定状態を一方から他方へ転移させるように制御する、請求項1に記載のメモリ性液晶表示装置。
【請求項7】
さらに、前記反転制御部は、演算回路を有し、
前記反転制御部は、前記演算回路によって通常表示データを反転表示データに変換することによって、前記メモリ性液晶の安定状態を一方から他方へ転移させるように制御する、請求項1に記載のメモリ性液晶表示装置。
【請求項8】
メモリ性液晶表示装置であって、
第1及び第2の基板間に挟持され、第1の安定状態と第2の安定状態とを有するメモリ性液晶層と、
前記第1の基板上に配置され、それぞれ直交する第1透過軸と第1反射軸とを有し、及び前記第1透過軸に平行な振動面を有する直線偏光を透過し且つ前記第1反射軸に平行な振動面を有する直線偏光を反射する特性を有する反射型偏光板と、
前記第2の基板上に配置され、第2透過軸を有し、及び前記第2透過軸に平行な振動面を有する直線偏光を透過する偏光板と、
前記反射型偏光板側に設けられた補助光源と、
前記補助光源の点灯に同期して、前記メモリ性液晶の安定状態を一方から他方へ転移させるように制御する第1の反転制御部と、
前記メモリ性液晶の安定状態を一方から他方へ転移させるように制御する第2の反転制御部とを有し、
前記第2の反転制御部が動作している期間は、前記第1の反転制御部の動作を停止させる、ことを特徴とするメモリ性液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−126612(P2006−126612A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316403(P2004−316403)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】